JP4904637B2 - フラットケーブル被覆材およびそれを用いたフラットケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットケーブル被覆材に関し、さらに詳しくは、導線との密着性に優れ、かつ、難燃性および環境適性を具備した電気機器、電子機器、その他等に使用されるフラットケ−ブルのフラットケーブル被覆材、およびそれを用いたフラットケーブルに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、OA機器やゲーム機などの電子機器では、コンピューターと電子部品などの電気的な接続や種々の配線のためのフラットケーブルが使用されている。フラットケーブルは、該電子機器の狭い筐体内を引き回され、電子部品の移動に伴って摺動されたり、かつ、電子部品の発熱に伴う高温の環境下で使用される。このために、フラットケーブルを被覆しているフラットケーブル被覆材は、摺動に対する柔軟性、高温に対する耐熱性、および難燃性が要求される。さらに、使用後の廃棄処理において、環境破壊の元凶にもなり兼ねない。
【0003】
ポリイミドフィルムとリン変性飽和ポリエステル共重合体からなる接着層によるノンハロゲンの難燃性フラットケーブルが特開平8−60108号公報で、熱可塑性ポリエステル樹脂とリン系難燃剤を含有する粘着層によるノンハロゲンの難燃性フラットケーブルが特開平9−221642号公報および特開平9−279101号公報で、ポリエステル系樹脂とポリ燐酸系難燃剤と非ポリ燐酸系窒素含有有機難燃剤からなるノンハロゲン系の難燃性熱接着剤が、特開2001−89736号公報で、知られている。
【0004】
しかしながら、いずれもフラットケーブルの基体フィルムは、ポリエステル系フィルムまたはポリイミド系フィルムを用いており、ポリエステル系フィルムは単独では難燃性が不足し、ポリイミド系フィルムでは価格が高価であるという問題がある。また、接着層(粘着層と表現している公報もある)にアンチモン系の難燃剤を用いてるフラットケーブル被覆材では、該フラットケーブル被覆材を用いたフラットケーブルが電子機器とともに使用後廃棄された後に、何らかの要因で難燃剤が環境に漏洩したり、人体に取り込まれて健康を害する恐れがあるという欠点がある。
【0005】
近年、地球レベルで環境を保護するために、有害物質は使用規制される傾向にあり、フラットケーブルに使用する材料についても、有害物質の使用を極力避けるべきである。例えば、臭素系難燃剤であるデカブロモジフェニルエーテル(DBDPO)は、燃焼条件によっては、ダイオキシン関連物質が生成する恐れがあり、その使用規制が望まれている。また、アンチモンは、発ガン性の恐れがあると言われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、このような問題点を解消すべく、柔軟性を持つ基体フィルムと熱接着層に、非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤を用いることを着想して、本発明の完成に至ったものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、第1の発明の要旨は、基体フィルムの一方の面に、プライマー層、ヒートシール性の合成樹脂からなる熱接着層を順次積層したフラットケーブル被覆材において、基体フィルムおよび熱接着層が、ハロゲン系難燃剤およびアンチモン系難燃剤を含まない難燃剤を含有させることを特徴とする。第2の発明は、上記フラットケーブル被覆材を用いて、複数の導線を同一平面内で配列した導線列を、両面より被覆してなるフラットケーブルを要旨とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施態様について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明のフラットケーブル被覆材の1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
本発明のフラットケーブル被覆材は、基体フィルム11の一方の面に、プライマー層12と、熱接着層13とをこの順に順次積層されている。
【0009】
基体フィルム11としては、樹脂フィルムへ非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤を含有させたものを適用する。該樹脂フィルムとしては、機械的強度に優れ、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、屈曲性、絶縁性等に富む、例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト等のポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド系フィルム、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系フィルム、フッ素系フィルム、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルファイド、ポリアリレート、ポリエステルエーテル、全芳香族ポリアミド、ポリアラミド、ポリプロピレンフィルム、ポリカ−ボネ−トフィルムなどが適用できる。通常はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンテレフタレートが好適に使用される。
【0010】
基体フィルム11へ含有させる難燃剤としては、リン系難燃剤が適用できる。該リン系難燃剤としては、赤リン、リン含有化合物、ポリ燐酸系難燃剤が適用できる。該リン含有化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられ、これらは単独で使用されても、二種以上が併用されてもよい。
【0011】
ポリ燐酸系難燃剤としては、具体的には、ポリ燐酸メラミン、ポリ燐酸アンモニウム等がある。特に、電気抵抗を下げる傾向が小さい点からポリ燐酸メラミンが好ましい。ポリリン酸アンモニウムは、一般式(NH4PO3)nで表される、易流動性の粉末状で、水に難溶性のものが好ましい。また、式中、nは10〜1000のものが、ポリエステル系樹脂への分散性の点から好ましい。上記リン系難燃剤の配合量は、少なくなると十分な難燃性を発揮できず、多過ぎると基材フィルム11の物性が低下するので、基材フィルムに用いられる樹脂分100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。
【0012】
該基体フィルムの厚さは、通常は5μm〜200μmが適用でき、10μm〜100μmが好適である。厚さが5μm未満であると機械的強度が不足し、またプライマー層12、熱接着層13など形成する適性が減ずる。厚さが200μm以上では可撓性が不足し摺動性が悪化するので、このような厚さにすることにより、本発明のフラットケーブル被覆材10に必要とされる強度を付与することができるとともに、該フラットケーブル被覆材10に良好な可撓性を付与することができる。
【0013】
基体フィルムは、フィルム樹脂へ上記非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤のリン系難燃剤を5〜30重量%の範囲で混入させてマスターバッチとし、Tダイ式製膜機、または、オンラインもしくはオフラインの延伸機付きTダイ式製膜機などで、未延伸フィルム、または延伸フィルムとする。強度を向上させる目的で延伸フィルムが好ましく、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが、特に二軸延伸フィルムが好適である。非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤の含有が5重量%以下では難燃性が不足し、30重量%以上では製膜時に切断し易く、また、電子機器によってはフラットケーブルとした際の摺動性が不足したりするので、5重量%〜30重量%が好適である。また、基体フィルムの表面は、必要に応じて、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、その他の前処理を施しても良い。
【0014】
次いで、基体フィルム11へプライマー層12を塗布する。該プライマー層12は、基体フィルム11へ熱接着剤13を強固に接着させて、電子機器への使用時の摺動に耐えて、層間の剥離などを抑制して、絶縁性、耐久性を向上するためのものである。プライマー層12の材料としては、例えば、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、および/またはカルボジイミド基を有する多官能化合物と、ガラス転移点が20℃〜120℃、好ましくは30℃〜100℃のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂とを含むプライマー剤が適用できる。
【0015】
また、プライマー剤としては、ポリエチレンイミン系化合物、有機チタン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、ポリブタジエン系化合物などを主成分とする所謂アンカーコート剤も適用することができる。
【0016】
上記のポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との配合比は重量基準で、ポリエステル系樹脂/ポリウレタン系樹脂=0.7/0.3〜0.3/0.7程度が好ましく、熱接着層の熱による収縮を防止される。また、多官能化合物の添加量は、ポリエステル系およびポリウレタン系樹脂の反応基に対して、1〜10倍の反応基に相当する量が好ましい。これらのプライマー剤を固形分として2〜60重量%になるように、有機溶剤で希釈して使用する。
【0017】
該プライマー剤の希釈液をロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなどの方法で塗布し乾燥して、溶剤を除去してプライマー層12を形成させる。要すれば、温度30℃〜70℃でエージングする。プライマー層12の厚さは、通常は0.05μm〜10μm程度、好ましくは0.1μm〜5μm程度である。
【0018】
上記のガラス転移点が20℃〜120℃、好ましくは30℃〜100℃のポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸などの芳香族飽和ジカルボン酸の一種または複数と、飽和2価アルコールの一種または複数との、縮重合で生成する熱可塑性のポリエステル系樹脂が適用できる。また、ポリウレタン系樹脂としては、例えば、多官能イソシアネートと、ヒドロキシル基含有化合物との、反応で生成するポリウレタン系樹脂が適用できる。
【0019】
多官能化合物としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、および/またはカルボジイミド基を有する多官能化合物で、例えば、2、4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート、これらのイソシアナートのポリオール変性物、カルボジイミド変性物、これらのイソシアネートをアルコール、フェノール、ラクタム、アミン等でマスクしたブロック型イソシアネートなどが適用できる。
【0020】
次いで、プライマー層12へ熱接着層13を設ける。熱接着層13は、柔軟性に富み、かつプライマー層12および導線とのヒ−トシ−ル性を有していることが必要である。かかる熱接着層13は、その層間に金属などの導線を挟持させることができて、かつ、加熱ロールまたは加熱板などによる加熱加圧により軟化して溶融し、相互に強固に熱融着し、かつ、導線との密着性に優れているとともに導線をその中に空隙を発生させずに埋め込むことが必要である。
【0021】
熱接着層13を構成する材料としては、例えば、アイオノマ−樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂などが適用できる。
【0022】
熱接着層13の樹脂としては、導線とのヒートシ−ル性、および難燃剤の混入のし易さから、ポリエステル系樹脂を好適に使用することができる。該ポリエステル系樹脂は、飽和共重合ポリエステル樹脂であって、ガラス転移点が−50℃〜80℃で、かつ重量平均分子量が7000〜50000の範囲の樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものが好適である。また、ガラス転移点が比較的低く柔軟性に富むポリエステル系樹脂と、ガラス転移点の比較的高く耐熱性に富むポリエステル系樹脂とを、配合して使用しても良い。
【0023】
熱接着層13へ含有させる難燃剤としては、非ハロゲン系かつ非アンチモン系の難燃剤が望まれている。該難燃剤としては、水和金属化合物、窒素系化合物が適用できる。水和金属化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム等が適用できるが、難燃性に優れ、コストの点でも有利な水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好適である。酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムは、単独でも、両者を組み合わせも使用することができる。
【0024】
窒素系化合物としては、尿素、トリアジン、イソシアヌレート、グアナミン、メラミン化合物が適用できる。ポリ燐酸残基を含まないノンハロゲン系難燃剤であり、被覆材へ含有させても電気抵抗を低下させない利点もある。メラミン化合物としては、メラミン(シアヌル酸トリアミド)、アムメリン(シアヌル酸ジアミド)、アムメリド(シアヌル酸モノアミド)、メラム、メラミンシアヌレート(メラミンとシアヌール酸との縮合)、メラミン樹脂、ホモグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、硫酸メラミン等が適用できる。熱接着層であるポリエステル系樹脂への分散性、混合性、接着性等の点で、硫酸メラミン、メラミンシアヌレート、ベンゾグアナミンが好適であり、硫酸メラミンが最も好適である。
【0025】
該難燃剤には、必要に応じて、難燃助剤や炭化促進剤を併用してもよい。該難燃助剤としては、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の無機酸化物、炭酸カルシウム等の無機塩、および水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物が適用でき、該炭化促進剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。これらの難燃助剤や炭化促進剤は、単独でも、二種以上を組み合わせて使用してもよい。上記難燃助剤及び/又は炭化促進剤の配合量は、少ないと難燃性の向上効果が得られず、多過ぎると熱接着層13の特性が低下するので、熱接着層13に用いられる難燃剤分100重量部に対して1〜50重量部が適用できる。
【0026】
本発明の非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤を含有する熱接着層13には、本発明の効果に影響のない範囲で、さらに種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属腐食防止剤、着色剤(顔料、染料)、樹脂と難燃剤との間の凝集力を上昇させる各種カップリング剤、架橋剤、架橋助剤、充填剤、帯電防止剤、難燃触媒を適宜添加してもよい。上記の無機系難燃剤の粒子の大きさとしては、一次粒子として、約0.01μないし15μ位である。
【0027】
例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の体質顔料または白色顔料、その他の無機化合物の粉末、ガラスフリット、フッ素系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、その他等を使用することができる。なお、本発明においては、上記の体質顔料または白色顔料において、酸化チタンまたは酸化亜鉛等のものは、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等のものと比較して、その粒子径が小さいことから、フラットケ−ブル被覆材をロ−ル状の製品形態で在庫中でのブロッキング防止剤としての機能をも奏するという利点を有している。
【0028】
次に、本発明においては、上記のような柔軟性に富み、かつ、ヒ−トシ−ル性を有する樹脂の一種ないしそれ以上を主成分とし含有し、更に、上記のような難燃剤の一種またはそれ以上を加え、更に、上記の樹脂に合う硬化剤を添加し、更に、必要ならば、その他の添加剤を任意に加え、例えば、トルエン、酢酸エチル、アルコ−ル類、メチルエチルケトン等の溶剤、希釈剤等にて十分に混練して可溶化または分散化して樹脂組成物を製造する。
【0029】
次いで、該樹脂組成物を使用し、これを、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなどのコ−ティング方式で塗布し乾燥して、厚さ20〜60μm(乾燥時)程度の難燃剤を含有するヒ−トシ−ル性の熱接着層13を形成することができる。
【0030】
図2は、本発明のフラットケーブルの1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
図3は、図2のAA断面図である。
本発明のフラットケーブル1は、複数の導線21を同一平面内で配列した導線列を、フラットケーブル被覆材10にて両面より被覆してある。
本発明においては、これまで説明してきたフラットケーブル被覆材10を使用し、少なくとも片方、好ましくは2枚の該フラットケ−ブル用被覆材10を、その熱接着層13面を対向させて重ね合わせ、更に、その層間に、複数の金属等の導線21を同一平面内で配列した導線列を介在させる。
【0031】
しかる後に該フラットケ−ブル用被覆材10、導線21を加熱加圧してヒ−トシ−ルすることにより、該フラットケ−ブル用被覆材10を構成するヒ−トシ−ル性の熱接着層13と導線21とを密接着させ、更に、対向した熱接着層13自身も相互に接着する。このようにして、2枚の対向したフラットケ−ブル被覆材10と導線21とが密接着して、導線21が熱接着層13へ埋め込まれて一体化したフラットケ−ブル1を製造することができる。
【0032】
【実施例】
(実施例1)
(1)基体フィルム
基体フィルム11用の樹脂としてポリエチレンテレフタレート69重量%と、難燃剤としてポリリン酸アンモニウム30重量%と、その他の添加剤としてシリカ1重量%とを、バンバリーミキサーで混練し、真空乾燥機で2日間乾燥した後に、Tダイ式製膜機で押し出し、所定の温度に維持しつつ、2軸延伸して25μmの基体フィルム11とした。
【0033】
(2)プライマー層形成用プライマー剤の調整
ガラス転移点40℃のポリエステル樹脂とポリオール系ウレタン樹脂(固形分重量比1:1、水酸基価=10mgKOH/g)をメチルエチルケトン/トルエン=1:1からなる混合溶剤に溶解させてA液を調整した。トリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとをメチルエチルケトン/トルエン=1:1からなる混合溶剤に溶解させてB液を調整した。次に、上記で調整したA液とB液を基体フィルム11へ塗布する直前に混合してプライマー剤を調整した(OH基/NCO基=1/3)。
【0034】
(3)熱接着層形成用熱接着剤の調整
樹脂成分として、ガラス転移点−30℃のポリエステル樹脂/ガラス転移点5℃のポリエステル樹脂/ガラス転移点80℃のポリエステル樹脂=24:5:1(重量比)の混合ポリエステル樹脂35重量%を使用し、また、難燃剤成分として水酸化アルミニウム45重量%と、硫酸メラミン10重量%とし、その他の成分として酸化チタンとシリカを10重量%を使用し、それらをメチルエチルケトン/トルエン=1:1からなる混合溶剤に溶解分散させて熱接着剤液を調整した。
【0035】
(4)フラットケーブル被覆材の製造
上記の厚さ25μmの基体フィルム11を使用し、まず、該基体フィルムの表面へ、上記で調整したプライマー剤をグラビアロールコート方式により膜厚0.8g/m2(乾燥状態)になるように塗布し乾燥してプライマー層12とした。次に、該プライマー層へ上記で調整した熱接着剤液をダイコート方式で、膜厚25.0g/m2(乾燥状態)になるように塗布し乾燥して、熱接着層13を形成して、フラットケーブル被覆材10とした。
【0036】
(5)フラットケーブルの製造
上記で製造したフラットケーブル被覆材10を使用し、まず、幅60cm、長さ100cmからなる2枚のフラットケーブル被覆材10を、その熱接着層13の面が対向するように重ね合わせ、次いで、その層間に幅0.8mm、厚さ50μmからなる導線を等間隔に複数本を挟み込んで、150℃に加熱した金属ロールとゴムロールとの間を3m/minのスピードで通過させて加熱加圧して、フラットケーブル1を製造した。
【0037】
(実施例2〜3、比較例1〜2)
プライマー剤は、上記の実施例に示したものと同じものを同様に使用し、また、基体フィルムと熱接着層の組成物については、下記の表1に示す材料を表に示す数値からなる使用量(重量%)にて使用し、それ以外は上記の実施例と全く同様にして、フラットケーブル被覆材10とフラットケーブル1を製造した。
【表1】
【0038】
(評価)
上記の実施例1〜3、比較例1〜2で製造したフラットケーブル被覆材10およびフラットケーブル1について、下記に示す項目について試験して評価した。
(1)熱接着層/熱接着層間のT字剥離強度試験
フラットケーブル被覆材10の熱接着層13の面同志をヒートシーラーで接着後(温度170℃、圧力3kg/cm2、時間3秒間)、引っ張り試験機でT字剥離強度(g/巾10mm)を測定して評価した。
【0039】
(2)熱接着層/導線間のT字剥離強度試験
フラットケーブル被覆材10の熱接着層13の面と、厚さ100μmの銅箔とをヒートシーラーで接着後(温度170℃、圧力3kg/cm2、時間3秒間)、引っ張り試験機でT字剥離強度(g/巾10mm)を、測定環境温度を−20℃、25℃、および80℃において測定して評価した。なお、評価表には、最小値を記載した。
【0040】
(3)埋まり込み試験
フラットケーブル1の巾方向と平行にカッターで切断し、該断面を光学顕微鏡にて観察し、導線周りに気泡などが存在し、導線の埋め込みが不十分な部分があるか否やを調べて評価した。なお、○は埋まり込んでいる状態を意味し、×は導線周りに空洞などの埋まり込まない部分が存在している状態を意味する。
【0041】
(4)難燃性試験
フラットケーブル1をUL規格VW−1に準じて測定し、従来のハロゲン系難燃剤を含有するフラットケーブルと比較して、○は同等か同等以上のレベルを意味し、×は以下の状態を意味する。上記の測定結果について、以下の表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
上記の表2に示す結果より明らかなように、実施例1〜3のものは、熱接着層/熱接着層間のT字剥離強度試験、熱接着層/導線間のT字剥離強度試験、埋まり込み試験、難燃性試験のいずれもが、基準範囲であり、ハロゲン系難燃剤を含有するフラットケーブル被覆材と比較しても遜色がなかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明のフラットケーブル被覆材10、およびそれを用いたフラットケーブル1は、非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤を含有していることで、耐熱性、難燃性、摺動性に優れ、発熱に伴う高温の環境下で使用されるコンピューターや電子機器などの配線に好適である。
【0045】
本発明のフラットケーブル1は、基体フィルム11へリン系難燃剤を用いることで、透明性があり、フラットケーブル1の基体フィルム11のプライマー層12面へ、フラットケーブルの品番やロット番号を印刷することができて、該印刷の耐久性が高くでき長期間にわたって判読することができる。また、電子機器への装着作業時にも、フラットケーブル1を透過して基板に接続する端子が見えて、作業適性が向上する。
【0046】
また、使用後の廃棄処理において、有害物質の漏洩が極力少なく、人体、および環境への影響を少なくできるので、地球レベルでの環境保護の一助ともなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフラットケーブル被覆材の1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】 本発明のフラットケーブルの1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
【図3】 図2のAA断面図である。
【符号の説明】
1 フラットケーブル
10 フラットケーブル被覆材
11 基体フィルム
12 プライマー層
13 熱接着層
21 導線
Claims (3)
- 基体フィルムの一方の面に、プライマー層、ヒートシール性の合成樹脂からなる熱接着層を順次積層したフラットケーブル被覆材において、
上記の基体フィルムが、リン系難燃剤を含有した樹脂フィルムで構成され、
また、上記の熱接着層が、水和金属化合物および/または窒素系難燃剤を含有して構成されること
を特徴とするフラットケーブル被覆材。 - 基体フィルムに含有されるリン系難燃剤の含有率が基体フィルムの5〜30重量%であり、熱接着層に含有される水和金属化合物難燃剤および窒素系難燃剤の含有率が、それぞれ、熱接着層の30〜45重量%、2〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載のフラットケーブル被覆材。
- 複数の導線を同一平面内で配列した導線列を、フラットケーブル被覆材にて両面より被覆してなるフラットケーブルにおいて、少なくとも片面のフラットケーブル被覆材が基体フィルムの一方の面に、プライマー層、ヒートシール性の合成樹脂からなる熱接着層を順次積層され、基体フィルムがリン系難燃剤を含有し、熱接着層が水和金属化合物、および/または窒素系難燃剤を含有することを特徴とするフラットケーブル。
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