JP4906195B2 - 板状炭酸カルシウムを含む含塩素高分子化合物組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含塩素高分子化合物組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル樹脂に代表される含塩素高分子化合物は、加熱時または燃焼時に人体に有害な塩化水素ガスを発生する。この問題を解決する手段の一つとして、従来から、炭酸カルシウムに代表される無機物を含塩素高分子化合物組成物に塩化水素捕捉剤として配合する方法が採られている。
【0003】
含塩素高分子化合物が燃焼した際に発生する塩化水素ガスを捕捉する観点から、塩化水素捕捉剤として配合する炭酸カルシウムに要求される性質として、以下の点を挙げることができる。
・含塩素高分子化合物との接触面積(一次粒子の個数)を増やす為に粒子径を小さくする点、
・含塩素高分子化合物組成物への相溶性を高めて、粒子をできるだけ均一に分散させる点
而るに、炭酸カルシウムをはじめとした無機物は一次粒子径が小さくなるほど表面エネルギーが増して凝集し易くなるため分散性が悪くなる。また、仮に均一分散しても樹脂の溶融粘度、硬化時の硬度が高くなる等、炭酸カルシウムによる塩化水素捕捉能と一次粒子の大きさは二律背反の関係にある。
【0004】
例えば、不定形の重質炭酸カルシウムでは粒子が粗いため、塩化水素との接触面積が小さくなりすぎる。また、等方性の炭酸カルシウム粉末ではパス経路が短いため透過速度が速いので、完全に炭酸カルシウムと反応しないまま放出される場合がある。そのため、このような炭酸カルシウムを含む組成物の塩化水素捕捉率は、十分なものではない。
【0005】
一方、炭酸カルシウムの他に複数の充填剤を加えることにより、塩化水素捕捉能以外の物性を向上させることも試みられている。
【0006】
例えば、特開平11−293074号公報には、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、塩化水素捕捉剤として平均粒径が5μm以下の炭酸カルシウム粉末を30〜80重量部添加し、この炭酸カルシウムがステアリン酸などの有機脂肪酸で表面処理されていることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物が開示されている。この他にも、例えば、特開平11−302485号公報、特開平11−129411号公報などにおいて、不定形または立方体の炭酸カルシウムを用いた組成物が開示されている。
【0007】
しかし、これらで使用されている炭酸カルシウムは、不定形または立方体であるので、クレー等の形状効果を有する充填剤のように高強度を発現しにくい。また、炭酸カルシウムと他の補強充填材を併用配合すると、塩化水素捕捉剤としての炭酸カルシウムの配合率が低下するため、塩化水素の捕捉率が低下してしまう。
【0008】
一方、特開平6−287382号公報には、異方性炭酸カルシウムを含有する含塩素高分子組成物だけでなく、異方性炭酸カルシウムに代えて粒子径4μm以下の等方性炭酸カルシウムと粒子径0.1μm以下の微粒子の等方性炭酸カルシウムとの混合物を含有してなる含塩素高分子化合物組成物も開示されている。この公報には、異方性炭酸カルシウムとして、棒状などの細長の炭酸カルシウムが記載されている。
【0009】
しかしながら、上記公報のように一軸配向(構造要素の配向分布が一方向に長細く配向)の炭酸カルシウムと等方性或いは不定形の炭酸カルシウムを併用配合した場合には、強度は若干向上するが、上記理由により十分な塩化水素捕捉率は得られにくいと考えられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
含塩素高分子化合物組成物を素材とした製品は、加熱・燃焼させたときに塩化水素ガスを発生するため、作業者の健康を阻害するばかりか、焼却処分する際の焼却炉の内面を腐食させるなど問題を有しており、これを改善するために、炭酸カルシウム粉末などの塩化水素捕捉剤を添加するという提案が、上記のように数多くなされている。
【0011】
本発明は、従来技術の問題点を鑑み成されたものであって、主として、PVC(ポリ塩化ビニル)製品などの含塩素高分子化合物を加熱しながら加工する場合や燃焼する場合に生じる塩化水素ガスの発生速度・発生量をより効率よく抑制することができる含塩素高分子化合物組成物を提供することを目的とする。
【0012】
更に、本発明は、モジュラス、硬度等に優れた含塩素高分子化合物組成物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、特定の板状炭酸カルシウム単独、或いはコロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムと上記板状炭酸カルシウムを併用することにより、含塩素高分子化合物組成物の加熱、燃焼時に発生する塩化水素ガスのパス経路を長くできること、即ち、塩化水素ガスの含塩素高分子化合物中の塩化水素の透過速度を抑制し、炭酸カルシウムと塩化水素ガスとの接触(反応)時間を長くできることなどを見出し本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、以下の含塩素高分子化合物に係るものである。
1.含塩素高分子化合物100重量部に対して、板状炭酸カルシウムを10〜150重量部含む含塩素高分子化合物組成物であって、
板状炭酸カルシウムが、その10〜70重量部をコロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムで代替されていることを特徴とする含塩素高分子化合物組成物。
2.板状炭酸カルシウムが、SEMで観察した長径が0.08〜15μmであり、短径が0.08〜15μmであり、且つ厚みが0.01〜1μmである上記項1に記載の含塩素高分子化合物組成物。
3.板状炭酸カルシウムが、有機脂肪酸、樹脂酸、リン酸類、ケイ酸類、アクリル酸類、メタクリル酸類、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤によって表面処理されており、且つ表面処理剤の量が、板状炭酸カルシウム100重量部に対して0.5〜20重量部である上記1又は2に記載の含塩素高分子化合物組成物。
4.コロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムが、有機脂肪酸、樹脂酸、リン酸類、ケイ酸類、アクリル酸類、メタクリル酸類、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤によって表面処理されている上記1に記載の含塩素高分子化合物組成物。
5.コロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムのSEMで観察した平均粒子径が、0.01〜5μmである上記1に記載の含塩素高分子化合物組成物。
6.更に、板状炭酸カルシウム以外の板状無機充填材を含塩素高分子化合物100重量部に対して10〜70重量部含む上記1〜5のいずれかに記載の含塩素高分子化合物組成物。
7.板状無機充填剤が、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、クレーおよびマイカからなる群から選択される少なくとも1種である上記6に記載の含塩素高分子化合物組成物。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、含塩素高分子化合物100重量部に対して、板状炭酸カルシウムを10〜150重量部程度含む含塩素高分子化合物組成物に係る。板状炭酸カルシウムは、塩化水素捕捉剤および/または塩化水素透過抑制剤として作用する。
【0016】
板状炭酸カルシウムの配合量は、含塩素高分子化合物100重量部に対して、通常10〜150重量部程度、好ましくは30〜100重量部程度、より好ましくは50〜90重量部程度である。
【0017】
本発明で用いる板状炭酸カルシウムの形状は、板状であれば、特に制限されない。板状炭酸カルシウムの長径は、SEM(走査型電子顕微鏡)による観察において、通常0.08〜15μm程度、好ましくは0.1〜10μm程度、より好ましくは0.5〜5μm程度である。板状炭酸カルシウムの短径は、SEMによる観察で、通常0.08〜15μm程度、好ましくは0.1〜10μm程度、より好ましくは0.5〜5μm程度である。板状炭酸カルシウムの厚みは、通常0.01〜1μm程度、好ましくは0.05〜1μm程度、より好ましくは0.08〜0.5μm程度である。
【0018】
炭酸カルシウムの形状は、SEMによる観察において板状であれば、形や大きさは特に制限されず、例えば、六角形、円形、楕円形、正方形、長方形などであってもよい。より具体的には、特開昭63−50316号公報に記載されているような板状炭酸カルシウムの形が六角形となったものでも良い。六角形の板状炭酸カルシウムの短径および長径については、図1に示すように定義する。即ち、短径は、最も短い対角線の長さを意味し、長径は、最も長い対角線の長さを意味する。
【0019】
本発明において用いる含塩素高分子化合物は、特に制限されない。例えば、含軟質、硬質の区別なく含塩素樹脂を使用することができる。含塩素樹脂として、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレンなどを例示できる。含塩素樹脂として、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの含塩素単量体と塩素を含まない単量体との共重合樹脂を用いても良い。塩素を含まない単量体として、アクリロニトリル、マレイン酸、マレイン酸エステル、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、高級ビニルエーテルなどを例示できる。含塩素樹脂は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
含塩素高分子化合物として、含塩素ゴムを用いることも可能である。含塩素ゴムとして、例えば、クロロプレンゴム、硫黄変性クロロプレンゴム、キサントゲン変性クロロプレンゴム、メルカプタン変性クロロプレンゴム、ACM(アクリル酸アルキルエステルと少量の塩素を含む架橋性モノマーとの共重合体)などの含塩素アクリルゴム、クロロスルホン化ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ブチルゴム、塩素化EPDM、塩素化IIR、エピクロルヒドリンゴムなどを例示することができる。含塩素ゴムは、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
または、これらの含塩素ゴムと塩素を含まないゴムとのブレンドゴムまたは架橋ゴムでもよい。塩素を含まないゴムとして、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、多硫化ゴムなどを例示できる。
【0022】
含塩素高分子化合物は、含塩素樹脂と塩素を含まないゴムとのブレンド物または架橋物、塩素を含まない樹脂と含塩素ゴムとのブレンド物または架橋物であってもよい。
【0023】
本発明において使用する板状炭酸カルシウムは、例えば有機脂肪酸、樹脂酸、アクリル酸類、メタクリル酸類、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、シランカップリング剤などの界面活性剤;ケイ酸類、リン酸類などの表面処理剤によって、必要に応じて、表面処理されていてもよい。表面処理剤は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。この様な表面処理を施すことにより、板状炭酸カルシウムの膠質性を向上させることができる。
【0024】
板状炭酸カルシウム表面に付着させる表面処理剤の量は、特に制限されないが、板状炭酸カルシウム100重量部に対して、通常0.5〜20重量部程度、好ましくは0.5〜10重量部程度、より好ましくは2〜5重量部程度である。
【0025】
表面処理後の板状炭酸カルシウムの大きさは、特に制限されない。表面処理後の板状炭酸カルシウムの長径は、SEM(走査型電子顕微鏡)による観察において、通常0.08〜18μm程度である。表面処理後の板状炭酸カルシウムの短径は、SEMによる観察で、通常0.08〜18μm程度である。表面処理後の板状炭酸カルシウムの厚みは、通常0.01〜1.2μm程度である。
【0026】
有機脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸等の炭素数が6〜24程度の飽和若しくは不飽和の脂肪酸、これらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)又はエステルなどを例示できる。これらのなかでは、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0027】
樹脂酸としては、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、アビエチン酸類単独、或いはその重合体、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、これらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)又はエステルなどを例示できる。これらのなかでは、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸が好ましい。
【0028】
リン酸類としては、正リン酸、第1〜第3リン酸ソーダ、ピロリン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、酸性ピロリン酸ソーダ、酸性メタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなどが例示できる。これらの中では、正リン酸が好ましい。
【0029】
ケイ酸類としては、例えば珪酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、オルソケイ酸カリウム等が挙げられる。これらのなかでは、ケイ酸ナトリウムが好ましい。
【0030】
アクリル酸類としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸塩類モノマー(Ca、Zn、Mg、Al等)、アクリル酸エステルまたはその重合体などを例示できる。これらのなかでは、アクリル酸が好ましい。
【0031】
メタクリル酸類としては、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸塩類モノマー(Ca、Zn、Mg、Al等)、メタクリル酸エステルまたはその重合体などを例示できる。これらのなかでは、メタクリル酸が好ましい。
【0032】
チタネートカップリング剤としては、従来ゴム、プラスチックスに配合されている任意のチタネートカップリング剤を配合することができ、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなどを例示できる。これらのなかでは、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが好ましい。
【0033】
アルミネートカップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートを例示できる。
【0034】
シランカップリング剤としては、従来ゴム、プラスチックスに配合されている任意のシランカップリング剤を配合することができ、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−テトラサルファンなどを例示できる。これらのなかでは、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0035】
本発明に用いる板状炭酸カルシウムは、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、特開平7−267634号公報、特開平10−59716号公報、特公平6−96449号公報などの方法を例示することができる。
【0036】
特開平7−267634号公報には、炭酸ガス反応法において、炭酸カルシウム生成過程において塩基性炭酸カルシウムを生成する反応条件下で、かつ有機アミン化合物の共存下に炭酸化反応をおこなわしめる板状炭酸カルシウムの製造方法が記載されている。
【0037】
ここで、炭酸ガス反応法(石灰乳に炭酸ガスを吹き込んで水酸化カルシウムを炭酸化する方法)は、合成炭酸カルシウムの一般的な合成方法である。より具体的には、石灰石原石をコークスあるいは石油系燃料(重油、軽油)、天然ガス、LPG等で混焼することによって生石灰を得て、この生石灰を水和し、水酸化カルシウムスラリーとし、これに混焼時に発生する炭酸ガスを水酸化カルシウムスラリーにバブリングし反応させることによって炭酸カルシウムを製造する方法である。
【0038】
特公平6-96449号公報には、炭酸ガス反応法において、炭酸カルシウムの生成過程において塩基性炭酸カルシウムを生成する反応条件下で、かつ有機ホスホン酸化合物の共存下に炭酸化反応をおこなわしめる板状炭酸カルシウムの製造方法が記載されている。
【0039】
即ち、本発明において用いる板状炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムの二酸化炭素による炭酸化反応により炭酸カルシウムを製造する方法において、炭酸カルシウムの生成過程において塩基性炭酸カルシウムを生成する反応条件下で、且つ有機ホスホン酸化合物及び有機アミン化合物の少なくとも1種の共存下に炭酸化反応を行わしめることにより好適に調製することができる。
【0040】
上記炭酸カルシウムの生成過程において塩基性炭酸カルシウムを生成する反応条件としては、好適には炭酸化率60%を越える前までで、電気伝導度の降下が反応前に対して3.5mS/cm以内である条件を挙げることができる。ここで、炭酸化率とは、炭酸化前の石灰乳中の水酸化カルシウムのモル数に対する炭酸化された水酸化カルシウムのモル数の百分率を意味する。
【0041】
有機ホスホン酸化合物として、例えば、ニトリロトリ(メチレンホスホス酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、これらのナトリウム、カリウム等の金属塩等を例示できる。
【0042】
有機アミン化合物として、例えば、エチレンジアミン、ジェチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミンなどを例示できる。
【0043】
有機ホスホン酸化合物又は/及び有機アミン化合物の添加時期としては、炭酸化反応の反応前、反応途中のどちらかまたはその両方に添加すればよく、より具体的な添加時期として、炭酸化率が0〜85%程度、好ましくは5〜70%程度であるのが良い。炭酸化率が高くなり過ぎてから添加すると0.05μm程度の立方状炭酸カルシウムが生成するおそれがある。
【0044】
有機ホスホン酸化合物又は/及び有機アミン化合物の添加量は、水酸化カルシウムに対して、通常0.01〜30重量%程度、好ましくは0.1〜20重量%程度である。
【0045】
本発明で用いる板状炭酸カルシウムは、上述の公報以外に、例えば特許第2882852号公報などに記載の方法などによっても製造することができる。即ち、生石灰換算濃度が0.5〜12重量%である生石灰および/または消石灰のメタノール懸濁液に、生石灰(消石灰の場合は同一モルの生石灰に換算)に対し5〜20倍モル相当量の水を加え、メタノールと生石灰および/または消石灰と水との混合系を調製した後、該混合系に炭酸ガスを導通し、炭酸化反応系内の導電率変化曲線において、炭酸化反応系内の導電率が極大点に到達する以前に系内温度を30℃以上に調製し、炭酸化反応開始点から炭酸化反応系内導電率が100μS/cmである点に到達するまでの時間を120分以上1000分未満になるよう調製して炭酸化反応を行う調製方法が記載されている。
【0046】
板状炭酸カルシウムの製造方法は、この限りではなく、例えば六角板状炭酸カルシウムの製造方法(特開昭63−50316号公報)、板状炭酸カルシウムの製造法(特公昭63−6494号公報)などもある。
【0047】
板状炭酸カルシウムに表面処理を施す方法として、例えば、板状炭酸カルシウム化合済無処理乳濁液(板状炭酸カルシウムが化合済みであって、表面処理剤を含まない乳濁液)に対し、所定量の表面処理剤を投入し、板状炭酸カルシウムに被覆吸着させる湿式法を例示できる。
【0048】
次に圧搾濾過機などを用いて母液(板状炭酸カルシウムが化合済の液であって、表面処理剤を含んでいてもよい)を脱水ケーキ(固形分)とろ液とに分離し、脱水ケーキを乾燥する方法、スラリー状のまま噴霧乾燥して乾燥粉体として得ることで板状炭酸カルシウムを製造しうる。
【0049】
本発明の組成物においては、板状炭酸カルシウムの一部をコロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムによって代替されていてもよい。代替する量は、特に制限されないが、通常板状炭酸カルシウムの10〜70重量部程度、好ましくは10〜50重量部程度、より好ましくは10〜30重量部程度である。これらの炭酸カルシウムは、塩化水素捕捉剤として機能する。
【0050】
コロイド炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムの大きさは、特に制限されないが、SEM(走査型電子顕微鏡)観察による平均粒子径として、通常0.01〜5μm程度、好ましくは0.03〜1μm程度、特に好ましくは0.06〜0.5μm程度である。
【0051】
コロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムは、板状炭酸カルシウムと同様に、有機脂肪酸、樹脂酸、アクリル酸類、メタクリル酸類、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、シランカップリング剤などの界面活性剤;ケイ酸類、リン酸類などの表面処理剤によって表面処理が施されていてもよい。表面処理剤は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
これらの炭酸カルシウム表面に付着させる表面処理剤の量は、各々の炭酸カルシウム100重量部に対して、通常0.5〜20重量部程度であり、好ましくは0.5〜10重量部程度、より好ましくは2〜5重量部程度である。
【0053】
表面処理後のコロイド炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムの大きさは、特に制限されない。表面処理後のこれらの炭酸カルシウムの大きさは、SEM(走査型電子顕微鏡)観察による平均粒子径として、通常0.01〜6μm程度である。
【0054】
重質炭酸カルシウムは、公知の方法を用いて製造したものを使用できる。例えば、乾式、湿式の区別なく、ローラーミル、高速回転ミル(衝撃せん断ミル)、容器駆動媒体ミル(ボールミル)、媒体攪拌ミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどを用いて製造された重質炭酸カルシウムを例示できる。
【0055】
コロイド炭酸カルシウムは、一般に、炭酸ガス反応法(石灰乳に炭酸ガスを吹き込んで水酸化カルシウムを炭酸化する方法)により製造される。例えば、石灰石原石をコークスあるいは石油系燃料(重油、軽油)、天然ガス、LPG等で混焼することによって生石灰を得て、この生石灰を水和し、水酸化カルシウムスラリーとし、これに混焼時に発生する炭酸ガスを水酸化カルシウムスラリーにバブリングし反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0056】
コロイド炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムに対して表面処理を施す方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、コロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムの乾燥粉末を激しく撹拌しながら、表面処理剤を滴下またはスプレーなどを用いて噴霧注加した後撹拌を続け、場合によっては加熱乾燥して表面処理物を得る乾式法、コロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムの懸濁水溶液に撹拌下で表面処理剤を添加する湿式法などを例示できる。いずれの場合においても、撹拌には、ヘンシェルミキサーなどのミキサーを用いてもよい。
【0057】
本発明の含塩素高分子化合物組成物は、更に、板状炭酸カルシウム以外の板状無機充填材を含塩素高分子化合物100重量部に対して10〜70重量部程度、好ましくは20〜60重量部程度、より好ましくは30〜50重量部程度含んでいてもよい。
【0058】
板状無機充填材として、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、クレー(例えば、ベントナイトなど)、マイカ(例えばセリサイトなど)などを例示できる。板状無機充填材は、塩化水素透過抑制剤として機能する。
【0059】
本発明の含塩素高分子化合物には、更に、必要に応じて、無機増量剤、可塑剤、安定剤、滑剤または粘着防止剤、帯電防止剤、発泡剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤、改質剤、難燃剤、相溶化剤等の各種添加剤を適宜公知の処方に従って、添加配合しても良い。
【0060】
無機増量剤としては、マグネシウム硅酸塩、酸化珪素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト類等を例示できる。無機増量剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
無機増量剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常3〜100重量部程度、好ましくは5〜50重量部程度である。
【0062】
可塑剤として、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(エチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート等の脂肪酸エステル系可塑剤;トリメリット酸エステル系可塑剤;ピロメリット酸エステル系可塑剤;ポリプロピレンアジペート等のポリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィンなどを例示できる。可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
これらの可塑剤の添加量は、本発明の効果を失わない範囲であれば特に制限されず、製品に要求される硬さなどにより適宜選定される。例えば、パイプなどの硬質製品であれば、含塩素高分子化合物100重量部当たり通常0〜15重量部程度である。ステッカー、建材用化粧フィルムなどの半硬質製品であれば、含塩素高分子化合物100重量部当たり通常10〜30重量部程度である。軟質フィルム、シート、レザー、壁材、床材などの軟質製品であれば、含塩素高分子化合物100重量部当たり通常20〜100重量部程度である。
【0064】
安定剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、オクトイン酸亜鉛等の金属石鹸;ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、ジオクチルアシッドホスファイト等の有機ホスファイト系安定剤;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、有機錫メルカプチド、有機錫ジスルホンアミド、三塩基性硫酸錫などの錫系安定剤;三塩基性硫酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛等の鉛系安定剤等を例示できる。安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
安定剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常0.5〜10重量部程度である。但し、金属石鹸を用いる場合には、多量に添加しすぎると、添加した金属石鹸がそれを用いた製品の表面に滲み出し(ブリードし)、特に、二次成形を必要とするような場合に、その作業性を損なう場合がある。金属石鹸の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり5重量部以下、特に3重量部以下とするのが望ましい。
【0066】
滑剤または粘着防止剤として、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系滑剤またはこれらの塩(鉛、カルシウムなど);ステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤;ブチルパルミテート、ブチルステアレート等の脂肪酸エステル系滑剤;ポリエチレンワックス;流動パラフィンなどを例示できる。滑剤または粘着防止剤は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。滑剤または粘着防止剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常0.5〜10重量部程度である。
【0067】
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等の非イオン系帯電防止剤;脂肪酸アミン塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル等のアニオン系帯電防止剤;アルキルアミン塩、アルキル第四級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン誘導体等のカチオン系帯電防止剤;アルキルベタイン型界面活性剤、アルキルイミダゾリン誘導体、N−アルキル−β−アラニン型界面活性剤等の両性帯電防止剤などを例示できる。耐電防止剤は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。耐電防止剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常0.2〜2重量部程度である。
【0068】
発泡剤としては、アゾジカルボアミド、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、p−トルエンスルフォニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロペンタメチレンテトラミン等の有機系発泡剤;重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、ソジウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等の無機系発泡剤などの熱分解型化学発泡剤;低沸点の炭化水素等を内包した熱膨張性のマイクロカプセル等を例示できる。発泡剤は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。発泡剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常0.5〜10重量部程度である。
【0069】
紫外線吸収剤としては、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サルチル酸エステル系紫外線吸収剤等を例示できる。紫外線吸収剤は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。紫外線吸収剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常0.01〜0.5重量部程度である。
【0070】
光安定剤として、例えば、分子中に2,2',6,6'−テトラメチルピペリジン環を一以上有するヒンダードアミン系化合物などを例示できる。光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。光安定剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常0.01〜0.5重量部程度である。
【0071】
改質剤としては、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリルゴム等の耐衝撃改良剤;ポリメチルメタクリレート等のゲル化促進剤;アクリロニトリル・ブタジエン・α−メチルスチレン共重合体、メチルメタクリレート・アクリル酸エステル共重合体、その他マレイミドを使用した共重合体等の耐熱改質剤;三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、アンチモン酸ソーダ、リン酸エステルおよびリン酸化合物、塩素化パラフィン、塩素化オレフィン、ヘキサブロモベンゼン等の難燃化剤;部分架橋NBR、アクリルゴム、ポリウレタン等の弾性付与剤;さらには発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、導電性付与剤等を例示できる。改質剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの改質剤の添加量は、含塩素高分子化合物100重量部当たり、通常0.5〜20重量部程度である。
【0072】
抗酸化剤としては、アルキルフェノール、アルキレン ビスフェノール、アルキル フェノール チオエーテル、β,β’−チオプロピオン酸エステル、有機亜リン酸エステル、芳香族アミン、フェノール・ニッケル複合体などを例示できる。これらの抗酸化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
抗酸化剤の添加量は、特に制限されないが、含塩素高分子化合物100重量部に対して、通常0.1〜1重量部程度、好ましくは0.15〜0.35重量部程度である。
【0074】
着色剤としては、従来樹脂の着色に慣用されているものの中から任意のものを選択して使用できる。このような着色剤としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉類、カーボンブラック等の炭素塩類、酸化チタン、亜鉛華、弁柄等の酸化物類、沈降性硫酸バリウム等の硫酸塩類、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の炭酸塩類、クレー、群青等のケイ酸塩類、黄鉛等のクロム酸塩類、コバルトブルー等のアルミン酸塩類、紺青等のフェロシアン化合物類等の無機顔料;トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ジスアゾエローAAA、レーキレッドC等のアゾ顔料類、フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド等の多環式顔料類、ビクトリアピュアブルーBOレーキ、アルカリブルートナー等の染付レーキ類、アジン顔料類、蛍光顔料類等の有機顔料および塩基性染料、酸性染料、油溶染料、分散染料などを例示できる。これらの着色剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
着色剤の添加量は、特に制限されないが、含塩素高分子化合物100重量部に対して、通常0.1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部程度である。
【0076】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、酸化アンチモン等のアンチモン化合物、ホウ酸化合物等を例示できる。これらの難燃剤の配合量は目的に応じて公知の範囲内で添加すればよい。
【0077】
本発明の組成物は、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーなどの混合機により混合することにより得ることができる。必要に応じて、更に、得られた混合物をバンバリーミキサー、ミキシングロール、単軸または二軸押出機などにより混練してもよく、造粒してもよい。
【0078】
本発明の組成物は、例えば、金型成形、押出し成形、鋳込成形、テープ成形、カレンダー成形、射出成形などの公知の成形方法により、フィルム、シート、チューブなどの所望の形に成形することができる。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、燃焼時、加熱時に発生する塩化水素ガスの発生速度・発生量をより抑制できる含塩化水素高分子化合物を得ることが可能である。
【0080】
本発明によると、優れたモジュラスを示す含塩素高分子化合物組成物を得ることができる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明をより具体的に説明する。
本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0082】
実施例および比較例において用いた各成分の詳細を以下に示す。
・含塩素高分子化合物:(塩化ビニル系樹脂、新第一塩ビ製、商品名ZEST1000Z、平均重合度1,000)
・安定剤:三塩基性硫酸鉛(堺化学製, 商品名 TL-7000)
・滑剤:ステアリン酸鉛(堺化学製, 商品名 SL-1000)
ステアリン酸カルシウム(堺化学製, SC-P)
・可塑剤:ジオクチルフタレート(新日本理化製)
・炭酸カルシウムA:板状炭酸カルシウム(白石工業製、試作品、長径および短径:約1μm、厚さ:約0.5μm)
炭酸カルシウムA’:炭酸カルシウムA100重量部に対して2.3重量部の有機脂肪酸を用いて炭酸カルシウムAを表面処理したもの。
炭酸カルシウムB:重質炭酸カルシウム(白石工業製、ホワイトンP−30、平均粒子径3μm)
炭酸カルシウムC:コロイド炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CC、平均粒子径0.04μm、有機脂肪酸を用いて表面処理をしたもの)
炭酸カルシウムD:コロイド炭酸カルシウム(白石工業製、白艶華CCR、平均粒子径0.08μm、有機脂肪酸を用いて表面処理をしたもの)
炭酸カルシウムE:六角板状炭酸カルシウム(白石中研製、試作品、長径20μm、短径17μm、厚み2μm)
炭酸カルシウムF:軽微性炭酸カルシウム(白石工業製、PC、長径3μm、短径0.5μm)
・板状無機充填材:塩基性炭酸マグネシウム(白石工業製、試作品、長径3μm、短径2μm、厚さ約0.02μm)
・板状無機充填材:マイカ(白石工業製、WG-160、長径3μm、短径2μm、厚さ約0.1μm)
(塩化水素捕捉実験方法)
実施例1〜2、比較例1〜3および比較例5〜6については、含塩素高分子化合物(塩化ビニル系樹脂)100重量部、安定剤5重量部、2種の滑剤をそれぞれ1重量部、可塑剤50重量部および表1または2に記載の炭酸カルシウム100重量部を混合し、150℃の8インチロールで7分間混練したものを1 g短冊状に切り出して試料を作製した。
【0083】
実施例3〜5については、炭酸カルシウム、板状無機充填材などを表2に記載の量を混合した他は、上記と同様にして試料を作製した。
【0084】
また、比較例7については、炭酸カルシウムとして、表2に記載の量の板状炭酸カルシウムを混合した他は、実施例1などと同様にして試料を作成した。
【0085】
得られた試料を用いて、日本電線工業会, JCS 第397号A−電線ケーブルの燃焼特性に関する特性試験方法『7. 燃焼時発生ガスの酸性度』に準拠して、水素イオン濃度を求めた。見掛けの捕捉率として、塩化水素ガスの捕捉率を得られた水素イオン濃度を用いて次式により算出した。
塩化水素捕捉率(%)=(X1−X2)×100/X1
X1:フィラー無充填試料の燃焼ガスの水素イオン濃度、即ち、比較例4における水素イオン濃度
X2:各試料の燃焼ガスの最小水素イオン濃度
(引張強さと伸び)
塩化水素捕捉実験において用いたのと同様の配合の組成物を用いて、ロール混練条件でシート成型物を作製した。これを鏡面板で狭持して150℃で2分間予熱した後、100kgf/cm2の圧力で5分間加圧して150×150×1mmの大きさのシートを得た。このシートからJIS6301のダンベル1号型を打ち抜き、25mmの標線を記入して試験片とした。
【0086】
引張試験機により200mm/分の速さで引張り、試験片は破断に要する最大引張力および破断時の標線間距離を測定し、引張強さおよび伸びを算出した。
【0087】
塩化水素発生量は、塩化水素補足実験において作成したPVC混練物を、800℃の電気炉中に入れ、この際に発生した燃焼ガスを蒸留水に通水し、30分経過までの最低pHを調べ、この値からHClガスの発生量を算出することによって求めた。
【0088】
100%モジュラスは、引張強さと伸びの測定と同様に、引張り試験機により200mm/分の速さで引張り、25mmの標線が100%伸長した際の引張力を測定した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
コロイド炭酸カルシウムまたは重質炭酸カルシウムを配合した組成物の中では、比較例6(炭酸カルシウムDを単独で用いた場合)が、最も高い塩化水素捕捉率(89.6%)を示した。
【0092】
本発明の組成物は、いずれも比較例6よりも高い塩化水素補足率を示した。例えば、実施例5(板状炭酸カルシウムA'/炭酸カルシウムD)=30重量部/70重量部とした場合)では、ほぼ100%の塩化水素補足率を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、六角形の板状炭酸カルシウムの短径および長径を示す。
Claims (7)
- 含塩素高分子化合物100重量部に対して、板状炭酸カルシウムを10〜150重量部含む含塩素高分子化合物組成物であって、
板状炭酸カルシウムが、その10〜70重量部をコロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムで代替されていることを特徴とする含塩素高分子化合物組成物。 - 板状炭酸カルシウムが、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した長径が0.08〜15μmであり、短径が0.08〜15μmであり、且つ厚みが0.01〜1μmである請求項1に記載の含塩素高分子化合物組成物。
- 板状炭酸カルシウムが、有機脂肪酸、樹脂酸、リン酸類、ケイ酸類、アクリル酸類、メタクリル酸類、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤によって表面処理されており、且つ表面処理剤の量が、板状炭酸カルシウム100重量部に対して0.5〜20重量部である請求項1又は2に記載の含塩素高分子化合物組成物。
- コロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムが、有機脂肪酸、樹脂酸、リン酸類、ケイ酸類、アクリル酸類、メタクリル酸類、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤によって表面処理されている請求項1に記載の含塩素高分子化合物組成物。
- コロイド炭酸カルシウムおよび/または重質炭酸カルシウムのSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した平均粒子径が、0.01〜5μmである請求項1に記載の含塩素高分子化合物組成物。
- 更に、板状炭酸カルシウム以外の板状無機充填材を含塩素高分子化合物100重量部に対して10〜70重量部含む請求項1〜5のいずれかに記載の含塩素高分子化合物組成物。
- 板状無機充填剤が、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、クレーおよびマイカからなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の含塩素高分子化合物組成物。
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