JP4904639B2 - 非水電解液二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液二次電池の製造方法に係り、特に、非水電解液に浸潤した電極捲回群を有する非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解液二次電池を代表するリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度であるメリットを活かして、主にVTRカメラやノートパソコン、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。この電池の内部構造は、通常以下に示されるような捲回式構造とされている。電極は正極、負極共に活物質が金属箔に塗着された帯状であり、セパレ−タを挟んで正極、負極が直接接触しないように断面が渦巻状に捲回され、電極捲回群が形成されている。この電極捲回群が電池容器となる円筒状の電池缶に収納され、電解液注液後、封口されている。
【0003】
一般的な円筒形リチウムイオン二次電池の寸法は、18650型と呼ばれる、直径が18mm、高さ65mmであり、小形民生用リチウムイオン電池として広く普及している。18650型リチウムイオン二次電池の正極活物質には、高容量、長寿命を特徴とするコバルト酸リチウムが主として用いられており、電池容量は、おおむね1.3Ah〜1.7Ah、出力はおよそ10W程度である。
【0004】
一方、自動車産業界においては環境問題に対応すべく、排出ガスのない、動力源を完全に電池のみにした電気自動車と、内燃機関エンジンと電池との両方を動力源とするハイブリッド(電気)自動車の開発が加速され、一部実用化の段階にきている。
【0005】
電気自動車の電源となる電池には当然高出力、高エネルギーが得られる特性が要求され、この要求にマッチした電池として非水電解液二次電池が注目されている。電気自動車の普及のためには、電池の低価格化が必須であり、そのためには、低コスト電池材料が求められ、例えば、正極活物質であれば、資源的に豊富なマンガンの酸化物として、スピネル結晶構造を有したマンガン酸リチウムLiMn2O4が特に注目され、電池の高性能化を狙った改善がなされてきている。具体的にはリチウムとマンガンの原子比(Li/Mn)を0.5よりも大きいリチウムリッチの組成にしたり、スピネル結晶中のマンガン原子の一部を、Fe、Co、Ni、Cr、Cu、Al、Mg、等の他の金属元素に置換したり、ドープする試みがなされている。コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウム等の正極活物質と導電材として黒鉛やアセチレンブラック等の炭素材とバインダとを混合した正極合材が、箔状集電体に帯状に塗着し、必要に応じて厚さ方向に圧縮することで電極が形成されている。バインダ(結着剤)には一般にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非水電解液二次電池の場合、電池内に水分が混入すると電極が劣化したり、充放電電極反応に重要な機能を果たしている非水電解液中に拡散されたリチウムイオンと水分とが反応することにより、リチウムイオンの移動を阻害し、充放電容量や放電出力の低下、更には寿命低下を引き起こす。従って、水分の混入を避けるために、電池の製造工程では乾燥雰囲気が必要となり、コスト高の一因となっている。コスト低減のために非乾燥雰囲気で電極や電極捲回群を作製することはできるが、一般にバインダに用いられるPVDFは水分を吸収しやすく、しかも吸収した水分は、その後に加熱、減圧等の操作を行っても簡単には除去することができない。PVDF中に残留した水分は、電池が充放電されたときに非水電解液中に洩出し、その結果、非水電解液が劣化して電池性能の低下を招く。とりわけ、負極炭素材に非晶質炭素を用いた場合には、非晶質炭素が水分を吸着しやすい性質を有するため、負極の劣化が著しくなり、電池性能が著しく低下する、という問題点があった。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、電池性能の低下を抑制し、製造コストの低減を図ることができる非水電解液二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様は、非水電解液に浸潤した電極捲回群を有する非水電解液二次電池の製造方法であって、リチウム遷移金属複酸化物、導電材及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した正極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の正極と、炭素材及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した負極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の負極と、リチウムイオンが通過可能な微多孔を有するセパレータとを準備し、前記正極及び負極を、前記セパレータを介して捲回して電極捲回群を作製し、前記電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させる、ステップを含む。
【0009】
本態様では、非水電解液中に水分が洩入すると、電極の劣化や電池性能の低下を引き起こすので、準備ステップでアクリル系重合体を含むバインダを正極合材及び負極合材に混合・含有させ、バインダにより正極及び負極中の水分を吸収し、作製ステップで電極捲回群を作製した後に、乾燥ステップで電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させることで、非乾燥状態の正極及び負極のバインダに吸収された水分が除去される。このため、水分混入による電池性能の低下を抑制することができると共に、アクリル系重合体を含むバインダを用いた正極及び負極は乾燥状態では可撓性が低下するので、作製ステップで非乾燥状態のまま捲回して電極捲回群を作製するため、捲回作業が容易となり、電極の損傷を防ぐことができる。また、正極及び負極にアクリル系重合体を含むバインダを用いることで、電極を非乾燥状態のまま電極捲回群を作製することができるので、準備ステップや作製ステップをコスト高となる乾燥雰囲気で行う必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0010】
本発明の第二態様は、非水電解液に浸潤した電極捲回群を有する非水電解液二次電池の製造方法であって、リチウム遷移金属複酸化物、導電材及びポリフッ化ビニリデンを含むバインダを混合した正極合材を帯状集電体に塗着した乾燥状態の正極と、非晶質炭素及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した負極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の負極と、リチウムイオンが通過可能な微多孔を有するセパレータとを準備し、前記正極及び負極を、前記セパレータを介して捲回して電極捲回群を作製し、前記電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させる、ステップを含む。また、本発明の第三態様は、非水電解液に浸潤した電極捲回群を有する非水電解液二次電池の製造方法であって、リチウム遷移金属複酸化物、導電材及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した正極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の正極と、炭素材及びポリフッ化ビニリデンを含むバインダを混合した負極合材を帯状集電体に塗着した乾燥状態の負極と、リチウムイオンが通過可能な微多孔を有するセパレータとを準備し、前記正極及び負極を、前記セパレータを介して捲回して電極捲回群を作製し、前記電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させる、ステップを含む。
【0011】
第二態様では、準備ステップでアクリル系重合体を含むバインダ以外のバインダ、例えば、一般に用いられるPVDFを含むバインダを正極合材に混合・含有させ正極を乾燥状態とし、非晶質炭素及びアクリル系重合体を含むバインダを負極合材に混合・含有させる点で上述した第一態様と異なる。PVDFを含むバインダを用いた正極は乾燥状態で可撓性が低下することはなく、作製ステップで捲回作業が容易となると共に、非晶質炭素を用いた負極は非晶質炭素が水分を吸着しやすい性質を有し、正極は乾燥状態のため、水分混入を防止することができる。従って、作製ステップの後に乾燥ステップを経ることにより水分混入による極板の劣化や電池性能の低下を招くことがない。また、第三態様では、準備ステップでアクリル系重合体を含むバインダを正極合材に混合・含有させ、アクリル系重合体を含むバインダ以外のバインダ、例えば、一般に用いられるPVDFを含むバインダを負極合材に混合・含有させ乾燥状態とする。アクリル系重合体を含むバインダを用いた正極は上述した第一態様の正極と同様の作用効果を奏し、PVDFを含むバインダを用いた負極は上述した第二態様の正極と同様の作用効果を奏する。
【0012】
上述した第一態様及び第三態様において、準備ステップでの正極の水分含有量を1000ppm以上とすれば、正極の可撓性を十分に確保することができるので、作製ステップでの捲回作業が一層容易となり正極の損傷を確実に防止することができる。また、第一態様及び第二態様において、準備ステップでの負極の水分含有量を500ppm以上とすれば、負極の可撓性を十分に確保することができるので、作製ステップでの捲回作業が一層容易となり負極の損傷を確実に防止することができる。更に、第一態様において、準備ステップでの正極の水分含有量を1000ppm以上とし、かつ、負極の水分含有量を500ppm以上とすれば、電極の可撓性を十分に確保することができるので、作製ステップでの捲回作業がより一層容易となり電極の損傷を確実に防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第一実施形態)
以下、図面を参照して本発明を電気自動車用電源の円筒形リチウムイオン電池に適用した第一実施形態について説明する。
【0014】
<準備ステップ>
本実施形態の準備ステップについて一言すれば、下表1に示すように、バインダにアクリル系重合体を用い、非乾燥状態の正極及び負極を作製するが、詳細は以下の通りである。
【0015】
【表1】
【0016】
(正極)
平均粒径15μmのマンガン酸リチウム(LiMn2O4)粉末と、導電材として平均粒径5μmの黒鉛粉末と、アセチレンブラックと、ポリアクリル酸やポリアクリル酸エステルのアクリル系重合体を含むバインダと、を質量比で80:12:3:5となるように混合し、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練してスラリを作製した。得られたスラリを厚さ20μmの帯状アルミニウム箔(正極集電体)の両面に、NMPを除く混合材(正極合材)の塗布量が130g/m2となるように塗布した。このとき、正極長寸方向の一方の側縁に幅30mmの未塗布部を残した。その後、NMPを揮発除去し、プレス、裁断して、幅82mm、長さ374cm、正極合材塗布部厚さ(アルミニウム箔の厚さを除く)98μmの正極を得た。プレス時の圧力を調整して、正極合材層のかさ密度を2.65g/cm3とした。次に、上記未塗布部に切り欠きを入れ、切り欠き残部を正極リード片とした。隣り合う正極リード片を50mm間隔とし、正極リード片の幅を5mmとした。なお、準備した正極は水分の乾燥操作を行うことなく、非乾燥状態のままとした。
【0017】
ここで、上述したアクリル系重合体としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル等を挙げることができ、2種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0018】
(負極)
負極炭素材として黒鉛又は非晶質炭素粉末92質量部に、上述したアクリル系重合体を含むバインダを8質量部混合し、これに分散溶媒のNMPを添加し、混練してスラリを作製した。得られたスラリを厚さ10μmの帯状圧延銅箔(負極集電体)の両面に、NMPを除く混合材(負極合材)の塗布量が45.2又は33.3g/m2となるように塗布した。このとき、負極長寸方向の一方の側縁に幅30mmの未塗布部を残した。その後、NMPを揮発除去し、プレス、裁断して、幅86mm、長さ386cm、負極合材塗布部厚さ(銅箔の厚さを除く)66μmの負極を得た。プレス時の圧力を調整して、負極合材層の空隙率が約35%となるように負極を圧縮した。次に、上記未塗布部に正極と同様に切り欠きを入れ、切り欠き残部を負極リード片とした。隣り合う負極リード片を50mm間隔とし、負極リード片の幅を5mmとした。なお、負極の準備は一定水分の雰囲気で行い、正極と同様に、NMPの揮発除去を完全に行い、準備した負極は非乾燥状態のままとした。
【0019】
(セパレータ)
リチウムイオンが通過可能な微多孔を有する、厚さ40μmのポリエチレン製フィルムを、幅90mm、所定長さに裁断してセパレータを準備した。
【0020】
<作製ステップ>
図1に示すように、準備ステップで準備した非乾燥状態の正極及び負極を、これら両極板が直接接触しないように、準備したセパレータW5と共に捲回して電極捲回群を作製した。捲回作業は、30±10%RHの雰囲気で行った。捲回の中心には、ポリプロピレン製の中空円筒状の軸芯1を用い、このとき、正極リード片2と負極リード片3とが、それぞれ捲回群(電極捲回群)6の互いに反対側の両端面に位置するようにした。また、セパレータW5の長さを調整し、捲回群6の直径を38±0.1mmとした。
【0021】
<乾燥ステップ>
上述のように、非乾燥状態の電極を捲回して作製した捲回群6を、後述するように、所定の圧力に減圧した環境下で、所定温度に加熱して所定時間乾燥させた。
【0022】
<電池の組立>
次いで、円筒形リチウムイオン電池20は、上述のように乾燥させた捲回群6を用いて、以下のようにして作製した。正極リード片2を変形させ、その全てを、捲回群6の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング4の周囲から一体に張り出している鍔部周面付近に集合、接触させた後、正極リード片2と鍔部周面とを超音波溶接して正極リード片2を鍔部周面に接続した。一方、負極集電リング5と負極リード片3との接続操作も、正極集電リング4と正極リード片2との接続操作と同様に実施した。
【0023】
その後、正極集電リング4の鍔部周面全周に絶縁被覆を施した。この絶縁被覆には、基材がポリイミドで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いた。この粘着テープを鍔部周面から捲回群6外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、捲回群6をニッケルメッキが施されたスチール製の電池容器7内に挿入した。電池容器7の外径は40mm、内径は39mmである。
【0024】
負極集電リング5には、予め電気的導通のための負極リード板8を溶接しておき、電池容器7に捲回群6を挿入後、電池容器7の底部と負極リード板8とを溶接した。
【0025】
一方、正極集電リング4には、予め複数枚のアルミニウム製のリボンを重ね合わせて構成した正極リード9を溶接しておき、正極リード9の他端を、電池容器7を封口するための電池蓋の下面に溶接した。電池蓋には、円筒形リチウムイオン電池20の内圧上昇に応じて開裂する内圧開放機構として開裂弁11を設けている。開裂弁11の開裂圧は、約9×105Paに設定した。電池蓋は、蓋ケース12と、蓋キャップ13と、気密を保つ弁押え14と、開裂弁11とで構成されており、これらを積層して蓋ケース12の周縁をカシメることによって組立ててある。
【0026】
非水電解液を所定量電池容器7内に注入し、その後、正極リード9を折りたたむようにして電池蓋で電池容器7に蓋をし、EPDM樹脂製ガスケット10を介してカシメて密封することにより円筒形リチウムイオン電池20を完成させた。
【0027】
非水電解液には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1:1:1の混合溶液中へ6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものを用いた。
【0028】
本実施形態では、アクリル系重合体を含むバインダを用いることにより、バインダが正極及び負極中の水分を吸収し、非乾燥状態の電極を捲回して作製した捲回群6を減圧加熱下で乾燥させる。これにより、アクリル系重合体を含むバインダに吸収された正極及び負極中の水分が除去され、特に、水分を吸着しやすい性質を有する非晶質炭素を負極炭素材に用いた場合には、負極を劣化させることなく水分を除去することができる。従って、水分混入による電池性能の低下を抑制し、容量、出力、寿命共に優れた円筒形リチウムイオン電池20を得ることができる。また、アクリル系重合体を含むバインダを用いた電極は脱水乾燥状態では可撓性が低下し、捲回することによりひび割れ等を引き起こす原因となるので、準備ステップの電極を非乾燥状態のまま次の作製ステップに供給する。これにより、捲回作業が容易となり、電極の損傷を防ぐことができる。このとき、正極の水分含有量を1000ppm以上とすることが好ましく、また、負極の水分含有量を500ppm以上とすることが好ましい。
【0029】
(第二実施形態)
次に、本発明を電気自動車用電源の円筒形リチウムイオン電池に適用した第二実施形態について説明する。なお、本実施形態以下の実施形態において第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる箇所のみ説明する。本実施形態では、表1に示したように、準備ステップにおいて、バインダにPVDFを用いた乾燥状態の正極と、バインダにアクリル系重合体を用いた非乾燥状態の負極を作製するものであるが、詳細は次の通りである。
【0030】
<準備ステップ>
(正極)
平均粒径15μmのマンガン酸リチウム(LiMn2O4)粉末と、導電材として平均粒径5μmの黒鉛粉末と、アセチレンブラックと、PVDFと、を質量比で80:12:3:5となるように混合し、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練してスラリを作製した。得られたスラリを用い、第一実施形態と同様にして正極を準備した。次に、準備した正極を所定圧力の減圧下で、所定温度に加熱して所定時間乾燥した。
【0031】
(負極)
負極炭素材として非晶質炭素粉末92質量部に、上述したアクリル系重合体を含むバインダを8質量部混合し、これに分散溶媒のNMPを添加し、混練してスラリを作製した。得られたスラリを用い、第一実施形態と同様にして負極を得た。なお、準備した負極は非乾燥状態のままとした。
【0032】
<作製ステップ>
図1に示すように、準備ステップで準備した乾燥状態の正極及び非乾燥状態の負極を用いて、第一実施形態と同様に電極捲回群を作製した。また、捲回作業も同様に30±10%RHの雰囲気で行ったが、PVDFが水分を吸収しやすいことを考慮して、捲回作業中に電極に水分が混入することを極力避けるため迅速に作業を行うようにした。
【0033】
次いで、第一実施形態と同様に、乾燥ステップ、電池の組立、を経て、円筒形リチウムイオン電池20を完成させた。
【0034】
本実施形態によれば、PVDFをバインダに用いた正極は乾燥状態で可撓性が低下することはなく、作製ステップで捲回作業が容易となると共に、非晶質炭素を用いた負極は非晶質炭素が水分を吸着しやすい性質を有し、正極は乾燥状態のため、水分混入を防止することができる。従って、作製ステップの後に乾燥ステップを経ることにより水分混入による極板の劣化や電池性能の低下を抑制し、容量、出力、寿命共に優れた円筒形リチウムイオン電池20を得ることができる。
【0035】
(第三実施形態)
第三実施形態では、表1に示したように、準備ステップにおいて、バインダにアクリル系重合体を用いた非乾燥状態の正極と、バインダにPVDFを用いた乾燥状態の負極を作製するものであるが、詳細は次の通りである。
【0036】
<準備ステップ>
(正極)
第一実施形態と同様にして、バインダにアクリル系重合体を用いた正極を準備した。なお、正極の準備は一定水分の雰囲気で行い、準備した正極は非乾燥状態のままとした。
【0037】
(負極)
負極炭素材として黒鉛又は非晶質炭素粉末92質量部に、バインダとしてPVDFを8質量部混合し、これに分散溶媒のNMPを添加し、混練してスラリを作製した。得られたスラリを用い、第一実施形態と同様にして負極を準備した。次に、準備した正極を所定圧力の減圧下で、所定温度に加熱して所定時間乾燥した。
【0038】
<作製ステップ>
図1に示すように、準備ステップで準備した非乾燥状態の正極及び乾燥状態の負極を用いて、第一実施形態と同様に電極捲回群を作製した。また、捲回作業も同様に30±10%RHの雰囲気で行ったが、PVDFが水分を吸収しやすいことを考慮して、捲回作業中に電極に水分が混入することを極力避けるため迅速に作業を行うようにした。
【0039】
次いで、第一実施形態と同様に、乾燥ステップ、電池の組立、を経て、円筒形リチウムイオン電池20を完成させた。
【0040】
本実施形態では、正極にアクリル系重合体を含むバインダを用いることにより、バインダが正極中の水分を吸収し、非乾燥状態の正極を捲回して作製した捲回群6を減圧加熱下で乾燥させる。これにより、アクリル系重合体を含むバインダに吸収された正極中の水分が除去される。また、アクリル系重合体を含むバインダを用いた正極は脱水乾燥状態では可撓性が低下し、捲回することによりひび割れ等を引き起こす原因となるので、準備ステップの正極を非乾燥状態のまま次の作製ステップに供給する。これにより、捲回作業が容易となり、正極の損傷を防ぐことができる。このとき、正極の水分含有量を1000ppm以上とすることが好ましい。また、PVDFをバインダに用いた負極は乾燥状態で可撓性が低下することはなく、作製ステップで捲回作業が容易となると共に、乾燥状態のため、水分混入を防止することができる。従って、作製ステップの後に乾燥ステップを経ることにより水分混入による電池性能の低下を抑制し、容量、出力、寿命共に優れた円筒形リチウムイオン電池20を得ることができる。
【0041】
【実施例】
次に、以上の実施形態に従って作製した円筒形リチウムイオン電池20の実施例について説明する。なお、比較のために作製した比較例の電池についても併記する。
【0042】
(実施例1)
下表2に示すように、実施例1では第一実施形態に従い、正極、負極共に以下に述べるバインダAを用い、負極炭素材にメソフェーズ系球状黒鉛(川崎製鉄株式会社製、商品名KMFC)を用い、30±10%RHの雰囲気で正極及び負極を作製した。負極合材の塗布量は、45.2g/m2とした。また、電極の水分含有量は、電池の作製に使用する電極と同一の電極を準備し、質量を測定した後に、圧力を大気圧より90kPa低い圧力以下とした減圧下で、120°Cにて24時間乾燥し、乾燥後の質量を測定し、乾燥前後の質量差を算出して求めた(以下の実施例及び比較例においても電極の水分含有量の算出方法は同じ。)。このようにして求めた本実施例の正極の水分含有量は870ppmであり、負極の水分含有量は490ppmであった。また、乾燥ステップでの電極捲回群の乾燥条件は、圧力を大気圧より90kPa低い圧力以下の減圧下とし、60°Cにて72時間とした(以下の実施例及び比較例においても電極捲回群の乾燥条件は同じ。)。なお、表2において、バインダAはポリアクリル酸のみ、バインダBはポリアクリル酸とポリアクリル酸メチル(ポリアクリル酸エステル)とを質量比7:3となるように混合した混合物、バインダCはポリアクリル酸とポリメタクリル酸メチル(ポリメタクリル酸エステル)とを質量比7:3となるように混合した混合物、バインダDはポリアクリル酸とポリアクリル酸メチルとポリメタクリル酸メチル(ポリメタクリル酸エステル)とを質量比5:2:3となるように混合した混合物、のバインダである。また、集電体に合材を塗布し、NMPを揮発除去した後に、合材層にNMPの残留がないことをガスクロマトグラフィー・質量分析によって確認した。
【0043】
【表2】
【0044】
(実施例2〜実施例4)
表2に示すように、実施例2〜実施例4では、バインダを変えた以外は実施例1と同様に正極及び負極を作製した。実施例2ではバインダBを用い、実施例3ではバインダCを用い、実施例4ではバインダDを用いた。正極の水分含有量は、実施例2では920ppm、実施例3では840ppm、実施例4では960ppmであった。また、負極の水分含有量は、それぞれ、430ppm、470ppm、440ppmであった。
【0045】
(実施例5)
表2に示すように、実施例5では、正極は実施例1の正極と同様に作製した。また、負極は、負極炭素材に非晶質炭素(呉羽化学工業株式会社製、商品名カーボトロン)を用い、バインダAを用いて、30±10%RHの雰囲気で作製した。負極合材の塗布量は、33.3g/m2とした。正極の水分含有量は870ppmであり、負極の水分含有量は470ppmであった。
【0046】
(実施例6〜実施例8)
表2に示すように、実施例6〜実施例8では、バインダを変えた以外は実施例5と同様に正極及び負極を作製した。実施例6ではバインダBを用い、実施例7ではバインダCを用い、実施例8ではバインダDを用いた。正極の水分含有量は、実施例6では920ppm、実施例7では840ppm、実施例8では960ppmであった。また、負極の水分含有量は、それぞれ、460ppm、490ppm、480ppmであった。
【0047】
(実施例9〜実施例10)
表2に示すように、実施例9〜実施例10では、正極の作製を60±20%RHの雰囲気で行う以外は実施例1と同様に正極及び負極を作製した。正極の水分含有量は、実施例9では1000ppm、実施例10では2700ppmであった。また、負極の水分含有量は、それぞれ、実施例9、実施例10いずれも490ppmであった。
【0048】
(実施例11〜実施例12)
表2に示すように、実施例11〜実施例12では、バインダBを用い、負極の作製を60±20%RHの雰囲気で行う以外は実施例1と同様に正極及び負極を作製した。正極の水分含有量は、実施例11、実施例12いずれも920ppmであった。また、負極の水分含有量は、それぞれ、500ppm、900ppmであった。
【0049】
(実施例13〜実施例14)
表2に示すように、実施例13〜実施例14では、バインダCを用い、60±20%RHの雰囲気で行う以外は実施例1と同様に正極及び負極を作製した。正極の水分含有量は、実施例13では1000ppm、実施例14では2700ppmであった。また、負極の水分含有量は、それぞれ、500ppm、900ppmであった。
【0050】
(実施例15〜実施例16)
表2に示すように、実施例15〜実施例16では、バインダDを用い、60±20%RHの雰囲気で行う以外は実施例5と同様に正極及び負極を作製した。正極の水分含有量は、実施例15では1000ppm、実施例16では2700ppmであった。また、負極の水分含有量は、それぞれ、500ppm、1200ppmであった。
【0051】
(実施例17〜実施例18)
表2に示すように、実施例17〜実施例18では、バインダDを用い、負極の作製を60±20%RHの雰囲気で行う以外は実施例5と同様に正極及び負極を作製した。正極の水分含有量は、実施例17、実施例18いずれも920ppmであった。また、負極の水分含有量は、それぞれ、500ppm、1200ppmであった。
【0052】
(実施例19)
表2に示すように、実施例19では第二実施形態に従い、正極は、バインダにPVDFを用い、5±2%RHの雰囲気で作製した後、圧力が大気圧より90kPa低い圧力以下の減圧下で、60°Cにて24時間乾燥を行った。また、負極は、バインダBを用い、60±20%RHの雰囲気で行う以外は実施例1の負極と同様に作製した。正極の水分含有量は300ppmであり、負極の水分含有量は620ppmであった。
【0053】
(実施例20)
表2に示すように、実施例20では第三実施形態に従い、正極は、バインダBを用いる以外は実施例1の正極と同様に作製した。また、負極は、負極炭素材にメソフェーズ系球状黒鉛を用い、バインダにPVDFを用いて、5±2%RHの雰囲気で作製した後、圧力が大気圧より90kPa低い圧力以下の減圧下で、60°Cにて24時間乾燥を行った。負極合材の塗布量は、45.2g/m2とした。正極の水分含有量は920ppmであり、負極の水分含有量は280ppmであった。
【0054】
(実施例21)
表2に示すように、実施例21では第二実施形態に従い、正極は、実施例19の正極と同様に作製し、乾燥を行った。また、負極は、負極炭素材に非晶質炭素を用いる以外は実施例19の負極と同様に作製した。正極の水分含有量は300ppmであり、負極の水分含有量は620ppmであった。
【0055】
(比較例1)
表2に示すように、比較例1では、正極は、バインダにPVDFを用い、5±2%RHの雰囲気で作製し、次いで圧力が大気圧より90kPa低い圧力以下の減圧下で60°Cにて24時間乾燥させた。また、負極は、負極炭素材にメソフェーズ系球状黒鉛を用い、バインダBを用いて、5±2%RHの雰囲気で作製した後、圧力が大気圧より90kPa低い圧力以下の減圧下で60°Cにて24時間乾燥させた。負極合材の塗布量は、45.2g/m2とした。正極の水分含有量は300ppmであり、負極の水分含有量は190ppmであった。なお、電極捲回群の乾燥は行わなかった。
【0056】
(比較例2)
表2に示すように、比較例2では、負極炭素材に非晶質炭素を用い、負極合材の塗布量を33.3g/m2とした以外は比較例1と同様に正極及び負極を作製し、乾燥させた。正極の水分含有量は300ppmであり、負極の水分含有量は220ppmであった。なお、電極捲回群の乾燥は行わなかった。
【0057】
(比較例3)
表2に示すように、比較例3では、正極にバインダBを用い、負極のバインダにPVDFを用いる以外は比較例1と同様に正極及び負極を作製し、乾燥させた。正極の水分含有量は290ppmであり、負極の水分含有量は280ppmであった。なお、電極捲回群の乾燥は行わなかった。
【0058】
(比較例4)
表2に示すように、比較例4では、正極は、バインダにPVDFを用い、60±20%RHの雰囲気で作製し、乾燥は行わなかった。また、負極は比較例1の負極と同様に作製し、乾燥させた。正極の水分含有量は1680ppmであり、負極の水分含有量は220ppmであった。なお、電極捲回群の乾燥は行わなかった。
【0059】
(比較例5)
表2に示すように、比較例5では、正極は、バインダBを用い、60±20%RHの雰囲気で作製した。また、負極は、負極炭素材にメソフェーズ系球状黒鉛を用い、バインダにPVDFを用いて、60±20%RHの雰囲気で作製した。負極合材の塗布量は、45.2g/m2とした。正極の水分含有量は1000ppmであり、負極の水分含有量は660ppmであった。なお、正極、負極は乾燥させずに捲回し、捲回後に上述した乾燥条件で電極捲回群を乾燥させた。
【0060】
(比較例6)
表2に示すように、比較例6では、負極炭素材に非晶質炭素を用い、負極合材の塗布量を33.3g/m2とした以外は比較例5と同様に正極及び負極を作製した。正極の水分含有量は1000ppmであり、負極の水分含有量は750ppmであった。なお、正極、負極は乾燥させずに捲回し、捲回後に上述した乾燥条件で電極捲回群を乾燥させた。
【0061】
<試験・評価>
次に、以上のようにして作製した実施例及び比較例の各電池について、以下の一連の試験を行った。
【0062】
実施例及び比較例の各電池を、充電した後放電し、放電容量を測定した。充電条件は、4.2V定電圧、制限電流5A、3.5時間とした。放電条件は、5A定電流、終止電圧2.7Vとした。
【0063】
また、上記条件で充電状態の電池の放電出力を測定した。測定条件は、1A、3A、6A、各放電電流で5秒目の電圧を読み取り、横軸電流値に対して縦軸に電圧をプロットし、3点を結ぶ近似直線が、2.7Vと交差するところの電流値と、2.7Vとの積を出力とした。
【0064】
更に、実施例、比較例の各電池を、上記条件で充放電を100回繰り返した後、放電容量を測定し、初期の放電容量に対する容量維持率を百分率で示した。当然のことながら、この容量維持率が高いほうが寿命特性はよいことになる。
【0065】
これら充電、放電、出力の測定は、いずれも環境温度25±1°Cの雰囲気で行った。各測定結果を下表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示すように、正負極合材のバインダにアクリル系重合体を用い、電極捲回群を乾燥させた実施例の電池は、比較例の電池に対して高容量、高出力、長寿命の電池となった。また、負極炭素材に非晶質炭素を用いた実施例5〜実施例8及び実施例15〜実施例18の電池では、負極炭素材に黒鉛を用いた以外はほぼ同条件の実施例1〜実施例4及び実施例9〜実施例14の電池に比べて、より高出力の電池となった。また、正極の水分含有量を1000ppm以上とした実施例9、実施例10及び実施例13〜実施例16の電池では、より高容量、高出力、長寿命の電池となった。また、負極の水分含有量を500ppm以上とした実施例11〜実施例18の電池では、より高容量、高出力、長寿命の電池となった。特に、正極の水分含有量を1000ppm以上とし、且つ負極の水分含有量を500ppm以上とした実施例13〜実施例16の電池は、電池性能の劣化が抑制され、容量、出力、容量維持率がいずれも高い電池となった。
【0068】
実施例19〜実施例21の電池は、電池性能は優れているが、実施例19及び実施例21では正極のバインダにPVDFを用いており、実施例20では負極のバインダにPVDFを用いているので、水分の残留を避けるために、準備ステップでの電極作製を乾燥雰囲気で行い、乾燥させて乾燥状態とし、作製ステップを経て、更に電極捲回群の乾燥も行っている。従って、製造コストの点では好ましくない。
【0069】
比較例1及び比較例2の電池は、電池の放電容量、出力、容量維持率がいずれも著しく低下している。当該電池を解体し、電極を観察したところ、正極には異常が見られなかったが、負極では合材層の一部にひび割れが発生し、集電体から一部剥離脱落していた。このひび割れや剥離の原因は、バインダにアクリル系重合体を用いた負極を準備ステップで乾燥状態とし、作製ステップで乾燥状態の負極を捲回したためである。すなわち、アクリル系重合体は、完全脱水乾燥状態では可撓性が低下し、捲回時の捲回曲率に電極が追随できなかったことによるものと思われる。このため、電極反応が十分にかつ均質に行われず、放電容量、出力が低下し、また均質反応でないために電極反応部位が限定され、電流密度が集中して寿命低下につながったと推察している。
【0070】
一方、バインダにアクリル系重合体を用いた実施例の電極は、非乾燥状態で捲回したので、捲回時に可撓性が低下することはなく、捲回曲率に追随可能であったと思われ、正負極合材のひび割れや剥離はなかった。捲回することにより電極は捲回状態(捲回曲率)に固定されるため、捲回して捲回群を作製した後に乾燥させて可撓性が低下しても、ひび割れ、剥離することはなかった。
【0071】
また、比較例3の電池においても解体観察したところ、負極には異常が認められないが、正極合材層の一部にやはり同様にひび割れ、剥離が見られた。比較例4においては、負極に上述したような異常が発生したことに加え、正極のバインダに用いたPVDFが十分に乾燥されなかったために、電池内でPVDFから洩出した水分が電解液を劣化させ、容量維持率の低下に結びついたものである。また、比較例5及び比較例6の電池についても、バインダにPVDFを用いた負極の乾燥が不十分で、水分が残留していたことにより電池性能が劣化した。電極捲回群を乾燥させたにもかかわらず、電池性能の低下を招いたのは、PVDF中に残留した水分は、一般的な乾燥操作では容易に除去できないことを示している。特に、非晶質炭素を用いた電極は、水分による性能低下が黒鉛を用いた電極に比べて大きく、比較例6の電池において更に容量維持率の低下が著しい。
【0072】
以上のように、上記実施形態の円筒形リチウムイオン電池20は、正極及び/又は負極合材のバインダにアクリル系重合体を含むバインダを用いて作製した電極を、捲回して電極捲回群を作製した後に電極捲回群を乾燥させることで、バインダに吸収された正極及び/又は負極中の水分が十分に除去されるので、水分混入による電池性能の低下を抑制することができる。また、第一実施形態においては、準備ステップや作製ステップをコスト高となる乾燥雰囲気で行う必要はなく、コストを低減することができる。また、第一実施形態及び第三実施形態において、準備ステップで作製した正極の水分含有量を1000ppm以上とすれば、捲回作業を容易に行うことができる。更に、第一実施形態及び第二実施形態において、準備ステップで作製した負極の水分含有量を500ppm以上とすれば、捲回作業を容易に行うことができる。
【0073】
なお、上記実施形態では、電気自動車用電源に用いられる比較的大形の二次電池について例示したが、本発明は、電池の大きさ、電池容量には限定されることなく、効果を発揮することが確認されている。また、本発明の適用可能な電池の形状としては、上述した有底筒状容器(缶)に電池上蓋がカシメによって封口されている構造の電池以外であっても構わない。このような構造の一例として正負外部端子が電池蓋を貫通し電池容器内で軸芯を介して正負外部端子が押し合っている状態の電池を挙げることができる。更に、本発明は、円筒形電池に限らず、例えば、正負極を三角形、四角形、角形又は多角形状に捲回して電極捲回群とした非水電解液二次電池にも適用が可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、電極捲回群の乾燥を、圧力が大気圧より90kPa低い圧力以下の減圧下で、60°Cにて72時間行ったが、圧力条件、温度条件、乾燥時間は適宜定めればよく、水分が十分に除去される条件であればよい。
【0075】
更に、上記実施形態では、リチウムイオン電池用の正極にマンガン酸リチウム、負極に黒鉛又は非晶質炭素、電解液にエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1:1:1の混合溶液中へ6フッ化リン酸リチウムを1モル/リットル溶解したものを用いたが、本発明の電池には特に制限はなく、また、正極の導電材も通常用いられているいずれのものも使用可能である。また、正極合材及び負極合材の混合材組成、合材塗布量、合材密度、電極厚さに制限はない。なお、一般に、マンガン酸リチウムは、適当なリチウム塩と酸化マンガンとを混合、焼成して合成することができるが、リチウム塩と酸化マンガンの仕込み比を制御することによって所望のLi/Mn比とすることができる。
【0076】
また、上記実施形態以外で用いることのできるリチウム遷移金属複酸化物としては、コバルト酸リチウム他、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムを挿入したリチウムマンガン複酸化物であればよく、スピネル構造を有したマンガン酸リチウムや、結晶中のマンガンやリチウムの一部をそれら以外の元素(例えば、Li、Fe、Co、Ni、Cr、Al、Mg、等)で置換あるいはドープした材料を使用するようにしてもよい。また、結晶構造が、層状構造を有し、結晶中のマンガンやリチウムの一部をそれら以外の元素(例えば、Li、Fe、Co、Ni、Cr、Al、Mg、等)で置換あるいはドープしたリチウムマンガン複酸化物でもよい。
【0077】
更に、第二実施形態の正極及び第三実施形態の負極のバインダとしてPVDFを例示したが、通常用いられているいずれのものも使用可能である。例えば、テフロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン/ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン等の重合体及びこれらの混合体などが挙げられる。
【0078】
また更に、上記実施形態以外で用いることのできるリチウムイオン電池用負極炭素材も上記特許請求範囲に記載した事項以外に特に制限はない。例えば、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークス、非晶質炭素などの炭素質材料等でよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。
【0079】
また、上記実施形態では、絶縁被覆に、基材がポリイミドで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いた例を示したが、例えば、基材がポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンで、その片面又は両面にヘキサメタアクリレートやブチルアクリレート等のアクリル系粘着剤を塗布した粘着テープや、粘着剤を塗布しないポリオレフィンやポリイミドからなるテープ等も好適に使用することができる。
【0080】
更に、上記実施形態で用いた以外の非水電解液としては、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。用いられるリチウム塩や有機溶媒は特に制限されない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。非水電解液有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトニル等またはこれら2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよく、混合配合比についても限定されるものではない。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、準備ステップで正極及び/又は負極に混合・含有させたアクリル系重合体を含むバインダにより正極及び/又は負極中の水分を吸収し、作製ステップで電極捲回群を作製した後に、乾燥ステップで電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させることで、非乾燥状態の正極及び/又は負極のバインダに吸収された水分が除去されるので、水分混入による電池性能の低下を抑制することができると共に、アクリル系重合体を含むバインダを用いた正極及び/又は負極は乾燥状態では可撓性が低下するので、作製ステップで非乾燥状態のまま捲回して電極捲回群を作製するため、捲回作業が容易となり、電極の損傷を防ぐことができ、また、電極を非乾燥状態のまま電極捲回群を作製することができるので、準備ステップや作製ステップをコスト高となる乾燥雰囲気で行う必要がなく、コスト低減を図ることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の円筒形リチウムイオン電池の断面図である。
【符号の説明】
1 軸芯
2 正極リード片
3 負極リード片
4 正極集電リング
5 負極集電リング
6 捲回群(電極捲回群)
7 電池容器
8 負極リード板
9 正極リード
10 ガスケット
11 開裂弁
12 蓋ケース
13 蓋キャップ
14 弁押え
20 円筒形リチウムイオン電池(非水電解液二次電池)
W1 正極集電体
W2 正極合材層
W3 負極集電体
W4 負極合材層
W5 セパレータ
Claims (6)
- 非水電解液に浸潤した電極捲回群を有する非水電解液二次電池の製造方法であって、
リチウム遷移金属複酸化物、導電材及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した正極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の正極と、炭素材及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した負極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の負極と、リチウムイオンが通過可能な微多孔を有するセパレータとを準備し、
前記正極及び負極を、前記セパレータを介して捲回して電極捲回群を作製し、
前記電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させる、
ステップを含む非水電解液二次電池の製造方法。 - 非水電解液に浸潤した電極捲回群を有する非水電解液二次電池の製造方法であって、
リチウム遷移金属複酸化物、導電材及びポリフッ化ビニリデンを含むバインダを混合した正極合材を帯状集電体に塗着した乾燥状態の正極と、非晶質炭素及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した負極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の負極と、リチウムイオンが通過可能な微多孔を有するセパレータとを準備し、
前記正極及び負極を、前記セパレータを介して捲回して電極捲回群を作製し、
前記電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させる、
ステップを含む非水電解液二次電池の製造方法。 - 非水電解液に浸潤した電極捲回群を有する非水電解液二次電池の製造方法であって、
リチウム遷移金属複酸化物、導電材及びアクリル系重合体を含むバインダを混合した正極合材を帯状集電体に塗着した非乾燥状態の正極と、炭素材及びポリフッ化ビニリデンを含むバインダを混合した負極合材を帯状集電体に塗着した乾燥状態の負極と、リチウムイオンが通過可能な微多孔を有するセパレータとを準備し、
前記正極及び負極を、前記セパレータを介して捲回して電極捲回群を作製し、
前記電極捲回群を減圧加熱下で乾燥させる、
ステップを含む非水電解液二次電池の製造方法。 - 前記準備ステップでの正極の水分含有量が1000ppm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記準備ステップでの負極の水分含有量が500ppm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記準備ステップでの正極の水分含有量が1000ppm以上であり、かつ、前記準備ステップでの負極の水分含有量が500ppm以上であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
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