JP7149834B2 - シンチレータの製造方法 - Google Patents

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本発明は、シンチレータの製造方法に関する。
放射線撮像装置において、放射線をシンチレータによって光に変換し、光電変換素子を用いてその光を検出するように構成されているものがある。放射線が照射されたことに応じてシンチレータの特性が変動してしまう場合があり、このような現象は「ブライトバーン」とも称される。特許文献1には、ブライトバーンを抑制するために、アルカリ金属のヨウ化物を母材とし、シンチレータの発光効率を向上させるための賦活剤を含有するシンチレータに、一価の陽イオンとなる原子をさらに含有させることが示されている。
特開2016-88988号公報
特許文献1には、母材化合物、賦活剤化合物、および、一価の陽イオンを形成し得る原子を含む化合物を、それぞれ別の蒸着源に収容し加熱することによって、支持体にシンチレータを形成することが示されている。一価の陽イオンとなる原子は、シンチレータの母材化合物とは別の蒸着源から供給されるため、シンチレータ中に添加する濃度や、膜厚方向での濃度の均一性の制御が煩雑となる可能性がある。
本発明は、ブライトバーンの抑制およびシンチレータの品質の向上に有利な技術を提供することを目的とする。
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係るシンチレータの製造方法は、ヨウ化セシウム原料と銅原料とを含む材料供給源を準備する工程と、材料供給源を用いて基板にシンチレータを形成する蒸着工程と、を含み、蒸着工程において、材料供給源は、ヨウ化セシウム原料が溶解し、かつ、銅原料の融点よりも低い温度に加熱され、銅原料とヨウ化セシウム原料との反応によって生成されるヨウ化銅が、溶解したヨウ化セシウム原料と共に蒸発することによって、基板にヨウ化セシウムおよび銅を含むシンチレータが形成されることを特徴とする。
上記手段によって、ブライトバーンの抑制およびシンチレータの品質の向上に有利な技術を提供する。
シンチレータを形成する装置の例を示す図。 シンチレータに銅を添加する方法を示す図。 ブライトバーンの評価方法の例を示す図。 本実施例および比較例のシンチレータの特性を示す図。
以下、本発明に係るシンチレータの製造方法の具体的な実施形態を、添付図面を参照して説明する。以下の説明及び図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。また、本発明における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
図1~4を参照して、本発明の実施形態におけるシンチレータの製造方法について説明する。図1は、本発明の実施形態におけるシンチレータを形成するための蒸着装置100の構成例を示す図である。蒸着装置100は、真空排気が可能なチャンバ109の中に、シンチレータを形成するための材料供給源が貯留された蒸発部101a、101b(例えば、るつぼ)、シンチレータが形成される基板107を支持するための支持部108を含む。支持部108は、図1に示されるように、蒸着中、基板107を回転させてもよい。
蒸発部101aに貯留される材料供給源は、シンチレータの母材となるハロゲン化アルカリ原料とシンチレータに添加される金属原料とを含む。本実施形態において、ハロゲン化アルカリ原料として、ヨウ化セシウム原料102が用いられる。ハロゲン化アルカリ原料は、ヨウ化セシウム原料に限られるものではなく、ハロゲン化アルカリ原料として、例えば、ヨウ化ナトリウムや、ヨウ化カリウム、臭化セシウムなどの、針状(柱状)結晶が形成可能な他の原料が用いられてもよい。さらに、本実施形態において、金属原料として銅(銅原料103)が用いられる。つまり、本実施形態において、材料供給源は、ヨウ化セシウム原料102と銅原料103とを含む。金属原料は、銅に限られることはなく、金属原料として、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、水銀などが用いられてもよい。
ヨウ化セシウム原料102と銅原料103とを含む材料供給源が貯留された蒸発部101aとは別の蒸発部101bには、発光中心として働き、発光効率を向上させるための賦活剤原料が貯留される。換言すると、図1に示されるように、ヨウ化セシウム原料102と銅原料103とを含む材料供給源のほかに、賦活剤原料を含む別の材料供給源が準備される。本実施形態において、賦活剤原料としてタリウムを含むヨウ化タリウム原料104が用いられる。賦活剤は、タリウムに限られることはなく、賦活剤として、例えば、ユウロピウムやインジウムなどが用いられてもよい。この場合、賦活剤原料として、ヨウ化ユウロピウムやヨウ化インジウムなどが用いられてもよい。また、シンチレータの母材が、臭化セシウムである場合、臭化タリウムや臭化ユウロピウム、臭化インジウムなどが用いられてもよい。シンチレータ中において、母材であるヨウ化セシウムに対して、ヨウ化タリウムが0.1~5モル%程度含まれることによって、十分な発光が得られうる。
本実施形態において、シンチレータに添加する添加物の原料として、銅原料103が蒸発部101aに貯留される材料供給源に含まれることを上述した。この銅原料103について説明する。銅原料103は、例えば、粒状、ブロック状、メッシュ状、ワイヤ状の銅でありうる。また、銅原料103は、蒸着時において、表面積が一定となるように蒸発部101aに充填される。つまり、ヨウ化セシウム原料が、蒸着のために加熱され溶解したときに、溶解したヨウ化セシウム原料102と銅原料103との接触面積が一定に保たれるように、金属材料の形状および材料が、それぞれ選択される。
次に、基板107にシンチレータを形成する蒸着工程について説明する。図2(a)~2(d)は、蒸着工程おいて、シンチレータに添加物として銅、より具体的には、ハロゲン化金属であるヨウ化銅が添加される際に想定されるメカニズムについて説明する図である。
まず、図2(a)に示されるように、蒸発部101a内の材料供給源を加熱する。このとき、材料供給源は、ヨウ化セシウム原料102が溶解し、かつ、銅原料103の融点よりも低い温度に加熱される。具体的には、ヨウ化セシウム原料102が621℃で溶解し、融液となる。一方、銅の融点は1085℃と、ヨウ化セシウムの融点よりも高いため、銅原料103は、溶解したヨウ化セシウム原料102の中で固体の状態で存在する。
次いで、図2(b)に示されるように、銅原料103の表面部分と溶解したヨウ化セシウム原料102との反応によって、ヨウ化銅110が生成される。銅原料103の表面部分で生成されたヨウ化銅110の融点は605℃であり、ヨウ化セシウム原料102の融点よりも低い。このため、ヨウ化銅110は、図2(c)に示されるように、溶解したヨウ化セシウム原料102と共に蒸発し、基板107にヨウ化セシウムおよび銅を含むシンチレータが形成される。さらに、図2(d)に示されるように、銅原料103の表面で新たにヨウ化銅110が生成され、図2(b)に示される状態に戻る。この図2(b)~2(d)のサイクルが繰り返されることによって、基板107上に形成されるヨウ化セシウムを母材とするシンチレータに、一定量ずつヨウ化銅が添加されることとなる。
シンチレータに添加される銅の濃度は、後述する実施例のように数10ppm程度と非常に低濃度で効果が得られる。つまり、銅原料103の表面で生成するヨウ化銅は、少量である。また、後述する実施例において、用いる銅原料103の蒸着前後の重量変化が、計測限界以下であった。このため、基板107にシンチレータを形成する蒸着工程において、銅原料103の外形は実質的にほとんど変化しないと考えられ、溶解したヨウ化セシウム原料102と銅原料103との接触面積は、一定に保たれていると考えられる。
この蒸着工程において、ヨウ化セシウム原料102と銅原料103との接触面積を一定に保つため、銅原料103が、溶解したヨウ化セシウム原料102の中に配されるように、ヨウ化セシウム原料102の量や銅原料103の量および形状が決められてもよい。また、蒸着工程において、基板107と蒸発部101aとの間に設けられたシャッター(不図示)を操作することによって、シンチレータの成膜の開始および終了を行う場合がある。この場合、溶解したヨウ化セシウム原料102から銅原料103が露出する前に、シャッターを閉じ成膜を終了してもよい。つまり、蒸着工程において、蒸発部101a中の材料供給源に含まれる銅原料103が、溶解したヨウ化セシウム原料102から露出しないように、シンチレータの蒸着を行ってもよい。
本実施形態において、銅原料103とヨウ化セシウム原料102との接触面積を一定に維持することができるため、蒸着中に生成して蒸発するヨウ化銅110の量を一定に保つことが可能となる。このため、形成されたシンチレータに含まれる銅の濃度が、膜厚方向に一定となる。つまり、本実施形態に示される方法を用いることによって、シンチレータの膜厚方向において、所望の均一な濃度の金属の添加を行うことができる。
実施例を後述するが、銅原料103の表面積とヨウ化セシウム原料102の充填量を変化させて、蒸着実験を行った。この結果、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値が3.4以上、また、銅原料の表面積が1200mm以上で、ブライトバーン評価値が明確に低減され、特性が大幅に改善されることを見出した。このときのシンチレータの分解能特性や輝度特性は、銅を添加しない場合とほぼ同等であった。
また、蒸着工程において、蒸発部101b中の材料供給源からの蒸着と同時に、蒸発部101b中の材料供給源から賦活剤の原料としてヨウ化タリウム原料104を蒸発させる。これによって、シンチレータに賦活剤としてタリウムが添加される。さらに、蒸着工程でシンチレータを形成した後に、シンチレータを覆うように、パリレンやフッ素樹脂、TEOS膜などの保護膜が形成されてもよい。保護膜は、スプレー法、塗布法、CVD法などの各種コーティング法を用いて形成することが可能である。
次に、図3(a)、3(b)を用いて、放射線が照射されたことに応じてシンチレータの特性が変動してしまうブライトバーンの評価方法について説明する。図3(b)に示されるように、ここでは、基板107に蒸着されたシンチレータ301を、複数の光電変換素子が配列されたセンサ基板(センサ部)302に貼り合わせた放射線検出装置APについて、ブライトバーンの評価を行う。シンチレータ301は、放射線を受けて光(シンチレーション光)を発生し、この光はセンサ基板302によって検出される。放射線検出装置APは、このような構成によって放射線を検出可能とする。
図3(a)は、放射線検出装置AP上に放射線遮蔽材303を配置した状態を示す。図3(a)において、シンチレータ301のうち、放射線遮蔽材303で覆われていない部分を「露出部分311」と示し、放射線遮蔽材303で覆われた部分を「被覆部分321」と示す。この状態で放射線検出装置APに対して放射線を照射した場合、露出部分311には放射線が入射し、被覆部分321には放射線が入射しない。ここで、放射線照射の終了後において、露出部分311と被覆部分321との間で、特性(感度や放射線から光への変換効率など)の差(ブライトバーン)が生じる場合がある。
ブライトバーンの評価は、比較的大きい放射線強度(線量)の放射線を照射して、いわゆる「焼付け」を行った後に、比較的小さい放射線強度の放射線を照射したときのシンチレータ301の輝度を計測することで行われる。本明細書において、ブライトバーンの評価値BB(t)は、
BB(t)≡{a(t)/b(t)}/{a(0)/b(0)}-1・・・(1)
ここで、
a(0):焼付け前の露出部分311の輝度値(単位体積当たり(以下同様))
b(0):焼付け前の被覆部分321の輝度値
a(t):焼付け後、時間t経過後の露出部分311の輝度値
b(t):焼付け後、時間t経過後の被覆部分321の輝度値
で表される。
(1)式において、a(0)/b(0)は、焼付け前の露出部分311と被覆部分321との間の輝度値の比を表す。ここでは、シンチレータ301の輝度分布は、露出部分311および被覆部分321間で均一であり、
a(0)/b(0)=1、
が成立するものとする。
図3(a)に示される状態で、放射線遮蔽材303を設置して焼付けを行った後に放射線遮蔽材303を除去する。次いで、図3(b)に示される状態で、焼付けから時間t経過後の露出部分311と被覆部分321との輝度値をそれぞれ測定してa(t)/b(t)を求めた。
ここで、前述のブライトバーンが生じている場合、
a(t)/b(t)>1
が成立することとなり、
BB(t)>0
となる。一方、ブライトバーンが抑制ないし低減されている場合には、
BB(t)≒0、
となる。即ち、評価値BB(t)が小さいほどブライトバーンが抑制ないし低減されており、シンチレータ301の品質が良好であるといえる。
ブライトバーンの評価値BB(t)が大きい場合、ある撮影で得られる信号に、その直前の撮影で得られた信号が重畳されることとなりうる。このことは、撮影によって得られた画像に残像やアーチファクトなどをもたらす場合があり、画像の品質の低下の原因ともなりうる。このことは、例えば放射線撮影を連続して行う場合(いわゆる連続撮影を行う場合)に顕著に現れうる。
ここで、ブライトバーンの評価値BB(t)の目標値が、センサ基板302上の光電変換素子におけるノイズ(暗電流に起因するノイズ成分、いわゆるダークノイズ。)に比べて充分に小さい場合(例えば、1/10以下の場合)、焼付け後の露出部分311および被覆部分321の輝度値の変化量は該ノイズに埋もれて区別しにくくなるといえる。そのため、一般的に用いられるセンサ基板302上の光電変換素子のS/N比を30dBとした場合(20×log10(S/N)=30、即ち、S/N≒33の場合)、ブライトバーンの評価値BB(t)の目標値として0.3%以下が設定されてもよい。
以下に、本実施形態の実施例および比較例について説明する。シンチレータ301の分解能特性は、国際規格に準拠する線質RQA5を用いて、エッジ法に基づく空間周波数2LP/mm(本/mm)でのMTF(Modulation Transfer Function)の評価を行った。シンチレータ301の輝度特性は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの受光素子や、フラットパネルディテクタ、カメラなどの光検出器で評価可能である。本実施形態において、輝度特性は、シンチレータ301の成膜面をCMOS光検出器にFOP(Fiber Optic Plate)を介して密着させ、国際規格の線質RQA5に準ずる放射線を照射し、CMOS光検出器によって得られた出力値を用いて評価した。シンチレータ301の化学組成は、例えば、蛍光X線分析や誘導結合プラズマ分析(ICP)によって評価可能である。また、シンチレータ301の結晶性は、例えば、X線回折分析で評価可能である。
また、ブライトバーンの評価は、まず、図3(a)の状態(放射線遮蔽材303を配した状態)で、放射線照射条件として、管電圧80kVかつ線量2.9mGyとして、シンチレータ301に対して放射線の照射(焼付け)を行った。その後、放射線遮蔽材303を除去し、焼付け後から2.5分経過後、10分経過後、および、30分経過後のそれぞれについて、管電圧70kVかつ線量2μGyとして、0.6mm厚の銅板を介してシンチレータ301に放射線を照射した。これによって、ブライトバーンの評価値BB(2.5)、BB(10)およびBB(30)をそれぞれ取得した。
ここでは、まず、比較例から説明する。
比較例1
まず、材料供給源として340gのヨウ化セシウム原料102を準備し、蒸発部101a(タンタル製、円筒型)に充填した。また、賦活剤の材料供給源としてヨウ化タリウム原料104を準備し、蒸発部101b(タンタル製、円筒型)に充填した。これらの蒸発部101a、101bを、蒸着装置100のチャンバ109内の所定の位置に配した。また、支持部108を介して基板107を、チャンバ109内の所定の位置に配した。基板107には、シリコン基板にアルミニウム反射層を厚さ200nm、二酸化ケイ素を厚さ100nm積層したものを用いた。
材料供給源が充填された蒸発部101a、101b、基板107を蒸着装置100のチャンバ109内の所定の位置に配した後、蒸着装置100のチャンバ109内を0.01Pa以下になるまで真空排気した。次いで、各々の蒸発部101a、101bに電流を徐々に流して材料供給源を加熱し、設定温度および出力に達したところで、基板107と蒸発部101a、101bとの間に設けられたシャッター(不図示)を開けることによって、シンチレータの形成(蒸着)を開始した。このとき、基板温度を80℃、基板回転速度は毎分60回転とした。基板温度を140℃まで徐々に上昇させながら成膜を行い、材料供給源(ヨウ化セシウム原料102およびヨウ化タリウム原料104)が無くなる前にシャッターを閉じ、成膜を終了した。基板107と蒸発部101a、101bとを室温まで冷却した後、基板107を取り出した。
形成された比較例1のシンチレータを走査型電子顕微鏡で観察し、針状結晶群の形成を確認した。また、比較例1のシンチレータの膜厚は、795μmであった。ICP分析より、比較例1のシンチレータのセシウムに対するタリウム濃度は0.57モル%であった。
輝度特性として、上述の評価方法を用いて比較例1のシンチレータによって得られた出力値を100とし、後述の各実施例および比較例との比較を行った。また、分解能として、タングステン製のナイフエッジを用いた上述のエッジ法によって得られた比較例1のシンチレータのMTFを100とし、後述の各実施例および比較例との比較を行った。
ブライトバーン評価は、上述の評価方法を用いて比較例1のシンチレータによって得られた放射線の照射から2.5分後の輝度データで求めたブライトバーンの評価値であるBB(2.5)を100とし、比較を行った。比較例1のシンチレータにおいて、10分後のブライトバーンの評価値BB(10)=96、30分後のブライトバーンの評価値BB(30)=88であった。
比較例2
まず、352gのヨウ化セシウム原料102と2×5×40[mm]のブロック状の銅原料103とを含む材料供給源を準備し、蒸発部101a(タンタル製、円筒型)に充填した。比較例2において、銅原料103の表面積は580mm、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値は1.6である。また、賦活剤の材料供給源としてヨウ化タリウム原料104を準備し、蒸発部101b(タンタル製、円筒型)に充填した。また、比較例1と同様の構成を備える基板107を準備した。
材料供給源が充填された蒸発部101a、101b、基板107を蒸着装置100のチャンバ109内の所定の位置に配した後、比較例1と同様の手順で基板107上に比較例2のシンチレータを形成(蒸着)した。比較例2のシンチレータの成膜時、蒸発部101aにおいて、銅の融点よりも低い温度でヨウ化セシウム原料102を溶解させ蒸着を行った。
比較例2のシンチレータを形成した後、形成された比較例2のシンチレータを走査型電子顕微鏡で観察し、針状結晶群の形成を確認した。また、比較例2のシンチレータの膜厚は、830μmであった。ICP分析より、比較例2のシンチレータのセシウムに対するタリウム濃度は0.97モル%、銅濃度は1.6ppm(parts per million)であった。
比較例2のシンチレータの輝度は、比較例1のシンチレータと比較して113であった。また、比較例2のシンチレータのMTFは、比較例1のシンチレータと比較して113であった。
比較例2のシンチレータのブライトバーンの評価値は、それぞれBB(2.5)=104、BB(10)=98、BB(30)=79であった。比較例2のシンチレータは、銅を1.6ppm添加したが、比較例1のシンチレータと比較して、ブライトバーン現象を低減する効果は限定的であった。
次いで、実施例について説明する。
実施例1
まず、350gのヨウ化セシウム原料102と50個の2mm角の粒状の銅原料103とを含む材料供給源を準備し、蒸発部101a(タンタル製、円筒型)に充填した。実施例1において、銅原料103の表面積は1200mm、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値は3.4である。また、賦活剤の材料供給源としてヨウ化タリウム原料104を準備し、蒸発部101b(タンタル製、円筒型)に充填した。また、比較例1、2と同様の構成を備える基板107を準備した。
材料供給源が充填された蒸発部101a、101b、基板107を蒸着装置100のチャンバ109内の所定の位置に配した後、比較例2と同様の手順で基板107上に実施例1のシンチレータを形成(蒸着)した。実施例1のシンチレータの成膜時、比較例2と同様に、蒸発部101aにおいて、銅の融点よりも低い温度でヨウ化セシウム原料102を溶解させ蒸着を行った。
実施例1のシンチレータを形成した後、形成された実施例1のシンチレータを走査型電子顕微鏡で観察し、針状結晶群の形成を確認した。また、実施例1のシンチレータの膜厚は、860μmであった。ICP分析より、実施例1のシンチレータのセシウムに対するタリウム濃度は0.74モル%、銅濃度は35ppmであった。
実施例1のシンチレータの輝度は、比較例1のシンチレータと比較して110であった。また、実施例1のシンチレータのMTFは、比較例1のシンチレータと比較して117であった。
実施例1のシンチレータのブライトバーンの評価値は、それぞれBB(2.5)=40、BB(10)=39、BB(30)=38であった。
本実施例において、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値を3.4、また、銅原料の表面積を1200mmとすることによって、ブライトバーンの評価値が明確に低減した。また、銅を添加していない比較例1のシンチレータと比較して、実施例1のシンチレータの分解能や輝度特性が、低下していないことがわかった。つまり、分解能や輝度特性を損なうことなく、ブライトバーン現象を低減することが実現可能であることがわかった。
実施例2
まず、359gのヨウ化セシウム原料102と150個の2mm角の粒状の銅原料103とを含む材料供給源を準備し、蒸発部101a(タンタル製、円筒型)に充填した。実施例2において、銅原料103の表面積は3600mm、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値は10.0である。また、賦活剤の材料供給源としてヨウ化タリウム原料104を準備し、蒸発部101b(タンタル製、円筒型)に充填した。また、実施例1、比較例1、2と同様の構成を備える基板107を準備した。
材料供給源が充填された蒸発部101a、101b、基板107を蒸着装置100のチャンバ109内の所定の位置に配した後、実施例1、比較例2と同様の手順で基板107上に実施例2のシンチレータを成膜した。実施例2のシンチレータの成膜時、実施例1、比較例2と同様に、蒸発部101aにおいて、銅の融点よりも低い温度でヨウ化セシウム原料102を溶解させ蒸着を行った。
実施例2のシンチレータを形成した後、形成された実施例2のシンチレータを走査型電子顕微鏡で観察し、針状結晶群の形成を確認した。また、実施例2のシンチレータの膜厚は、890μmであった。ICP分析より、実施例2のシンチレータのセシウムに対するタリウム濃度は0.71モル%、銅濃度は38ppmであった。
実施例2のシンチレータの輝度は、比較例1のシンチレータと比較して96であった。また、実施例2のシンチレータのMTFは、比較例1のシンチレータと比較して111であった。
実施例2のシンチレータのブライトバーンの評価値は、それぞれBB(2.5)=54、BB(10)=40、BB(30)=36であった。
本実施例において、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値を10.0、また、銅原料の表面積を3600mmとすることによって、ブライトバーン評価値が明確に低減した。また、銅を添加していない比較例1のシンチレータと比較して、実施例2のシンチレータの分解能や輝度特性が、低下していないことがわかった。つまり、分解能や輝度特性を損なうことなく、ブライトバーン現象を低減することが実現可能であることがわかった。
実施例3
まず、360gのヨウ化セシウム原料102と300個の2mm角の粒状の銅原料103とを含む材料供給源を準備し、蒸発部101a(タンタル製、円筒型)に充填した。実施例3において、銅原料103の表面積は7200mm、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値は20.0である。また、賦活剤の材料供給源としてヨウ化タリウム原料104を準備し、蒸発部101b(タンタル製、円筒型)に充填した。また、実施例1、2、比較例1、2と同様の構成を備える基板107を準備した。
蒸発部101a、101b、基板107を蒸着装置100のチャンバ109内の所定の位置に配した後、実施例1、2、比較例2と同様の手順で基板107上に実施例3のシンチレータを成膜した。実施例3のシンチレータの成膜時、実施例1、2、比較例2と同様に、蒸発部101aにおいて、銅の融点よりも低い温度でヨウ化セシウム原料102を溶解させ蒸着を行った。
実施例3のシンチレータを形成した後、形成された実施例3のシンチレータを走査型電子顕微鏡で観察し、針状結晶群の形成を確認した。また、実施例3のシンチレータの膜厚は、880μmであった。ICP分析より、実施例3のシンチレータのセシウムに対するタリウム濃度は0.69モル%、銅濃度は39ppmであった。
実施例3のシンチレータの輝度は、比較例1のシンチレータと比較して97であった。また、実施例2のシンチレータのMTFは、比較例1のシンチレータと比較して100であった。
実施例3のシンチレータのブライトバーンの評価値は、それぞれBB(2.5)=37、BB(10)<10、BB(30)<10であった。
本実施例において、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値を20.0、また、銅原料の表面積を7200mmとすることによって、ブライトバーン評価値が明確に低減した。また、銅を添加していない比較例1のシンチレータと比較して、実施例3のシンチレータの分解能や輝度特性が、低下していないことがわかった。つまり、分解能や輝度特性を損なうことなく、ブライトバーン現象を低減することが実現可能であることがわかった。
実施例1~3、比較例1、2の結果を図4にまとめる。実施例1~3に示されるように、銅原料103の表面積[mm]をヨウ化セシウム原料102の充填量[g]で除した値が3.4以上、また、銅原料の表面積が1200mm以上で、ブライトバーン評価値が明確に低減されることがわかった。
また、本実施例において、上述の通り、銅原料103とヨウ化セシウム原料102との接触面積を一定に維持することができるため、蒸着中に生成して蒸発するヨウ化銅110の量を一定に保つことが可能となる。つまり、シンチレータに含まれる銅の濃度を、膜厚方向に一定にすることができる。このとき、シンチレータに含まれる銅の濃度を35ppm以上かつ39ppm以下にすることによって、分解能や輝度特性を損なうことなく、ブライトバーン現象を低減することが実現可能であることがわかった。
本実施形態および本実施例の方法を用いることによって、このような少量の添加物を、安定して供給しながらシンチレータを製造可能である。また、添加物の濃度は、上述のようにヨウ化セシウム原料102と銅原料103との接触する面積に依存しうる。このため、成膜中に添加物の濃度が変化することなく一定の濃度で添加物を供給可能であり、シンチレータ中で添加物が偏析することを抑制できる。つまり、例えば、ヨウ化セシウム原料102と銅原料103とを別々の材料供給源から供給し、シンチレータ中に添加する濃度や、膜厚方向での濃度の均一性を制御する場合と比較して、容易に少量の添加物をシンチレータ中に均一に添加することが可能となる。
以上、本発明に係る実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。従って、本発明の範囲を公にするために以下の請求項を添付する。
102:ヨウ化セシウム原料、103:銅原料、107:基板、110:ヨウ化銅

Claims (10)

  1. シンチレータの製造方法であって、
    ヨウ化セシウム原料と銅原料とを含む材料供給源を準備する工程と、
    前記材料供給源を用いて基板にシンチレータを形成する蒸着工程と、を含み、
    前記蒸着工程において、
    前記材料供給源は、前記ヨウ化セシウム原料が溶解し、かつ、前記銅原料の融点よりも低い温度に加熱され、
    前記銅原料と前記ヨウ化セシウム原料との反応によって生成されるヨウ化銅が、溶解した前記ヨウ化セシウム原料と共に蒸発することによって、前記基板にヨウ化セシウムおよび銅を含むシンチレータが形成されることを特徴とする製造方法。
  2. 前記蒸着工程において、溶解した前記ヨウ化セシウム原料と前記銅原料との接触面積が、一定に保たれることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記蒸着工程において、前記銅原料が、溶解した前記ヨウ化セシウム原料の中に配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記蒸着工程において、前記銅原料が、溶解した前記ヨウ化セシウム原料から露出しないことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記銅原料の表面積[mm]を前記ヨウ化セシウム原料の充填量[g]で除した値が、3.4以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の製造方法。
  6. 前記銅原料の表面積が、1200mm以上であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の製造方法。
  7. 前記シンチレータに含まれる銅の濃度が、膜厚方向に一定であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の製造方法。
  8. 前記シンチレータに含まれる銅の濃度が、35ppm以上かつ39ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の製造方法。
  9. 前記材料供給源のほかに、賦活剤原料を含む別の材料供給源を準備する工程をさらに含み、
    前記蒸着工程において、前記別の材料供給源から前記シンチレータに前記賦活剤原料を蒸発させることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の製造方法。
  10. 前記賦活剤原料がタリウムを含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
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