JP5055676B2 - フラットケーブル被覆材およびそれを用いたフラットケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットケーブル被覆材に関し、さらに詳しくは、導体との密着性に優れ、かつ、難燃性および環境適性を具備した電気機器、電子機器、その他等に使用されるフラットケ−ブルのフラットケーブル被覆材、およびそれを用いたフラットケーブルに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、OA機器やゲーム機などの電子機器では、コンピューターと電子部品などの電気的な接続や種々の配線のためのフラットケーブルが使用されている。フラットケーブルは、該電子機器の狭い筐体内を引き回され、電子部品の移動に伴って摺動されたり、かつ、電子部品の発熱に伴う高温の環境下で使用される。このために、フラットケーブルを被覆しているフラットケーブル被覆材は、摺動に対する柔軟性、高温に対する耐熱性、および難燃性が要求される。さらに、使用後の廃棄処理において、環境破壊の元凶にもなり兼ねない。
【0003】
ポリイミドフィルムとリン変性飽和ポリエステル共重合体からなる接着層によるノンハロゲンの難燃性フラットケーブルが特開平8−60108号公報で、熱可塑性ポリエステル樹脂とリン系難燃剤を含有する粘着層によるノンハロゲンの難燃性フラットケーブルが特開平9−221642号公報および特開平9−279101号公報で、ポリエステル系樹脂とポリ燐酸系難燃剤と非ポリ燐酸系窒素含有有機難燃剤からなるノンハロゲン系の難燃性熱接着剤が、特開2001−89736号公報で、知られている。
【0004】
しかしながら、いずれもフラットケーブルの基材フィルムは、ポリエステル系フィルムまたはポリイミド系フィルムを用いており、ポリエステル系フィルムは単独では難燃性が不足し、ポリイミド系フィルムでは価格が高価であるという問題がある。また、接着層(粘着層と表現している公報もある)にアンチモン系の難燃剤を用いてるフラットケーブル被覆材では、該フラットケーブル被覆材を用いたフラットケーブルが電子機器とともに使用後廃棄された後に、何らかの要因で難燃剤が環境に漏洩したり、人体に取り込まれて健康を害する恐れがあるという欠点がある。
【0005】
近年、地球レベルで環境を保護するために、有害物質は使用規制される傾向にあり、フラットケーブルに使用する材料についても、有害物質の使用を極力避けるべきである。例えば、臭素系難燃剤であるデカブロモジフェニルエーテル(DBDPO)は、燃焼条件によっては、ダイオキシン関連物質が生成する恐れがあり、その使用規制が望まれている。また、アンチモンは、発ガン性の恐れがあると言われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、このような問題点を解消すべく、柔軟性を持つ基材フィルムと熱接着層に、非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤を用いることを着想して、本発明の完成に至ったものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、第1の発明は、基材フィルムの一方の面に、少なくとも熱接着層を積層したフラットケーブル被覆材において、前記熱接着層が、ヒートシール性を有する合成樹脂、および、難燃剤からなり、該難燃剤が、メラミン誘導体、水和金属化合物、および非ハロゲン有機リン化合物を含有させたことを要旨とし、また、第2の発明は、上記フラットケーブル被覆材を用いて、複数の導体を同一平面内で配列した導体列を、両面より被覆してなるフラットケーブルを要旨とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施態様について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明のフラットケーブル被覆材の1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
本発明のフラットケーブル被覆材10は、基材フィルム11の一方の面に、プライマー層12と、熱接着層13とをこの順に順次積層されている。基材フィルム11としては、機械的強度に優れ、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、屈曲性、絶縁性等に富む、例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト等のポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド系フィルム、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系フィルム、フッ素系フィルム、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルファイド、ポリアリレート、ポリエステルエーテル、全芳香族ポリアミド、ポリアラミド、ポリプロピレンフィルム、ポリカ−ボネ−トフィルムなどが適用できる。通常はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンテレフタレートが好適に使用される。
【0009】
該基材フィルムは、未延伸フィルム、または延伸フィルムが適用でき、強度を向上させる目的で延伸フィルムが好ましく、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが、特に二軸延伸フィルムが好適である。また、基材フィルムの表面は、必要に応じて、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、その他の前処理を施しても良い。該基材フィルムの厚さは、通常は5μm〜200μmが適用でき、10μm〜100μmが好適である。厚さが5μm未満であると機械的強度が不足し、またプライマー層12、熱接着層13など形成する適性が減ずる。厚さが200μm以上では可撓性が不足し摺動性が悪化するので、このような厚さにすることにより、本発明のフラットケーブル被覆材10に必要とされる強度を付与することができるとともに、該フラットケーブル被覆材10に良好な可撓性を付与することができる。
【0010】
次いで、基材フィルム11へ、必要に応じてプライマー層12を塗布する。該プライマー層12は、基材フィルム11へ熱接着剤13を強固に接着させて、電子機器への使用時の摺動に耐えて、層間の剥離などを抑制して、絶縁性、耐久性を向上するためのものである。プライマー層12の材料としては、例えば、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、および/またはカルボジイミド基を有する多官能化合物と、ガラス転移点が20℃〜120℃、好ましくは30℃〜100℃のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂とを含むプライマー剤が適用できる。
【0011】
また、プライマー剤としては、ポリエチレンイミン系化合物、有機チタン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、ポリブタジエン系化合物などを主成分とする所謂アンカーコート剤も適用することができる。
【0012】
上記のポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との配合比は重量基準で、ポリエステル系樹脂/ポリウレタン系樹脂=0.7/0.3〜0.3/0.7程度が好ましく、熱接着層の熱による収縮を防止される。また、多官能化合物の添加量は、ポリエステル系およびポリウレタン系樹脂の反応基に対して、1〜10倍の反応基に相当する量が好ましい。これらのプライマー剤を固形分として2〜60重量%になるように、有機溶剤で希釈して使用する。
【0013】
該プライマー剤の希釈液をロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなどの方法で塗布し乾燥して、溶剤を除去してプライマー層12を形成させる。要すれば、温度30℃〜70℃でエージングする。プライマー層12の厚さは、通常は0.05μm〜10μm程度、好ましくは0.1μm〜5μm程度である。
【0014】
上記のガラス転移点が20℃〜120℃、好ましくは30℃〜100℃のポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸などの芳香族飽和ジカルボン酸の一種または複数と、飽和2価アルコールの一種または複数との、縮重合で生成する熱可塑性のポリエステル系樹脂が適用できる。また、ポリウレタン系樹脂としては、例えば、多官能イソシアネートと、ヒドロキシル基含有化合物との、反応で生成するポリウレタン系樹脂が適用できる。
【0015】
多官能化合物としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、および/またはカルボジイミド基を有する多官能化合物で、例えば、2、4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート、これらのイソシアナートのポリオール変性物、カルボジイミド変性物、これらのイソシアネートをアルコール、フェノール、ラクタム、アミン等でマスクしたブロック型イソシアネートなどが適用できる。
【0016】
次いで、プライマー層12へ熱接着層13を設ける。熱接着層13は、柔軟性に富み、かつプライマー層12および導体とのヒ−トシ−ル性を有していることが必要である。かかる熱接着層13は、その層間に金属などの導体を挟持させることができて、かつ、加熱ロールまたは加熱板などによる加熱加圧により軟化して溶融し、相互に強固に熱融着し、かつ、導体との密着性に優れているとともに導体をその中に空隙を発生させずに埋め込むことが必要である。
【0017】
該熱接着層は、合成樹脂成分が20〜50質量%と難燃剤成分が50〜80質量%とを含む組成物からなる。難燃性の性能からは、難燃剤成分が多いほど良いが、難燃剤が多いと合成樹脂成分が少なくなって、熱接着層を形成加工する際に成膜することができず、また、必要な接着性能が得られない。難燃性があり、加工性の良い組成としては、合成樹脂成分が20〜50質量%と難燃剤成分が50〜80質量%が好適である。
【0018】
熱接着層13を構成する材料としては、例えば、アイオノマ−樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂などが適用できる。
【0019】
熱接着層13の樹脂としては、導体とのヒートシ−ル性、および難燃剤の混入のし易さから、ポリエステル系樹脂を好適に使用することができる。該ポリエステル系樹脂は、飽和共重合ポリエステル樹脂であって、ガラス転移点が−50℃〜80℃で、かつ重量平均分子量が7000〜50000の範囲の樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものが好適である。また、ガラス転移点が比較的低く柔軟性に富むポリエステル系樹脂と、ガラス転移点の比較的高く耐熱性に富むポリエステル系樹脂とを、配合して使用しても良い。さらに、非晶性のポリエステル系樹脂と結晶性のポリエステル系樹脂を、適宜、配合して使用しても良い。
【0020】
熱接着層13へ含有させる難燃剤としては、非ハロゲン系かつ非アンチモン系の難燃剤が望まれている。該難燃剤としては、少なくとも1種のメラミン誘導体、および/または、少なくとも1種の水和金属化合物、および/または、少なくとも1種の酸化金属化合物、および/または、少なくとも1種の非ハロゲン有機リン化合物を含有させる。
【0021】
難燃剤の1つであるメラミン誘導体は、メラミン、およびトリアジン、イソシアヌレート、グアナミンなどのメラミン誘導体が適用できる。ノンハロゲン系難燃剤であり、該メラミンおよびメラミン誘導体としては、メラミン樹脂、硫酸メラミン・硫酸アセトグアナミン・硫酸グアニルメラミン・硫酸メレム・硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、メラミン(シアヌル酸トリアミド)、アムメリン(シアヌル酸ジアミド)、アムメリド(シアヌル酸モノアミド)、メラム、メラミンシアヌレート(メラミンとシアヌール酸との縮合)、ホモグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどが適用できる。ポリエステル系樹脂への分散性、混合性、接着性等の点で、硫酸アミノトリアジン化合物、メラミンシアヌレートが好適である。これらのメラミン誘導体は、単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。
【0022】
また、本発明では、必要に応じて、難燃剤を組み合わせることで、より効果を見出した。該難燃剤としては、水和金属化合物、酸化金属化合物、非ハロゲン有機リン化合物が適用でき、単独でも、二種以上を組み合わせて使用してもよい。該難燃剤の配合量は、少ないと難燃性の向上効果が得られず、多過ぎると熱接着層13の形成加工性が低下する。従って、熱接着層13に用いられる難燃剤の種類および組合せ、およびその配合比を適正値に設定するのが、極めて重要である。
【0023】
まず、水和金属化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などが適用できるが、難燃性に優れ、コストの点でも有利な水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好適である。該水和金属化合物は、単独でも、複数種を組み合わせも使用することもできる。酸化金属化合物としては、例えば、スズ酸亜鉛、酸化モリブデン酸、ホウ酸亜鉛、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化ホウ素、二酸化珪素などが適用できる。但し、酸化アンチモン系は、環境問題もあり、本発明の金属酸化物としては使用しない。
【0024】
本発明の難燃剤として用いる非ハロゲン有機リン化合物としては、非ハロゲンリン酸エステル単量体と、非ハロゲンリン酸エステル縮合体と、フォスフェートが適用できる。非ハロゲンリン酸エステル単量体としては、トリフェニールフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジル(ジ2、6キシレニル)フォスフェート、2ーエチルヘキシルジフェニルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェートなどがある。非ハロゲンリン酸エステル縮合体としては、レゾルシノール(ジフェニル)フォスフェート、レゾルシノールビス(ジ2、6キシレニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェートなどがある。。フォスフェートとしては、ジエチルーN、Nービス(2ーヒドロキシエチル)アミノフォスフェートなどがある。
【0025】
特に、難燃性の高いトリフェニールフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)などが好適である。上記非ハロゲン有機リン化合物の難燃剤の配合量は、少ないと十分な難燃性を発揮できず、多過ぎると接着などの物性が低下するため、接着層中に用いられる含有量は、10〜30重量部が好ましい。これらは単独で使用されても、二種以上が併用されてもよい。
【0026】
本発明の非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤を含有する熱接着層13には、本発明の効果に影響のない範囲で、さらに種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属腐食防止剤、着色剤(顔料、染料)、ブロッキング防止剤、樹脂と難燃剤との間の凝集力を上昇させる各種カップリング剤、架橋剤、架橋助剤、充填剤、帯電防止剤、難燃触媒を適宜添加してもよい。上記の無機系難燃剤の粒子の大きさとしては、一次粒子として、約0.01μないし15μ位である。
【0027】
例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の体質顔料または白色顔料、その他の無機化合物の粉末、ガラスフリット、フッ素系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、その他等を使用することができる。なお、本発明においては、上記の体質顔料または白色顔料において、酸化チタンまたは酸化亜鉛等のものは、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等のものと比較して、その粒子径が小さいことから、フラットケ−ブル被覆材をロ−ル状の製品形態で在庫中でのブロッキング防止剤としての機能をも奏するという利点を有している。
【0028】
次に、本発明においては、上記のような柔軟性に富み、かつ、ヒ−トシ−ル性を有する樹脂の一種ないしそれ以上を主成分とし含有し、更に、上記のような難燃剤の一種またはそれ以上を加え、更に、上記の樹脂に合う硬化剤を添加し、更に、必要ならば、その他の添加剤を任意に加え、例えば、トルエン、酢酸エチル、アルコ−ル類、メチルエチルケトン等の溶剤、希釈剤等にて十分に混練して可溶化または分散化して樹脂組成物を製造する。
【0029】
次いで、該樹脂組成物を使用し、これを、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなどのコ−ティング方式で塗布し乾燥して、厚さ15〜150μm(乾燥時)程度の難燃剤を含有するヒ−トシ−ル性の熱接着層13を形成することができる。
【0030】
請求項1の本発明では、熱接着層の合成樹脂成分が20〜50質量%と難燃剤成分が50〜80質量%とを含む組成物からなり、さらにまた、該難燃剤成分が、メラミン誘導体の含有率が50〜80質量%、水和金属化合物の含有率が10〜40質量%、および非ハロゲン有機リン化合物の含有率が10〜30質量%とする。該難燃剤成分の含有量が少ないと難燃性が不十分で、多過ぎると加工適性および接着性能がでない。該難燃剤の材質、組合わせ、および含有量については、実施例で詳細に説明する。
【0031】
図2は、本発明のフラットケーブルの1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
図3は、図2のAA断面図である。
本発明のフラットケーブル1は、複数の導体21を同一平面内で配列した導体列を、フラットケーブル被覆材10にて両面より被覆してある。
本発明においては、これまで説明してきたフラットケーブル被覆材10を使用し、少なくとも片方、好ましくは2枚の該フラットケ−ブル用被覆材10を、その熱接着層13面を対向させて重ね合わせ、更に、その層間に、複数の金属等の導体21を同一平面内で配列した導体列を介在させる。
【0032】
しかる後に該フラットケ−ブル用被覆材10、導体21を加熱加圧してヒ−トシ−ルすることにより、該フラットケ−ブル用被覆材10を構成するヒ−トシ−ル性の熱接着層13と導体21とを密接着させ、更に、対向した熱接着層13自身も相互に接着する。このようにして、2枚の対向したフラットケ−ブル被覆材10と導体21とが密接着して、導体21が熱接着層13へ埋め込まれて一体化したフラットケ−ブル1を製造することができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の実施例中の本願発明の実施例は、実施例11から実施例14、および実施例17から実施例18であり、実施例1から実施例10、実施例15から実施例16、および実施例19は参考実施例という意味である。
(実施例1)基材フィルム11として、厚さ23μmのポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム社製、GEC−23)を用いて、次のプライマー層形成用プライマー剤を、コンマコーターにて、厚さ1μm(乾燥後)塗布し乾燥して、プライマー層12とした。プライマー層形成用プライマー剤は、ガラス転移点40℃のポリエステル樹脂とポリオール系ウレタン樹脂(固形分重量比1:1、水酸基価=10mgKOH/g)をメチルエチルケトン/トルエン=1:1からなる混合溶剤に溶解させてA液を調整した。トリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとをメチルエチルケトン/トルエン=1:1からなる混合溶剤に溶解させてB液を調整した。次に、上記で調整したA液とB液を基材フィルム11へ塗布する直前に混合してプライマー剤を調整した(OH基/NCO基=1/3)。
【0034】
次いで、熱接着層形成用熱接着剤を調整する。飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡社製、結晶性ポリエステル、商品名バイロンSF237、Tg=−5℃)をトルエンとメチルエチルケトンの1対1の混合溶剤で希釈し、表1に示した割合でメラミンシアヌレート、硫酸メラミン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、スズ酸亜鉛、酸化モリブデン、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェートを混合し、固形分50wt%の組成物を得た。これを先のプライマー層12上へ、コンマコーターにて、厚さ36μm(乾燥時)に塗布し、乾燥して、熱接着層13とした。次いで、その層間にスズメッキ軟銅導体(厚さ50μm、幅0.8mm)を17本平行に並べ、2枚のフラットケーブル被覆材10の熱接着層が向かい合うようにして、150℃に加熱した金属ロールとゴムロールとの間を3m/minのスピードで通過させて加熱加圧して、フラットケーブル1を製造した。
【0035】
(実施例2〜19、および比較例1〜16)
熱接着層の組成物および配合については、下記の表1および表4に示す材料を表に示す数値からなる使用量(重量%)にて使用し、それ以外は上記の実施例1と全く同様にして、フラットケーブル被覆材10とフラットケーブル1を製造した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
(評価)
上記の実施例1〜19、比較例1〜16のフラットケーブル被覆材10およびフラットケーブル1について、下記に示す項目について試験して評価した。
(1)難燃性試験
フラットケーブル1の難燃性をUL規格VW−1燃焼試験で評価した。合格を「○」、不合格の場合を「×」で表わし、表1ないし表4の下欄の「VW−1」欄に併記した。
(2)熱接着層/導体間のT字剥離強度試験
フラットケーブル被覆材10の熱接着層13の面と、厚さ100μmのスズメッキ軟銅導体とをヒートシーラーで接着後(温度170℃、圧力3kg/cm2、時間3秒間)、引っ張り試験機でT字剥離強度(g/巾10mm)を、測定環境温度を25℃で測定して評価した。180度剥離法で測定し、50g以上を合格とし、表1ないし表4の下欄の「導体接着力」欄に併記した。
【0041】
上記の表に示す結果より明らかなように、実施例1〜19では、難燃性試験および導体接着力のいずれもが、合格範囲であり、ハロゲン系難燃剤を含有するフラットケーブル被覆材と比較しても遜色がなかった。比較例1〜16では、導体接着力については合格するものもあるが、難燃性が不充分であった。
【0042】
【発明の効果】
請求項1の本発明のフラットケーブル被覆材10は、非ハロゲン系かつ非アンチモン系難燃剤を含有していることで、耐熱性、難燃性、摺動性に優れ、発熱に伴う高温の環境下で使用されるコンピューターや電子機器などの配線に好適である。
【0043】
さらに、請求項1のフラットケーブル被覆材10を用いた請求項2のフラットケーブル1の本発明でも、環境への影響が少ないのは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフラットケーブル被覆材の1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】 本発明のフラットケーブルの1実施例の構成を示す模式的な断面図である。
【図3】 図2のAA断面図である。
【符号の説明】
1 フラットケーブル
10 フラットケーブル被覆材
11 基材フィルム
12 プライマー層
13 熱接着層
21 導体
Claims (2)
- 基材フィルムの一方の面に、少なくとも熱接着層を積層したフラットケーブル被覆材において、前記熱接着層は、ヒートシール性を有する合成樹脂と難燃剤とから構成され、かつ当該合成樹脂の成分が20〜50質量%、および当該難燃剤の成分が50〜80質量%とを含む組成物からなり、かつ、当該難燃剤の成分が、メラミン誘導体の含有率が50〜80質量%、水和金属化合物の含有率が10〜40質量%、および非ハロゲン有機リン化合物の含有率が10〜30質量%とから構成され、かつ当該非ハロゲン有機リン化合物が、非ハロゲンリン酸エステル単量体、非ハロゲンリン酸エステル縮合体、又は、フォスフェートのいずれかからなることを特徴とするフラットケーブル被覆材。
- 複数の導体を同一平面内で配列した導体列を、フラットケーブル被覆材にて両面より被覆してなるフラットケーブルにおいて、少なくとも片面のフラットケーブル被覆材が、基材フィルムの一方の面に、少なくとも熱接着層を積層したフラットケーブル被覆材であって、当該熱接着層が、ヒートシール性を有する合成樹脂と難燃剤とからなり、かつ当該合成樹脂の成分が20〜50質量%、および当該難燃剤の成分が50〜80質量%とを含む組成物からなり、かつ、当該難燃剤の成分が、メラミン誘導体の含有率が50〜80質量%、水和金属化合物の含有率が10〜40質量%、および非ハロゲン有機リン化合物の含有率が10〜30質量%とから構成され、かつ当該非ハロゲン有機リン化合物が、非ハロゲンリン酸エステル単量体、非ハロゲンリン酸エステル縮合体、又は、フォスフェートのいずれかからなることを特徴とするフラットケーブル。
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