JP2010058704A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

車両用サスペンションシステム Download PDF

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Abstract

【課題】電磁式のアクチュエータを含んで構成されるサスペンションシステムの実用性を向上させる。
【解決手段】車両の右前輪側,左前輪側,右後輪側,左後輪側の各々において、車両の走行の際に振動するその車両の一部分を振動部と定義し、かつ、アクチュエータが発生させる力に起因して生じる振動部の振動を自励振動と定義した場合において、左右において同じ側に位置する前輪側の振動部の振動強度IM_FRと後輪側の振動部の振動強度IM_RRとに基づいて、それら前輪側の振動部と後輪側の振動部とのいずれか一方に生じる自励振動を検出することを特徴とする(S72)。したがって、そのいずれか一方の振動部に自励振動が生じた場合に、その自励振動に対処すること(S74,77,79,80)で、車両の乗り心地や操縦・安定性等を改善することが可能である。
【選択図】図10

Description

本発明は、電磁式のショックアブソーバを含んで構成される車両用サスペンションシステムに関する。
近年では、車両用のサスペンションシステムとして、電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部とに対してそれらが接近・離間する方向の力を発生させる電磁式のショックアブソーバを含んで構成される電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献1に記載のシステムが存在する。この電磁式サスペンションシステムは、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく振動減衰特性を容易に実現できる等の利点を有しており、車両の分野において、精力的に開発が進められている。そして、ショックアブソーバの制御に関して各種の提案がなされており、例えば、特許文献1に記載のシステムでは、アクチュエータの内部慣性力を補償する制御が検討されている。
特開2004−237825号公報
上記電磁式のショックアブソーバは、上記特許文献1に記載されているように、ばね上部に連結されたばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との接近離間に伴ってばね上部側ユニットと相対動作可能なばね下部側ユニットと、それらの相対動作に応じて動作する電磁モータとを有して、その電磁モータの力に依拠してばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する力を発生させるアクチュエータを主体として構成されている。また、電磁式のショックアブソーバは、そのような構成のアクチュエータに加えて、例えば、周波数の高い振動への対処等を目的として、支持スプリングと液圧式のダンパとを有する連結機構を備える場合がある。その連結機構は、アクチュエータのばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と、それが連結されるばね上部とばね下部との一方とを連結するものであり、支持スプリングによって、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方をばね上部とばね下部との一方に弾性的に支持させつつそれら一方どうしの相対変位を許容するとともに、ダンパによって、それら一方どうしの相対変位に対する減衰力を発生させるように構成される。つまり、電磁式のショックアブソーバが、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方をスプリングを利用して浮動支持するための構造を有している。
しかし、上記連結機構を有する電磁式のショックアブソーバを備えたサスペンションシステムでは、車両の走行中に、ばね上部,ばね下部に加えて、上記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方も動作し、それらが振動することになる。そして、それら車両の走行の際に振動するその車両の一部分である振動部には、アクチュエータが発生させる力に起因して生じる振動である自励振動が生じる場合がある。その自励振動は、例えば、車両の乗り心地を悪化させたり、車両の操縦性・安定性を阻害する可能性がある。したがって、その自励振動を検出することによって、その自励振動に対して何らかの対処が可能となり、電磁式サスペンションシステムの実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いサスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のサスペンションシステムは、アクチュエータと連結機構とを有する電磁式のショックアブソーバを備えたシステムであって、左右において同じ側に位置する前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度とに基づいて、それら前輪側の振動部と後輪側の振動部とのいずれか一方に生じる自励振動を検出するように構成される。
本発明のサスペンションシステムによれば、例えば、前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度とに差異が生じた場合に、前輪の振動部と後輪の振動部とのいずれか一方に、自励振動が生じていることを検出することができ、その自励振動に対処することで、車両の乗り心地や操縦・安定性等を改善できる。そのような利点を有することで、本発明のサスペンションシステムは実用性の高いものとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に、(5)項が請求項3に、(11)項が請求項4に、(15)項が請求項5に、(17)項ないし(19)項の各々が請求項6ないし請求項8の各々に、(16)項が請求項9に、(13)項,(14)項の各々が請求項10,請求項11の各々に、それぞれ相当する。
(1)(A)車両の右前輪側,左前輪側,右後輪側,左後輪側の各々に配設され、
ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との接近離間に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作するばね下部側ユニットと、それらばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に応じて動作する電磁モータとを含んで構成され、その電磁モータの力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する力を発生させるアクチュエータと、
前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方をそれが連結されるばね上部とばね下部との一方に弾性的に支持させつつそれら一方どうしの相対変位を許容するための支持スプリングと、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対変位に対する減衰力を発生させる液圧式のダンパとを含んで構成され、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方とを連結する連結機構と
を有する電磁式のショックアブソーバと、
(B)それらショックアブソーバの各々がその各々に対応するばね上部とばね下部とに作用させるべき力である目標作用力を決定する目標作用力決定部を有し、その目標作用力に基づいて、それらショックアブソーバの各々が有する前記アクチュエータが発生させる力を制御する機能を有する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
車両の右前輪側,左前輪側,右後輪側,左後輪側の各々において、車両の走行の際に振動するその車両の一部分を振動部と定義し、かつ、前記アクチュエータが発生させる力に起因して生じる前記振動部の振動を自励振動と定義した場合において、
前記制御装置が、
左右において同じ側に位置する前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度とに基づいて、それら前輪側の振動部と後輪側の振動部とのいずれか一方に生じる自励振動を検出する自励振動検出部を有する車両用サスペンションシステム。
左右において同じ側に位置する前輪と後輪とは、基本的に同じ路面を通過することになるため、通常は、前輪側の振動部と後輪側の振動部とは、同様に振動して、それらの振動強度、つまり、それらの振動の振幅,速度,加速度等は、互いに同じ程度となるはずである。したがって、前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度との間に差異が生じた場合には、路面の凹凸によるばね下部からの入力とは別の力、つまり、アクチュエータが発生させる力(以下、単に「アクチュエータ力」という場合がある)に起因して、前輪の振動部と後輪の振動部とのいずれか一方に、振動が生じていると考えられるのである。
例えば、前輪側の振動部と後輪側の振動部とのいずれか一方に対応するショックアブソーバにおいて、上記目標作用力を求める際に用いるセンサの異常や、連結機構が有するダンパの減衰性能の低下等が生じた場合には、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき作用力と、その作用力をばね上部とばね下部との間に作用させるべくアクチュエータが発生させた力によってばね上部とばね下部との間に実際に作用する作用力との間に差異が生じることになる。その作用力の差異によって、つまり、アクチュエータ力に起因して、車両の振動部には振動が生じる虞がある。例えば、ばね上部に自励振動が生じた場合には、車両の乗り心地が悪化し、ばね下部に自励振動が生じた場合には、車輪の接地荷重の変動を引き起こして、車両の操縦・安定性が悪化することになる。また、連結機構によって浮動支持された上記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に自励振動が生じた場合には、その自励振動は、ばね上部やばね下部に伝達されて、車両の乗り心地,車両の操縦・安定性を悪化させる一因となるのである。
本項に記載の態様は、上述したことに鑑みて、前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度とに基づいて、アクチュエータ力に起因する振動部の振動である自励振動を検出するように構成されており、右前輪の振動部と右後輪の振動部とのいずれか一方,左前輪の振動部と左後輪の振動部とのいずれか一方の自励振動を検出した場合には、その自励振動へ対処することが可能である。具体的には例えば、その生じた自励振動を減衰させることや、一度自励振動が検出された後に再び自励振動が発生しないようにすることなど種々の対処が可能である。なお、自励振動には、一時的に生じるものもあれば、システムの異常等により通常の制御を行う限り生じ続けるものもあるため、それに応じて適切な対処を行うことが望ましい。つまり、本項の態様によれば、自励振動を検出することによって、その自励振動に対処することができ、車両の乗り心地,操縦・安定性等が改善されるのである。したがって、電磁式のショックアブソーバを備えたサスペンションシステムの実用性が向上させられることになる。
本項の態様における「アクチュエータ」は、具体的な構成が特に限定されるものではなく、例えば、ねじ機構を採用したアクチュエータ等、既に公知の構造を有する各種の電磁式のアクチュエータを広く採用することが可能である。アクチュエータが発生させる力は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する力であるが、この力は、相対動作に対する抵抗力のみならず、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとを積極的に相対動作させる力、つまり推進力や、外部からの入力に対してそれら2つのユニットを相対動作させないようにする力、つまり維持力も含まれる。アクチュエータが有する「電磁モータ」は、その型式等は特に限定されず、ブラシレスDCモータを始めとして種々の型式のモータを採用可能であり、また、動作に関して言えば、回転モータであっても、リニアモータであってもよい。
なお、本項の態様は、アクチュエータの上記「ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方」が、上記支持スプリングを有する連結機構によって、「ばね上部とばね下部との一方」に浮動支持された態様である。したがって、明細書の簡略化のため、以下、そのばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方を、「浮動ユニット」と呼ぶ場合がある。
本項の態様における「連結機構」は、例えば、主として、ばね下部の振動のような比較的周波数が高い振動に対処することを目的として設けることが可能である。つまり、「液圧式のダンパ」は、例えば、ばね下部の振動のばね上部への伝達、あるいは、ばね下部の振動の抑制等に適した減衰係数を有するように構成することが可能である。特に、ばね下共振周波数およびそれの近傍の周波数の振動に対処するためのダンパとして機能させることにより、車両の乗り心地や操縦・安定性が良好なものとなる。
本項の態様における「制御装置」は、定められた制御を実行すべく目標作用力を決定し、その目標作用力をばね上部とばね下部とに作用させるべく、ショックアブソーバが有するアクチュエータ力を制御するような構成とすることができる。その制御としては、振動減衰を目的とした制御、具体的には、後に詳しく説明するばね上部の振動に対する減衰力を発生させる、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御等である。また、その振動減衰制御のみならず、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するためのロール抑制制御,車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するためのピッチ抑制制御や、ばね上部とばね下部との距離を調整する制御、つまり、いわゆる車高調整制御等を並行して実行するように構成してもよい。なお、そのように複数の制御を並行して実行するような場合には、例えば、それら複数の制御の各々においてばね上部とばね下部とに作用させるべき作用力の成分の和を目標作用力とし、その目標作用力を作用させるべく、アクチュエータ力を制御するように構成すればよい。
(2)前記自励振動検出部が、
前記前輪側の振動部と前記後輪側の振動部との一方の振動強度が、前記前輪側の振動部と前記後輪側の振動部との他方の振動強度より大きくなった場合に、その前輪側の振動部と後輪側の振動部との一方に自励振動が生じていると判定するように構成された(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、自励振動の検出方法を具体化した態様である。本項の態様は、例えば、前輪側の振動部と後輪側の振動部との一方の振動強度が、それらの他方に対して、設定された閾値以上に大きくなった場合や、設定された倍数以上となった場合に、それらの一方に自励振動が生じていると判定する態様とすることができる。
(3)前記自励振動検出部が、
ばね上部,ばね下部,前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方のうちの少なくとも1つのものの各々を前記振動部として、その各々の自励振動を検出するように構成された(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、振動部を明確化した態様であり、自励振動検出部は、ばね上部,ばね下部,浮動ユニットとのうちの1つのものの自励振動を検出するものであってもよく、それら全てのものの自励振動を検出するものであってもよい。
(4)前記自励振動検出部が、前記前輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度と、前記後輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度とに基づいて、前記前輪側の振動部と前記後輪側の振動部とのいずれか一方に生じる自励振動を検出するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
振動部の共振現象を生じる周波数およびその近傍の周波数の振動は、特に、車両の乗り心地や操縦・安定性への影響が大きい。本項の態様によれば、自励振動により振動部の振動の共振周波数域の成分の強度が大きくなっていることを検出することができるため、その共振現象を増幅させている自励振動に対処することにより、車両の乗り心地や操縦・安定性を効果的に改善することができる。
(5)前記自励振動検出部が、前記前輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度を、前記前輪側のばね上部の動作についての加速度に基づいて推定するとともに、前記後輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度を、前記後輪側のばね上部の動作についての加速度に基づいて推定するように構成された(4)項に記載の車両用サスペンションシステム。
浮動ユニットの振動やばね下部の振動は、ばね上部に伝達され得ることに鑑みて、本項の態様は、ばね上部の動作についての加速度に基づいて、ばね上部の振動の強度だけでなく、浮動ユニットの振動の共振周波数についての成分の強度,ばね下部の振動の共振周波数についての成分の強度を取得して、浮動ユニットやばね下部の振動の強度をも推定する態様である。具体的には、連続的に検出されたばね上部の加速度を、フィルタ処理,ラプラス変換等を行うことにより、振動部の振動の共振周波数についての成分の強度を、取得あるいは推定するような態様とすることができる。
(6)前記自励振動検出部が、運転者によって操作されるステアリング操作部材の操作量が設定閾値以下であることを条件として、前記前輪側の振動部と前記後輪側の振動部とのいずれか一方に生じる自励振動の検出を行うように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様は、前輪と後輪とがほぼ同じ路面を通過する場合にのみ自励振動の検出を行う態様であり、本項の態様によれば、自励振動の検出を正確に行うことが可能である。
(7)前記制御装置が、
前記アクチュエータが発生させるべき力に関する制御目標値を、前記目標作用力と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方がもつ慣性力とに基づき、そのアクチュエータが発生させる力が前記連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達される際の伝達特性に従って決定する制御目標値決定部を有し、
その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて、前記アクチュエータが発生させる力を制御するように構成された(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
アクチュエータ力は、連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達されることになるため、アクチュエータ力の指令発生時点から、その力がばね上部とばね下部とに実際に作用するまでには、時間的なずれが生じる。つまり、アクチュエータの制御における応答性が低下することになる。本項の態様によれば、そのアクチュエータの制御の応答性を補償して、ばね上部とばね下部とに適切なアクチュエータ力を作用させることができる。ただし、本項の態様においては、アクチュエータの制御の応答性を向上させたことにより、例えば、入力の振幅に対して出力の振幅が増減すること等が生じ、制御の安定性は低下することになる。そのため、先に述べた、必要な作用力と実際の作用力との間の差異がより顕著なものとなる可能性が高い。したがって、本項の態様においては、アクチュエータの制御の応答性を補償しない場合に比較して自励振動が生じ易くなっているため、自励振動検出部による自励振動の検出が、特に有効である。
本項に記載の「伝達特性」に基づけば、アクチュエータ力と実際の作用力との関係が分かることになる。つまり、そのアクチュエータ力と実際の作用力との関係を考慮すれば、実際の作用力が目標作用力となるように、アクチュエータに発生させるべき力を決定することが可能である。
また、本項に記載の「慣性力」に基づけば、例えば、ばね上部とばね下部との一方は常に変位しているが、そのばね上部とばね下部との一方の変位による影響を考慮することができる。例えば、ばね上部とばね下部との一方の変位に伴って浮動ユニットが変位していると考え、本項に記載の「慣性力」を、ばね上部とばね下部との一方の上下方向の加速度に応じた大きさの力と考えることができる。また、慣性力は、浮動ユニットの実際の質量に応じた大きさの慣性力のみを意味するわけではない。例えば、アクチュエータが、回転型モータの回転動作と、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とを相互に変換するねじ機構を含んで構成される場合に、そのアクチュエータの構成要素のうち2つのユニットの相対動作に伴って回転する部分の慣性モーメントを慣性質量に換算して、その慣性質量に応じた大きさの力も慣性力の一部とみなし、上記慣性力が決定されてもよいのである。つまり、本項の態様は、いわゆる等価慣性質量を用いて、慣性力が決定されてもよいのである。
ただし、上記の慣性質量を考慮して、慣性力を大きくとればとるほど、上述したアクチュエータの制御の安定性は低下することになる。そのため、適当なアクチュエータの制御の応答性と安定性との両者が得られるように、例えば、上記ばね上部とばね下部との一方の加速度と等価慣性質量との積に、さらに、適当な大きさに設定された制御ゲイン(1より小さな値)を乗じて上記慣性力を決定し、その慣性力に基づいて制御目標値を決定する構成とすることが望ましい。
(8)前記伝達特性が、
前記アクチュエータが発生させる力が入力された場合に前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の前記ばね上部とばね下部との一方に対する変位量が出力される第1伝達関数と、その変位量が入力された場合にばね上部とばね下部との間に実際に作用する力である実作用力が出力される第2伝達関数との積とされた関数の逆数関数である合成伝達関数として規定されており、
前記制御目標値決定部が、その合成伝達関数に前記目標作用力を入力して得られる出力値と、前記慣性力とに基づいて、前記制御目標値を決定するように構成された(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載に態様は、伝達特性を具体化した態様である。本項に記載の「合成伝達関数」は、実作用力が入力された場合にアクチュエータ力が出力される伝達関数である。つまり、その合成伝達関数に目標作用力を入力すれば、アクチュエータが発生させるべき力が出力されることになる。ただし、その合成伝達関数から出力されたアクチュエータ力についての出力値は、ばね上部とばね下部との一方の変位による影響を考慮していないため、その合成伝達関数からの出力値を、慣性力に基づいて補正するような態様とすることができる。具体的には、慣性力の働く方向を考慮して、その慣性力を、合成伝達関数からの出力値に足す、あるいは、引くことで、目標となるアクチュエータ力を決定するような態様とすることが可能である。
また、合成伝達関数は、例えば、入力のラプラス変換に対する出力のラプラス変換の比で定義されるものであってもよく、あるいは、離散群上のラプラス変換と説明できるいわゆるz変換を用い、入力のz変換に対する出力のz変換の比で定義されるものであってもよい。本項に記載の「制御目標値決定部」は、それにおける合成伝達関数の演算を実行する部分の構成が特に限定されず、例えば、入力値に対して出力値を演算するための回路等の演算ユニットを含んで構成されるものであってもよく、その他の制御にも用いられるような汎用性のあるコンピュータ内に入力値に対して出力値を演算するためのプログラムが記憶され、そのプログラムの処理を実行する部分を含んで構成されるものであってもよい。
(9)前記制御装置が、
ばね上部の振動を減衰するために、ばね上部の動作速度に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対ばね上振動作用力決定部を有する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(10)前記制御装置が、
ばね下部の振動を減衰するために、ばね下部の動作速度に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対ばね下振動作用力決定部を有する(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、通常時に行われるショックアブソーバの基本的な制御に限定を加えた態様であり、振動減衰を目的とした制御を実行可能とされた態様である。2つの態様のうち前者の態様は、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく制御を実行可能とされた態様であり、対ばね上振動作用力決定部は、具体的には、ばね上部の動作速度、つまり、ばね上絶対速度に、実現させようとするフックダンパの減衰係数である制御ゲインを乗じた力を、目標作用力の一成分として決定するように構成すればよい。また、後者の態様は、擬似的なグランドフックダンパ理論に基づいた制御を実行可能とされた態様であり、対ばね下振動作用力決定部は、対ばね上振動作用力決定部と同様に、ばね下部の動作速度(ばね下絶対速度)に制御ゲイン(減衰係数)を乗じた力を、目標作用力の一成分として決定するように構成すればよい。
(11)前記制御装置が、
前記自励振動検出部によって前記前輪側の振動部と前記後輪側の振動部との一方に自励振動が生じていることが検出された場合に、その前輪側の振動部と後輪側の振動部との一方に対応する前記ショックアブソーバが有する前記アクチュエータが発生させる力を制御して、その自励振動を抑制するために設けられた自励振動抑制部を有する(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、自励振動検出部の検出結果に基づいて、自励振動を抑制する制御を実行可能に構成された態様である。本項の態様は、生じた自励振動を減衰させることや、一度自励振動が検出された後に再び自励振動が発生しないようにすることを目的として、後に詳しく説明する制御を始めとする種々の制御を実行可能に構成することが可能である。
(12)前記自励振動抑制部が、
ばね上部,ばね下部,前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方のうちの少なくとも1つのものの各々を前記振動部として、その各々に生じる自励振動を抑制するように構成された(11)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、例えば、自励振動検出部において検出の対象となっているばね上部,ばね下部,浮動ユニットとのうちの少なくとも1つのものの自励振動を抑制する制御を実行可能に構成されることが望ましい。
(13)前記制御装置が、
ばね上部の振動を減衰するために、ばね上部の動作速度に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対ばね上振動作用力決定部を有し、
前記自励振動検出部が、前記振動部としてのばね上部の自励振動を検出するように構成され、
前記自励振動抑制部が、ばね上部の自励振動が検出された場合に、前記対ばね上振動作用力決定部に代わって、ばね上部の振動を減衰するための前記目標作用力の一成分を、その対ばね上振動作用力決定部によって決定される前記目標作用力の一成分に比較して大きな値に決定するように構成された(11)項または(12)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、少なくともばね上部の自励振動を検出するように構成された態様において、ばね上部の自励振動を抑制するための制御を具体化した態様である。平たく言えば、自励振動によって振動の強度が高くなっていると推定されるばね上部の振動を減衰するために、通常の制御に比較して、減衰力を大きくする態様である。より具体的には、例えば、対ばね上振動作用力決定部が、目標作用力の一成分を、ばね上絶対速度に制御ゲインを乗じた大きさとするように構成されている場合、自励振動抑制部は、その対ばね上振動作用力決定部における制御ゲインより大きな制御ゲインを用いて、ばね上部の振動を減衰させるための目標作用力の一成分を決定するような構成とすることができる。
(14)前記制御装置が、
ばね下部の振動を減衰するために、ばね下部の動作速度に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対ばね下振動作用力決定部を有し、
前記自励振動検出部が、前記振動部としてのばね下部の自励振動を検出するように構成され、
前記自励振動抑制部が、ばね下部の自励振動が検出された場合に、前記対ばね下振動作用力決定部に代わって、ばね下部の振動を減衰するための前記目標作用力の一成分を、その対ばね下振動作用力決定部によって決定される前記目標作用力の一成分に比較して大きな値に決定するように構成された(11)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、少なくともばね下部の自励振動を検出するように構成された態様において、ばね下部の自励振動を抑制するための制御を具体化した態様であり、通常の制御に比較して、ばね下部の振動に対する減衰力を大きくする態様である。
(15)前記自励振動検出部が、前記振動部としての前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動を検出するように構成され、
前記自励振動抑制部が、前記振動部としての前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に生じる自励振動を抑制するように構成された(11)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、少なくとも浮動ユニットの自励振動を検出して、その浮動ユニットの自励振動を抑制するように構成された態様である。浮動ユニットは、慣性質量を有することと、連結機構が有する支持スプリングによって弾性的に浮動支持されていることから、浮動ユニットが連結されたばね上部とばね下部との一方に対して振動する。また、浮動ユニットの振動は、ばね上部とばね下部との他方に対する振動、つまり、ばね上部とばね下部との他方に連結されたばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの他方に対する振動とも考えることができる。先にも述べたように、浮動ユニットの自励振動が、ばね上部やばね下部に伝達されて、車両の乗り心地や操縦・安定性を悪化させる一因となるため、本項の態様によれば、その浮動ユニットの自励振動を検出,抑制して、車両の乗り心地や操縦・安定性を改善できる。
(16)前記自励振動抑制部が、
前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の振動を減衰するために、(a)前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作速度と(b)前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対動作速度との一方に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対相対振動作用力決定部を有する(15)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、浮動ユニットの自励振動を抑制するための制御を具体化した態様であり、浮動ユニットの自励振動の減衰を図った態様である。本項に記載の「対相対振動作用力決定部」は、アクチュエータの2つのユニットの相対振動、もしくは、浮動ユニットとその浮動ユニットが連結されたばね上部とばね下部との一方との相対振動を減衰させることで、浮動ユニットの自励振動を減衰するための目標作用力の一成分を決定するものである。つまり、アクチュエータの2つのユニットの間、もしくは、浮動ユニットとばね上部とばね下部との一方との間に、適切な減衰係数を有するダンパを配設した理論モデルに従って、目標作用力を決定すればよい。詳しく言えば、そのダンパが発生させる減衰力をアクチュエータが発生させるように、アクチュエータ力を制御すればよいのである。具体的には、アクチュエータの2つのユニットの相対動作速度、もしくは、浮動ユニットとばね上部とばね下部との一方との相対動作速度に、上記ダンパの減衰係数に相当する制御ゲインを乗じた力を発生させるべく、アクチュエータ力を制御するように構成することができる。
(17)前記制御装置が、
前記アクチュエータが発生させるべき力に関する制御目標値を、前記目標作用力と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方がもつ慣性力とに基づき、そのアクチュエータが発生させる力が前記連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達される際の伝達特性に従って決定する制御目標値決定部を有し、その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて、前記アクチュエータが発生させる力を制御するように構成され、
前記伝達特性が、前記連結機構が有するダンパの減衰係数を用いた伝達関数として規定されており、
前記自励振動抑制部が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記制御目標値決定部に代わって、前記ダンパの減衰係数が前記伝達関数における値より小さな値となるもう1つの伝達関数に従って、前記目標作用力と前記慣性力とに基づき制御目標値を決定するように構成された(15)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、先に述べたアクチュエータの制御の応答性を補償する態様において、浮動ユニットの自励振動が生じた場合に対処する一態様である。浮動ユニットに自励振動が生じる要因としては、例えば、連結機構が有するダンパの減衰性能が低下していることが考えられる。詳しく言えば、実際のダンパの減衰係数と、伝達特性を規定する関数に用いられているダンパの減衰係数との差異によって、伝達特性を規定する関数を利用しても、適切な制御目標値とならず、ばね上部とばね下部とに作用させるべき作用力と、実際の作用力との間に差異が生じ、自励振動が生じると考えられる。したがって、本項の態様によれば、ダンパの減衰性能が低下しているような場合に、自励振動の発生を抑えることが可能である。
(18)前記制御装置が、
前記アクチュエータが発生させるべき力に関する制御目標値を、前記目標作用力と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方がもつ慣性力とに基づき、そのアクチュエータが発生させる力が前記連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達される際の伝達特性に従って決定する制御目標値決定部を有し、その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて、前記アクチュエータが発生させる力を制御するように構成され、
前記制御目標値決定部が、前記慣性力を、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の質量と、前記ばね上部とばね下部との一方の上下方向の加速度と、当該慣性力の決定における制御ゲインである慣性力対応ゲインとの積に相当する大きさに決定するように構成され、
前記自励振動抑制部が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記制御目標値決定部に代わって、その制御目標値決定部に用いられる慣性力対応ゲインの値より小さな値を用いて決定される慣性力と前記目標作用力とに基づき、前記伝達特性に従って制御目標値を決定するように構成された(15)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、先に述べたアクチュエータの制御の応答性を補償する態様において、浮動ユニットの自励振動が生じた場合に対処する一態様であり、浮動ユニットの自励振動が検出された場合には、アクチュエータの制御を、アクチュエータの制御の応答性と安定性とのうち安定性を重視した制御に変更する態様である。前述したように、慣性力を大きくとればとるほど、アクチュエータの制御の安定性が低下することに鑑み、本項の態様は、慣性力の決定に用いられる制御ゲインを小さくするように構成される。本項の態様によれば、ばね上部とばね下部とに作用させるべき作用力と実際に作用する作用力との間の差異を、通常の慣性力対応ゲインである場合に比較して小さくできるため、浮動ユニットの自励振動の発生を抑えることが可能となる。
(19)前記制御装置が、
前記アクチュエータが発生させるべき力に関する制御目標値を、前記目標作用力と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方がもつ慣性力とに基づき、そのアクチュエータが発生させる力が前記連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達される際の伝達特性に従って決定する制御目標値決定部を有し、その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて、前記アクチュエータが発生させる力を制御するように構成され、
前記自励振動抑制部が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記制御目標値決定部に代わって、前記アクチュエータが発生させるべき力と前記目標作用力とが等しくなるように制御目標値を決定するように構成された(15)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、先に述べたアクチュエータの制御の応答性を補償する態様において、浮動ユニットの自励振動が生じた場合に対処する一態様であり、浮動ユニットの自励振動が検出された場合には、アクチュエータの制御の応答性を補償せずに、安定性に特化させたアクチュエータの制御を行う態様である。本項の態様は、平たく言えば、通常の制御において決定される目標作用力を、そのまま、アクチュエータに発生させる態様である。アクチュエータの制御の応答性を補償しなければ、ばね上部とばね下部とに作用させるべき作用力と実際に作用する作用力との間の差異は、応答性を補償する場合に比較して小さくなると考えられるため、本項の態様によれば、浮動ユニットの自励振動の発生を抑えることが可能となる。
(20)前記連結機構が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方としての前記ばね下部側ユニットと、前記ばね上部とばね下部との一方としてのばね下部とを連結するものである(1)項ないし(19)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ばね下部とばね下部側ユニットとの間に連結機構を配置したものであり、本項の態様によれば、ばね下部から入力されてアクチュエータに伝達される衝撃や振動を効果的に吸収することができ、アクチュエータの保護、特に、電磁モータの保護という観点において有利なサスペンションシステムが実現する。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明における技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
≪第1実施例≫
<サスペンションシステムの構成>
図1に、請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
スプリング・アブソーバAssy20は、図2に示すように、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設されている。スプリング・アブソーバAssy20は、大きくは、電磁式ショックアブソーバの主体となるアクチュエータ30と、ショックアブソーバの構成要素であってアクチュエータ30とロアアーム22とを連結するための連結機構32と、サスペンションスプリングとしてのエアスプリング34とに区分することができ、それらを構成要素として含んで構成されており、それらが一体化されたものとなっている。
アクチュエータ30は、ねじ溝が形成された雄ねじ部としてのねじロッド42と、ベアリングボールを保持してねじロッド42と螺合する雌ねじ部としてのナット44とを含んで構成されるボールねじ機構と、回転型の電磁モータ46(以下、単に「モータ46」という場合がある)と、そのモータ46を収容するケーシング48とを備えている。そのケーシング48が、ねじロッド42を回転可能に保持するとともに、外周部においてマウント部24に連結されている。モータ46は、中空とされたモータ軸50を有しており、そのモータ軸50には、それの内側を貫通して上端部においてねじロッド42が固定されている。つまり、モータ46は、ねじロッド42に回転力を付与するものとなっている。
また、アクチュエータ30は、上記ねじロッド42を挿通させた状態で上端部がケーシング48に固定されたアウタチューブ60と、そのアウタチューブ60に嵌め入れられてアウタチューブ60の下端部から下方に突出する段付状のインナチューブ62とを含んで構成されている。インナチューブ62の上端部は径が大きくされており、その上端部の内側には、上記ナット44が、ねじロッド42と螺合させられた状態で保持されている。アウタチューブ60には、その内壁面にアクチュエータ30の軸線の延びる方向(以下、「軸線方向」という場合がある)に延びるようにして1対のガイド溝64が設けられている。それらのガイド溝64の各々には、インナチューブ62の上端部に付設された1対のキー66の各々が嵌まるようにされており、それらガイド溝64およびキー66によって、アウタチューブ60とインナチューブ62とが、相対回転不能な状態での軸線方向の相対移動が可能とされている。そして、インナチューブ62は、それの下端部において連結機構32に連結される。
連結機構32は、液圧式のダンパ70を有している。そのダンパ70は、詳しい構造は省略するが、ツインチューブ式の液圧式ショックアブソーバに類似する構造のものである。そのダンパ70は、作動液を収容するハウジング72と、そのハウジング72にそれの内部において液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン74と、そのピストン74に下端部が連結されてハウジング72の上方から延び出すピストンロッド76とを含んで構成されている。ハウジング72は、それの下端部に設けられたブシュ78を介してロアアーム22に連結され、ピストンロッド76が、ハウジング72の上方から延び出した上端部において、インナチューブ62の下端部に連結される構造とされている。そのような構造により、インナチューブ62は、ダンパ70を介して、ロアアーム22に連結されているのである。
ダンパ70のハウジング72には、それの外周部に環状の下部リテーナ90が固定されて設けられている。その下部リテーナ90には、インナチューブ62,アウタチューブ60の下部およびダンパ70の上部を収容するカーバーチューブ92が、それの下端部において固定されている。また、インナチューブ62とピストンロッド76との連結部には浮動部材94が固定されている。その浮動部材94は、それと下部リテーナ90との間に配設された圧縮コイルスプリング96と、浮動部材94とカバーチューブ92の内部に形成された環状の突出部98(上部リテーナとして機能する)との間に配設された圧縮コイルスプリング100とによって挟持されている。
エアスプリング34は、マウント部24に固定されたチャンバシェル120と、エアピストン筒として機能するカバーチューブ92と、それらを接続するダイヤフラム124とを含んで構成されている。チャンバシェル120は、それの蓋部126が、防振ゴムを有するスプリングサポート128を介してアクチュエータ30のケーシング48に連結されている。また、蓋部126は、防振ゴムを有するアッパサポート130を介してマウント部24に連結されている。ダイヤフラム124は、一端部がチャンバシェル120の下端部に固定され、他端部がカバーチューブ92の上端部に固定されており、それらチャンバシェル120とカバーチューブ92とダイヤフラム124とによって圧力室132が区画形成されている。その圧力室132には、流体としての圧縮エアが封入されている。このような構造から、エアスプリング34の圧縮エアの圧力によって、ロアアーム22とマウント部24、つまり、車輪と車体とを相互に弾性的に支持しているのである。
上述のような構造から、アクチュエータ30は、ねじロッド42,モータ46,ケーシング48,アウタチューブ60等を含んでマウント部24に連結されるばね上部側ユニットと、ナット44,インナチューブ62,浮動部材94等を含んでロアアーム22に連結されるばね下部側ユニットとを有する構造のものとなっている。そして、上記連結機構32は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方としてのばね下部側ユニットと、そのばね下部側ユニットと連結されるばね上部とばね下部との一方としてのばね下部との間に配設され、それらを連結するものとされており、2つの圧縮コイルスプリング96,100が、支持スプリングとして機能するものとなっている(以下、「支持スプリング96,100」という場合がある)。
アクチュエータ30は、ばね上部とばね下部とが接近離間する場合に、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが軸線方向に相対移動可能、つまり、ねじロッド42とナット44とが軸線方向に相対移動可能とされ、その相対移動に伴って、ねじロッド42がナット44に対して回転する。それによって、モータ軸50も回転するようにされている。つまり、アクチュエータ30は、モータ46がねじロッド42に回転トルクを付与することで、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する力であるアクチュエータ力を発生させるようになっている。また、アクチュエータ30のばね下部側ユニットとロアアーム22とは、ダンパ70,圧縮コイルスプリング96,100を含んで構成される連結機構32によって連結されている。そのため、上記アクチュエータ力は、連結機構32を介して、ばね上部とばね下部とに作用することになる。そして、連結機構32が有するダンパ70は、ばね下部側ユニットとばね下部との相対動作に対する抵抗力、つまりその相対動作に対する減衰力を発生させるものとされているのである。
サスペンションシステム10は、図1に示すように、各スプリング・アブソーバAssy20が有するエアスプリング34に対して流体としてのエア(空気)を流入・流出させるための流体流入・流出装置、詳しく言えば、エアスプリング34の圧力室132に接続されて、その圧力室132にエアを供給し、圧力室132からエアを排出するエア給排装置160を備えている。詳しい説明は省略するが、本サスペンションシステム10は、エア給排装置160によって、各エアスプリング34の圧力室132内のエア量を調整することが可能とされており、エア量の調整によって、各エアスプリング34のばね長を変更し、各車輪12についてのばね上ばね下間距離を変化させることが可能とされている。具体的に言えば、圧力室132のエア量を増加させてばね上ばね下間距離を増大させ、エア量を減少させてばね上ばね下間距離を減少させることが可能とされている。つまり、本システム10は、いわゆる車高調整が可能とされているのである。
本サスペンションシステム10は、制御装置としてのサスペンション電子制御ユニット200(以下、「ECU200」という場合がある)によって、スプリング・アブソーバAssy20の作動、つまり、アクチュエータ30およびエアスプリング34の制御が行われる。サスペンションECU200は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたものである。そのサスペンションECU200には、エア給排装置160の駆動回路としてのドライバ202と、各アクチュエータ30が有するモータ46に対応して設けられて、そのモータ46を制御する駆動回路としてのインバータ204とが接続されている。サスペンションECU200は、ドライバ202を制御することによってエアスプリング34を制御し、4つのインバータ204を制御することによってアクチュエータ30が発生させるアクチュエータ力を制御する。それらドライバ202およびインバータ204は、コンバータ[CONV]206を介してバッテリ[BAT]208に接続されており、エア給排装置160が有する各制御弁,ポンプモータ等、および、各アクチュエータ30のモータ46には、そのコンバータ206とバッテリ208とを含んで構成される電源から電力が供給される。また、インバータ204は、起電力によってモータ46にて発電された電力を電源に回生可能な構造とされており、モータ46は、供給電流に依存したモータ力だけでなく、起電力に依拠したモータ力を発生可能となっている。そして、インバータ204は、電源からの供給電流であるか、起電力によって生じる発電電流であるかに拘わらず、モータ46を流れる電流、つまり、モータ46の通電電流を調整して、モータ力を制御する構造とされている。なお、通電電流は、各インバータ204がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって調整される。
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]220,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]222,各車輪12についてのばね上ばね下間距離を検出する4つのハイトセンサ[h]224,車高変更指示のために運転者によって操作される車高変更スイッチ[HSw]226,ステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ[δ]228,車体に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]230,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]232,各車輪12に対応する車体の各マウント部24の縦加速度(上下加速度)を検出する4つのばね上縦加速度センサ[Gzs]234,各車輪12の縦加速度を検出する4つのばね下縦加速度センサ[Gzg]236,アクセルスロットルの開度を検出するスロットルセンサ[Sr]238,ブレーキのマスタシリンダ圧を検出するブレーキ圧センサ[Br]240,各モータ46の回転角を検出する4つのレゾルバ[θ]242等が設けられており、それらはECU200のコンピュータに接続されている。ECU200は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、スプリング・アブソーバAssy20の作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、ECU200のコンピュータが備えるROMには、アクチュエータ30の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<サスペンションシステムの制御>
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ30のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行される。まず、上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御ごとの力の成分である振動減衰力成分,ロール抑制力成分,ピッチ抑制力成分を合計して、ばね上部とばね下部とに作用させるべき力である目標作用力が求められ、ばね上部とばね下部とに実際に作用する力が目標作用力となるように、目標アクチュエータ力が決定される。そして、アクチュエータ30がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、総合的に実行される。なお、以下の説明において、目標作用力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
i)振動減衰制御
振動減衰制御は、ばね上部の振動を減衰するためのばね上部振動減衰制御と、ばね下部の振動を減衰するためのばね下部振動減衰制御との両者を総合して行う制御であり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御と、擬似的なグランドフックダンパ理論に基づいた制御との両者を総合して行う制御である。具体的には、車体のマウント部24に設けられたばね上縦加速度センサ234によって検出されるばね上縦加速度から得られる車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上絶対速度Vsと、ロアアーム22に設けられたばね下縦加速度センサ236によって検出されるばね下縦加速度から得られる車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下絶対速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動減衰力成分fVが演算される。
V=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、ばね上部の動作速度に応じた減衰力を発生させるための制御ゲインであるばね上制振ゲインであり、Cgは、ばね下部の動作速度に応じた減衰力を発生させるための制御ゲインであるばね下制振ゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
ii)ロール抑制制御
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ30にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ30にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ232によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制力成分fRが、次式に従って決定される。
R=K3・Gy* (K3:ゲイン)
iii)ピッチ抑制制御
車体の制動時等の減速時において車体にノーズダイブが生じる場合には、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車体の加速時において車体にスクワットが生じる場合には、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合のばね上ばね下間距離の変動を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ230によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制力成分fPが、次式に従って決定される。
P=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ238によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ240によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
iv)目標作用力の決定
上述のようにして、目標作用力の振動減衰力成分fV,ロール抑制力成分fR,ピッチ抑制力成分fPが決定されると、それらに基づき、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき力である目標作用力fNが、次式に従って決定される。
N=fV+fR+fP
次いで、その目標作用力fNに基づいて、アクチュエータ30が発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力f*が決定される。本サスペンションシステム10は、アクチュエータ30に対して、圧縮コイルスプリング96,100およびダンパ70を有する連結機構32が直列的に配設されているため、アクチュエータ力が、ばね上部とばね下部との間に連結機構32を介して伝達されることになる。そこで、本システム10においては、アクチュエータ力が連結機構32を介してばね上部とばね下部とに伝達される際のスプリング・アブソーバAssy20の伝達特性に従って、目標アクチュエータ力f*が決定されるようになっている。
v)伝達特性
以下に、上記スプリング・アブソーバAssy20の伝達特性について詳しく説明する。図3は、スプリング・アブソーバAssy20をモデル化した図である。時間tをパラメータとするアクチュエータ力をfA(t)とし、ばね下部側ユニットのばね下部に対する変位量をx(t)とした場合において、ばね下部側ユニットに対する運動方程式は、次式によって表される。なお、変位x(t)は上方への変位を正としている。
m・d2x(t)/dt2+C・dx(t)/dt+k・x(t)=−fA(t) ・・・(1)
ここで、mはばね下部側ユニットの慣性質量、Cはダンパ70の減衰係数、kは2つの圧縮コイルスプリング96,100を1つのばねと仮定した場合のばね定数である。ちなみに、ばね下部側ユニットの慣性質量mは、ねじロッド42およびモータ46の回転部分等の回転体の換算質量、詳しく言えば、その回転体の慣性モーメントをばね下部側ユニットの上下動における慣性質量に換算した質量も含まれている。そして、(1)式を、ラプラス演算子であるsをパラメータとしてラプラス変換することで、次式が求まる。
X(s)=−1/(m・s2+C・s+k)・FA(s) ・・・(2)
なお、X(s),FA(s)は、それぞれx(t),fA(t)をラプラス変換した関数である。つまり、G1(s)=−1/(m・s2+C・s+k)が、アクチュエータ力が入力された場合にばね下部側ユニットのばね下部に対する変位量が出力される伝達関数である第1伝達関数である。
また、ばね下部側ユニットのばね下部に対する変位量x(t)に対して、ばね下部に実際に作用する力である実作用力をfr(t)とした場合において、ばね下部に対する運動方程式は、次式によって表される。
fr(t)=−C・dx(t)/dt−k・x(t) ・・・(3)
この(3)式を、ラプラス変換した式が次式である。
Fr(s)=−(C・s+k)・X(s) ・・・(4)
なお、Fr(s)は、fr(t)をラプラス変換した関数である。つまり、G2(s)=−(C・s+k)が、ばね下部側ユニットのばね下部に対する変位量が入力された場合に実作用力が出力される伝達関数である第2伝達関数である。そして、上記(4)式に(2)式を代入すれば、次式が得られる。
Fr(s)={(C・s+k)/(m・s2+C・s+k)}・FA(s) ・・・(5)
そして、実用作用力fr(t)が、目標作用力fNとなるように、アクチュエータ30に発生させるべきアクチュエータ力fA(t)を決定すればよいため、次式に従ってアクチュエータ力を算出すればよいことになる。
A(s)={(m・s2+C・s+k)/(C・s+k)}・Fr(s) ・・・(6)
vi)目標アクチュエータ力の決定
ただし、図3に示したモデルは、ばね下部が固定されたものであり、ばね下部に対するばね下部側ユニットの動作のみを考えたものである。実際には、スプリング・アブソーバAssy20は、車輪からの入力により常に変位しているため、そのばね下部の変位による影響を考慮することが望ましい。そこで、ばね下部の絶対変位をx1(t)とし、図4に示すような、ばね下部が変位しているスプリング・アブソーバAssy20のモデルを考える。このモデルに従えば、ばね下部側ユニットは、ばね下縦加速度dx1(t)/dtに応じた大きさの慣性力をもつと考えることができる。したがって、そのばね下部側ユニットのばね下縦加速度に応じた大きさの慣性力m・dx1(t)/dtを考慮して、目標アクチュエータ力f*(t)をラプラス変換したF*(s)は、次式で表される。
*(s)={(m・s2+C・s+k)/(C・s+k)}・FN(s)
−m・s2・X1(s) ・・・(7)
したがって、第1伝達関数と第2伝達関数との積とされた関数の逆数関数として設定された伝達関数である合成伝達関数G(s)=(m・s2+C・s+k)/(C・s+k)に目標作用力を入力した場合のアクチュエータ力についての出力値と、ばね下部の変位によってばね下部側ユニットがもつ慣性力とに基づいて、目標アクチュエータ力が決定されるのである。
上述したラプラス変換は、連続的な値、つまり、アナログデータを対象としたものである。しかし、合成伝達関数G(s)に入力される目標作用力fNは、後に説明するように、プログラムの実行毎に決定されるものであり、プログラム実行間隔Ts毎の離散的な値である。そこで、上記の合成伝達関数G(s)を、離散群上のラプラス変換と説明できるいわゆるz変換を用いて離散化した伝達関数G(z)により演算されるようになっている。
そのz変換について、その一例を簡単に説明する。ある時刻tnにおけるデータをa,サンプリング間隔をTsとし、離散データの順番を表す演算子zを用いて、an+1=z・anと定義する。ここで、da(tn)/dtを、離散的なデータを用いて近似すれば、次式のようになる。
da(tn)/dt=(an−an-1)/Ts ・・・(8)
上記の式をan+1=z・anを用いて変形すれば、次式が得られる。
da(tn)/dt={(1−z-1)/Ts}・an ・・・(9)
また、da(tn)/dtを、ラプラス変換すると、s・A(s)となる。つまり、前記(7)式において、ラプラス演算子sを(1−z-1)/Tsで置き換えるとともに、F*(s),FN(s)をそれぞれ離散データであるf*,fNに変換することで、次式が得られるのである。
*=G(z)・fN−KI・m・Gzg ・・・(10)
なお、s2・X1(s)は、ばね下縦加速度であるから、ばね下縦加速度センサ236によって検出されたばね下縦加速度Gzgに置き換えている。また、KIは、慣性力対応ゲインであり、適当なアクチュエータ30の制御の応答性と安定性との両者が得られるように、1以下の値に設定された制御ゲインである。ちなみに、G(z)は、今回の出力値を、今回の入力値と、過去の入力値および出力値を用いて、演算されるようになっている。以上のように、上記(10)式に従った演算が行われ、目標アクチュエータ力f*が決定されるのである。
上述のように決定された目標アクチュエータ力f*を発生させるようにアクチュエータ30が制御される。目標アクチュエータ力f*を発生させるためのモータ46の作動制御は、インバータ204によって行われる。詳しく言えば、上述のように決定された目標アクチュエータ力f*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ204に送信される。インバータ204は、その適切なデューティ比の下、インバータ204の備えるスイッチング素子の開閉が制御されて、目標アクチュエータ力f*を発生させるようにモータ46を駆動するのである。
vii)車高変更制御
ちなみに、本サスペンションシステム10では、エアスプリング34によって、路面の起伏が大きい道路の走行への対処等を目的として運転者の意思に基づいて車両の車高を変更する制御(以下、「車高変更制御」という場合がある)も実行される。その車高変更制御について簡単に説明する。車高変更制御は、運転者の意図に基づく車高変更スイッチ166の操作によって実現すべき設定車高である目標設定車高が変更された場合において、実行される。その目標設定車高の各々に応じて、各車輪12についての目標となるばね上ばね下間距離が設定されており、ハイトセンサ224の検出値に基づいて、それぞれの車輪12についてのばね上ばね下間距離が目標距離になるように、エア給排装置140の作動が制御され、各車輪12のばね上ばね下間距離が目標設定車高に応じた距離に変更されるのである。さらに、この車高変更制御では、例えば、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等による車高の変動に対処することを目的とした、いわゆるオートレベリングと呼ばれる制御も行われる。
<自励振動へ対処するためのアクチュエータの制御>
まず、車両の右前輪12FR側,左前輪12FL側,右後輪12RR側,左後輪12RL側の各々において、車両の走行の際に振動するその車両の一部分を振動部と定義する。つまり、本サスペンションシステム10を搭載する車両においては、4つの車輪12の各々におけるばね上部,ばね下部,連結機構32が有する支持スプリング96,100によって浮動支持される浮動ユニットとしてのばね下部側ユニットが、振動部に相当する。そして、例えば、あるショックアブソーバにおいて、前述の目標作用力fNを求める際に用いるセンサの異常や、連結機構32が有するダンパ70の減衰性能の低下等が生じた場合を考える。そのような場合には、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき作用力と、その作用力をばね上部とばね下部との間に作用させるべくアクチュエータ30が発生させたアクチュエータ力によってばね上部とばね下部との間に実際に作用する作用力との間に差異が生じることになる。その作用力の差異によって、つまり、アクチュエータ30が発生させるアクチュエータ力に起因して、車両の振動部には振動(以下、「自励振動」と呼ぶ場合がある)が生じる虞がある。
上記自励振動は、車両の乗り心地,車両の操縦・安定性を悪化させる一因となるため、本サスペンションシステム10では、車両の振動部であるばね上部,ばね下部,浮動ユニットであるばね下部側ユニットの各々において、自励振動が生じているか否かを検出するとともに、自励振動が検出された場合にその自励振動を抑制すべくアクチュエータ30を制御する機能を有している。その自励振動を検出する処理(以下、「自励振動検出処理」という場合がある)、および、自励振動を抑制するためのアクチュエータ30の制御(以下、「自励振動抑制制御」という場合がある)は、ECU200によって実行される。
i)自励振動検出処理
左右において同じ側に位置する前輪と後輪とは、基本的に同じ路面を通過することになるため、通常は、前輪側の振動部と後輪側の振動部とは、同様に振動して、それらの振動強度は、互いに同じ程度となるはずである。したがって、前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度との間に差異が生じた場合には、路面の凹凸によるばね下部からの入力とは別の力、つまり、アクチュエータ30が発生させるアクチュエータ力に起因して、前輪の振動部と後輪の振動部とのいずれか一方に振動が生じていると考えられる。そのことに鑑み、自励振動検出処理では、車両の右前輪12FR側の振動部の振動強度と、右後輪12RR側の振動部の振動強度とに基づいて、右前輪12FR側の振動部と右後輪12RR側の振動部とのいずれか一方に自励振動が生じているか否かが検出されるとともに、車両の左前輪12FL側の振動部の振動強度と、左後輪12RL側の振動部の振動強度とに基づいて、左前輪12FL側の振動部と左後輪12RL側の振動部とのいずれか一方に自励振動が生じているか否かが検出されるようになっている。また、自励振動検出処理は、車両の振動部であるばね上部,ばね下部,浮動ユニットの各々に対して、行われるようになっている。
振動部の振動強度は、各車輪12側ごとに、対応するばね上縦加速度センサ234により検出されたばね上縦加速度Gzsに基づいて、認定されるようになっている。詳しく言えば、各車輪12側ごとに、ばね上部,ばね下部,浮動ユニットの各々の振動強度が、それらの各々の共振周波数についてのばね上縦加速度の成分に基づいて認定される。具体的に言えば、まず、現時点から遡った設定時間内におけるばね上縦加速度Gzsのデータに基づいて、s=jω(jは複素数,ωは角周波数である。)をパラメータとするラプラス変換(この場合のラプラス変換は、フーリエ変換であるといえる。)が行われる。つまり、図5に示すような縦軸が振幅、横軸が周波数とされたデータが得られることになる。そして、ばね上部の共振周波数frU(例えば、1Hz)についての成分の振幅値に基づいてばね上部振動強度IUが、浮動ユニットの共振周波数frM(例えば、6Hz)についての成分の振幅値に基づいて浮動ユニット振動強度IMが、ばね下部の共振周波数frL(例えば、10Hz)についての成分の振幅値に基づいてばね下部振動強度ILが、それぞれ認定されるのである。
上記のように各振動部の振動強度が認定された後、自励振動検出処理では、左右において同じ側に位置する前輪側のばね上部振動強度IU,浮動ユニット振動強度IM,ばね下部振動強度ILと、後輪側のばね上部振動強度IU,浮動ユニット振動強度IM,ばね下部振動強度ILとが、それぞれ比較される。そして、前輪側の振動部と後輪側の振動部との一方の振動強度が、それらの他方の振動強度の2倍以上の大きさとなった場合に、前輪側の振動部と後輪側の振動部との一方に、自励振動が生じているとされるようになっている。なお、自励振動検出処理は、自励振動の検出を正確に行うことに鑑み、操作角センサ228により検出されたステアリングホイールの操作角δが設定閾値δ0以下であることを条件として、つまり、車両がほぼ直進している状態で前輪と後輪とが同じ路面を通過する場合にのみ行われるようになっている。
ii)ばね上部の自励振動への対処
上述した自励振動検出処理によって、右前輪12FR側のばね上部と右後輪12RR側のばね上部とのいずれか一方と,左前輪12FL側のばね上部と左後輪12RL側のばね上部とのいずれか一方との少なくとも一方において、自励振動が生じていることが検出された場合を考える。その自励振動が検出された前輪側のばね上部と後輪側のばね上部との一方の振動の強度は、それらの他方の振動の強度に比較して高くなっているため、ばね上部振動減衰制御における減衰力より大きな減衰力を発生させてばね上部の自励振動を抑制すべく、ばね上制振ゲインCsを、ばね上部振動減衰制御における基準値Cs0から、その基準値より大きな値Cs'に変更して、振動減衰力成分fVを決定するようになっている。
iii)ばね下部の自励振動への対処
上述した自励振動検出処理によって、右前輪12FR側のばね下部と右後輪12RR側のばね下部とのいずれか一方と,左前輪12FL側のばね下部と左後輪12RL側のばね下部とのいずれか一方との少なくとも一方において、自励振動が生じていることが検出された場合を考える。その自励振動が検出された前輪側のばね下部と後輪側のばね下部との一方の振動の強度は、それらの他方の振動の強度に比較して高くなっているため、ばね上部の自励振動への対処と同様に、ばね下部振動減衰制御における減衰力より大きな減衰力を発生させてばね下部の自励振動を抑制すべく、ばね下制振ゲインCgを、ばね下部振動減衰制御における基準値Cg0から、その基準値より大きな値Cg'に変更して、振動減衰力成分fVを決定するようになっている。
iv)浮動ユニットの自励振動への対処
a)ダンパの減衰係数の低減
前述した自励振動検出処理によって、右前輪12FR側の浮動ユニットと右後輪12RR側の浮動ユニットとのいずれか一方と,左前輪12FL側の浮動ユニットと左後輪12RL側の浮動ユニットとのいずれか一方との少なくとも一方において、自励振動が生じていることが検出された場合を考える。浮動ユニットに生じる自励振動の要因としては、連結機構32が有するダンパ70の減衰性能の低下の可能性が高い。詳しく言えば、本サスペンションシステム10では、先に述べたように、合成伝達関数G(z)を利用して目標アクチュエータ力f*を決定するように構成されており、その合成伝達関数G(z)に用いられているダンパ70の減衰係数Cは設計上の値C0であるため、ダンパ70の減衰性能が低下した場合には、目標アクチュエータ力f*が適切な大きさとならず、浮動ユニットに自励振動が生じる要因となってしまうのである。そこで、浮動ユニットの自励振動が検出された場合には、まず、自励振動が検出された車輪12側に対応するアクチュエータ30において、合成伝達関数G(z)に用いられているダンパ70の減衰係数Cを、上記C0より小さな減衰係数C’に変更して、目標アクチュエータ力f*を決定し、その目標アクチュエータ力f*に基づいてアクチュエータ力が制御されるようになっている。
b)慣性力の低減
上述したようにダンパ70の減衰係数Cを低減しても、浮動ユニットの自励振動が検出される場合には、アクチュエータ30の制御の応答性を低下させて制御の安定性を向上させるようになっている。先に説明したように、通常は、アクチュエータ30の制御の応答性を補償すべく、目標アクチュエータ力f*は、目標作用力fNと浮動ユニットの慣性力KI・m・Gzgとに基づき、合成伝達関数G(z)を利用して決定するようにされている。その慣性力の決定における制御ゲインである慣性力対応ゲインKIを、通常時に用いられる値KI0より小さな値KI’に変更することにより慣性力を低減させて、目標アクチュエータ力f*を決定することで、制御の安定性を向上させるのである。そのことにより、作用させるべき作用力と実際に作用する作用力との間の差異を小さくできるため、自励振動の発生を抑えることが可能となる。
c)応答性の補償禁止
上述したように慣性力を低減しても、浮動ユニットの自励振動が検出される場合には、アクチュエータ30の制御の応答性を補償せず、制御の安定性を特化させるようになっている。具体的には、前述のように決定された目標作用力fNを、目標アクチュエータ力f*として、その目標アクチュエータ力f*に基づいてアクチュエータ力が制御されるようになっている。そのことにより、作用させるべき作用力と実際に作用する作用力との間の差異が、上述した慣性力を低減させることにも増して、小さくすることができるため、自励振動の発生をより抑えることが可能となる。
v)一時的な自励振動でない場合の対処
ばね上部,ばね下部,浮動ユニットの各々において、上述した制御を一定時間行って自励振動が収まった場合には、通常の制御に戻されるようになっている。ところが、例えば、目標作用力fNを求める際に使用する各種のセンサのいずれかに異常が発生したような場合には、通常の制御に戻しても、目標作用力fN自体が適切なものではないため、再び自励振動が生じることになる。したがって、本システム10においては、自励振動が一時的なものではない場合、4つのアクチュエータ30のモータ46の各相の通電端子間を短絡させる短絡制御が行われるようになっている。つまり、ばね上部,ばね下部,浮動ユニットの各々において、上述した制御を行っても、自励振動が収まらず設定時間t1以上経過した場合には、短絡制御が行われる。また、上述した制御を一定時間行って自励振動が収まった場合であっても、通常の制御に戻した後の設定時間t2内に再び自励振動が生じるような場合には、短絡制御が行われるようになっている。
<制御プログラム>
前述のようなアクチュエータ30の制御は、まず、イグニッションスイッチ220がON状態とされている間、図6にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムと、図7にフローチャートを示す自励振動対処処理プログラムとが、短い時間間隔Δt(例えば、数msec)をおいてECU200により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それら制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、アクチュエータ制御プログラムおよび自励振動対処処理プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ30の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ30(自励振動対処処理プログラムにおいては、右前輪12FR側のアクチュエータ30)に対してのプログラムによる処理について説明する。
i)アクチュエータ制御プログラム
アクチュエータ制御プログラムにおいては、通常は、ステップ2(以下、「S2」と略す、他のステップも同様である)〜S4において、先に説明したような手法で、振動減衰力成分fV,ロール抑制力成分fR,ピッチ抑制力成分fPが決定される。そして、S5において、それらの成分fV,fR,fPが合計されて、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき力である目標作用力fNが決定される。続いて、S7,8において、アクチュエータ30の制御の応答性を補償するための処理が行われる。詳しくは、S7において、ばね下部の変位によってばね下部側ユニットがもつことになる慣性力m・Gzgが演算される。次いで、S8において、目標作用力fNと慣性力m・Gzgとに基づき、先に説明した伝達関数G(s)=(m・s2+C・s+k)/(C・s+k)を利用して、目標アクチュエータ力f*(=fA−KI・m・Gzg)が決定される。次いで、S11において、その目標アクチュエータ力f*に基づいて、モータ46の制御を行うためのデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ204に送信される。この処理により、各アクチュエータ30のモータ46の作動が制御されることで、各アクチュエータ30は、必要とされるアクチュエータ力を発生させることになる。
ただし、アクチュエータ制御プログラムでは、後に説明する自励振動対処処理プログラムにおいて設定される種々のフラグによって、アクチュエータ30の制御が、上記の通常の制御から、別の制御に切り換えられるようになっている。まず、振動部に生じる自励振動が一時的なものであるか否かを表すフェールフラグFLfが用いられ、そのフラグ値は、一時的なものではない自励振動が生じた場合に0から1とされる。S1において、そのフェールフラグFLfのフラグ値が1であるか否かが判定され、フラグ値が1である場合には、S10以下において、短絡制御を実行すべく、インバータ204への制御信号が決定,送信される。
また、先に述べたように、浮動ユニットの自励振動を抑制するために、上記のアクチュエータ30の制御の応答性を補償する処理を禁止する制御を行う場合に、フラグ値が0から1とされる応答性補償禁止フラグFLpが用いられる。S6において、その応答性補償禁止フラグFLpのフラグ値が1であるか否かが判定され、フラグ値が1である場合には、S9において、S5において決定された目標作用力fNが、目標アクチュエータ力f*とされ、S11において、その目標アクチュエータ力f*に基づいて決定されたデューティ比に基づく指令がインバータ204に送信される。
ii)自励振動対処処理プログラム
自励振動対処処理プログラムにおいては、まず、S21において、右前輪12FR側と右後輪12RR側のばね上縦加速度が取得される。次いで、S22において、一定時間内における操作角センサ228により検出されたステアリングホイールの操作角δが、設定閾値δ0以下であるか否かが判定され、一定時間内の操作角δが設定閾値δ0以下である場合にのみ、S23以下の自励振動対処処理、つまり、自励振動を検出する処理、および、自励振動が検出された場合のその自励振動を抑制する処理が行われるようになっている。
自励振動対処処理では、まず、S23において、S21で取得された設定時間内の右前輪12FR側のばね上縦加速度と、右後輪12RR側のばね上縦加速度とが、それぞれラプラス変換され、先に述べたような手法で、右前輪12FR側と右後輪12RR側との各々に対応するばね上部振動強度IU_FR,IU_RR、ばね下部振動強度IL_FR,IL_RR、浮動ユニット振動強度IM_FR,IM_RRとが認定される。そして、S24においてばね上部の自励振動を対象とする処理が、S25においてばね下部の自励振動を対象とする処理が、S26において浮動ユニットの自励振動を対処とする処理が、それぞれ行われる。それらの処理は、それぞれ、図8にフローチャートを示すばね上部自励振動対処処理サブルーチン,図9にフローチャートを示すばね下部自励振動対処処理サブルーチン,図10にフローチャートを示す浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンが実行されることによって、行われる。
a)ばね上部(ばね下部)自励振動対処処理サブルーチン
ばね上部自励振動対処処理サブルーチンでは、ばね上部に自励振動が生じていない通常の状態においては、S32において、右前輪12FR側のばね上部振動強度IU_FRが、右後輪12RR側のばね上部振動強度IU_RRの2倍以上か否かにより、右前輪12FR側のばね上部に自励振動が生じているか否かが判定される。そして、通常の状態においては、2倍以上ではないと判定され、S33において、右前輪12FR側のばね上制振ゲインCsが、通常の設定値(初期値)Cs0とされる。また、S32において、2倍以上であると判定された場合には、S34,35において、ばね上制振ゲインCsが、通常の値Cs0からそのCs0より大きな値に設定されたCs’に変更されるとともに、ばね上部抑制制御フラグFLU1が、1とされる。つまり、アクチュエータ制御プログラムのS2において決定される振動減衰力成分fVのうち、ばね上部の振動を減衰するための成分が大きくされることになり、ばね上部の自励振動を減衰させるようになっているのである。
上述したばね上部の自励振動を減衰するための制御は、一定時間t1の間、継続して実行されるようになっている。本サブルーチンでは、まず、S31において、上記ばね上部抑制制御フラグFLU1が1か否かが判定され、上述したようにばね上部の自励振動が検出された場合、次のプログラム実行時には、S36以下が実行される。そして、S36において、タイムカウンタがカウントアップされる。このカウンタは、設定時間t1経過したか否かを判定するためのものであり、S37において、このカウンタのカウント値cUが、設定時間t1に相当するカウンタ閾値c1と比較される。カウント値cUがカウンタ閾値c1に達していない場合には、S38において、ばね上制振ゲインCsがCs’とされる。また、カウント値cUがカウンタ閾値c1に達した場合には、S39において、ばね上部に自励振動が生じているか否かの判定、つまり、ばね上部の自励振動が収束したか否かの判定が行われる。
上記制御の実行によって自励振動が収束した場合には、S42において、ばね上制振ゲインCsがCs0に戻されて、つまり、通常の制御に戻されて、ばね上部に生じた自励振動が一時的なものであるか否かが確認される。詳しく言えば、通常の制御に戻されてから、一定時間t2の間に、再び自励振動が生じない場合には、自励振動が一時的なものであると判定され、再び自励振動が生じた場合には、自励振動が一時的なものではないと判定される。具体的には、通常の制御に戻された後のプログラム実行時においても、S36におけるタイムカウンタのカウントアップと、S39における自励振動が生じているか否かの判定が行われる。そして、自励振動が検出されずに、カウント値cUが、設定時間t1+t2に相当するカウンタ閾値C2に達した場合(S41)には、S44において、各種のフラグのフラグ値、および、タイムカウンタがリセットされ、完全に通常の制御に戻されるようになっている。
なお、カウント値cUがカウンタ閾値c1に達した際に、自励振動が収束していないと判定された場合や、自励振動が収束した場合であっても再び自励振動が生じた場合には、S45において、先に説明したフェールフラグFLfのフラグ値が1とされ、アクチュエータ制御プログラムにおいて、アクチュエータ30の制御が短絡制御に切り換えられることになる。
ちなみに、ばね下部自励振動対処処理サブルーチンは、上記ばね上部自励振動対処処理サブルーチンと同様のものであり、右前輪12FR側のばね下部振動強度IL_FRを、右後輪12RR側のばね下部振動強度IL_RRと比較することによって、右前輪12FR側のばね下制振ゲインCgを、通常の設定値(初期値)Cg0と、そのCg0より大きな値に設定されたCg’との間で切り換えるようにされたものである。
b)浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチン
浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンは、上記ばね上部自励振動対処処理サブルーチンと類似するものであるため、簡単に説明する。本サブルーチンは、ばね上部自励振動対処処理サブルーチンのように自励振動を抑制するための制御(短絡制御を除く)が1つではなく、浮動ユニットの自励振動を抑制するための制御として3つの制御が用意されている。詳しくは、いずれも、先に述べたアクチュエータ30の制御の応答性を補償する処理に関して変更するものであり、最初に、前記合成伝達関数G(z)に用いられるダンパ70の減衰係数Cを低減する制御(S72〜75,図11のS81〜S89)が実行され、その制御で自励振動が完全に収束しない場合に、前記浮動ユニットの慣性力を低減する制御(S77,図12のS90〜S108)が実行され、その制御で完全に収束しない場合に、アクチュエータ30の制御の応答性の補償を禁止する制御(S79,図13のS110〜S128)が実行される。そして、それら3つの制御でも収束しない場合には、短絡制御(S130)が実行されるようになっている。
上記3つの制御は、ばね上部の自励振動を減衰するための制御と同様に、一定時間t1の間、継続して実行されるとともに、実行した制御によって自励振動が収束した場合には、通常の制御に戻して、浮動ユニットの自励振動が一時的なものであるか否かの判定が行われるようになっている。そして、タイムカウンタのカウント値cMがカウンタ閾値c1に達した際に自励振動が収束していないと判定された場合や、自励振動が収束した場合であっても再び自励振動が生じて自励振動が一時的なものでないと判定された場合には、上述した順で、次の制御に切り換えられるようになっているのである。また、浮動ユニットの自励振動が一時的なものである場合には、本サブルーチンに採用される各種フラグのフラグ値等がリセットされ、通常の制御に戻されることになる。
<制御装置の機能構成>
上述したようなアクチュエータ30の制御を実行するECU200は、それらの各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図14に示すように、ECU200は、上記アクチュエータ制御プログラムにおけるS2〜S5に従った処理を実行して、目標作用力fNを決定する機能部、つまり、目標作用力決定部300を有している。そして、この目標作用力決定部300は、振動減衰力成分fVを決定する機能部として振動減衰力決定部302を、ロール抑制力成分fRを決定する機能部としてロール抑制力決定部304を、ピッチ抑制力成分FPを決定する機能部としてピッチ抑制力決定部306を有している。さらに、その振動減衰制御部302は、ばね上部の振動を減衰するための目標作用力の一成分を決定する対ばね上振動作用力決定部308と、ばね下部の振動を減衰するための目標作用力の一成分を決定する対ばね下振動作用力決定部310とを有している。
また、ECU200は、アクチュエータ制御プログラムにおけるS7の処理を実行して、ばね下部の変位によってばね下部側ユニットがもつ慣性力を演算する慣性力演算部320を有している。さらに、ECU200は、目標作用力決定部300によって決定された目標作用力と慣性力演算部320によって演算された慣性力とに基づき、合成伝達関数G(s)を利用して、制御目標値である目標アクチュエータ力f*を決定する機能部として、制御目標値決定部322を有しており、その制御目標値決定部322は、S8の処理を実行する部分が相当する。
さらに、ECU200は、車両の3つの振動部の各々に自励振動が生じているか否かを検出する機能部として、自励振動検出部330を、その自励振動検出部330により振動部に自励振動が生じていることが検出された場合にその振動部の自励振動を抑制する機能部として、自励振動抑制部332を、それぞれ有している。その自励振動検出部330は、自励振動対処処理プログラムのS21,S23において認定された前輪側の振動部の振動の共振周波数成分の強度,後輪側の振動部の振動の共振周波数成分の強度に基づいて、S32,S39の処理を実行してばね上部の自励振動を検出する部分と、S52,S59の処理を実行してばね下部の自励振動を検出する部分と、S72,S84,S104,S124の処理を実行して浮動ユニットの自励振動を検出する部分が相当する。また、自励振動抑制部322は、S34,S38の処理によりばね上部の振動を減衰するための力を通常の制御より大きな値とすることでばね上部の自励振動を抑制する部分と、S54,S58の処理によりばね下部の振動を減衰するための力を通常の制御より大きな値とすることでばね下部の自励振動を抑制する部分と、S74,S83の処理によりダンパ70の減衰係数を通常の制御より低減させた合成伝達関数を利用して制御目標値を決定することで浮動ユニットの自励振動を抑制する部分と、S90,S103の処理により通常の制御より低減させた浮動ユニットの慣性力に基づき制御目標値を決定することで浮動ユニットの自励振動を抑制する部分と、S110,S123およびアクチュエータ制御プログラムのS6,S9の処理により目標作用力を制御目標値である目標アクチュエータ力とすることで浮動ユニットの自励振動を抑制する部分とを含んで構成されている。
以上のように、本サスペンションシステム10は、前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度とに基づいて、アクチュエータ力に起因する振動部の振動である自励振動を検出するように構成されるとともに、右前輪の振動部と右後輪の振動部とのいずれか一方,左前輪の振動部と左後輪の振動部とのいずれか一方の自励振動を検出した場合には、その自励振動を抑制するように構成されている。したがって、本システム10によれば、自励振動による車両の乗り心地,操縦・安定性等の悪化を防止することが可能である。
≪第2実施例≫
第1実施例のシステム10は、通常時の制御において、目標作用力と浮動ユニットの慣性力とに基づき、伝達特性に従って目標アクチュエータ力を決定し、アクチュエータ30の制御の応答性を補償するように構成されていたが、第2実施例の車両用サスペンションシステムにおいては、アクチュエータ30の制御の応答性を補償する構成とはされていない。本実施例のシステムでは、第1実施例における目標作用力fNとなるアクチュエータ力を発生させるように、第1実施例における目標作用力fNが、そのまま制御目標値である目標アクチュエータ力f*とされるようになっている。なお、第2実施例の車両用サスペンションシステムは、第1実施例のシステム10と同様、あるいは類似の構成要素を含んで構成されているため、それらについては、同じ符号を用いるものとし、それらについての説明は、省略するあるいは簡略に行うものとする。
<浮動ユニットの自励振動への対処>
本実施例のシステムにおいては、第1実施例と同様に、ばね上部,ばね下部,浮動ユニットの自励振動を検出するようにされるとともに、自励振動が生じた場合には、その自励振動を抑制するための制御が実行されるようになっている。ばね上部の自励振動を抑制するための制御と、ばね下部の自励振動を抑制するための制御は、第1実施例と同様の制御である。また、浮動ユニットの自励振動を抑制するための制御は、第1実施例においては、アクチュエータ30の制御の応答性を補償する処理に関係するものであったため、アクチュエータ30の制御の応答性を補償する構成とはなっていない本実施例においては、第1実施例における浮動ユニットの自励振動を抑制するための制御とは異なるものとなっている。本実施例における浮動ユニットの自励振動を抑制するための制御は、浮動ユニットに生じた自励振動を減衰すべく、浮動ユニットとばね下部との相対動作に対する減衰力をアクチュエータ30に発生させる相対振動減衰制御である。詳しく言えば、浮動ユニットとばね下部との相対動作速度Vrに基づき、次式に従って、相対振動減衰力成分fVrが決定され、その相対振動減衰力成分fVrをアクチュエータ30に発生させるように、目標作用力、つまり、目標アクチュエータ力f*が決定されるのである。
Vr=Cr・Vr
ここで、Crは、浮動ユニットとばね下部との相対動作速度に応じた減衰力を発生させるための制御ゲインである浮動ユニット制振ゲインであり、浮動ユニットとばね下部との相対振動に対する減衰係数と考えることができる。
具体的には、まず、レゾルバ242によって検出されたモータ回転角θに基づいて、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作位置、つまり、アクチュエータ長Lが算定される。そして、そのアクチュエータ長Lと、ハイトセンサ224によって検出されたばね上ばね下間距離Hとの差分に基づいて、アクチュエータばね下部間距離L−Hが算定される。次いで、その距離L−Hの変化速度に基づいて、ばね下部側ユニットとばね下部との相対動作速度Vrが算定され、その相対動作速度Vrに基づいて相対振動減衰力成分fVrが決定され、その相対振動減衰力成分fVrが、振動減衰力成分fVに加えられる。
V=Cs・Vs−Cg・Vg+fVr
つまり、その振動減衰力成分fVと、第1実施例と同様に決定されたロール抑制力成分fR,ピッチ抑制力成分fPとを足し合わせて、目標作用力、つまり、目標アクチュエータ力f*が決定され、アクチュエータ30は、浮動ユニットとばね下部との相対動作速度に応じた減衰力を発生させることになる。
上述した浮動ユニットの自励振動を抑制するための相対振動減衰制御は、第1実施例の種々の自励振動抑制制御と同様に、一定時間t1の間実行され、自励振動が収まった場合には、通常の制御に戻され、収まらない場合には、短絡制御が実行されるようになっている。また、相対振動減衰制御によって自励振動が収まった場合であっても、第1実施例の制御と同様に、その生じた自励振動が一時的なものであるか否かが判定され、一時的なものでない場合には、短絡制御が実行される。
<制御プログラム>
本実施例においては、第1実施例における図6にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムに代えて、図15にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが実行される。また、本実施例においても、図7にフローチャートを示す自励振動対処処理プログラムが実行されるが、S26において実行される浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンが第1実施例のものとは異なり、図16に示す浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンが実行されるようになっている。
本実施例におけるアクチュエータ制御プログラムでは、S202において、振動減衰力成分fVは、ばね上部の振動を減衰するための成分、および、ばね下部の振動を減衰するための成分に、ばね下部側ユニットとばね下部との相対動作を減衰するための成分である相対振動減衰力成分fVrも加えられる。その相対振動減衰力成分fVrは、後に詳しく説明するが、浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンにおいて決定されるものであり、通常の制御においては、0とされるようになっている。そして、S205において、S202〜S204において決定された振動減衰力成分fV,ロール抑制力成分fR,ピッチ抑制力成分fPが合計されて、ばね上部とばね下部との間に作用させるべき力である目標アクチュエータ力f*が決定される。なお、自励振動対処処理プログラムにおいて、フェールフラグFLfのフラグ値が1とされた場合には、短絡制御が実行される。
次に、図16にフローチャートを示す浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンについて説明する。そのサブルーチンで、浮動ユニットに自励振動が生じていない通常の状態においては、S222において、右前輪12FR側の浮動ユニット振動強度IM_FRが、右後輪12RR側の浮動ユニット振動強度IM_RRの2倍以上か否かにより、浮動ユニットに自励振動が生じているか否かが判定される。そして、通常の状態においては、2倍以上ではないと判定され、S223において、右前輪12FR側に対応する相対振動減衰力成分fVrが、0とされる。また、S222において、2倍以上であると判定された場合には、S224において、先に説明した手法で右前輪12FR側の浮動ユニットとばね下部との相対動作速度Vrが算定され、S225において、相対振動減衰力成分fVrが、式fVr=Cr・Vrに従って決定される。つまり、アクチュエータ制御プログラムのS222において決定される振動減衰力成分fVに、その相対振動減衰力成分fVrが加えられ、浮動ユニットの自励振動を減衰させるようになっているのである。
上記相対振動減衰制御は、一定時間t1の間、継続して実行される(S227〜230)とともに、その制御によって自励振動が収束した場合には、通常の制御に戻して(S234,235)、浮動ユニットの自励振動が一時的なものであるか否かの判定が行われるようになっている。そして、タイムカウンタのカウント値cMがカウンタ閾値c1に達した際に自励振動が収束していないと判定された場合や、自励振動が収束した場合であってもタイムカウンタのカウント値cMがカウンタ閾値c2に達する前に再び自励振動が生じて自励振動が一時的なものでないと判定された場合には、フェールフラグFLfのフラグ値が1とされる(S237)。また、浮動ユニットの自励振動が一時的なものである場合には、本サブルーチンに採用される各種フラグのフラグ値等がリセットされ、通常の制御に戻されることになる(S236)。
<制御装置の機能構成>
本実施例のシステムが有するECU400は、図17に示すような、上述した各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。ECU400は、第1実施例におけるECU200と同様に、目標作用力決定部300を有しているが、本実施例における目標作用力決定部300は、決定した目標作用力を制御目標値である目標アクチュエータ力とするものである。また、ECU400は、第1実施例と同様に、自励振動検出部322と、自励振動抑制部402を有している。ただし、自励振動抑制部402は、浮動ユニットの自励振動を抑制すべく、浮動ユニットとばね下部との相対振動を減衰するための目標作用力の一成分を決定する対相対振動作用力決定部404を含んで構成されている。
<変形例>
上記第2実施例において、浮動ユニットの自励振動を抑制するための制御である相対振動減衰制御は、浮動ユニットとばね下部との相対振動を減衰させるものであったが、浮動ユニットとばね上部との相対振動、つまり、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対振動を減衰させるものであってもよい。詳しく言えば、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作速度Vr’に基づき、次式に従って、相対振動減衰力成分fVr’が決定され、その相対振動減衰力成分fVr’をアクチュエータ30に発生させるように、目標アクチュエータ力f*が決定されるようにしてもよいのである。
Vr’=Cr’・Vr’
具体的には、まず、レゾルバ242によって検出されたモータ回転角θに基づいて、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作位置、つまり、アクチュエータ長Lが算定される。そして、そのアクチュエータ長Lの変化速度に基づいて、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作速度Vr’が算定され、その相対動作速度Vr’に基づいて相対振動減衰力成分fVr’が決定されるように構成することができる。
請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1に示すスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 図2のスプリング・アブソーバAssyをモデル化した図である。 ばね下部の変位を考慮して図2のスプリング・アブソーバAssyをモデル化した図である。 ばね上部の振動の振幅と周波数との関係を示した図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行される自励振動対処処理プログラムを表すフローチャートである。 図7の自励振動対処処理プログラムの一部分であるばね上部自励振動対処処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図7の自励振動対処処理プログラムの一部分であるばね下部自励振動対処処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図7の自励振動対処処理プログラムの一部分である浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図10の浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンの一部分である慣性力低減処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図10の浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンの一部分である応答性補償禁止処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図10の浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンの一部分である短絡処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図1に示すサスペンションシステムが有する制御装置の機能に関するブロック図である。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットによって実行される自励振動対処処理プログラムの一部分である浮動ユニット自励振動対処処理サブルーチンを示すフローチャートである。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットの機能に関するブロック図である。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 20:スプリング・アブソーバAssy 22:ロアアーム(ばね下部) 24:マウント部(ばね上部) 30:アクチュエータ 32:連結機構 34:エアスプリング 42:ねじロッド(雄ねじ) 44:ナット(雌ねじ) 46:電磁モータ 70液圧式ダンパ 96,100:圧縮コイルスプリング(支持スプリング) 200:サスペンション電子制御ユニット[サスペンションECU](制御装置) 224:ハイトセンサ[h] 228:操作角センサ[δ] 234:ばね上縦加速度センサ[Gzs] 236:ばね下縦加速度センサ[Gzg] 242:レゾルバ[θ] 300:目標作用力決定部 302:振動減衰力決定部 304:ロール抑制力決定部 306:ピッチ抑制力決定部
308:対ばね上振動作用力決定部 310:対ばね下振動作用力決定部 320:慣性力演算部 322:制御目標値決定部 330:自励振動検出部 332:自励振動抑制部 400:サスペンション電子制御ユニット 402:自励振動抑制部 404:対相対振動作用力決定部
Vs:ばね上絶対速度 Vg:ばね下絶対速度 fV:振動減衰力成分 Cs:ばね上制振ゲイン Cg:ばね下制振ゲイン fR:ロール抑制力成分 fP:ピッチ抑制力成分 fN:目標作用力 f*:目標アクチュエータ力(制御目標値) m:ばね下部側ユニットの慣性質量 C:ダンパの減衰係数 k:支持スプリングのばね定数 G1(s):第1伝達関数 G2(s):第2伝達関数 G(s),G(z):合成伝達関数 Gzg:ばね下縦加速度 KI:慣性力対応ゲイン Gzs:ばね上縦加速度 frU:ばね上部の共振周波数 IU:ばね上部振動強度 frM:浮動ユニットの共振周波数 IM:浮動ユニット振動強度 frL:ばね下部の共振周波数 IL:ばね下部振動強度 fVr:相対振動減衰力成分 Vr,Vr’:相対動作速度

Claims (11)

  1. (A)車両の右前輪側,左前輪側,右後輪側,左後輪側の各々に配設され、
    ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との接近離間に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作するばね下部側ユニットと、それらばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に応じて動作する電磁モータとを含んで構成され、その電磁モータの力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する力を発生させるアクチュエータと、
    前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方をそれが連結されるばね上部とばね下部との一方に弾性的に支持させつつそれら一方どうしの相対変位を許容するための支持スプリングと、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対変位に対する減衰力を発生させる液圧式のダンパとを含んで構成され、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方とを連結する連結機構と
    を有する電磁式のショックアブソーバと、
    (B)それらショックアブソーバの各々がその各々に対応するばね上部とばね下部とに作用させるべき力である目標作用力を決定する目標作用力決定部を有し、その目標作用力に基づいて、それらショックアブソーバの各々が有する前記アクチュエータが発生させる力を制御する機能を有する制御装置と
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    車両の右前輪側,左前輪側,右後輪側,左後輪側の各々において、車両の走行の際に振動するその車両の一部分を振動部と定義し、かつ、前記アクチュエータが発生させる力に起因して生じる前記振動部の振動を自励振動と定義した場合において、
    前記制御装置が、
    左右において同じ側に位置する前輪側の振動部の振動強度と後輪側の振動部の振動強度とに基づいて、それら前輪側の振動部と後輪側の振動部とのいずれか一方に生じる自励振動を検出する自励振動検出部を有する車両用サスペンションシステム。
  2. 前記自励振動検出部が、前記前輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度と、前記後輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度とに基づいて、前記前輪側の振動部と前記後輪側の振動部とのいずれか一方に生じる自励振動を検出するように構成された請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記自励振動検出部が、前記前輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度を、前記前輪側のばね上部の動作についての加速度に基づいて推定するとともに、前記後輪側の振動部の振動の共振周波数についての成分の強度を、前記後輪側のばね上部の動作についての加速度に基づいて推定するように構成された請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記制御装置が、
    前記自励振動検出部によって前記前輪側の振動部と前記後輪側の振動部との一方に自励振動が生じていることが検出された場合に、その前輪側の振動部と後輪側の振動部との一方に対応する前記ショックアブソーバが有する前記アクチュエータが発生させる力を制御して、その自励振動を抑制するために設けられた自励振動抑制部を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記自励振動検出部が、前記振動部としての前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動を検出するように構成され、
    前記自励振動抑制部が、前記振動部としての前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に生じる自励振動を抑制するように構成された請求項4に記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記制御装置が、
    前記アクチュエータが発生させるべき力に関する制御目標値を、前記目標作用力と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方がもつ慣性力とに基づき、そのアクチュエータが発生させる力が前記連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達される際の伝達特性に従って決定する制御目標値決定部を有し、その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて、前記アクチュエータが発生させる力を制御するように構成され、
    前記伝達特性が、前記連結機構が有するダンパの減衰係数を用いた伝達関数として規定されており、
    前記自励振動抑制部が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記制御目標値決定部に代わって、前記ダンパの減衰係数が前記伝達関数における値より小さな値となるもう1つの伝達関数に従って、前記目標作用力と前記慣性力とに基づき制御目標値を決定するように構成された請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記制御装置が、
    前記アクチュエータが発生させるべき力に関する制御目標値を、前記目標作用力と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方がもつ慣性力とに基づき、そのアクチュエータが発生させる力が前記連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達される際の伝達特性に従って決定する制御目標値決定部を有し、その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて、前記アクチュエータが発生させる力を制御するように構成され、
    前記制御目標値決定部が、前記慣性力を、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の質量と、前記ばね上部とばね下部との一方の上下方向の加速度と、当該慣性力の決定における制御ゲインである慣性力対応ゲインとの積に相当する大きさに決定するように構成され、
    前記自励振動抑制部が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記制御目標値決定部に代わって、その制御目標値決定部に用いられる慣性力対応ゲインの値より小さな値を用いて決定される慣性力と前記目標作用力とに基づき、前記伝達特性に従って制御目標値を決定するように構成された請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記制御装置が、
    前記アクチュエータが発生させるべき力に関する制御目標値を、前記目標作用力と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方がもつ慣性力とに基づき、そのアクチュエータが発生させる力が前記連結機構を介してばね上部とばね下部とに伝達される際の伝達特性に従って決定する制御目標値決定部を有し、その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて、前記アクチュエータが発生させる力を制御するように構成され、
    前記自励振動抑制部が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記制御目標値決定部に代わって、前記アクチュエータが発生させるべき力と前記目標作用力とが等しくなるように制御目標値を決定するように構成された請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  9. 前記自励振動抑制部が、
    前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の自励振動が検出された場合に、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方の振動を減衰するために、(a)前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作速度と(b)前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対動作速度との一方に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対相対振動作用力決定部を有する請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  10. 前記制御装置が、
    ばね上部の振動を減衰するために、ばね上部の動作速度に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対ばね上振動作用力決定部を有し、
    前記自励振動検出部が、前記振動部としてのばね上部の自励振動を検出するように構成され、
    前記自励振動抑制部が、ばね上部の自励振動が検出された場合に、前記対ばね上振動作用力決定部に代わって、ばね上部の振動を減衰するための前記目標作用力の一成分を、その対ばね上振動作用力決定部によって決定される前記目標作用力の一成分に比較して大きな値に決定するように構成された請求項4ないし請求項9のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  11. 前記制御装置が、
    ばね下部の振動を減衰するために、ばね下部の動作速度に応じた大きさの力を前記目標作用力の一成分として決定する対ばね下振動作用力決定部を有し、
    前記自励振動検出部が、前記振動部としてのばね下部の自励振動を検出するように構成され、
    前記自励振動抑制部が、ばね下部の自励振動が検出された場合に、前記対ばね下振動作用力決定部に代わって、ばね下部の振動を減衰するための前記目標作用力の一成分を、その対ばね下振動作用力決定部によって決定される前記目標作用力の一成分に比較して大きな値に決定するように構成された請求項4ないし請求項10のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
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