JP4894545B2 - 車両用サスペンションシステム - Google Patents
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という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の項において、(1)項,(3)項,(4)項を合わせたものが請求項1に相当し、請求項1に(2)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(5)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項3に(6)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれかに(7)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項5に、それぞれ相当する。
ばね上部とばね下部との一方である一方部と、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとのうちの前記一方部に連結されるものである一方部側ユニットとを連結するスプリングを有し、前記一方部側ユニットを前記一方部に弾性的に支持させる弾性支持機構と、
前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御することで、少なくともばね上部の振動を減衰するための振動減衰制御を実行する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、
アブソーバ力が前記弾性支持機構を介してばね上部とばね下部との間に実際に作用する力である実作用力として伝達される際の伝達特性と、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき力である必要作用力とに基づいて、前記振動減衰制御における目標アブソーバ力を決定する目標アブソーバ力決定部を有する車両用サスペンションシステム。
前記実作用力の値が、前記必要作用力と一致するアブソーバ力を前記ショックアブソーバに発生させた場合の値よりも、前記必要作用力に近い値となるように、前記目標アブソーバ力を決定するものである(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
図1に、請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ30のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行される。まず、上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御ごとのアクチュエータ力の成分である振動減衰成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分を合計して、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき力である必要作用力が求められ、ばね上部とばね下部との間に実際に作用する力が必要作用力となるように、目標アクチュエータ力が決定される。そして、アクチュエータ30がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、総合的に実行される。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
振動減衰制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動減衰成分fVが決定される。つまり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御と、擬似的なグランドフック理論に基づいた制御との両者を行う制御である。具体的には、車体のマウント部24に設けられたばね上縦加速度センサ234によって検出されるばね上縦加速度から計算される車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上速度Vsと、ロアアーム22に設けられたばね下縦加速度センサ236によって検出されるばね下縦加速度から計算される車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動減衰成分fVが演算される。
fV=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、Cgは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ30にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ30にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ232によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分fRが、次式に従って決定される。
fR=K3・Gy* (K3:ゲイン)
車体の制動時等、減速時に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車体の加速時に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合の接近・離間距離を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ230によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制成分fPが、次式に従って決定される。
fP=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ238によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ240によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
上述のようにして、アクチュエータ力の振動減衰成分fV,ロール抑制成分fR,ピッチ抑制成分fPが決定されると、それらに基づき、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき必要作用力FNが、次式に従って決定される。
fN=fV+fR+fP
次いで、その必要作用力fNに基づいて、アクチュエータ30が発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力f*が決定される。本サスペンションシステム10は、アクチュエータ30に対して、圧縮コイルスプリング100,102およびダンパ32(弾性支持機構)が直列的に配設されているため、アクチュエータ力が、ばね上部とばね下部との間に弾性支持機構を介して伝達されることになる。そこで、本システム10においては、アクチュエータ力が弾性支持機構を介してばね上部とばね下部の間に実際に作用する力である実作用力として伝達される際の伝達特性と、上記必要作用力fNとに基づいて、目標アクチュエータ力f*が決定されるようになっている。
以下に、上記の伝達特性について詳しく説明する。図3は、スプリング・アブソーバAssy20をモデル化した図である。時間tをパラメータとするアクチュエータ力をfA(t)とし、そのアブソーバ力fA(t)によってばね下部側ユニットがばね下部に対して移動する場合の移動量をx(t)とした場合において、ばね下部側ユニットに対する運動方程式は、次式によって表される。
m・d2x(t)/dt2+c・dx(t)/dt+k・x(t)=fA(t) ・・・(1)
ここで、mはばね下部側ユニット(ばね下部側ユニットとともに移動する部材等を含む)の質量、cはダンパ32の減衰係数、kは2つの圧縮コイルスプリング100,102を1つのばねと仮定した場合のばね定数である。(1)式を、sをパラメータとしてラプラス変換することで、次式が求まる。
X(s)=1/(m・s2+c・s+k)・FA(s) ・・・(2)
なお、X(s),FA(s)は、それぞれx(t),fA(t)をラプラス変換した関数である。
fr(t)=c・dx(t)/dt+k・x(t) ・・・(3)
この(3)式を、sをパラメータとしてラプラス変換した式が次式である。
Fr(t)=(c・s+k)・X(s) ・・・(4)
なお、Fr(s)は、fr(t)をラプラス変換した関数である。そして、この(4)式に(2)式を代入すれば、次式が得られる。
Fr(t)=(c・s+k)/(m・s2+c・s+k)・FA(s) ・・・(5)
G(s)=(c・s+k)/(m・s2+c・s+k) ・・・(6)
つまり、伝達関数G(s)は、アクチュエータ力を入力としそのアクチュエータ力によってばね下部側ユニットがばね下部に対して移動する場合の移動量を出力とした第1の伝達関数(G1(s)=1/(m・s2+c・s+k))と、その移動量を入力とし実作用力を出力とした第2の伝達関数(G2(s)=c・s+k)との積として設定されているのである。
先にも述べたように、目標アクチュエータ力f*は、必要作用力fNと上記伝達関数G(s)とに基づいて決定される。具体的には、実作用力の値が先に求められた必要作用力の値となるように、目標アクチュエータ力f*が決定されるのであり、つまり、上記の(5)式において、実作用力が必要作用力である場合のアクチュエータ力が、目標アクチュエータ力とされるのである。詳しく言えば、上記伝達関数G(s)の逆数関数である伝達関数G'(s)=1/G(s)が設定され、その伝達関数G'(s)に対して必要作用力を入力することで、目標アクチュエータ力が出力される。つまり、いわゆるフィルタ処理が実行されるのである。本サスペンションシステム10においては、ECU200が、伝達関数が上記G'(s)に設定されたフィルタ回路250(図4参照)を有しており、前述したように決定された必要作用力fNを入力すれば、目標アクチュエータ力f*が出力されるようになっている。
上述したようなアクチュエータ30の制御を実行するECU200は、それらの各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図4に示すように、ECU200は、減衰力成分fV決定する機能部として振動減衰制御部300を、ロール抑制成分fRを決定する機能部としてロール抑制制御部302を、ピッチ抑制成分FPを決定する機能部としてピッチ抑制制御部304を、それぞれ有している。また、ECU200は、先に述べたフィルタ回路250を有しており、そのフィルタ回路250は、伝達特性と必要作用力とに基づいて目標アクチュエータ力を決定する処理を実行する目標アクチュエータ力決定部として機能するものとなっている。
Claims (5)
- ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との接近・離間に応じた前記ばね上部側ユニットと相対移動可能なばね下部側ユニットと、電磁式モータとを有し、その電磁式モータの力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対移動に対する力であるアブソーバ力を発生させる電磁式のショックアブソーバと、
ばね上部とばね下部との一方である一方部と、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとのうちの前記一方部に連結されるものである一方部側ユニットとを連結するスプリングを有し、前記一方部側ユニットを前記一方部に弾性的に支持させる弾性支持機構と、
前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御することで、少なくともばね上部の振動を減衰するための振動減衰制御を実行する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、
アブソーバ力が前記弾性支持機構を介してばね上部とばね下部との間に実際に作用する力である実作用力として伝達される際の伝達特性と、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき力である必要作用力とに基づいて、前記振動減衰制御における目標アブソーバ力を決定する目標アブソーバ力決定部を有し、
前記伝達特性が、
アブソーバ力を入力としそのアブソーバ力による前記一方部側ユニットの前記一方部に対する移動量を出力とした場合の第1の伝達関数と、前記移動量を入力とし前記実作用力を出力とした場合の第2の伝達関数との積として設定された伝達関数として規定されている車両用サスペンションシステム。 - 前記目標アブソーバ力決定部が、
前記実作用力の値が、前記必要作用力と一致するアブソーバ力を前記ショックアブソーバに発生させた場合の値よりも、前記必要作用力に近い値となるように、前記目標アブソーバ力を決定するものである請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。 - 前記弾性支持機構が、前記一方部と前記一方部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力を発生させる液圧式ダンパを有する請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記液圧式ダンパが、ばね下共振周波数域の振動のばね下部からばね上部への伝達を抑制するためのものである請求項3に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記一方部が、ばね下部であり、前記一方部側ユニットがばね下部側ユニットとされた請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
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