JP4638579B2 - 膨張中空微小球複合体粒子の製造法 - Google Patents

膨張中空微小球複合体粒子の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛散防止性にすぐれた膨張中空微小球複合体粒子を工業的に有利に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
〈膨張品の性質〉
熱可塑性樹脂熱膨張性微小球(未膨張品)は、発泡剤を内包しかつ熱可塑性樹脂を外殻成分とする熱膨張性を有する微小球である。この未膨張品を充分な膨張が達成できる温度に所定時間加熱すれば、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)が得られる。一例をあげると、粒径が約15μm で真比重が約 1.3の未膨張品を加熱膨張させると、粒径が約60μm で真比重が約0.03の膨張品が得られる。この膨張品を各種の塗料、コーティング剤、成形材料、パテ、FRP、接着剤、シーラント材、防水材などに配合すれば、目的物の軽量化が図られる。
【0003】
ところが、上記の膨張品の比重は極めて小さいため、その取り扱いに際して空気中に飛散して漂うようになることを免れず、作業環境の著しい悪化を招く。そのため、膨張品の飛散を防止することが強く望まれている。
【0004】
〈第1の飛散防止対策〉
飛散防止対策の一つは、膨張品を水または液状物質で湿潤することである。膨張品1重量部に対して水または液状物質を1〜20重量部程度添加して良く混合しておけば、膨張品の飛散を有効に防止することができる。この方法は古くから行われている方法である。しかしながら、この湿潤法は、膨張品を配合する相手方の材料が水または液状物質を嫌うときには、当然ながら適用できないことになる。
【0005】
〈第2の飛散防止対策〉
飛散防止対策の他の一つは、膨張品の表面に無機質粉末がコーティングされたものを得ることである。このようにすれば、膨張品の比重が大きくなるというデメリットはあるものの、なおその膨張品を配合した相手方を軽量化することは可能であり、しかもその膨張品の取り扱い時の飛散防止を図ることができる。
【0006】
従来、膨張品の表面に無機質粉末がコーティングされた粉体材料は、次に述べる米国特許の記載の方法に基いて製造されている。
【0007】
すなわち、米国特許第4722943号明細書には、
・膨張性の熱可塑性樹脂微小球(つまり未膨張品)のウエットケーキを、流動性のある粒子状または繊維状の固体であって上記の未膨張品よりも高い軟化ないし溶融温度を有する加工助剤と混合する工程、
・そのウエットケーキを、水を充分に除去するに足る温度および時間条件下に連続的に混合して乾燥し、表面に上記加工助剤が着床またはコーティングされたコーティング層を有する流動性のある粒子を生成させる工程、
・および、流動性を有する乾燥された粒子を集める工程、
からなる、ウエットケーキ状態の未膨張品を乾燥して流動性のある乾燥粒子品を製造する方法が示されている。
【0008】
この場合、乾燥工程における温度および時間は、未膨張品が実質的に膨張しない温度および時間でもよく(ケース1)、未膨張品が充分に膨張するに足る温度および時間でもよい(ケース2)。ケース2の乾燥条件を採用した場合には、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(つまり膨張品)が得られることになる。
【0009】
なお、上記の加工助剤の例は、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛;セラミックス、石英またはガラスの球状ビーズまたは中空ビーズ;ガラス繊維、綿フロック、炭素または黒鉛繊維;これらの混合物;などである。実施例には、ケース1の場合とケース2の場合の2つがあげられており、いずれの実施例でもタルクを用いている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記米国特許の方法は、膨張性熱可塑性樹脂微小球(つまり未膨張品)の段階で加工助剤による加工を行わなければならず、大量少品種には適していても、少量多品種の場合にはかなりのコスト高になるという不利がある。加えて、この方法によっては、膨張品に付着しない加工助剤が一定の割合で残る上、膨張品からの加工助剤の剥落を必ずしも充分には防止できないという問題点もある。さらには、未膨張品を溶融温度以上で膨張する方法を採用しているため、付着した加工助剤により膨張中に破裂したり、破裂しないまでも軽量化のために目的物に混合する際に破壊するような強度のない粒子が、一定割合で認められるという不利もある。
【0011】
本発明は、このような背景下において、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)に炭酸カルシウム微粉末を簡単な操作で付着させることができ、またその際に膨張品の破裂を生ずることがほとんどなく、従ってその膨張品の取り扱い時の空中への飛散を有効に防止できるようにした膨張中空微小球複合体粒子を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の膨張中空微小球複合体粒子の製造法は、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) と、コロイド状炭酸カルシウム(B) と、表面処理剤ないし分散剤(C) とを混合することにより、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) の粒子表面に、コロイド状炭酸カルシウム(B) が、表面処理剤ないし分散剤(C) と共に付着した構造を有する複合体粒子(D) を得ることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。なお用語の混同を避けるために、必要に応じ、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) [エクスパンデド・マイクロスフェア(Expanded microspheres) ]を膨張品(A) 、熱可塑性樹脂熱膨張性微小球(a) [アンエクスパンデド・マイクロスフェア(Unexpanded microspheres) ]を未膨張品(a) と称することにする。
【0014】
〈熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)(A) 〉
熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)(A) は、熱可塑性樹脂熱膨張性微小球(未膨張品)(a) を所定の温度に加熱することにより取得される。膨張品(A) は、微小なゴムボールをイメージするバルーンである。
【0015】
この未膨張品(a) は、発泡剤を内包しかつ熱可塑性樹脂を外殻成分とする熱膨張性を有する微小球である。未膨張品(a) に占める発泡剤(膨張剤)の割合は、たとえば5〜30重量%程度が適当である。
【0016】
ここで熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ビニルピリジン、クロロプレンなどのモノマーを(共)重合させて得られる重合体があげられ、さらに他のコモノマーや架橋剤(ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアヌレート等)を含んでいてもよい。これらの中では、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、塩化ビニリデンのうちの少なくとも一つを主成分とする1元、2元または3元の共重合体が特に重要である。
【0017】
微小球に熱膨張性を付与するための発泡剤(膨張剤)としては、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタンが好適であり、そのほか、ヘキサン、石油エーテルの如き炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロルエチレンの如き塩素化炭化水素類なども使用可能である。
【0018】
未膨張品(a) の重量平均粒子径は1〜50μm 程度である。未膨張品(a) の真比重は 1.1〜 1.5程度である。
【0019】
上記の未膨張品(a) を所定の温度に加熱すれば、膨張品(A) が得られる。加熱は、エア加熱、スチーム加熱、マイクロ波加熱、赤外線または遠赤外線加熱をはじめとする種々の方法により行うことができる。加熱温度は、未膨張品(a) のグレードによって異なるので一概には言えないが、100〜200℃、殊に110〜180℃の範囲内の適当な温度とすることが多い。
【0020】
上記の未膨張品(a) は以前から上市されているので、それを用いることができる。また膨張品(A) も以前から上市されているので、むしろはじめからその膨張品(A) を用いることが好ましい。このうち後者の膨張品(A) としては、本出願人が日本を含むアジア諸国で独占的な販売権を有している「エクスパンセル DEシリーズ」がある。
【0021】
膨張品(A) の重量平均粒子径は、5〜300μm 程度、通常は10〜200μm 程度、殊に30〜120μm 程度である。膨張品(A) の真比重は0.02〜0.08程度である。
【0022】
〈コロイド状炭酸カルシウム(B) 〉
コロイド状炭酸カルシウム(B) とは、コロイド領域の平均一次粒子径を有する炭酸カルシウムである。このときの平均一次粒子径は、電子顕微鏡法による測定で、 0.2μm 以下が適当であり、殊に0.15μm 以下、なかんずく0.10μm 以下、さらには0.08μm 以下であることが好ましい。下限については特に限定はないが、0.01μm 以上、殊に0.02μm 以上とすることが多い。
【0023】
〈表面処理剤ないし分散剤(C) 〉
表面処理剤ないし分散剤(C) としては、脂肪酸系、樹脂酸系、スルホン酸系または不飽和カルボン酸成分含有ポリマー系の化合物があげられる。
【0024】
脂肪酸系化合物の例は、カプリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの飽和脂肪酸、あるいはこれらの脂肪酸の塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等、以下同様)またはアルキルエステル(アルキルは短鎖ないし長鎖のいずれであってもよく、多価アルコールの残基であってもよい、以下同様);オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、あるいはこれらの不飽和脂肪酸の塩またはアルキルエステル;リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのOH基含有脂肪酸、あるいはこれらのOH基含有脂肪酸の塩または1価ないし多価アルコールとのエステル;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの二塩基酸、あるいはこれらの二塩基酸の塩またはモノないしジアルキルエステル;これらの化合物のオリゴエステルやプレポリマー;などである。
【0025】
樹脂酸系化合物の例は、トール油やロジン中のジテルペン酸を主とする脂環式または芳香族系の各種の酸や酸混合物、あるいはこれらの誘導体などである。
【0026】
スルホン酸系化合物の例は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸など、あるいはこれらの誘導体などである。
【0027】
不飽和カルボン酸成分含有ポリマー系の化合物における不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノジカルボン酸、またはこれらのハーフエステル;マレイン酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;などがあげられる。この化合物は、不飽和カルボン酸成分が少なくとも一部(たとえば3〜100モル%)含有されていればよい。不飽和カルボン酸成分以外の共重合成分を含むときは、その共重合成分としては、各種アクリレート、各種メタクリレート、各種ヒドロキシアルキルアクリレート、各種ヒドロキシアルキルメタクリレート、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等)、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル(塩化ビニル等)、ハロゲン化ビニリデン(塩化ビニリデン等)、スチレン系モノマー(スチレン、ビニルトルエン等)、ニトリル系モノマー(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、アミド系モノマー(アクリルアミド、メタクリルアミド等)などがあげられる。不飽和カルボン酸成分と共にOH基を含んでいてもよい。
【0028】
表面処理剤ないし分散剤(C) は、予め上述のコロイド状炭酸カルシウム(B) に付着させておいて、表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウムの形態で用いることが望ましい。表面処理は、たとえば、石灰石と炭素原料とを焙焼し、炭酸化してコロイド状炭酸カルシウム(B) スラリーとしたときに表面処理剤ないし分散剤(C) を添加混合することによりなされ、あるいはコロイド状炭酸カルシウム(B) のウエットケーキに表面処理剤ないし分散剤(C) を添加して混合することによりなされる。
【0029】
本発明の製造法により得られる膨張中空微小球複合体粒子(複合体粒子(D) )〉
本発明の製造法については後述するが、その製造法により得られる膨張中空微小球複合体粒子(複合体粒子(D) )は、上記の熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)(A) の粒子表面に上記のコロイド状炭酸カルシウム(B) が表面処理剤ないし分散剤(C) と共に付着した構造、特に好ましくは、上記の熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) の粒子表面に、表面処理剤ないし分散剤(C) で表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) が付着した構造を有する。
【0030】
複合体粒子(D) 100重量部に占める熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)(A) およびコロイド状炭酸カルシウム(B) の割合は、それぞれ、3〜30重量部(殊に5〜25重量%)、97〜70重量部(殊に95〜75重量%)であることが好ましい。膨張品(A) の割合が余りに少ないときは、複合体粒子(D) の比重が大きくなりすぎてこれを軽量化の目的に使うときに不利となる。膨張品(A) の割合が余りに多いときは、複合体粒子(D) の比重が小さすぎるため、その取り扱い時の飛散を有効に防止することが困難となる。
【0031】
またコロイド状炭酸カルシウム(B) 100重量部に対する表面処理剤ないし分散剤(C) の割合は、0.01〜10重量部、殊に0.05〜5重量部、なかんずく 0.1〜3重量部であることが好ましい。表面処理剤ないし分散剤(C) の割合が余りに少ないときは、膨張品(A) へのコロイド状炭酸カルシウム(B) の付着が必ずしも充分とは言えず、一方、表面処理剤ないし分散剤(C) の割合が余りに多いときには、充填される目的物に悪影響を与えるおそれがあり、またコストの点でも不利となる。
【0032】
複合体粒子(D) の真比重は、上記(A), (B)の混合割合に依存することになるが、概ね 0.1〜 0.2、殊に0.13〜 0.2の範囲内にあることが多い。
【0033】
〈膨張中空微小球複合体粒子(複合体粒子(D) )の製造法
膨張中空微小球複合体粒子(複合体粒子(D) )は、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)(A) と、コロイド状炭酸カルシウム(B) と、表面処理剤ないし分散剤(C) とを混合することにより製造される。この場合、上記の熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)(A) と、上記の表面処理剤ないし分散剤(C) で表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) とを混合することにより製造することが特に好ましい。
【0034】
このときの混合は、乾式混合により行うことが好ましいが、名目量、あるいは少量、あるいは適当量の水や液状物質の存在下に行うこともできる。混合、殊に乾式混合は、撹拌機を備えた混合機を用いて行うことができる。また、単に各成分を容器内に入れて振り混ぜるという簡単な方法によっても達成できる。いずれの場合にも、混合時間は数秒から数分で充分である。
【0035】
上記混合(殊に乾式混合)は、常温(さらに低温でもよい)ないし50℃未満の温度で行うこともできるが、50〜100℃(殊に55〜95℃、なかんずく60〜90℃)の温度条件下に行う方が好ましい。この温度は、膨張品(A) の外殻成分である熱可塑性樹脂膜が若干軟化し、かつ表面処理剤ないし分散剤(C) が軟化または溶融する温度でもある。
【0036】
〈用途〉
本発明の製造法により得られた膨張中空微小球複合体粒子(複合体粒子(D) )は、各種の塗料、コーティング剤、成形材料、パテ、FRP、接着剤、シーラント、コーキング材、各種防水剤などへの配合用に好適に用いられる。これにより、軽量化、緩衝性、断熱性、保温性、寸法安定性などの機能が付与され、コスト低減も図られる。
【0037】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。以下「部」とあるのは重量部である。
【0038】
〈未膨張品(a) 〉
熱可塑性樹脂熱膨張性微小球(未膨張品)(a) の一例として、次の2種を用いた。
(a-1): 炭化水素系(イソブタン)発泡剤を内包し、メチルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体を外殻成分とする真円の熱膨張性微小球であって、重量平均粒径が約15μm 、真比重が約 1.1、膨張開始温度が90〜115℃、最大膨張温度が約140℃であるもの。
(a-2): 炭化水素系(イソペンタン)発泡剤(膨張剤)を内包し、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−メタクリロニトリル共重合体を外殻成分とする真円の熱膨張性微小球であって、重量平均粒径が約10〜40μm 、真比重が約 1.2、膨張開始温度が約120℃、最大膨張温度が約190℃であるもの。
【0039】
〈膨張品(A) 〉
この未膨張品(a-1), (a-2)を、それぞれ約140℃、約190℃で膨張させて、次の2種の膨張品を得た。ただし、それらの膨張品はすでに市販されているので、実験ではその市販品を用いた。
(A-1): 重量平均粒径が約40μm 、真比重が約0.06の熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)。
(A-2): 重量平均粒径が約100μm 、真比重が約0.02の熱可塑性樹脂膨張中空微小球(膨張品)。
【0040】
〈表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) 〉
表面処理剤ないし分散剤(C) で表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) として、次の2種を準備した。
(B-1): 平均一次粒子径がコロイド領域の0.07μm であり、少量の脂肪酸系表面処理剤で表面活性化処理されたコロイド状軽質炭酸カルシウム(比表面積 4.5m2/g、BET比表面積20m2/g、嵩密度350ml/100g )。
(B-2): 平均一次粒子径がコロイド領域の0.07μm であり、少量の樹脂酸・スルホン酸系表面処理剤で表面活性化処理されたコロイド状軽質炭酸カルシウム(比表面積 4.5m2/g、BET比表面積20m2/g、嵩密度270ml/100g )。
【0041】
実施例1〜6
上記の膨張品(A-1), (A-2)の15部と上記の表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B-1), (B-2)の85部とを、常温下に、あるいは予め約70℃に雰囲気下において加熱しておいてから、袋に入れて2〜3分間振るという乾式混合を行い、複合体粒子(D) を得た。組み合わせ条件と温度条件、および結果は、後述の表1に示してある。
【0042】
〈転倒試験〉
実施例で得た複合体粒子(D) を円筒状の透明なプラスチックス容器(内径約65mm、内部の高さ約95mm)に1/3ほどの高さに入れ、上下逆になるようにすばやく転倒させ、ヘッドスペースがクリアになる時間を測定した(初回のクリア時間)。この転倒操作を20回繰り返したときの20回目におけるクリア時間も測定した。
【0043】
〈顕微鏡観察〉
上記の転倒試験における初回および20回目の複合体粒子(D) を、100倍、200倍、500倍の顕微鏡で観察した。判定は、膨張品の粒子表面に炭酸カルシウムが付着しておりかつ未付着の炭酸カルシウムが残っていないかどうかを、◎(特に良好)、○(良好)、□(一応良好)、△(やや不良)の4段階で判定した。なお、実施例1で得た複合体粒子(D) の顕微鏡写真を複写した図を図1(イ)、(ロ)に示す。
【0044】
【表1】

混合 混合物 転倒試験 顕微鏡観察
温度 (A) (B),(B') 初 回 20回後 初 回 20回後
実施例1 70℃ (A-1) (B-1) 4 sec 4 sec ◎ ◎
実施例2 70℃ (A-2) (B-1) 4 sec 4 sec ◎ ◎
実施例3 70℃ (A-1) (B-2) 4 sec 4 sec ◎ ◎
実施例4 70℃ (A-2) (B-2) 4 sec 4 sec ◎ ◎
実施例5 常温 (A-1) (B-1) 6 sec 6 sec ○ ○
実施例6 常温 (A-2) (B-2) 6 sec 6 sec ○ ○
【0045】
〈解析〉
表1から、実施例1〜6においては膨張品(A) に対する表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) の付着が確実なものとなっていること、この場合、常温で混合した実施例5〜6よりも、温度70℃で混合した実施例1〜4の方がより好ましいこと、従って、複合体粒子(D) の取り扱い時の空中への飛散が有効に防止されることがわかる。
【0046】
〈ポンピング試験〉
複合体粒子(D) をダイアフラム・ポンプを使用して移送するケースを考慮したとき、付着しているコロイド状炭酸カルシウム(B) により熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) が破裂するリスクがあるかどうかを検討した。結果を表2に示す。表2から、1回目は密度が幾分増加するが、2回目以降は密度がほぼ一定になることがわかる。
【0047】
【表2】

移送回数 重量 (g) 密度(g/cm 3 )
0回 4.8177 0.1419
1回 6.3248 0.2043
2回 6.4892 0.1965
3回 6.1851 0.1909
4回 6.8500 0.2024
5回 6.9440 0.1998
【0048】
〈洗浄、分離の安定性試験〉
上記実施例1で得た複合体粒子(D) 8gを500mlの水中に投入し、分散するまでヘラで撹拌した。2時間経過後、トップ層をすくい、ペーパータオル上に2〜3層になるように置いた。これを50〜60℃にて約12時間オーブン中で乾燥した。この操作により、密度は当初の0.165g/cm3から 0.0891g/cm3に低下した。一方、後述の比較例1の方法により得たものは(従来の技術の項で述べた米国特許第4722943号に記載の方法に基いて製造されている市販品も)、この試験により付着しているフィラー(炭酸カルシウム)のほぼ全量が脱落することが確認された。
【0049】
比較例1
炭酸カルシウムとして、平均一次粒子径1.08μm 、比表面積 2.2m 2 /g、嵩密度280ml/100g の重質炭酸カルシウム(B'-1)を準備した。先に述べた未膨張品(a-1) 15部に、上述の重質炭酸カルシウム(B'-1)85部を混合し、150℃にまで加熱して膨張させ、(B'-1)の付着した膨張品を得た。しかしながら、この膨張品は、重質炭酸カルシウム(B'-1)が多量に存在する状態で未膨張品(a-1) を最適の膨張率に膨張させるためには厳密な制御を要する上、膨張のための加熱時間が長くなった場合には、膨張中に破裂する粒子が一定割合で生ずることを免れず、また破裂しないまでも、軽量化のために目的物に混合する際に破壊するような強度のない粒子が、一定割合で認められるという不利があった。
【0050】
参考例1
先に述べた未膨張品(a-1) 15部に、上述の表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B-1) 85部を混合し、140℃にまで加熱して膨張させ、(B-1) の付着した膨張品を得た。この膨張品は、上述の実施例5〜6とおおよそ同等の効果が得られたものの、最適の膨張率に膨張させるためには厳密な制御を要する上、膨張のための加熱時間が長くなった場合には、膨張中に破裂する粒子が一定割合で生ずることを免れず、また破裂しないまでも、軽量化のために目的物に混合する際に破壊するような強度のない粒子が、一定割合で認められるという不利があった。
【0051】
【発明の効果】
コロイド状活性化炭酸カルシウム(B) はコロイド状の平均一次粒子径を有する超微細なものであるため、そのままでも膨張品(A) に付着しやすい傾向がある上、表面処理剤ないし分散剤(C) を共存させると(特に表面処理剤ないし分散剤(C) で表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) を用いると)、一段と付着がしやすくなる。そして混合を好ましくは50〜100℃程度の比較的低温の温度条件下において行うと、表面処理剤ないし分散剤(C) (殊にコロイド状炭酸カルシウム(B) に処理されている表面処理剤ないし分散剤(C) )が軟化または溶融するので、膨張品(A) に対するコロイド状炭酸カルシウム(B) の付着が達成され、その結果、複合体粒子(D) からのコロイド状炭酸カルシウム(B) の剥落が防止されると共に、取り扱い時の空中への飛散が有効に防止される。
【0052】
また、すでに膨張している膨張品(A) に常温ないしその溶融温度に達しない温度で適用できるので、膨張品(A) が破裂するおそれがほとんどなく、また多品種少量生産に適しており、さらには混合操作だけで目的が達成されるので作業が極限にまで簡単化される。
【0053】
よって本発明は、性能の点および実用性の点で非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得た複合体粒子(D) の顕微鏡写真を複写した図である。

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) と、コロイド状炭酸カルシウム(B) と、表面処理剤ないし分散剤(C) とを混合することにより、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) の粒子表面に、コロイド状炭酸カルシウム(B) が、表面処理剤ないし分散剤(C) と共に付着した構造を有する複合体粒子(D) を得ることを特徴とする膨張中空微小球複合体粒子の製造法。
  2. 熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) と、表面処理剤ないし分散剤(C) で表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) とを混合することにより、熱可塑性樹脂膨張中空微小球(A) の粒子表面に、表面処理剤ないし分散剤(C) で表面活性化処理されたコロイド状炭酸カルシウム(B) が付着した構造を有する複合体粒子(D) を得ることを特徴とする請求項1記載の膨張中空微小球複合体粒子の製造法。
  3. 混合を乾式混合により行うことを特徴とする請求項1または2記載の製造法。
  4. 乾式混合を50〜100℃で行うことを特徴とする請求項3記載の製造法。
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