JP2008014853A - 放射線像変換パネルおよび放射線像変換パネルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】真空チャンバ内で、気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成して製造される放射線像変換パネルであって、前記蛍光体層の表面に発生した突起もしくはこれに起因する凹部が補修処理されていることを特徴とする放射線像変換パネル、並びにその製造方法。なお、上記補修処理は、蒸着終了後(熱処理工程の前に)、最初に蛍光体層表面の清浄化を行う前に行うことが好ましい。
【選択図】図5
Description
この放射線画像情報記録再生システムでは、人体などの被写体を介してX線等を照射することにより、放射線像変換パネル(輝尽性蛍光体層)に被写体の放射線画像情報を記録する。記録後に、放射線像変換パネルをレーザ光等の励起光で2次元的に走査して輝尽発光を生ぜしめ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、この画像信号に基づいて再生した画像を、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置または写真感光材料などの記録材料等に、被写体の放射線画像として出力する。
これに対し、真空蒸着またはスパッタリング等の真空成膜法(気相成膜法)によって、支持体に輝尽性蛍光体層(以下、単に蛍光体層ともいう)を形成してなる蛍光体パネルも知られている。真空成膜法による蛍光体層は、真空中で形成されるので不純物が少なく、また、輝尽性蛍光体以外のバインダなどの成分が殆ど含まれないので、性能のバラツキが少なく、しかも発光効率が非常に良好であるという優れた特性を有している。さらに、蛍光体層が蛍光体の柱状構造で形成されるため、鮮鋭度の高い良好な画質が得られる。
特許文献1の放射線画像読取装置においては、クリーニング機構により、蛍光体シートの表面に付着した異物を除去するとともに、表面の電荷を除去する。これにより、電荷による放射線画像の影響や、塵埃の付着による放射線画像の悪影響を取り除いている。
特許文献2の放射線画像読取装置においては、複数の弾性ベルトを駆動し複数の弾性ベルトの間に挟まれた蓄積性蛍光体パネルを搬送する。これにより、蓄積性蛍光体パネルを搬送する際に傷が付くこと、またひずみが生じ経年劣化してしまうことを防止し、さらには、搬送中に蓄積性蛍光体パネルに塵,ゴミ,埃などの異物が付着することを防止するものである。この特許文献2においても、蛍光体層へのゴミの付着を防止し、画像読み取り時に生じる画像の劣化を未然に防止することができる。
すなわち、基板202上に蛍光体層204を形成する際に、基板204にゴミ208がある場合、このゴミ208を起点として異常成長結晶206aが起き、結果として蛍光体層204において、この表面204aから突出したヒロック(Hillock)Hが生じる。このような異常成長結晶206aにより、得られる画像において、本来黒である画像が白くなる点欠陥が生じる。このように、ゴミ,埃などの混入を抑制しない場合には、必ずしも欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができるとは限らない。
また、特許文献3においては、種々の方法により、波長変換体(蛍光体層)の表面に発生した突起の高さを所定値内に調整してはいるものの、この技術では、以下に説明するように、蛍光体層の表面に発生した突起のすべてに対して、十分な対応を取ることは困難である。
このような穴が形成されると、その周辺では、蛍光体層の膜厚の急峻な変化が生じることになり、前述のような点欠陥が生じる原因となる。
そして、従来の感覚では、このような「突起」と「凹部」という、少なくとも形状から見た場合には全く異なる不具合要因に対しては、それぞれに対して、対応策を講じる必要があると考えられていた。
また、前記補修は、前記突起もしくはこれに起因する凹部を上方から押圧することにより行うことが好ましい(請求項4)。ここでの押圧力は、いうまでもなく、押圧して上記突起を蛍光体層中に押し込むに足りる強度であることが必要であり、また、蛍光体層自体を損傷することがない強度であることが必要である。具体的には、押圧力は0.1〜5.0kgfとするのが好ましい。
上述の治具は、原理的には、押圧時にその先端位置が蛍光体層の表面(平均表面)に一致する位置とすることが好ましいが、実際には制御上の制約で、その先端位置が蛍光体層中に幾分入り込むようにせざるを得ないことから、規定されているものである。
ここからは、突起が脱落した後に形成される凹部(この凹部の形状は、一般に鋭いもの:すなわち、蛍光体層の膜厚に急峻な変化をもたらすもの)となるので、それに対して特に有効な方法として挙げているものである。
これらは上述の膜圧差を解消する材料として、既存の蛍光体層とできるだけ特性の近似する材料を使うことを推奨するものである。
これまで説明してきたように、点欠陥をなくすることに対する厳しい要求や、これに必要とされる蛍光体層の急峻な膜厚変動の抑制は、実際上、医療用に用いられる輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルに対するものである。すなわち、本発明に係る放射線像変換パネルの製造方法は、輝尽性蛍光体が用いられる場合に最大の効果を発揮するものとなる。
図1(a)は、本発明に係る放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の一実施形態を示す模式的断面図であり、同(b)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
また、ここでは、基板ホルダ39は、基板70をその側面から挿入して内部に係止して保持する形で保持するように構成されているものである。
例えば、米国特許第3859527号の明細書に記載されている輝尽性蛍光体である、「SrS:Ce,Sm」、「SrS:Eu,Sm」、「ThO2:Er」、および「La2O2S:Eu,Sm」。
(上記式において、MIIは、Mg,Ca,Sr,Zn,CdおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Ce,Tb,Eu,Tm,Pb,Tl,BiおよびMnからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0.5≦x≦2.5である。)
(上記式において、Lnは、La,Y,GdおよびLuからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、ClおよびBrの少なくとも一種であり、Aは、CeおよびTbの少なくとも一種である。また、0≦x≦0.1である。)
(上記式において、M2+は、Mg、Ca,Sr,ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,YbおよびErからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦x≦0.6であり、0≦y≦0.2である。)
(上記式において、MおよびNは、それぞれ、Mg,Ca,Sr,Ba,ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Sb,Tl,MnおよびSnからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦x≦6、0≦y≦1である。)
上記式において、Reは、La,Gd,YおよびLuからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Ba,SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、XおよびX’は、それぞれ、F,Cl,およびBrからなる群より選択される少なくとも一種である。また、1×10−4<x<3×10−1であり、1×10−4<y<1×10−1であり、さらに、1×10−3<n/m<7×10−1である。
上記式において、MIは、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,CuおよびNiからなる群より選択される少なくとも一種の二価の金属であり、MIIIは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,GaおよびInからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、X,X’およびX''は、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,BiおよびMgからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a<0.5であり、0≦b<0.5であり、0<c≦0.2である。
上記式において、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、ZrおよびScの少なくとも一種である。また、0.5≦a≦1.25であり、0≦x≦1であり、1×10−6≦y≦2×10−1であり、0<z≦1×10−2である。)
上記式において、MIIIは、Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびBiからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Xは、ClおよびBrの少なくとも一種である。また、0≦x≦0.1である。)
上記式において、Mは、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、Lは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Gd,Tb,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga,InおよびTlからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種である。また、1×10−2≦x≦0.5であり、0≦y≦0.1であり、さらに、aはx/2である。
上記式においてMIIは、Ba,SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、MIは、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、M’IIは、BeおよびMgの少なくとも一方の二価の金属であり、MIIIは、Al,Ga,InおよびTlからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Aは、金属酸化物であり、X,X’およびX''は、それぞれ、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a≦2であり、0≦b≦1×10−2であり、0≦c≦1×10−2であり、かつ、a+b+c≧10−6であり、さらに、0<x≦0.5であり、0<y≦0.2である。)
真空チャンバ12の一方の側面12bには、真空ポンプ18がディフューザ18aを介して接続されている。この真空ポンプ18は、例えば、油拡散ポンプが用いられる。なお、真空ポンプ18は、特に限定されるものではなく、必要な到達真空度を達成できるものであれば、真空蒸着装置で利用されている各種のものが利用可能である。一例として、クライオポンプ,ターボモレキュラポンプ等を利用することができ、さらに補助として、クライオコイル等を併用してもよい。なお、蛍光体層を成膜する製造装置10においては、真空チャンバ12内の到達真空度は、8.0×10−4Paより高い真空度が得られるものであることが好ましい。
本実施形態においては、扉13を開けて、真空チャンバ12内に基板70の搬入、および成膜材料の搬入などが行われる。また、扉13を閉じ、真空チャンバ12を閉塞して真空蒸着などが行われる。
このガス導入ノズル19の開口部(ガス導入口)19aを介して、不活性ガスが真空チャンバ12内に導入される。ガス導入ノズル19(開口部19a)は、例えば、加熱蒸発部16の近傍、かつ真空チャンバ12の底面12aに設けられている。
ガイドレール24aは、基板70の搬送方向Mに延在して、前記ネジ軸32aを中心とする対象位置に離間して2本が配置され、共に、真空チャンバ12の天井面に固定される。一方、係合部材24bは、各ガイドレール24aに2つずつ係合するように、合計4つが基板保持手段26(後述する基台36の上面)に固定される。
基台36の上面の中心には、前記ボールネジ32のナット部32bが固定され、また、基台36の上面の2本の対角線上の対称位置には、2本のガイドレール24aの間隔に応じて前記LMガイド24の係合部材24bが固定される。
取付部材38aは、矩形の断面略C字状の形状を有するものである。この取付部材38aは、C字開放部を内側に向けて、搬送方向Mと直交方向の外方からC字天井面の一部を基台36の角部に載置して、基台36に垂下するようにして固定される。従って、保持手段26は、基台36の下部には、基台36の面積よりも広い空間を有している。
また、取付部材38aと保持部材38bとの間にスペーサを入れる、ネジによる調整手段を設ける、シリンダによる昇降手段を設ける等の方法で、保持部材38bの下端位置すなわち基板70を保持/搬送する高さを調整可能にしてもよい。
本実施形態においては、上述このように基板70を直線搬送しつつ、抵抗加熱による中真空の真空蒸着によって蛍光体層を形成することにより、結晶性が良好で、膜厚分布均一性の高い蛍光体層の形成を実現している。
これにより、良好な柱状の結晶構造を有する蛍光体層を形成することができ、輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた放射線像変換パネルを製造することができる。
本実施形態に係る製造装置10においては、基板ホルダ39ごと基板70を直線搬送しつつ真空蒸着によって蛍光体層の形成を行うことにより、基板70表面における移動速度を全面的に均一にできる。
具体的には、搬送方向Mと直交する方向Hにおける成膜材料の蒸発量を均一にするだけで、基板70の全面的に均一に成膜材料の蒸気を暴露することができ、簡易な蒸発源の位置設定でも、膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成できる。しかも、直線搬送の往復搬送を行って成膜を行うことにより、微量成分であるユーロピウム(付活剤)の蛍光体層中における分散状態も、好適にできる。
一般的に、同じ膜厚であれば、加熱蒸発部16の上部の通過回数が多い程、膜厚分布均一性を高くできるので、複数回の往復動を行って蛍光体層を形成するのが好ましい。また、往復動の回数は、蛍光体層の目的膜厚または目的とする膜厚分布均一性等に応じて、適宜、決定すればよく、最後の搬送は一方向でもよい。直線搬送の搬送速度にも、特に限定はなく、LMガイド24の速度限界、往復動の回数、目的とする蛍光体層の膜厚等に応じて、適宜、決定すればよい。
防熱部材40は、後述する加熱蒸発部16(蒸発源)に対して基台36を覆うことにより、加熱蒸発部16からの輻射熱等によって、LMガイド24の係合部材24bおよびボールネジ32のナット部32bが加熱されるのを防止するものである。
また、必要に応じて、防熱部材40に接触するパイプに冷水を流す、板材(防熱部材40)の内部をくり抜いて水を流す等の手段によって、防熱部材40の冷却手段を設けてもよい。
但し、係合部材24bおよびナット部32bの加熱をより好適に防止するためには、図示例のように、これらに熱を伝達する可能性のある部材は、加熱蒸発部16に対して可能な限り防熱部材40で覆うのが好ましい。
真空チャンバ12の下方には、加熱蒸発部16が配置される。
加熱蒸発部16は、抵抗加熱によって蛍光体層を形成するための成膜材料である臭化セシウムおよび臭化ユーロピウムを蒸発させる部位である。この加熱蒸発部16により成膜材料を加熱・蒸発させることにより、臭化セシウムおよび臭化ユーロピウムの蒸気(成膜材料蒸気)からなる蒸着場が形成される。
また、本発明において、抵抗加熱用の電源(加熱制御手段)には、特に限定はなく、サイリスタ方式,DC方式,熱電対フィードバック方式等、抵抗加熱装置で用いられる各種の方式が利用可能である。また、抵抗加熱を行う際の出力にも特に限定はなく、使用する成膜材料,ルツボの形成材料の抵抗値または発熱量等に応じて、適宜、設定すればよい。
そのため、図示例においては、蒸発量(消費量)の多い臭化セシウム(蛍光体用)のルツボ50は、円筒状(ドラム型)の大型のルツボを用いている。このルツボ50は、ドラムの側面に、ドラムの軸線方向に延在するスリット状の開口を有し、この開口に一致して、開口と同形状の上下開口面を有する四角筒状のチムニー50aを蒸気排出部として設けている。
このような構成とすることにより、母体となる臭化セシウム蒸気中に、臭化ユーロピウム蒸気を充分に分散して、微量成分であるユーロピウム(付活剤)を蛍光体層中に均一に分散し、輝尽発光特性等の良好な蛍光体層を形成できる。
このような構成とすることにより、配列方向Hにおける成膜材料の蒸発蒸気量を均一にして、より膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成することができる。
ここで、複数列のルツボの列を有する場合には、各ルツボの列は、基板70の搬送方向Mから見た際に、他のルツボの列の成膜材料蒸気の排出口(前記スリット状のチムニー)の配列方向Hの間隙を、互いに埋めるように配置するのが好ましく、さらに、異なる列で成膜材料蒸気の排出口が搬送方向Mに重ならないように配置するのがより好ましい。いい換えれば、搬送方向Mから見た際に、各ルツボの列で、成膜材料蒸気の排出口が互い違いとなるようにするのが好ましい。図示例においては、配列方向Hへの2列のルツボの列において、搬送方向Mから見た際に、一方のルツボ列の電極位置に他方のルツボ列の蒸気排出口が位置するように、各ルツボの列を配列している。
このような構成とすることにより、配列方向Hにおける成膜材料の蒸発蒸気量を均一にして、より膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成することができる。
このような構成とすることにより、蒸発量の多い臭化セシウムの蒸発量センサを、搬送方向Mに対してルツボの列の外側の開いている空間に配置することができ、すなわち、蒸発量センサの選択自由度、製造装置10の設計自由度を向上することができる。
また、基板70としては、ガラス、セラミックス、カーボン、PET(ポリエチレンテレフタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート),ポリイミド等、放射線像変換パネルで利用されている各種のシート状の基板を全て利用することができる。
本実施形態に係る放射線像変換パネルの製造方法においては、最終的には、図8に示すような基板70と、この基板70上に形成された蛍光体層72と、この蛍光体層72上に形成され、蛍光体層72を封止する防湿保護層74とを有する放射線像変換パネル80を製造するが、その前段の工程では、まず、基板70上に蛍光体層72を形成する。
次に、基板70を基板ホル39ごと、プラズマ洗浄装置(図示せず)にセットし、基板70の表面70d(蛍光体層72の形成面)をプラズマ洗浄する。
次に、真空チャンバ12の扉13を開き、真空チャンバ12を大気開放状態にし、基板保持搬送機構14の保持手段26(図2(b)参照)の保持部材38bに基板ホルダ39ごと基板70を保持する。
次いで、真空ポンプ18を駆動して真空チャンバ12内を排気し、真空チャンバ12内が、例えば、8×10−4Paとなった時点で、排気を継続しつつ、ガス導入ノズル19によって開口部19aを経て真空チャンバ12内に、例えば、Arガスを導入して、真空チャンバ12内の圧力を、例えば、1.0Paに調整し、さらに、抵抗加熱用の電源を駆動して全てのルツボ50およびルツボ52に通電して成膜材料を加熱する。
形成する蛍光体層72の膜厚等に応じて設定された所定回数の直線搬送の往復動が終了したら、基板70の直線搬送を停止し、シャッタを閉塞し、抵抗加熱用の電源を切り、ガス導入ノズル19によるArガスの導入を止める。
次に、窒素ガスまたは乾燥空気を真空チャンバ12内に導入して、真空チャンバ12内を大気圧とする。すなわち、大気開放状態とする。
前述のように、本実施形態に係る放射線像変換パネルの製造方法においては、蛍光体層72を形成した基板70、すなわち蛍光体シート(蛍光体層を有する基板)に熱処理を行う前に、突起もしくはこれに起因する凹部を補修することが特徴的動作である。
また、図7は、当初は突起100が存在したものが何らかの原因で脱落した結果形成された比較的大きな(図6の場合との比較)急峻な凹部120が存在する場合に、この凹部に所定の補修用材料を充填して補修する例を示している。
従来は、このような割合に小さな凹部の補修に際して押圧して押しつぶすという発想はなかったが、実際上は極めて有効であることが確認されている。
具体的には、補修用材料140として、蛍光体層72を構成している材料そのものを用いることが好ましいことはいうまでもないが、本発明は必ずしもそれには限定されず、蛍光体層72を構成している材料とできるだけ特性の近似する材料を使うこと、さらには、広く蛍光体層を構成する材料と同じ材料を用いることが可能である。
補修用材料140としては、一般に粉末状のものが用いられることが多いが、この材料を凹部130に充填する際には、この粉末状のままで充填する方法、あるいはバインダー等の液体に溶解(もしくは分散)した状態にして充填する方法が実施可能である。
また、特別な場合として、中真空下での気相堆積法等により製造される、蛍光体層が柱状結晶から構成される蛍光体シートにおいては、他の場所から切り出した柱状結晶の一部を、上述の充填部分に適用することも可能であり、この場合には、工学的特性を含めて、極めて高度に特性の揃った充填(補修)が可能である。
実用上有効と考えられる温湿度条件としては、蛍光体シートを、温度20℃〜50℃、相対湿度30%〜80%の環境で5分〜1週間保管するという条件が、一つの目安となる。ただし、この条件は、蛍光体シートを構成する輝尽性蛍光体の種類や蒸着条件、さらには、保管後における熱処理の条件等に影響されることもあると考えられる。
なお、製造装置10を用いた蒸着方法によって放射線像変換パネルを製造する過程に関しては、先に説明した動作と同様であるので、以下の説明では、形成された放射線像変換パネル(蛍光体層)についての突起もしくはこれに起因する凹部の補修が終了したものとして説明を行う。
熱処理が終了し、十分に冷却された状態の蛍光体シートは、次に、次工程の防湿保護層74(図8参照)を形成する防湿保護層形成装置(図示せず)まで搬送する。そして、蛍光体層72の上に、例えばディスペンサー等を用いて接着剤を塗布し、接着層76を形成する。
なお、防湿保護層74としては、予め接着剤が塗布された保護フィルムを用いて形成することもできる。
また、防湿保護層74は、40℃の温度で相対湿度が90%の環境下において、透湿度が0.2〜0.6(g/(m2・day))であることが好ましい。
通常は、真空チャンバ内における蛍光体層の形成終了後、特別な処理を施すことなく、所定の時間経過後に蛍光体層の感度上昇を目的とする熱処理(アニール)を行っているが、本発明者は、熱処理前に蛍光体層を20℃〜50℃、相対湿度30%〜80%の環境で5分〜1週間保管する工程(すなわち、加湿処理工程)を経ることで、蛍光体層の感度上昇を実現できることを見出し、この工程を追加することを、実質上、基本とするようにしたものである。
ここでは、図1に示した実施形態に係る製造装置(放射線像変換パネル製造装置)を用いて、放射線像変換パネル(蛍光体シート)を作製した。
ここでは、蒸発源(成膜材料)として、純度が4N以上の臭化セシウム(CsBr)粉末、および純度が3N以上の臭化ユーロピウム(EuBr2)の溶融品を用意した。EuBr2溶融品は、酸化を防ぐため十分なハロゲン雰囲気としたチューブ炉中にて、白金製ルツボに粉体を入れ、温度800℃に加熱して溶融、冷却後、炉から取り出して作製したものを用いている。各原料中の微量元素をICP−MS法(誘導結合高周波プラズマ分光分析−質量分析法)により分析した結果、CsBr中のCs以外のアルカリ金属(Li,Na,K,Rb)はそれぞれ10質量ppm以下であり、アルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr,Ba)などの他の元素は、2質量ppm以下であった。また、EuBr2中のEu以外の希土類元素は各々20質量ppm以下であり、他の元素は10質量ppm以下であった。これらの原料は、吸湿性が高いので、露点−20℃以下の乾燥雰囲気を保ったデシケータ内で保管し、使用直前に取り出すようにした。
なお、ここでは、基板70と加熱蒸発部16との距離は100mmとし、基板70を直線搬送しながら、蛍光体層72を形成した。
前述の3種類の基板の処理のそれぞれが終了した後に、真空チャンバ12内を8×10−4Paの真空度まで排気後、Arガスを所定量導入して1.0Paの真空度とした。
そして、基板70と加熱蒸発部16(ルツボ50およびルツボ52)との間に設けられたシャッタを閉じた状態で、各蒸発源(CsBrおよびEuBr2)をそれぞれ抵抗加熱装置で加熱溶融させた。加熱開始から60分経過後、まず、ルツボ50側のシャッタだけを開いて、基板70の直線搬送を開始し、基板70の表面にCsBr蛍光体母体を堆積させた。
なお、堆積速度は6μm/分とした。また、加熱蒸発部16の各々の抵抗加熱装置の抵抗電流を調整して、輝尽性蛍光体層におけるEu/Csのモル濃度比が、0.003/1となるように制御した。
次に、真空チャンバ12内に窒素ガスまたは乾燥空気を導入し、真空チャンバ12内を大気圧にした。そして、扉13を開けて、真空チャンバ12内から基板70を基板ホルダ39ごと取り出した。
ステップ152(図4中のステップ92に対応する)では、蒸着(気相堆積:ステップ159(図4中のステップ90に対応する))時に発生した突起(前述のヒロック)もしくはこれに起因する凹部を検査し、次工程である蛍光体層表面の清掃を行う前にその補修処理工程を行った。
なお、この補修処理工程は、専用の密閉されたケース内で行っている。
具体的には、エアーブロー方式のゴミ除去手段を用いて、蛍光体シート表面の清掃を行う。なお、ここでの清掃用エアーの噴出速度は20m/sとしている。
なお、熱処理工程においては、まず、蛍光体シートをガス導入可能な真空加熱装置の中に入れ、ロータリーポンプにより真空加熱装置内を約1Paまで減圧し、蛍光体シートに吸着している水分等の除去を行った。
次に、真空加熱装置内を加熱し、そして、N2(窒素)ガスを真空加熱容器内に流して、N2ガスフロー雰囲気とした。上述の如く、温度200℃、時間2時間の熱処理条件で熱処理を行った。熱処理後、真空加熱装置から蛍光体シートを取り出し、大気中で冷却した。
次いで、ロール状に巻回された防湿保護フィルムを引き出し、熱ラミネーション法により、蛍光体層72の上に防湿保護フィルムを貼り付けて、外縁を基板の表面に密着させて防湿保護層74を形成した。
このようにして、放射線像変換パネルを作製した。
先ず、放射線像変換パネルの表面全面に、タングステン管球を用い、管電圧が80kVのX線を線量10mR(2.58×10−6C/kg)で照射した後、ラインスキャナ方式の画像読取装置(波長が660nmの半導体レーザ光を照射し、放射線像変換パネルの表面から放射された輝尽発光光を、ライン状に受光素子が配置されたCCDで受光するもの)で読み取り、読み取った光(受光した光)を電気信号に変換して、放射線画像として一様画像を得た。この放射線画像(一様画像)をレーザプリンタによりフィルム上に可視像として出力した。
10枚の放射線像変換パネルについて測定した結果では、点欠陥の個数は、1枚当たり0〜2個で、すべて実用に供しうる品質を有することが確認された。
12 真空チャンバ
14 基板保持搬送手段
16 加熱蒸発部
18 真空ポンプ
19 ガス導入ノズル
20 制御部
22 駆動手段
24 LMガイド
26 (基板)保持手段
30 保持部材
32 ボールネジ
34 モータ
36 基台
38 保持機構
40 防熱部材
50,52 ルツボ
70 基板
70b 基板の溝
70c 枠
70d 基板の表面
72 輝尽性蛍光体層(蛍光体層)
74 防湿保護層
76 接着層
80 放射線像変換パネル
100 突起
110 押圧手段
120 (急峻な)凹部
130 (大きな急峻な)凹部
140 補修用材料
Claims (14)
- 真空チャンバ内で、気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成して製造される放射線像変換パネルであって、
前記蛍光体層の表面に発生した突起もしくはこれに起因する凹部が補修処理されていることを特徴とする放射線像変換パネル。 - 真空チャンバ内で、気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成した後に、形成された蛍光体層を熱処理する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法であって、
堆積が終了した後に、前記蛍光体層の表面に発生した突起もしくはこれに起因する凹部を補修することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。 - さらに前記蛍光体層の表面を清浄化する清浄化工程を含み、
前記補修は、堆積が終了した後に、最初に前記清浄化工程を実施するまでの間に実施する請求項2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。 - 前記補修は、前記突起もしくはこれに起因する凹部を上方から押圧することにより行う請求項2または3に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記補修における押圧は、先端形状が曲面で構成される治具を用いて行う請求項4に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記治具の先端形状が球面で構成されるものを用いる請求項5に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記治具の先端形状が半径1mm〜10mmの球面で構成されるものを用いる請求項6に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記補修は、前記突起を取り除き、そこに生じた孔を所定の補修用材料で埋めることにより行う請求項2または3に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記補修において孔を埋める際には、補修用材料として、蛍光体層を構成する材料を用いる請求項8に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記補修用材料として、前記形成された蛍光体層を構成する材料と同じ材料を用いる請求項9に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記蛍光体層が、輝尽性蛍光体から構成される蛍光体層である請求項2〜10のいずれかに記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記補修用材料を、粉末状態で用いる請求項8〜11のいずれかに記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記補修用材料を、バインダーに溶解した状態で用いる請求項8〜11のいずれかに記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記形成された蛍光体層が柱状結晶により構成されるものである場合においては、前記補修用材料として、別の位置にある柱状結晶を移植して用いる請求項8〜11のいずれかに記載の放射線像変換パネルの製造方法。
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