JP2006090853A - 放射線画像変換パネルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鮮鋭性や発光輝度を向上させる。
【解決手段】本発明に係る輝尽性蛍光体パネルの製造方法は、所定の基板2上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層3が形成された蛍光体パネル4を相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程を備えている。
【選択図】図3
【解決手段】本発明に係る輝尽性蛍光体パネルの製造方法は、所定の基板2上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層3が形成された蛍光体パネル4を相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程を備えている。
【選択図】図3
Description
本発明は、被写体の放射線画像を形成する際に用いられる放射線画像変換パネルの製造方法に関する。
従来から、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、いまなお、世界中の医療現場で用いられている。近年では、輝尽性蛍光体パネルを放射線画像変換パネルの一要部として用いたコンピューテッドラジオグラフィー(CR(computed radiography))も商品化され、高感度化及び画質の改善が日夜続けられている。
上記「輝尽性蛍光体パネル」というのは、被写体を透過した放射線を蓄積して、励起光の照射等により、蓄積した放射線をその線量に応じた強度で輝尽発光するものであり、所定の基板上に輝尽性蛍光体が層状に形成された構成を有している。そのような輝尽性蛍光体パネルの製造方法の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の製造方法では、公知の気相堆積法により所定の基板上に輝尽性蛍光体層を形成してその基板を熱処理している。(段落番号0034,0035参照)。
特開2003−279696号公報
ここで、特許文献1に記載の製造方法のように、輝尽性蛍光体層を形成した基板を熱処理すると、輝尽性蛍光体の結晶中から水成分が除去され、輝尽性蛍光体層の輝尽発光量は増加するが、輝尽性蛍光体パネルを単に熱処理しただけでは、輝尽発光量をある一定レベルまでしか増加させることができず、鮮鋭性に欠けたり、発光輝度が低下したりする可能性がある。
本発明の目的は、鮮鋭性や発光輝度を向上させることである。
本発明の目的は、鮮鋭性や発光輝度を向上させることである。
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明の放射線画像変換パネルの製造方法は、
所定の基板上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層が形成された蛍光体パネルを相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程を備えることを特徴としている。
所定の基板上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層が形成された蛍光体パネルを相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程を備えることを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記加湿工程の後に前記蛍光体パネルを60〜160℃で加熱して脱水する脱水工程を備えることを特徴としている。
請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記加湿工程の後に前記蛍光体パネルを60〜160℃で加熱して脱水する脱水工程を備えることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記加湿工程の前に前記蛍光体パネルを有機溶剤ガス雰囲気下で加熱する有機溶剤ガス雰囲気加熱工程を備えることを特徴としている。
請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記加湿工程の前に前記蛍光体パネルを有機溶剤ガス雰囲気下で加熱する有機溶剤ガス雰囲気加熱工程を備えることを特徴としている。
請求項4に記載の発明の放射線画像変換パネルの製造方法は、
所定の基板上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層が形成された蛍光体パネルを空気又は不活性ガス雰囲気下で加熱する空気・不活性ガス雰囲気加熱工程と、
前記空気・不活性ガス雰囲気加熱工程の後に前記蛍光体パネルを有機溶剤ガス雰囲気下で加熱する有機溶剤ガス雰囲気加熱工程と、
前記有機溶剤ガス雰囲気加熱工程の後に前記蛍光体パネルを相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程と、
前記加湿工程の後に前記蛍光体パネルを60〜160℃で加熱して脱水する脱水工程と、
を備えることを特徴としている。
所定の基板上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層が形成された蛍光体パネルを空気又は不活性ガス雰囲気下で加熱する空気・不活性ガス雰囲気加熱工程と、
前記空気・不活性ガス雰囲気加熱工程の後に前記蛍光体パネルを有機溶剤ガス雰囲気下で加熱する有機溶剤ガス雰囲気加熱工程と、
前記有機溶剤ガス雰囲気加熱工程の後に前記蛍光体パネルを相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程と、
前記加湿工程の後に前記蛍光体パネルを60〜160℃で加熱して脱水する脱水工程と、
を備えることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、
請求項3又は4に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記有機溶剤がフッ素系溶剤でかつ不燃性溶剤であることを特徴としている。
請求項3又は4に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記有機溶剤がフッ素系溶剤でかつ不燃性溶剤であることを特徴としている。
請求項1〜5に記載の発明では、鮮鋭性や発光輝度を向上させることができる(下記実施例参照)。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
図1は放射線画像変換パネル1の断面図である。
図1に示す通り、放射線画像変換パネル1は、所定の基板2上に輝尽性蛍光体層3が形成された蛍光体パネル4を有している。
図1に示す通り、放射線画像変換パネル1は、所定の基板2上に輝尽性蛍光体層3が形成された蛍光体パネル4を有している。
基板2は短形状を呈している。基板2は、高分子材料、ガラス、金属等で構成されており、特に、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等の板ガラス、又はアルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シート若しくはそれら金属酸化物の被覆層を有する金属シートで構成されているのが好ましい。
基板2の表面2a(図1中上面)は滑面であってもよいし、マット面であってもよい。基板2の表面2a上には、輝尽性蛍光体層3との接着性を向上させる目的で下引層を設けてもよいし、基板2を透過して輝尽性蛍光体層3に励起光が入射するのを防止する目的で光反射層が設けられていてもよい。
輝尽性蛍光体層3はCsBr:Eu等の公知の輝尽性蛍光体から構成されており、蒸着法,スパッタリング法,CVD(Chemical Vapor Deposition)法,PVD(Physical Vapor Deposition)法,イオンプレーティング法等の公知の気相堆積法で形成されている。輝尽性蛍光体層3は1層で構成されていてもよいし、2以上の層で構成されていてもよい。
図2は蛍光体パネル4の拡大断面図であって輝尽性蛍光体層3を巨視的にみた断面図である。
図2に示す通り、輝尽性蛍光体層3は、輝尽性蛍光体から構成された多数の柱状結晶3a,3a,…が互いに間隔をあけて並んだ柱状構造を有している。各柱状結晶3aは基板2の表面2aの法線Rに対し所定角度で傾斜している。
図2に示す通り、輝尽性蛍光体層3は、輝尽性蛍光体から構成された多数の柱状結晶3a,3a,…が互いに間隔をあけて並んだ柱状構造を有している。各柱状結晶3aは基板2の表面2aの法線Rに対し所定角度で傾斜している。
上記構成を具備する蛍光体パネル4は、図1に示す通り、輝尽性蛍光体層3上に配置された防湿性の第1の保護フィルム10と、基板2下に配置された防湿性の第2の保護フィルム20との間に介在している。
第1の保護フィルム10は蛍光体パネル4よりやや大きな面積を有しており、蛍光体パネル4の輝尽性蛍光体層3と実質的に接着していない状態でその周縁部が蛍光体パネル4の周縁部より外側に延出している。「第1の保護フィルム10が輝尽性蛍光体層3と実質的に接着していない状態」とは、第1の保護フィルム10と輝尽性蛍光体層3とが光学的に一体化していない状態をいい、具体的には、第1の保護フィルム10と輝尽性蛍光体層3との接触面積が輝尽性蛍光体層3の表面(第1の保護フィルム10に対向する面)の面積の10%以下である状態をいう。
他方、第2の保護フィルム20も蛍光体パネル4よりやや大きな面積を有しており、その周縁部が蛍光体パネル4の周縁部より外側に延出している。
放射線画像変換パネル1では、第1,第2の保護フィルム10,20の各周縁部同士が全周にわたって融着されており、第1,第2の保護フィルム10,20が蛍光体パネル4を完全に封止した構成を有している。第1,第2の保護フィルム10,20は、蛍光体パネル4を封止することにより、蛍光体パネル4への水分の浸入を確実に防止して当該蛍光体パネル4を保護するようになっている。
図1中上部の拡大図に示す通り、第1の保護フィルム10は、第1の層11、第2の層12、第3の層13の3層を積層した積層構造を有している。
第1の層11は、空気層14を介して蛍光体パネル4の輝尽性蛍光体層3と対向する層であり、熱融着性を有する樹脂で構成されている。「熱融着性を有する樹脂」としては、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA),キャスティングポリプロピレン(CPP),ポリエチレン(PE)等が挙げられる。
第2の層12はアルミナ,シリカ等の金属酸化物で構成された層であり、公知の蒸着法により第3の層13下に蒸着されている。第2の層12は、第1の保護フィルム10の防湿性能を強化するものであるが、なくてもよい。
第3の層13は第2の層12上に積層されており、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂で構成されている。
このように、金属酸化物で構成された第2の層12を有する第1の保護フィルム10は、加工性や透明性に優れており、防湿性及び酸素透過性の性質の面で温度や湿度の影響を受けにくい。そのため、当該第1の保護フィルム10は、環境によらずに安定した画像品質が要求される輝尽性蛍光体利用型の医療用放射線画像変換パネル1に好適である。
なお、第3の層13上には、第1の層11と同様の層、第2の層12と同様の層、第3の層13と同様の層又は第1の層11、第3の層13とは異なる樹脂で構成された層が1層又は2層以上積層されてもよい。
特に、第3の層13上に、アルミナ,シリカ等の金属酸化物で構成された第2の層12と同様の層を積層すると、第1の保護フィルム10は、その第2の層12に相当する層の積層数に応じた最適な防湿性能を発揮するようになっている。第2の層12又はこれと同様の層の積層方法としては、公知の方法であればどのような方法でも適用可能であるが、ドライラミネート方式に従う方法を適用するのが作業性の面で好ましい。
図1中下部の拡大図に示す通り、第2の保護フィルム20は、第1の層21、第2の層22、第3の層23の3層を積層した積層構造を有している。
第1の層21は空気層24を介して蛍光体パネル4の基板2と対向している。第1の層21は上記第1の保護フィルム10の第1の層11と同様の樹脂で構成され、その周縁部において第1の保護フィルム10の第1の層11と融着している。
第2の層22は第1の層21下にラミネートされた層であり、アルミニウムで構成されている。第2の層22は、第2の保護フィルム20における防湿性能を向上させるものであるが、なくてもよい。
第3の層23は第2の層22下に積層されており、PET等の樹脂で構成されている。
なお、第3の層23下には、第1の層21と同様の層、第2の層22と同様の層、第3の層23と同様の層又は第1の層11、第3の層13とは異なる樹脂で構成された層が1層又は2層以上積層されてもよい。
続いて、本発明に係る放射線画像変換パネル1の製造方法について説明する。
図3は、放射線画像変換パネル1の製造方法の各工程を経時的に表現した概略図面である。
始めに、所定の基板2を準備してその基板2上に公知の気相堆積法で輝尽性蛍光体層3を形成する(以下「輝尽性蛍光体層形成工程」という。)。
始めに、所定の基板2を準備してその基板2上に公知の気相堆積法で輝尽性蛍光体層3を形成する(以下「輝尽性蛍光体層形成工程」という。)。
例えば、複数存在する公知の気相堆積法のうち、蒸着法で輝尽性蛍光体層3を形成する場合について簡単に説明すると、図3(a)に示す通り、基板2を蒸着装置内の基板ホルダに固定・設置し、当該蒸着装置内を排気して真空状態とする。その後、抵抗加熱法,エレクトロンビーム法等の方法により輝尽性蛍光体を蒸着源として当該輝尽性蛍光体を加熱・蒸発させ、基板2の表面2a上に輝尽性蛍光体を所望の厚さになるまで成長させ、輝尽性蛍光体層3を基板2上に形成する。
ここで、図2に示す通り、蒸着装置内の基板ホルダに固定した基板2の表面2aの法線Rに対し、輝尽性蛍光体の蒸気流の入射角度をθ2とし、形成しようとする柱状結晶3aの傾斜角度をθ1とすると、経験的に傾斜角度θ1は入射角度θ2の約半分となり、入射角度θ2に応じた傾斜角度θ1で多数の柱状結晶3a,3a,…が形成される。すなわち、入射角度θ2=60°で輝尽性蛍光体の蒸気流を基板2の表面2aに入射させれば、当該基板2の表面2aには傾斜角度θ1=30°の多数の柱状結晶3a,3a,…を形成することができる。
基板2の表面2aに対し輝尽性蛍光体の蒸気流を所定の入射角度で供給する方法としては、蒸着源に対し基板2を傾斜させるように配置する方法や、基板2と蒸着源とを互いに平行に設置してスリット等で輝尽性蛍光体の蒸気流の斜め成分のみを蒸着面から蒸発させる方法等がある。
輝尽性蛍光体層形成工程の処理を終えたら、図3(b)に示す通り、輝尽性蛍光体層3が形成された基板2(蛍光体パネル4)を公知の恒温槽30の内部に設置して当該恒温槽30の内部を空気又は不活性ガス(窒素、アルゴン等)の雰囲気とし(真空雰囲気としてもよい。)、その雰囲気下で蛍光体パネル4を100℃程度で所定時間加熱し、輝尽性蛍光体層3の各柱状結晶3a中から水成分を除去する(以下「空気・不活性ガス雰囲気加熱工程」という。)。
空気・不活性ガス雰囲気加熱工程の処理を終えたら、図3(c)に示す通り、蛍光体パネル4を公知の恒温槽40の内部に設置して当該恒温槽40の内部を有機溶剤ガス雰囲気とし、その雰囲気下で蛍光体パネル4を100℃以上(好ましくは100℃以上で160℃以下)で所定時間加熱する(以下「有機溶剤ガス雰囲気加熱工程」という。)。
ここで、有機溶剤ガス雰囲気加熱工程で使用可能な「有機溶剤」について説明する。
当該有機溶剤としてはハロゲン系溶剤を用いるのが好ましい。ハロゲン系溶剤とは、炭化水素化合物において水素原子の少なくとも1つがF,Cl,Br,I等のハロゲンに属する原子で置換された化合物を含む溶剤である。当該ハロゲン系溶剤は構造的には各元素同士の結合が飽和結合だけで構成された化合物であってもよいし、不飽和結合を含む化合物であってもよいし、環状の化合物であってもよいし、鎖状の化合物であってもよいし、化合物中の原子又は分子が水酸基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基で置換された化合物であってもよい。
当該有機溶剤としてはハロゲン系溶剤を用いるのが好ましい。ハロゲン系溶剤とは、炭化水素化合物において水素原子の少なくとも1つがF,Cl,Br,I等のハロゲンに属する原子で置換された化合物を含む溶剤である。当該ハロゲン系溶剤は構造的には各元素同士の結合が飽和結合だけで構成された化合物であってもよいし、不飽和結合を含む化合物であってもよいし、環状の化合物であってもよいし、鎖状の化合物であってもよいし、化合物中の原子又は分子が水酸基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基で置換された化合物であってもよい。
当該ハロゲン系溶剤として好ましい化合物としては、
(1)加熱処理に供される点(引火性や爆発性等に関わる消防法的な観点から引火点をもたない等の特性が要求される点)の観点から、引火点をもたない不燃性溶剤を適用するのがよい。この場合、後述の脱水工程において、使用しようとするハロゲン系溶剤の種類を考慮せずに加熱温度を任意に設定することができるが、加熱温度を引火点以下の温度で行うのが好ましい。
(1)加熱処理に供される点(引火性や爆発性等に関わる消防法的な観点から引火点をもたない等の特性が要求される点)の観点から、引火点をもたない不燃性溶剤を適用するのがよい。この場合、後述の脱水工程において、使用しようとするハロゲン系溶剤の種類を考慮せずに加熱温度を任意に設定することができるが、加熱温度を引火点以下の温度で行うのが好ましい。
さらに上記(1)の観点を含めて、
(2)環境適性
(3)生体への有害性
等の観点から、昨今話題にのぼるフロン代替素材が有用であると考えられている。その中でも上記(2),(3)に優れた最新のフロン代替素材である「HFE(ハイドロフルオロエーテル)」を当該ハロゲン系溶剤として好適に用いることができる。
(2)環境適性
(3)生体への有害性
等の観点から、昨今話題にのぼるフロン代替素材が有用であると考えられている。その中でも上記(2),(3)に優れた最新のフロン代替素材である「HFE(ハイドロフルオロエーテル)」を当該ハロゲン系溶剤として好適に用いることができる。
HFEは、炭素、フッ素、水素、1つ以上のエーテル酸素原子からなり、さらに炭素主鎖中に組み込まれた1つ以上のさらなるヘテロ原子、例えば、硫黄又は三価窒素原子を含んでいてもよい。HFEは直鎖状を呈していてもよいし、枝分かれ状を呈していてもよいし、環状を呈していてもよいし、又はそれらの組み合わせで構成された構造を有していてもよく、例えば、アルキル脂環式であってもよい。ただし、HFEは不飽和結合を含まないことが好ましい。
具体的なHFEとして、下記一般式(4)によって示される化合物をその一例として用いることができる。
(R4−O)a−R5 … (4)
上記一般式(4)中、「a」は1〜3の数であり、「R4」及び「R5」はアルキル基及びアリール基からなる群より選択される基であり、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。「R4」及び「R5」のうち少なくとも1つは、少なくとも1個のフッ素原子と、少なくとも1個の水素原子とを含むものであり、「R4」及び「R5」のいずれか一方又は両方が1個以上の鎖中ヘテロ原子を含んでもよく、HFEは当該HFE中のフッ素原子の総数が水素原子の総数以上であるのが好ましい。「R4」及び「R5」は直鎖状を呈していてもよいし、枝分かれ状を呈していてもよいし、環状を呈してもいてもよく、さらに言えば1個以上の不飽和の炭素−炭素結合を含んでいてもよいが、「R4」及び「R5」が両方とも各元素同士で飽和結合した原子団であるのが好ましい。
このような性質を有するHFEとしては、例えば住友スリーエム株式会社製のノベック(登録商標)HFE−7100,7100DL,7200やダイキン工業株式会社製のHFE−S7(商品名)等があり、これら市販のHFEを有機溶剤ガス雰囲気加熱工程で使用可能なハロゲン系溶剤として好適に用いることができる。
有機溶剤ガス雰囲気加熱工程の処理を終えたら、図3(d)に示す通り、蛍光体パネル4を公知の恒温恒湿槽50の内部に設置して当該恒温恒湿槽50の内部を温度23〜60℃,相対湿度30〜60%の温湿環境とし、その環境下で蛍光体パネル4を12時間以上加湿する(以下「加湿工程」という。)。
加湿工程の処理を終えたら、図3(e)に示す通り、蛍光体パネル4を公知の恒温槽60の内部に設置して当該蛍光体パネル4を60〜160℃で所定時間加熱し、蛍光体パネル4の輝尽性蛍光体層3の各柱状結晶3a中から水成分を除去し、蛍光体パネル4を脱水する(以下「脱水工程という。)。
脱水工程では、60〜160℃の温度範囲内で加熱温度を高く設定すればするほど、より短時間で脱水工程の処理を終了することができ、輝尽性蛍光体層3の発光輝度(感度)や製造される放射線画像変換パネル1の画質を向上させることができる。
脱水工程で加熱温度が60℃を下回ると、上記のような効果を発揮させることは可能であるが、そのような効果を得るには加熱時間を十分に長く設定しなければならず、放射線画像変換パネル1の生産性に劣る。そのため、当該加熱温度を60℃以上で設定するのがよい。他方、脱水工程で加熱温度が160℃を上回ると、輝尽性蛍光体層3の各柱状結晶3aが損傷する可能性があるため、当該加熱温度を160℃以下で設定するのがよい。
脱水工程の処理を終えたら、図3(f)に示す通り、蛍光体パネル4を第1,第2の各保護フィルム10,20間に挟んでそれら第1,第2の保護フィルム10,20の各周縁部をインパルスシーラで加熱・融着し、蛍光体パネル4を第1,第2の保護フィルム10,20で封止する(以下「封止工程」という。)。以上の輝尽性蛍光体層形成工程から封止工程までの各処理をおこなうことで、放射線画像変換パネル1を製造することができる。
本実施例では、放射線画像変換パネルを想定した複数種類の試料を作製してそれら各試料につき感度(発光輝度)、鮮鋭性及び輝度低下率を測定・評価した。
(1)試料の作製
(1.1)蛍光体パネルの作製
基板として、20cm×20cmからなる正方形状で厚さが500μmのアルミを準備し、基板の一方の面に光反射層を形成した。光反射層の形成は、公知の蒸着装置を用いて酸化チタン(フルウチ化学社製)と酸化ジルコニウム(フルウチ化学社製)とを基板上に蒸着することでおこなった。
(1.1)蛍光体パネルの作製
基板として、20cm×20cmからなる正方形状で厚さが500μmのアルミを準備し、基板の一方の面に光反射層を形成した。光反射層の形成は、公知の蒸着装置を用いて酸化チタン(フルウチ化学社製)と酸化ジルコニウム(フルウチ化学社製)とを基板上に蒸着することでおこなった。
その後、各基板の光反射層上にCsBr:Euからなる輝尽性蛍光体を蒸着し、各基板の光反射層上に輝尽性蛍光体層を形成した。具体的には、始めに、各基板の光反射層を形成した面を蒸着装置の蒸着源に向けた状態で蒸着装置内の真空チャンバー内に各基板を固定して真空チャンバー内を240℃に加温し、その状態で真空チャンバー内に窒素ガスを導入して真空チャンバー内を真空度0.1Paとした。このとき、蒸着源と基板との距離を60cmとした。その後、基板の光反射層を形成した面の法線方向に対して30°の角度で輝尽性蛍光体の蒸気が入射するように、蒸着源と基板との間にアルミニウム製のスリットを配置した。その後、基板を面方向に搬送しながら蒸着をおこない、500μm厚の柱状構造を有する輝尽性蛍光体層を各基板の光反射層上に形成し、蛍光体パネルを製造した。
(1.2)試料1の作製
上記(1.1)の項目で作製した蛍光体パネルを2枚の保護フィルムで封止してこれを「試料1」とした。
上記(1.1)の項目で作製した蛍光体パネルを2枚の保護フィルムで封止してこれを「試料1」とした。
具体的には、厚さ14μmのPET層と厚さ30μmのCPP層とを積層した第1の保護フィルムと、厚さ188μmのPET層と厚さ30μmのCPP層とを積層した第2の保護フィルムとを準備して、蛍光体パネルの輝尽性蛍光体層に第1の保護フィルムのCPP層を、蛍光体パネルの基板に第2の保護フィルムのCPP層を対向させ、その状態で第1,第2の保護フィルムを互いに重ね合わせた。その後、第1,第2の保護フィルムで囲まれた空間を減圧しながら、第1,第2の各保護フィルムの周縁部をインパルスシーラで融着して蛍光体パネルを第1,第2の保護フィルムで封止し、これを「試料1」とした。
なお、第1,第2の保護フィルム同士の融着に際し、インパルスシーラとしてヒータが3mmのものを使用し、第1の保護フィルムと第2の保護フィルムとの融着部から蛍光体パネルの周縁部までの間隔が3mmとなるように処理した。
(1.3)試料2〜4,10〜14,20〜22,30〜31,40〜45の作製
上記(1.1)の項目で作製した蛍光体パネルに対して下記表1に記載した条件で各工程の処理をおこない(上記実施形態参照)、その蛍光体パネルに対し上記(1.2)の項目の内容と同様に2枚の保護フィルムで封止し、これらを「試料2〜4,10〜14,20〜22,30〜31,40〜45」とした。ただし、下記表1中、条件が「−」で示された工程は省略したことを意味する。
上記(1.1)の項目で作製した蛍光体パネルに対して下記表1に記載した条件で各工程の処理をおこない(上記実施形態参照)、その蛍光体パネルに対し上記(1.2)の項目の内容と同様に2枚の保護フィルムで封止し、これらを「試料2〜4,10〜14,20〜22,30〜31,40〜45」とした。ただし、下記表1中、条件が「−」で示された工程は省略したことを意味する。
なお、「空気・不活性ガス雰囲気加熱工程」,「有機溶剤ガス雰囲気加熱工程」の各処理では処理時間(加熱時間)を60分とし、「脱水工程」の処理では処理時間(加熱時間)を30分とした。
また「有機溶剤ガス雰囲気加熱工程」の処理ではガス圧を大気圧とし、「有機溶剤ガス雰囲気加熱工程」の「有機溶剤」の「A」〜「D」として下記の溶剤を用いた。
A…住友スリーエム(株)製ノベックHFE−7100(C4F9OCH3)
B…日本ゼオン(株)製ゼオローラH(環状C5H3F7)
C…ディップソール(株)製SC52S(HCBr系)
D…四塩化炭素(CCl4)
A…住友スリーエム(株)製ノベックHFE−7100(C4F9OCH3)
B…日本ゼオン(株)製ゼオローラH(環状C5H3F7)
C…ディップソール(株)製SC52S(HCBr系)
D…四塩化炭素(CCl4)
(2)発光輝度(感度)の測定
管電圧80kVpのX線を各試料の裏面(輝尽性蛍光体層が形成されていない面)から照射した。その後、半導体レーザを各試料の表面(輝尽性蛍光体層が形成された面)上で走査して当該輝尽性蛍光体層を励起させ、当該輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光の光量(光強度)を試料ごとに受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で測定してその測定値を「発光輝度(感度)」とした。測定結果を下記表1に示す。ただし、表1中、各試料の発光輝度を示す値は、試料1の発光輝度を1.0とした相対値である。
管電圧80kVpのX線を各試料の裏面(輝尽性蛍光体層が形成されていない面)から照射した。その後、半導体レーザを各試料の表面(輝尽性蛍光体層が形成された面)上で走査して当該輝尽性蛍光体層を励起させ、当該輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光の光量(光強度)を試料ごとに受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で測定してその測定値を「発光輝度(感度)」とした。測定結果を下記表1に示す。ただし、表1中、各試料の発光輝度を示す値は、試料1の発光輝度を1.0とした相対値である。
(3)鮮鋭性の評価
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を各試料の裏面(輝尽性蛍光体層が形成されていない面)から照射し、その後、He−Ne半導体レーザを各試料の表面(輝尽性蛍光体層が形成された面)上で走査して輝尽性蛍光体層を励起させた。その後、当該輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して電気信号に変換し、その電気信号をアナログ/デジタル変換してハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数(MTF(Modulation Transfer Function))を調査した。その調査結果(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値(%))を下記表1に示す。表1中の調査結果において、MTF値が高いほど鮮鋭性に優れている。
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を各試料の裏面(輝尽性蛍光体層が形成されていない面)から照射し、その後、He−Ne半導体レーザを各試料の表面(輝尽性蛍光体層が形成された面)上で走査して輝尽性蛍光体層を励起させた。その後、当該輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して電気信号に変換し、その電気信号をアナログ/デジタル変換してハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数(MTF(Modulation Transfer Function))を調査した。その調査結果(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値(%))を下記表1に示す。表1中の調査結果において、MTF値が高いほど鮮鋭性に優れている。
(4)湿度による輝度低下量の測定
各試料を温度40℃,相対湿度90%の高湿環境下に50日間放置し、各試料につき50日間放置後の湿度による輝度低下量を測定した。具体的には、放置前と50日間放置後との各試料の発光輝度を上記(2)の項目と同様にそれぞれ測定する。その後、放置前の測定結果を「100(初期輝度)」として、50日間放置後の測定結果を初期感度に対する相対値で表現し、これを「輝度低下量」とした。その表現結果を下記表1に示す。表1中の結果において、値が大きいほど輝度低下量が少なく、値が小さいほど輝度低下量が大きい。
各試料を温度40℃,相対湿度90%の高湿環境下に50日間放置し、各試料につき50日間放置後の湿度による輝度低下量を測定した。具体的には、放置前と50日間放置後との各試料の発光輝度を上記(2)の項目と同様にそれぞれ測定する。その後、放置前の測定結果を「100(初期輝度)」として、50日間放置後の測定結果を初期感度に対する相対値で表現し、これを「輝度低下量」とした。その表現結果を下記表1に示す。表1中の結果において、値が大きいほど輝度低下量が少なく、値が小さいほど輝度低下量が大きい。
表1に示す通り、空気・不活性ガス雰囲気加熱工程で単に加熱処理を施しただけの試料2〜4に対し、加湿工程で蛍光体パネルを相対湿度30〜60%で加湿した試料10〜14,20〜22,30〜31,40〜45は、発光輝度が高くて鮮鋭性に優れ、更に輝度低下量も小さい。以上から、放射線画像変換パネルの製造で蛍光体パネルを相対湿度30〜60%で加湿する処理が有用であることがわかる。
1 放射線画像変換パネル
2 基板
3 輝尽性蛍光体層
4 輝尽性蛍光体パネル
10,20 保護フィルム
2 基板
3 輝尽性蛍光体層
4 輝尽性蛍光体パネル
10,20 保護フィルム
Claims (5)
- 所定の基板上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層が形成された蛍光体パネルを相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程を備える放射線画像変換パネルの製造方法。
- 請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記加湿工程の後に前記蛍光体パネルを60〜160℃で加熱して脱水する脱水工程を備える放射線画像変換パネルの製造方法。 - 請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記加湿工程の前に前記蛍光体パネルを有機溶剤ガス雰囲気下で加熱する有機溶剤ガス雰囲気加熱工程を備える放射線画像変換パネルの製造方法。 - 所定の基板上に気相堆積法で輝尽性蛍光体層が形成された蛍光体パネルを空気又は不活性ガス雰囲気下で加熱する空気・不活性ガス雰囲気加熱工程と、
前記空気・不活性ガス雰囲気加熱工程の後に前記蛍光体パネルを有機溶剤ガス雰囲気下で加熱する有機溶剤ガス雰囲気加熱工程と、
前記有機溶剤ガス雰囲気加熱工程の後に前記蛍光体パネルを相対湿度30〜60%の湿度環境下で加湿する加湿工程と、
前記加湿工程の後に前記蛍光体パネルを60〜160℃で加熱して脱水する脱水工程と、
を備える放射線画像変換パネルの製造方法。 - 請求項3又は4に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記有機溶剤がフッ素系溶剤でかつ不燃性溶剤であることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
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