JP2009196484A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】電磁式のアクチュエータを含んで構成されるサスペンションシステムの実用性を向上させる。
【解決手段】アクチュエータが備えるねじ機構等の動作変換機構を、例えばトルクリミッタ機構等のような、設定された大きさの力を超える力が作用した場合に2つの部材の相対動作を許容する2部材相対動作許容機構を有する構造のものとし、システムに、その2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知し(S90〜92)、その検知結果に基づいて、例えば、2つの部材の相対動作が生じている場合に、その相対動作を消失させる制御を実行したり(S95)、2つの部材の相対動作が消失した場合に、モータが発生させる力がモータの回転動作に対する抵抗力となる状態を実現する(S100)ような機能を備えさせる。
【選択図】図15

Description

本発明は、電磁式のアクチュエータを含んで構成される車両用サスペンションシステムに関する。
近年では、車両用のサスペンションシステムとして、電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部とに対してそれらが接近・離間する方向の力を発生させる電磁式のアクチュエータを含んで構成される電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のシステムが存在する。この電磁式サスペンションシステムは、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく振動減衰特性を容易に実現できる等の利点から、高性能なシステムとして期待されている。
特開2005−256927号公報 特開2006−168400号公報
上記特許文献1,2に記載されたシステムが備える電磁式のアクチュエータは、ばね上部側ユニットと、ばね上部とばね下部との接近離間動作に伴ってばね上部側ユニットと相対動作可能なばね下部側ユニットと、回転動作する電磁モータ(以下、単に「モータ」という場合がある)と、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とを相互に変換する機構である動作変換機構としてのねじ機構とを有する構造のものである。また、特許文献1に記載されたシステムは、上記ねじ機構およびモータの保護やばね上部へ伝わる衝撃を抑制する目的で、ねじ機構に作用する力が設定された大きさ以上となった場合に、通常は動作変換を可能とすべく相対動作が禁止されている2つの部材の相対動作を許容して、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とが個別に行われるようにする機構、具体的には、いわゆる電磁クラッチやトルクリミッタ機構を備えている。ところが、そのような2つの部材の相対動作を許容する機構(以下、「2部材相対動作許容機構」という場合がある)を含んで構成されたシステムには、例えば、2つの部材に生じていた相対動作が消失した場合に、異音や2部材の間に振動が生じるという問題がある。
上記のような2部材相対動作許容機構を含んで構成される電磁式サスペンションシステムは、未だ開発途上であり、上記の問題を始めとする種々の問題を抱え、改良の余地を多分に残すものとなっている。そのため、種々の改良を施すことによって、その電磁式サスペンションシステムの実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いサスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のサスペンションシステムは、アクチュエータが備える動作変換機構が上述の2部材相対動作許容機構を有するものとされ、アクチュエータを制御する制御装置が、2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知する2部材相対動作状態検知部と、その2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいてアクチュエータを制御する検知結果依拠制御部とを有することを特徴とする。
本発明のサスペンションシステムによれば、2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知して、2つの部材の動作の状態や2部材相対動作許容機構の状態に応じた適切なアクチュエータの制御を実行することが可能である。そのような利点を有することで、本発明のサスペンションシステムは実用性の高いものとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項,(5)項が請求項2,請求項3に、(7)項,(8)項が請求項4,請求項5に、(11)項,(12)項が請求項6,請求項7に、(14)項ないし(16)項の各々が請求項8ないし請求項10の各々に、(18)項および(19)項を合わせたものが請求項11に、(22)項が請求項12に、それぞれ相当する。
(1)(A)ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、(B)ばね下部に連結され、ばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作するばね下部側ユニットと、(C)回転動作する電磁モータと、(D)前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作と前記電磁モータの回転動作とを相互に変換する動作変換機構とを有し、前記電磁式モータが発生させる回転力に依拠して、前記ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式のアクチュエータと、
前記電磁モータの作動を制御することで、前記アクチュエータを制御する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記動作変換機構が、(D-1)当該動作変換機構による動作変換を可能とすべく相対動作が禁止される2つの部材と、(D-2)それら2つの部材の間に作用する力が規定された大きさの力である規定作用力を超える場合に、前記2つの部材の相対動作を許容して、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作と前記電磁モータの回転動作とが個別に行われるようにする2部材相対動作許容機構とを有し、
前記制御装置が、前記2部材相対動作許容機構によって前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知する2部材相対動作状態検知部と、その2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいて前記アクチュエータを制御する検知結果依拠制御部とを有する車両用サスペンションシステム。
本項の態様のシステムが備える「アクチュエータ」は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作と電磁モータの回転動作とを相互に変換する動作変換機構を有する構造のアクチュエータを前提としている。なお、本項に記載のアクチュエータは、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの少なくとも一方が、動作変換機構の一部を含んで構成される構造のものであってもよい。
また、本項に記載のアクチュエータは、動作変換機構が上記2部材相対動作許容機構を有するものとされているため、通常は、上記2つの部材の相対動作が禁止されて一体的に動作することで動作変換機構による動作変換が行われ、2つの部材の間に規定作用力を超える力が作用した場合に、2つの部材の相対動作が許容されて、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とが個別に行われるようになっている。
上記のような構造のアクチュエータにおいて、例えば、路面の凹所や凸所を車輪が通過する場合には、ばね下部に比較的大きな力が加わることになり、ばね下部が勢いよく動作させられることになる。その場合には、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが高速で相対動作することになるが、その高速な相対動作に対して、モータの回転動作が円滑に追従することは難しく、動作変換機構やモータ等に大きな負荷がかかることになる。しかし、2つの部材の間に作用する力が規定作用力を超えることになれば、2部材相対動作許容機構によって、2つの部材の相対動作が許容されて、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とが個別に行われることになる。つまり、本項に記載のアクチュエータは、2部材相対動作許容機構によって、動作変換機構やモータ等に作用する力が制限され、動作変換機構やモータ等が効果的に保護されるようになっているのである。
ところが、上記のような構造のアクチュエータを備えるシステムは、上記2部材相対動作許容機構を含んで構成されることによる問題も抱えている。例えば、2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容されればされるほど、部材の摩耗等により規定作用力が変化するという問題や、2つの部材の相対動作が消失した際に振動や異音が生じるという問題である。本項の態様のシステムによれば、2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知し、その検知結果に基づいて、2つの部材の動作の状態や2部材相対動作許容機構の状態に応じたアクチュエータの制御を実行することが可能である。つまり、上記のような種々の問題に対処することが可能とされた本項の態様のシステムは、実用性の高いシステムとなっている。
本項に記載の「2つの部材」は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とが相互に伝達される経路に直列的に並ぶ2つの部材とすることができる。例えば、モータの回転動作が伝達されてその回転動作に応じて回転する回転動作随伴動作部材と、その部材に回転不能に保持される被保持部材とすることができる。したがって、本項に記載の「2部材相対動作許容機構」は、例えば、通常は、2つの部材がモータのモータ軸に対して回転不能とされて一体的に回転させられ、規定作用力を超える力が作用した場合に、それらの相対回転が許容されるように構成することができる。
また、2つの部材は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作が伝達されてその相対動作に応じて動作する部材である相対動作随伴動作部材と、その部材に相対移動あるいは回転不能に保持される被保持部材とすることができる。したがって、2部材相対動作許容機構は、例えば、通常は、2つの部材がばね上部側ユニットあるいはばね下部側ユニットに対して相対動作不能とされて一体的に動作させられ、規定作用力を超える力が作用した場合に、それらの相対移動や、上記相対動作随伴動作部材に対する被保持部材の回転が許容される構造のものを採用可能である。
2部材相対動作許容機構は、その具体的な構造が特に限定されるものではなく、2つの部材の相対動作が何らかの力、例えば、2つの部材の間に生じる摩擦力等により禁止されており、その2つの部材の相対動作を禁止する力を、2つの部材の間に作用する力が超える場合に、2つの部材の相対移動や相対回転を許容する構造とすることができる。また、規定作用力を超える力が作用した場合に、2つの部材の相対動作を禁止する力をなくすことによって、2つの部材の相対移動や相対回転を許容する構造とすることもできる。なお、2部材相対動作許容機構は、後に詳しく説明するように、2つの部材の相対動作を禁止する力、つまり、規定作用力を変更可能な構造とすることもできる。
本項に記載の「2部材相対動作状態検知部」は、2つの部材が相対動作している状態と、それらが相対動作していない状態とのいずれの状態にあるかを検知するものであり、具体的な検知手法が、特に限定されるものではない。また、本項に記載の「検知結果依拠制御部」は、上記2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいて、例えば、2つの部材が相対動作し始めたこと、相対動作が消失しつつあること、相対動作が消失したこと、相対動作が許容された回数、相対動作が許容された際の規定作用力等を認定することが可能である。そして、検知結果依拠制御部は、その認定結果に基づいて、後に詳しく説明する制御を始めとする種々の制御を実行可能に構成することができる。
本項に記載の「アクチュエータ」は、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対して、単に抵抗力のみを発生可能なものに限定されず、例えば、ばね上部とばね下部とを積極的に相対動作させる力、つまり推進力や、外部からの入力に対してばね上部とばね下部とを相対動作させないようにする力、つまり維持力をも発生可能なものとされてもよい。つまり、種々のアクチュエータ力を利用し、本項に記載の「制御装置」は、ばね上振動に対する減衰力を発生させるいわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御や、車体のロールやピッチの抑制を目的とした車体の姿勢変化を抑制する制御等を実行するように構成できる。また、アクチュエータが有する「電磁モータ」は、回転型のモータであればその型式等は特に限定されず、ブラシレスDCモータを始めとして種々の型式のモータを採用可能である。
ちなみに、本明細書において「連結」という文言は、直接的に接続されることのみを意味するものではなく、何らかの部品,部材,ユニット等を介し、間接的に接続されることをも意味する。例えば、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットがばね上部,ばね下部と連結されるとは、それらが直接的に連結される場合の他、それらの間にスプリング,液圧式ダンパ等を介して連結されるような場合も含まれる。
なお、本項にいう「ばね上部」は、簡単に言えば、サスペンションシステムによって懸架される車体の一部であり、具体的には例えば、ショックアブソーバ,サスペンションスプリング等が取り付けられるマウント部等を含んで構成される。また、「ばね下部」は、簡単に言えば、車体に対して車輪とともに相対動作する車両の構成要素を広く意味し、具体的には例えば、サスペンションアーム,アクスルキャリア等を含んで構成される。
(2)前記制御装置が、
前記アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力を決定するアクチュエータ力決定部を有し、そのアクチュエータ力決定部によって決定されたアクチュエータ力に基づいて、前記電磁モータの作動を制御するように構成された(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、アクチュエータを制御するための基本的な制御手法に関する限定を加えた態様である。本項の態様は、例えば、制御装置が、振動減衰を目的とした制御,車体の姿勢変化を抑制するための制御,ばね上部とばね下部との距離を調整する制御等の複数の制御を実行するように構成できる。その場合、アクチュエータ力決定部を、それら複数の制御の各々においてアクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力の成分を足し合わせて、目標となるアクチュエータ力を決定するように構成することが可能である。
(3)前記アクチュエータ力決定部が、前記アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力を、それの少なくとも一成分がばね上部の動作に対するその動作速度に応じた大きさの抵抗力となるように決定するように構成された(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、通常時に行われる制御に限定を加えた態様であり、振動減衰を目的とした制御、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく制御を実行可能とされた態様である。
(4)当該サスペンションシステムが、(a)ばね上部とばね下部との接近離間動作量と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量との一方を検出する動作量センサと、(b)前記電磁モータの回転量を検出する回転量センサとを備え、
前記2部材相対動作状態検知部が、前記動作量センサの検出値と前記回転量センサの検出値とに基づいて、前記2部材相対動作許容機構によって前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、2部材相対動作状態検知部による検知手法を具体化した態様である。アクチュエータは、動作変換機構によって、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とが相互に変換される構造であるため、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量(以下、「ユニット相対動作量」という場合がある)と、モータの回転動作の動作量、つまり、モータの回転量とは、通常時においては対応する。また、アクチュエータは、ばね上部側ユニットがばね上部に、ばね下部側ユニットがばね下部に、それぞれ連結される。つまり、ばね上部とばね下部との接近離間動作量(以下、単に「接近離間動作量」という場合がある)とユニット相対動作量とは、原則的には対応する。したがって、動作量センサと回転量センサとを利用すれば、2部材相対動作許容機構によって2つのユニット間の相対動作とモータの回転動作とが個別に行われている状態にあるか否かが分かるため、2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知することが可能である。そして、それら動作量センサと回転量センサとは、サスペンションシステムによって行われるアクチュエータ等の通常の制御に必要とされるセンサであるため、本項の態様によれば、余計にセンサを設ける必要がないため、システムが複雑化することを防止することが可能である。
本項の態様における2部材相対動作状態検知部は、例えば、動作量センサの検出値である接近離間動作量とユニット相対動作量との一方と、回転量センサの検出値から推定された接近離間動作量とユニット相対動作量との一方とを比較する構成や、回転量センサの検出値であるモータの回転量と、動作量センサの検出値から推定されたモータの回転量とを比較する構成とすることができる。なお、本項の態様における「動作量」,「回転量」は、中立位置等の基準位置からの変化量のみを意味するのではなく、ある設定された時間内の動作量,回転量をも意味する。したがって、本項の態様の2部材相対動作状態検知部は、ばね上部とばね下部との接近離間動作の速度,ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作の速度,モータの回転動作の速度等を比較するようにしてもよいのである。
(5)ばね上部とばね下部との接近離間動作と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作との一方の速度と、前記電磁モータの回転動作の速度とのいずれかを指標するものを動作速度指標と定義した場合において、
前記2部材相対動作状態検知部が、前記動作量センサによって検出された前記ばね上部とばね下部との接近離間動作量とばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量との一方に基づいて推定された前記動作速度指標である第1動作速度指標と、前記回転量センサによって検出された前記電磁モータの回転量に基づいて推定された前記動作速度指標である第2動作速度指標とを比較して、前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知するように構成された(4)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(6)前記2部材相対動作状態検知部が、前記第1動作速度指標と前記第2動作速度指標とが互いに異なる場合に、前記2つの部材の相対動作が許容されていることを検知するように構成された(5)項に記載の車両用サスペンションシステム。
動作量センサおよび回転量センサが、基準位置からの変化量を検出するものである場合、2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容された後には、動作量センサの基準位置と回転量センサの基準位置とにずれが生じることになる。上記2つの項の態様によれば、それらの基準位置がずれた状態であっても、2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知することが可能である。
(7)前記検知結果依拠制御部が、
前記動作変換機構が有する前記2つの部材の相対動作が生じている場合に、前記2つの部材の相対動作を消失させるように、前記電磁モータの作動を制御する2部材相対動作発生時制御部を有する(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、検知結果依拠制御部によってアクチュエータの制御を実行する態様の一態様であり、本項に記載の「2部材相対動作発生時制御部」によって実行される制御(以下、単に「相対動作発生時制御」という場合がある)は、2部材相対動作許容機構によって生じた2つの部材の相対動作を消失させる制御である。その相対動作発生時制御は、2つの部材の相対動作を早期になくすために、2つの部材の間に作用する力を低減させる制御であると考えることができる。例えば、ばね下部側ユニットが勢いよく動作させられるような外部からの入力があった場合に、モータ力がその入力に対して抵抗力となっていれば、そのモータ力を低減させる、あるいは、モータ力を入力を推進する向きに作用させるように、モータの作動を制御することで、2つの部材の間に作用する力を低減させて、相対動作を早期になくすことができるのである。
なお、モータが発生させる力は、モータを流れる電流である通電電流に概ね比例すると考えることができ、一般的に、モータの作動の制御は、その通電電流を制御することによって行われる。上記相対動作時発生時制御においては、通電電流を制御することによってモータ力を変更する態様に限定されず、モータが有する複数の通電端子を開放させることで、モータに電流が流れないようにしてモータ力を実質的に発生させないようにする態様を採用することも可能である。
また、2つの部材の相対動作が生じている場合とは、換言すれば、2つの部材の各々の動作速度の間に差が生じている場合であるため、相対動作発生時制御は、2つの部材の相対動作を早期に消失させるために、2つの部材の動作速度の差をなくす制御であると考えることもできる。つまり、相対動作発生時制御は、2つの部材の動作速度の差がなくなるように、換言すれば、2つの部材の動作速度を一致させるように、モータの作動を制御する制御を採用可能である。具体的には、2つの部材の動作速度の差から、モータに付与させたい力の方向を判断し、モータが発生させる力を決定する制御を採用できる。
なお、2つの部材の相対動作が消失する際には、衝撃や、それに伴う振動,異音が生じる場合がある。本態様における相対動作発生時制御によれば、 2つの部材の相対動作が許容されている間におけるそれら2つの部材の動作速度の差が小さくなるため、2つの部材の動作が比較的滑らかに一体化されることになる。つまり、相対動作が消失する際の衝撃を抑えることができるのである。また、2部材相対動作許容機構が、後に説明するように2つの部材を摩擦係合させるような構造である場合には、その摩擦力が生じる箇所の摩耗を抑え、それらの部材の耐久性を向上させることが可能である。
(8)前記検知結果依拠制御部が、
前記動作変換機構が有する前記2つの部材の相対動作が消失した場合に、前記電磁モータの発生させるモータ力がその電磁モータの回転動作の抵抗力となる回転制動状態を実現するように、前記電磁モータの作動を制御する2部材相対動作消失時制御部を有する(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、検知結果依拠制御部によってアクチュエータの制御を実行する態様の一態様であり、本項に記載の「2部材相対動作消失時制御部」によって実行される制御(以下、単に「相対動作消失時制御」という場合がある)は、電磁モータによる制動制御、換言すれば、専らばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する制動力を発生させる制御である。先にも述べたように、2つの部材の相対動作が消失する際には振動が生じる場合があるが、本項の態様によれば、2部材相対動作消失時制御部によって上記回転制動状態が実現されることで、その振動を効果的に減衰させることが可能である。また、システムが後に詳しく説明する連結機構を備え、アクチュエータがばね上部とばね下部との一方にスプリングを介して連結される場合には、アクチュエータのスプリングによって浮動支持された箇所が、相対動作が消失する際に生じる衝撃によって振動しやすいと考えられるため、本項の態様が特に有効である。さらに、電磁式サスペンションシステムにおいては、通常時に、先に述べたスカイフックダンパ理論に基づく制御が実行可能とされることが一般的であるため、相対動作発生時制御によって2つの部材の相対動作が消失した時点で通常時の制御に戻された場合、アクチュエータの動作に対する推進力を発生させて、前述の相対動作消失時に生じた振動を助長する虞がある。つまり、そのような虞をなくすためにも、相対動作消失時に制動制御が実行される本項の態様が有効である。ちなみに、相対動作消失時制御は、限られた極短い時間だけ実行されれば充分な効果が得られると考えられる。
(9)前記2部材相対動作消失時制御部が、前記回転制動状態において、前記電磁モータの発生させるモータ力がその電磁モータの回転動作の速度に応じた大きさの力となるように、前記電磁モータの作動を制御するように構成された(8)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(10)前記2部材相対動作消失時制御部が、前記電磁モータが有する複数の通電端子を相互に導通させることで、前記回転制動状態を実現するように構成された(8)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、2部材相対動作消失時制御部が回転制動状態を実現するための手法を具体化した態様である。前者の態様は、例えば、モータの通電電流を制御することによって、回転動作の速度が速くなるほど、大きな大きな制動力を発生させるように構成することが可能である。具体的には、モータ力を、モータの回転角速度に比例する大きさとするように構成可能である。したがって、前者の態様によれば、相対動作消失時に発生する振動に対して、適切な大きさの減衰力を発生させることが可能である。
後者の態様は、モータの各相の通電端子間に何らかの抵抗を存在させて導通させるものであってもよく、また、通電端子間を短絡させるようにして導通させるものであってもよい。本項の態様によれば、比較的簡便な制御によって回転制動状態を実現することが可能である。なお、制御装置が、複数のスイッチング素子を有する駆動回路を備える場合には、各相のスイッチング素子のON/OFF状態を後述のような固定した状態とすることで実現することが可能である。
(11)前記検知結果依拠制御部が、
前記2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいて前記規定作用力を認定し、その認定結果に基づき、前記アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力を、認定された前記規定作用力以下に制限するアクチュエータ力制限部を有する(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(12)前記アクチュエータ力制限部が、前記動作変換機構が有する前記2つの部材の相対動作の許容された回数に基づいて前記規定作用力を認定するように構成された(11)項に記載の車両用サスペンションシステム。
2部材相対動作許容機構における規定作用力は、その機構の構造等によって低下する可能性がある。例えば、2部材相対動作許容機構が、後に説明するように2つの部材を摩擦係合させるような構造である場合には、その摩擦力が生じる箇所の摩耗等によって、規定作用力が小さくなってしまうのである。一般的には、車両を停止させた状態において、アクチュエータが発生可能な最大のアクチュエータ力を発生させたとしても、2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作は許容されないように設計される。ところが、先に述べたように、規定作用力が低下すると、上記の場合であっても、2つの部材の相対動作が許容される可能性がある。また、通常の走行状態においては、例えば、車体の姿勢変化を抑制するために比較的大きなアクチュエータ力を発生させている場合に、そのアクチュエータ力が抵抗力となるような入力がばね下部からあると、比較的小さな入力であっても相対動作が許容される可能性がある。上記2つの項に記載の態様によれば、規定作用力が低下した場合であっても、その規定作用力に応じて、発生させるアクチュエータ力が制限されるため、通常では予定されていないような2つの部材の相対動作までもが許容されることを防止できる。
上記2つの項に記載の「規定作用力を認定する」ための手法は、特に限定されない。例えば、2部材相対動作状態検知部によって相対動作が許容されたことを検知した時点における2つの部材の間に作用した力を規定作用力と認定する態様を採用可能である。その場合、2つの部材の間に作用する力は、2つの部材の間に作用する力を直接検出するセンサを設けてそのセンサから検出された値であってもよく、後者の態様のように、2部材相対動作状態検知部によって検知された2つの部材の相対動作の許容された回数に基づいて推定された値であってもよい。後者の態様にいう「許容された回数」とは、累積の回数に限定されず、ある設定された期間において相対動作が許容された回数、つまり、頻度を含む概念である。後者の態様は、許容された回数が多くなる程、規定作用力の大きさが小さくなると推定するように構成することが可能であり、具体的には、許容された回数に対する規定作用力の大きさを表すマップ等を採用して設定するように構成することが可能である。
(13)前記2部材相対動作許容機構が、
前記動作変換機構が有する前記2つの部材を摩擦係合させる摩擦係合部材を有し、前記2つの部材の間に、その摩擦係合部材が発生させる摩擦力に打ち勝つ力が作用した場合に、前記2つの部材の相対動作を許容する構造とされた(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、2部材相対動作許容機構の構造を具体化した態様であり、2つの部材の相対動作を禁止する力、つまり規定作用力が、摩擦係合部材によって生じる摩擦力に応じた大きさの力とされ、その摩擦力に応じた力より大きな力が、2つの部材の間に作用した場合に、2つの部材の相対動作が許容されるようになっている。なお、本項にいう「摩擦係合部材」は、例えば、トレランスリング,弾性力に依拠して摩擦力を生じさせるゴム製のブッシュ等を採用可能である。本項の態様によれば、比較的シンプルで、コンパクトな構造のアクチュエータを実現することができる。
(14)前記2部材相対動作許容機構が、前記規定作用力を変更する規定作用力変更装置を有し、
前記検知結果依拠制御部が、
前記2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいて前記規定作用力を認定し、その認定結果に基づき、前記規定作用力の低下を補うように前記規定作用力変更装置を制御する規定作用力補足部を有する(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様の「2部材相対動作許容機構」には、例えば、電磁石を有してその電磁石に供給する電流の大きさに応じて規定作用力を変更可能な構造のもの、いわゆる電磁クラッチに類似する構造のもの等を採用可能である。本項の態様は、規定作用力の低下を完全に補う態様に限定されず、規定作用力の低下の一部を補う態様であってもよい。本項の態様によれば、2部材相対動作許容機構を効果的に機能させることが可能である。なお、2部材相対動作許容機構が上記電磁クラッチに類似する構造である場合には、設定された規定作用力が小さくなる程、電磁石への供給電流を大きな値に決定するように構成することができる。
(15)前記規定作用力補足部が、前記アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力が設定された大きさを超えることを条件として、前記規定作用力の低下を補うように前記規定作用力変更装置を制御するように構成された(14)項に記載の車両用サスペンションシステム。
アクチュエータが比較的大きなアクチュエータ力を発生させている状態において、ばね下部が勢いよく動作させらるような外部からの入力があった場合を考える。その場合、アクチュエータ力が外部入力に対する抵抗力であると、比較的小さな入力で、2つの部材の相対動作が許容される可能性がある。特に、規定作用力が低下している場合には、より顕著である。そこで、本項の態様は、アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力が設定された大きさを超えることを条件として、規定作用力変更装置を制御するように構成されている。つまり、本項の態様によれば、2部材相対動作許容機構を機能させる必要性が高い場合にのみ、規定作用力変更装置を制御することができる。したがって、先に述べた電磁クラッチに類似する構造が採用される場合に、電磁石への供給電流を抑えることができるため、電源の消費電力を抑えることが可能である。
(16)前記制御装置が、前記アクチュエータの発生させるべきアクチュエータ力の少なくとも一成分を、車体の姿勢変化を抑制する力として発生させる車体姿勢変化抑制制御を実行するようにされ、
前記規定力補足部が、前記車体姿勢変化抑制制御の実行を条件として、前記規定作用力の低下を補うように前記規定作用力変更装置を制御するように構成された(14)項または(15)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「車体姿勢変化抑制制御」は、平たく言えば、車体の傾きを抑制する制御である。つまり、車体の姿勢が変化する速度に応じた力をアクチュエータに発生させるのではなく、車体の姿勢を変化させる力の大きさに応じた力を発生させる制御である。具体的には、車体姿勢変化抑制制御は、例えば、車両の旋回に起因して車体に作用するロールを抑制するために、例えば、車体に作用するロールモーメントに応じた大きさの力を発生させる制御や、車両の加減速に起因して車体に作用するピッチを抑制するために、例えば、車体に作用するピッチモーメントに応じた大きさの力を発生させる制御である。その車体姿勢変化抑制制御においては、比較的大きなアクチュエータ力を発生させる場合があるため、先に述べた理由により、規定作用力が充分な大きさに維持されることが望ましい。
(17)前記動作変換機構が、
前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方に設けられた雄ねじ部と、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの他方に設けられて前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部とを含んで構成され、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に応じて、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との一方が、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との他方に対して回転する構造のねじ機構を主体とする構造を有し、
前記アクチュエータが、前記電磁モータにより前記雄ねじ部と雌ねじ部との一方に回転力が付与される構造とされた(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、動作変換機構を、ねじ機構を有する構造に限定した態様であり、簡便な構造のアクチュエータを実現することができる。ねじ機構は、摩擦が小さいものであることが望ましく、その意味において、ボールねじ機構を採用することが望ましい。本項の態様においては、ばね上部,ばね下部のいずれに雄ねじ部,雌ねじ部を設けるかは、任意である。また、雄ねじ部を回転可能とし、雌ねじ部を回転不能とするような構造としてもよく、逆に、雄ねじ部を回転不能とし、雌ねじ部を回転可能とするような構造としてもよい。なお、本項の態様においても、動作変換機構が有する2部材相対動作許容機構が配設される箇所は、特に限定されるものではない。例えば、2部材相対動作許容機構を、電磁モータとねじ機構との間、詳しく言えば、モータが有するモータ軸とねじ機構の構成要素のうちモータにより回転力が付与される雄ねじ部と雌ねじ部との一方との間に設けることが可能である。また、ねじ機構の構成要素のうち雄ねじ部と雌ねじ部との他方と、ばね上部側ユニットあるいはばね下部側ユニットとの間に設けることも可能である。
(18)当該車両用サスペンションシステムが、
前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方を、その一方が連結されるばね上部とばね下部との一方に弾性的に支持させる支持スプリングを有し、それら一方どうしを連結する連結機構を備えた(1)項ないし(17)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、簡単に言えば、ばね上部とばね下部との一方とアクチュエータとの連結をスプリングを介して連結した態様である。本項の態様によれば、例えば、支持スプリングのばね定数の適切化等により、アクチュエータの制御が追従し得ないような高周波振動がばね下部に入力されたような場合であっても、その高周波振動のばね上部への伝達を効果的に抑えることが可能になる。また、ばね下部に加わる衝撃から、アクチュエータを保護することも可能となる。
(19)前記連結機構が、前記支持スプリングが伸縮することによる前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対変位が設定範囲を超えることを禁止するストッパを備え、
前記2部材相対動作状態検知部が、前記ストッパにより前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対変位が禁止されていることを条件として、前記2部材相対動作許容機構によって前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知するように構成された(18)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ばね上部とばね下部との一方とアクチュエータとがスプリングを介して連結された場合には、モータの回転量とユニット相対動作量とは対応するものの、接近離間動作量とユニット相対動作量とは、時点時点では必ずしも一致しない。そのため、2部材相対動作状態検知部による検知方法が問題となる。ばね上部とばね下部との一方とアクチュエータとの間に支持スプリングが設けられる場合、アクチュエータの支持スプリングにより浮動支持された部分がその支持スプリングが伸縮することによって動作可能であるため、2つの部材の相対動作は許容されにくい。つまり、そのように構成されたシステムにおいては、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と、ばね上部とばね下部との一方との相対変位が禁止されている状態でなければ、2つの部材の相対動作はほぼ許容されることはないと考えることができるため、本項の態様によれば、連結機構を備えるシステムであっても、2部材相対動作状態検知部による検知が適切に行われることになる。なお、本項に記載の「相対変位が禁止されていること」とは、まさに相対変位が禁止されている状態、平たく言えば、ストッパ当たりしている状態を意味している。
(20)前記連結機構が、前記支持スプリングと並設され、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対動作に対する減衰力を発生させるダンパを有する(18)項または(19)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、連結機構によって連結されているばね上部とばね下部との一方とアクチュエータとの相対振動を、ダンパにより効果的に減衰させることができる。そのため、本項の態様によれば、例えば、ダンパの減衰係数の適切化等によって、ばね下共振周波数およびその近傍の周波数の振動のばね下部からばね上部への伝達が効果的に抑制されたサスペンションシステムとすることも可能である。
(21)前記連結機構が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方としての前記ばね下部側ユニットと、前記ばね上部とばね下部との一方としてのばね下部とを連結するものである(18)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ばね下部とばね下部側ユニットとの間に連結機構を配置したものであり、本項の態様によれば、ばね下部から入力されてアクチュエータに伝達される衝撃や振動を効果的に吸収することができ、アクチュエータの保護という観点において有利なサスペンションシステムが実現する。
(22)当該車両用サスペンションシステムが、
車両が有する前後左右の4つの車輪に対応して設けられ、それぞれが前記アクチュエータである4つのアクチュエータを備え、
前記制御装置が、前記4つのアクチュエータの各々が有する前記電磁モータの作動を制御することで、それら4つのアクチュエータを制御するものであり、それら4つのアクチュエータの各々が発生させるべきアクチュエータ力を、車体にワープ力のみが作用するように発生させる制御であるワープ力付与制御を実行可能とされ、
前記検知結果依拠制御部が、
前記ワープ力付与制御の実行中において、前記4つのアクチュエータのうちの前記2部材相対動作許容機構の前記規定作用力が最も小さな値となるものを特定アクチュエータとして認定するとともに、その特定アクチュエータの前記規定作用力を最小規定作用力として認定し、その最小規定作用力に基づいて、前記4つのアクチュエータの各々が発生させるアクチュエータ力を制御する最小規定作用力依拠制御部を有する(1)項ないし(21)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(23)前記最小規定作用力依拠制御部が、前記ワープ力付与制御の実行中において車体が傾動した時点でのアクチュエータ力に基づいて前記最小規定作用力を認定するように構成された(22)項に記載の車両用サスペンションシステム。
前者の態様に記載の「アクチュエータ力をワープ力が作用するように発生させる」とは、一方の対角輪の各々に対応するアクチュエータ力を、互いに同じ大きさでばね上部とばね下部とが接近する方向(以下、「接近方向」あるいは「バウンド方向」という場合がある)に発生させるとともに、他方の対角輪の各々に対応するアクチュエータ力を、上記一方の対角輪の各々に対応するアクチュエータ力と同じ大きさでばね上部とばね下部とが離間する方向(以下、「離間方向」あるいは「リバウンド方向」という場合がある)に発生させることを意味する。一般的に、車体の剛性は比較的高いため、車体を捩るような力であるワープ力は、4つのアクチュエータに対応する接近離間動作量の変動をほとんど伴わずして発生させ得る。しかし、4つのアクチュエータのうちのいずれかにおいて、2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容された場合、そのアクチュエータがばね上部とばね下部とに作用させている力が、他の3つのアクチュエータが作用させている力より小さくなるため、車体に作用する力のバランスが崩れ、車体が傾動するように動作することとなる。
つまり、後者の態様のように、車体が傾動した時点で発生させているアクチュエータ力に基づけば、4つのアクチュエータのうち最も相対動作させやすい2部材相対動作許容機構を有するものの規定作用力を認定できるのである。そして、その最も相対動作させやすい2部材相対動作許容機構を有するアクチュエータである特定アクチュエータの認定は、2部材相対動作状態検知部が検知を行っていれば、それの検知結果に基づいて認定可能である。また、2部材相対動作状態検知部が検知を行っていない場合であっても、サスペンションシステムがばね上部とばね下部との接近離間動作量を検出するセンサを備えていれば、4つの車輪に対応する4つのセンサの検出結果に基づいて認定することも可能である。詳しく言えば、4つのセンサの検出値から分かる車体が動作した方向と、前輪側の動作量と後輪側の動作量との差分とに基づいて、特定アクチュエータを認定することが可能である。
上記2つの項に記載の「最小規定作用力依拠制御部」には、例えば、4つのアクチュエータの各々が発生させるべきアクチュエータ力を、最小規定作用力以下に制限する制御を実行する態様や、特定アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力を最小規定作用力以下に制限するとともに、その制限された分のアクチュエータ力を、他の3つのアクチュエータで補うような制御を実行する態様を採用可能である。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明における技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
≪第1実施例≫
<サスペンションシステムの構成>
図1に、請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
スプリング・アブソーバAssy20は、図2に示すように、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設されている。スプリング・アブソーバAssy20は、大きくは、電磁式のアクチュエータ30と、そのアクチュエータ30とロアアーム22とを連結するための連結機構32と、サスペンションスプリングとしてのエアスプリング34とに区分することができ、それらを構成要素として含んで構成されており、それらが一体化されたものとなっている。
アクチュエータ30は、ねじ溝が形成された雄ねじ部としてのねじロッド42と、ベアリングボールを保持してねじロッド42と螺合する雌ねじ部としてのナット44とを含んで構成されるボールねじ機構と、回転型の電磁モータ46(以下、単に「モータ46」という場合がある)と、そのモータ46を収容するケーシング48とを備えている。そのケーシング48が、ねじロッド42を回転可能に保持するとともに、外周部においてマウント部24に連結されている。モータ46は、中空とされたモータ軸50を有しており、そのモータ軸50には、それの内側を貫通して上端部においてねじロッド42が固定されている。つまり、モータ46は、ねじロッド42に回転力を付与するものとなっている。
また、アクチュエータ30は、上記ねじロッド42を挿通させた状態で上端部がケーシング48に固定されたアウタチューブ60と、そのアウタチューブ60に嵌め入れられてアウタチューブ60の下端部から下方に突出する段付状のインナチューブ62とを含んで構成されている。インナチューブ62の上端部は径が大きくされており、その上端部の内側には、上記ナット44が、ねじロッド42と螺合させられた状態で保持されている。そのナット44をインナチューブ62に保持させるための構造は、後に詳しく説明する。アウタチューブ60には、その内壁面にアクチュエータ30の軸線の延びる方向(以下、「軸線方向」という場合がある)に延びるようにして1対のガイド溝64が設けられている。それらのガイド溝64の各々には、インナチューブ62の上端部に付設された1対のキー66の各々が嵌まるようにされており、それらガイド溝64およびキー66によって、アウタチューブ60とインナチューブ62とが、相対回転不能な状態での軸線方向の相対移動が可能とされている。そして、インナチューブ62は、それの下端部において連結機構32に連結される。
上記のナット44をインナチューブ62に保持させるための構造について、図3をも参照しつつ説明する。図3は、インナチューブ62とそれの内部を示す平面断面図(図2におけるA−A断面)である。ナット44とインナチューブ62の内面との間には、トレランスリング70が介装されている。そのトレランスリング70は、バネとして機能する波形形状をした部分を有する筒状の部品でありインナチューブ62の内側に嵌められるものであって、その波形形状をした部分の弾性力によってナット44をインナチューブ62に保持しているである。また、トレランスリング70は、その弾性力によって生じる摩擦力によって、インナチューブ62に対するナット44の回転を禁止している。
連結機構32は、液圧式のダンパ80を有している。そのダンパ80は、詳しい構造は省略するが、ツインチューブ式の液圧式ショックアブソーバに類似する構造のものである。そのダンパ80は、作動液を収容するハウジング82と、そのハウジング82にそれの内部において液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン84と、そのピストン84に下端部が連結されてハウジング82の上方から延び出すピストンロッド86とを含んで構成されている。ハウジング82は、それの下端部に設けられたブシュ88を介してロアアーム22に連結され、ピストンロッド86が、ハウジング82の上方から延び出した上端部において、インナチューブ62の下端部に連結される構造とされている。そのような構造により、インナチューブ62は、ダンパ80を介して、ロアアーム22に連結されているのである。
ダンパ80のハウジング82には、それの外周部に環状の下部リテーナ90が固定されて設けられている。その下部リテーナ90には、インナチューブ62,アウタチューブ60の下部およびダンパ80の上部を収容するカーバーチューブ92が、それの下端部において固定されている。また、インナチューブ62とピストンロッド86との連結部には浮動部材94が固定されている。その浮動部材94は、それと下部リテーナ90との間に配設された圧縮コイルスプリング96と、浮動部材94とカバーチューブ92の内部に形成された環状の突出部98(上部リテーナとして機能する)との間に配設された圧縮コイルスプリング100とによって挟持されている。
エアスプリング34は、マウント部24に固定されたチャンバシェル120と、エアピストン筒として機能するカバーチューブ92と、それらを接続するダイヤフラム124とを含んで構成されている。チャンバシェル120は、それの蓋部126が、防振ゴムを有するスプリングサポート128を介してアクチュエータ30のケーシング48に連結されている。また、蓋部126は、防振ゴムを有するアッパサポート130を介してマウント部24に連結されている。ダイヤフラム124は、一端部がチャンバシェル120の下端部に固定され、他端部がカバーチューブ92の上端部に固定されており、それらチャンバシェル120とカバーチューブ92とダイヤフラム124とによって圧力室132が区画形成されている。その圧力室132には、流体としての圧縮エアが封入されている。このような構造から、エアスプリング34の圧縮エアの圧力によって、ロアアーム22とマウント部24、つまり、車輪と車体とを相互に弾性的に支持しているのである。
上述のような構造から、アクチュエータ30は、ねじロッド42,モータ46,ケーシング48,アウタチューブ60等を含んでマウント部24に連結されるばね上部側ユニットと、ナット44,インナチューブ62,浮動部材94等を含んでロアアーム22に連結されるばね下部側ユニットとを有する構造のものとなっている。また、アクチュエータ30は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが、相対回転不能、かつ、ばね上部とばね上部との接近離間動作に伴って軸線方向に相対移動可能な構造とされている。さらに、アクチュエータ30は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とを相互に変換する動作変換機構を有しており、その動作変換機構はボールねじ機構を主体とする構造とされている。そして、上記連結機構32は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方としてのばね下部側ユニットと、そのばね下部側ユニットと連結されるばね上部とばね下部との一方としてのばね下部との間に配設され、それらを連結するものとされており、2つの圧縮コイルスプリング96,100が、支持スプリングとして機能するものとなっている。
アクチュエータ30は、ばね上部とばね下部とが接近・離間動作する場合に、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが軸線方向に相対移動可能、つまり、ねじロッド42とナット44とが軸線方向に相対移動可能とされ、その相対移動に伴って、ねじロッド42がナット44に対して回転する。それによって、モータ軸50も回転する。モータ46は、ねじロッド42に回転トルクを付与可能とされ、この回転トルクによって、ねじロッド42とナット44との相対回転に対して、その相対回転を阻止する方向の抵抗力を発生させることが可能である。この抵抗力を、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対する減衰力、ひいては、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力として作用させることで、アクチュエータ30は、いわゆるショックアブソーバとして機能するものとなっている。また、アクチュエータ30は、ばね上部とばね下部との相対動作に対する推進力をも発生させることが可能とされており、いわゆるスカイフックダンパ理論,擬似的なグランドフック理論等に基づく制御を実行することが可能とされている。さらに、モータ46の回転トルクによって、ばね上部とばね下部との間の距離(以下、「ばね上ばね下間距離」という場合がある)を任意の距離に維持することが可能であり、車両旋回時の車体のロール,車両加減速時の車体のピッチ等を効果的に抑制することや、車両の高さいわゆる車高を調整すること等が可能とされている。
スプリング・アブソーバAssy20は、いわゆるバウンドストッパ、および、リバウンドストッパをも有している。具体的には、マウント部24とロアアーム22との相対移動に対して、バウンドストッパは、カバーチューブ92の上端部が、緩衝ゴム140を介してアクチュエータ30のケーシング48に当接するように構成され、リバウンドストッパは、アウタチューブ60の下端部に固定された環状プレート142が、緩衝ゴム144を介してカバーチューブ92の下端部に当接するように構成されている。また、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対して、バウンドストッパは、ねじロッド42の下端部が、緩衝ゴム146を介して、浮動部材94に当接するように構成され、リバウンドストッパは、アウタチューブ60の内底面が、緩衝ゴム148を介して、インナチューブ62の段付状に形成された箇所に当接するように構成されている。さらに、ダンパ80におけるハウジング82とピストン84との相対移動に対して、つまり、ばね下部側ユニットとロアアーム22との相対移動に対して、バウンドストッパは、ハウジング82の上面が、緩衝ゴム150を介して浮動部材94に当接するように構成され、リバウンドストッパは、ピストン84の上面が、ピストン84の上面に設けられた緩衝ゴム152を介して、ハウジング82の上部側の内部と当接するように構成されている。
次に、例えば、路面の凸所を車輪が通過する場合を考える。その場合、ばね下部が勢いよく上方に動作させられて、ばね上部とばね下部とが接近する、つまり、スプリング・アブソーバAssy20が収縮することになる。その際、アクチュエータ30および連結機構32においては、まず、ばね下部とばね下部側ユニットとが接近し、ダンパ80のハウジング82の上面が、緩衝ゴム150を介して浮動部材94に当接する状態、つまり、連結機構32がバウンド側のストロークエンドに達した状態となる。そして、その状態において、ばね下部とばね下部側ユニットとが一体的に上方に動作させられ、ばね下部側ユニットがばね上部側ユニットに対して勢いよく上方に移動することになる。その場合、ばね下部側ユニットの一部であるナット44が軸線方向に高速で移動するのに対し、ねじロッド42,モータ軸50を含んで構成される部分の回転が円滑に追従するのは難しく、ねじロッド42とナット44との間には大きな回転力が作用する。そして、その回転力が、ナット44とインナチューブ62との間、詳しくは、ナット44とトレランスリング70との間に生じる摩擦力より大きい場合には、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容されることになる。つまり、アクチュエータ30は、前述の動作変換機構が、2つの部材としてのナット44およびインナチューブ62と、それらの間に規定された大きさの力である規定作用力を超える力が作用した場合に、それら2つの部材の相対回転を許容して、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータ46の回転動作とが個別に行われるようにする2部材相対動作許容機構とを有する構造のものとされている。そのような構造により、2部材相対動作許容機構によって、ねじ機構に作用する回転力が、摩擦係合部材としてのトレランスリング70が発生させる摩擦力までに制限されるようになっている。
サスペンションシステム10は、図1に示すように、各スプリング・アブソーバAssy20が有するエアスプリング34に対して流体としてのエア(空気)を流入・流出させるための流体流入・流出装置、詳しく言えば、エアスプリング34の圧力室132に接続されて、その圧力室132にエアを供給し、圧力室132からエアを排出するエア給排装置160を備えている。詳しい説明は省略するが、本サスペンションシステム10は、エア給排装置160によって、各エアスプリング34の圧力室132内のエア量を調整することが可能とされており、エア量の調整によって、各エアスプリング34のばね長を変更し、各車輪12についてのばね上ばね下間距離を変化させることが可能とされている。具体的に言えば、圧力室132のエア量を増加させてばね上ばね下間距離を増大させ、エア量を減少させてばね上ばね下間距離を減少させることが可能とされている。つまり、本システム10は、いわゆる車高調整が可能とされているのである。
本サスペンションシステム10は、制御装置としてのサスペンション電子制御ユニット200(以下、「ECU200」という場合がある)によって、スプリング・アブソーバAssy20の作動、つまり、アクチュエータ30およびエアスプリング34の制御が行われる。サスペンションECU200は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたものである。そのサスペンションECU200には、エア給排装置160の駆動回路としてのドライバ202と、各アクチュエータ30が有するモータ46に対応して設けられて、そのモータ46を制御する駆動回路としてのインバータ204とが接続されている。サスペンションECU200は、ドライバ202を制御することによってエアスプリング34を制御し、4つのインバータ204を制御することによってアクチュエータ30が発生させるアクチュエータ力を制御する。それらドライバ202およびインバータ204は、コンバータ[CONV]206を介してバッテリ[BAT]208に接続されており、エア給排装置160が有する各制御弁,ポンプモータ等、および、各アクチュエータ30のモータ46には、そのコンバータ206とバッテリ208とを含んで構成される電源から電力が供給される。
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]220,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]222,各車輪12についてのばね上ばね下間距離を検出する動作量センサとしての4つのハイトセンサ[h]224,車高変更指示のために運転者によって操作される車高変更スイッチ[HSw]226,ステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ[δ]228,車体に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]230,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]232,各車輪12に対応する車体の各マウント部24の縦加速度(上下加速度)を検出する4つのばね上縦加速度センサ[Gzs]234,各車輪12の縦加速度を検出する4つのばね下縦加速度センサ[Gzg]236,アクセルスロットルの開度を検出するスロットルセンサ[Sr]238,ブレーキのマスタシリンダ圧を検出するブレーキ圧センサ[Br]240等が設けられており、それらはECU200のコンピュータに接続されている。ECU200は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、スプリング・アブソーバAssy20の作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、ECU200のコンピュータが備えるROMには、アクチュエータ30の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
図4に示すように、各アクチュエータ30のモータ46は、コイルがスター結線(Y結線)された3相DCブラシレスモータであり、上述したインバータ204によって制御される。インバータ204は、図4に示すような一般的なものであり、電源のhigh側(高電位側)のスイッチング素子と、low側(低電位側)のスイッチング素子とからなるスイッチング素子対を、モータ46の3つの相であるU相,V相,W相に対応して3対有するものである。つまり、6つのスイッチング素子HUS,HVS,HWS,LUS,LVS,LWSを備えている。また、インバータ204が有するスイッチング素子制御回路250には、モータ46に設けられてモータ46の回転角を検出する回転量センサとしてのレゾルバ[θ]252と、実際にモータ46を流れる通電電流を測定する通電電流センサ[I]254とが接続されている。そのスイッチング素子制御回路250は、そのレゾルバ252によりモータ回転角を判断し、そのモータ回転角に基づいてスイッチング素子を開閉作動させる。インバータ204は、いわゆる正弦波駆動によってモータ46を駆動するのであり、モータ46の3つの相の各々に流れる電流が、それぞれが正弦波状に変化し、その位相差が電気角で120°ずつ異なるように、スイッチング素子が制御される。また、インバータ204は、モータ46に生じた起電力に依拠して発電された電力である発電電力を電源に回生可能な構造とされており、モータ46は、供給電流に依存したモータ力だけでなく、起電力に依存したモータ力を発生可能となっている。つまり、インバータ204は、電源からの供給電流であるか、起電力に依拠して生じた発電電流であるかに拘わらず、モータ46を流れる電流、つまり、モータ46の通電電流を調整して、モータ力を制御する構造とされている。なお、通電電流は、各インバータ204がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって調整される。
<サスペンションシステムの基本的な制御>
i)アクチュエータの標準制御の概要
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ30のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰する力である振動減衰力を発生させるための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回時や車両の加減速時における車体の姿勢変化を抑制する力である姿勢制御力を発生させるための制御 (以下、「車体姿勢変化抑制制御」という場合がある)が実行される。その車体姿勢変化抑制制御は、具体的に言えば、車両の旋回に起因して車体に作用するロールモーメントに応じたアクチュエータ力を発生させるための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある)と、車両の加減速に起因して車体に作用するピッチモーメントに応じたアクチュエータ力を発生させるための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)とを併せた制御である。
上記振動減衰制御,車体姿勢変化抑制制御のロール抑制制御およびピッチ抑制制御は、総合的に行われるが、その前提として、それぞれの制御毎に必要なアクチュエータ力が求められる。そして、それらのアクチュエータ力が、それぞれ、振動減衰成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分とされ、それらが合計されて、目標アクチュエータ力が決定される。アクチュエータ30は、その目標アクチュエータ力を発生させるように制御され、その結果、上記振動減衰制御,車体姿勢変化抑制制御のロール抑制制御およびピッチ抑制制御が、総合的に実行されるのである。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
ii)振動減衰制御
振動減衰制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動減衰成分FVが決定される。つまり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御と、擬似的なグランドフックダンパ理論に基づいた制御との両者を総合して行う制御である。具体的には、車体のマウント部24に設けられたばね上縦加速度センサ174によって検出されるばね上縦加速度から得られる車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上絶対速度Vsと、ロアアーム22に設けられたばね下縦加速度センサ176によって検出されるばね下縦加速度から得られる車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下絶対速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動減衰成分FVが演算される。
V=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、Cgは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
iii)ロール抑制制御
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ30にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ30にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ172によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分FRが、次式に従って決定される。
R=K3・Gy* (K3:ゲイン)
iv)ピッチ抑制制御
車両の制動時等の減速時において車体のノーズダイブが生じる場合には、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車両の加速時において車体のスクワットが生じる場合には、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合のばね上ばね下間距離の変動を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ170によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制成分FPが、次式に従って決定される。
P=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ178によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ180によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
v)目標アクチュエータ力とモータの作動制御
アクチュエータ30の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定されると、それらに基づき、次式に従って制御目標値である目標アクチュエータ力F*が決定される。
*=FV+FR+FP
また、モータ46に過大な負荷を掛けないように、モータ46が発生させるモータ力の限界値に基づいて、アクチュエータ30に発生させるアクチュエータ力の大きさの最大値であるアクチュエータ力最大値FMAXが限界値より僅かに小さい値に設定されている。そのため、目標アクチュエータ力F*は、それの大きさがアクチュエータ力最大値FMAX以下に制限されるようになっている。
そして、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*を発生させるためのモータ46の作動制御が、インバータ204によって行われる。詳しく言えば、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ204に送信される。インバータ204は、その適切なデューティ比の下、インバータ204の備えるスイッチング素子の開閉が制御されて、目標アクチュエータ力F*を発生させるようにモータ46を作動させる。つまり、アクチュエータ30の発生させるアクチュエータ力が、モータ46の作動が制御されることによって制御されるのである。
vi)車高変更制御
なお、本サスペンションシステム10では、エアスプリング34によって、路面に凹凸がある道路、いわゆる悪路の走行への対処、車両の操縦安定性の向上等を目的として運転者の意思に基づいて車両の車高を変更する制御(以下、「車高変更制御」という場合がある)が実行される。簡単に説明すれば、車高変更制御は、運転者の意図に基づく車高変更スイッチ226の操作によって実現すべき設定車高である目標設定車高が変更された場合において、実行される。その目標設定車高の各々に応じて、各車輪12についての目標となるばね上ばね下間距離が設定されており、ハイトセンサ224の検出値に基づいて、それぞれの車輪12についてのばね上ばね下間距離が目標距離になるように、エア給排装置160の作動が制御され、各車輪12のばね上ばね下間距離が目標設定車高に応じた距離に変更されるのである。さらに、この車高変更制御では、例えば、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等による車高の変動に対処することを目的とした、いわゆるオートレベリングと呼ばれる制御も行われる。
<2部材の相対動作状態に依拠するアクチュエータの制御>
また、本サスペンションシステム10では、先に述べたトレランスリング70を含んで構成される2部材相対動作許容機構によってナット44のインナチューブ62に対する回転が生じているか否かを検知する(以下、「相対動作状態を検知する」という場合がある)とともに、その検知結果に基づいてアクチュエータ30を制御する機能を有している。なお、2つの部材の相対動作状態を検知する処理、および、その検知結果に基づくアクチュエータ30の制御(以下、「検知結果依拠制御」という場合がある)は、ECU200によって実行される。
i)相対動作状態の検知
2つの部材の相対動作状態の検知は、動作量センサとしてのハイトセンサ224の検出値と、回転量センサとしてのレゾルバ252の検出値とに基づいて行われる。詳しくは、レゾルバ252の検出値から求められたモータ46の実際の回転角速度である実回転角速度ωrと、ハイトセンサ224の検出値から推定されたモータ46の回転角速度、換言すれば、2つの部材の相対動作が許容されていない状態とした場合のモータ46の回転角速度である推定回転角速度ωeとを比較することによって行われ、それら実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとが互いに異なる場合に、ナット44のインナチューブ62に対する回転が生じていると判定されるようになっている。図5には、路面の凸所を車輪が通過した場合における実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとの時間的変化を示している。
本システム10のスプリング・アブソーバAssy20においては、アクチュエータ30のばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量(以下、「ユニット相対動作量」という場合がある)とモータ46の回転量ととは対応し、それらの動作速度の各々も対応する。しかし、ばね下部側ユニットとばね下部とが連結機構32を介して連結されているため、ユニット相対動作量と、ばね上部とばね下部との接近離間動作量ととは、時点時点では必ずしも一致せず、それらの動作速度の各々も一致しない。ただし、スプリング・アブソーバAssy20においては、ばね下部側ユニットが2つの圧縮コイルスプリング96,100により浮動支持されており、それらスプリング96,100が伸縮することによってばね下部側ユニットは動作可能である。そのため、2つの部材の相対動作は許容されないと考えられる。換言すれば、ばね下部側ユニットとばね下部との相対変位が禁止されている状態、つまり、緩衝ゴム150,152を含んで構成されるストッパにより相対変位が禁止されている状態でなければ、2つの部材の相対動作が許容されないのである。したがって、本システム10の相対動作状態を検知する処理は、ばね下部側ユニットとばね下部との相対変位が禁止されていることを条件として行われるようになっており、その条件を満たす場合には、通常であれば、実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとは一致することになるのである。
ばね下部側ユニットとばね下部との相対変位が禁止されているか否かを判定する具体的な手法は、ハイトセンサ224の検出値から得られる接近離間動作量x0と、レゾルバ252の検出値から得られるユニット相対動作量x1との差分から、ばね下部側ユニットとばね下部との相対変位量x2(=x0−x1,以下、「連結機構動作量x2」と言う場合がある)を算出し、その連結機構動作量x2が、設定された範囲の限界値±x2MAXであるか否かにより判定される。そして、連結機構動作量x2が、限界値±x2MAXであることを条件として、相対動作を検知する処理が行われ、実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとが互いに異なっている場合に、ナット44のインナチューブ62に対する回転が生じていると判定される。
ii)相対動作発生時制御
上述した検知処理において、2つの部材の相対動作が許容されていること、詳しくは、ナット44のインナチューブ62に対する回転が生じていることが検知された場合には、その相対動作を消失させるようにモータ46の作動を制御する制御である相対動作発生時制御が、通常の制御に代えて実行される。相対動作が許容された場合には、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータ46の回転動作とが個別に行われるのであり、図5にも示すように、実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとに速度差が生じることになる。相対動作発生時制御は、それら実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとの速度差をなくように、モータ46の作動を制御する制御である。詳しく言えば、モータ46に、実回転角速度ωrが推定回転角速度ωeに一致する向きの回転力を発生させるのである。具体的には、推定回転角速度に対する実回転角速度の差(=ωe−ωr)の符号から、モータ46に発生させる回転力の向きを判断し、その向きに、限界値に近い大きさのモータ力を発生させるように、目標となるアクチュエータ力F*の大きさをFMAXとするのである。
*=sgn(ωe−ωr)・FMAX
ここで、sgn(ωe−ωr)は、ωe−ωrの符号を表す関数である。
なお、ナット44のインナチューブ62に対する回転が止まる際には、衝撃が生じ、その衝撃により異音や振動が生じたりする場合がある。本システム10では、上記相対動作発生時制御によって、2部材相対動作許容機構により2つの部材が相対動作している間におけるインナチューブ62に対するナット44の回転の速度が、標準制御が実行されている場合に比較して小さくなるため、ナット44のインナチューブ62に対する回転が止まる際に生じる衝撃を抑えることが可能であり、2つの部材の動作が比較的円滑に一体化されることになる。また、ナット44のインナチューブ62に対する回転速度を小さくすることにより、摩擦力が生じているインナチューブ62とトレランスリング70との摩耗を抑えることができるため、それらの部材の耐久性を向上させることが可能である。
iii)相対動作消失時制御
次に、ナット44のインナチューブ62に対する回転が止まった場合、つまり、前述した検知処理において、図5に示すように実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとが再び一致した場合に、上記相対動作発生時制御に代えて、モータ46の発生させるモータ力がそのモータ46の回転動作に対する抵抗力となる回転制動状態を実現するようにモータ46の作動を制御する制御である相対動作消失時制御が実行される。その相対動作消失時制御は、モータ46による制動制御であり、専らばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する制動力を発生させる制御であるといえる。具体的には、相対動作消失時制御では、モータ46の発生させる力がモータ46の回転動作の速度に応じた大きさの力となるように、目標となるアクチュエータ力F*が、実回転角速度ωrに基づいて、次式に従って決定される。
*=−K5・ωr (K5:ゲイン)
先に述べたように、ナット44のインナチューブ62に対する回転が止まる際には、その止まる際の衝撃に伴い振動が生じる場合がある。その振動は、連結機構32により浮動支持されたばね下部側ユニットに伝達されやすいと考えられるが、相対動作消失時制御によって、その振動を効果的に減衰させることが可能である。なお、この相対動作消失時制御は、一定時間t0(極短い時間、例えば、1sec)だけ実行した後に、標準制御に戻されるようになっている。例えば、相対動作消失時制御を行わず標準制御に戻した場合には、前述のスカイフックダンパ理論に基づく制御により、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する推進力を発生させて上記の振動を助長する虞があるが、相対動作消失時制御が実行されることによって、そのような虞はないのである。
iv)アクチュエータ力制限処理
2部材相対動作許容機構は、2つの部材の間に作用する力が規定作用力を超える場合に、それら2つの部材の相対動作が許容される構造であるが、その規定作用力は、トレランスリング70とインナチューブ62との摩耗によって低下してしまうことになる。初期の状態においては、例えば、車両を停止させた状態において、モータ46が発生させるモータ力の限界値に基づいて規定されているアクチュエータ力最大値FMAXをアクチュエータ30に発生させたとしても、2つの部材の相対動作は許容されないようにされている。ところが、規定作用力が低下していくと、アクチュエータ30にアクチュエータ力最大値FMAXを発生させた場合に、2つの部材の相対動作が許容されることになってしまう場合がある。そのような場合には、通常の走行状態において、例えば、車体の姿勢変化を抑制するために比較的大きなアクチュエータ力を発生させている状態において、ばね下部から入力があった場合には、その入力が比較的小さなものであっても、2つの部材の相対動作が許容されてしまうことになる。
車両が製造されてから、2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容された累積の回数が多くなる程、規定作用力が低下していると考えられることから、本システム10では、2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容された累積回数である相対動作許容回数Nに基づいて、規定作用力が認定されるようになっている。具体的には、ECU200が有するROMには、図6に示す相対動作許容回数Nに対する規定作用力fのマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して規定作用力fが認定される。そして、その認定された規定作用力fに基づいて、アクチュエータ30に発生させたとしても2つの部材の相対動作が許容されないアクチュエータ力の限界値である第1アクチュエータ力限界値Flimit1が決められる。その第1アクチュエータ力限界値をFlimit1が、アクチュエータ力最大値FMAXより小さくなった場合に、標準制御における目標アクチュエータ力F*は、それの大きさが第1アクチュエータ力限界値Flimit1以下に制限されるようになっている。この処理により、通常では予定されていないような2つの部材の相対動作までもが許容される事態を阻止することが可能である。なお、相対動作許容回数NがNlimitに達した場合には、車室内に設けられたインジケータを介して、運転者に報知されるようになっている。
v)イニシャルチェック
また、本システム10では、イグニッションスイッチ220がON状態とされた場合に、4つのアクチュエータ30に対応する2部材相対動作許容機構の診断が行われる。詳しくは、4つのアクチュエータ30に対応する4つの2部材相対動作許容機構のうちに、アクチュエータ30にアクチュエータ力最大値FMAXを発生させた場合に、2つの部材の相対動作が許容されるものがあるか否かを診断するものである。また、そのようなものが複数ある場合には、その中で規定作用力が最も小さな値となるものが特定される。具体的には、4つのアクチュエータ30の各々に、車体にワープ力が作用するようなアクチュエータ力を発生させる制御であるワープ力付与制御の実行中に、先に述べた相対動作状態の検知処理を行うことで、上記の診断が行われる。
車体にワープ力を作用させるとは、一方の対角輪の各々に対応するアクチュエータに、離間方向の同じ大きさのアクチュエータ力を発生させるとともに、他方の対角輪の各々に対応するアクチュエータに、上記一方の対角輪の各々に対応するアクチュエータ力と同じ大きさで接近方向の力を発生させることを意味する。例えば、図7に示すように、右前輪12FRおよび左後輪12RLに対応するアクチュエータ30FR,30RLのアクチュエータ力を離間方向の力FWとするとともに、左前輪12FLおよび右後輪12RRに対応するアクチュエータ30FL,30RRのアクチュエータ力を接近方向の力FWとした場合を考える。このようなワープ力を車体に作用させたとしても、車体の剛性が高いため、車体の姿勢が変化すること、つまり、4つの車輪12に対応する接近離間動作量はほとんど変化しない。ただし、アクチュエータ30のばね下部側ユニットがばね下部に2つの圧縮コイルスプリング96,100によって弾性的に連結されているため、離間方向の力を発生させた右前輪12FRおよび左後輪12RLに対応するスプリング・アブソーバAssy20FR,20RLにおいては、ばね下部側ユニットが、変動しないばね上部側ユニットに対して、圧縮コイルスプリング96,100を縮めつつ、下方へ移動することになる。また、接近方向の力を発生させた左前輪12FLおよび右後輪12RRに対応するスプリング・アブソーバAssy20FL,20RRにおいては、ばね下部側ユニットが、圧縮コイルスプリング96,100を伸ばしつつ、上方へ移動することになる。なお、ワープ力付与制御では、4つのアクチュエータ30の各々のアクチュエータ力を、正弦波状に変動させるようにされており、発生させる力の最大値がアクチュエータ力最大値FMAXで、1周期分1/f(f:設定周波数)だけ変動させるように、つまり、次式に従って変動させるようにされている。
FR=FRL=+FMAX・sin(2π・f・t)
FL=FRR=−FMAX・sin(2π・f・t)
上記ワープ力付与制御を実行した場合、4つの2部材相対動作許容機構における規定作用力が低下していなければ、4つのアクチュエータ30の各々のアクチュエータ力によって、車体にワープ力が作用し、車体に挙動が生じることはない。しかし、規定作用力が低下して、4つのアクチュエータ30のうちで2部材相対動作許容機構の規定作用力が最も小さくなるものにおいて、アクチュエータ力最大値FMAXより小さな力で2つの部材の相対動作が許容されることになれば、そのアクチュエータ30に対応するばね上部とばね下部とに作用している力が、他の3つのアクチュエータ30に対応する力より小さくなる。そのため、車体に作用させている力のバランスが崩れ、車体が傾動することになるのである。4つのアクチュエータ30の各々においては、先に述べた相対動作状態を検知する処理が行われており、車体が傾動した場合には、それらのうちのいずれか1つのものにおいて、2つの部材の相対動作が許容されたことが検知される。そして、その相対動作が許容されたことが検知されたものに対応するアクチュエータ30を特定アクチュエータと認定するとともに、その相対動作が許容されたことが検知された時点で発生させていたワープ力の大きさに基づいて、最小規定作用力fMINが認定される。
上記の処理で、特定アクチュエータおよび最小規定作用力fMINが認定された場合には、その最小規定作用力fMINに基づいて、特定アクチュエータのみならず、他の3つのアクチュエータ30に対しても、それらが発生させるアクチュエータ力を制限する制御が行われる。具体的に言えば、その認定された最小規定作用力fMINに基づいて、アクチュエータ30に発生させたとしても2つの部材の相対動作が許容されないアクチュエータ力の限界値である第2アクチュエータ力限界値Flimit2が決められる。4つのアクチュエータ30が、最小規定作用力fMINを超える力を発生させないように、標準制御における4つのアクチュエータ30の目標アクチュエータ力F*が、第2アクチュエータ力限界値Flimit2以下に制限される。これにより、特定アクチュエータに対応する2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容される回数を抑えるとともに、車体の挙動、詳しく言えば、ばね上部の挙動が、車両の前後左右においてバランスを失った挙動となることが回避される。
<制御プログラム>
前述のようなアクチュエータ30の制御は、まず、イグニッションスイッチ220がON状態とされた場合に、図8にフローチャートを示すイニシャルチェック処理プログラムが、短い時間間隔Δt(例えば、数msec〜数十msec)をおいてECU200により繰り返し実行され、そのイニシャルチェック処理プログラムの終了後からイグニッションスイッチ220がON状態とされている間、図9にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、短い時間間隔ΔtをおいてECU200により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それら制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、それらイニシャルチェック処理プログラムおよびアクチュエータ制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ30の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ30に対してのプログラムによる処理について説明する。
i)イニシャルチェック処理プログラム
イニシャルチェック処理プログラムによる処理では、ステップ9(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)〜S12において、車体にワープ力が作用するように、4つのアクチュエータ30に、前述の式F*=±FMAX・sin(2π・f・t)によって決定される大きさのアクチュエータ力を発生させる。なお、時間tは、本プログラムが実行されている時間であり、前回のプログラム実行時のtにプログラムの実行間隔Δtを加えることにより求められる。そして、そのワープ力を発生させている中で、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容されているか否かを検知する処理(相対動作状態を検知する処理)が行われる。なお、通常は、アクチュエータ30にアクチュエータ力最大値FMAXを発生させたとしても、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容されることはなく、2部材相対動作許容機構における規定作用力が比較的大きく低下した場合に、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容される場合がある。したがって、通常は、S10において、アクチュエータ力を1周期分1/fだけ変動させつつ発生させたと判定され、S8において、アクチュエータ制御プログラムを実行するとともに、イニシャルチェック処理プログラムの実行が終了する。
相対動作状態を検知する処理は、具体的には、まず、S1において、ハイトセンサ224よりばね上ばね下間距離hが取得されるとともに、レゾルバ252よりモータ46の回転角θが取得され、S2において、それぞれの検出値からばね上部とばね下部との接近離間動作量x0,ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの動作量であるユニット相対動作量x1が算出される。次いで、S3において、それら接近離間動作量x0とユニット相対動作量x1とから、ばね下側ユニットとばね下部との変位量である連結機構動作量x2(=x0−x1)が演算され、S4において、連結機構動作量x2が設定された範囲の限界値±x2MAXであるか否かが判定される。先に述べたように、ばね下部側ユニットとばね下部との相対変位が禁止されている状態でなければ、2つの部材の相対動作が許容されないため、連結機構動作量x2が限界値±x2MAXである場合にのみ、S5以下の2つの部材の相対動作が許容されているか否かを判定する処理が行われる。
2つの部材の相対動作が許容されているか否かを判定する処理は、S5において、今回と前回とのプログラム実行時におけるばね上ばね下間距離h,モータ46の回転角θから、推定回転角速度ωe,実回転角速度ωrが演算され、S6において、それらの値が異なるか否かが判定される。それら推定回転角速度ωeと実回転角速度ωrとが互いに異なる場合に、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容されたと判定され、S7において、第2アクチュエータ力限界値Flimit2が、現時点で発生させていたアクチュエータ力に基づいて決定される。また、制限フラグFL1のフラグ値が1とされ、相対動作許容回数Nが1加えられる。なお、この場合、他の3つのアクチュエータ30に対応する制限フラグFL1のフラグ値も1とされるようになっている。そして、S8において、アクチュエータ制御プログラムを実行するとともに、イニシャルチェック処理プログラムの実行が終了する。
ii)アクチュエータ制御プログラム
アクチュエータ制御プログラムによる処理では、通常は、S37において、先に説明したアクチュエータ30の基本的な制御に関する処理、つまり、標準制御を実行するための処理が実行される。その標準制御処理は、図10にフローチャートを示す標準制御サブルーチンが実行されることによって行われるのであり、まず、その標準制御処理の概略から説明する。標準制御処理においては、S51で、振動減衰制御を行うための減衰力成分FVが、S52で、ロール抑制制御を行うためのロール抑制成分FRが、S53で、ピッチ抑制制御を行うためのピッチ抑制成分FPが、それぞれ、先に説明したような方法によって決定される。そして、S54において、それらの成分FV,FR,FPが合計されて目標アクチュエータ力F*が決定される。そして、その決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、アクチュエータ制御プログラムにおけるS38において、モータ46の制御を行うためのデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ204に送信される。このような処理により、各アクチュエータ30のモータ46の作動が制御されることで、各アクチュエータ30は、必要とされるアクチュエータ力を発生させることになる。なお、S55〜S63において、目標アクチュエータ力F*が制限される場合があるが、その場合の処理に関する説明は、ここでの説明は留保し、後に説明することとする。
アクチュエータ制御プログラムによる処理では、上記の標準制御の実行中において、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容されているか否かを検知する処理が行われる。その検知処理は、イニシャルチェック処理プログラムにおけるS1〜S6の処理と同様の処理である。ただし、S28において、推定回転角速度ωeと実回転角速度ωrとが互いに異なり、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容されたと判定された場合、S30において、相対動作許容フラグFL2のフラグ値が1とされ、相対動作許容回数Nが1加えられるようになっている。その相対動作許容フラグFL2のフラグ値が1とされた場合には、次回以降のプログラムの実行時に、S24〜26におけるばね下部側ユニットとばね下部との相対変位が禁止されている状態か否かの判定と、S30における相対動作許容回数Nに1加える処理がスキップされる。なお、相対動作許容回数NがNlimitに達した場合には、インジケータを介して、運転者に報知される。
S28において、推定回転角速度ωeと実回転角速度ωrとが互いに異なり、ナット44のインナチューブ62に対する回転が許容されたと判定されている場合には、先に述べた相対動作発生時制御が実行される。具体的には、S31において、相対動作を消失させることを目的として、実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとの速度差をなくように、目標アクチュエータ力F*が、式F*=sgn(ωe−ωr)・FMAX に従って決定される。
次に、S28において、推定回転角速度ωeと実回転角速度ωrとが一致すると判定され、かつ、S32において、相対動作許容フラグFL2のフラグ値が1であると判定された場合には、2つの部材の相対動作が消失させられたのであり、相対動作消失時制御が実行される。具体的には、S35において、モータ46の発生させるモータ力がそのモータ46の回転動作に対する抵抗力となる回転制動状態を実現するように、目標アクチュエータ力F*が、式F*=−K5・ωrに従って決定され、アクチュエータ30は、実回転角速度ωrに応じた大きさの力を発生させる。
なお、相対動作消失時制御は、相対動作が消失させられた時点から一定時間t0の間、継続して実行されるようになっている。まず、S33において、タイムカウンタがカウントアップされる。このカウンタは、設定時間t0経過したか否かを判定するためのものであり、S34において、このカウンタのカウント値Cが、設定時間t0に相当するカウンタ閾値C0と比較される。なお、このカウンタ値Cは、S30において、再び2つの部材の相対動作が許容された場合にリセットされる。S34において、カウント値Cがカウンタ閾値C0に達していない場合に、S35以下の処理により相対動作消失時制御が実行される。また、カウント値Cがカウンタ閾値C0に達した場合には、S36において、相対動作許容フラグFL2のフラグ値が0とされるとともに、基準調整フラグFL3のフラグ値が1とされ、S37以下の標準制御の処理が実行される。つまり、標準制御に戻されるのである。
2つの部材の相対動作が許容された場合、ハイトセンサ224の基準位置と、レゾルバ252の基準位置とにずれが生じることになる。上記基準調整フラグFL3は、その基準位置のずれが生じたことを示すものである。そして、この基準調整フラグFL3のフラグ値が1とされている場合には、S39以下の処理が実行され、車両が停車してることを条件として、ハイトセンサ224の基準位置と、レゾルバ252の基準位置との調整が行われ、基準調整フラグFL3のフラグ値が0とされる。ちなみに、基準位置にずれが生じている場合には、モータ46の回転動作量にずれが生じ、S26におけるばね下部側ユニットとばね下部との相対変位が禁止されている状態か否かの判定ができないことになるが、標準制御の実行は可能であるため、S40において基準位置の調整が行われるまでは、標準制御が継続して行われるようになっている。
次に、先の説明において留保しているところの標準制御サブルーチンにおけるアクチュエータ力を制限する処理について説明する。目標アクチュエータ力F*は、基本的には、S58,59において、それの大きさがモータ46が発生させるモータ力の限界値に基づいて設定されたアクチュエータ力最大値FMAX以下に制限されるようになっている。ただし、2部材相対動作許容機構における規定作用力が低下した場合には、アクチュエータ30に大きなアクチュエータ力を発生させた場合に2つの部材の相対動作が許容されやすい状態となることを回避するために、アクチュエータ力最大値FMAXより小さな大きさに制限される。具体的には、S56において、相対動作許容回数Nに基づいて第1アクチュエータ力限界値Flimit1が決定され、S57において、その第1アクチュエータ力限界値Flimit1とアクチュエータ力最大値FMAXが比較される。そして、第1アクチュエータ力限界値Flimit1がアクチュエータ力最大値FMAXより小さい場合には、S60,61において、目標アクチュエータ力F*は、第1アクチュエータ力限界値Flimit1以下に制限される。また、イニシャルチェック処理プログラムにおいて、4つのアクチュエータ30のいずれかにおいて、相対動作が許容された場合には、4つのアクチュエータ30の制限フラグFL1のフラグ値が1とされており、その場合には、S62,63において、4つのアクチュエータ30において、目標アクチュエータ力F*が、イニシャルチェック処理プログラムにおいて決定された第2アクチュエータ力限界値Flimit2以下に制限される。
<制御装置の機能構成>
本サスペンションシステム10の制御装置であるECU200は、イニシャルチェック処理プログラムおよびアクチュエータ制御プログラムの実行により、上述したような種々の処理を実行する。この種々の処理の実行によって、ECU200は、図11に示すような機能部を有していると考えることができる。基本的な機能部として、ECU200は、上記標準制御サブルーチンにおけるS51〜S54に従った処理を実行して、標準制御における目標アクチュエータ力を決定する機能部、つまり、アクチュエータ力決定部260を有している。そして、このアクチュエータ力決定部260は、S51の処理を実行して車体および車輪12の振動を減衰させるためのアクチュエータ力の成分を決定する振動減衰制御部262と、S52,53の処理を実行して車体の姿勢変化を抑制するためのアクチュエータ力の成分を決定する車体姿勢変化抑制制御部264とを有している。
また、ECU200は、2部材相対動作許容機構によって相対動作が許容されているか否かを検知する機能部として、2部材相対動作状態検知部270を、その2部材相対動作状態検知部270の検知結果に基づいてアクチュエータ30を制御する機能部として、検知結果依拠制御部272を、それぞれ有している。2部材相対動作状態検知部270は、上記イニシャルチェック処理プログラムにおけるS1〜S6の処理を実行する部分と、上記アクチュエータ制御プログラムにおけるS22〜S28の処理を実行する部分とが相当する。検知結果依拠制御部272は、2部材相対動作発生時制御部274,2部材相対動作消失時制御部276,アクチュエータ力制限部278,最小規定作用力依拠制御部280を有している。具体的に言えば、2部材相対動作発生時制御部274は、相対動作が生じている場合に、その相対動作を消失させるようにモータ46の作動を制御する機能部であり、アクチュエータ制御プログラムにおけるS31の処理を実行する部分が相当する。また、2部材相対動作消失時制御部276は、2つの部材の相対動作が消失した場合に、モータ力がモータ46の回転動作の抵抗力となる回転制動状態を実現するようにモータ46の作動を制御する機能部であり、アクチュエータ制御プログラムにおけるS33〜35の処理を実行する部分が相当する。さらに、アクチュエータ力制限部278は、2つの部材の相対動作が許容された回数に基づいて規定作用力を認定し、その規定作用力に基づいてアクチュエータ力を制限する機能部であり、上記標準制御サブルーチンにおけるS56,57,60,61の処理を実行する部分が相当する。また、最小規定作用力依拠制御部280は、車体にワープ力のみが作用するようにアクチュエータ力を発生させる制御中において、4つのアクチュエータ30のうちの最も小さな規定作用力となる特定アクチュエータとそれの規定作用力である最小規定作用力を認定し、その最小規定作用力に基づいて4つのアクチュエータ30を制御する機能部であり、イニシャルチェック処理プログラムにおけるS7の処理と、標準制御サブルーチンにおけるS55,62,63の処理を実行する部分が相当する。なお、ECU200は、車体にワープ力のみが作用するようにアクチュエータ力を発生させる機能部として、ワープ力付与制御部282を有している。
≪第2実施例≫
第1実施例のシステム10は、スプリング・アブソーバAssy20が連結機構32を含んで構成されていたが、第2実施例の車両用サスペンションシステムにおいては、連結機構が採用されていない。つまり、第2実施例のシステムが備えるスプリング・アブソーバAssy300は、図12に示すように、電磁式のアクチュエータ302と、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング304とを含んで構成されており、それらが一体化されたものとなっている。なお、第2実施例の車両用サスペンションシステムは、第1実施例のシステム10と同様、あるいは類似の構成要素を含んで構成されているため、それらについては、同じ符号を用いるものとし、それらについての説明は、簡略に行うものとする。
<スプリング・アブソーバAssyの構造>
アクチュエータ302は、第1実施例のアクチュエータ30と同様に、ねじロッド310とナット312とを含んで構成されて動作変換機構の主体となるボールねじ機構と、電磁モータ314と、そのモータ314を収容するケーシング316とを備えている。そのケーシング316が、外周部において防振ゴム318を介してマウント部24に連結されている。モータ314は、モータ軸320を有しており、そのモータ軸320には、それの下端部において、いわゆる電磁クラッチに類似する構造のものである電磁式の摩擦クラッチ322を介してねじロッド310が保持されている。そのねじロッド310をモータ軸320に保持させるための構造は、後に詳しく説明する。つまり、モータ314は、ねじロッド310に回転力を付与するものとなっている。
また、アクチュエータ302は、アウターチューブ330と、そのアウターチューブ330に嵌入してそれの上端部から上方に突出するインナチューブ332とを含んで構成されるシリンダ334を有している。アウターチューブ330は、それの下端部に設けられた取付ブシュ336を介してロアアーム22に連結され、インナチューブ332は、上記ねじロッド310を挿通させた状態で上端部がケーシング316に固定されている。インナチューブ332には、それの内底部にナット支持筒338が立設され、それの上端部の内側には、上記ナット312が、ねじロッド310と螺合させられた状態で固定されている。
さらに、アクチュエータ302は、カバーチューブ340を有しており、そのカバーチューブ340が、上端部において防振ゴム342を介してマウント部24の下面側に、上記シリンダ334を挿通させた状態で連結されている。なお、このカバーチューブ340の上端部には、フランジ部344(上部リテーナとして機能する)が形成されており、そのフランジ部344と、アウタチューブ330の外周面に設けられた環状の下部リテーナ346とによって、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング304が挟まれる状態で支持されている。
上述のような構造から、アクチュエータ302は、ねじロッド310,モータ314,ケーシング316,摩擦クラッチ322,インナチューブ332,カバーチューブ340等を含んでマウント部24に連結されるばね上部側ユニットと、ナット312,インナチューブ330,ナット支持筒338等を含んでロアアーム22に連結されるばね下部側ユニットとを有する構造のものとなっており、それらばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが、相対回転不能、かつ、ばね上部とばね上部との接近離間動作に伴って軸線方向に相対移動可能な構造とされている。
次に、ねじロッド310をモータ軸320に保持させるための構造について、図13を参照しつつ説明する。図13は、摩擦クラッチ322の正面断面図である。摩擦クラッチ322は、電磁石350を保持する電磁石保持ユニット352と、モータ軸320が相対回転不能に嵌入されてモータ314のモータ力が入力される入力軸354と、ねじロッド310が相対回転不能に嵌入されてモータ力を出力する出力軸356とを含んで構成される。入力軸354と出力軸356とが、軸受358を介して接続されているため、モータ軸320とねじロッド310とは相対回転可能とされている。ただし、通常は電磁石350に電流が供給されており、その状態においては、電磁石保持ユニット352,入力軸354,および出力軸356が有する環状のクラッチディスク360を結ぶ磁界が形成され、クラッチディスク360が、入力軸354に引き寄せられて入力軸354に設けられた摩擦材362に当接する状態となる。つまり、その状態においては、入力軸354と出力軸356とが一体的に回転するのであり、ねじロッド310のモータ軸320に対する回転が禁止された状態となっている。なお、出力軸356とクラッチディスク360との間には、環状のばねディスク364が介装されており、電磁石350への電流供給が断たれた場合、そのばねディスク364によって、クラッチディスク360が摩擦材362から離されるようになっている。
例えば、路面の凸所を車輪12が通過した場合を考える。その場合、ばね下部が勢いよく上方に動作させられ、ばね下部側ユニットがばね上部側ユニットに対して勢いよく上方に移動することになる。その場合、ねじロッド310とナット312との間には大きな回転力が作用する。そして、その回転力が、上記摩擦クラッチ322におけるクラッチディスク360と入力軸354との間に生じる摩擦力より大きい場合には、クラッチディスク360と入力軸354との相対回転、つまり、ねじロッド310とモータ軸320との相対回転が許容されることになる。つまり、アクチュエータ302は、動作変換機構が、2つの部材としてのねじロッド310およびモータ軸320の間に規定作用力を超える力が作用した場合に、それら2つの部材の相対回転を許容する構造の2部材相対動作許容機構を有するものとされている。また、摩擦クラッチ322は、電磁石350への供給電流の大きさを変更することで、クラッチディスク360と入力軸354との間に生じる摩擦力の大きさ、つまり、規定作用力を変更することが可能である。したがって、本実施例のシステムにおける2部材相対動作許容機構は、規定作用力変更装置を有するものとされている。なお、上記の電磁石350への供給電流Iの大きさは、システムの初期設定により定められており、規定作用力が、図6に示す作用力f0となるように、初期供給電流I0に設定されている。
<サスペンションシステムの制御>
本実施例のシステムにおいて、通常時に実行される標準制御は、第1実施例のシステム10と同様の制御であり、振動減衰制御と車体姿勢変化抑制制御とを併せた制御が実行される。そして、本実施例のシステムは、上記標準制御の実行中において、摩擦クラッチ322によってねじロッド310とモータ軸320との相対回転が許容されているか否かを検知するとともに、その検知結果に基づいてアクチュエータ302を制御する機能を有している。
本実施例においては、連結機構が採用されていないため、ばね上部とばね下部との接近離間動作量と、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量とは一致し、それらの動作速度の各々も一致することになる。つまり、本実施例においては、相対動作状態を検知する処理が、常に行われるようになっている。したがって、本実施例のシステムのECU400によって実行される図14にフローチャートを示すイニシャルチェック処理プログラムは、図8におけるS2〜S4を省略したものとなっており、図15にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムは、図9におけるS23〜S26を省略したものとなっている。なお、本実施例における相対動作状態を検知する処理は、第1実施例と同様であり、レゾルバ252の検出値から求められたモータ314の実際の回転角速度である実回転角速度ωrと、ハイトセンサ224の検出値から推定されたモータ314の回転角速度である推定回転角速度ωeとを比較することによって行われ、それら実回転角速度ωrと推定回転角速度ωeとが互いに異なる場合に、ねじロッド310とモータ軸320との相対回転が生じていると判定される。
上述した相対動作状態を検知する処理による検知結果に基づいて、アクチュエータ302を制御する検知結果依拠制御として、第1実施例と同様に、相対動作発生時制御,相対動作消失時制御,アクチュエータ力制限処理,イニシャルチェックが実行される。ただし、本実施例のシステムでは、相対動作消失時制御が、モータ314の発生させるモータ力がそのモータ314の回転動作の抵抗力となる回転制動状態が、モータ314の各相の通電端子間を短絡させることによって実現されるようになっている(図15のS100)。具体的に言えば、インバータ204のhigh側のスイッチング素子HUS,HVS,HWSのすべてをON状態(閉状態),low側のスイッチング素子LUS,LVS,LWSのすべてをOFF状態(開状態)とすることで、スイッチング素子HUS,HVS,HWSと、それらに並設された還流ダイオードとにより、モータ314の各相の通電端子間が、あたかも相互に短絡させられた状態とするのである。
また、本実施例のシステムでは、2部材相対動作許容機構が規定作用力変更装置としての摩擦クラッチ322を有しているため、その摩擦クラッチ322が、規定作用力の低下を補うように制御される。詳しく言えば、初期設定での規定作用力f0(以下、「初期設定作用力f0」という場合がある)を維持するように、摩擦クラッチ322の電磁石350への供給電流Iが制御される。その制御は、ECU400により、図16にフローチャートを示す規定作用力補足制御プログラムが実行されることによって行われる。そのフローチャートを参照しつつ詳しく説明すれば、まず、第1実施例と同様に、図6に示す相対動作許容回数Nに対する規定作用力fのマップデータから、規定作用力fが認定される(S112)。その認定された規定作用力fと初期設定作用力f0との差分Δf(=f0−f)に基づいて、供給電流Iが次式に従って決定されるのである(S113)。
I=I0+K6・Δf (K6:ゲイン)
したがって、本実施例のシステムでは、2部材相対動作許容機構における規定作用力が、初期設定作用力f0に維持されるのである。
なお、上記の規定作用力の低下を補う制御(以下、「規定作用力補足制御」という場合がある)は、常に実行されるのではなく、電源の消費電力を抑制する目的で、次のことを条件として実行されるようになっている。まず、1つ目の条件は、目標アクチュエータ力F*が、閾値F0を超えることである(S110)。アクチュエータ302が比較的大きな力を発生させている場合において、そのアクチュエータ力が抵抗力となるような入力がばね下部からあると、2つの部材の相対動作が生じやすいと考えられる。そこで、目標アクチュエータ力F*が、閾値F0を超えるような場合には、規定作用力補足制御が実行される。また、2つ目の条件は、車体姿勢変化抑制制御が実行されていることである(S111)。車体姿勢変化抑制制においては、車体の姿勢の変化量を低減するために比較的大きなアクチュエータ力を発生させることになるため、上述した理由により、規定作用力補足制御が実行される。
<制御装置の機能構成>
本実施例のサスペンションシステムの制御装置であるECU400は、イニシャルチェック処理プログラム,アクチュエータ制御プログラム,規定作用力補足制御プログラムの実行により、上述したような種々の処理を実行する。この種々の処理の実行によって、ECU400は、図17に示すような機能部を有していると考えることができる。図11に示した第1実施例のものと類似するものであるが、本実施例のシステムにおいては、アクチュエータ302において、2部材相対動作許容機構が規定作用力変更装置として摩擦クラッチ322を有するものとされている。そして、本実施例においては、検知結果依拠制御部410が、規定作用力の低下を補うように規定作用力変更装置を制御する機能部として、規定作用力補足部412を含んで構成されているのである。
≪変形例≫
上記2つの実施例におけるアクチュエータは、それの構造が特に限定されるものではない。第1実施例における2部材相対動作許容機構は、トレランスリング70を含んで構成され、第2実施例における2部材相対動作許容機構は、電磁式の摩擦クラッチ322を含んで構成されて規定作用力変更装置を有する構造のものとされていたが、それらを入れ換えた構造のアクチュエータであってもよい。また、上記2つの実施例におけるアクチュエータは、ねじ機構のロッドが回転する構造のものであったが、ナットが回転する構造のものであってもよく、例えば、その構造等に応じて、2部材相対動作許容機構を適切な箇所に配設したものを採用可能である。さらに、そのアクチュエータを、連結機構を介してばね上部とばね下部との一方に連結した構造とするか否かも限定されない。なお、2部材相対動作許容機構の具体的な構造も限定されず、上記トレランスリング,電磁式の摩擦クラッチ等の他に、種々のクラッチに類似する構造のものや、いわゆるトルクリミッタ機構であるガイアドライブ,トルクキーパー等を採用可能である。
上記2つの実施例のシステムにおいては、2部材装置動作状態検知部が、電磁モータの回転動作の速度を指標するモータの回転角速度を動作速度指標として採用して、検知を行うものとされていたが、動作速度指標として、ばね上部とばね下部との接近離間動作の速度を採用してもよい。具体的には、2部材装置動作状態検知部が、動作量センサとしてのハイトセンサ224の検出値から得られる実際の接近離間動作の速度と、回転量センサとしてのレゾルバ252の検出値から推定される接近離間動作の速度とを比較する構成であってもよい。また、ばね上部とばね下部との接近離間動作量に代えて、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量を採用することも可能である。つまり、2部材装置動作状態検知部が、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量を検出するセンサ、換言すれば、アクチュエータの伸縮量(長さ)を検出するセンサを利用して、検知を行うように構成されてもよい。
上記2つの実施例のシステムにおいては、検知結果依拠制御部が、2部材相対動作発生時制御部,2部材相対動作消失時制御部,アクチュエータ力制限部,最小規定作用力依拠制御部等の種々の機能部を有するものとされていたが、その複数のもののうちから少なくとも1つを含んで構成されればよい。また、第1実施例における2部材相対動作消失時制御部は、モータの通電電流を制御してモータの動作に対する抵抗力を発生させるように構成され、第2実施例における2部材相対動作消失時制御部は、モータの各相の通電端子間を導通させることでモータの動作に対する抵抗力を発生させるように構成されいたが、それらを入れ換えた構成のものであってもよい。さらに、アクチュエータ力制限部は、車両が製造された時から2つの部材の相対動作が許容された累積の回数に基づいて、規定作用力を認定するように構成されていたが、ある設定された期間の間に2つの部材の相対動作が許容された回数、つまり、相対動作が許容された頻度に基づいて、規定作用力を認定するように構成されてもよい。
請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1に示すスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 図2に示すアクチュエータが備える2部材相対動作許容機構を示す平面断面図(図1におけるA−A断面)である。 図2の電磁モータを駆動する駆動回路であるインバータの回路図である。 路面の凸所を車輪が通過する場合における回転量センサから得られる電磁モータ実回転角速度と動作量センサから推定される推定回転角速度との時間的変化を示す図である。 2部材相対動作許容機構によって2つの部材の相対動作が許容された回数Nと規定作用力との関係を示す図である。 車体に作用させるワープ力を示す概念図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるイニシャルチェック処理プログラムを表すフローチャートである。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 図9のアクチュエータ制御プログラムの一部分である標準制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットの機能に関するブロック図である。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 図12に示すアクチュエータが備える2部材相対動作許容機構を示す正面断面図である。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットによって実行されるイニシャルチェック処理プログラムを表すフローチャートである。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットによって実行される規定作用力補足制御プログラムを表すフローチャートである。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットの機能に関するブロック図である。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 20:スプリング・アブソーバAssy 22:ロアアーム(ばね下部) 24:マウント部(ばね上部) 30:アクチュエータ 32:連結機構 34:エアスプリング 42:ねじロッド(雄ねじ) 44:ナット(雌ねじ) 46:電磁モータ 70:トレランスリング(摩擦係合部材) 80:液圧式ダンパ 96,100:圧縮コイルスプリング(支持スプリング) 140,144〜152:緩衝ゴム 200:サスペンション電子制御ユニット[サスペンションECU](制御装置) 204:インバータ[INV] 224:ハイトセンサ[h](動作量センサ) 252:レゾルバ[θ](回転量センサ) 260:アクチュエータ力決定部 262:振動減衰制御部 264:車体姿勢変化抑制制御部 270:2部材相対動作状態検知部 272:検知結果依拠制御部 274:2部材相対動作発生時制御部 276:2部材相対動作解消時制御部 278:アクチュエータ力制限部 280:最小規定作用力依拠制御部 282:ワープ力付与制御部 300:スプリング・アブソーバAssy 302:アクチュエータ 310:ねじロッド 312:ナット 314:電磁モータ 322:電磁式の摩擦クラッチ(2部材相対動作許容機構,規定作用力変更装置) 400:サスペンション電子制御ユニット[サスペンションECU](制御装置) 410:検知結果依拠制御部 412:規定作用力補足部

Claims (12)

  1. (A)ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、(B)ばね下部に連結され、ばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作するばね下部側ユニットと、(C)回転動作する電磁モータと、(D)前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作と前記電磁モータの回転動作とを相互に変換する動作変換機構とを有し、前記電磁式モータが発生させる回転力に依拠して、前記ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式のアクチュエータと、
    前記電磁モータの作動を制御することで、前記アクチュエータを制御する制御装置と
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    前記動作変換機構が、(D-1)当該動作変換機構による動作変換を可能とすべく相対動作が禁止される2つの部材と、(D-2)それら2つの部材の間に作用する力が規定された大きさの力である規定作用力を超える場合に、前記2つの部材の相対動作を許容して、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作と前記電磁モータの回転動作とが個別に行われるようにする2部材相対動作許容機構とを有し、
    前記制御装置が、前記2部材相対動作許容機構によって前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知する2部材相対動作状態検知部と、その2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいて前記アクチュエータを制御する検知結果依拠制御部とを有する車両用サスペンションシステム。
  2. 当該サスペンションシステムが、(a)ばね上部とばね下部との接近離間動作量と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量との一方を検出する動作量センサと、(b)前記電磁モータの回転量を検出する回転量センサとを備え、
    前記2部材相対動作状態検知部が、前記動作量センサの検出値と前記回転量センサの検出値とに基づいて、前記2部材相対動作許容機構によって前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知するように構成された請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. ばね上部とばね下部との接近離間動作と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作との一方の速度と、前記電磁モータの回転動作の速度とのいずれかを指標するものを動作速度指標と定義した場合において、
    前記2部材相対動作状態検知部が、前記動作量センサによって検出された前記ばね上部とばね下部との接近離間動作量とばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量との一方に基づいて推定された前記動作速度指標である第1動作速度指標と、前記回転量センサによって検出された前記電磁モータの回転量に基づいて推定された前記動作速度指標である第2動作速度指標とを比較して、前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知するように構成された請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記検知結果依拠制御部が、
    前記動作変換機構が有する前記2つの部材の相対動作が生じている場合に、前記2つの部材の相対動作を消失させるように、前記電磁モータの作動を制御する2部材相対動作発生時制御部を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記検知結果依拠制御部が、
    前記動作変換機構が有する前記2つの部材の相対動作が消失した場合に、前記電磁モータの発生させるモータ力がその電磁モータの回転動作の抵抗力となる回転制動状態を実現するように、前記電磁モータの作動を制御する2部材相対動作消失時制御部を有する請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記検知結果依拠制御部が、
    前記2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいて前記規定作用力を認定し、その認定結果に基づき、前記アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力を、認定された前記規定作用力以下に制限するアクチュエータ力制限部を有する請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記アクチュエータ力制限部が、前記動作変換機構が有する前記2つの部材の相対動作の許容された回数に基づいて前記規定作用力を認定するように構成された請求項6に記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記2部材相対動作許容機構が、前記規定作用力を変更する規定作用力変更装置を有し、
    前記検知結果依拠制御部が、
    前記2部材相対動作状態検知部の検知結果に基づいて前記規定作用力を認定し、その認定結果に基づき、前記規定作用力の低下を補うように前記規定作用力変更装置を制御する規定作用力補足部を有する請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  9. 前記規定作用力補足部が、前記アクチュエータが発生させるべきアクチュエータ力が設定された大きさを超えることを条件として、前記規定作用力の低下を補うように前記規定作用力変更装置を制御するように構成された請求項8に記載の車両用サスペンションシステム。
  10. 前記制御装置が、前記アクチュエータの発生させるべきアクチュエータ力の少なくとも一成分を、車体の姿勢変化を抑制する力として発生させる車体姿勢変化抑制制御を実行するようにされ、
    前記規定力補足部が、前記車体姿勢変化抑制制御の実行を条件として、前記規定作用力の低下を補うように前記規定作用力変更装置を制御するように構成された請求項8または請求項9に記載の車両用サスペンションシステム。
  11. 当該車両用サスペンションシステムが、
    前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方を、その一方が連結されるばね上部とばね下部との一方に弾性的に支持させる支持スプリングを有し、それら一方どうしを連結する連結機構を備え、
    その前記連結機構が、前記支持スプリングが伸縮することによる前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対変位が設定範囲を超えることを禁止するストッパを備え、
    前記2部材相対動作状態検知部が、前記ストッパにより前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方と前記ばね上部とばね下部との一方との相対変位が禁止されていることを条件として、前記2部材相対動作許容機構によって前記2つの部材の相対動作が許容されているか否かを検知するように構成された請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  12. 当該車両用サスペンションシステムが、
    車両が有する前後左右の4つの車輪に対応して設けられ、それぞれが前記アクチュエータである4つのアクチュエータを備え、
    前記制御装置が、前記4つのアクチュエータの各々が有する前記電磁モータの作動を制御することで、それら4つのアクチュエータを制御するものであり、それら4つのアクチュエータの各々が発生させるべきアクチュエータ力を、車体にワープ力のみが作用するように発生させる制御であるワープ力付与制御を実行可能とされ、
    前記検知結果依拠制御部が、
    前記ワープ力付与制御の実行中において、前記4つのアクチュエータのうちの前記2部材相対動作許容機構の前記規定作用力が最も小さな値となるものを特定アクチュエータとして認定するとともに、その特定アクチュエータの前記規定作用力を最小規定作用力として認定し、その最小規定作用力に基づいて、前記4つのアクチュエータの各々が発生させるアクチュエータ力を制御する最小規定作用力依拠制御部を有する請求項1ないし請求項11のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102627063A (zh) * 2012-03-05 2012-08-08 江苏大学 电磁馈能型半主动悬架运动方向实时控制装置及方法
US10093323B2 (en) 2012-02-13 2018-10-09 Jaguar Land Rover Limited Driver advice system for a vehicle
WO2023066451A1 (en) * 2021-10-18 2023-04-27 Jaguar Land Rover Limited Pre-emptive suspension loads management system

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