JP4916472B2 - ルツボおよび真空蒸着装置 - Google Patents

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Description

本発明は、真空蒸着に関し、特に、成膜材料蒸気の指向性を制御して、膜厚均一性に優れた膜を成膜することを可能にするルツボ、ならびに、このルツボを用いる真空蒸着方法および真空蒸着装置に関する。
従来より、医療用の診断画像の撮影や工業用の非破壊検査などに、被写体を透過した放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を電気的な信号として取り出すことにより放射線画像を撮影する、放射線画像検出器が利用されている。
この放射線画像検出器としては、放射線を電気的な画像信号として取り出す放射線固体検出器(いわゆる「Flat Panel Detector」 以下、FPDとする)や、放射線像を可視像として取り出すX線イメージ管などがある。
また、FPDには、アモルファスセレンなどの光導電膜とTFT(Thin Film Transistor)等とを用い、放射線の入射によって光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集してTFTによって電気信号として読み出す、いわば放射線を直接的に電気信号に変換する直接方式と、放射線の入射によって発光(蛍光)する蛍光体で形成された蛍光体層(シンチレータ層)を有し、この蛍光体層によって放射線を可視光に変換し、この可視光を光電変換素子で検出して電気信号に変換する間接方式との、2つの方式がある。
また、直接方式のFPDにおいて、アモルファスセレンなどの光導電膜は、真空蒸着等の真空成膜法によって形成される。
このような真空蒸着による成膜では、形成した膜が膜厚均一性に優れること、すなわち、膜厚分布が小さいことが望まれる。ここで、通常の真空蒸着では、成膜材料を収容して蒸発するルツボ(蒸発源(蒸着源))の上部近傍の膜厚が高く、ここから遠ざかるに応じて、膜厚が薄くなって行く傾向にある。
このような不都合を解消する方法として、蒸気流すなわち成膜材料の蒸気が向かう方向(いわゆる、蒸気流の指向性)を制御する方法が、各種、提案されている。
例えば、特許文献1には、ルツボを傾斜することで蒸発口を斜め上方に向けると共に、傾斜した回転軸でルツボを回転させることにより、蒸気流の指向性を斜め上方とする蒸発源装置が開示されている。
また、特許文献2には、ルツボを傾斜させることにより、蒸気流の指向性を鉛直方向から傾けると共に、成膜材料収容室と蒸気排出口を揺する蒸気室とを仕切り壁で仕切り、かつ、収容室と蒸気室を連通する連通孔を仕切り壁に設けることにより、所望の指向性を得るためにルツボを傾斜することによる、成膜材料の充填量の低減を抑制したルツボが開示されている。
特開昭60−135566号公報 特開昭60−162772号公報
これらの特許文献に示されるように、ルツボを傾斜して設置することにより、蒸気流の指向性をルツボを傾けた方向にすることができ、蒸気流の指向性を斜め上方にできる。
ところが、このようにルツボを傾斜して設置した場合には、図14に示すように、成膜材料の残量が少なくなると、成膜材料の液面面積が急激に変動するため、これに起因して局所加熱等が生じ、突沸が発生してしまう。その結果、突沸に起因して、形成する膜に欠陥が生じてしまい、適正な膜を形成することができないことが、多々、生じる。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、成膜材料の蒸気流の指向性を制御して、真空蒸着によって膜厚均一性に優れた膜を成膜することを可能し、かつ、成膜材料の突沸も防止できる真空蒸着用のルツボ、および、膜厚均一性に優れ、かつ、突沸に起因する欠陥が極めて少ない高品質な膜を、高い蒸着効率で得ることができる真空蒸着方法および真空蒸着装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のルツボは、真空蒸着用のルツボであって、真空蒸着装置に装填された状態で底面が水平になる成膜材料の収容部を有し、かつ、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件の、少なくとも一方の条件を満たすことを特徴とするルツボを提供する。
また、本発明の真空蒸着方法の第1の態様は、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件の、少なくとも一方の条件を満たすルツボを、複数、成膜材料の収容部の底面が水平になるように設置し、このルツボに成膜材料を収容して、基板に真空蒸着によって成膜を行なうことを特徴とする真空蒸着方法を提供する。
このような本発明の真空蒸着方法の第1の態様において、基板を鉛直方向に投影した際における基板の中心を基準点として、前記ルツボが、この基準点を中心とする円上に均等な間隔で配置されるのが好ましく、また、この際において、前記ルツボからの蒸気流の指向性が前記基準点に向かうように、もしくは、前記ルツボからの蒸気流の指向性が前記基準点から放射状に外方向に向かうように、前記ルツホが配置されるのが好ましい。
また、本発明の真空蒸着装置の第1の態様は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、基板を保持する基板ホルダと、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件の、少なくとも一方の条件を満たす複数のルツボと、前記ルツボを成膜材料収容部の底面が水平になるように設置する設置部と、前記ルツボに収容した成膜材料を加熱する加熱手段とを有することを特徴とする真空蒸着装置を提供する。
このような本発明の真空蒸着装置の第1の態様において、前記基板ホルダが前記基板を装填した状態で、基板を鉛直方向に投影した際における基板の中心を基準点として、前記ルツボが、この基準点を中心とする円上に均等な間隔で配置されるのが好ましく、また、この際において、前記ルツボからの蒸気流の指向性が前記基準点に向かうように、もしくは、前記ルツボからの蒸気流の指向性が前記基準点から放射状に外方向に向かうように、前記ルツホが配置されるのが好ましい。
また、本発明の真空蒸着方法の第2の態様は、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件の、少なくとも一方の条件を満たすルツボを、成膜材料の収容部の底面が水平になるように設置し、基板を回転しつつ、前記基板に真空蒸着によって成膜を行なうことを特徴とする真空蒸着方法を提供する。
このような本発明の真空蒸着方法の第2の態様において、前記ルツボが、前記基板の回転中心下部に配置されるのが好ましい。
さらに本発明の真空蒸着装置の第2の態様は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダを回転する回転手段と、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件の、少なくとも一方の条件を満たすことを特徴とするルツボと、前記ルツボを成膜材料収容部の底面が水平になるように設置する設置部と、前記ルツボに収容した成膜材料を加熱する加熱手段とを有することを特徴とする真空蒸着装置を提供する。
このような本発明の真空蒸着装置の第2の態様において、前記ルツボが、前記基板の回転中心下部に配置されるのが好ましい。
本発明のルツボは、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高いという第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜するという第2の条件の、少なくとも一方を満たす。そのため、本発明のルツボは、蒸気流の指向性が、第1の条件を満たす場合には、排出口の高い位置から低い位置に向かう方向となり、第2の条件を満たす場合には、排出口を形成する壁面の傾斜方向となる。
また、本発明のルツボは、特許文献1や2に示されるルツボのように、単にルツボを傾けて配置したのではなく、真空蒸着装置に設置された際に、成膜材料を収容する収容部の底面が水平方向となるように構成される。そのため、ルツボに収容される成膜材料の残量が少なくなった状態でも、成膜材料の液面面積が急激変化することがなく、この液面面積の変動に起因する成膜材料の突沸を、好適に抑制することができる。
そのため、本発明のルツボを用いることにより、真空蒸着において、蒸気流の指向性を好適に制御/設定することができ、これにより真空蒸着によって成膜する膜の膜厚均一性の向上や、成膜材料の利用効率の向上を図ることができと共に、突沸に起因する欠陥等を抑制して、高品質な蒸着膜を成膜できる。
また、このような本発明のルツボを用いる本発明の真空蒸着方法および真空蒸着装置によれば、本発明のルツボの特性を利用して、蒸気流の指向性等を考慮してルツボを配置することにより、基板に対して均一に成膜材料の蒸気を入射することができると共に、成膜材料の突沸も抑制できるので、膜厚均一性が高く、かつ、突沸に起因する欠陥等の少ない、高品質な蒸着膜を安定して成膜することができる。
以下、本発明のルツボ、真空蒸着方法、および真空蒸着装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に、本発明のルツボの一例の概略斜視図を、図2(A)に、このルツボの概略平面図(上面図)を、図2(B)に、同概略正面図(図1の矢印b方向から見た図)を、それぞれ示す。
図示例のルツボ10は、底が閉塞して上部が開放し、底に対して側壁が垂直に立設する四角柱(四角筒)において、四角柱を形成する4つの側壁(側面)の対向する1対の側壁12aおよび側壁12bの底面14(成膜材料を収容する収容部18の底面14)からの高さを、側壁12aを側壁12bよりも高くした形状を有する。
言い換えれば、図示例のルツボ10は、底面に対して側壁が垂直に立設する通常の四角柱を、底面14ならびに対向する1対の側壁12aおよび側壁12bと平行な線で斜め方向に切断したように、もう一方の対向する側壁16aおよび側壁16bの上端が底面に対して角度αだけ傾斜する形状を有する。
また、本発明のルツボ10は、真空蒸着装置に(適正に)設置された状態で、成膜材料の収容部18の底面14が、水平(略水平)になる構成を有する。従って、ルツボ10においては、図2(B)に二点鎖線で示す成膜材料の液面と底面14とが、平行になる。すなわち、ルツボ10は、成膜材料の蒸気排出口が水平(底面=液面に平行)ではなく、水平に対して角度αだけ傾斜する形状を有する。
このルツボ10は、基本的な形状が四角柱状であるので、ルツボの設置面が水平である真空蒸着装置や、設置状態でルツボの下面が水平になるようにルツボの設置部が設けられた真空蒸着装置のような、一般的な真空蒸着装置に対応するものである。
さらに、ルツボ10においては、好ましい態様として、収容部18には、底面12から垂直に立設して、柱部20を有する。
ルツボ10においては、成膜材料を溶融/蒸発させる際に、この柱部20も加熱することにより、成膜材料の加熱効率を向上できると共に、溶融した成膜材料の温度分布を低減できる。これにより、成膜材料の温度分布に起因する突沸等を防止して、効率の良い真空蒸着が可能となる。なお、このような柱部20は、以降に示す本発明の各ルツボを含め、本発明の他のルツボも有してよいのは、もちろんである。
本発明のルツボは、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部の高さ(成膜材料収容部の底面からの垂線方向の高さ)が、他の部分よりも高いという第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜(成膜材料収容部の底面からの垂線に対して傾斜)しているという第2の条件の少なくとも一方を満たす。
加えて、本発明のルツボは、前記第1の条件および/または第2の条件を満たすと共に、真空蒸着装置に適正に設置された状態では、成膜材料を収容する収容部の底面が、水平になる構成を有する。
図1および図2に示すルツボ10は、四角柱を基本的な形状とするものであり、側壁12aが側壁12bよりも高い。すなわち、側壁16aおよび側壁16bの上端が、側壁12aが側壁12bに向かって下方に傾斜している。
すなわち、図示例のルツボ10は、成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部の高さが他の部分よりも高い(以下、単に「排出口の一部が高い」ともいう)という、本発明の第1の条件を満たすものである。
このような第1の条件を満たす本発明のルツボは、成膜材料の蒸気流(成膜材料の蒸発蒸気の流れ(蒸発流))の指向性が、排出口の高い位置から低い位置に向かう斜め上方に向かう方向となる。
すなわち、側壁12aが側壁12bよりも高い図示例のルツボ10においては、蒸気流の指向性が、図中に矢印xで示す側壁12aから側壁12bに向かう方向となり、このx方向に向かう斜め上方に蒸気流が流れる。
図3に、ルツボ10と同様の、対向する1対の側壁の高さが異なる形状を有するルツボを用いて、セレン(Se)の蒸着を行なった際における、膜厚分布の一例を示す。
この例は、底面14のサイズが120×120mm、底面14から蒸気排出口までの高さ(中心高さ)が100mm、側壁12aと側壁12bとの高さの違いによる、側壁16aおよび側壁16bの傾斜の角度αが10°であるルツボを用い、蒸気排出口から基板までの距離を500mmとした際における、膜厚分布を示すものである。なお、成膜は、真空度を3×10-3Paとし、ルツボ10の底部温度が265℃、側壁上端温度が270℃で一定となるように、加熱をフィードバック制御して行なった。
なお、蒸気排出口から基板までの距離は、蒸気排出口水平面から基板位置水平面までの鉛直方向の距離であるが、本例の場合、排出口が傾斜しているので、鉛直方向の中間位置の水平面からの鉛直方向の距離とした。
図3において、横軸の距離は、ルツボの排出口を水平面に投影し、その中心の鉛直上からの距離を示す。
図3に示されるように、側壁16aおよび側壁16bすなわち蒸気排出口の高さに差が無いP1−P3方向は、通常のルツボと同様、距離0の位置すなわちルツボの鉛直上に膜厚のピークが位置する。
これに対し、側壁12aが側壁12bよりも高いすなわち蒸気排出口の高さに差があるP2−P4方向は、膜厚のピークが低い側壁12b側に移動しており、すなわち、蒸気流の指向性が水平方向に移動して、図中x方向への斜め上方に蒸気流が進んでいることが示されている。
前述のように、本発明のルツボは、真空蒸着装置に設置された際に、成膜材料の収容部18の底面14が、水平となる構成を有する。
特許文献1や2に示されるように、ルツボを傾斜して設置することにより、ルツボの壁面を傾斜させ、蒸気流の指向性を傾斜方向に向けて、蒸気流の指向性を斜め上方にすることができる。しかしながら、このようにルツボを傾斜して設置すると、図14に示すように成膜材料の残量が少なくなると、成膜材料の液面面積が急激に変動するため、これに起因して局所加熱等が生じ、突沸が発生してしまい、蒸着膜に欠陥等が生じてしまうのは、前述のとおりである。
また、特開平7−316791号公報には、排出口(蒸発源)の法線が基板の装着領域から外すように、ルツボを傾斜して配置することにより、成膜材料の突沸が生じても基板に付着することを防止することことが開示されている。しかしながら、この方法では、成膜材料の利用効率が低下してしまい、また、特許文献1や2と同様に、成膜材料の残量が少なくなると、突沸が頻繁に生じるので、欠陥の抑止効果も、十分に得られない。
これに対し、本発明のルツボ10は、真空蒸着装置に設置された状態で、底面14が水平となる構成を有する。従って、本発明のルツボ10は、収容される成膜材料の量が少なくなっても、成膜材料の液面面積が急激に変化することが無い。
そのため、本発明のルツボ10によれば、蒸気流の指向性を適正に制御できると共に、液面面積の変化に起因する突沸を抑制でき、これにより、膜厚均一性に優れ、かつ、突沸に起因する欠陥等の極めて少ない、高品質な蒸着膜を安定して成膜できる。
前述のように、本発明のルツボは、真空蒸着装置に設置された状態で、成膜材料収容部の底面が水平となり、かつ、前記排出口の一部が高いという第1の条件か、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜している(以下、単に「排出口の壁面が傾斜している」ともいう)、という第2の条件の、少なくとも一方を満たす。
図4に、この第2の条件を満たすルツボの一例の概略図を示す。なお、図4においても、(A)は平面図で、(B)は正面図である。
図4に示すルツボ24も、図1および図2に示すルツボ10と同様に、底面が閉塞、上面が開放する四角柱を基本的な形状とするものである。具体的には、このような四角柱において、四角柱を形成する4つの側壁の対向する1対の側壁26aおよび側壁26bを、成膜材料の収容部28の底面30からの垂線に対して、同角度だけ同方向に傾斜させてなる形状を有する。言い換えれば、図4に示すルツボ24は、対向する1対の側壁32aおよび側壁32bを、底面30に対して垂直に立設する平行四辺形状とすることにより、もう一方の対向する側壁26aおよび側壁26bが、底面30からの垂線に対して平行に傾斜してなる形状を有する。
また、ルツボ24も、先のルツボ10と同様に、真空蒸着装置に設置された状態で、収容部28の底面30が水平(略水平)になる構成を有し、従って、図4(B)に二点鎖線で示す成膜材料の液面と、底面30とが、平行になる構成を有する。
このように、側壁が傾斜する第2の条件を満たす場合には、蒸気流の指向性を側壁(成膜材料の内壁面)の傾斜方向に向けることができる。すなわち、側壁が図中右側に傾斜するルツボ24においては、蒸気流の指向性が、図中矢印xで示すように、側壁26aおよび側壁26bの傾斜方向となり、このx方向に向かう斜め上方方向に蒸気流が流れる。
また、底面30が水平であるので、収容部28に収容される成膜材料の量が少なくなっても、液面面積が急激に変化することも無いので、液面面積の変動に起因する突沸も抑制することができる。
本発明のルツボは、図1および図2や、図4に示される構成のように、第1の条件および第2の条件の何れか一方のみを満たすのに限定はされず、第1の条件および第2の条件の、両方を満たしてもよい。
図5に、その一例を示す。
この例は、図4に示すルツボ24において、側壁26bを高くした構成を有する。言い換えると、図1および図2に示すルツボ10において、側壁12aおよび側壁12bを、底面からの垂線に対して平行に傾斜させた構成を有する。これにより、成膜材料蒸気の排出口を形成する側壁を傾斜させ、かつ、排出口の一部を高くしている。
このルツボにおいては、側壁の傾斜方向への蒸気流の指向性と、排出口の高い位置から低い位置への指向性とが合成され、蒸気流の図中矢印x方向への指向性を、より強く発現することができる。
また、本発明のルツボにおいては、特許文献1や2に示されるように、通常のルツボを傾けることにより、第1の条件および第2の条件を満たすようにしてもよい。図6に、その一例を示す。
図6((A)は上面図、(B)は正面図)に示すように、底面に対して垂直に立設する4つの側壁を有する四角柱状のルツボを、脚部38等を用いて下面の1辺を軸に傾けることにより、排出口の一部を高するという第1の条件と、壁面を傾斜するという第2の条件とを満たす構成のルツボ34としたものである。すなわち、この態様ではルツボを傾けることにより、水平方向に対して蒸気排出口を傾斜させている。
この構成でも、側壁の傾斜方向への蒸気流の指向性と、排出口の高い位置から低い位置への指向性とが合成され、蒸気流の図中矢印x方向への指向性を、より強く発現することができる。
ここで、本例では、図6に示すように、ルツボ34の成膜材料の収容部36の下部には、充填部42を有する。この充填部42は、ルツボ34の傾斜角βに応じて、収容部36の底面40を水平とするためのものである。従って、このルツボ34も、真空蒸着装置に設置された状態では、底面40が水平となり、すなわち、成膜材料の液面(二点鎖線)と底面40とが、平行になる。
これにより、成膜材料の量が少なくなった際における液面面積の急激な変動を無くし、これに起因する突沸を防止できる。
なお、図6に示す例において、充填部42は、成膜材料と反応せず、かつ、十分な耐熱性を有するものであれば、各種の材料で形成可能である。
また、脚部38(ルツボ34の傾斜手段)は、ルツボ34に固定されてもよく、あるいは、真空蒸着装置に設置されるものでもよい。なお、ルツボの傾斜は、下面の一辺を軸にするものに限定はされず、例えば、角部を軸にルツボを傾けてもよい。
図7に、図6に示す例と同様に、底面に対して垂直に立設する4つの側壁を有する四角柱状のルツボを傾けてルツボ34とし、このルツボ34でセレンの蒸着を行なった際における、膜厚分布の一例を示す。
この例は、蒸気排出口のサイズが120×120mm、底面40から蒸気排出口までの高さが100mmのルツボを用い、下面の1辺を軸に傾斜角βを15°で傾斜させてルツボ34とし、蒸気排出口から基板までの距離が500mmの位置に基板を設置した際における、膜厚分布を示すものである。なお、先と同様に、成膜は、真空度を3×10-3Paとし、ルツボ10の底部温度が265℃、側壁上端温度が270℃の一定となるとように、加熱をフィードバック制御して行なった。
図7においても、横軸の距離は、ルツボの排出口を水平面に投影し、その中心の鉛直上からの距離を示す。
図7に示されるように、ルツボ34が傾斜していないP1−P3方向は、通常のルツボと同様、距離0の位置、すなわちルツボ34の鉛直上に膜厚のピークが位置する。
これに対し、ルツボ34が傾斜するP2−P4方向は、膜厚のピークがルツボが傾斜するP2側に移動しており、すなわち、蒸気流の指向性が水平方向に移動して、図中x方向への斜め上方に蒸気流が進んでいることが示されている。
本発明のルツボは、上述の構成以外にも、真空蒸着装置に設置された際に成膜材料収容部の底面が水平になり、かつ、第1の条件および/または第2の条件を満たすものであれば、各種の構成が利用可能である。
例えば、図8に示すように、側壁が底面に垂直に立設する四角柱状のルツボにおいて、1つの側壁のみを高くして、かつ、対向する側壁に向かって傾斜させることにより、第1の条件と第2の条件の両方を満たす構成のルツボが例示される。
別の例として、図9に示すように、側壁が底面に垂直に立設する四角柱状のルツボの上に、図4に示すルツボ24のような、対向する1対の側壁が、底面の垂線に対して平行に傾斜する領域を設けることにより、第2の条件を満たすような構成としてもよい。
上述のルツボは全て、四角柱を基本とする形状を有するものである。しかしながら、本発明のルツボは、これに限定はされず、真空蒸着装置に設置された際に成膜材料の収容部の底面が水平となり、かつ、前記第1の条件および/または第2の条件を満たすものであれば、円柱形を基本とする形状、三角柱を基本とする形状や五角以上の多角柱を基本とする形状など、各種の形状が利用可能である。
また、第2の条件を満たすルツボは、図示例のように、対向する1対の側壁が平行に傾斜するのに限定はされず、同方向に傾斜していれば、底面の垂線に対する傾斜角度が各側壁で異なってもよく、あるいは、1面の側壁のみが傾斜するものであってもよい。
なお、本発明のルツボにおいて、成膜材料の加熱方法には、特に限定はなく、ルツボを発熱抵抗体で形成する抵抗加熱、電子銃等を利用する電子線加熱、壁内にヒータを有する構成などのルツボがヒータを内蔵する構成、外部に設置したヒータによる加熱、誘導加熱等、真空蒸着で利用されている公知の成膜材料の加熱方法が、全て利用可能である。
図10に、本発明の真空蒸着方法の第1の態様を実施する、本発明の真空蒸着装置の第1の態様の一例の概略図を示す。
真空蒸着装置50(以下、蒸着装置50とする)は、前記本発明のルツボを用いて、基板Zに真空蒸着を行なうものであり、図10(A)に示すように、真空チャンバ52、基板ホルダ54、真空排気手段56、および、前述の本発明のルツボ58を有して構成される。
なお、本発明の蒸着装置50は、図示した部材以外にも、成膜材料の加熱手段、アルゴンなどの不活性ガス等の各種のガスを真空チャンバ52内に導入するためのガス導入手段、ルツボ58(蒸発源(蒸着源))からの蒸発蒸気を遮蔽するためのシャッタ等、公知の真空蒸着装置が有する各種の部材を有してもよいのは、もちろんである。
このような蒸着装置50は、真空蒸着によって基板Zの表面に成膜するものであり、通常の真空蒸着装置と同様に、真空チャンバ52内を減圧して、ルツボ58に収容した成膜材料を加熱溶融して蒸発させることにより、基板ホルダ54が保持した基板Zの表面に、成膜材料を成膜するものである。
本発明の蒸着装置50において、使用する基板Zには、特に限定はなく、アルミニウム板等の金属板、ガラス板、プラスチック(樹脂)製のフィルムや板等、製造する製品に応じたものを用いればよい。
また、基板Zに成膜(形成)する膜にも、特に限定はなく、前述のFPDの光導電膜となる(アモルファス)セレンや、蛍光体層(シンチレータ層)など、真空蒸着によって成膜可能なものが、全て利用可能である。
蒸着装置50において、真空チャンバ52は、鉄、ステンレス、アルミニウム等で形成される、真空蒸着装置で利用される公知の真空チャンバ(ベルジャー、真空槽)である。
また、真空排気手段56は、真空チャンバ52内を排気して、所定の真空度にするものであり、油拡散ポンプ、クライオポンプ、ターボモレキュラポンプ等、真空蒸着装置に用いられる公知の真空ポンプ等を用いて構成すればよい。
さらに、基板ホルダ54は、基板Zを、成膜面を下方に向けて所定位置に保持するものである。この基板ホルダ54にも、特に限定はなく、真空蒸着装置で利用されている各種の基板ホルダ(基板保持手段)が、全て利用可能である。なお、図示例の蒸着装置50においては、基板Zを固定した状態で成膜を行う。
蒸着装置50に用いられるルツボ58は、前述の本発明のルツボであり、前記排出口の一部が高い第1の条件、および、側壁(壁面)が傾斜する第2の条件の少なくとも一方を満たすものである。
また、ルツボ58は、成膜材料収容部の底面が水平(略水平)になるように、真空チャンバ52内の所定位置に設置される。言い換えれば、蒸着装置50は、ルツボ58の構成や形状に応じて、ルツボ58が適正に設置された状態において、底面が水平になるようにルツボ設置部が構成される。
本発明の第1の態様の真空蒸着装置(方法)は、本発明のルツボ58を複数用いる。図示例の蒸着装置50は、4つのルツボ58を用いる。
ここで、図10(B)に模式的に示すように、基板ホルダ54に保持された基板Zをルツボ設置面に鉛直方向に投影した際における、基板Zの中心を基準点Oとする。なお、基板Zの中心が容易に設定できない場合には、基板Zを内接する円を設定し、その円の中心を基準点Oとすればよい。
蒸着装置50では、好ましい態様として、この基準点Oを中心とする円Sの上に、ルツボ58を配置する。また、より好ましい態様として、4つのルツボ58を、この円S上に等角度間隔(すなわち90°間隔)で配置する。
また、前述のように、本発明のルツボ58は、蒸気流の指向性が鉛直方向ではなく、成膜材料蒸気の排出口の高さの上下方向や、排出口を形成する側壁の傾斜方向に応じて、蒸気流の指向性が斜め上方となる。
図示例の蒸着装置50は、より好ましい態様として、図中に矢印xで示すルツボ58からの蒸気流の水平方向への指向性(以下、指向性xともいう)が、基準点Oに向かうように配置される。言い換えれば、蒸気流の指向性が、基準点Oからの鉛直方向への延長線上に向かうように、ルツボ58を配置する。
蒸気流の指向性は、真空蒸着等において利用される公知の方法で検出すればよい。
なお、本発明のルツボは、一般的に、前記第1の条件を満たす場合には、排出口の最高位置から最低位置に向かう最短距離の方向に、水平方向への指向性を有し、前記第2の条件を満たす場合には、側壁の傾斜方向に、水平方向への指向性を有する。異なる方向に複数の方向に指向性を有する場合には、複数の指向性を合成した方向とすればよい。
好ましくは、水平方向への蒸気流の指向性が最も強い方向が基準点Oに向かうように、ルツボ58を配置する。
本発明の第1の態様にかかる蒸着装置50は、このような構成を有することにより、本発明のルツボが有する特性を十分に生かして、蒸気流の指向性を適正に制御して、成膜材料蒸気を基板Z(成膜領域)の全面に均一に曝すことが可能になり、膜厚均一性に優れる(膜厚分布の小さい)蒸着膜を成膜することを可能にしている。
また、ルツボ58の成膜材料の収容部の底面が水平であるので、成膜材料の液面面積の急変に起因する突沸も抑制でき、これに起因する蒸着膜の欠陥も好適に防止できる。
本発明の蒸着装置50において、ルツボ58の配置は、図10(B)に示される例に限定はされず、各種の方法が利用可能である。
例えば、図10に示す例(以下の各例、および、それ以外も含む)において、基準点Oに、通常の鉛直方向に蒸気流の指向性を有するルツボを配置してもよい。
別の例として、図11(A)に示すように、基準点Oを中心とする円S上に等間隔でルツボ58を位置し、かつ、蒸気流の指向性xが、基準点Oから放射状に外方向に向かうように、ルツボ58を配置してもよい。
また、図11(B)に示すように、図10(B)に示すルツボ58の配置と、図11(A)に示すルツボ58の配置とを組み合わせて、計8個のルツボ58を用いてもよい。
さらに、蒸気流の指向性xの方向を基準点Oを基準にする構成にも限定はされない。
例えば、図12(A)に示すように、基準点Oを中心とする円S上に等間隔でルツボ58を位置し、かつ、蒸気流の指向性xが、基板Zの各辺と平行で、かつ、一方向に回るように、ルツボ58を配置してもよい。
また、図12(A)に示す配置に、さらに、蒸気流の指向性xが逆方向のルツボ58の配置を組み合わせて、図12(B)に示すようなルツボ58の配置としてもよい。
以上の例は、ルツボ58の数が4個あるいは8個の例であるが、本発明の真空蒸着方法および真空蒸着装置において、ルツボ58の数は、これに限定はされず、複数であれば、2〜3個でも、5個以上であってもよい。
例えば、ルツボ58が2個の場合には、基準点Oを中心とする円上に、180°間隔で、蒸気流の指向性が、互いに向かうように、もしくは、互いと反対方向に向かうように、ルツボ58を配置するのが好ましい。また、ルツボ58が3個の場合には、基準点Oを中心とする円上に、120°間隔で、蒸気流の指向性が、基準点Oに向かうように、もしくは、基準点Oから放射状に外に向かうように、ルツボ58を配置するのが好ましい。
図13(A)に、本発明の真空蒸着方法の第2の態様を実施する、本発明の真空蒸着装置の第2の態様の一例の概略図を示す。
図示例の真空蒸着装置62も、前記本発明のルツボを用いて、基板Zに真空蒸着を行なうものである。なお、この真空蒸着装置62(以下、蒸着装置62とする)は、基板Zを回転する点、および、ルツボ58の配置が異なる以外は、基本的に、前記蒸着装置50と同様の構成を有するので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部位を中心に行なう。
蒸着装置62は、真空チャンバ52、基板ホルダ54、真空排気手段56、前述の本発明のルツボ58、および、基板回転手段64を有して構成される。
基板回転手段64は、基板ホルダ54を回転することにより、基板Zを回転するものであり、各種の真空蒸着装置に利用されている公知のものが、各種利用可能である。また、基板回転手段64は、一例として、基板Zの中心を回転中心とする。
蒸着装置62においては、図13(B)に模式的に示すように、ルツボ58は、基板Zの回転中心Or(その鉛直方向への延長線上)に、成膜材料収容部の底面を水平にして、配置される。
本発明においては、このような構成を有することにより、ルツボ58の配置を簡易にし、かつ、成膜材料の利用効率を向上することを可能にしている。
基板を回転する真空蒸着では、基板回転の半径方向の膜厚の均一性を確保するために、回転の半径方向に複数のルツボを配列する等、各種のルツボの配置が検討されるのが通常である。
そのため、ルツボの配置の決定に手間が掛かる。また、基板Zの回転領域の端部近傍に配置されたルツボからの成膜材料蒸気は、回転される基板Z以外の領域に到達してしまうものも多く、成膜材料の利用効率が低下してしまう。
これに対し、本発明においては、ルツボ58による蒸気流の指向性を利用して、ルツボ58を基板Zの回転中心Orに配置することで、基板Zの回転半径方向に蒸気流を流して、半径方向の全域に、好適に成膜材料の蒸気を行き渡らせることができる。
しかも、回転中心Orにルツボ58を配置するので、回転される基板Zを外れて外部の領域に到達する成膜材料蒸気の量を、大幅に低減でき、その結果、成膜材料の利用効率を、大幅に向上できる。
以上、本発明のルツボ、真空蒸着方法、および、真空蒸着装置について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
以下、本発明の具体的な実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。
[実施例1]
図10に示される蒸着装置50を用いて、480×480mmのアルミニウム製の基板Zに、セレンを蒸着した。
ルツボ58として、図1および図2に示すルツボ10と同様の形状を有するルツボを用いた。ルツボ58は、成膜材料収容部の底面のサイズが120×120mm、底面から蒸気排出口までの高さ(中心高さ)が100mm、対向する側壁の高さの違いによる角度αは5°のものとした。また、ルツボ58内に、K熱電対を固定して、底部および側壁上端部の温度を測定できるようにした。
このようなルツボ58を、570×570mmの正方形の各角部に1個ずつ、指向性xが基準点Oに向かうように配置した(計4個のルツボを配置)。ルツボ58と基板Zとの距離は、500mmとした。なお、ルツボ58を配置した570×570mmの正方形は、基板ホルダ54に保持された基板Zに対して、鉛直方向において中心を一致し、かつ、各辺が平行になるように設定した。
融点220℃のセレン(Se)ペレットを600g、各ルツボ58に投入し、さらに、基板ホルダ54に基板Zを装填して、真空チャンバ52を閉塞した。
次いで、真空ポンプ56を駆動し、成膜材料の加熱を開始して、基板Zへのセレン膜の蒸着を開始した。成膜は、真空度を3×10-3Paとし、ルツボ58の底部温度が265℃、側壁上端温度が270℃の一定となるとように、加熱をフィードバック制御して行なった。なお、成膜材料の加熱は、シースヒータによる間接加熱によって行なった。
セレン膜の膜厚が200μmとなった時点で、成膜材料の加熱を停止し、所定時間が経過した後、真空ポンプ56も停止して、真空チャンバ52を大気開放して、セレンを成膜した基板Zを取り出した。
なお、セレン膜の膜厚は、予め実験で調べた成膜レートに応じて制御した。
[実施例2]
ルツボ58として、図6に示すルツボ34と同様の構成を有する物を用いた以外は、前記実施例1と全く同様にして、基板Zにセレン膜を成膜した。
本例においては、成膜材料収容部の底面のサイズが120×120mm、底面から蒸気排出口までの高さが100mmの四角柱状のルツボを用い、このルツボを、脚部38によって下面の1辺を軸に傾斜角βを10°で傾斜させて、ルツボ58とした。また、このルツボ58は、ルツボ34と同様に、この10°の傾斜角βに応じて、成膜材料収容部の底面を水平とする充填部42を有する。
[比較例1]
実施例2で用いた四角柱状のルツボ(充填部無し)を、傾斜させずに用いた以外は、実施例2と全く同様にして、基板Zにセレン膜を成膜した。
[比較例2]
実施例2で使用したルツボ58から、底面を水平にするための充填部を取り除いた以外(すなわち、図14に示すように、通常の四角柱状のルツボを実施例2と同様に傾斜させた以外)は、実施例2と全く同様にして、基板Zにセレン膜を成膜した。
実施例1および2、ならびに、比較例1および2によって得られたセレン膜について、膜厚均一性および欠陥数を調べた。
膜厚均一性は、うず電流変位計を用い、480×480mmの基板Zの表面に形成したセレン膜の膜厚を測定することで調べた。
膜厚分布が、目標膜厚200μmの±5%以下であれば「○」、±5%超である場合には「×」と評価した。実施例1の膜厚分布は±3.4%、実施例2の膜厚分布は±4.1%、比較例1の膜厚分布は±10.2%、比較例2の膜厚分布は±4.1%であった。
欠陥数は、デジタルマイクロスコープを用いて、欠陥サイズと欠陥数を測定することで調べた。
100μm以上の欠陥が0の場合を「○」、100μm以上の欠陥が1つでも有った場合は「×」と評価した。
結果を、下記表1に示す。
Figure 0004916472
上記表1に示されるように、従来の真空蒸着である比較例1および比較例2では、膜厚均一性および欠陥数の何れかが劣る蒸着膜となってしまうが、本発明の真空蒸着である実施例1および実施例2では、膜厚均一性および欠陥数共に、優れた特性を有する蒸着膜が形成できている。
以上の結果より、本発明の効果は、明らかである。
本発明のルツボの一例を概略斜視図である。 (A)は、図1に示すルツボの概略平面図、(B)は、同概略正面図である。 図1に示すルツボによる蒸着膜の一例の膜厚分布を示すグラフである。 (A)は、本発明のルツボの別の例の概略平面図、(B)は、同概略正面である。 本発明のルツボの別の例の概略正面図である。 (A)は、本発明のルツボの別の例の概略平面図、(B)は、同概略正面である。 図6に示すルツボによる蒸着膜の一例の膜厚分布を示すグラフである。 本発明のルツボの別の例の概略正面図である。 本発明のルツボの別の例の概略正面図である。 (A)は、本発明の真空蒸着装置の第1の態様の一例の概略図、(B)は、この真空蒸着装置におけるルツボの配置を説明するための図である。 (A)および(B)は、図10(A)に示す真空蒸着装置におけるルツボの配置の別の例を説明するための図である。 (A)および(B)は、図10(A)に示す真空蒸着装置におけるルツボの配置の別の例を説明するための図である。 (A)は、本発明の真空蒸着装置の第2の態様の一例の概略図、(B)は、この真空蒸着装置におけるルツボの配置を説明するための図である。 従来の真空蒸着用のルツボの一例の概念図である。
符号の説明
10,24,34,58 ルツボ
12a,12b,16a,16b,26a,26b,32a,32b 側壁
14,30,40 底面
18,28、36 収容部
20 柱部
38 脚部
42 充填部
50,62 (真空)蒸着装置
52 真空チャンバ
54 基板ホルダ
56 真空排気手段
64 基板回転手段

Claims (6)

  1. 成膜材料の収容部を有するルツボ本体と、
    真空蒸着装置に装填された前記ルツボ本体を傾けることにより、前記ルツボ本体の成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件を満たさせる脚部とを有し、
    さらに、前記収容部は、下部に、前記真空蒸着装置に装填された状態で底面を水平とするための、前記脚部によるルツボ本体の傾斜角に応じた充填部を有することを特徴とするルツボ。
  2. 真空チャンバと、
    前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、
    基板を保持する基板ホルダと、
    成膜材料の収容部を有するルツボ本体、ならびに、真空蒸着装置に装填された前記ルツボ本体を傾けることにより、前記ルツボ本体の成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件を満たさせる脚部を有し、さらに、前記収容部が、下部に、前記真空蒸着装置に装填された状態で底面を水平とするための、前記脚部によるルツボ本体の傾斜角に応じた充填部を有する、複数のルツボと、
    前記ルツボを前記収容部の底面が水平になるように設置する設置部と、
    前記ルツボに収容した成膜材料を加熱する加熱手段とを有することを特徴とする真空蒸着装置。
  3. 前記基板ホルダが前記基板を保持した状態で、基板を鉛直方向に投影した際における基板の中心を基準点として、前記ルツボが、この基準点を中心とする円上に均等な間隔で配置される請求項2に記載の真空蒸着装置。
  4. 前記ルツボからの蒸気流の指向性が前記基準点に向かうように、もしくは、前記ルツボからの蒸気流の指向性が前記基準点から放射状に外方向に向かうように、前記ルツホが配置される請求項3に記載の真空蒸着装置。
  5. 真空チャンバと、
    前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、
    基板を保持する基板ホルダと、
    前記基板ホルダを回転する回転手段と、
    成膜材料の収容部を有するルツボ本体、ならびに、真空蒸着装置に装填された前記ルツボ本体を傾けることにより、前記ルツボ本体の成膜材料蒸気の排出口の少なくとも一部が他の部分よりも高い第1の条件、および、成膜材料蒸気の排出口を形成する壁面の少なくとも一部が傾斜する第2の条件を満たさせる脚部を有し、さらに、前記収容部が、下部に、前記真空蒸着装置に装填された状態で底面を水平とするための、前記脚部によるルツボ本体の傾斜角に応じた充填部を有するルツボと、
    前記ルツボを前記収容部の底面が水平になるように設置する設置部と、
    前記ルツボに収容した成膜材料を加熱する加熱手段とを有することを特徴とする真空蒸着装置。
  6. 前記ルツボが、前記基板の回転中心下部に配置される請求項5に記載の真空蒸着装置。
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