JP2008014900A - 放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成した後に、形成された蛍光体層を熱処理する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法であって、堆積が終了してから熱処理を終了するまで前記蛍光体層を密閉しないカバーで保護することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。なお、蒸着終了後、熱処理を行う前に、前記蛍光体層の加湿処理を行うこと、および表面に付着しているゴミ,埃などの除去を行うことが好ましい。
【選択図】図4
Description
この放射線画像情報記録再生システムでは、人体などの被写体を介してX線等を照射することにより、放射線像変換パネル(輝尽性蛍光体層)に被写体の放射線画像情報を記録する。記録後に、放射線像変換パネルをレーザ光等の励起光で2次元的に走査して輝尽発光を生ぜしめ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、この画像信号に基づいて再生した画像を、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置または写真感光材料などの記録材料等に、被写体の放射線画像として出力する。
これに対し、真空蒸着またはスパッタリング等の真空成膜法(気相成膜法)によって、支持体に輝尽性蛍光体層(以下、単に蛍光体層ともいう)を形成してなる蛍光体パネルも知られている。真空成膜法による蛍光体層は、真空中で形成されるので不純物が少なく、また、輝尽性蛍光体以外のバインダなどの成分が殆ど含まれないので、性能のバラツキが少なく、しかも発光効率が非常に良好であるという優れた特性を有している。さらに、蛍光体層が蛍光体の柱状構造で形成されるため、鮮鋭度の高い良好な画質が得られる。
特許文献1の放射線画像読取装置においては、クリーニング機構により、蛍光体シートの表面に付着した異物を除去するとともに、表面の電荷を除去する。これにより、電荷による放射線画像の影響や、塵埃の付着による放射線画像の悪影響を取り除いている。
特許文献2の放射線画像読取装置においては、複数の弾性ベルトを駆動し複数の弾性ベルトの間に挟まれた蓄積性蛍光体パネルを搬送する。これにより、蓄積性蛍光体パネルを搬送する際に傷が付くこと、またひずみが生じ経年劣化してしまうことを防止し、さらには、搬送中に蓄積性蛍光体パネルに塵,ゴミ,埃などの異物が付着することを防止するものである。この特許文献2においても、蛍光体層へのゴミの付着を防止し、画像読み取り時に生じる画像の劣化を未然に防止することができる。
このように、特許文献3においては、放射線画像変換パネルの製造方法の工程の中に、ゴミ除去方法を設けることにより、繰り返し使用される放射線画像変換パネルに対し、搬送系等を介して読み取り部に侵入した塵埃や蓄積性蛍光体シートに付着した塵埃等による画像読み取り精度の劣化を防止し、ノイズの少ない優れた画像が得られる。
また、特許文献3においては、保護層と蛍光体層との間にゴミが混入しないようにするものであるものの、蛍光体層を形成するに際し、ゴミ,埃などの混入を抑制するものではない。この結果、蛍光体層を形成する際に、ゴミ,埃などが混入した場合、製造された放射線像変換パネルにおいては、以下に示すような画像欠陥が生じる虞がある。
すなわち、基板202上に蛍光体層204を形成する際に、基板204にゴミ208がある場合、このゴミ208を起点として異常成長結晶206aが起き、結果として蛍光体層204において、この表面204aから突出したヒロック(Hillock)Hが生じる。このような異常成長結晶206aにより、得られる画像において、本来黒である画像が白くなる点欠陥が生じる。このように、ゴミ,埃などの混入を抑制しない場合には、必ずしも欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができるとは限らない。
ここで、本発明においては、前記カバーとして、φ1μm〜φ1.5mmの細孔を有するものを用いることが好ましい(請求項2)。
また、好ましい加湿処理条件の別の例として、温度が10℃〜60℃、相対湿度Hが45%RH<H≦80%RHの環境下において所定時間の加湿処理を行い、かつ、前記処理時間をt[時間]とした際に、下記式
X=[exp(6.4×10−2×(T+273))×H×10−10×t]
における「X」が0.2〜210を満たす加湿処理が例示される。
また、好ましい加湿処理のさらに別の例として、温度が10℃〜60℃で、相対湿度Hが80%RH<H<90%RHの環境下での、10分〜30分の加湿処理が例示される。
また、前記カバーとして、φ1μm〜φ1.5mmの細孔を有するものを用いることが好ましい(請求項5)。
また、前記蛍光体層表面の異物の除去を、当該蛍光体層表面に粘着材を接触させることで行うことが好ましい(請求項8)。
ここで、前記粘着材としてブチルゴムローラを用いることが好ましい(請求項9)。
また、前記蛍光体層表面の異物の除去を、当該蛍光体層表面に粘着材を接触させることで行うことが好ましい(請求項12)。
またさらに、前記粘着材としてブチルゴムローラを用いることが好ましい(請求項13)。
また、本発明に係る放射線像変換パネルの製造方法によれば、形成された蛍光体層の熱処理前に上記蛍光体層表面の異物を除去する構成としたことにより、熱処理時に発生する上記蛍光体層表面のシミ(変色)を防止することが可能になるという効果が得られる。
なお、上述の蛍光体層表面の異物を除去する方法としては、非接触の方法(例えば、空気流吹き付けによる除去方法)、あるいは接触式の方法(例えば、粘着材を用いる除去方法)等、種々の方法が利用可能である。
図1(a)は、本発明に係る放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の一実施形態を示す模式的断面図であり、同(b)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
また、ここでは、基板ホルダ39は、基板70をその側面から挿入して内部に係止して保持する形で保持するように構成されているものである。
例えば、米国特許第3859527号の明細書に記載されている輝尽性蛍光体である、「SrS:Ce,Sm」、「SrS:Eu,Sm」、「ThO2:Er」、および「La2O2S:Eu,Sm」。
(上記式において、MIIは、Mg,Ca,Sr,Zn,CdおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Ce,Tb,Eu,Tm,Pb,Tl,BiおよびMnからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0.5≦x≦2.5である。)
(上記式において、Lnは、La,Y,GdおよびLuからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、ClおよびBrの少なくとも一種であり、Aは、CeおよびTbの少なくとも一種である。また、0≦x≦0.1である。)
(上記式において、M2+は、Mg、Ca,Sr,ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,YbおよびErからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦x≦0.6であり、0≦y≦0.2である。)
(上記式において、MおよびNは、それぞれ、Mg,Ca,Sr,Ba,ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Sb,Tl,MnおよびSnからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦x≦6、0≦y≦1である。)
上記式において、Reは、La,Gd,YおよびLuからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Ba,SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、XおよびX’は、それぞれ、F,Cl,およびBrからなる群より選択される少なくとも一種である。また、1×10−4<x<3×10−1であり、1×10−4<y<1×10−1であり、さらに、1×10−3<n/m<7×10−1である。
上記式において、MIは、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,CuおよびNiからなる群より選択される少なくとも一種の二価の金属であり、MIIIは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,GaおよびInからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、X,X’およびX''は、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,BiおよびMgからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a<0.5であり、0≦b<0.5であり、0<c≦0.2である。
上記式において、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、ZrおよびScの少なくとも一種である。また、0.5≦a≦1.25であり、0≦x≦1であり、1×10−6≦y≦2×10−1であり、0<z≦1×10−2である。)
上記式において、MIIIは、Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびBiからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Xは、ClおよびBrの少なくとも一種である。また、0≦x≦0.1である。)
上記式において、Mは、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、Lは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Gd,Tb,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga,InおよびTlからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種である。また、1×10−2≦x≦0.5であり、0≦y≦0.1であり、さらに、aはx/2である。
上記式においてMIIは、Ba,SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、MIは、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、M’IIは、BeおよびMgの少なくとも一方の二価の金属であり、MIIIは、Al,Ga,InおよびTlからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Aは、金属酸化物であり、X,X’およびX''は、それぞれ、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a≦2であり、0≦b≦1×10−2であり、0≦c≦1×10−2であり、かつ、a+b+c≧10−6であり、さらに、0<x≦0.5であり、0<y≦0.2である。)
真空チャンバ12の一方の側面12bには、真空ポンプ18がディフューザ18aを介して接続されている。この真空ポンプ18は、例えば、油拡散ポンプが用いられる。なお、真空ポンプ18は、特に限定されるものではなく、必要な到達真空度を達成できるものであれば、真空蒸着装置で利用されている各種のものが利用可能である。一例として、クライオポンプ,ターボモレキュラポンプ等を利用することができ、さらに補助として、クライオコイル等を併用してもよい。なお、蛍光体層を成膜する製造装置10においては、真空チャンバ12内の到達真空度は、8.0×10−4Paより高い真空度が得られるものであることが好ましい。
本実施形態においては、扉13を開けて、真空チャンバ12内に基板70の搬入、および成膜材料の搬入などが行われる。また、扉13を閉じ、真空チャンバ12を閉塞して真空蒸着などが行われる。
このガス導入ノズル19の開口部(ガス導入口)19aを介して、不活性ガスが真空チャンバ12内に導入される。ガス導入ノズル19(開口部19a)は、例えば、加熱蒸発部16の近傍、かつ真空チャンバ12の底面12aに設けられている。
ガイドレール24aは、基板70の搬送方向Mに延在して、前記ネジ軸32aを中心とする対象位置に離間して2本が配置され、共に、真空チャンバ12の天井面に固定される。一方、係合部材24bは、各ガイドレール24aに2つずつ係合するように、合計4つが基板保持手段26(後述する基台36の上面)に固定される。
基台36の上面の中心には、前記ボールネジ32のナット部32bが固定され、また、基台36の上面の2本の対角線上の対称位置には、2本のガイドレール24aの間隔に応じて前記LMガイド24の係合部材24bが固定される。
取付部材38aは、矩形の断面略C字状の形状を有するものである。この取付部材38aは、C字開放部を内側に向けて、搬送方向Mと直交方向の外方からC字天井面の一部を基台36の角部に載置して、基台36に垂下するようにして固定される。従って、保持手段26は、基台36の下部には、基台36の面積よりも広い空間を有している。
また、取付部材38aと保持部材38bとの間にスペーサを入れる、ネジによる調整手段を設ける、シリンダによる昇降手段を設ける等の方法で、保持部材38bの下端位置すなわち基板70を保持/搬送する高さを調整可能にしてもよい。
本実施形態においては、上述このように基板70を直線搬送しつつ、抵抗加熱による中真空の真空蒸着によって蛍光体層を形成することにより、結晶性が良好で、膜厚分布均一性の高い蛍光体層の形成を実現している。
これにより、良好な柱状の結晶構造を有する蛍光体層を形成することができ、輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた放射線像変換パネルを製造することができる。
本実施形態に係る製造装置10においては、基板ホルダ39ごと基板70を直線搬送しつつ真空蒸着によって蛍光体層の形成を行うことにより、基板70表面における移動速度を全面的に均一にできる。
具体的には、搬送方向Mと直交する方向Hにおける成膜材料の蒸発量を均一にするだけで、基板70の全面的に均一に成膜材料の蒸気を暴露することができ、簡易な蒸発源の位置設定でも、膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成できる。しかも、直線搬送の往復搬送を行って成膜を行うことにより、微量成分であるユーロピウム(付活剤)の蛍光体層中における分散状態も、好適にできる。
一般的に、同じ膜厚であれば、加熱蒸発部16の上部の通過回数が多い程、膜厚分布均一性を高くできるので、複数回の往復動を行って蛍光体層を形成するのが好ましい。また、往復動の回数は、蛍光体層の目的膜厚または目的とする膜厚分布均一性等に応じて、適宜、決定すればよく、最後の搬送は一方向でもよい。直線搬送の搬送速度にも、特に限定はなく、LMガイド24の速度限界、往復動の回数、目的とする蛍光体層の膜厚等に応じて、適宜、決定すればよい。
防熱部材40は、後述する加熱蒸発部16(蒸発源)に対して基台36を覆うことにより、加熱蒸発部16からの輻射熱等によって、LMガイド24の係合部材24bおよびボールネジ32のナット部32bが加熱されるのを防止するものである。
また、必要に応じて、防熱部材40に接触するパイプに冷水を流す、板材(防熱部材40)の内部をくり抜いて水を流す等の手段によって、防熱部材40の冷却手段を設けてもよい。
但し、係合部材24bおよびナット部32bの加熱をより好適に防止するためには、図示例のように、これらに熱を伝達する可能性のある部材は、加熱蒸発部16に対して可能な限り防熱部材40で覆うのが好ましい。
真空チャンバ12の下方には、加熱蒸発部16が配置される。
加熱蒸発部16は、抵抗加熱によって蛍光体層を形成するための成膜材料である臭化セシウムおよび臭化ユーロピウムを蒸発させる部位である。この加熱蒸発部16により成膜材料を加熱・蒸発させることにより、臭化セシウムおよび臭化ユーロピウムの蒸気(成膜材料蒸気)からなる蒸着場が形成される。
また、本発明において、抵抗加熱用の電源(加熱制御手段)には、特に限定はなく、サイリスタ方式,DC方式,熱電対フィードバック方式等、抵抗加熱装置で用いられる各種の方式が利用可能である。また、抵抗加熱を行う際の出力にも特に限定はなく、使用する成膜材料,ルツボの形成材料の抵抗値または発熱量等に応じて、適宜、設定すればよい。
そのため、図示例においては、蒸発量(消費量)の多い臭化セシウム(蛍光体用)のルツボ50は、円筒状(ドラム型)の大型のルツボを用いている。このルツボ50は、ドラムの側面に、ドラムの軸線方向に延在するスリット状の開口を有し、この開口に一致して、開口と同形状の上下開口面を有する四角筒状のチムニー50aを蒸気排出部として設けている。
このような構成とすることにより、母体となる臭化セシウム蒸気中に、臭化ユーロピウム蒸気を充分に分散して、微量成分であるユーロピウム(付活剤)を蛍光体層中に均一に分散し、輝尽発光特性等の良好な蛍光体層を形成できる。
このような構成とすることにより、配列方向Hにおける成膜材料の蒸発蒸気量を均一にして、より膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成することができる。
ここで、複数列のルツボの列を有する場合には、各ルツボの列は、基板70の搬送方向Mから見た際に、他のルツボの列の成膜材料蒸気の排出口(前記スリット状のチムニー)の配列方向Hの間隙を、互いに埋めるように配置するのが好ましく、さらに、異なる列で成膜材料蒸気の排出口が搬送方向Mに重ならないように配置するのがより好ましい。いい換えれば、搬送方向Mから見た際に、各ルツボの列で、成膜材料蒸気の排出口が互い違いとなるようにするのが好ましい。図示例においては、配列方向Hへの2列のルツボの列において、搬送方向Mから見た際に、一方のルツボ列の電極位置に他方のルツボ列の蒸気排出口が位置するように、各ルツボの列を配列している。
このような構成とすることにより、配列方向Hにおける成膜材料の蒸発蒸気量を均一にして、より膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成することができる。
このような構成とすることにより、蒸発量の多い臭化セシウムの蒸発量センサを、搬送方向Mに対してルツボの列の外側の開いている空間に配置することができ、すなわち、蒸発量センサの選択自由度、製造装置10の設計自由度を向上することができる。
また、基板70としては、ガラス、セラミックス、カーボン、PET(ポリエチレンテレフタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート),ポリイミド等、放射線像変換パネルで利用されている各種のシート状の基板を全て利用することができる。
本実施形態に係る放射線像変換パネルの製造方法においては、最終的には、図6に示すような基板70と、この基板70上に形成された蛍光体層72と、この蛍光体層72上に形成され、蛍光体層72を封止する防湿保護層74とを有する放射線像変換パネル80を製造するが、その前段の工程では、まず、基板70上に蛍光体層72を形成する。
次に、基板70を基板ホル39ごと、プラズマ洗浄装置(図示せず)にセットし、基板70の表面70d(蛍光体層72の形成面)をプラズマ洗浄する。
次に、真空チャンバ12の扉13を開き、真空チャンバ12を大気開放状態にし、基板保持搬送機構14の保持手段26(図2(b)参照)の保持部材38bに基板ホルダ39ごと基板70を保持する。
次いで、真空ポンプ18を駆動して真空チャンバ12内を排気し、真空チャンバ12内が、例えば、8×10−4Paとなった時点で、排気を継続しつつ、ガス導入ノズル19によって開口部19aを経て真空チャンバ12内に、例えば、Arガスを導入して、真空チャンバ12内の圧力を、例えば、1.0Paに調整し、さらに、抵抗加熱用の電源を駆動して全てのルツボ50およびルツボ52に通電して成膜材料を加熱する。
形成する蛍光体層72の膜厚等に応じて設定された所定回数の直線搬送の往復動が終了したら、基板70の直線搬送を停止し、シャッタを閉塞し、抵抗加熱用の電源を切り、ガス導入ノズル19によるArガスの導入を止める。
次に、窒素ガスまたは乾燥空気を真空チャンバ12内に導入して、真空チャンバ12内を大気圧とする。すなわち、大気開放状態とする。
前述のように、本実施形態に係る放射線像変換パネルの製造方法においては、蛍光体層72を形成した基板70、すなわち蛍光体シート(蛍光体層を有する基板)に熱処理終了までの間、防塵カバーを被せることが特徴的動作である。
ここで、熱処理装置による熱処理(アニール)の前段において、前述の加湿処理工程を施すことが好ましい。この詳細については後述する。
また、ここでは、アルミ板に所定サイズの細孔を形成したものを用いているが、本発明はこれに限らず、既成のいわゆるメッシュ付き材料(金網状,焼結体状等)を適宜選択して用いることも可能である。
実用上有効と考えられる温湿度条件としては、蛍光体シートを、温度20℃〜50℃、相対湿度30%〜80%の環境で5分〜1週間保管するという条件が、一つの目安となる。ただし、この条件は、蛍光体シートを構成する蛍光体の種類や蒸着条件、さらには、保管後における熱処理の条件等に影響されることもあると考えられる。
具体的には、上述のようなカバーを装着する代わりに、蒸着が終了した蛍光体層に関して、熱処理を開始するまでにその表面に付着しているゴミ,埃などを除去する工程を導入する実施形態が実施可能である。
なお、製造装置10を用いた蒸着方法によって放射線像変換パネルを製造する過程に関しては、先に説明した動作と同様であるので、以下の説明では、形成された放射線像変換パネル(蛍光体層)についてのゴミ,埃などの除去工程から説明を開始する。
具体的除去方法としては、非接触の方法(例えば、空気流吹き付けによる除去方法)、あるいは接触式の方法(例えば、粘着材を用いる除去方法)等、種々の方法が利用可能である。
例えば、図7に示すような所定の風量・風速でエアー(110a)を噴出するエアーガン(空気噴出銃)110を、蛍光体層72の一方の端から他方の端へ、図中に矢印Sで示すように移動させることにより、蛍光体層72上のゴミ112a,112bを除去する装置を用いる方法が適用可能である。
ここで、上述の粘着材からなるローラ(120a)の硬度(Hs JIS−A)は、30°程度が好ましく、JIS Z0237で規定される、粘着力は91hPa程度であることが好ましい。
熱処理が終了し、十分に冷却された状態の蛍光体シートは、次に、次工程の防湿保護層74(図6参照)を形成する防湿保護層形成装置(図示せず)まで搬送する。そして、蛍光体層72の上に、例えばディスペンサー等を用いて接着剤を塗布し、接着層76を形成する。
次いで、例えば、ロール状に巻回された防湿保護フィルム(図示せず)を引き出し、熱ラミネーション法により、上記接着層76の上に防湿保護フィルムを貼り付けて、外縁を基板70の溝70bに植設した枠70cの上縁部に密着させて防湿保護層74(図6参照)を形成する。このようにして、図6に示す放射線像変換パネル80を製造することができる。
なお、防湿保護層74としては、予め接着剤が塗布された保護フィルムを用いて形成することもできる。
また、防湿保護層74は、40℃の温度で相対湿度が90%の環境下において、透湿度が0.2〜0.6(g/(m2・day))であることが好ましい。
通常は、真空チャンバ内における蛍光体層の形成終了後、特別な処理を施すことなく、所定の時間経過後に蛍光体層の感度上昇を目的とする熱処理(アニール)を行っているが、本発明者は、熱処理前に蛍光体層を20℃〜50℃、相対湿度30%〜80%の環境で5分〜1週間保管する工程(すなわち、加湿処理工程)を経ることで、蛍光体層の感度上昇を実現できることを見出し、この工程を追加することを、実質上、基本とするようにしたものである。
この加湿処理工程による蛍光体層の感度上昇に係る降下の原因は、必ずしも定かではないが、実験的には明確な効果が得られるものであり、実用上、非常に有効な処理であるということができるものである。
ここでは、図1に示した実施形態に係る製造装置(放射線像変換パネル製造装置)を用いて。以下の各種類の方法で、放射線像変換パネル(蛍光体シート)を作製した。
(1)形成された蛍光体層に、ゴミ付着に対して特別に保護措置を講じることなしに、加湿処理工程並びに熱処理工程を施したもの:これを比較例1とする
(2)形成された蛍光体層に、ゴミ付着を防止するための保護カバー(φ3μmの細孔付きメッシュ構造のもの)を装着したもの(この保護カバーは、熱処理工程後、冷却が終了するまで装着を継続した):これを実施例1とする
(3)形成された蛍光体層に、ゴミ付着を防止するための保護カバー(φ20μmの細孔付きメッシュ構造のもの)を装着したもの(この保護カバーは、熱処理工程後、冷却が終了するまで装着を継続した):これを実施例2とする
(5)形成された蛍光体層に、ゴミ付着を防止するための保護カバー(φ700μmの細孔付きメッシュ構造のもの)を装着したもの(この保護カバーは、熱処理工程後、冷却が終了するまで装着を継続した):これを実施例4とする
(6)形成された蛍光体層に、ゴミ付着を防止するための保護カバー(φ1000μmの細孔付きメッシュ構造のもの)を装着したもの(この保護カバーは、熱処理工程後、冷却が終了するまで装着を継続した):これを実施例5とする
(8)形成された蛍光体層に、ゴミ付着を防止するための保護カバー(φ3μmの細孔付きメッシュ構造のもの)を装着したもの(この保護カバーは、加湿処理工程終了後、熱処理工程に入る前に取り外した):これを実施例7とする
(9)形成された蛍光体層に、ゴミ付着を防止するための保護カバー(φ3μmの細孔付きメッシュ構造のもの)を装着したもの(この保護カバーは、熱処理工程終了後、冷却の前に取り外した):これを実施例8とする
の9種類の方法で放射線像変換パネル(蛍光体シート)を、各10枚ずつ作製した。
(1)形成された蛍光体層に付着している(可能性のある)ゴミを図7に示したような空気流吹き付けによる除去装置(エアーガン)を用いて除去した後、加湿処理工程(この際、上述の保護カバーは装着していない)を施し、その後に再び、エアーガンを用いてゴミ除去処理を行ったもの(エアーガンの空気流吹き付け速度は5m/sとした、また、ゴミ除去処理終了後、熱処理前に、平板状の保護カバー(すなわち、細孔なしの保護カバー)を装着した):これを実施例9とする
(3)上と同様の方法で、エアーガンの空気流吹き付け速度を75m/sとしたもの:これを実施例11とする
(4)上と同様の方法で、エアーガンの空気流吹き付け速度を0.5m/sとしたもの:これを実施例12とする
の5種類の方法で放射線像変換パネル(蛍光体シート)を、各10枚ずつ作製した。
なお、各放射線像変換パネルの構成は、図6に示すように、基板70に蛍光体層72が設けられ、この蛍光体層72を封止する防湿保護層74が設けられた構成とした。
また、基板には、アルミニウム合金基板(YH75(白銅(株)製)を用いた。また、基板の大きさは、450mm×450mm×10mmとした。
実施例1〜実施例13および比較例1の各放射線像変換パネル(蛍光体シート)の製造方法の概要は、以下の通りである。
ここでは、蒸発源(成膜材料)として、純度が4N以上の臭化セシウム(CsBr)粉末、および純度が3N以上の臭化ユーロピウム(EuBr2)の溶融品を用意した。EuBr2溶融品は、酸化を防ぐため十分なハロゲン雰囲気としたチューブ炉中にて、白金製ルツボに粉体を入れ、温度800℃に加熱して溶融、冷却後、炉から取り出して作製したものを用いている。各原料中の微量元素をICP−MS法(誘導結合高周波プラズマ分光分析−質量分析法)により分析した結果、CsBr中のCs以外のアルカリ金属(Li,Na,K,Rb)はそれぞれ10質量ppm以下であり、アルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr,Ba)などの他の元素は、2質量ppm以下であった。また、EuBr2中のEu以外の希土類元素は各々20質量ppm以下であり、他の元素は10質量ppm以下であった。これらの原料は、吸湿性が高いので、露点−20℃以下の乾燥雰囲気を保ったデシケータ内で保管し、使用直前に取り出すようにした。
なお、ここでは、基板70と加熱蒸発部16との距離は100mmとし、基板70を直線搬送しながら、蛍光体層72を形成した。
上で得られた各基板については、その都度、前述の方法に従ってこれを放射線像変換パネル80に加工し、性能比較に備えた。
前述の3種類の基板の処理のそれぞれが終了した後に、真空チャンバ12内を8×10−4Paの真空度まで排気後、Arガスを所定量導入して1.0Paの真空度とした。
そして、基板70と加熱蒸発部16(ルツボ50およびルツボ52)との間に設けられたシャッタを閉じた状態で、各蒸発源(CsBrおよびEuBr2)をそれぞれ抵抗加熱装置で加熱溶融させた。加熱開始から60分経過後、まず、ルツボ50側のシャッタだけを開いて、基板70の直線搬送を開始し、基板70の表面にCsBr蛍光体母体を堆積させた。
なお、堆積速度は6μm/分とした。また、加熱蒸発部16の各々の抵抗加熱装置の抵抗電流を調整して、輝尽性蛍光体層におけるEu/Csのモル濃度比が、0.003/1となるように制御した。
次に、真空チャンバ12内に窒素ガスまたは乾燥空気を導入し、真空チャンバ12内を大気圧にした。そして、扉13を開けて、真空チャンバ12内から基板70を基板ホルダ39ごと取り出した。
なお、この際における各実施例,比較例における保護カバーの装着の有無,ゴミ除去処理の態様等は、前述の通りである。
なお、この際における各実施例,比較例における保護カバーの装着の有無は、前述の通りである。
次いで、ロール状に巻回された防湿保護フィルムを引き出し、熱ラミネーション法により、蛍光体層72の上に防湿保護フィルムを貼り付けて、外縁を基板の表面に密着させて防湿保護層74を形成した。
このようにして、各放射線像変換パネルを作製した。
先ず、放射線像変換パネルの表面全面に、タングステン管球を用い、管電圧が80kVのX線を線量10mR(2.58×10−6C/kg)で照射した後、ラインスキャナ方式の画像読取装置(波長が660nmの半導体レーザ光を照射し、放射線像変換パネルの表面から放射された輝尽発光光を、ライン状に受光素子が配置されたCCDで受光するもの)で読み取り、読み取った光(受光した光)を電気信号に変換して、放射線画像として一様画像を得た。この放射線画像(一様画像)をレーザプリンタによりフィルム上に可視像として出力した。
下記の表1(第1群の実験に係るもの)および表2(第1群の実験に係るもの+比較例1)に、この結果である各放射線像変換パネルの点欠陥の個数を示す。
上述の実施例6に係る放射線像変換パネル並びに実施例7,実施例8に係る放射線像変換パネルでは、シミが発生してはいるものの、その発生個数が明確に減少しており、本発明の効果は明らかである。
このように、本発明の放射線像変換パネルの製造方法においては、欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができた。
12 真空チャンバ
14 基板保持搬送手段
16 加熱蒸発部
18 真空ポンプ
19 ガス導入ノズル
20 制御部
22 駆動手段
24 LMガイド
26 (基板)保持手段
30 保持部材
32 ボールネジ
34 モータ
36 基台
38 保持機構
40 防熱部材
50,52 ルツボ
70 基板
70b 基板の溝
70c 枠
70d 基板の表面
72 輝尽性蛍光体層(蛍光体層)
74 防湿保護層
76 接着層
80 放射線像変換パネル
100 防塵カバー
102 支持脚
110 エアーガン(空気噴出銃)
110a (噴出)エアー
112a,112b ゴミ
120 ゴミ取りローラ
120a 粘着材ローラ
Claims (14)
- 真空チャンバ内で、気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成した後に、形成された蛍光体層を熱処理する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法であって、
堆積が終了してから熱処理を終了するまで前記蛍光体層を密閉しないカバーで保護することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。 - 前記カバーとして、φ1μm〜φ1.5mmの細孔を有するものを用いる請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 真空チャンバ内で、気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成した後に、形成された蛍光体層を熱処理する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法であって、
熱処理前に前記蛍光体層を所定の温湿度条件で所定の期間保管する工程を含み、
蒸着が終了してから熱処理を終了するまで前記蛍光体層を密閉しないカバーで保護することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。 - 少なくとも前記蛍光体層を所定の温湿度条件で所定の期間保管する工程においては、前記蛍光体層を密閉しないカバーで保護する請求項3に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記カバーとして、φ1μm〜φ1.5mmの細孔を有するものを用いる請求項3または4に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 真空チャンバ内で、気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成した後に、形成された蛍光体層を熱処理する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法であって、
熱処理前に前記蛍光体層表面の異物を除去することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。 - 前記蛍光体層表面の異物の除去を、当該蛍光体層表面に風速2m/s以上の空気を吹き付けることで行う請求項6に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記蛍光体層表面の異物の除去を、当該蛍光体層表面に粘着材を接触させることで行う請求項6に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記粘着材としてブチルゴムローラを用いる請求項8に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 真空チャンバ内で、気相堆積法により基板上に蛍光体層を形成した後に、形成された蛍光体層を熱処理する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、
熱処理前に前記蛍光体層を所定の温湿度条件で所定の期間保管する工程を含み、
熱処理前に前記蛍光体層表面の異物を除去することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。 - 前記蛍光体層の異物の除去を、当該蛍光体層表面に風速2m/s以上の空気を吹き付けることで行う請求項10に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記蛍光体層表面の異物の除去を、当該蛍光体層表面に粘着材を接触させることで行う請求項10に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 前記粘着材としてブチルゴムローラを用いる請求項12に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の放射線像変換パネルの製造方法により製造された放射線像変換パネル。
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