JP2004205354A - 放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネル - Google Patents

放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネル Download PDF

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修 森川
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哲 本田
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武彦 庄子
Atsuo Nozaki
敦夫 野崎
Hiroshi Otani
浩 大谷
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Abstract

【課題】優れた発光輝度を有する放射線画像変換パネルを提供する。
【解決手段】支持体11上に輝尽性蛍光体層12を有する放射線画像変換パネルの製造方法。支持体11上に輝尽性蛍光体層12を気相堆積法により形成した後に80℃以上300℃以下で熱処理を行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用しないで放射線像を画像化する方法として、支持体上に輝尽性蛍光体層を設けた放射線画像変換パネルが開発されている。
【0003】
放射線画像変換パネルは、輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号をハロゲン化銀写真感光材料などの記録材料、CRTなどの表示装置上に可視像として再生するものである。
【0004】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では、一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0005】
放射線画像変換パネルを使用した放射線画像変換方式の優劣は、該パネルの輝尽性発光輝度およびパネルの発光均一性に大きく左右され、特に、これらの特性は用いる輝尽性蛍光体の特性が大きく支配されていることが知られている。
【0006】
最近では、CsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来不可能であったX線変換効率の向上が可能になると期待されている。
【0007】
このような放射線画像変換パネルは医療用のX線画像診断機器等にも多く用いられている。医療用の画像診断機器では特に患者へ照射される放射線の被曝線量を減少させるために、より感度及び鮮鋭度の高い放射線画像変換パネルが求められている。
【0008】
放射線画像変換パネルの感度及び鮮鋭度を向上させるために、例えば特許文献1では、蛍光体層の厚さを300〜700μmの範囲にしてかつ相対密度を85〜97%とすることで感度及び鮮鋭度を向上させている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−214397号公報(第2頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、より鮮鋭度が向上した放射線画像変換パネルを得るためには、さらに高輝度な輝尽性蛍光体層を得ることが不可欠となっている。
本発明の課題は、より優れた発光輝度を有する放射線画像変換パネルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法であって、支持体上に輝尽性蛍光体層を気相堆積法により形成した後に80℃以上300℃以下で熱処理を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記熱処理を100℃以上200℃以下で行うことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、支持体上に輝尽性蛍光体が気相堆積法により形成された後に80℃以上300℃以下で熱処理が行なわれていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の放射線画像変換パネルであって、前記熱処理は100℃以上200℃以下で行われることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の放射線画像変換パネルであって、前記輝尽性蛍光体層は下記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体を含有し形成されることを特徴とする。
一般式(1)
M1X・aM2X'2・bM3X''3:eA
ここで、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X'及びX''はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、AはEu、Tb、In、Ga、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であり、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を示す。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項3〜5いずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、一般式(1)におけるM1がK、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項3〜6いずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、一般式(1)におけるXはBr及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項3〜7いずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、一般式(1)におけるM2はBe、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも一種の二価金属であることを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項3〜8いずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、一般式(1)におけるM3はY、La、Ce、Sm、Eu、Gd、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であることを特徴とする。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項3〜9いずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、一般式(1)におけるbは0≦b≦10-2の範囲の数値を示すことを特徴とする。
【0021】
請求項11記載の発明は、請求項3〜10いずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、一般式(1)におけるAはEu、Cs、Sm、Tl及びNaからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることを特徴とする。
【0022】
請求項12記載の発明は、請求項3〜11いずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、前記輝尽性蛍光体層は、前記輝尽性蛍光体の柱状結晶を有することを特徴とする。
【0023】
請求項13記載の発明は、請求項12に記載の放射線画像変換パネルであって、前記柱状結晶は下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を有することを特徴とする。
一般式(2)
CsX:A
ここで、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、GaまたはCeを表す。
【0024】
本発明によれば、放射線画像変換パネルの支持体上に輝尽性蛍光体を気相堆積法により形成した後に80℃以上300℃以下で熱処理を行うことにより、より優れた発光輝度を有する放射線画像変換パネルを得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態例について詳細に述べる。図1に示すように、本発明の実施の形態例の放射線像変換パネルは、支持体11の一面に輝尽性蛍光体の柱状結晶13及び柱状結晶13の間に形成された間隙14からなる輝尽性蛍光体層12が気相堆積法で50μm以上、好ましくは300〜500μmの厚さに形成され、その輝尽性蛍光体層を保護する保護層が必要に応じて設けられている。
【0026】
支持体11としては、樹脂含浸炭素繊維(炭素繊維強化樹脂)を用いることができ、具体的には市販されている炭素繊維(東邦レーヨン(株)製#132、エポキシ樹脂含浸)が挙げられる。また従来の放射線画像変換パネルの支持体として公知の材料から耐熱性のあるものを任意に選ぶことができ、石英ガラスシート、アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート、およびアラミドなどからなる樹脂シートやこれらを貼り合わせたものなどを用いることができる。
【0027】
本発明に好ましく用いられる輝尽性蛍光体としては、一般式(1)で表されるものを使用することができる。
一般式(1)
M1X・aM2X'2・bM3X''3:eA
【0028】
ここで、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、特にK、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であることが好ましい。
【0029】
M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、特に、Be、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも一種の二価金属であることが好ましい。
【0030】
M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、特に、Y、La、Ce、Sm、Eu、Gd、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であることが好ましい。
【0031】
X、X'及びX''はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、特にXはBr及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであることが好ましい。
【0032】
AはEu、Tb、In、Ga、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であり、特にEu、Cs、Sm、Tl及びNaからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましい。
【0033】
a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を示し、特にbは0≦b≦10-2 の範囲の数値を示すことが好ましい。
【0034】
また、上記柱状結晶13は下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を有することが好ましい。
一般式(2)
CsX:A
ここで、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、GaまたはCeを表す。
【0035】
上記の輝尽性蛍光体は、例えば下記(a)〜(d)の蛍光体原料を用いて以下に述べる製造方法により製造される。
【0036】
(a)LiF、LiCl、LiBr、LiI、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIからなる群から選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の化合物。
【0037】
(b)
BeF2、BeCl2、BeBr2、BeI2、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI2、NiF2、NiCl2、NiBr2及びNiI2からなる群から選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の化合物。
【0038】
(c)ScF3、ScCl3、ScBr3、ScI3、YF3、YCl3、YBr3、YI3、LaF3、LaCl3、LaBr3、LaI3、CeF3、CeCl3、CeBr3、CeI3、PrF3、PrCl3、PrBr3、PrI3、NdF3、NdCl3、NdBr3、NdI3、PmF3、PmCl3、PmBr3、PmI3、SmF3、SmCl3、SmBr3、SmI3、EuF3、EuCl3、EuBr3、EuI3、GdF3、GdCl3、GdBr3、GdI3、TbF3、TbCl3、TbBr3、TbI3、DyF3、DyCl3、DyBr3、DyI3、HoF3、HoCl3、HoBr3、HoI3、ErF3、ErCl3、ErBr3、ErI3、TmF3、TmCl3、TmBr3、TmI3、YbF3、YbCl3、YbBr3、YbI3、LuF3、LuCl3、LuBr3、LuI3、AlF3、AlCl3、AlBr3、AlI3、GaF3、GaCl3、GaBr3、GaI3、InF3、InCl3、InBr3及びInI3からなる群から選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の化合物。
【0039】
(d)Eu、Tb、In、Ga、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種もしくは2種以上の金属。
【0040】
上記(a)〜(d)の蛍光体原料を一般式(1)のa、b、eの範囲を満たすように秤量し、純水にて混合する。この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合してもよい。
【0041】
次に、得られた混合液のpH値Cを0<C<7に調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0042】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボあるいはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉内で焼成を行う。焼成温度は500〜1000℃が好ましい。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
【0043】
焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気あるいは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。
【0044】
なお、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行なえば輝尽性蛍光体の発光輝度を更に高めることができ、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の輝尽性蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気、中性雰囲気あるいは弱酸化性雰囲気のままで冷却してもよい。
【0045】
また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気あるいは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた輝尽性蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができる。
【0046】
輝尽性蛍光体層は、上記の輝尽性蛍光体を支持体11の一面へ気相堆積法を用いて形成される。
気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0047】
蒸着法では、まず、支持体を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とする。
次いで、前記輝尽性蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて、前記支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。
【0048】
この結果、結着材を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱機あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0049】
スパッタリング法では、蒸着法と同様、支持体をスパッタリング装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、前記支持体上に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに成長させる。
【0050】
前記輝尽性蛍光体層の膜厚は、放射線画像変換パネルの使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により異なるが、50μm以上、好ましくは300〜500μmである。
【0051】
上記の気相堆積法による輝尽性蛍光体層の作成にあたり、輝尽性蛍光体層が形成される支持体の温度は、50℃〜400℃に設定することが好ましく、蛍光体の特性上は100℃〜250℃が好ましく、支持体に樹脂を用いる場合には樹脂の耐熱性を考慮して50℃〜150℃、さらに好ましくは50℃〜100℃が好ましい。
【0052】
図2は、支持体上に輝尽性蛍光体層12が蒸着により形成される様子を示す図である。支持体ホルダ15に固定された支持体11面の法線方向(R)に対する輝尽性蛍光体の蒸気流16の入射角度をθ2(図では60°)とし、形成される柱状結晶13の支持体面の法線方向(R)に対する角度をθ1(図では30°)とすると、経験的にはθ1はθ2の約半分となり、この角度で柱状結晶13が形成される。
【0053】
また、柱状結晶13の間に形成された間隙14に結着剤等の充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層12の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射の物質を充填してもよい。これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層12に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0054】
スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種応用処理を用いることができる。CVD法やイオンプレーティング法、その他においても同様である。
なお、前記気相堆積法における輝尽性蛍光体層の成長速度は、0.05μm/min〜300μm/minであることが好ましい。成長速度が0.05μm/min未満の場合には放射線画像変換パネルの生産性が悪く好ましくない。また成長速度が300μm/minを超える場合には成長速度のコントロールが難しく好ましくない。
【0055】
本発明では、上記の気相堆積法を用いて形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルに対して、高温で熱処理を行うことを特徴とする。熱処理は80℃以上300℃以下で、より好ましくは100℃以上200℃以下で行う。
熱処理する時間は温度に依存するが、1〜10,000min行うことが好ましく、100℃では1000〜2000min、200℃では20〜30min程度行うことが好ましい。
【0056】
熱処理方法としては、特に制限はなく、輝尽性蛍光体層を形成した支持体が完全に収納でき、かつ温度、湿度が制御できる恒温室であればいずれの方法を用いても良い。
【0057】
以上のようにして熱処理をおこなった後、必要に応じて輝尽性蛍光体層の支持体とは反対の側に保護層が設けられる。保護層は、保護装用の塗布液を輝尽性蛍光体層の表面に直接塗布して形成もよいし、またあらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層に接着してもよい。
【0058】
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体などの通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層として用いることもできる。
【0059】
また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al2O3等の無機物質を積層して形成してもよい。
これらの保護層の層厚は、0.1〜2000μmが好ましい。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0061】
《放射線画像変換パネル試料の作成》
膜厚1mmの炭素繊維(東邦レーヨン(株)製#132)を搬送速度1.0m/minで搬送しながら、搬送ヒートロールに4.9×10N/cmの圧力をかけ、支持体となる基盤を得た。該支持体の片面に輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を蒸着させて輝尽性蛍光体層を形成した。
【0062】
なお、蒸着は、アルミニウム製のスリットを用い、支持体とスリットとの距離を60cmとして、基板と平行な方向に基板を搬送しながら行い、輝尽性蛍光体層の厚みが300μmになるように調整した。
また、蒸着にあたっては、前記支持体を蒸着器内に設置し、次いで、蛍光体原料(CsBr:Eu)を蒸着源として、プレス成形し水冷したルツボに入れた。
【0063】
その後、蒸着器内を一旦排気し、N2ガスを導入し、0.133Paに真空度を調整した後、支持体の温度を50℃〜100℃に保持しながら、輝尽性蛍光体層を蒸着した。輝尽性蛍光体層の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させた。
【0064】
輝尽性蛍光体層の蒸着が終了した後に、乾燥空気またはN2雰囲気内で、輝尽性蛍光体層を支持体とともに、80℃、100℃、150℃、200℃、300℃、及び400℃の各温度で熱処理した。
【0065】
《発光輝度評価》
輝度はコニカ(株)製Regius350を用いてX線照射後の各放射線画像変換パネル試料の発光量を測定し、熱処理していない放射線画像パネル試料の発光量と比較した。
【0066】
図3に熱処理の温度、時間と輝度の変化とを示す。
80℃、60min、空気雰囲気内で熱処理した試料では、熱処理していない試料の1.1倍の輝度を示した。さらに80℃、1000min、空気雰囲気内で熱処理した試料では、熱処理していない試料の1.4倍の輝度を示した。
100℃、60min、空気雰囲気内で熱処理した試料は、熱処理していない試料と比較して1.4倍の輝度を示した。100℃、1000min、空気雰囲気内で熱処理した試料は、熱処理していない試料と比較して1.8倍の輝度を示したが、2000min熱処理した試料では輝度が低下し、熱処理していない試料の1.6倍の輝度であった。
【0067】
150℃、20min、空気雰囲気内で熱処理した試料では、熱処理していない試料の1.6倍の輝度を示したが、40min熱処理した試料では輝度が低下し、熱処理していない試料の1.5倍の輝度であった。
200℃、5min、空気雰囲気内で熱処理した試料は、熱処理していない試料と比較して1.3倍の輝度を示した。また200℃、20min、空気雰囲気内で熱処理した試料では、熱処理していない試料の1.6倍の輝度を示したが、60min熱処理した試料では輝度が低下し、熱処理していない試料の1.4倍の輝度であった。
【0068】
なお300℃、2.5min、空気雰囲気内で熱処理した試料では熱処理していない試料の1.2倍の輝度を示したが、5min以上熱処理した場合には輝度が低下し、熱処理していない試料の1.1倍の輝度となった。
400℃、2.5min、空気雰囲気内で熱処理した場合には、熱処理していない試料の0.7倍の輝度となった。400℃、2.5min、N2雰囲気内で熱処理した場合には熱処理していない試料の0.6倍の輝度となった。
【0069】
以上のように、支持体上に輝尽性蛍光体を気相堆積法により形成した後に80℃以上300℃以下で熱処理を行った試料では、熱処理を行わない試料と比較して輝度が上昇することがわかる。
また、熱処理を高温で行うほど熱処理時間は短くて済むが、300℃よりも高温で熱処理を行うと輝度が逆に小さくなる。また必要な時間以上の熱処理も同様に輝度を下げてしまう恐れがある。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法によれば、支持体上に輝尽性蛍光体を気相堆積法により形成した後に80℃以上300℃以下で熱処理を行うことにより、優れた発光輝度を有する放射線画像変換パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例の放射線画像変換パネルを示す図である。
【図2】支持体に輝尽性蛍光体層が蒸着法により形成される様子を示す図である。
【図3】本発明の実施例の放射線画像変換パネルの輝度と熱処理の温度と時間の関係を示す図である。
【符号の説明】
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層
13 柱状結晶
14 間隙
15 支持体ホルダ
16 輝尽性蛍光体蒸気流

Claims (13)

  1. 支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法であって、支持体上に輝尽性蛍光体層を気相堆積法により形成した後に80℃以上300℃以下で熱処理を行うことを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
  2. 前記熱処理を100℃以上200℃以下で行うことを特徴とする請求項1記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
  3. 支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、支持体上に輝尽性蛍光体が気相堆積法により形成された後に80℃以上300℃以下で熱処理が行なわれていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
  4. 前記熱処理は100℃以上200℃以下で行われることを特徴とする請求項3記載の放射線画像変換パネル。
  5. 前記輝尽性蛍光体層は下記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体を含有し形成されることを特徴とする請求項3または4記載の放射線画像変換パネル。
    一般式(1)
    M1X・aM2X'2・bM3X''3:eA
    ここで、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X'及びX''はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、AはEu、Tb、In、Ga、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であり、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を示す。
  6. 一般式(1)におけるM1はK、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であることを特徴とする請求項3〜5いずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  7. 一般式(1)におけるXはBr及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであることを特徴とする請求項3〜6いずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  8. 一般式(1)におけるM2はBe、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも一種の二価金属であることを特徴とする請求項3〜7いずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  9. 一般式(1)におけるM3はY、La、Ce、Sm、Eu、Gd、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であることを特徴とする請求項3〜8いずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  10. 一般式(1)におけるbは0≦b≦10-2の範囲の数値を示すことを特徴とする請求項3〜9いずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  11. 一般式(1)におけるAはEu、Cs、Sm、Tl及びNaからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることを特徴とする請求項3〜10いずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  12. 前記輝尽性蛍光体層は、前記輝尽性蛍光体の柱状結晶を有することを特徴とする請求項3〜11いずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  13. 前記柱状結晶は下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を有することを特徴とする請求項12に記載の放射線画像変換パネル。
    一般式(2)
    CsX:A
    ここで、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、GaまたはCeを表す。
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