JP4858292B2 - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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    • B60G17/02Spring characteristics, e.g. mechanical springs and mechanical adjusting means
    • B60G17/021Spring characteristics, e.g. mechanical springs and mechanical adjusting means the mechanical spring being a coil spring

Description

本発明は、ばね上部とばね下部との相対動作に対して力を発生させる電磁式のショックアブソーバを含んで構成される車両用サスペンションシステムに関する。
近年では、車両用のサスペンションシステムとして、電磁式モータの力に依拠してばね上部とばね下部との相対動作に対して力を発生させる電磁式のショックアブソーバ(以下、単に「アブソーバ」という場合がある)を含んで構成される電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のシステムが存在する。この電磁式サスペンションシステムは、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく振動減衰特性を容易に実現できる等の利点から、高性能なシステムとして期待されている。
特開2005−82149号公報 特開2003−223220号公報
上記特許文献2に記載されているシステムでは、システムに何らかの失陥が生じた場合に、電磁式モータの各相に対応するコイル間を短絡させることで、減衰力を発生させるようにされている。また、上記特許文献1に記載されているシステムでは、モータの各相に対応するコイル間を短絡させることが可能なスイッチを設け、そのスイッチをパルス状にON/OFFすることによって、アブソーバに発生させる減衰力を変化させるようにされている。しかし、それらいずれのシステムも、実用性という点において充分とは言い難い。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いサスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のサスペンションシステムは、ばね上部が上下方向に絶対動作する向きであるばね上絶対動作方向とばね上部がばね下部に対して動作する向きであるばね上相対動作方向とが逆向きである場合に、ショックアブソーバが有する電磁式モータの各相の通電端子間を開放させて電磁式モータに電流が流れない非通電状態とし、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが同じ向きである場合に、各相の通電端子間を相互に導通させることによって電磁式モータに電流が流れる特定通電状態とすることで、ばね上部の振動を抑制する制御を実行可能に構成され、その制御の実行時において、ばね下共振周波数域の振動が検出された場合には、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが逆向きである場合であっても特定通電状態とし、その場合に電磁式モータに流れる電流量が、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが同じ向きである場合に前記電磁式モータに流れる電流量より小さくなるように開放・導通切換器を制御することを特徴とする。
本発明のサスペンションシステムは、ショックアブソーバが有する電磁式モータの各相の通電端子間を開放させた状態と導通させた状態との切り換えだけで、いわゆるスカイフック理論に基づく振動減衰特性に類似する振動減衰特性を実現することが可能である。また、本発明のシステムによれば、ばね下共振周波数域の振動が検出された場合には、非通電状態とはせず、ばね上部とばね下部との相対動作に対してある程度の抵抗力を発生させる状態とするため、ばね下共振周波数域の振動を減衰することが可能となる。したがって、本発明のシステムによれば、電源からの電力供給も必要とせずに、簡便な制御によって、効果的なばね上部の振動減衰が可能なため、実用性の高いサスペンションシステムが構築されることになる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発
明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項,(5)項,(6)項,(8)項を合わせたものが請求項1に、請求項1に(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項2に(3)項および(4)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれかに(7)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれかに(9)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、それぞれ相当する。
(1)ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングと、
そのサスペンションスプリングと並列的に配設されるとともに、電磁式モータを有してその電磁式モータの力に依拠してばね上部とばね下部との相対動作に対する力であるアブソーバ力を発生可能な電磁式のショックアブソーバと、
そのショックアブソーバを制御する制御装置であって、ばね上部の絶対動作する向きであるばね上絶対動作方向とばね上部がばね下部に対して動作する向きであるばね上相対動作方向とが逆向きである場合に、前記電磁式モータの各相の通電端子間を開放させることによって前記電磁式モータに電流が流れない状態である非通電状態とし、前記ばね上絶対動作方向と前記ばね上相対動作方向とが同じ向きである場合に、前記電磁式モータの各相の通電端子間を相互に導通させることによって前記電磁式モータに電流が流れる状態である特定通電状態とすることで、ばね上部の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能な制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「ばね上絶対動作方向」は、ある空間(絶対空間)内においてばね上部が上下方向に動作する向きを意味し、また、極端に言えば、地球の中心に対する上下方向の動作と考えることもできる。その「ばね上絶対動作方向」と「ばね上相対動作方向」とが同じ向きである場合、具体的に言えば、ばね上部が上方に動作しつつばね上部とばね下部とが接近する場合、あるいは、ばね上部が下方に動作しつつばね上部とばね下部とが離間する場合には、コンベンショナルなショックアブソーバを備えるシステムでは、そのショックアブソーバによって、ばね上部に対してばね上部が動作する向き(ばね上絶対動作方向)とは反対向きの力が作用し、ばね上部の振動が減衰させるられることとなる。一方、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが逆向きである場合、具体的に言えば、ばね上部が上方に動作しつつばね上部とばね下部とが離間する場合、あるいは、ばね上部が下方に動作しつつばね上部とばね下部とが接近する場合には、コンベンショナルなショックアブソーバによって、ばね上部に対してばね上部が動作する向きと同じ向きの力が作用し、ばね上部の振動が助長させられることとなる。
本項に記載の「振動抑制制御」は、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが逆向きである場合に、ショックアブソーバが有する電磁式モータの各相の通電端子間を開放させてモータに電流が流れない非通電状態とすることにより、アブソーバ力を略発生させないようにしてばね上部の振動を助長しないようにし、ばね上動作方向とばね上作用力方向とが同じ向きである場合に、各相の通電端子間を導通させてモータに電流が流れる特定通電状態とすることにより、アブソーバ力をばね上部とばね下部との相対動作に対する抵抗力として発生させる状態としてばね上部の振動を減衰させることで、ばね上部の振動を抑制する制御である。つまり、振動抑制制御は、電源から電力の供給を受けずに、専ら起電力によって電磁式モータに生じた発電電流に依拠した力を発生させる制御である。なお、本項に記載の「特定通電状態」は、通電端子間を常に導通させた状態に限定されるものではなく、通電端子間をパルス状に導通させた状態としてモータに電流が流れる状態も含まれる。その「通電端子間の導通」とは、通電端子間に何らかの抵抗を存在させた状態であってもよく、また、通電端子間を短絡させた状態であってもよい。ちなみに短絡させた場合には、抵抗を存在させた場合に比較して大きな力を発生させることが可能である。
本項に記載の態様によれば、電磁式モータの各相の通電端子間を開放させた状態と導通させた状態との切り換えだけの簡便な制御によって、いわゆるスカイフック理論に基づく振動減衰特性に類似する振動減衰特性を実現することが可能である。また、振動抑制制御は、上述したように、アブソーバ力を発生させる場合に、専ら電磁式モータの発電電流に依拠して、ばね上部とばね下部との相対動作に対する抵抗力を発生させる制御であるため、本項の態様によれば、省電力で、良好な振動減衰特性が得られるサスペンションシステムが実現する。
本項の態様における「サスペンションスプリング」には、例えば、コイルスプリングや、エアスプリングのような流体スプリング等、種々のスプリングを採用することが可能である。本項の態様における「電磁式のショックアブソーバ」は、それの具体的な構造が限定されるものではない。また、電磁式モータの発電電流に依拠した力のみを発生可能なものに限定されず、電源から供給される電流に依拠した力をも発生可能なものであってもよい。例えば、ばね上部とばね下部とを積極的に相対動作させる推進力や、外部からの入力に対してばね上部とばね下部とを相対動作させないようにする力、具体的には、ばね上絶対動作の速度に基づいてばね上振動に対する減衰力を発生可能なものや、車体のロールやピッチを抑制するための車体姿勢制御力を発生可能なものであってもよい。ショックアブソーバの動力源である「電磁式モータ」も、その型式等は特に限定されず、DCブラシレスモータを始めとして種々の型式のモータを採用可能であり、また、動作に関して言えば、回転モータであっても、リニアモータであってもよい。
(2)前記制御装置が、
前記アブソーバ力を、ばね上部の前記ばね上絶対動作方向の速度であるばね上絶対速度に基づいて制御しつつばね上部の振動に対する減衰力として発生させる第2の振動抑制制御を実行可能とされるとともに、その第2の振動抑制制御と前記振動抑制制御とを切り換え可能に構成された(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく制御を実行可能とされた態様である。つまり、本項の態様は、場合によって、電源から供給される電流に依拠した力をも発生させるアクティブな制御を実行可能な態様であり、上記第2の振動抑制制御によって、優れた振動抑制効果が得られることになる。なお、第2の振動抑制制御には、スカイフックダンパ理論に基づく制御に加え、ばね下絶対速度に基づいてばね下振動に対する減衰力を発生させる擬似的なグランドフック理論に基づく制御を実行可能とし、それらの両者を総合的に実行するような制御を採用してもよい。
前述した振動抑制制御は、先に述べたように、アブソーバ力を発生させる場合に、電力供給を受けずに、専ら発電電流に依拠した力を発生させるパッシブな制御であるといえ、その振動抑制制御と「第2の振動抑制制御」とが切り換え可能に構成された本項の態様は、パッシブ制御とアクティブ制御とが切換可能な態様と考えることもできる。本項の態様は、例えば、通常時にアクティブな第2の振動抑制制御を実行し、電源が電流を供給できない失陥等、例えば、電源の電圧が閾値より低下した場合,電源の充電量の低下が生じた場合にパッシブな振動抑制制御を実行する態様を採用可能であり、本項の態様によれば、フェールセーフという観点において実用的なシステムが実現する。なお、第2の振動抑制制御から振動抑制制御に切り換えた場合であっても、振動抑制制御によっていわゆるスカイフック制御に類似する制御が可能であることから、振動抑制性能の低下は小さく、乗り心地の悪化を抑制することが可能である。
(3)前記制御装置が、
電源の高電位側端子と前記電磁式モータの各相の通電端子との間に設けられた高電位側スイッチング素子と、電源の低電位側端子と各相の通電端子との間に設けられた低電位側スイッチング素子とからなるスイッチング素子対を、前記電磁式モータの相数に対応して複数対有し、それらのスイッチング素子の作動を制御して前記電磁式モータに流れる電流量を調整する駆動回路を有する(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(4)前記制御装置が、
前記アブソーバ力を、少なくとも前記ばね上絶対速度に基づいて決定して少なくともばね上部の振動に対する減衰力として発生させる第2の振動抑制制御を実行可能とされるとともに、その第2の振動抑制制御と前記振動抑制制御とを切り換え可能に構成され、
前記駆動回路によって前記電磁式モータに流れる電流量を調整することで、前記第2の振動抑制制御における前記アブソーバ力を制御する(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、制御装置が、いわゆるインバータを含んで構成された態様である。インバータは、例えば、各相ごとに設けられたFET等のスイッチング素子の作動を、電磁式モータの電気角に応じて制御可能な構造のものであればよく、PWM(Pulse Width Modulation)制御を実行可能な構造のものを採用することが望ましい。インバータによれば、電磁式モータの制御を容易にかつ正確に行うことが可能であるため、先に述べた振動抑制制御と第2の振動抑制制御とを切換可能に構成された態様において、第2の振動抑制制御で発生させるアブソーバ力は、この駆動回路によってモータに流れる電流量である通電電流量を調整することで制御されることが望ましく、後者の態様は、そのように構成された態様である。なお、後者の態様において、振動抑制制御は、後に説明するように、駆動回路によって実行されてもよく、駆動回路とは別に設けられた開放状態と導通状態とを切り換える切換器等によって実行されてもよい。
(5)前記制御装置が、
前記電磁式モータの各相の通電端子間を開放させた状態と導通させた状態とを切り換える開放・導通切換器を有し、その開放・導通切換器の作動を制御することで、前記非通電状態と前記特定通電状態とを実現して前記振動抑制制御を実行可能とされた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「開放・導通切換器」は、例えば、通電端子間のON/OFFを切り換えることで開放状態と導通状態とを切り換える構造のものであってもよく、後に詳しく説明するように、電磁式モータの発電を制限して電磁式モータに流れる電流量を調整することで、開放状態と導通状態とを実現する構造のものであってもよい。前者の開放・導通切換器としては、リレー,スイッチ等を採用可能である。
(6)前記開放・導通切換器が、前記電磁式モータの発電を制限することで、その電磁式モータに流れる電流量を調整する構造とされた(5)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、開放・導通切換器を、電磁式モータに流れる電流量を調整する構造のものに限定した態様であり、振動抑制制御における減衰係数を変更するような効果が得られることとなる。なお、本項の態様においては、電流量を0に調整することで開放状態を実現可能である。開放・導通切換器としては、例えば、FET,可変抵抗器等を採用可能である。ちなみに、先に述べた駆動回路を制御することによって振動抑制制御を実行する態様である場合には、その駆動回路が、本項の態様における開放・導通切換器であると考えることができる。
(7)前記制御装置が、前記振動抑制制御の実行時において、前記開放・導通切換器が前記非通電状態と前記特定通電状態とを切り換える際に、前記電磁式モータに流れる電流量を漸変させるように前記開放・導通切換器を制御する(6)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、電流量が、連続的に、平たく言えば、無段階に変更される態様っであってもよく、また、特定通電状態においてモータに流す電流量と0との間の離散的ないくつかの値に、平たく言えば、段階的に電流量が変更される態様であってもよい。本項に記載の態様によれば、例えば、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とのいずれかが反対向きになった後の経過時間等に応じて、電流量を漸変させることで、減衰力が急変することを抑制あるいは防止することが可能である。
(8)前記制御装置が、前記振動抑制制御の実行時において、ばね下共振周波数域の振動が検出された場合には、前記ばね上絶対動作方向と前記ばね上相対動作方向とが逆向きである場合であっても前記特定通電状態とし、その場合に前記電磁式モータに流れる電流量が、前記ばね上絶対動作方向と前記ばね上相対動作方向とが同じ向きである場合に前記電磁式モータに流れる電流量より小さくなるように前記開放・導通切換器を制御する(6)項または(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、電磁式モータの各相の通電端子間を開放させた非通電状態において、例えば車輪からばね下共振周波数域の振動が入ると、その振動への対処が、ほとんどできない状態となってしまう。本項の態様によれば、振動抑制制御の実行中における非通電状態に代え、特定通電状態を継続して、ばね上部とばね下部との相対動作に対してある程度の抵抗力を発生させる状態とするため、ばね下共振周波数域の振動を減衰すること,接地性の低下を抑制することが可能となる。
(9)前記制御装置が、
電源の高電位側端子と前記電磁式モータの各相の通電端子との間に設けられた高電位側スイッチング素子と、電源の低電位側端子と各相の通電端子との間に設けられた低電位側スイッチング素子とからなるスイッチング素子対を、前記電磁式モータの相数に対応して複数対有し、それらのスイッチング素子の作動を制御して前記電磁式モータに流れる電流量を調整する駆動回路を有し、
前記複数のスイッチング素子対のスイッチング素子の作動を制御することによって前記非通電状態と前記特定通電状態とを実現して前記振動抑制制御を実行可能とされることで、前記駆動回路を前記開放・導通切換器として機能させる(5)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様によれば、従来の電磁式サスペンション装置に対して、余計に部品等を付け加える必要がないため、簡便な構造のシステムを実現可能である。
(10)前記制御装置が、
電源の高電位側端子と前記電磁式モータの各相の通電端子との間に設けられた高電位側スイッチング素子と、電源の低電位側端子と各相の通電端子との間に設けられた低電位側スイッチング素子とからなるスイッチング素子対を、前記電磁式モータの相数に対応して複数対有し、それらのスイッチング素子の作動を制御して前記電磁式モータに流れる電流量を調整する駆動回路を有し、
その駆動回路とは別に前記開放・導通切換器を有する(5)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、例えば、スイッチング素子の故障等のように、駆動回路に失陥が生じて、第2の振動抑制制御が実行不能となった場合であっても、開放・導通切換器によって振動抑制制御を実行可能である。本項に記載の態様に加えて、さらに、駆動回路によって振動抑制制御と第2の振動抑制制御とを実行可能とされた態様を採用すれば、例えば、通常時に第2の振動抑制制御を実行し、電源が電流を供給できない失陥等が生じた場合に駆動回路によって振動抑制制御を実行し、駆動回路に失陥が生じた場合に駆動回路とは別に設けられた開放・導通切換器によって振動抑制制御を実行するような態様とすることが可能である。つまり、本項の態様によれば、フェールセーフという観点において優れたシステムとなる。
以下、請求可能発明の実施例およびその変形例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<サスペンションシステムの構成>
図1に、請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
スプリング・アブソーバAssy20は、図2に示すように、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設された電磁式ショックアブソーバとしてのアクチュエータ26と、それと並列的に設けられたサスペンションスプリングとしてのエアスプリング28とを備えている。
アクチュエータ26は、アウタチューブ30と、そのアウタチューブ30に嵌入してアウタチューブ30の上端部から上方に突出するインナチューブ32とを含んで構成されている。アウタチューブ30は、それの下端部に設けられた取付部材34を介してロアアーム22に連結され、一方、インナチューブ32は、それの上端部に形成されたフランジ部36においてマウント部24に連結されている。アウタチューブ30には、その内壁面にアクチュエータ26の軸線の延びる方向(以下、「軸線方向」という場合がある)に延びるようにして1対のガイド溝38が設けられるとともに、それらのガイド溝38の各々には、インナチューブ32の下端部に付設された1対のキー40の各々が嵌まるようにされており、それらガイド溝38およびキー40によって、アウタチューブ30とインナチューブ32とが、相対回転不能、軸線方向に相対移動可能とされている。ちなみに、アウタチューブ30の上端部には、シール42が付設されており、後に説明する圧力室44からのエアの漏れが防止されている。
また、アクチュエータ26は、ねじ溝が形成された雄ねじ部としてのねじロッド50と、ベアリングボールを保持してそのねじロッド50と螺合する雌ねじ部としてのナット52とを含んで構成されたボールねじ機構と、動力源としての電磁式モータ54(以下、単に「モータ54」という場合がある)とを備えている。モータ54はモータケース56に固定して収容されるとともに、そのモータケース56の鍔部がマウント部24の上面側に固定されており、モータケース56の鍔部にインナチューブ32のフランジ部36が固定されていることで、インナチューブ32は、モータケース56を介してマウント部24に連結されている。モータ54の回転軸であるモータ軸58は、ねじロッド50の上端部と一体的に接続されている。つまり、ねじロッド50は、モータ軸58を延長する状態でインナチューブ32内に配設され、モータ54によって回転させられる。一方、ナット52は、ねじロッド50と螺合させられた状態で、アウタチューブ30の内底部に付設されたナット支持筒60の上端部に固定支持されている。
エアスプリング28は、マウント部24に固定されたチャンバシェル70と、アクチュエータ26のアウタチューブ30に固定されたエアピストン筒72と、それらを接続するダイヤフラム74とを備えている。チャンバシェル70は、概して有蓋円筒状をなし、蓋部76に形成された穴にアクチュエータ26のインナチューブ32を貫通させた状態で、蓋部76の上面側においてマウント部24の下面側に固定されている。エアピストン筒72は、概して円筒状をなし、アウタチューブ30を嵌入させた状態で、アウタチューブ30の上部に固定されている。それらチャンバシェル70とエアピストン筒72とは、ダイヤフラム74によって気密性を保ったまま接続されており、それらチャンバシェル70とエアピストン筒72とダイヤフラム74とによって圧力室44が形成されている。その圧力室44には、流体としての圧縮エアが封入されている。このような構造から、エアスプリング28は、その圧縮エアの圧力によって、ロアアーム22とマウント部24、つまり、車輪12と車体とを弾性的に連結しているのである。
上述のような構造から、ばね上部とばね下部とが接近・離間する場合、アウタチューブ30とインナチューブ32とは、軸線方向に相対移動が可能とされている。その相対移動に伴って、ねじロッド50とナット52とが軸線方向に相対移動するとともに、ねじロッド50がナット52に対して回転する。モータ54は、ねじロッド50に回転トルクを付与可能とされ、この回転トルクによって、ばね上部とばね下部との相対動作(ストローク動作)に対して、そのストローク動作を阻止する抵抗力を発生させることが可能とされている。この抵抗力をばね上部とばね下部とのストローク動作に対する減衰力として作用させることで、アクチュエータ26は、いわゆるショックアブソーバとして機能するものとなっている。言い換えれば、アクチュエータ26は、自身が発生させる軸線方向の力であるアクチュエータ力によって、ストローク動作に対して減衰力を付与する機能を有しているのである。また、アクチュエータ26は、アクチュエータ力を、ストローク動作に対する推進力つまり駆動力として作用させる機能をも有している。この機能により、ばね上部の動作に対してばね上絶対速度に比例する減衰力を作用させるいわゆるスカイフックダンパ理論に基づく制御、および、ばね下部の動作に対してばね下絶対速度に比例する減衰力を作用させる擬似的なグランドフック理論に基づく制御を実行することが可能とされている。さらに、アクチュエータ26は、アクチュエータ力によって上下方向におけるばね上部とばね下部との距離(以下、「ばね上ばね下間距離」という場合がある)を積極的に変更し、また、ばね上ばね下間距離を所定の距離に維持する機能をも有している。この機能によって、旋回時の車体のロール,加速・減速時の車体のピッチ等を効果的に抑制すること、車両の車高を調整すること等が可能とされているのである。
サスペンションシステム10は、各スプリング・アブソーバAssy20が有するエアスプリング28に対して流体としてのエア(空気)を流入・流出させるための流体流入・流出装置、詳しく言えば、エアスプリング28の圧力室44に接続されて、その圧力室44にエアを供給し、圧力室44からエアを排出するエア給排装置80を備えている。詳しい説明は省略するが、本サスペンションシステム10は、エア給排装置80によって、各エアスプリング28の圧力室44内のエア量を調整することが可能とされており、エア量の調整によって、各エアスプリング28のばね長を変更し、各車輪12についてのばね上ばね下間距離を変化させることが可能とされている。具体的に言えば、圧力室44のエア量を増加させてばね上ばね下間距離を増大させ、エア量を減少させてばね上ばね下間距離を減少させることが可能とされている。
本サスペンションシステム10は、図1に示すように、制御装置としてのサスペンション電子制御ユニット140(以下、「ECU140」という場合がある)によって、ススプリング・アブソーバAssy20の作動、つまり、アクチュエータ26およびエアスプリング28の制御が行われる。詳しくは、アクチュエータ26のモータ54およびエア給排装置80の作動の制御が行われる。ECU140は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたコントローラ142と、エア給排装置80の駆動回路としてのドライバ144と、各アクチュエータ26が有するモータ54に対応する駆動回路としてのインバータ146とを有している。そのドライバ144およびインバータ146は、コンバータ148を介してバッテリ150に接続されており、エア給排装置80が有する各制御弁,ポンプモータ等、および、各アクチュエータ26のモータ54には、そのコンバータ148とバッテリ150とを含んで構成される電源から電力が供給される。なお、モータ54は定電圧駆動されることから、モータ54への供給電力量は、供給電流量を変更することによって変更される。
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]160,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]162,各車輪12についてのばね上ばね下間距離を検出する4つのハイトセンサ[h]164,車高変更指示のために運転者によって操作される車高変更スイッチ[HSw]166,ステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ[δ]170,車体に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]172,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]174,各車輪12に対応する車体の各マウント部24の縦加速度(上下加速度)を検出する4つのばね上縦加速度センサ[Gzs]176,各車輪12の縦加速度を検出する4つのばね下縦加速度センサ[Gzg]178,アクセルスロットルの開度を検出するスロットルセンサ[Sr]180,ブレーキのマスタシリンダ圧を検出するブレーキ圧センサ[Br]182等が設けられており、それらはコントローラ142に接続されている。ECU140は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、スプリング・アブソーバAssy20の作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、コントローラ142のコンピュータが備えるROMには、後に説明するところのアクチュエータ26の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<インバータ等の構成>
図3に示すように、各アクチュエータ26のモータ54は、コイルがスター結線(Y結線)された3相ブラシレスDCモータであり、上述したようにインバータ146によって制御駆動される。そのインバータ146は、図に示すような一般的なものであり、high側(高電位側),low側(低電位側)のそれぞれに対応し、かつ、モータ54の3つの相であるU相,V相,W相のそれぞれに対応する6つのスイッチング素子HUS,HVS,HWS,LUS,LVS,LWSを備えている。また、インバータ146が有するスイッチング素子制御回路190には、モータ54に設けられてモータ54の回転角を検出するレゾルバ[θ]192と,インバータ146内に実際にモータ54を流れる電流量である実通電電流量を測定する通電電流センサ[I]194とが接続されている。そのスイッチング素子制御回路190は、レゾルバ192によりモータ回転角(電気角)を判断し、そのモータ回転角に基づいてスイッチング素子を開閉作動させる。インバータ146は、いわゆる正弦波駆動によってモータ54を駆動するのであり、モータ54の3つの相の各々に流れる電流量が、それぞれが正弦波状に変化し、その位相差が電気角で120°ずつ異なるように、スイッチング素子が制御される。そして、インバータ146は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってモータ54に通電するようにされており、スイッチング素子制御回路190がパルスオン時間TONとパルスオフ時間TOFFとによって定まるデューティ比Rduty(=TON/(TON+TOFF))を変更することで、モータ54を流れる電流量(通電電流量)を変更して、モータ54が発生させる回転トルクの大きさを変更する。詳しくは、デューティ比が大きくされることで、通電電流量が大きくされて、モータ54の発生する回転トルクは大きくされ、逆に、デューティ比が小さくされることで、通電電流量が小さくされて、モータ54の発生する回転トルクは小さくされる。
モータ54が発生する回転トルクの方向は、モータ54が実際に回転している方向と同じ方向である場合もあり、また、逆の場合もある。モータ54が発生する回転トルクの方向とモータ54の回転方向が逆となる場合、つまり、アクチュエータ26が、アクチュエータ力をストローク動作に対する抵抗力として作用させている場合には、モータ54の発生させる力は、必ずしも、電源から供給される電力(電流)に依存したものとはならない。詳しく言えば、モータ54が外部からの力によって回転させられることで、そのモータ54は発電状態となり、モータ54は、その時に生じた起電力に依存したモータ力を発生させる場合、つまり、アクチュエータ26が起電力に依存したアクチュエータ力を発生させる場合もある。
アクチュエータ26が起電力に依存したアクチュエータ力を発生させる場合に、インバータ146は、起電力よって発電された電力を電源に回生可能な構造とされている。また、モータ54が発生する回転トルクとモータ54の回転方向が逆となる場合においては、前述したスイッチング素子のPWM制御は、起電力によってモータ54の各コイルに流れる電流量を制御するものとなっており、デューティ比Rdutyを変更することで、モータ54が発生する回転トルクの大きさが変更されることになる。すなわち、インバータ146は、電源からの供給電流であるか、あるいは、起電力によって生じる発電電流であるかに拘わらず、モータ54のコイルを流れる電流、つまり、モータ54の通電電流を調整して、モータ力を制御する構造とされているのである。
上記インバータ146とバッテリ150との間には、通常はON状態(閉状態)とされてそれらインバータ146とバッテリ150とを接続した状態とするとともに、OFF状態(開状態)とされることでそれらを切り離すことが可能な開閉スイッチ200が設けられている。また、モータ54の3つの相の通電端子間、詳しくは、U相とV相との通電端子間,V相とW相との通電端子間の各々には、それぞれが、通常はOFF状態(開状態)とされ、ON状態(閉状態)とされることでそれらの通電端子間を短絡させることが可能な開放・短絡切換スイッチ202,204が設けられている。
<サスペンションシステムの基本的な制御>
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ26のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動に対する減衰力を発生させる制御(以下、「振動抑制制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行される。上記振動抑制制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、各制御ごとのアクチュエータ力の成分である振動抑制成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分を合計して目標アクチュエータ力が決定され、アクチュエータ26がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、総合的に実行される。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
なお、本サスペンションシステム10では、エアスプリング28によって、路面の起伏が大きい道路の走行への対処等を目的として運転者の意思に基づいて車両の車高を変更する制御(以下、「車高変更制御」という場合がある)も実行される。その車高変更制御について簡単に説明する。車高変更制御は、運転者の意図に基づく車高変更スイッチ166の操作によって実現すべき設定車高である目標設定車高が変更された場合において、実行される。その目標設定車高の各々に応じて、各車輪12についての目標となるばね上ばね下間距離が設定されており、ストロークセンサ164の検出値に基づいて、それぞれの車輪12についてのばね上ばね下間距離が目標距離になるように、エア給排装置80の作動が制御され、各車輪12のばね上ばね下間距離が目標設定車高に応じた距離に変更されるのである。さらに、この車高変更制御では、例えば、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等による車高の変動に対処することを目的とした、いわゆるオートレベリングと呼ばれる制御も行われる。
i)振動抑制制御
振動抑制制御の実行によって、ばね上部の振動を減衰するためにばね上部の絶対動作の速度に応じたアクチュエータ力を発生させる制御、つまり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御(以下、「スカイフック制御」と呼ぶ場合がある)が実行されるようになっている。例えば、本サスペンションシステム10を備えた車両が、図4に示すような起伏のある路面を走行した場合を考える。車両が上りの路面に入ると、まず、ばね下部が上向きに絶対動作し始め、エアスプリング28によって弾性的に連結されたばね上部も上向きに絶対動作する状態となる。また、その時のばね上部の上方への動作は、ばね下部の上方への動作より遅い。つまり、ばね上部が上方に絶対動作しつつばね上部とばね下部とが接近する状態となる(第1状態)。その後、路面の上りの勾配が緩やかになることによって、ばね下部の上方への動作は、ばね上部の上方への動作より遅くなる。つまり、ばね上部が上方に絶対動作しつつばね上部とばね下部とが離間する状態となる(第2状態)。また、下りの路面に入ると、ばね下部が下向きに動作し始め、エアスプリング28によって連結されたばね上部も下向きに動作する状態となる。その時のばね上部の下方への動作は、ばね下部の下方への動作より遅い。つまり、ばね上部が下方に絶対動作しつつばね上部とばね下部とが離間する状態となる(第3状態)。その後、路面の下りの勾配が緩やかになることによよって、ばね下部の下方への動作は、ばね上部の下方への動作より遅くなる。つまり、ばね上部が下方に絶対動作しつつばね上部とばね下部とが接近する状態となる(第4状態)。スカイフック制御では、ばね上部が上方に動作する第1状態,第2状態においては、下向きの力を作用させ、ばね上部が下方に動作する第3状態,第4状態においては、上向きの力を作用させる制御、つまり、ばね上部が絶対動作する向きであるばね上絶対動作方向とは逆向きの力を、ばね上部に作用させて、ばね上部の振動を抑制する制御である。
また、本サスペンションシステム10においては、上記スカイフック制御に加えて、擬似的なグランドフック理論に基づいた制御をも実行可能とされており、振動抑制制御は、それらの両者を総合的に行う制御とされている。つまり、振動抑制制御では、車体および車輪12の振動を減衰するために、それぞれの振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動抑制成分FVが決定される。具体的には、車体のマウント部24に設けられたばね上縦加速度センサ176によって検出されるばね上縦加速度から計算される車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上絶対速度Vsと、ロアアーム22に設けられたばね下縦加速度センサ178によって検出されるばね下縦加速度から計算される車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下絶対速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動抑制成分FVが演算される。
V=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、Cgは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
ii)ロール抑制制御
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ26にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ26にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ174によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分FRが、次式に従って決定される。
R=K3・Gy* (K3:ゲイン)
iii)ピッチ抑制制御
車体の制動時等、減速時に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車体の加速時に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合の接近・離間距離を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ172によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制成分FPが、次式に従って決定される。
P=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ180によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ182によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
iv)目標アクチュエータ力とモータの作動制御
アクチュエータ26の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の振動抑制成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定されると、それらに基づき、次式に従って制御目標値である目標アクチュエータ力FA *が決定される。
A *=FV+FR+FP
そして、上述のように決定された目標アクチュエータ力FA *が、インバータ146のスイッチング素子制御回路190に送信され、その目標アクチュエータ力FA *に基づいて目標となるデューティ比Rdutyが決定される。インバータ146は、その適切なデューティ比Rdutyの下、スイッチング素子の開閉が制御してモータ54を流れる電流を調整することで、目標アクチュエータ力を制御するのである。
<失陥等の場合の制御>
上述したように、本サスペンションシステム10では、通常、場合によってバッテリ150からの電力供給を受けて力を発生させるアクティブ制御が実行されている。本サスペンションシステム10は、そのアクティブ制御が実行不能となった場合、例えば、バッテリ150の充電量(残存容量)が少なくなった場合、バッテリ150の電圧が閾値より低下した場合等の失陥が生じた場合に対処するために、上記振動抑制制御とは異なる振動抑制制御である特定時振動抑制制御が実行されるようになっている。その特定時振動抑制制御は、バッテリ150からの電力供給を必要としないパッシブな制御であり、その制御について、以下に詳しく説明する。
i)特定時振動抑制制御の概要
図4に示した第1状態,第3状態、つまり、ばね上部が絶対動作する向きであるばね上絶対動作方向と、ばね上部がばね下部に対して動作する向きであるばね上相対動作方向とが逆向きである場合、アクチュエータ26が発生させるストローク動作に対する抵抗力は、ばね上絶対動作方向と同じ向きの力となる。そのため、その場合には、ばね上部の動作を助長しないように、アクチュエータ26は力を発生させないことが望ましい。一方、上記の第2状態,第4状態、つまり、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが同じ向きである場合、アクチュエータ26が発生させる抵抗力は、ばね上絶対動作方向と逆向きの力となる。そのため、その場合には、アクチュエータ力によってばね上部の動作が抑制されることとなる。そのことを考慮して、特定時振動抑制制御は、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが一致する場合にモータ54の各相の通電端子間を開放させ、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが逆向きである場合に通電端子間を短絡させることで、ばね上部の振動を減衰させることによって、ばね上部の振動を抑制する制御とされているのである。つまり、本サスペンションシステム10は、アクティブ制御が実行不能な状態であっても、特定時振動抑制制御によって、モータ54の各相の通電端子間を開放させた状態と短絡させた状態との切換だけの簡便な制御によって、いわゆるスカイフック理論に基づく振動減衰特性に類似する振動減衰特性が得られるようになっている。
なお、特定時振動抑制制御において、ばね上絶対動作方向は、ばね上縦加速度センサ176によって検出されるばね上縦加速度から計算されるばね上絶対速度Vsによって判断され、ばね上相対動作方向は、ハイトセンサ164によって検出されるばね上ばね下間距離から計算されるストローク速度Vstによって判断される。ただし、特定時振動抑制制御は、比較的周波数の低い振動を抑制するものであるため、詳しい説明は省略するが、いわゆるフィルタ処理によって、例えば5Hz以下の振動のみを取り出したばね上絶対速度Vs'およびストローク速度Vst'によって判断されるようになっている。
ii)インバータによる開放・短絡状態の切換
特定時振動抑制制御は、上述したように、モータ54の各相の通電端子間を開放させた状態と、短絡させた状態とを切り換えるものである。具体的には、インバータ146に失陥が生じた場合を除いて、インバータ146によって開放状態と短絡状態との切換が行われる。まず、その前提として、特定時振動抑制制御が実行される場合には、ECU140が有する開閉スイッチ200がOFF状態とされ、バッテリ150とインバータ146との接続が切り離される。ちなみに、この場合、2つの開放・短絡切換スイッチ202,204は、OFF状態のままである。そして、インバータ146のすべてのスイッチング素子をOFF状態とすることでモータ54の各相の通電端子間を開放させた状態とし、インバータ146のhigh側のスイッチング素子HUS,HVS,HWSのすべてをON状態,low側のスイッチング素子LUS,LVS,LWSのすべてをOFF状態とすることで、通電端子間を相互に短絡させた状態とするのである。
インバータ146によって特定時振動抑制制御が実行される場合においては、開放状態と短絡状態とを切り換える際に、モータ54の各コイルに流れる電流量、詳しくは、起電力によって生じる発電電流量を漸変させるように、インバータ146が制御されるようになっている。具体的には、開放状態と短絡状態とが切り換わった後の経過時間に応じて、デューティ比Rdutyが徐々に変更されることで、発電電流量を漸変させるようになっている。図5(a)に、開放状態から短絡状態に切り換える場合における経過時間とデューティ比Rdutyとの関係を、図5(b)に、その場合におけるアクチュエータ力FAの発生の様子を示す。図に示す一点鎖線が、開放状態とするデューティ比Rduty=0から短絡状態とするデューティ比Rduty=1に直ちに変更した場合のものであり、この場合にはアクチュエータ力FAが急変しているのが分かる。それに対し、図に実線で示すように、経過時間に応じてデューティ比Rdutyを徐々に変更した場合には、アクチュエータ力FAも徐々に変更させられるのである。つまり、インバータ146による特定時振動抑制制御では、発電電流量が急変して、抵抗力となるアクチュエータ力FAが急変してしまうことが防止されるのである。
また、特定時振動抑制制御の実行中に、ばね下共振周波数域の振動のような比較的周波数の高い振動が入力された場合、モータ54の各相の通電端子間を開放させた状態では、アクチュエータ力が0とされて、その高周波振動に対処できないことになってしまう。そこで、特定時振動抑制制御は、例えば10Hz〜15Hzの高周波振動が入力された場合には、デューティ比Rdutyを0とはせずに(例えばデューティ比Rduty=0.1とする)、モータ54にある程度の電流が流れる状態として、ストローク動作に対する抵抗力を発生させて、高周波振動を減衰すること,接地性の低下を抑制するようにされている。なお、高周波振動が入力されたか否かは、ばね上速度Vs'およびストローク速度Vst'をフィルタ処理によって求める際に、高周波振動のみを取り出す処理も行われており、その高周波振動のみを取り出したばね上速度およびストローク速度によって判断される。
iii)リレーによる開放・短絡状態の切換
また、例えば、インバータ146のスイッチング素子の故障や、スイッチング素子制御回路190の異常等によって、インバータ146が制御できない場合には、インバータ146とモータ54との間に設けられた2つの開放・短絡切換スイッチ202,204によって、開放状態と短絡状態との切換が行われる。それら2つの開放・短絡切換スイッチ202,204は、先に述べたようにフィルタ処理によって求められたばね上速度Vs'およびストローク速度Vst'によって、ばね上動作方向とばね上作用力方向とが判断され、開放状態であるOFF状態と、短絡状態であるON状態とが切り換えられる。
<アクチュエータの制御フロー>
上述のようなアクチュエータ26の制御は、図6にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、イグニッションスイッチ160がON状態とされている間、短い時間間隔Δt(例えば、数msec〜数十msec)をおいてECU140により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それら制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、アクチュエータ制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ26の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ26に対しての本プログラムによる処理について説明する。
アクチュエータ制御プログラムにおいては、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、アクティブ制御が実行可能か否かが判定される。例えば、バッテリ150の充電量(残存容量)が少なくなった場合、バッテリ150の電圧の閾値以下への低下,インバータの故障等の失陥が生じた場合には、アクティブ制御の実行が不能と判定される。アクティブ制御を実行可能である場合には、S2〜S7において、先に説明したような手法で、振動抑制成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定され、それら3つの成分を足し合わせて、目標アクチュエータ力FA *が決定され、その決定された目標アクチュエータ力FA *が、インバータ146のスイッチング素子制御回路190に送信される。また、アクティブ制御を実行不能と判定された場合には、S8において、特定時振動抑制制御サブルーチンが実行されて、もう1つの振動抑制制御が実行される。
特定時振動抑制制御サブルーチンは、図7にフローチャートを示す制御を行うルーチンである。このルーチンでは、まず、S11において、開閉スイッチ200がOFF状態とされてバッテリ150とインバータ146との接続が切り離される。次いで、S12において、インバータ146が正常か否かが判定される。例えば、スイッチング素子の故障や、スイッチング素子制御回路190の異常等によって、インバータが制御できない場合には、正常ではないと判定される。S12において、正常であると判定された場合には、S13以下のインバータ146による特定時振動抑制制御が行われ、正常ではないと判定された場合には、S23以下の開放・短絡切換スイッチ202,204による特定時振動抑制制御が行われる。
まず、インバータ146によって特定時振動抑制制御が行われる場合には、まず、S13において、2つの開放・短絡切換スイッチ202,204が、OFF状態とされる。次いで、S14において、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが一致するか否かが判定される。具体的には、それらに関する指標としては、先に述べたように、フィルタ処理によって低周波振動(例えば、5Hz以下)のみを取り出したばね上絶対速度Vs'とストローク速度Vst'とが採用され、それらばね上絶対速度Vs'とストローク速度Vst'との積によって、2つの方向が一致するか否かが判定される。それらの積が負の値(0を含む)である場合には、2つの方向が逆向きであると判定され、S15以下においてモータ54の各相の通電端子間を開放させる処理が行われ、それらの積が正の値である場合には、2つの方向が一致すると判定され、S20以下において通電端子間を短絡させる処理が行われる。
開放状態とする処理においては、まず、S15において、高周波振動が入力されているか否かが、フィルタ処理によって高周波振動のみを取り出したばね上絶対速度とストローク速度とによって判定される。高周波振動の入力がないと判定された場合には、デューティ比Rdutyが[0]とされて開放状態とされ、高周波振動の入力があると判定された場合には、その振動に対処するために、デューティ比Rdutyが[0.1]とされ、ばね上部とばね下部との相対動作に対して、ある程度の抵抗力が発生するようにされている。また、短絡状態とする処理においては、デューティ比Rdutyが[1]とされるのである。なお、デューティ比Rdutyを変更する際には、発電電流量が急変してアクチュエータ力を急変させないように、ΔRずつ変更されるようになっている。そして、決定されたデューティ比Rdutyがインバータ146のスイッチング素子制御回路190に送信される。
開放・短絡切換スイッチ202,204によって特定時振動抑制制御が行われる場合には、S23において、S14と同様に、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが一致するか否かが判定される。2つの方向が逆向きであると判定された場合には、S24において、開放・短絡切換スイッチ202,204がOFF状態とされて開放状態とされ、2つの方向が一致すると判定された場合には、S25において、開放・短絡切換スイッチ202,204がON状態とされて短絡状態とされる。以上の一連の処理の後、アクチュエータ制御プログラムの1回の実行が終了する。
<制御装置の機能構成>
上述のアクチュエータ制御プログラムを実行するECU140は、そのプログラムに従う各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図8に示すように、ECU140は、S2の処理を実行して振動抑制成分FVを決定する機能部として、振動抑制制御部250を、S3の処理を実行してロール抑制成分FRを決定する機能部として、ロール抑制制御部252を、S4の処理を実行してピッチ抑制成分FPを決定する機能部として、ピッチ抑制制御部254を、それぞれ有している。また、S8の特定時振動抑制制御サブルーチンを実行してばね上部の振動を抑制する機能部として、特定時振動抑制制御部256を有している。さらに、ECU140は、上記振動抑制制御部250によって決定された振動抑制成分FVを含んだアクチュエータ力を発生させる制御と、特定時振動抑制制御部256による制御とのいずれを採用するかを判定する処理、つまり、S1の処理を実行する機能部として、制御判定部258を有している。
以上のような構成から、本サスペンションシステム10は、ショックアブソーバとしてのアクチュエータ26の制御として、上記特定時振動抑制制御部256によって、ばね上絶対動作方向とばね上相対動作方向とが逆向きである場合に、モータ54の各相の通電端子間を開放させてモータ54に電流が流れない非通電状態とし、それら2つの方向が同じ向きである場合に、通電端子間を相互に導通(短絡)させてモータ54に電流が流れる特定通電状態とすることで、ばね上部の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能に構成されている。また、本サスペンションシステム10は、上記特定時振動抑制制御部256による振動抑制制御とは別に、上記振動抑制制御部250によって、アクチュエータ力を、ばね上絶対速度に基づいて制御しつつばね上部の振動に対する減衰力として発生させる第2の振動抑制制御を実行可能に構成され、それら2つの振動抑制制御を切換可能に構成されている。本サスペンションシステム10は、そのような構成とされていることから、フェールセーフという観点において実用的なシステムとなっている。また、振動抑制制御部250による制御から特定時振動抑制制御部256による制御に切り換えた場合であっても、特定時振動抑制制御部256によって、いわゆるスカイフック制御に類似する制御が可能であることから、振動抑制性能の低下は小さく、乗り心地の悪化が抑えられている。
なお、本サスペンションシステム10においては、ECU140が、インバータ146を開放・導通切換器として機能させる構成とされ、その開放・導通切換器とは別に、開放・導通切換器としての開放・短絡切換スイッチ202,204を有するものとされている。そのため、本サスペンションシステム10は、インバータ146が失陥した場合であっても開放・短絡切換スイッチ202,204によって特定時振動抑制制御部256による制御を実行可能とされていることから、フェールセーフという観点において優れたシステムとなっている。
<変形例>
上記実施例のサスペンションシステム10は、特定時振動抑制制御の開放状態と短絡状態とをインバータ146によって切り換える際に、デューティ比を経過時間に応じて徐々に変化させることでアクチュエータ力の急変を抑制するように構成されていた。そのような制御に代えて、開放状態と短絡状態との間に、モータ54の3つの相のうち1つの相に電流が流れないように、high側のスイッチング素子1つと、そのhigh側のスイッチング素子とは異なる相のlow側のスイッチング素子1つとをON状態とし、モータ54の回転角に応じてそれらのスイッチング素子を切り換えるようにインバータ146を制御することで、アクチュエータ力の急変を抑制するように構成してもよい。また、開放・短絡切換スイッチ202,204によって開放状態と短絡状態とを切り換える際には、2つの開放・短絡切換スイッチ202,204のうちいずれか1つを切り換えて、3つの相のうち2つの相の通電端子間を短絡させ、その後、ある程度の時間をおいて、もう1つの開放・短絡切換スイッチを切り換えるようにすることで、アクチュエータ力の急変を抑制するようにしてもよい。
さらに、開放・短絡切換スイッチ202,204には、モータ54の発電を制限することで、モータに流れる電流量を調整可能な構造のもの、具体的には、FETや可変抵抗器を採用することも可能である。その場合、開放・短絡切換スイッチ202,204の制御によって、インバータ146によって特定時振動抑制制御を行う場合の制御において説明した、開放状態と短絡状態とを切り換える際に発電電流量を漸変させてアクチュエータ力の急変を防止する制御,ばね下共振がある場合の制御等を実行可能となる。
例えば、後輪側のばね上縦加速度センサ176,ハイトセンサ164等が故障した場合には、特定時振動抑制制御が実行できない状態となる。そこで、前輪が通過した地点を、時間T(=ホイールベース/車速)だけ後に後輪が通過することを考慮して、前輪側のインバータ146への制御信号を、時間Tだけ後に後輪側のインバータ146の制御信号とするようにしてもよい。そのようにすることで、後輪側の特定時振動抑制制御が不能となることによる乗り心地の低下を抑制することも可能である。
請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1に示すスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 図2のアクチュエータが備える電磁式モータを駆動するインバータ等の回路図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行される特定時振動抑制制御の概要を示す図である。 特定時振動抑制制御において開放状態から短絡状態へ切り換える場合の経過時間とデューティ比との関係と、その際に発生するアクチュエータ力の変動を示す図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 アクチュエータ制御プログラムにおいて実行される特定時振動抑制制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図1に示すサスペンションシステムが有する制御装置の機能に関するブロック図である。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 20:スプリング・アブソーバAssy 22:ロアアーム(ばね下部) 24:マウント部(ばね上部) 26:アクチュエータ(ショックアブソーバ) 28:エアスプリング 50:ねじロッド(雄ねじ部) 52:ナット(雌ねじ部) 54:電磁式モータ 80:エア給排装置 140:サスペンション電子制御ユニット(ECU,制御装置) 146:インバータ(駆動回路,開放・導通切換器) 148:コンバータ 150:バッテリ 162:車速センサ 164:ハイトセンサ 170:操作角センサ 172:前後加速度センサ 174:横加速度センサ 176:縦加速度センサ(ばね上) 178:縦加速度センサ(ばね下) 180:スロットルセンサ 182:ブレーキ圧センサ 190:スイッチング素子制御回路 200:開閉スイッチ 202,204:開放・短絡切換スイッチ(開放・導通切換器) 250:振動抑制制御部 252:ロール抑制制御部 254:ピッチ抑制制御部 256:特定時振動抑制制御部 258:制御判定部

Claims (5)

  1. ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングと、
    そのサスペンションスプリングと並列的に配設されるとともに、電磁式モータを有してその電磁式モータの力に依拠してばね上部とばね下部との相対動作に対する力であるアブソーバ力を発生可能な電磁式のショックアブソーバと、
    そのショックアブソーバを制御する制御装置であって、ばね上部の絶対動作する向きであるばね上絶対動作方向とばね上部がばね下部に対して動作する向きであるばね上相対動作方向とが逆向きである場合に、前記電磁式モータの各相の通電端子間を開放させることによって前記電磁式モータに電流が流れない状態である非通電状態とし、前記ばね上絶対動作方向と前記ばね上相対動作方向とが同じ向きである場合に、前記電磁式モータの各相の通電端子間を相互に導通させることによって前記電磁式モータに電流が流れる状態である特定通電状態とすることで、電源からの電流の供給を受けずに専ら前記電磁式モータに生じた発電電流に依拠した力を発生させてばね上部の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能な制御装置と
    を備え
    その制御装置が、
    前記電磁式モータの各相の通電端子間を開放させた状態と導通させた状態とを切り換えるとともに、前記電磁式モータの発電を制限することでその電磁式モータに流れる電流量を調整する構造とされた開放・導通切換器を有し、
    その開放・導通切換器の作動を制御することで、前記非通電状態と前記特定通電状態とを実現して前記振動抑制制御を実行可能とされ、かつ、
    その振動抑制制御の実行時において、ばね下共振周波数域の振動が検出された場合には、前記ばね上絶対動作方向と前記ばね上相対動作方向とが逆向きである場合であっても前記特定通電状態とし、その場合に前記電磁式モータに流れる電流量が、前記ばね上絶対動作方向と前記ばね上相対動作方向とが同じ向きである場合に前記電磁式モータに流れる電流量より小さくなるように前記開放・導通切換器を制御する車両用サスペンションシステム。
  2. 前記制御装置が、
    前記アブソーバ力を、ばね上部の前記ばね上絶対動作方向の速度であるばね上絶対速度に基づいて制御し、発電電流に依拠した力だけでなく電源から供給される電流に依拠した力をも発生させてばね上部の振動を減衰する第2の振動抑制制御を実行可能とされるとともに、その第2の振動抑制制御と前記振動抑制制御とを切り換え可能に構成された請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記制御装置が、
    電源の高電位側端子と前記電磁式モータの各相の通電端子との間に設けられた高電位側スイッチング素子と、電源の低電位側端子と各相の通電端子との間に設けられた低電位側スイッチング素子とからなるスイッチング素子対を、前記電磁式モータの相数に対応して複数対有し、それらのスイッチング素子の作動を制御して前記電磁式モータに流れる電流量を調整する駆動回路を有し、
    前記駆動回路によって前記電磁式モータに流れる電流量を調整することで、前記第2の振動抑制制御における前記アブソーバ力を制御する請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記制御装置が、前記振動抑制制御の実行時において、前記開放・導通切換器が前記非通電状態と前記特定通電状態とを切り換える際に、前記電磁式モータに流れる電流量を漸変させるように前記開放・導通切換器を制御する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記制御装置が、
    電源の高電位側端子と前記電磁式モータの各相の通電端子との間に設けられた高電位側スイッチング素子と、電源の低電位側端子と各相の通電端子との間に設けられた低電位側スイッチング素子とからなるスイッチング素子対を、前記電磁式モータの相数に対応して複数対有し、それらのスイッチング素子の作動を制御して前記電磁式モータに流れる電流量を調整する駆動回路を有し、
    前記複数のスイッチング素子対のスイッチング素子の作動を制御することによって前記非通電状態と前記特定通電状態とを実現して前記振動抑制制御を実行可能とされることで、前記駆動回路を前記開放・導通切換器として機能させる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
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