JP2007297695A - 真空蒸着用ルツボおよび真空蒸着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】必要な蒸発流の指向性を得られる真空蒸着用ルツボ、および、これを用いて層厚均一性の高い蒸着層を形成できる真空蒸着を家を提供する。
【解決手段】ルツボ本体から突出する筒状の蒸気排出口を有し、この蒸気排出口の側面が、蒸気排出方向に広がるように少なくとも一方向に傾斜しているルツボにより、および、前記ルツボを一方向に配列すると共に、この配列方向と直交する方向に基板を往復搬送し、かつ、ルツボの蒸気排出口がルツボの配列方向に傾斜することにより、前記課題を解決する。
【選択図】図3

Description

本発明は、真空蒸着の技術分野に関し、詳しくは、所望する蒸発流の指向性を有する真空蒸着用ルツボ、および、この真空蒸着用ルツボを用いる、層厚均一性が高い蒸着層を形成することができる真空蒸着装置に関する。
放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)の照射を受けると、この放射線エネルギーの一部を蓄積し、その後、可視光等の励起光の照射を受けると、蓄積されたエネルギーに応じた輝尽発光を示す蛍光体が知られている。この蛍光体は、輝尽性蛍光体(輝尽性蛍光体)と呼ばれ、医療用途などの各種の用途に利用されている。
一例として、この輝尽性蛍光体の層(輝尽性蛍光体層 以下、蛍光体層とする)を有する放射線画像変換パネル(以下、変換パネルとする(輝尽性蛍光体パネル(シート)とも呼ばれている))を利用する、放射線画像情報記録再生システムが知られており、例えば、富士写真フイルム社製のFCR(Fuji Computed Radiography)等として実用化されている。
このシステムでは、変換パネル(蛍光体層)に人体などの被写体の放射線画像情報を記録し、記録後に、変換パネルに励起光を照射することで輝尽発光光を生ぜしめ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、この画像信号に基づいて再生した画像を、CRTなどの表示装置や、写真感光材料などの記録材料等に、被写体の放射線画像として出力する。
このような変換パネルは、通常、輝尽性蛍光体の粉末をバインダ等を含む溶媒に分散してなる塗料を調製して、この塗料をガラスや樹脂製のシート状の支持体に塗布し、乾燥することによって、作成される。
これに対し、特許文献1や特許文献2に示されるように、気相堆積法(真空成膜法)によって、支持体に蛍光体層を形成してなる変換パネルも知られている。蒸着によって作製される蛍光体層は、真空中で形成されるので不純物が少なく、また、バインダなどの輝尽性蛍光体以外の成分が殆ど含まれないので、性能のバラツキが少なく、しかも発光効率が非常に良好であるという、優れた特性を有している。
気相堆積法としては、真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング等の各種の方法が知られている。ここで気相堆積法によって変換パネルに形成される蛍光体層は、少なくとも200μm以上の層厚を有し、1000μm近い層厚を有する場合も有る。
そのため、形成速度(成膜速度)を考慮すると、変換パネルの製造における蛍光体層の形成には、真空蒸着が適している。
周知の様に、真空蒸着とは、真空チャンバ内のルツボに成膜材料を充填して、ルツボに充填した成膜材料を加熱し、かつ、真空チャンバ内を真空にすることにより、成膜材料を蒸発させて、基板に成膜材料の層を形成(成膜)するものである。
真空蒸着用のルツボには、ボート型、カップ型、チムニー型等の各種のものが知られている。しかしながら、通常のルツボを用いて蛍光体層を形成すると、溶融した成膜材料の局所加熱等に起因する突沸によって、成膜材料の液滴が不要にルツボから飛び出して基板に付着してしまう場合が有る。このようにして基板に付着した成膜材料は、結晶の異常成長の基点となってしまい、これが放射線画像の点欠陥等の原因となる。
このような問題点を解決できる真空蒸着用のルツボの1つとして、特許文献3等に開示される筒状(チムニー状(煙突状))の蒸気排出口を有するルツボが知られている。
特許第2789194号公報 特開平5−249299号公報 特開2005−89835号公報
特許文献3に開示されるルツボは、一例として、母線(中心線)方向に延在する長方形の開口を側面に有する円筒状のルツボ本体と、この開口を囲んで配置される長方形の底面を有する四角筒状の蒸気排出口とを有するものである。
このような筒状の蒸気排出口を有することにより、ルツボ本体の中で溶融した成膜材料の突沸が生じても、成膜材料の液滴を蒸気排出口で止めることができるので、ルツボの外部に液体状の成膜材料が排出されることがない。そのため、このような筒状の蒸気排出口を有する真空蒸着用のルツボによれば、成膜材料の突沸に起因する結晶の異常成長を防止することができる。
ところが、この筒状の蒸気排出口を有する真空蒸着用ルツボは、蒸発流(成膜材料の蒸発蒸気の流れ)の指向性が高い。そのため、基板面への蒸発蒸気の暴露量に差が生じて、膜厚分布が大きくなってしまう場合がある。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、突沸等に起因する成膜材料の不要な排出する防止できる四角筒などの筒状の蒸気排出口を有し、かつ、蒸発流の指向性も真空蒸着装置の構成等に応じて適正にできる真空蒸着用ルツボ、および、この真空蒸着用ルツボを用いる、層厚(膜厚)の均一性に優れる蒸着層(蒸着膜)を形成できる真空蒸着装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の真空蒸着用ルツボは、成膜材料蒸気を排出するための開口を有するルツボ本体と、前記開口を囲んでルツボ本体から突出する成膜材料蒸気の排出口となる筒状部とを有し、かつ、前記筒状部は、前記成膜材料の排出方向に向かって広がるように、側面が少なくとも1方向に傾斜する形状を有することを特徴とする真空蒸着用ルツボを提供する。
このような本発明の真空蒸着用ルツボにおいて、前記ルツボ本体が円筒形で、母線方向に延在する長方形の開口を側面に有するものであり、前記筒状部が、前記長方形の開口と同型の底面を有する四角筒の少なくとも1つの側面を、前記成膜材料の排出方向に向かって広がるように傾斜させてなる形状を有するのが好ましく、さらに、前記筒状部は、少なくとも前記母線方向に広がるように、前記四角筒の少なくとも1つの側面が傾斜するのが好ましい。
また、本発明の真空蒸着装置は、真空チャンバと、基板を直線状に往復搬送する搬送手段と、前記搬送手段による基板搬送位置の下方に配置される、前記往復搬送方向と直交する方向に2以上のルツボを配列してなる加熱蒸発部とを有し、かつ、前記ルツボは、成膜材料蒸気を排出するための開口を有するルツボ本体と、前記開口を囲んでルツボ本体から突出する成膜材料蒸気の排出口となる筒状部とを有し、さらに、この筒状部は、前記成膜材料の排出方向に向かって前記ルツボの配列方向に広がるように、側面が少なくとも1方向に傾斜する形状を有することを特徴とする真空蒸着装置を提供する。
このような本発明の真空蒸着装置において、前記ルツボ本体が円筒形状で、母線方向に延在する長方形の開口を側面に有し、かつ、母線を前記ルツボの配列方向に向けて配置されるもので、前記筒状部が、前記開口と同型の底面を有する四角筒の前記ルツボ配列方向の少なくとも1つの側面を、前記成膜材料の排出方向に向かって広がるように傾斜させてなる形状を有するのが好ましい。
上記構成を有する本発明の真空蒸着用ルツボは、成膜材料を収容するルツボ本体から突出する筒状の蒸気排出口を有し、かつ、この蒸気排出口が排出方向に向かって広がるように、側面が少なくとも1方向に傾斜してなる形状を有する。
本発明の真空蒸着用ルツボは、このような構成を有することにより、突沸に起因する成膜材料液滴の不要な排出を防止でき、かつ、成膜材料の蒸発流の指向性を下げることができる。しかも、側面の傾斜の方向および傾斜の角度すなわち筒状の蒸気排出口の広がり方を選択/設定することにより、蒸発流の指向性を低下させる方向、および、指向性の高さを調整できる。従って、本発明の真空蒸着用ルツボによれば、成膜材料液滴の不要な排出を防止しつつ、成膜系内の必要な領域に十分に蒸発蒸気を供給して、基板全面に蒸気を暴露して適正な真空蒸着を行なうことができる。
また、このような本発明の真空蒸着用ルツボを用いる本発明の真空蒸着装置は、基板を直線状に往復搬送すると共に、蒸発源(蒸着源)となるルツボを、この往復搬送方向と直交する方向に、2以上配列してなる構成を有する。ここで、ルツボは、前記本発明の真空蒸着用ルツボであり、筒状の蒸気排出口は、蒸気の排出方向に向けてルツボの配列方向に広がるように、側面が傾斜する形状を有する。
このような本発明の真空蒸着装置は、ルツボを一方向に配列して、この配列方向と直交する方向に基板を往復搬送することにより、基板を回転する通常の真空蒸着と異なり、成膜材料の蒸発蒸気に暴露される基板の搬送速度(線速)を全面で均一にでき、基板の全面に均一に蒸発蒸気の暴露することができる。しかも、ルツボの蒸気排出口は、ルツボの配列方向に傾斜しているので、この方向の蒸発流の指向性が低く、すなわち、配列方向のルツボ間にも、十分に成膜材料の蒸発蒸気が至るので、より、基板の全面に均一に成膜材料の蒸気を暴露して、層厚が均一な蒸着層を形成できる。
以下、本発明の真空蒸着用ルツボおよび真空蒸着装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に、本発明の真空蒸着用ルツボを利用する本発明の真空蒸着装置の一例の概念図を示す。なお、図1において、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図1に示すのは、本発明の真空蒸着装置を利用して、真空蒸着によって基板Sに輝尽性蛍光体層(以下、蛍光体層とする)を形成(成膜)して、放射線画像変換パネル(以下、変換パネルとする)を製造する製造装置10で、基本的に、真空チャンバ12と、基板搬送機構14と、加熱蒸発部16と、ガス導入手段18とを有して構成される。
図示例の製造装置10は、基板Sを直線状に往復搬送しつつ、好ましい態様として、蛍光体(母体)の成膜材料と、付活剤(賦活剤:activator)の成膜材料とを別々に蒸発する、二元の真空蒸着によって基板Sの表面に蛍光体層を形成して、変換パネルを製造する。
製造装置10が製造する変換パネルにおいて、基板Sには特に限定はなく、公知の(放射線画像)変換パネルで用いられている各種のものが利用可能である。
一例として、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネートなどから形成されるプラスチック板やプラスチックシート(フィルム); 石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス、耐熱ガラス(パイレックスTM等)などから形成されるガラス板やガラスシート; アルミニウム、鉄、銅、クロムなどの金属類から形成される金属板や金属シート; このような金属板等の表面に金属酸化物層等の被覆層を形成してなる板やシート; 等が例示される。
また、基板Sは、必要に応じて、表面(蛍光体層の形成面)に、アルミニウム板等の基板Sの基材を保護するための保護層、輝尽発光光の反射層、この反射層の保護層等を有してもよい。この場合には、蛍光体層は、これらの層の上に形成される。
また、製造装置10が製造する変換パネルにおいて、蛍光体層を形成する輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)にも、特に限定はなく、公知の各種の輝尽性蛍光体が利用可能である。
一例として、特開昭61−72087号公報に開示される、一般式「MIX・aMIIX’2・bMIIIX''3:cA」で示されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体が好適に利用される。
(上記式において、MI は、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,CuおよびNiからなる群より選択される少なくとも一種の二価の金属であり、MIIIは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,GaおよびInからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、X、X’およびX''は、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,BiおよびMgからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a<0.5であり、0≦b<0.5であり、0<c≦0.2である。)
中でも、優れた輝尽発光特性を有する等の点で、MIが、少なくともCsを含み、Xが、少なくともBrを含み、さらに、Aが、EuまたはBiであるアルカリハライド系輝尽性蛍光体は好ましく、その中でも特に、一般式「CsBr:Eu」で示される輝尽性蛍光体が好ましい。
また、これ以外にも、米国特許第3,859,527号明細書、特開昭55−12142号、同55−12144号、同55−12145号、同56−116777号、同58−69281号、同58−206678号、同59−38278号、同59−75200号等の各公報に開示される各種の輝尽性蛍光体も、好適に利用可能である。
製造装置10において、真空チャンバ12は、鉄、ステンレス、アルミニウム等で形成される、真空蒸着装置で利用される公知の真空チャンバ(ベルジャー、真空槽)である。
ガス導入手段18も、ボンベ等との接続手段やガス流量の調整手段等を有する(もしくは、これらに接続される)、真空蒸着装置やスパッタリング装置等で用いられている公知の真空チャンバ12内(成膜系内)へのガス導入手段である。図示例においては、後述する中真空での真空蒸着による蛍光体層の成膜を行うために、ガス導入手段18を用いて、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスを真空チャンバ12内に導入する。
真空チャンバ12には、図示しない真空ポンプが接続される。
真空ポンプは、油拡散ポンプ、クライオポンプ、ターボモレキュラポンプ等の公知のものである。また、補助として、クライオコイル等を併用してもよい。なお、前述の輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を成膜する製造装置10においては、真空チャンバ12内の到達真空度は、8.0×10-4Pa以下であるのが好ましい。
基板搬送機構14は、基板12を保持して直線状の搬送経路で往復搬送するものであり、基板保持手段24と搬送手段26とを有して構成される。
搬送手段26は、ガイドレール30と、ガイドレール30に係合してガイド(案内)される係合部材32とを有するリニアモータガイド、ネジ軸34およびナット36からなるボールネジ、ネジ軸34の回転駆動源38等を有する、ネジ伝動を利用する公知の直線状の移動機構である。回転駆動源38は、正逆転が可能なものである。
他方、基板保持手段24は、基台42と、保持部材44とを有する。
基台42は、上面に前記搬送手段26のナット36および係合部材32を固定する、矩形の板状部材である。また、保持部材44は、四隅から垂下するように基台42に固定され、下端部に基板Sを保持する。なお、保持部材44による基板Sの保持方法には、特に限定はなく、吸引/吸着による方法、基板Sの周辺を下方から保持(すなわち基板Sの四辺を載置)する枠体などの保持部材を用いる方法、裏面から基板Sに螺合するネジを用いる方法等、公知の板状部材の保持方法が、全て利用可能である。
基板保持手段24は、搬送手段26によって、所定の方向(図1(A)では矢印x方向、図1(B)では紙面に垂直方向)に直線移動される。
図示例の製造装置10においては、基板保持手段24によって基板Sを保持した状態で、回転駆動源38を駆動してネジ軸34を回転することにより、搬送手段26によって基板保持手段24を搬送手段26によって搬送して、基板Sを直線状に往復搬送する。後述するが、図示例においては、このように基板Sの搬送を直線状とし、かつ、複数の蒸発源を搬送方向と直交する方向に配列することにより、膜厚分布均一性の高い蛍光体層の形成を実現している。
往復搬送の回数は、蛍光体層の層厚(膜厚)や基板Sの搬送速度等に応じて、適宜、決定すればよい。また、基板Sの搬送速度も、装置の有する搬送速度限界、往復動の回数、目的とする蛍光体層の厚さ等に応じて、適宜、決定すればよい。
なお、本発明において、基板保持手段24は、上記構成に限定はされず、公知の板状物の直線状の往復搬送手段が、全て利用可能である。
真空チャンバ12内の下方には、加熱蒸発部16が配置される。
加熱蒸発部16は、一例として、蒸発源(蒸着源)として抵抗加熱用のルツボを用い、抵抗加熱によって成膜材料を加熱蒸発させるものである。
なお、図示は省略するが、加熱蒸発部16の上には、加熱蒸発部16(後述する蛍光体用ルツボ50および付活剤用ルツボ52)からの成膜材料の蒸発蒸気を遮蔽するシャッタが配置される。
また、本発明の真空蒸着用ルツボは、抵抗加熱用のルツボに限定はされず、さらに、本発明の真空蒸着装置も、抵抗加熱によって成膜材料を加熱するのに限定はされず、誘導加熱や電子線加熱など、ルツボの形状等に応じて可能であれば、真空蒸着で利用される各種の成膜材料の加熱方法が全て利用可能である。
前述のように、図示例の製造装置10は、好ましい態様として、輝尽性蛍光体の蛍光体の成膜材料と付活剤の成膜材料とを独立して加熱/蒸発する、二元の真空蒸着により蛍光体層を形成するものである。例えば、好ましい輝尽性蛍光体として例示したCsBr:Euであれば、蛍光体の成膜材料である臭化セシウム(CsBr)と、付活剤成分の成膜材料である臭化ユーロピウム(EuBrx(xは、通常、2〜3だが2が好ましい))とを、独立して加熱蒸発する。
これに応じて、加熱蒸発部16は、蛍光体の成膜材料用のルツボである蛍光体用ルツボ50と、付活剤の成膜材料用のルツボである付活剤用ルツボ52との、2種類のルツボを有する。この蛍光体用ルツボ50は、本発明の真空蒸着用ルツボの一例である。
なお、本発明の真空蒸着装置は、二元の真空蒸着を行なうものに限定はされず、一元の真空蒸着を行なうものであってもよく、さらには、三元以上の多元の真空蒸着を行なってもよいのは、もちろんである。
図1(A)および図2の概略平面図に示すように、蛍光体用ルツボ50と付活剤用ルツボ52とは、基板Sの往復搬送方向に並んで、互いに1個ずつで対を成して配置される。なお、各ルツボは、離間や絶縁材の挿入等によって、互いに絶縁状態に有る。
また、蛍光体用ルツボ50および付活剤用ルツボ52(ルツボの対)は、基板Sの往復搬送方向とに直交する方向に6個が配列されている。製造装置10は、この往復搬送方向と直交する方向(以下、便宜的に配列方向とする)のルツボの対の列を、往復搬送方向に並んで2つ有する。さらに、この2つのルツボの対の列は、互いのルツボの対が配列方向に互い違いに配置されて配列方向の互いの間隙を埋めており、これにより、配列方向に、より均一な成膜材料の蒸気の排出を可能にしている。
図示例の製造装置10においては、基板Sを直線条に往復搬送しつつ真空蒸着を行なうことにより、表面(被成膜面)の線速を基板Sの全面で均一にできる。また、往復搬送方向と直交する配列方向に複数のルツボ(蒸発源)を配列することにより、この配列方向における基板Sへの蒸発蒸気の暴露量も均一化できる。そのため、極めて簡易な蒸発源の配置で、基板Sの全面的に均一に成膜材料の蒸気を暴露することができ、膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成できる。特に、後述する中真空での真空蒸着では、アルゴン等のガス粒子と蒸発した成膜材料との衝突があるため、通常の高真空での蒸着に比して、基板とルツボとの間隔を狭くする必要が有るため、成膜材料が系内に拡散する前に基板Sに至ってしまうため、その効果は大きい。
しかも、このような構成を有することにより、蛍光体層の面方向および厚さ方向共に、輝尽性蛍光体層中に付活剤成分を高度に均一に分散することができ、これにより、輝尽発光特性および感度等の均一性に優れた変換パネルを得ることができる。
蛍光体用ルツボ50および付活剤用ルツボ52は、通常の抵抗加熱による真空蒸着に用いられるルツボと同様、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などの高融点金属で形成され、電極(図示省略)から通電されることにより自身が発熱し、充填された成膜材料を加熱/溶融して蒸発させる、抵抗加熱による真空蒸着の蒸発源となるルツボである。
図示は省略するが、蛍光体用ルツボ50および付活剤用ルツボ52には、共に、抵抗加熱用電源が接続される。
各ルツボの加熱制御方法には、特に限定はなく、サイリスタ方式、DC方式、温度測定や蒸発量測定に応じたフィードバック方式、定電流方式等、抵抗加熱による真空蒸着で用いられる各種の制御方法が利用可能である。また、蛍光体用ルツボ50はフィードバック方式で付活剤用ルツボ52は定電流方式等、両者で異なる制御方法を利用してもよい。
輝尽性蛍光体において、付活剤と蛍光体とは、例えばモル濃度比で0.0005/1〜0.01/1程度と、蛍光体層の大部分が蛍光体である。
蒸着量の少ない臭化ユーロピウム用(付活剤用)の付活剤用ルツボ52は、通常のボート型のルツボの上面を、ルツボの配列方向と一致する方向に延在する長方形のスリット状の開口(蒸気排出部)を有する蓋体で閉塞してなるものである。また、この開口を囲んで、同形状の上下開口面を有する四角筒状(煙突状)のチムニー52aが固定される。付活剤用ルツボ52においては、このチムニー52aが成膜材料の蒸気排出口となる。
なお、付活剤用ルツボ52および蛍光体用ルツボ50のように、チムニー52a(筒状の蒸気移出部)を有するルツボは、チムニー(筒)が鉛直方向に延在するように、真空蒸着装置に設置されるのが、通常である。
他方、蒸着量の多い蛍光体(例えば、前記臭化セシウム)を加熱する蛍光体用ルツボ50は、多量の成膜材料を収容可能な大型のルツボを用いている。
図3に蛍光体用ルツボ50の概略図を示す。なお、図3において、(A)は平面図(図2と同方向)、(B)は側面図(図1(B)と同方向)、(C)は正面図(図1(A)と同方向)である。
前述のように、蛍光体用ルツボ50は、本発明の真空蒸着用ルツボであり、好ましい態様として、両底面(上下面)が閉塞する中空の円筒状(ドラム状)のルツボ本体60と、ルツボ本体60の側面(周面)に固定される筒状のチムニー62とから構成される。従って、蛍光体用ルツボ50においても、このチムニー62が蒸気排出口となる。ルツボ本体60の底面(円筒の両底面)には、抵抗加熱用の電源に接続するための電極64が固定される。
ルツボ本体60には、母線(中心線)方向に延在するスリット状の長方形の開口62aが形成されている。チムニー62は、この開口60aと同様のスリット状の長方形の上下開口面を有する筒状を有し、開口60aを囲んでルツボ本体60の側面に固定される。すなわち、チムニー62も、ルツボ本体60の母線方向に延在する。なお、チムニー62には、チムニー62が短手方向に潰れるのを防止するための略Z字状の補強部材66が挿入される。
ここで、チムニー62は、排出方向に向けて広がるように、ルツボ本体60の開口60aと同形状の底面を有する四角筒の短手側の両側面を傾斜させてなる形状を有する。言い換えれば、前記開口60aと同形状の長方形の底面と、短辺は開口60aと同じで長辺が開口60aよりも長い上面とを有する四角錐台の筒状のものである。
すなわち、チムニー62の短手側の側面は、排出方向に向って広がるように傾斜するものであり、従って、スリット状のチムニー62は、長手方向(=開口60aの長手方向=ルツボ本体60の母線方向)が、蒸気の排出方向に向かって広がる形状を有する。また、蛍光体用ルツボ50(および付活剤用ルツボ52)は、配列方向の蒸気排出口の間隙を減少できる好ましい態様として、図1(B)および図2に示すように、母線(=チムニー62の長手方向)を配列方向に一致して、配置される。
蛍光体用ルツボ50は、チムニー62(蒸気排出口となる筒状部)を有することにより、前述のように、突沸に起因する成膜材料液滴の排出を防止できる。
また、チムニー62が、排出方向に向って広がるように、筒の側面が少なくとも一方向に傾斜する形状を有することより、この傾斜する方向(広がる方向)への成膜材料の蒸発流(成膜材料の蒸発蒸気の流れ)の指向性を低下することができ、すなわち、蒸発蒸気を、傾斜方向に拡散させることができる。しかも、蒸発流の指向性は、チムニー62の側壁の傾斜角度に対応し、傾斜角度が大きい程、指向性は低下するので、真空蒸着装置の構成、ルツボの位置、ルツボと基板との間隔、基板のサイズ等に応じて、チムニーの側面を傾斜させる方向や傾斜角度を選択/設定することにより、蒸発流を所望する方向に流す事ができる。
また、図示例の製造装置10のように、ルツボを一方向に配列することにより、配列方向に均一に成膜材料を蒸発させ、基板Sへの蒸発蒸気の暴露量を配列方向に均一にできるが、ルツボの間隔等によっては、やはり、ルツボの間隙では、ルツボの直上部よりも蒸発蒸気の量が少なくなってしまう場合がある。
これに対し、蛍光体用ルツボ50は、チムニー62が配列方向に広がる(この方向にルツボを向ける)ので、配列方向への蒸発流の指向性が低く、蛍光体用ルツボ50の間にも、十分に蒸発蒸気が行き渡る。そのため、より基板Sの全面に均一に蒸発蒸気を暴露することができ、非常に層厚の均一性が高い蛍光体層(蒸着層)を形成することができる。
本発明の真空蒸着用ルツボにおいて、チムニー62(筒状の蒸気排出口)は、図示例のように、対向する側面が両方とも傾斜する形状に限定はされない。
例えば、図示例のように四角筒の側面を傾斜させてなる形状(角錐台)のチムニーであれば、1つの側面のみを傾斜させて、一方向のみに広がる形状を有してもよく、あるいは、4つの側壁の全てを傾斜させて4方向に広がる形状でもよく、あるいは、1つの側面を除く3つの側面を傾斜させて3方向に広がる形状であってもよい。また、四角筒にも限定はされず、三角筒でも五角以上の角筒状でもよい。
さらに、チムニーの形状は、以上のような角筒状に限定はされず、円筒の一部を一方向あるいは複数方向に広がるような形状であってもよく、円錐のように全方向に広がる形状であってもよい。
前述のように、蛍光体用ルツボ50(本発明の真空蒸着用ルツボ)では、チムニー62の側面の傾斜の方向および大きさに応じて、蒸発流の指向性を選択/設定することができ、傾斜を大きくするほど、指向性を低くすることができる。
ここで、チムニーの側面の傾斜の角度には、特に限定はなく、真空蒸着装置の構成等に応じて、適宜、設定すればよい。すなわち、チムニーの側面が傾斜することによる蒸発流の指向性の大きさ(指向性低下の程度)は、角度のみならず、チムニーの高さ、チムニーの開口面の大きさ、チムニーの形状等に応じても異なる。従って、チムニーの側面の傾斜角度は、これらの要素に加え、前述のように、真空蒸着装置の構成、ルツボの位置、ルツボと基板との間隔、基板のサイズ等に応じて、適正な蒸発流の指向性が得られるように、適宜、選択/設定すればよい。
ただし、側面の傾斜角度が小さすぎると、指向性を低下する効果が得られず、逆に、この傾斜角度が大きすぎると、突沸による液滴排出防止など、チムニー62(筒状の蒸気排出口)を有する意味が無くなってしまう。
このような点を考慮すると、チムニー62の側面の傾斜角度は、図4に点線で示す鉛直方向に対する角度θで10°〜70°、特に25°〜60°、中でも特に40°〜50°の範囲とするのが好ましい。
図示例の製造装置10においては、蛍光体用ルツボ50は、チムニー62が配列方向にのみ傾斜する形状を有するが、本発明は、これに限定はされず、蛍光体用ルツボ50のチムニー62は、蒸気の排出方向に向って、ルツボの配列方向に広がっていれば、先の本発明の真空蒸着用ルツボが全て利用可能であり、従って、4方向(往復搬送方向および配列方向の両方向)に傾斜する形状であっても、あるいは、円錐台状のように全方向に傾斜する形状であってもよい。
また、図示例の製造装置10においては、蛍光体用ルツボ50のみが、チムニー62が排出方向に向って広がる形状を有する。前述のように、蛍光体層中の付活剤の量は、蛍光体に比して極めて微量であるので、この構成でも、十分に層厚均一性の高い蛍光体層(蒸着層)を得ることができる。
しかしながら、本発明は、これに限定はされず、付活剤用ルツボ52のチムニー52aも、蒸発蒸気の排出方向に向って広がるように、配列方向(あるいはさらに、その他の方向)に傾斜する形状を有するものであってもよい。すなわち、本発明の真空蒸着装置は、多元の真空蒸着を行なう場合には、少なくとも1つの成膜材料のルツボの筒状の排出口が、蒸発蒸気の排出方向に向って、少なくとも配列方向に広がっていればよい。
本発明は、図示例のような二元の真空蒸着に限定されないのは、前述のとおりであるが、図示例のような輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を形成する際には、蛍光体の成膜材料と付活剤(賦活剤:activator)の成膜材料とを独立して加熱/蒸発する、二元(多元)の真空蒸着により、蛍光体層を形成するのが好ましい。
なお、この際において、付活剤の蒸発量は、蛍光体層中における付活剤の濃度が目的値となるように制御するのは、当然の事である。
また、製造装置10において、蛍光体層の形成条件(成膜条件)にも、特に限定はなく、用いる成膜材料等に応じて、適宜、決定すればよい。
ここで、製造装置10においては、前述した各種の輝尽性蛍光体、特にアルカリハライド系輝尽性蛍光体、中でも特に前記一般式「CsX:Eu」で示される輝尽性蛍光体、その中でも特にCsBr:Euからなる蛍光体層を真空蒸着によって形成する場合には、一旦、系内を高い真空度に排気した後、アルゴンガスや窒素ガス等を系内に導入して、0.01〜3Pa程度の真空度(以下、便宜的に中真空とする)とし、この中真空下で抵抗加熱等によって成膜材料を加熱して真空蒸着を行うのが好ましい。
真空蒸着によって形成した輝尽性蛍光体からなる蛍光体層は、多くの場合、柱状結晶構造を有するが、このような中真空下で形成して得られる蛍光体層、中でも、前記CsBr:Eu等のアルカリハライド系の蛍光体層は、特に良好な柱状の結晶構造を有し、輝尽発光特性や画像の鮮鋭性等の点で好ましい。
以下、製造装置10による基板Sへの蛍光体層の形成(変換パネルの製造)の作用について説明する。
まず、真空チャンバ12を開放して、基板搬送機構14の基板保持手段24に基板Sを保持し、かつ、全ての蛍光体用ルツボ50に臭化セシウムを、全ての付活剤用ルツボ52に臭化ユーロピウムを所定量まで充填した後、シャッタを閉塞し、さらに、真空チャンバ12を閉塞する。
次いで、真空排気手段を駆動して真空チャンバ12内を排気し、真空チャンバ内が例えば8×10-4Paとなった時点で、排気を継続しつつ、ガス導入手段18によって真空チャンバ12内にアルゴンガスを導入して、真空チャンバ12内の圧力を例えば1Paに調整し、さらに、抵抗加熱用電源を駆動して蛍光体用ルツボ50および付活剤用ルツボ52に通電して成膜材料を加熱し、所定時間経過後、回転駆動源38を駆動して、基板Sの往復搬送を開始し、シャッタを開放して、基板Sの表面への蛍光体層の形成を開始する。
形成する蛍光体層の膜厚等に応じて設定された所定回数の直線搬送の往復動が終了したら、基板Sの直線搬送を停止し、シャッタを閉塞し、抵抗加熱用の電源を切り、ガス導入手段18によるアルゴンガスの導入を停止し、乾燥した窒素ガスあるいは乾燥空気を導入して、真空チャンバ12内を大気圧とし、次いで真空チャンバを開放して、蛍光体層を形成した基板Sすなわち作製した変換パネルを取り出す。
なお、この変換パネルは、蛍光体用ルツボ50のチムニー62が傾斜することによる、配列方向への蒸発流の指向性の低さによって、基板Sの全面に均一に蒸発蒸気を暴露させて形成されたものであり、蛍光体層の層厚均一性に優れた、高品質な変換パネルである。
以上、本発明の真空蒸着用ルツボおよび真空蒸着装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいうのは、もちろんである。
例えば、本発明の真空蒸着用ルツボは、図示例のように蛍光体層の形成に用いられるのに限定はされず、各種の用途の真空蒸着に全て利用可能である。また、基板を往復搬送する真空蒸着装置への利用にも限定はされず、基板回転型(自転、公転、自公転)に用いてもよい。中でも、本発明の真空蒸着用ルツボは、層厚の均一性を要求される真空蒸着には好適であり、中でも特に、高い層厚均一性を要求される放射線画像変換パネルの蛍光体層の形成、その中でも特に、より高い層厚均一性を要求される図示例のような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換パネルの蛍光体層の形成には、好適である。
また、本発明の真空蒸着装置は、本発明を輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造装置も限定はされず、例えば、沃化セシウムなどの蛍光体の柱状結晶からなる蛍光体層を有する放射線シンチレータパネル等、蛍光体の柱状結晶からなる蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにも、好適に利用可能である。また、本発明の真空蒸着装置は、放射線画像変換パネルの製造以外にも各種の真空蒸着に利用可能である。中でも、前記本発明の真空蒸着用ルツボと同様の理由で、放射線画像変換パネルの製造、その中でも特に、図示例のように輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換パネルの蛍光体層の製造には、好適である。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
[実施例1−1]
図1に示す製造装置10によって、基板Sの表面に臭化セシウム(CsBr)層を形成した。
基板Sとして、厚さ10mm、430×430mmのアルミニウム板を準備した。この基板Sを基板搬送機構14の保持手段24に装着した。
また、一方のルツボの列の配列方向の中心に近い1つの蛍光体用ルツボ50(ルツボ本体60)に臭化セシウムを所定量まで充填した。なお、保持手段24(すなわち基板S)は、臭化セシウムを充填した蛍光体用ルツボ50の上部に位置させた。
なお、蛍光体用ルツボ50は、タンタル製で、チムニー62が蒸発蒸気の排出方向に向って広がるように、短手側面(スリット状の四角筒の短手側面)が、図4に示す角度θ(鉛直方向との角度)で13°傾斜しているものである。
また、蛍光体用ルツボ50と基板Sとの距離は10cmとした。さらに、ルツボ本体50内に、R型(白金−ロジウム)熱電対を固定した。
基板Sの装填、および、臭化セシウムの充填を終了した後、シャッタを閉塞して、さらに真空チャンバ12を閉塞し、メイン排気バルブを開いて真空チャンバ12内の排気を開始した。排気には、ロータリーポンプ、メカニカルブースターポンプ、および、ディフュージョンポンプの組み合わせを用いた。さらに、水分排気用クライオポンプも使用した。
真空チャンバ12内の圧力が2×10-3Paとなった時点で、排気をメイン排気バルブからバイパスに切り換え、さらにガス導入手段18からアルゴンガスを導入して1Paの真空度とした。
次いで、抵抗加熱の電源から臭化セシウムを充填した蛍光体用ルツボ50に通電して、臭化セシウムを加熱溶融した。なお、加熱は、温度が670℃で一定となるように、前記熱電対による温度測定結果を用いてフィードバック制御した。
加熱を開始して30分経過した時点で、シャッタを開放して蒸着を開始し、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
蒸着を開始してから45分後にシャッタを閉塞し、抵抗加熱の電源を切り、アルゴンガスの導入を停止した。
乾燥空気を導入して、真空チャンバ12内を大気圧に戻した後、基板保持手段24から基板Sを取り外した。基板Sの表面には、柱状結晶が密に林立した臭化セシウム層が形成されていた。
形成された臭化セシウム層の表面形状をレーザ変位形で測定し、下記の蒸着量理論式を用いて指向性計数を算出した(図5参照)。その結果、指向性計数は11であった。なお、指向性係数は、蒸発蒸気が球となる状態が1であり、係数が小さい程、指向性が低い。
dD=[(n+1)/2π]・dE・cosnθ・dω・dS
dD:蒸着量
dE:蒸発量
n:指向性係数
dω:立体角
dS:蒸発面面積(チムニー62の上面(蒸気排出面)の面積)
[実施例1−2]
チムニー62の短手側面の角度θが26°の蛍光体用ルツボ50を用いた以外は、実施例[1−1]と全く同様にして、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
実施例[1−1]と全く同様にして指向性係数を算出したところ、指向性係数は7であった。
[実施例1−3]
チムニー62の短手側面の角度θが45°の蛍光体用ルツボ50を用いた以外は、実施例[1−1]と全く同様にして、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
実施例[1−1]と全く同様にして指向性係数を算出したところ、指向性係数は5であった。
[比較例1−1]
チムニーの短手側面が傾斜していない(角度θ=0°)の蛍光体用ルツボを用いた以外は、実施例[1−1]と全く同様にして、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
実施例[1−1]と全く同様にして指向性係数を算出したところ、指向性係数は18であった。
[実施例2−1]
全ての蛍光体用ルツボ50に臭化セシウムを所定量充填して加熱し、さらに、シャッタの開放と同時に、回転駆動源38を駆動して基板Sの往復搬送(200mm/sec)を行なった以外は、実施例[1−1]と全く同様にして、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
なお、2列の蛍光体用ルツボ50の列の間隔は(ルツボ列の往復搬送方向の中心位置(チムニー62の中心位置)の間隔)は210mmとした。
形成した臭化セシウム層の膜厚分布を求めたところ、±2.5%であった。膜厚分布は、以下のようにして求めた。
まず、形成した臭化セシウム層について、搬送方向と垂直に基板Sを横切る均等な1400点において膜厚を測定した。なお、膜厚は、CCDレーザ変位センサ(キーエンス社製[LK−010])を用いて臭化セシウム層の膜表面の形状を測定し、また、渦電流式変位計(キーエンス社製[EX−016])を用いて基板Sの反りを測定して、両者の差分から求めた。この1400点における最大膜厚および最小膜厚を求め、「(最大膜厚−最小膜厚)/2」と、「(最大膜厚+最小膜厚)/2」とを算出し、両算出結果の比(前者/後者の%)に「±」を付して、膜厚分布とした。
[実施例2−2]
蛍光体用ルツボ50を、前記実施例[1−2]のもの(チムニー62の短手側面の角度θが26°)に変えた以外は、前記実施例[2−1]と全く同様にして、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
形成した臭化セシウム層について、前記実施例[2−1]と同様に膜厚分布を測定したところ、膜厚分布は±2.0%であった。
[実施例2−3]
蛍光体用ルツボ50を、前記実施例[1−3]のもの(チムニー62の短手側面の角度θが45°)に変えた以外は、前記実施例[2−1]と全く同様にして、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
形成した臭化セシウム層について、前記実施例[2−1]と同様に膜厚分布を測定したところ、膜厚分布は±1.8%であった。
[比較例2−1]
蛍光体用ルツボ50を、前記比較例[1−1]のもの(チムニー62の短手側面が傾斜成し(角度θ=0°)に変えた以外は、前記実施例[2−1]と全く同様にして、基板Sの表面に臭化セシウム層を形成した。
形成した臭化セシウム層について、前記実施例[2−1]と同様に膜厚分布を測定したところ、膜厚分布は±3.8%であった。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
(A)は、本発明を利用する(放射線画像変換パネル)製造装置の一例の概略正面図、(B)は、同概略側面図である。 図1に示す製造装置の加熱蒸発部の概略平面図である。 (A)は、図1に示す製造装置の蛍光体用ルツボの概略上面図、(B)は同概略正面図、(C)は同内部の概略側面図である。 図3に示す蛍光体用ルツボを説明するための概念図である。 蒸発流の指向性係数を説明するための概念図である。
符号の説明
10 (変換パネル)製造装置
12 真空チャンバ
14 基板搬送機構
16 加熱蒸発部
18 ガス導入手段
24 基板保持手段
26 基板搬送手段
30 ガイドレール
32 係合部材
34 ネジ軸
36 ナット部
38 回転駆動源
42 基台
44 保持部材
50 蛍光体用ルツボ
52 付活剤用ルツボ
60 ルツボ本体
62 チムニー
64 電極
66 補強部材

Claims (5)

  1. 成膜材料蒸気を排出するための開口を有するルツボ本体と、前記開口を囲んでルツボ本体から突出する成膜材料蒸気の排出口となる筒状部とを有し、
    かつ、前記筒状部は、前記成膜材料の排出方向に向かって広がるように、側面が少なくとも1方向に傾斜する形状を有することを特徴とする真空蒸着用ルツボ。
  2. 前記ルツボ本体が円筒形で、母線方向に延在する長方形の開口を側面に有するものであり、
    前記筒状部が、前記長方形の開口と同型の底面を有する四角筒の少なくとも1つの側面を、前記成膜材料の排出方向に向かって広がるように傾斜させてなる形状を有する請求項1に記載の真空蒸着用ルツボ。
  3. 前記筒状部は、少なくとも前記母線方向に広がるように、前記四角筒の少なくとも1つの側面が傾斜する請求項2に記載の真空蒸着用ルツボ。
  4. 真空チャンバと、基板を直線状に往復搬送する搬送手段と、前記搬送手段による基板搬送位置の下方に配置される、前記往復搬送方向と直交する方向に2以上のルツボを配列してなる加熱蒸発部とを有し、
    かつ、前記ルツボは、成膜材料蒸気を排出するための開口を有するルツボ本体と、前記開口を囲んでルツボ本体から突出する成膜材料蒸気の排出口となる筒状部とを有し、さらに、この筒状部は、前記成膜材料の排出方向に向かって前記ルツボの配列方向に広がるように、側面が少なくとも1方向に傾斜する形状を有することを特徴とする真空蒸着装置。
  5. 前記ルツボ本体が円筒形状で、母線方向に延在する長方形の開口を側面に有し、かつ、母線を前記ルツボの配列方向に向けて配置されるもので、
    前記筒状部が、前記開口と同型の底面を有する四角筒の前記ルツボ配列方向の少なくとも1つの側面を、前記成膜材料の排出方向に向かって広がるように傾斜させてなる形状を有する請求項4に記載の真空蒸着装置。
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