JP4042424B2 - エステル化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエステル化合物の製造方法に関し、より詳細にはアルデヒドとアルコールの混合物を液相中で脱水素してエステル化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
不均一系触媒を使用するアルデヒドとアルコールの混合物を脱水素するエステル化合物の製造方法は、例えば特開2000−302727号公報に示されるような分子状酸素存在下、パラジウム系触媒を使用した反応が報告されている。しかしながら、分子状酸素の添加による爆発の危険性があり、工業的な実用性に於ける安全的課題を解決したものとは言い難い。また、発生する水素ガスを再利用することができないという問題点を有している。
また、特開2001−328966号公報には分子状酸素を必要としない、不均一系触媒を用いたアルデヒド、アルコールの混合物の脱水素によるエステル製造法が報告されているが、気相法であるために反応により副生する水素ガス、及び生成物であるエステル化合物が触媒と均一相に共存する。そのため、エステルの水素化逆反応による平衡制約を生じ、高転化率、高選択率を達成することが困難なものであった。そのため発生する水素ガスを反応系内から放出でき得る液相脱水素反応の開発が期待されているのが現状である。
【0003】
一方、錯体触媒を使用したアルデヒドとアルコールの混合物を液相で脱水素するエステル化合物の製造法は既に検討されている。例えば、トリフェニルホスフィンを配位子としたルテニウム錯体触媒を用いる反応が挙げられる(J.Org.Chem.,1987,52,4319−4327)。しかしながら、この触媒系では反応の進行に長時間を必要とし、工業的な使用には反応速度の向上など生産性の問題点が残されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、遷移金属錯体触媒を用い、酸素、水素受容体などの添加剤を必要とすることなく、また平衡制約無しに、短時間で効率よくエステル化合物を製造する方法を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、トリアルキルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒を用いることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は下記(1)〜(3)に存する。
(1)アルデヒドとアルコールとからなる混合物を液相中で脱水素反応させてエステル化合物を製造する方法において、触媒としてトリアルキルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒用いることを特徴とするエステル化合物の製造方法。
【0006】
(2)ルテニウム錯体触媒のリン原子/ルテニウム原子の原子比が2〜10である上記(1)に記載の製造方法。
【0007】
(3)アルデヒドとアルコールとの混合比が、アルデヒドのアルコールに対するモル比で2〜5である上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、アルデヒドとアルコールとからなる混合物を脱水素反応させてエステル化合物を製造する方法において、触媒としてトリアルキルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒を用いることを特徴とするものである。以下、その詳細について説明する。
【0009】
本発明において、原料とするアルデヒド及びアルコールとしては、具体的には、炭素数が1〜50の飽和または不飽和のアルデヒド及びアルコールが挙げられ、特に炭素数1〜10のアルデヒド及びアルコールが好ましい。またこれらのアルデヒド及びアルコールは、他の置換基を有していてもよい。
【0010】
アルデヒドの具体例としては、ホルムアルデヒド、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどの分岐を有していても、官能基を有していても構わない脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、あるいは芳香族環上にメトキシ基、ハロゲン基、炭化水素基、などの官能基を有しても構わない芳香族アルデヒドなどが挙げられる。
大気圧下、高温度での反応が容易な沸点100℃以上のアルデヒドが反応速度の観点から好ましく、特に好ましくは沸点150℃以上のアルデヒドである。
【0011】
また、アルコールの具体例としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、1―オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、5−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、5−デカノール、アリルアルコール、1−ブテノール、2−ブテノール、1−ペンテノール、2−ペンテノール、1−ヘキセノール、2−ヘキセノール、3−ヘキセノール、1−ヘプテノール、2−ヘプテノール、3−ヘプテノール、1−オクテノール、2−オクテノール、3−オクテノール、4−オクテノール、1−ノネノール、2−ノネノール、3−ノネノール、4−ノネノール、1−デセノール、2−デセノール、3−デセノール、4−デセノール、5−デセノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘプタノール、1−フェネチルアルコール、2−フェネチルアルコール、メタノールアミン、エタノールアミン、また、特に分子内に含まれる任意の2つのヒドロキシル基が3−6個の炭素鎖で結ばれたポリオール類、具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキシルジメチロール、1,3−シクロヘキシルジメチロール、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシエチルシクロヘキサン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピルシクロヘキサン、1−ヒドロキシル−2−ヒドロキシエチルシクロヘキサン、1,2−ベンジルジメチロール、1,3−ベンジルジメチロール、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシエチルベンゼン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピルベンゼン、1−ヒドロキシル−2−ヒドロキシエチルベンゼン等が挙げられる。
大気圧下、高温度での反応が容易な沸点100℃以上のアルコールが反応速度の観点から好ましく、特に好ましくは沸点150℃以上のアルコールである。
【0012】
なお、本発明においては、反応選択率の観点から、アルデヒドとアルコールとが、同一の炭素骨格を有するものを選択することが好ましい。具体的には、ベンズアルデヒドとベンジルアルコール、ホルムアルデヒドとメタノール、エタナールとエタノール、プロパナールと1−プロパノール、ブタナールと1−ブタノール、ヘプタナールと1−ヘプタノール、ヘキサナールと1−ヘキサノール、オクタナールと1−オクタノール、などの組み合わせが好ましく、特に好ましくはベンズアルデヒドとベンジルアルコール、オクタナールと1−オクタノールの組み合わせである。
例えばベンズアルデヒドとベンジルアルコールの組み合わせでは、脱水素反応が進行する際に、アルデヒドが水素化されても、生成するアルコールが原料であるベンジルアルコールであり、選択率低下を引き起こさずに反応を継続することができるためである。
【0013】
アルデヒドとアルコールとの混合比は、アルデヒドのアルコールに対するモル比で通常1以上、好ましくは2以上であり、通常10以下、好ましくは5以下である。アルデヒドの割合が多すぎると、脱水素によりエステルを製造するのに必要な水素量を確保できず、原料アルデヒドが多く残存し、また逆にアルデヒドの割合が少なすぎると、安定なアセタール類が生成し、反応速度が低下してしまう傾向がある。
【0014】
本発明における触媒は、トリアルキルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体であるが、トリアルキルホスフィン配位子としては、トリデシルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリへプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルペンチルホスフィン、ジペンチルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン等の単座トリアルキルホスフィン;1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジエチルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジオクチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジオクチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジオクチルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジヘキシルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジヘキシルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジブチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジブチルホスフィノ)ブタン等の複座トリアルキルホスフィンなどが挙げられ、これらのうち、炭素数4以上のアルキル基を有するトリアルキルホスフィンが好ましく、特にトリオクチルホスフィンが好ましい。
【0015】
また、本発明におけるルテニウムの供給形態としては特に制限されるものではなく、ルテニウム金属又はルテニウム化合物のいずれであってもよい。ルテニウム化合物としては、酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩及び錯化合物等の形態が挙げられる。
【0016】
具体的には二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、三沃化ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ルテニウム、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ルテニウム、ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウム、テトラカルボニルルテニウム酸ジカリウム、ペンタカルボニルルテニウム、シクロペンタジエニルジカルボニルルテニウム、ジブロモトリカルボニルルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドルテニウム、テトラ(トリフェニルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、テトラ(トリメチルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)トリカルボニルルテニウム、テトラヒドリドデカカルボニルテトラルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム、オクタデカカルボニルヘキサルテニウム酸ジセシウム、ウンデカカルボニルヒドリドトリルテニウム酸テトラフェニルホスフォニウム等が挙げられる。なかでも好ましいのはルテニウムの錯化合物であり、特にはトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ルテニウムが好ましい。
【0017】
これらのルテニウム金属及び/又はルテニウム化合物の使用量は、反応液中の濃度が、反応液中の金属として好ましくは0.001〜10.0重量%、より好ましくは0.01〜3.0重量%となる量である。
尚、反応液は、原料のアルデヒド及びアルコール、並びに必要に応じて使用したその他の溶媒を含むものである。
【0018】
本発明におけるトリアルキルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒の具体例としては、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリメチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリエチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリプロピルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリオクチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジメチルホスフィノエタン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリメチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリエチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリプロピルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリオクチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリデカニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドビス(ビスジメチルホスフィノエタン)ルテニウム等が挙げられ、好ましくはビス(アセチルアセトナト)ビス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(トリオクチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリオクチルホスフィン)ルテニウムが挙げられる。
特に好ましくはビス(アセチルアセトナト)ビス(トリオクチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリオクチルホスフィン)ルテニウムである。
【0019】
本発明においては、トリアルキルホスフィン配位子を用いることにより、従来の公知技術であるトリフェニルホスフィン配位子を用いたルテニウム触媒と比較して、より高い反応速度でエステル化合物を製造することができる。
【0020】
本発明におけるトリアルキルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒の製造方法としては、限定されるものではないが、ルテニウム金属及び/又はルテニウム化合物を水素圧雰囲気下、溶媒中あるいは溶媒非存在下で、トリアルキルホスフィンと撹拌することにより合成する方法、ルテニウム金属及び/又はルテニウム化合物、及び反応成分となるアルコールを、トリアルキルホスフィン存在下で、加熱することにより合成する方法等が挙げられる。
本発明においては、前記した方法のうち、後者のトリアルキルホスフィン配位子とルテニウム金属及び/又はルテニウム化合物とを混合し、加熱する方法が好ましい。
【0021】
本発明において、ルテニウム錯体触媒の調製に際しては、トリアルキルホスフィン配位子とルテニウム化合物とは、リン原子/ルテニウム原子の原子比が好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5となるように使用される。好ましくは、この原子比となるように両者を混合し、加熱すればよい。
トリアルキルホスフィン配位子が少なすぎると触媒を調製するのに不十分であり反応速度が低下する傾向があり、逆にトリアルキルホスフィン配位子が多すぎると、過剰量のトリアルキルホスフィン配位子が生成物のエステルと反応し、多量の高沸点副生成物を生じてしまい、選択率が低下する傾向がある。
【0022】
本発明の方法に使用される配位子を有するルテニウム錯体触媒は、予め合成し、単離して用いてもよいし、その前駆体をそれぞれ単独に反応系に添加して、反応系内で触媒を調製して使用してもよい。
しかしながら、触媒源体であるルテニウム化合物とアルコールが副反応を生じ、エステル類の選択率低下を引き起こすことがあるため、触媒は予め合成しておき、その後アルコールとアルデヒドとからなる混合物に添加することが好ましい。
【0023】
本発明により製造されるエステル化合物としては、酪酸ブチル、酪酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、プロピオン酸プロピル、ペンタン酸ペンチル、ヘキサン酸ヘキシル、ヘプタン酸ヘプチル、オクタン酸オクチル、ノナン酸ノニル、デカン酸デシル、ベンジルベンゾエート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、などが挙げられ、好ましくは対象な骨格を有するエステル化合物であり、例えば、ベンジルベンゾエート、オクチル酸オクチルなどである。
【0024】
本発明のエステル化合物の製造方法は、液相中で行われるものであり、反応原料以外の溶媒を更に用いてもよいし、反応原料および生成物そのものを溶媒とし、他の溶媒を用いずに行ってもよい。特に、後者の反応原料および生成物そのものを溶媒とし、他の溶媒を用いずに行う方法が好ましい。
【0025】
本発明において使用可能な溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンのエーテル類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭素、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のカルボン酸アミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドその他のアミド類、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類、ジメチルスルホン等のスルホン類、ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類、ガンマブチロラクトン、カプロラクトン等のラクトン類、テトラグライム、トリグライム等のポリエーテル類、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類等が挙げられ、好ましくはエーテル類、ポリエーテル類、および反応原料、生成物のアルコール、多価アルコール、アルデヒド、エステル類である。
【0026】
反応温度は通常20〜350℃、好ましくは50〜250℃、さらに好ましくは100〜220℃である。
本発明は開放系で、反応で生成する水素を抜き出すことにより、反応を促進することができるが、常圧下あるいは加圧下でも反応は進行し、水素、およびメタン、エタン、ブタンなどの炭化水素ガス、および窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの不活性ガスなどの雰囲気下で行うことができる。
好ましくは常圧下、不活性ガス雰囲気下、又は水素ガス雰囲気下である。尚、水素ガス雰囲気下の場合、その圧力はゲージ圧力で0.001MPa〜1MPaであるのが好ましい。
反応は回分方式および連続方式のいずれでも実施することができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、下記実施例・比較例において、選択率及び転化率は、それぞれサンプリングした反応液を、ガスクマトグラフィーにて分析し、内部標準法で、ガンマブチロラクトンなどの収量、1、4−ブタンジオールなどの原料の残量を決定し、この値から求めた。
【0028】
実施例1
1L容のステンレス製オートクレーブに、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム22.6gとトリオクチルホスフィン209gを加え(モル比、リン/ルテニウム=10)、0.8MPa/Gの水素圧力下、170℃で5時間反応させ、ジヒドリドテトラキス(トリオクチルホスフィン)ルテニウムのトリオクチルホスフィン溶液を得た。
50ml容のガラス製反応器に、上記の方法で調製したルテニウム触媒液0.44g、ベンズアルデヒド4.02g及びベンジルアルコール1.02g(モル比、アルデヒド/アルコール=4)を加え(ルテニウム触媒金属濃度1.6重量%)、170℃、5時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率95%、アルデヒド、アルコール合計転化率70%で得た。
【0029】
実施例2
1L容のステンレス製オートクレーブに、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム40.6gとトリオクチルホスフィン112.5gを加え(モル比、リン/ルテニウム=2.8)、0.8MPa/Gの水素圧力下、150℃で3時間加熱攪拌し、ビス(トリオクチルホスフィノ)ルテニウムビスアセチルアセトネートのトリオクチルホスフィン溶液を得た。
50ml容のガラス製反応器に、上記の方法で調製したルテニウム触媒液1.07g、ベンズアルデヒド3.19g、ベンジルアルコール0.82g(モル比、アルデヒド/アルコール=4)を加え(ルテニウム触媒金属濃度1.6重量%)、170℃、8時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率86%、アルデヒド、アルコール合計転化率94%で得た。
【0030】
実施例3
50ml容のガラス製反応器に、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム0.30g、トリオクチルホスフィン0.558g(モル比、リン/ルテニウム=2)、ベンズアルデヒド2.08g、ベンジルアルコール2.01g(モル比、アルデヒド/アルコール=1)を加え(ルテニウム触媒金属濃度1.6重量%)、170℃、12時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率90%、アルデヒド、アルコール合計転化率80%で得た。
【0031】
比較例1
50ml容のガラス製反応器に、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(Aldrich製)0.216g、ベンズアルデヒド0.503g、ベンジルアルコール0.520g(モル比、アルデヒド/アルコール=1)を加え(ルテニウム触媒金属濃度0.2重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率68%、アルデヒド、アルコール合計転化率47%で得た。
【0032】
比較例2
50ml容のガラス製反応器に、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(Aldrich製)0.096g、ベンズアルデヒド3.22g、ベンジルアルコール0.826gモル比、アルデヒド/アルコール=1)を加え(ルテニウム触媒金属濃度0.2重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率67%、アルデヒド、アルコール合計転化率25%で得た。
【0033】
比較例3
実施例1に記載の方法でトリフェニルホスフィンを用いて触媒液(モル比、リン/ルテニウム=2.8)を調製した。50ml容のガラス製反応器に、調製したルテニウム触媒0.13g、ベンズアルデヒド0.503g、ベンジルアルコール0.520gモル比、アルデヒド/アルコール=1)を加え(ルテニウム触媒金属濃度1.6重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率58%、アルデヒド、アルコール合計転化率48%で得た。
【0034】
上記の通り、トリアルキルホスフィンを配位子とした錯体触媒を用いた実施例では、トリフェニルホスフィンを配位子とした錯体触媒を使用した比較例と比べて、選択率及び転化率ともに高く、効率よくエステル化合物を製造し得ることが判る。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、トリフェニルホスフィンを配位子とした錯体触媒ではなく、トリアルキルホスフィンを配位子とした錯体触媒をエステル化合物の製造方法に使用するので、酸素、水素受容体などの添加剤を必要とすることなく、また平衡制約無しに、短時間で効率よくエステル化合物を製造することができる。

Claims (3)

  1. アルデヒドとアルコールとからなる混合物を液相中で脱水素反応させてエステル化合物を製造する方法において、触媒としてトリアルキルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒用いることを特徴とするエステル化合物の製造方法。
  2. ルテニウム錯体触媒のリン原子/ルテニウム原子の原子比が2〜10である請求項に記載の製造方法。
  3. アルデヒドとアルコールとの混合比が、アルデヒドのアルコールに対するモル比で2〜5である請求項1又は2に記載の製造方法。
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