JP4874851B2 - 真空成膜装置 - Google Patents

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Description

本発明は、真空蒸着装置などの真空成膜装置に関し、厚膜の成膜を行なう場合でも、真空チャンバの内壁等の不要な位置への成膜材料の膜の付着を、好適に防止できる真空成膜装置に関する。
従来より、医療用の診断画像の撮影や工業用の非破壊検査などに、被写体を透過した放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を電気的な信号として取り出すことにより放射線画像を撮影する、放射線画像検出器が利用されている。
この放射線画像検出器としては、放射線を電気的な画像信号として取り出す放射線固体検出器(いわゆる「Flat Panel Detector」 以下、FPDとする)や、放射線像を可視像として取り出すX線イメージ管などがある。
また、FPDには、アモルファスセレン等の光導電膜とTFT(Thin Film Transistor)等を用い、放射線の入射によって光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集してTFTによって電化信号として読み出す、いわば放射線を直接的に電気信号に変換する直接方式と、放射線の入射によって発光(蛍光)する蛍光体で形成された蛍光体層(シンチレータ層)を有し、この蛍光体層によって放射線を可視光に変換し、この可視光を光電変換素子で読み出す、いわば放射線を可視光として電気信号に変換する間接方式との、2つの方式がある。
また、直接方式のFPDにおいて、アモルファスセレンなどの光導電膜は、真空蒸着等の真空成膜法によって形成される。
ところで、真空蒸着では、成膜材料の蒸気が、真空チャンバの内壁や基板を保持する基板保持手段等に接触して、膜が付着してしまう。このような、基板以外に付着した膜は、多量に堆積すると、パーティクル(小片)となって、成膜した蒸着膜や基板等に付着し、また、成膜される蒸着膜に混入することがあり、品質悪化の原因となる。
そのため、真空蒸着装置においては、特許文献1に示されるように、不要な領域に蒸発蒸気が至ることを防止するための防着板や、特許文献2等に示されるように、真空チャンバの内壁を囲む防着板や基板キャリアへの膜の付着を防止する防着板を設け、真空チャンバの内壁や基板保持手段(基板キャリア)など、真空蒸着装置の各部位に不要に成膜されることを防止している。
また、防着板は、真空蒸着装置(真空チャンバ内)に着脱可能に構成され、成膜を終了した後、保守作業として、防着板を装置から取り外して洗浄し、また、洗浄済の防着板を装置に装填することにより、防着板への膜の多量な堆積を防止して、前述のようなパーティクルに起因する品質悪化を防止している。
特開平5−70931号公報 特開2001−316797号公報
前述のように、直接方式のFPDの光導電膜は、真空蒸着等によって形成される。ここで、この光導電膜は、薄いものでも200μm、厚くなると1000μmもの厚さを有する場合も有る。
このような厚膜を真空蒸着によって成膜すと、図5に模式的に示すように、防着板100を設けても、蒸発源102から蒸発し、基板Sに至らなかった蒸気が、防着板100を超えて回り込んでしまい、基板ホルダ106の裏面や、真空チャンバ108の内壁に付着し、堆積してしまう。
特許文献2に示されるように、防着板を真空チャンバの内壁面に密着させることにより、真空チャンバの内壁への膜の付着は、防止できる。
しかしながら、このような構成とすると、装置構成によっては、防着板の着脱に手間がかかり、保守作業の作業性が悪化してしまう。また、この構成では、基板が大型化して、装置が大型になると、防着板のサイズも非常に大きくなり、防着板のコストすなわち真空蒸着装置のコストも向上し、さらに、防着板の清掃作業にも時間がかかるため、装置の保守作業にかかるコストも増大してしまう。
しかも、この構成でも、基板保持手段(基板キャリア)の裏面に回り込む蒸気による成膜材料の付着は、防止することができない。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、真空チャンバ内壁等の不要な領域への膜の付着を防止する防着板を有する真空蒸着装置において、直接方式のFPDの光導電層のように、200〜1000μm程度の厚い膜を成膜する際にも、成膜材料の蒸気が防着板を超えて回り込むことを防止して、真空チャンバの内壁や基板保持手段の裏面に膜が付着してしまうことを防止し、かつ、防着板の大型化等も防止して、良好な保守作業性も確保することができ、装置のコストアップや保守作業のコストアップも押さえることができる真空成膜装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の真空成膜装置は、真空成膜法によって基板に成膜を行なう真空成膜装置であって、前記基板を保持する基板保持手段、装置内の不要な位置への膜の付着を防止する防着部材、および、前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材とを接触させる接触手段を有することを特徴とする真空成膜装置を提供する。
このような本発明の真空成膜装置において、前記接触手段は、前記基板あるいはさらに前記基板保持手段を前記防着部材方向に移動することにより、前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材と接触させるのが好ましく、また、前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材との接触部に弾性体が設けられるのが好ましく、また、前記防着部材が、前記基板もしくは基板保持手段と接触する第1部材と、前記第1部材を挿入する、もしくは、前記第1部材に挿入される第2部材とを有するのが好ましく、この際において、前記基板の回転手段を有するのが好ましく、また、前記防着部材が、基板への成膜領域を規制するマスクを兼ねるのが好ましく、さらに、前記基板の搬送機構を有するのが好ましく、この際において、前記基板保持手段が、防着部材に接離するように移動する保持手段本体と、前記保持手段本体に着脱自在な、前記基板を保持する基板ホルダとから構成され、前記搬送機構は、前記基板ホルダを搬送することにより、前記基板を搬送するものであり、かつ、基板保持手段は、前記基板ホルダを前記保持手段本体に自動着脱する着脱機構を有するのが好ましい。
上記構成を有する本発明によれば、防着板等の防着部材と、基板保持手段もしくは基板とを接触(略接触を含む)させることにより、成膜材料の蒸気が流れる空間の上面を基板や基板保持手段で閉塞して、防着部材と基板保持手段などによって、蒸発源を含み、基板を内包し、基板の成膜面が対面する略気密空間を生成することができる。
そのため、本発明によれば、直接方式のFPDの光導電層のように、200〜1000μm程度の厚い膜を成膜する場合であっても、成膜材料の蒸気が防着部材を超えて回り込み、真空チャンバの内壁や基板保持手段の裏面に膜が付着することを防止できる。また、防着部材も小型化できるので、良好な保守作業性も確保することができ、かつ、装置のコストアップや保守作業のコストアップも押さえることができる。
以下、本発明の真空成膜装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に、本発明の真空成膜装置を真空蒸着装置に利用した一例の模式図に示す。
図1に示すように、真空成膜装置10(以下、成膜装置10とする)は、真空チャンバ12と、基板保持手段14と、回転・昇降手段16と、蒸発源18と、真空ポンプ20と、バルブ22と、排気経路24と、防着板26とを有して構成される。
なお、本発明の成膜装置10は、図示した部材以外にも、アルゴンなどの不活性ガス等の各種のガスを真空チャンバ12内に導入するためのガス導入手段、蒸発源18からの蒸発蒸気を遮蔽するためのシャッタ等、公知の真空蒸着装置が有する各種の部材を有してもよいのは、もちろんである。
このような成膜装置10は、真空蒸着によって基板Sの表面に成膜を行なうものであり、通常の真空蒸着装置と同様に、真空チャンバ12内を減圧して、蒸発源18に収容した成膜材料を加熱溶融して蒸発させることにより、基板保持手段14が保持した基板Sの表面に、成膜材料を成膜するものである。
本発明において、使用する基板Sには、特に限定はなく、ガラス板、プラスチック(樹脂)製のフィルムや板、金属板等、製造する製品に応じたものを用いればよい。
また、基板Sに成膜(形成)する膜にも、特に限定はなく、真空蒸着によって成膜可能なものが、全て利用可能である。
ここで、後に詳述するが、本発明の真空成膜装置は、防着板26と基板保持手段14(あるいは基板S)とを接触した状態で成膜を行なうので、成膜材料の蒸気(蒸発流)が防着板26を超えて回り込んで、真空チャンバ12の内壁や基板保持手段14の裏面(基板保持側と逆面=上面)に膜が付着する(成膜材料の蒸気が接触し、膜が付着/堆積する)ことを、好適に防止できる。
そのため、本発明は、厚膜の成膜には特に好適であり、特に200〜1000μm程度の膜厚が必要な、直接方式の放射線画像検出器(フラットパネル検出器(FPD(Flat Panel Detector))の光導電層の成膜には好適である。中でも特に、成膜材料であるセレンが低い温度で蒸発して、回り込みによる真空チャンバ内壁や基板保持手段裏面への膜の付着が起こり易い等の点で、FPDの光導電層となるアモルファスセレンの成膜には、好適に利用される。
また、本発明の真空成膜装置をFPDの製造に利用する場合には、アモルファスセレン等の光導電膜とTFT(Thin Film Transistor)等を用い、放射線の入射によって光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集して、TFTのスイッチングを行なった個所から電流として感知することで放射線画像を得る、電気読取方式のFPDの製造でもよく、また、アモルファスセレン化合物等から形成される記録用光導電層および読取用光導電層と、両導電層の間に形成されるAs2Se3等から形成される電荷蓄積層とを有し、放射線の照射によって潜像電荷を蓄積し、読取光の照射によって潜像電荷を流して電流として感知することで放射線画像を得る、光読取方式のFPDの製造でもよい。
成膜装置10において、真空チャンバ12は、鉄、ステンレス、アルミニウム等で形成される、真空蒸着装置で利用される公知の真空チャンバ(ベルジャー、真空槽)である。
真空ポンプ20は、排気経路24から真空チャンバ12内を排気して、真空チャンバ12内を減圧する(真空にする)ものである。また、バルブ22は、排気経路24を気密に閉塞し、また、真空ポンプ20からの排気量を調整する、公知のバルブである。なお、本発明において、真空ポンプは、油拡散ポンプ、クライオポンプ、ターボモレキュラポンプ等の公知のものである。また、補助として、クライオコイル等を併用してもよい。
蒸発源18も、成膜材料を収容し、加熱/溶融する、真空蒸着装置に用いられる公知の蒸発源である。
従って、蒸発源18には、特に限定はなく、抵抗加熱によるものでも、電子線(EB)加熱によるものでも、誘導加熱によるものでも、成膜する膜や成膜条件等に応じて、好適なものを、適宜、選択して用いればよい。
なお、成膜装置10が有する蒸発源18は、1個に限定はされず、複数の蒸発源18を有してもよく、また、成膜装置10は、互いに異なる成膜材料を収容する複数の蒸発源18によって、多元の真空蒸着を行なうものであってもよい。
基板保持手段14は、基板ホルダ30と、基板プレート32と、回転軸34とから構成される。
基板ホルダ30は、基板Sにおける成膜領域を蒸発源18に向けて開放した状態で、基板Sを収容/保持するものである。基板ホルダ30としては、基板Sの四辺を保持する枠体、成膜領域に対応する部分が開放する基板Sを収容する筐体等、真空蒸着装置等の真空成膜装置で利用されている各種の基板ホルダが全て利用可能である。また、基板ホルダ30が、基板Sの成膜面における成膜領域を規制するマスクを兼ねてもよく、あるいは、別途、マスクを設けてもよい。
図示例において、基板ホルダ30は、嵌合や係合部材を用いる方法等、公知の手段で、基板プレート32の所定の位置に着脱可能にされる。また、基板プレート32は、円盤状の部材で、裏面側において円筒状の回転軸34の下端に固定されている。さらに、この回転軸34は、回転・昇降手段16によって軸支されている。
すなわち、図示例の成膜装置10において、基板Sは、基板ホルダ30に収容されて、この基板ホルダ30が基板プレート32に装着されることにより、成膜装置10の所定位置に装填され、真空蒸着による成膜に供される。
なお、図示例においては、回転軸34(回転中心)と基板プレート32とは、互いの中心を一致して固定され、さらに、基板プレート32は、基板Sの中心と自身の中心とが一致するように、基板ホルダ30を装着する。
成膜装置10において、基板プレート32の下面には、基板ホルダ30に収容した基板Sを加熱するための加熱手段や、加熱手段による熱をムラなく均一に基板Sに伝えるための熱伝導性シート等が設けられてもよい。
さらに、基板ホルダ30の内面にも、基板Sの裏面(成膜面の逆面)に密着して、基板プレート32が有する加熱手段による熱をムラなく均一に基板Sに伝えるための熱伝導性シート等が設けられてもよい。
前述のように、基板プレート32は、裏面において回転軸34に固定され、この回転軸34は、回転・昇降手段16に軸支されている。
回転・昇降手段16は、回転軸34を、その中心線を中心に回転し、さらに、回転軸34を、その軸線方向に移動する。なお、回転・昇降手段16による回転軸34の回転方法および昇降方法は、公知の方法によればよい。
前述のように、回転軸34の下端には、基板プレート32が固定され、この基板プレート32には、基板Sを収容する基板ホルダ30が装着されている。
従って、基板ホルダ30すなわち基板Sは、この回転・昇降手段16によって回転される。また、基板ホルダ30は、かつ、この回転・昇降手段16によって昇降(後述する防着板26(その上面)に対して接離)され、防着板26の上面に配置された弾性部材42に接触/離間される。
防着板26は、蒸発源18から蒸発した成膜材料が装置内の不要な位置に接触し、この不要な位置に膜が付着するのを防止するための、防着部材である。なお、装置内の不要な位置とは、基本的に、基板Sの表面(成膜面)以外の位置であり、例えば、真空チャンバ12の内壁面や基板保持手段14(図示例においては基板プレート32)の裏面、排気経路24の内面などである。
また、成膜装置10においては、必要に応じて、この防着板26以外の防着部材を有してもよい。
図示例において、防着板26は、上側(基板保持手段14側)の第1防着板38と、下側の第2防着板40と、弾性部材42とを有する。
第1防着板38は、下面が開放する円筒状の部材であり、上面には円形の開口38aが形成されている。
第1防着板38は、真空チャンバ12内の所定位置に、自身の中心線を回転軸34の回転中心とを一致して、着脱自在に装着される。また、第1防着板38は、真空チャンバ12内の所定位置に装着された際には、公知の手段によって、自身の中心線を中心に回転自在に保持される。
第1防着板38の上面に形成される円形の開口38も、その中心を回転軸34の回転中心とを一致して形成され、その大きさは、基板ホルダ30に収容された基板Sを内包し、かつ、基板ホルダ30の下面に内包されるサイズである。
また、第1防着板38の上面には、開口の端部で開口38aを囲むように、弾性部材42が配置される。
弾性部材42は、後述する基板ホルダ30との接触時に、基板ホルダ30と略気密状態を保って密着できる程度の弾性を有し、かつ、耐熱性などの要求される特性を満たす材料で形成すればよく、例えば、シリコンゴムやフッ素ゴム等で形成すればよい。
他方、第2防着板40は、上面が開放して下面が閉塞する円筒状の部材で、第1防着板38を挿入できる内径を有する。
第2防着板40は、自身の中心線と回転軸34の回転中心(すなわち、第1防着板38の中心)とを一致して、真空チャンバ12内の所定位置に、着脱自在に装着される。また、所定位置に装着された時点では、第2防着板40は、蒸発源18を収容し、かつ、第1防着板38を挿入する。
以下、成膜装置10の作用を説明する。
図示例の成膜装置10において、最初は、図1(A)に示すように、回転・昇降手段16は、回転軸34すなわち基板プレート32を上方(防着板26の第1防着板38から離間する方向)に移動した状態とする。
この状態で、基板Sを収容する基板ホルダ30を基板プレート32の所定位置に装填して、かつ、蒸発源18に成膜材料を充填して、真空チャンバ12を閉塞する。その後、真空ポンプ20を駆動して、バルブ22を開放し、真空チャンバ12の減圧を開始し、さらに、蒸発源18によって、成膜材料の加熱を開始する。
なお、成膜材料の加熱開始のタイミングは、これに限定はされず、後述する基板ホルダ30の降下と同時あるいはその後、減圧開始から後述する基板ホルダ30の降下までの間等、成膜材料の融点や、蒸発源の加熱能力等に応じて、適宜、設定すればよい。
真空チャンバ12内が所定の真空度となった時点で、回転・昇降手段16が、回転軸34すなわち基板プレート32を降下させ、図1(B)に示すように、基板プレート32に装着された基板ホルダ30と、弾性部材42とを接触させる。
この際において、第1防着板38と基板保持手段14とは、互いに係合する凹凸や係合部材などによって、少なくとも回転方向には一体的に動くように互いに係合する。あるいは、基板ホルダ30を弾性部材42に押圧することにより、第1防着板38と基板保持手段14とが少なくとも回転方向には一体的に動くようにしてもよい。
次いで、回転・昇降手段16は回転軸34を回転する。これによって、基板ホルダ30すなわち基板Sも、自身の中心を中心に回転し、さらに、第1防着板38も回転する。
さらに、シャッタ等を開放して、基板Sヘの成膜を開始する。
基板Sに、所定膜厚の膜が成膜されると、蒸発源18は、成膜材料の加熱を中止し、回転・昇降手段16は、回転軸34すなわち基板Sの回転を停止し、さらに、回転軸34を上昇する。
その後、真空チャンバ12が大気開放され、成膜を終了した基板Sを収容する基板ホルダ30が基板プレート32から取り外され、次の工程に供給される。
前述のように、第1防着板38上面の開口38aは、基板Sを内包し、かつ、基板ホルダ30の下面に内包されるサイズで、かつ、開口38aの中心、基板Sの中心、および回転軸34の回転中心は一致している。さらに、第2防着板40内には蒸発源が収容され、第1防着板38は第2防着板40に挿入される。
すなわち、基板ホルダ30を降下して第1防着板38の上面に接触させることにより、図1(B)に示すように、防着板26および基板ホルダ30(あるいはさらに基板プレート32)によって、基板Sの近傍において、基板Sを内包して成膜面が対面している略気密空間を形成した状態で、真空蒸着によって基板Sに成膜を行なうことができる。
従って、本発明によれば、FPDの光導電層の成膜のように、200〜1000μmの厚膜を形成する場合であっても、また、セレンのように蒸発し易い成膜材料を用いる場合であっても、成膜材料の蒸気が防着板26を超えて回り込み、真空チャンバ12の内壁や、基板保持手段(図示例においては基板プレート32)の裏面等に膜が付着することを、好適に防止できる。
しかも、防着板26と基板ホルダ30(あるいはさらに基板プレート32)とによって、基板Sの近傍で、基板Sの成膜面が対面している略気密空間を形成するので、防着部材の大型化も抑制でき、良好な保守作業性も確保することができ、かつ、装置のコストアップや保守作業のコストアップも押さえることができる。
また、図示例においては、防着板26を、第1防着板38と、第1防着板38を挿入する第2防着板40とからなる2重構造とし、かつ、第1防着板38を回転可能にすることにより、第1防着板38の弾性部材42と基板ホルダ30とが接触して略密閉空間を形成しているにも関わらず、基板Sを回転して蒸着を行なうことができる。
図示例の成膜装置10においては、第1防着板38と第2防着板40との間隙が小さい程、良好な真空チャンバ12の内壁等への膜の付着防止効果を得られる。従って、第1防着板38の回転を円滑に行なうことができ、かつ、防着板26が形成する略気密空間からの真空ポンプ20による排気を妨げない範囲で、第1防着板38と第2防着板40との間隙は小さくするのが好ましい。
また、第2防着板40への第1防着板38の挿入量(第1防着板38と第2防着板40との重ね合わせ量)が長い程、良好な真空チャンバ12の内壁等への膜の付着防止効果を得られるので、この挿入量も、可能な範囲で長くするのが好ましい。
なお、図示例においては、基板ホルダ30に接触する第1防着板38が、第2防着板40に挿入される構成を有するが、本発明は、これに限定はされず、逆に、基板ホルダ30に接触する第1防着板38が、第2防着板40を挿入する構成であってもよい。
図1に示す成膜装置10は、基板Sを回転する機能を有するものであるが、本発明は、これに限定はされず、基板Sを固定した状態で成膜を行なうものであってもよい。
図2に、その一例を示す。なお、図2に示す成膜装置50は、多くの部材を図1に示す成膜装置10と共有するので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部位を主に行なう。
図2に示す成膜装置50は、防着板26を第1防着板38および第2防着板40の2つの部材で形成するのではなく、防着板52は1つの部材のみで構成される。なお、成膜装置50においても、必要に応じて、この防着板52以外の防着部材を有してもよい。
防着板52は、下が閉塞する筒状(円筒でも角筒でもよい)のものであり、上面には、前記開口38aと同様に、基板Sを内包可能で、かつ、基板ホルダ30に内包されるサイズの開口52aを有する。また、防着板52の上面の開口50a周辺には、弾性部材42が配置される。
この防着部材52は、真空チャンバ12内の所定位置に着脱可能にされ、かつ、真空チャンバ12内に装着された状態では、固定される。
基板Sを回転しない成膜装置50においては、回転軸56に変えて、軸56の下端に基板プレート32が固定され、回転・昇降手段16に変えて、軸56の昇降のみを行なう昇降手段54が設けられる。
また、防着部材52は、基板プレート32に装着された基板ホルダ30に収容される基板Sが、上下方向(軸56の昇降方向)において開口52a内となる位置に装着される。
従って、この成膜装置50においても、図2(A)に示す状態から、図2(B)に示すように、軸56すなわち基板ホルダ30を降下して、弾性部材42と基板ホルダ30とを接触させることにより、前記成膜装置50と同様に、防着板52と基板ホルダ30(あるいはさらに基板プレート32)とによって、基板Sの近傍において、基板Sを内包して成膜面が対面している略気密空間を形成した状態で、真空蒸着によって基板Sに成膜を行なうことができる。従って、成膜材料の蒸気が防着板52を超えて回り込み、基板プレート32の裏面や真空チャンバ12の内壁等に膜が付着することを防止できる。
上述の成膜装置10および成膜装置50においては、弾性部材42を基板ホルダ30に接触させたが、本発明は、これに限定はされず、前記略気密空間を形成するように弾性部材42を基板ホルダ30に近接させる、略接触も含む。さらに、弾性部材42を有さず、第1防着板38と基板ホルダ30とを接触もしくは略接触させて、前記略気密空間を形成するようにしてもよい。
さらに、基板ホルダ30と防着板(防着部材)とを略接触させる構成として、図3に成膜装置10の防着板26を例示して模式的に示すように、基板ホルダ30の下面に基板Sを囲むように壁部64を形成し、第1防着板38の上端に、この壁部64を挿入する凹部68を形成して、壁部64を凹部68に挿入することにより、第1防着板38と基板ホルダ30とを略接触させて、前記略気密空間を形成する構成も、利用可能である。
なお、以上の例においては、いずれも、基板ホルダ30と防着板26や防着板52(防着部材)とを接触あるいは略接触させているが、本発明は、これに限定はされず、基板ホルダ30が装着される基板プレート32と、防着板26や防着板52とを接触あるいは略接触させて、前記略気密空間を形成してもいい。
さらに、基板ホルダ30や基板プレート32ではなく、基板Sに防着板26や防着板52を接触あるいは略接触させてもよく、この際においては、防着板(防着部材)を、基板S上における成膜領域を規制するためのマスクとして作用させてもよい。さらに、基板Sと防着板とを接触(あるいは略接触)させる場合には、基板Sのみを移動して、防着板と基板Sとを接触/離間する構成であってもよい。
このような本発明の真空成膜装置は、基板S(基板ホルダ30)の搬送手段を有してもよく、また、搬送手段を有する本発明の真空成膜装置を、複数、連接して、1つの基板Sに複数層の膜を成膜するインライン方式の成膜装置を構成してもよい。
図4に、このようなインライン方式の成膜装置の一例の模式図を示す。
このインライン方式の成膜装置70(以下、インライン装置70とする)は、前述の図1に示す(真空)成膜装置10を応用して構成したものであり、基板仕込み室72(以下、仕込み室72とする)と、第1成膜室74a、第2成膜室74b、……との複数の成膜室74とを有して構成される。各成膜質は、前記成膜装置10を応用して構成されるものであり、いずれも同じ構成を有する。
仕込み室72および各成膜室74の間には、シャッタ76が設けられ、シャッタ76の開閉によって、各室が連通され、また、気密に遮蔽される。
また、各部屋には、複数の搬送ローラ77が設けられている。
図示例のインライン装置70においても、基板Sは、基板ホルダ30に収容されて、成膜に供される。仕込み室72は、載置手段78によって基板ホルダ30を搬送キャリア80に載置するものである。
また、載置手段78は、一例として、フック78aの下端を基板ホルダ30の下方に挿入して、基板ホルダ30を下から支えて保持し、搬送キャリア80に載置する。
搬送キャリア80は、本体80aと、本体80aおよび基板ホルダ30よりも小さい載置部80bとを有するものであり、基板ホルダ30は、載置手段78によって、載置部80bに載置される。
搬送キャリア80は、搬送ローラ77によって移動されるものであり、すなわち、基板ホルダ30(基板S)は、搬送キャリア80に載置されて、搬送ローラ77によって各成膜室74に移動される。
図示例において、成膜室74の真空チャンバ12は、成膜部12a、基板保持部12bおよび搬送部12cの3つのチャンバから構成される。真空ポンプ20は、バルブ22を介して搬送部12cに接続される。すなわち、図示例の成膜室74においては、搬送部12aが、前記排気経路24の作用を成す。
成膜部12aには、前述の防着板26(第1防着板38の上端部は搬送部12bに位置する)および蒸発源18が配置される。また、基板保持部12bには、前述の基板保持手段14(基板ホルダ30を除く)および回転・昇降手段16、ならびに搬送ローラ77が配置される。
また、成膜室74においては、基板保持手段14の基板プレート32が、先のフック78aと同様のフック32aを有する。この基板プレート32は、先の仕込み室72の載置手段78と同様に、フック78aの下端を基板ホルダ30の下に挿入し、下から支えて基板ホルダ30を保持する。
なお、基板プレート32(および載置手段78)による基板ホルダ30の保持は、フック32aによる把持に限定はされず、公知の各種の方法が利用可能である。
以下、インライン装置70の作用を説明する。
図示例のインライン装置70において、仕込み室72の所定位置に基板ホルダ30が供給されると、載置手段78が、フック78aで基板ホルダ30を保持して、所定位置に配置された搬送キャリア80に基板ホルダ30を載置する。
仕込み室72において、搬送キャリア80に基板ホルダ30が載置されると、必要なシャッタ76が開放して、搬送ローラ77が、搬送キャリア80を成膜室74(例えば第1成膜室74a)に搬送する。
基板ホルダ30を載置した搬送キャリア80の搬送は、基板保持部12bの基板保持手段14の下部の所定位置で停止する。
搬送キャリア80が停止すると、回転・昇降手段16が回転軸34すなわち基板プレート32を降下する。基板プレート32は、所定位置まで降下すると、フック32aによって基板ホルダ30を保持する。基板保持手段32が基板ホルダ30を保持すると、回転・昇降手段16が回転軸34を上昇して、搬送キャリア80から基板ホルダ30を持ち上げ、さらに、搬送ローラ77が搬送キャリア80を逆方向に搬送し、仕込み室72に戻し、シャッタ76を閉塞する。
シャッタ76が閉塞すると、前述の成膜装置10と同様にして、真空チャンバ内の排気および成膜材料の加熱を開始し、所定の真空度となった時点で、回転・昇降手段16が回転軸34すなわち基板ホルダ30を降下して、防着板26と基板ホルダ30とによって前記略気密空間を形成した状態で真空蒸着によって基板Sに成膜を行なう。
基板Sに、所定膜厚の膜が成膜されると、蒸発源18は、成膜材料の加熱を中止し、回転・昇降手段16は、回転軸34すなわち基板Sの回転を停止し、さらに、回転軸34を上昇する。
次いで、成膜室74を大気開放(あるいは所定圧に調整)したら、必要なシャッタ76を開放して、搬送ローラ対77が基板キャリア80を、基板保持部12bの基板保持手段14の下部の所定位置まで搬送する。
その後、回転・昇降手段16は、回転軸34すなわち基板ホルダ30を降下し、所定位置まで降下した時点で、基板プレート32がフック32aによる保持を開放して、基板キャリア80の載置部80bに基板ホルダ30を載置する。
基板キャリア80に基板ホルダ30が載置されると、搬送ローラ77が、次の成膜室74に基板ホルダ30を搬送し、以下、同様にして、次層の成膜が行なわれる。
以上、本発明の真空成膜装置について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
例えば、以上の例は、本発明を真空蒸着装置に利用した例であるが、本発明は、これに限定はされず、スパッタリング装置、CVD装置等、各種の真空成膜装置(気相堆積法による成膜装置)に利用可能である。
(A)および(B)は、本発明の真空成膜装置を真空蒸着装置に利用した一例の模式図である。 (A)および(B)は、本発明の真空成膜装置を真空蒸着装置に利用した別の例の模式図である。 本発明の真空成膜装置における基板ホルダと防着部材との略接触状態の一例の模式図である。 図1に示す真空成膜装置を応用するインライン方式の成膜装置の一例の模式図である。 防着板を超えた成膜材料蒸気の回り込みを説明するための概念図である。
符号の説明
10、50 (真空)成膜装置
12 真空チャンバ
14 基板保持手段
16 回転・昇降手段
18 蒸発源
20 真空ポンプ
22 バルブ
24 排気経路
26,52 防着板
30 基板ホルダ
32 基板プレート
34 回転軸
38 第1防着板
40 第2防着板
42 弾性部材
54 昇降手段
56 軸
64 壁部
68 凹部
70 インライン装置(インライン方式の成膜装置)
72 仕込み室
74 成膜室
76 シャッタ
77 搬送ローラ
78 載置手段
80 基板キャリア

Claims (8)

  1. 真空成膜法によって基板に成膜を行なう真空成膜装置であって、
    前記基板を保持する基板保持手段、蒸発源、装置内の不要な位置への膜の付着を防止する、前記蒸発源を内包して配置される筒状の防着部材、および、前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材とが離間している状態から、前記基板あるいはさらに基板ホルダを移動して、前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材とを接触もしくは略接触させることにより、前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材とで、前記基板の成膜面および蒸発源を含む略気密空間を形成する接触手段を有することを特徴とする真空成膜装置。
  2. 前記接触手段は、前記基板あるいはさらに前記基板保持手段を前記防着部材方向に移動することにより、前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材と接触もしくは略接触させる請求項1に記載の真空成膜装置。
  3. 前記基板もしくは基板保持手段と前記防着部材との接触部に弾性体が設けられる請求項1または2に記載の真空成膜装置。
  4. 前記防着部材が、前記基板もしくは基板保持手段と接触もしくは略接触する第1部材と、前記第1部材を挿入する、もしくは、前記第1部材に挿入される第2部材とを有する請求項1〜3のいずれかに記載の真空成膜装置。
  5. 前記基板の回転手段を有する請求項4に記載の真空成膜装置。
  6. 前記防着部材が、基板への成膜領域を規制するマスクを兼ねる請求項1〜5のいずれかに記載の真空成膜装置。
  7. 前記基板の搬送機構を有する請求項1〜6のいずれかに記載の真空成膜装置。
  8. 前記基板保持手段が、防着部材に接離するように移動する保持手段本体と、前記保持手段本体に着脱自在な、前記基板を保持する基板ホルダとから構成され、
    前記搬送機構は、前記基板ホルダを搬送することにより、前記基板を搬送するものであり、かつ、基板保持手段は、前記基板ホルダを前記保持手段本体に自動着脱する着脱機構を有する請求項7に記載の真空成膜装置。
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