JP2010179691A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】フェールセーフという観点において優れたサスペンションシステムを提供する。
【解決手段】駆動装置144の駆動回路190とアクチュエータのモータ44との間に、そのモータ44の各相の通電端子間を相互に導通させた導通状態と、それら通電端子間を相互に導通させずに駆動回路190からモータ44への電流の流れを許容する非導通状態とを切り換える導通・非導通切換器200を設け、制御情報出力装置140が、その導通・非導通切換器200と制御情報出力装置140とを結ぶ接続ライン202を介して、導通・非導通切換器200を制御することを特徴とする。したがって、本システムによれば、システムにおける失陥を検出した後、早期に導通状態を実現することが可能である。
【選択図】図3

Description

本発明は、ばね上部とばね下部とに対して接近・離間する向きの力を発生させる電磁式のアクチュエータを備えた車両用サスペンションシステムに関する。
近年では、車両用のサスペンションシステムとして、電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部とに対して接近・離間する向きの力を発生させる電磁式のアクチュエータを含んで構成されるサスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のシステムが存在する。このサスペンションシステムは、アクチュエータが、ばね上部とばね下部との間に配設されて電磁式のショックアブソーバとして機能するものであり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく振動減衰特性を容易に実現できる等の利点から、高性能なシステムとして期待されている。
下記特許文献1に記載されたシステムは、複数のアクチュエータの各々に対応して自身に対応する電磁モータを制御駆動する複数の駆動装置が設けられ、その駆動装置が電磁モータを制御するための制御情報が、それら駆動装置を一括して制御する制御装置(制御情報出力装置)から送信されるように構成されている。そして、それら制御装置と複数の駆動装置の各々との接続には、省配線化等を考慮して、それら複数の装置を共通の通信ラインに接続するシステム、いわゆるバス接続が採用されている。
また、電磁式のアクチュエータを備えるサスペンションシステムにおいて、例えば、アクチュエータが有する電磁モータを正常に駆動できないような失陥が生じた場合には、適切な制御が行われず、車両の操安性や乗り心地を悪化させる虞がある。そこで、下記特許文献2に記載のシステムは、システムに失陥が生じた場合、電磁モータの各相の通電端子間を短絡させることによって、ばね上部とばね下部との相対動作に対して減衰力を発生させるように構成される。
特開2003−223220号公報 特開2006−115556号公報
失陥が生じた場合に電磁モータの各相の通電端子間を短絡させるサスペンションシステムにおいては、失陥が生じた後、早急に、電磁モータの各相の通電端子間を短絡させることが望ましい。ところが、上述のようなバス接続が採用されたシステムにおいては、制御装置と複数の駆動装置の各々との間の通信において、情報を送信できるタイミングに時間間隔が定められているため、失陥であることを検出した時点から、電磁モータの各相の通電端子間を短絡させた状態が実際に実現されるまでに、タイムラグが発生するという問題がある。具体的に言えば、システムが失陥したという情報を駆動装置から制御装置へ送信する際や、その失陥に対処する指令情報を制御装置から駆動装置へ送信する際に遅れが生じるのである。その問題に対処することにより、サスペンションシステムは、フェールセーフという観点において優れたシステムとなる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、フェールセーフという観点において優れたサスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のサスペンションシステムは、駆動装置の駆動回路とアクチュエータの電磁モータとの間に、その電磁モータの各相の通電端子間を相互に導通させた導通状態と、それら通電端子間を相互に導通させずに駆動回路から電磁モータへの電流の流れを許容する非導通状態とを切り換える導通・非導通切換器を設け、制御情報出力装置が、その導通・非導通切換器と制御情報出力装置とを結ぶ接続ラインを介して、導通・非導通切換器を制御することを特徴とする。
本発明のサスペンションシステムは、制御情報出力装置と導通・非導通切換器が接続ラインによって結ばれており、制御情報出力装置が、通信ラインおよび駆動装置を介さずに、接続ラインを介して導通・非導通切換器を直接制御することが可能である。つまり、本発明のシステムによれば、システムにおける失陥を検出した後、早期に導通状態を実現することが可能であり、フェールセーフという観点において優れたシステムが実現する。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(4)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、それぞれ相当する。
(1)電磁モータを有し、その電磁モータが発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とに対してそれらが接近・離間する向きの力であるアクチュエータ力を発生させるアクチュエータと、
そのアクチュエータのアクチュエータ力に関する制御目標値を決定するとともに、その制御目標値を含む制御情報を出力する制御情報出力装置と、
その制御情報出力装置が接続され、その制御情報出力装置から出力された前記制御情報が送信される通信ラインと、
電源と前記アクチュエータが有する電磁モータとの間に配設されてその電磁モータを流れる電流を制御する駆動回路を有し、前記通信ラインに接続され、その通信ラインから前記制御情報を受信するとともに、その制御情報に含まれる制御目標値に基づいて前記駆動回路を制御することで前記電磁モータを制御駆動する駆動装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
当該車両用サスペンションシステムが、
前記駆動装置が有する駆動回路と前記アクチュエータが有する電磁モータとの間に配設され、その電磁モータの各相の通電端子間を相互に導通させた導通状態と、それら通電端子間を相互に導通させずに前記駆動回路からその電磁モータへの電流の流れを許容する非導通状態とを切り換える導通・非導通切換器と、
その導通・非導通切換器と前記制御情報出力装置とを結び、その制御情報出力装置が前記導通・非導通切換器を制御するための接続ラインと
を備え、
前記制御情報出力装置が、
当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じていない場合に非導通状態を実現し、当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じた場合に導通状態を実現するように、前記導通・非導通切換器を前記接続ラインを介して制御するように構成された車両用サスペンションシステム。
本項に記載のシステムは、制御情報出力装置と駆動装置とが通信ラインに接続されたシステムを前提としている。一般的に、サスペンションシステムは、複数の車輪に対応して複数のアクチュエータおよび駆動装置を備えており、それら複数の駆動装置を、それらとは別に設けた統括制御装置によって一括して制御するようなシステムとされるのが一般的である。また、それら統括制御装置および複数の駆動装置の接続には、省配線化等を考慮して、それらが共通の通信ラインに接続されるシステム、いわゆるバス接続されるシステムが検討されている。具体的には、CAN(Controller Area Network)によって接続されたシステム等である。そして、そのようなシステムでは、統括制御装置から複数の駆動装置の各々の制御目標値が通信ラインに順次送信され、駆動装置の各々は、それら複数の制御目標値の中から自身に対応する制御目標値を識別して、その制御目標値に従って駆動回路を制御するように構成される。つまり、本項に記載の「制御情報出力装置」は、上記の統括制御装置の少なくとも一部を構成するものとすることが可能である。
サスペンションシステムにおいては、例えば、アクチュエータの制御に用いるセンサの故障,アクチュエータが有する電磁モータの断線,その電磁モータを駆動するための駆動回路等の不具合等を原因とする種々の失陥が考えられる。そのような失陥が生じた場合には、アクチュエータが目標とされる大きさのアクチュエータ力を発生し得ない、あるいは、アクチュエータ力をまったく発生し得ないことになる。そこで、アクチュエータを備えたシステムでは、上記の導通・非導通切換器によって、電磁モータの各相の通電端子間を相互に導通させて、ばね上部とばね下部と相対動作に対して減衰力を発生させるように構成されることが、一般的である。
ところが、従来のサスペンションシステムにおいては、制御情報出力装置が、導通・非導通切換器を、通信ラインおよび駆動装置を介して制御していたため、システムの失陥を検出してから、導通状態が実際に実現するまでに、タイムラグが生じていた。特に、駆動装置において何らかの失陥が検出された場合、制御情報出力装置が駆動装置から出力された失陥に関する情報を受信するまでの時間をも要するため、システムの失陥検出から導通状態実現までの遅れは、より顕著である。それに対して、本項に記載のシステムにおいては、制御情報出力装置と導通・非導通切換器が接続ラインによって結ばれており、制御情報出力装置が導通・非導通切換器を接続ラインを介して直接制御できることになる。つまり、本項の態様によれば、上記のような構成のシステムに比較して、早期に導通状態を実現することが可能であり、フェールセーフという観点において優れたシステムが実現するのである。
本項に記載の「導通・非導通切換器」は、例えば、ON/OFFを切り換えることで導通状態と非導通状態とを切り換える構造のもの、つまり、スイッチ,継電器(リレー)等とすることができる。なお、そのON/OFFの切換が、電力の供給がある場合と、供給がない場合とで切り換わるような構造の場合、本項に記載の「接続ライン」は、後に詳しく説明するように、導通・非導通切換器と制御情報出力装置とを電気的に接続して、電力を供給するためのものとすることができる。また、導通・非導通切換器が、導通状態と非導通状態とを切り換えるための回路を含み、制御情報出力装置からの制御信号により導通状態と非導通状態とを切り換えるような構造とされた場合には、「接続ライン」は、その制御信号を送信するためのものとすることできる。ちなみに、導通・非導通切換器は、電磁モータの各相の通電端子間に何らかの抵抗を存在させて導通させるものであってもよく、また、通電端子間を短絡させるようにして導通させるものであってもよい。
なお、本項の態様にいう「制御目標値」は、アクチュエータに発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力そのものに限定されるものではなく、その目標アクチュエータ力の大きさを指標する何らかの関連量、言い換えれば、アクチュエータ力に関連する何らかの物理量としてもよい。具体的に言えば、例えば、モータ力,通電電流,PWM(Pulse Width Modulation)制御におけるデューティ比等であってもよい。
本項の態様における「アクチュエータ」は、例えば、ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との接近・離間に応じたばね上部側ユニットとの相対移動が可能なばね下部側ユニットとを有し、電磁モータの力に依拠してそれらばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対する力を発生させる構造の装置、具体的に言えば、伸縮可能に構成されてその伸縮に対する力を発生させる電磁式ショックアブソーバとすることが可能である。また、一端部がばね上部とばね下部との一方に連結される弾性体を備え、アクチュエータが、その弾性体の他端部とばね上部とばね下部との他方との間に配設されて、モータ力に依拠して自身が発生させる力を弾性体に作用させることで、自身の動作位置に応じて弾性体の変形量を変化させるとともに、その力を弾性体を介してばね上部とばね下部とに作用させて、それらが接近・離間する向きの力を発生させる構造の装置、いわゆる左右独立型のスタビライザ装置の一構成要素とすることも可能である。
(2)前記導通・非導通切換器が、電磁コイルを有する継電器であり、
前記接続ラインが、その電磁コイルを励磁するために電力を供給するものである(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、導通・非導通切換器を限定するとともに、その導通・非導通切換器と制御情報出力装置との接続方法に限定を加えた態様である。本項の態様の「接続ライン」は、導通・非導通切換器と制御情報出力装置とを電気的に接続するためのものである。本項の態様は、導通状態を実現するための指令の出力から、実際に導通状態が実現されるまでに、ほとんどタイムラグが発生しないことから、より有効的な態様となる。
(3)前記制御情報出力装置が、
制御目標値を、設定された時間間隔をおいて繰り返し決定し、その繰り返し決定された制御目標値を含む前記制御情報を、設定された時間間隔をおいて繰り返し出力するように構成された(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載に態様においては、制御目標値は、例えば、時間間隔をおいて繰り返し実行されるプログラム等によって決定されて、設定された通信規則(通信プロトコル)に従って、時間間隔をおいて通信ラインに送信される。つまり、先に述べた従来のサスペンションシステムのように、駆動装置が制御情報出力装置から導通状態を実現させるための情報を受信してその状態を実際に実現させるまでには、制御情報出力装置と駆動装置との通信にかかる時間の他に、導通状態を実現させるための情報の送信が開始されるまでの時間をも要することとなる。それに対して、制御情報出力装置が導通・非導通切換器を接続ラインを介して制御する構成のシステムは、そのような時間の遅れもないため、本項に記載の態様に、特に有効である。
(4)当該車両用サスペンションシステムが、
車両が有する複数の車輪に対応して、それぞれが前記アクチュエータである複数のアクチュエータと、
それら複数のアクチュエータに対応して、それぞれが前記駆動装置である複数の駆動装置と、
それら複数の駆動装置の各々と前記4つのアクチュエータのうちのその各々に対応するものが有する電磁モータとの間に配設され、それぞれが前記導通・非導通切換器である複数の導通・非導通切換器と
を備え、
前記制御情報出力装置が、
前記複数の導通・非導通切換器を制御して、当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じていない場合に前記複数のアクチュエータの各々が有する電磁モータに対して非導通状態を実現し、当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じた場合に前記複数のアクチュエータの各々が有する電磁モータに対して導通状態を実現するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様においては、例えば、複数のアクチュエータのいずれかが失陥した場合であっても、すべてのアクチュエータに対応する電磁モータに対して非導通状態を実現するように構成される。
(5)前記制御情報出力装置が、
前記複数のアクチュエータの各々のアクチュエータ力に関する制御目標値を決定するとともに、それら複数のアクチュエータのうちの1つのものに対応する制御目標値を含む制御情報を、それら複数のアクチュエータの各々に対して順次出力するように構成された(4)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、制御情報出力装置から複数の駆動装置の各々の制御目標値が通信ラインに順次送信され、駆動装置の各々は、それら複数の制御目標値の中から自身に対応する制御目標値を識別して、その制御目標値に従って駆動回路を制御するように構成される。そして、本項の態様においては、システムにおいて失陥が生じた場合、まず、制御情報出力装置から複数の駆動装置の各々に、それらの各々に対応する電磁モータを導通させるための情報が順次送信される。続いて、複数の個別制御装置の各々が、自身において実行されるプログラム等に従って、自身に対応する電磁モータを導通させた状態を、順次実現することになる。つまり、複数のアクチュエータの各々の電磁モータに対して導通状態が実現するタイミングにずれが生じるのである。
例えば、車両の旋回中にシステムにおいて失陥が生じ、前輪側のアクチュエータが有する電磁モータが後輪側のものより先に導通状態となると、その場合における前輪側のロールに対する剛性が、アクチュエータにおいて通常の制御が実行されている場合のロールに対する剛性より低くなる場合がなる。そのような場合、後輪側のロール剛性に対する前輪側のロール剛性が相対的に低くなるため、システムが正常な場合に比較して、アンダーステアが弱まる、あるいは、オーバーステアとなるのである。つまり、複数の駆動装置の各々が導通状態を実際に実現するタイミングのずれによって、車両がスピンする虞があるのである。それに対して、制御情報出力装置が導通・非導通切換器を接続ラインを介して制御する構成のシステムにおいては、複数の駆動装置への指令を同時に出力し、複数の駆動装置の各々が同時に導通状態を実現させることが、容易である。したがって、制御情報出力装置が導通・非導通切換器を接続ラインを介して制御する構成のシステムによれば、車両がスピンするような事態を回避することが可能である。
(6)前記制御情報出力装置が、
前記複数のアクチュエータの各々のアクチュエータ力に関する制御目標値を決定するとともに、それらの制御目標値とそれらの各々に付随してそれらの各々が前記複数のアクチュエータのいずれに対応するものかを識別するための識別子とを含む情報を前記制御情報として出力するように構成され、
前記複数の駆動装置の各々が、
前記制御情報に含まれる制御目標値のうちから、前記複数のアクチュエータのうちの自身に対応するものに対応する制御目標値を前記識別子に基づいて識別し、その識別された制御目標値に基づいて前記駆動回路を制御するように構成された(5)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、駆動装置の各々が、先に説明した順次送信される複数の制御目標値の中から自身に対応する制御目標値を識別する方法を具体化した態様である。
請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1に示すスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステムの回路図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットが出力する制御情報の構成を示す図である。 従来のサスペンションシステムの回路図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示すモータ電子駆動ユニットによって実行されるモータ制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示す車両用サスペンションシステムが有するサスペンション電子制御ユニットの機能に関するブロック図である。
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
<サスペンションシステムの構成>
図1に、請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
スプリング・アブソーバAssy20は、図2に示すように、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設されている。スプリング・アブソーバAssy20は、電磁式のアクチュエータ30と、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング32とを含んで構成されており、それらが一体化されたものとなっている。
アクチュエータ30は、ねじ溝が形成された雄ねじ部としてのねじロッド40と、ベアリングボールを保持してねじロッド40と螺合する雌ねじ部としてのナット42とを含んで構成されるボールねじ機構と、動力源としての電磁モータ44(以下、単に「モータ44」という場合がある)と、そのモータ44を収容するケーシング46とを備えている。そのケーシング46は、ねじロッド40を回転可能に保持するとともに、外周部において防振ゴム48を介してマウント部24に連結されている。モータ44は、中空とされたモータ軸50を有しており、そのモータ軸50には、それの内側を貫通して上端部においてねじロッド40が固定されている。つまり、モータ44は、ねじロッド40に回転力を付与するものとなっている。
また、アクチュエータ30は、アウターチューブ60と、そのアウターチューブ60に嵌入してそれの上端部から上方に突出するインナチューブ62とを含んで構成されるシリンダ64を有している。アウターチューブ60は、それの下端部に設けられた取付ブシュ66を介してロアアーム22に連結され、インナチューブ62は、上記ねじロッド40を挿通させた状態で上端部がケーシング46に固定されている。インナチューブ62には、それの内底部にナット支持筒68が立設され、それの上端部の内側には、上記ナット42が、ねじロッド40と螺合させられた状態で固定されている。
さらに、アクチュエータ30は、カバーチューブ70を有しており、そのカバーチューブ70が、上端部において防振ゴム72を介してマウント部24の下面側に、上記シリンダ64を挿通させた状態で連結されている。なお、このカバーチューブ70の上端部には、フランジ部74(上部リテーナとして機能する)が形成されており、そのフランジ部74と、アウタチューブ60の外周面に設けられた環状の下部リテーナ76とによって、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング32が挟まれる状態で支持されている。
上述のような構造から、アクチュエータ30は、ねじロッド40,モータ44,ケーシング46,インナチューブ62,カバーチューブ70等を含んでマウント部24に連結されるばね上部側ユニットと、ナット42,インナチューブ60,ナット支持筒68等を含んでロアアーム22に連結されるばね下部側ユニットとを有する構造のものとなっており、相対回転不能、かつ、ばね上部とばね上部との接近離間動作に伴って軸線方向に相対移動可能、換言すれば、伸縮可能な構造とされている。
アクチュエータ30は、ばね上部とばね下部とが接近・離間動作する場合に、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが軸線方向に相対移動可能、つまり、ねじロッド40とナット42とが軸線方向に相対移動可能とされ、その相対移動に伴って、ねじロッド40がナット42に対して回転する。それによって、モータ軸50も回転する。モータ44は、ねじロッド40に回転トルクを付与可能とされ、この回転トルクによって、ねじロッド40とナット42との相対回転に対して、その相対回転を阻止する方向の抵抗力を発生させることが可能である。この抵抗力を、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対する減衰力、ひいては、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力として作用させることで、アクチュエータ30は、いわゆるショックアブソーバとして機能するものとなっている。また、アクチュエータ30は、ばね上部とばね下部との相対動作に対する推進力をも発生させることが可能とされており、いわゆるスカイフックダンパ理論,擬似的なグランドフック理論等に基づく制御を実行することが可能とされている。さらに、モータ44の回転トルクによって、ばね上部とばね下部との間の距離を任意の距離に維持することが可能であり、車両旋回時の車体のロール,車両加減速時の車体のピッチ等を効果的に抑制することや、車両の高さいわゆる車高を調整すること等が可能とされている。
本サスペンションシステム10は、サスペンション電子制御ユニット140(以下、「ECU140」という場合がある)によって、アクチュエータ30の制御が行われる。ECU140は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたものである。そのECU140には、各アクチュエータ30が有するモータ44に対応して設けられて、それぞれが、対応するモータ44を制御駆動する駆動装置としての4つのモータ電子駆動ユニット144(以下、「EDU144」という場合がある)が接続されている。詳しくは、それらECU140,4つのEDU144は、通信ラインとしてのバス146に接続されているのであり、それらは、CAN(Controller Area Network)によって接続されている。また、4つのEDU144は、コンバータ[CONV]148を介して第1バッテリ[BAT1](公称電圧:288V)150に接続されており、各アクチュエータ30のモータ44には、そのコンバータ148とバッテリ150とを含んで構成される電源から電力が供給される。詳しく言えば、第1バッテリ150の放電電圧が、コンバータ148によって設定された電圧(例えば、46V)に降圧され、モータ44に電力が供給される。また、ECU140,4つのEDU144は、第2バッテリ[BAT2](公称電圧:12V)152から電力の供給を受けて作動するようになっている。
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]160,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]162,ステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ[δ]168,車体に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]170,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]172,各車輪12に対応する車体の各マウント部24の縦加速度(上下加速度)を検出する4つのばね上縦加速度センサ[Gzs]174,各車輪12の縦加速度を検出する4つのばね下縦加速度センサ[Gzg]176,アクセルスロットルの開度を検出するスロットルセンサ[Sr]178,ブレーキのマスタシリンダ圧を検出するブレーキ圧センサ[Br]180等が設けられており、それらはECU140のコンピュータに接続されている。ECU140は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、アクチュエータ30の作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、ECU140のコンピュータが備えるROMには、アクチュエータ30の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
図3に示すように、各アクチュエータ30のモータ44は、コイルがスター結線(Y結線)された3相DCブラシレスモータであり、上述したようにEDU144(図には、1つのみ示している)によって制御される。EDU144が有する駆動回路としてのインバータ190は、図3に示すような一般的なものであり、high側(高電位側),low側(低電位側)のそれぞれに対応し、かつ、モータ44の3つの相であるU相,V相,W相のそれぞれに対応する6つのスイッチング素子HUS,HVS,HWS,LUS,LVS,LWSを備えている。また、EDU144は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたコントローラ192を有し、そのコントローラ192には、モータ44に設けられてモータ44の回転角を検出するレゾルバ[θ]194と、インバータ190内にモータ44の3つの相の各々を流れる電流である実通電電流を測定する3つの通電電流センサ[I]196とが、インバータ190が有するスイッチング素子制御回路198を介して接続されている。スイッチング素子制御回路198は、そのレゾルバ194によりモータ44の回転位置(電気角)を判断し、そのモータ回転位置に応じてスイッチング素子を開閉作動させる。EDU144は、いわゆる正弦波駆動によってモータ44を駆動するのであり、モータ44の3つの相の各々に流れる電流が、それぞれが正弦波状に変化し、その位相差が電気角で120°ずつ異なるように、スイッチング素子がスイッチング素子制御回路198によって制御される。また、インバータ190は、起電力によって発電された電力(電流)を第1バッテリ150に回生可能な構造とされており、モータ44は、供給電流に依存したモータ力だけでなく、発電電流に依存したモータ力を発生させる場合がある。つまり、インバータ190は、第1バッテリ150からの供給電流であるか、起電力によって生じる発電電流であるかに拘わらず、モータ44を流れる電流、つまり、モータ44の通電電流を調整して、モータ力を制御する構造とされている。なお、通電電流は、各インバータ190がPWM(Pulse Width Modulation)制御によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
なお、4つのEDU144の各々とその各々に対応するモータ44との間には、そのモータ44の3つの相の通電端子間、詳しくは、U相とV相との通電端子間,V相とW相との通電端子間の各々を接続した状態と、それらの各々を切断した状態とを切り換える4つの短絡リレー[RY]200(図1には4つ、図3には1つのみ示している)が設けられている。それら4つの短絡リレー200は、イグニッションスイッチ160がON状態とされ、第2バッテリ152からECU140を介して電力が供給されて自身が有する電磁コイルが励磁されると、U相とV相との通電端子間,V相とW相との通電端子間の各々を切断した状態とし、第2バッテリ152からの電力の供給が断たれて電磁コイルが励磁されないと、それらの各々を接続した状態とするものである。つまり、それら4つの短絡リレー200は、モータ44の各相の通電端子間を相互に短絡(導通)させた状態(以下、「短絡状態」という場合がある)と、それら通電端子間を短絡させずにモータ44とインバータ190との間の電流の流れを許容する状態(以下、「非短絡状態」という場合がある)とを切り換える導通・非導通切換器として機能するものである。そして、それら4つの短絡リレー200の各々は、ECU140に導通路202によって接続されており、ECU140は、自身が有する切換スイッチ[SW]204を、ON状態とすることで第2バッテリ152から受けている電力を4つの短絡リレー200の各々へ供給する状態とし、OFF状態とすることで電力を供給しない状態とすることが可能とされている。
<サスペンションシステムの制御>
i)アクチュエータの制御の概要
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20が有するアクチュエータ30の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ30のアクチュエータ力が独立して制御されて、定められた規則に従った制御が実行される。詳しく言えば、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある),車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が、並行して実行される制御である。上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、各制御ごとのアクチュエータ力の成分である振動減衰成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分を合計して制御目標値である目標アクチュエータ力が決定され、アクチュエータ30がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、総合的に実行される。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
ii)振動減衰制御
振動減衰制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動減衰成分FVが決定される。つまり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御と、擬似的なグランドフックダンパ理論に基づいた制御との両者を総合して行う制御である。具体的には、車体のマウント部24に設けられたばね上縦加速度センサ174によって検出されるばね上縦加速度から得られる車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上絶対速度Vsと、ロアアーム22に設けられたばね下縦加速度センサ176によって検出されるばね下縦加速度から得られる車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下絶対速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動減衰成分FVが演算される。
V=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、Cgは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
iii)ロール抑制制御
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ30にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ30にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ172によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分FRが、次式に従って決定される。
R=K3・Gy* (K3:ゲイン)
iv)ピッチ抑制制御
車両の制動時等の減速時において車体のノーズダイブが生じる場合には、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車両の加速時において車体のスクワットが生じる場合には、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合のばね上ばね下間距離の変動を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ170によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制成分FPが、次式に従って決定される。
P=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ178によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ180によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
v)制御目標値の決定とモータの制御
アクチュエータ30の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定されると、それらに基づき、次式に従って制御目標値である目標アクチュエータ力F*が決定される。
*=FV+FR+FP
そして、ECU140は、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*を含む制御情報を、設定された通信プロトコルに従って時間間隔をおいてバス146に送信し、4つのEDU144は、それら制御情報をバス146から受信する。その制御情報は、図4に示すようなものであり、目標アクチュエータ力と、それが4つのアクチュエータ30のいずれに対応するものであるかを識別するための識別子(ID)とを含んで構成されたものである。4つのEDU144では、それら制御情報に含まれる目標アクチュエータ力のうちから、自身に対応する目標アクチュエータ力が識別され、その識別された目標アクチュエータ力F*に基づいて目標となるデューティ比が決定される。EDU144は、その適切なデューティ比の下、インバータ190の備えるスイッチング素子の開閉を制御して、目標アクチュエータ力を発生させるようにモータ44の通電電流を制御するのである。なお、EDU144において目標となるデューティ比を決定する際には、ECU140からの目標アクチュエータ力F*に応じた目標となる通電電流である目標通電電流i*が演算され、その目標通電電流i*と3つの通電電流センサ196の検出結果から演算されたモータ44の実際の通電電流である実通電電流irとの偏差Δi(=i*−ir)に基づくフィードバック制御が行われるようになっている。
<システムの失陥への対処>
本サスペンションシステム10においては、例えば、センサの故障,モータ44の断線,そのモータ44を駆動するためのインバータ190等の不具合,アクチュエータ30のねじ機構の摩擦過多等を原因とする種々の失陥が考えられる。そのような失陥が生じた場合には、4つのアクチュエータ30のいずれかが目標とされる大きさのアクチュエータ力を発生し得ない、あるいは、アクチュエータ力をまったく発生し得ないことになる。また、例えば、第1バッテリ150の充電量(残存容量)が少なくなった場合、第1バッテリ150の電圧が閾値より低下した場合等にも、4つのアクチュエータ30が目標とされる大きさのアクチュエータ力を発生し得ない虞がある。そこで、本サスペンションシステム10においては、上述のようなシステム10の失陥が生じた場合には、4つのアクチュエータ30のすべてに対応するモータ44の各相の通電端子間を相互に短絡させて、ばね上部とばね下部との相対動作に対して、減衰力を発生させるようにされている。ちなみに、上述したシステム10の失陥の検出方法には、従来から検討されている種々の方法を採用可能である。
図5に、従来のサスペンションシステム250の回路図を示す。従来のシステム250においては、4つの短絡リレー252の各々は、その各々が対応するEDU254に導通路256によって接続されている。つまり、4つの短絡リレー252は、第2バッテリ152からEDU254を介して電流が供給されると、対応するモータ44に対して非短絡状態とし、電流の供給が断たれると、対応するモータ44を短絡状態とするものである。そして、システム250において失陥が生じた場合には、ECU260が、4つのEDU254の各々に対して、その各々に対応する短絡リレー252によって短絡状態を実現すべく、そのための情報である失陥時制御情報を、通信プロトコルに従って順次送信する。4つのEDU144の各々が、自身に対応する失陥時制御情報を受信すると、通常時に短絡リレー252に供給されている電流を遮断して、短絡状態を実現するのである。
したがって、従来のサスペンションシステム250においては、短絡リレー252を、バス146およびEDU254を介して制御しているため、システム250における失陥を検出してから短絡状態が実際に実現するまでに、タイムラグが生じることになる。詳しく言えば、ECU140がEDUへ失陥時制御情報を出力するまでの時間や、EDU144において自身に対応する失陥時制御情報を受信してから短絡リレー252を切り換えるまでの時間を要するのである。特に、EDU254において何らかの失陥が検出された場合、EDU254から出力された失陥に関する情報をECU260が受信するまでの時間をも要するため、システム250の失陥検出から短絡状態実現までの遅れは、より顕著になる。
また、従来のシステム250においては、先にも説明したように、ECU260が、4つのEDU254の各々に対して、その各々に対応する失陥時制御情報を、通信プロトコルに従って順次送信する。つまり、4つのEDU144の各々が短絡状態を実際に実現するタイミングにずれが生じることになる。例えば、車両の旋回中に、システム250において失陥が生じる場合を考える。失陥が検出される前には、アクチュエータ30は、上述したロール抑制力を発生させており、車両のロール剛性が高められた状態にある。その状態でシステム250において失陥が生じ、例えば、前輪側のアクチュエータ30FR,30FLに対応するモータ44が、後輪側のアクチュエータ30RR,30RLに対応するモータ44より先に短絡状態となると、前輪側のロール剛性が後輪側のロール剛性より低くなり、アンダーステアが弱まる、あるいは、オーバーステアとなる。そのことにより、車両がスピンする虞があるのである。
一方、本サスペンションシステム10においては、システム10において失陥が検出された場合、ECU140は、自身が有する切換スイッチ204を切り換えることで、4つの短絡リレー200を切り換えて、すべてのアクチュエータ30に対応するモータ44に対して短絡状態を実現する。つまり、本システム10は、バス146およびEDU144を介さずに、4つの短絡リレー200を直接制御して、早期に、すべてのアクチュエータ30に対応するモータ44に対して短絡状態を実現することが可能である。また、本システム10は、すべてのアクチュエータ30に対応するモータ44に対して短絡状態を同時に実現させることが可能であるため、旋回中にシステム10が失陥した場合に車両がスピンするような事態を回避することが可能である。したがって、本サスペンションシステム10は、フェールセーフという観点において優れたシステムとなっているのである。
<制御プログラム>
先に述べたようなアクチュエータ30の制御は、図6にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、イグニッションスイッチ160がON状態とされている間、ある時間間隔をおいてECU140により繰り返し実行されるとともに、図7にフローチャートを示すモータ制御プログラムが、アクチュエータ制御プログラムと同じ期間、EDU144の各々により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それら制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
i)アクチュエータ制御プログラム
ECU140において実行されるアクチュエータ制御プログラムによる処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、本サスペンションシステム10に何らかの失陥が生じているか否かが判定される。システム10に失陥が生じていない場合には、S2〜S4において、先に説明したような手法で、振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定され、S5において、それら3つの成分を足し合わせて、制御目標値である目標アクチュエータ力F*が決定される。そして、S6において決定された目標アクチュエータ力F*と、4つのアクチュエータ30のいずれに対応するものであるかを識別するためのIDとを含んだ制御情報が、設定された通信プロトコルに従ってバス146に送信される。また、システム10に失陥が生じている場合には、S7において、切換スイッチ204をOFF状態とすることで、4つの短絡リレー200への電流の流れを遮断して、すべてのアクチュエータ30に対応するモータ44に対して短絡状態を実現する。以上の一連の処理の後、アクチュエータ制御プログラムの1回の実行が終了する。
ii)モータ制御プログラム
EDU144において実行されるモータ制御プログラムによる処理では、まず、S21において、ECU140から送信された制御情報をバス146から受信したか否かが判定される。制御情報を受信した場合には、S22において、その制御情報に含まれる目標アクチュエータ力F*が自身に対応するアクチュエータ30に対応するものであるか否かが判定される。その目標アクチュエータ力F*が、自身に対応するものと識別された場合には、S23において、その目標アクチュエータ力F*に応じてモータ44の目標通電電流i*が演算される。
次いで、S24以下において、インバータ190の作動制御のための目標デューティ比が決定される。詳しくは、インバータ190内に設けられた通電電流センサ196によって取得された実通電電流irと目標通電電流i*との偏差Δi(=i*−ir)が認定され、その偏差Δiに基づくフィードバック制御によって目標デューティ比が決定される。なお、自身に対応する制御目標値を受信していない場合、つまり、S21,22の判定によりS23がスキップされた場合には、S25における目標通電電流i*の決定には、前回のプログラム実行時の目標通電電流i*が用いられるようになっている。そして、その目標デューティ比に基づいた指令がインバータ190に送信される。このような処理により、インバータ190の作動が制御されることで、各アクチュエータ30は、必要とされるアクチュエータ力を発生させることになる。以上の一連の処理の後、モータ制御プログラムの1回の実行が終了する。
<ECUの機能構成>
上述のアクチュエータ制御プログラムを実行するECU140、そのプログラムに従う各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図8に示すように、ECU140は、上記アクチュエータ制御プログラムのS2〜S6処理を実行する機能部、つまり、アクチュエータ力制御部300を有している。このアクチュエータ力制御部300は、制御目標値としての目標アクチュエータ力を決定するとともに、その制御目標値を含む制御情報を出力する機能部であり、制御情報出力装置として機能するものとなっている。なお、そのアクチュエータ力制御部300はS2の処理を実行して振動減衰成分FVを決定する振動減衰制御部302と、S3の処理を実行してロール抑制成分FRを決定するロール抑制制御部304と、S4の処理を実行してピッチ抑制成分FPを決定するピッチ抑制制御部306とを有している。また、ECU140は、4つのアクチュエータ30に対して、上記アクチュエータ力制御部300による制御と、それらの各々のモータ44に対して短絡状態とを切り換える制御切換処理部310を有している。その制御切換処理部310は、アクチュエータ制御プログラムのS1,S7の処理を実行する部分と、切換スイッチ204とを含んで構成されている。
10:車両用サスペンションシステム 12:車輪 20:スプリング・アブソーバAssy 22:ロアアーム(ばね下部) 24:マウント部(ばね上部) 26:アクチュエータ 28:コイルスプリング(サスペンションスプリング) 44:電磁モータ 140:サスペンション電子制御ユニット(ECU) 144:モータ電子駆動ユニット(EDU,駆動装置) 146:バス(通信ライン) 148:コンバータ 150:第1バッテリ 152:第2バッテリ 190:インバータ(駆動回路) 192:コントローラ 200:短絡リレー(導通・非導通切換器) 202:導通路(接続ライン) 204:切換スイッチ 300:アクチュエータ力制御部(制御情報出力装置) 302:振動減衰制御部 304:ロール抑制制御部 306:ピッチ抑制制御部 310:制御切換処理部

Claims (3)

  1. 電磁モータを有し、その電磁モータが発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とに対してそれらが接近・離間する向きの力であるアクチュエータ力を発生させるアクチュエータと、
    そのアクチュエータのアクチュエータ力に関する制御目標値を決定するとともに、その制御目標値を含む制御情報を出力する制御情報出力装置と、
    その制御情報出力装置が接続され、その制御情報出力装置から出力された前記制御情報が送信される通信ラインと、
    電源と前記アクチュエータが有する電磁モータとの間に配設されてその電磁モータを流れる電流を制御する駆動回路を有し、前記通信ラインに接続され、その通信ラインから前記制御情報を受信するとともに、その制御情報に含まれる制御目標値に基づいて前記駆動回路を制御することで前記電磁モータを制御駆動する駆動装置と
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    当該車両用サスペンションシステムが、
    前記駆動装置が有する駆動回路と前記アクチュエータが有する電磁モータとの間に配設され、その電磁モータの各相の通電端子間を相互に導通させた導通状態と、それら通電端子間を相互に導通させずに前記駆動回路からその電磁モータへの電流の流れを許容する非導通状態とを切り換える導通・非導通切換器と、
    その導通・非導通切換器と前記制御情報出力装置とを結び、その制御情報出力装置が前記導通・非導通切換器を制御するための接続ラインと
    を備え、
    前記制御情報出力装置が、
    当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じていない場合に非導通状態を実現し、当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じた場合に導通状態を実現するように、前記導通・非導通切換器を前記接続ラインを介して制御するように構成された車両用サスペンションシステム。
  2. 前記導通・非導通切換器が、電磁コイルを有する継電器であり、
    前記接続ラインが、その電磁コイルを励磁するために電力を供給するものである請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 当該車両用サスペンションシステムが、
    車両が有する複数の車輪に対応して、それぞれが前記アクチュエータである複数のアクチュエータと、
    それら複数のアクチュエータに対応して、それぞれが前記駆動装置である複数の駆動装置と、
    それら複数の駆動装置の各々と前記4つのアクチュエータのうちのその各々に対応するものが有する電磁モータとの間に配設され、それぞれが前記導通・非導通切換器である複数の導通・非導通切換器と
    を備え、
    前記制御情報出力装置が、
    前記複数の導通・非導通切換器を制御して、当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じていない場合に前記複数のアクチュエータの各々が有する電磁モータに対して非導通状態を実現し、当該車両用サスペンションシステムにおいて失陥が生じた場合に前記複数のアクチュエータの各々が有する電磁モータに対して導通状態を実現するように構成された請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
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