JP2009078657A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】電磁式ショックアブソーバを含んで構成されるサスペンションシステムの自己診断機能を実用的なものとする。
【解決手段】電磁式ショックアブソーバがばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力、具体的には例えば、車体の姿勢変動を抑制する力を発生させる場合において、ばね上ばね下間距離センサの検出結果から求められた実ストローク量Strと、電磁式モータの回転角センサの検出結果から推定された推定ストローク量Steとに基づいて、少なくともねじロッドのナットと螺合する部分のねじロッドが設けられているユニットに対する移動が許容される失陥を検出可能に構成する(S22〜S33)。本システムによれば、例えば、ねじロッドの破断,ねじロッドの連結されていた箇所からの分離等のようなシステムの失陥を検出することが可能である。
【選択図】図6

Description

本発明は、電磁式のショックアブソーバを含んで構成される車両用サスペンションシステムに関する。
近年では、車両用のサスペンションシステムとして、電磁式モータの力に依拠してばね上部とばね下部とに対してそれらが接近・離間する方向の力を発生させる電磁式のショックアブソーバを含んで構成される電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のシステムが存在する。この電磁式サスペンションシステムは、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく振動減衰特性を容易に実現できる等の利点から、高性能なシステムとして期待されている。
特開2005−254940号公報 特開2006−168399号公報 特開2006−168400号公報
上記特許文献1に記載されているシステムでは、モータへの供給電流に対するモータの回転角が基準の範囲内にあるか否かによって、システムの失陥を検出するようにされている。また、特許文献2に記載のシステムでは、ねじロッドとナットとの相対回転する方向が逆方向に変わる場合におけるねじロッドとナットの間に作用するトルクの変化量が、閾値以上となった場合に、ねじ機構に異常があると判定される。さらに、特許文献3に記載のシステムでは、実際に検出されたばね下加速度に基づいて推定されたばね上加速度と、実際に検出されたばね上加速度とを比較することによって、システムの失陥を検出するようにされている。
電磁式サスペンションシステムに何らかの失陥が生じた場合には、車両の乗り心地,操縦性,安定性等への影響が大きく、上記特許文献に記載のシステムのように、何らかの手段によってシステムに失陥が生じているか否かを適宜診断することが強く望まれている。また、システムに生じる失陥には種々のものがあり、例えば、それら失陥の各々に対処するために、それらの種々の失陥を判別することが望まれている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用的な自己診断機能を備えた電磁式サスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のサスペンションシステムは、電磁式ショックアブソーバがばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力を発生させる場合において、ばね上部とばね下部との間の距離を検出するセンサの検出結果と、電磁式モータの回転角を検出するセンサの検出結果とに基づいて、少なくともねじロッドのナットと螺合する部分のねじロッドが設けられているユニットに対する移動が許容される失陥を検出するように構成される。
本発明のサスペンションシステムによれば、例えば、ねじロッドの破断,ねじロッドの連結されていた箇所からの分離等のようなシステムの失陥を検出することが可能である。本発明の車両用サスペンションシステムは、そのような失陥を検出可能であることから、実用性の高い自己診断機能を備えたシステムとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項ないし(4)項の各々が請求項1ないし請求項4の各々に相当し、(6)項が請求項5に、(8)項,(9)項の各々が請求項6,請求項7の各々に、(13)項が請求項8に、それぞれ相当する。
(1)ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングと、
(A)ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、(B)ばね下部に連結されてばね上部ととばね下部との接近・離間に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作可能なばね下部側ユニットと、(C)前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方に相対移動不能に設けられて雄ねじが形成されたねじロッドと、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの他方に相対移動不能に設けられて雌ねじが形成されて前記ねじロッドと螺合するナットとを有し、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に応じて前記ねじロッドと前記ナットとの一方が回転する構造とされたねじ機構と、(D)前記ねじロッドとナットとの一方に連結されるモータ軸を有し、そのねじロッドとナットとの一方に回転力を付与することが可能な電磁式モータとを含んで構成され、前記電磁式モータが前記ねじロッドとナットとの一方に付与する回転力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する力であるアブソーバ力を発生させる電磁式のショックアブソーバと、
前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
当該車両用サスペンションシステムが、
ばね上部とばね下部との間の距離であるばね上ばね下間距離を検出するばね上ばね下間距離センサと、
前記電磁式モータの回転角を検出する回転角センサと、
前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果と前記回転角センサの検出結果とに基づいて当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出する装置であって、当該車両用サスペンションシステムの失陥として、少なくとも前記ねじロッドの前記ナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥を、前記ショックアブソーバが前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力となるアブソーバ力を発生させる場合における前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果と前記回転角センサの検出結果とに基づいて検出する失陥検出装置と
を備えたことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
電磁式モータ(以下、単に「モータ」という場合がある)は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に応じて回転する構造とされ、モータの回転角は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量に対応する。また、ショックアブソーバ(以下、単に「アブソーバ」という場合がある)は、ばね上部側ユニットがばね上部に、ばね下部側ユニットがばね下部に、それぞれ連結されるため、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量は、原則的に、ばね上部とばね下部とが接近・離間する動作量に対応する。したがって、システムが正常である場合には、ばね上ばね下間距離センサの検出結果と、回転角センサとの検出結果とが対応する関係にある。それら2つのセンサの検出結果に基づいて、システムの失陥を検出する本項の態様は、簡便に、システムの失陥を検出することが可能である。
本項の態様における「少なくともねじロッドのナットと螺合する部分のばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥(以下、単に「ねじロッド分断失陥」と呼ぶ場合がある)」とは、例えば、ねじロッドが、ナットと螺合する部分とねじロッドがばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に連結される部分との間で破断する状態や、ねじロッドが、連結されているばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方から外れてしまう状態等である。そのような失陥が生じた場合には、原則的に、モータの回転トルクは、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとに伝達されない状態、換言すれば、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とモータの回転動作とが、相互に変換されない状態となる。また、ショックアブソーバがばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対して抵抗力を発生させている場合には、システムが正常であれば、ばね上部とばね下部との相対動作する方向、換言すれば、モータの回転する方向と、モータの回転トルクの方向とは逆方向となる。つまり、上記のようなねじロッド分断失陥が生じた際に、アブソーバがばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対して抵抗力を発生させようとする場合、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが相対動作しても、それに応じてモータが回転させられることがないため、モータの回転する方向は、回転トルクの方向と同じ方向となり、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作する方向、つまり、ばね上部とばね下部とが接近・離間する方向に対して、モータの回転する方向が、逆方向となってしまうのである。したがって、本項に記載の態様は、上記のことを考慮して、少なくともねじロッドのナットと螺合する部分のばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥を、ばね上ばね下間距離センサと回転角センサとの検出結果に基づいて、容易に検出することが可能となっている。
本項の態様における「サスペンションスプリング」は、コイルスプリング,リーフスプリング等の各種ばねを採用することが可能であり、エアスプリング等の流体スプリングを採用することも可能である。本項に記載の「アブソーバ力」は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する力であるが、この力は、相対動作に対する抵抗力のみならず相対動作に対する推進力をも意味し、「電磁式のショックアブソーバ」には、そのような力を発生可能なものを採用可能である。そのアブソーバは、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作と電磁式モータの回転動作とをねじ機構によって相互に変換する構造のものであるが、機能に関しては特に限定されず、例えば、車両に発生している振動を減衰させる機能に加え、車体の姿勢を制御する機能等を有するものを採用可能である。アブソーバが有する「電磁式モータ」は回転型モータであり、ブラシレスDCモータを始め、各種のモータを採用することができる。ちなみに、本項にいう「ばね上部」は、簡単に言えば、サスペンションシステムによって懸架される車体の一部であり、具体的には例えば、アブソーバ,サスペンションスプリング等が取り付けられるマウント部が、ばね上部に相当する。また、「ばね下部」は、簡単に言えば、車体に対して車輪とともに相対動作する車両の構成要素を広く意味し、具体的には例えば、サスペンションアーム,アクスルキャリア等がばね下部に相当する。
ちなみに、本明細書において「連結」という文言は、直接的に接続されることのみを意味するものではなく、何らかの部品,部材,ユニット等を介し、間接的に接続されることをも意味する。例えば、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットがばね上部,ばね下部と連結されるとは、それらが直接的に連結される場合の他、それらの間にスプリング,ダンパ等を介して連結されるような場合も含まれる。
本項の態様における「制御装置」は、例えば、アブソーバの主たる機能である振動減衰を目的とした制御を実行可能なものを採用可能である。具体的には、例えば、ばね上絶対速度に基づく制御、つまり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく制御を実行可能なものである。また、その振動減衰制御のみならず、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するためのロール抑制制御,車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するためのピッチ抑制制御や、ばね上ばね下間距離を調整する制御、つまり、いわゆる車高調整制御等を並行して実行可能なものであってもよい。
本項の態様における「失陥検出装置」は、例えば、コンピュータを主体として構成されるものとすることができる。失陥検出装置は、上述したねじロッド分断失陥に加えて、ねじロッドとナットとの固着等を検出可能なものであってもよい。また、失陥検出装置は、ばね上ばね下間距離センサの検出結果と回転角センサの検出結果との各々から、システムの失陥を検出するための共通の指標、例えば、アブソーバの動作の状態を指標するもの等を推定し、それらを比較することによって、失陥の有無の判定,失陥の種類の判別等を行うものを採用することができる。さらに、システムの失陥の検出は、現時点での検出結果のみに基づくものであってもよく、現時点から遡った設定時間内における値に基づくものであってもよい。
(2)前記失陥検出装置が、それぞれが前記ばね上ばね下間距離を指標するばね上ばね下間距離指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものである(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(3)前記失陥検出装置が、それぞれがばね上部とばね下部との相対移動の方向を指標する相対移動方向指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものである(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、システムの失陥を検出するための指標を限定した態様である。前者の態様における「ばね上ばね下間距離指標」は、ばね上ばね下間距離そのものであってもよく、また、ばね上部とばね下部との接近・離間動作量,モータの回転角,アクチュエータの長さ,ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量等であってもよい。また、後者の態様における「相対移動方向指標」は、ばね上部とばね下部との相対移動の方向そのものであってもよく、また、モータの回転方向,ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動の方向であってもよい。つまり、その相対移動方向指標には、例えば、ばね上部とばね下部との相対速度,モータの回転速度等を採用可能である。
(4)前記失陥検出装置が、(a)前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが離間する方向を指標し、かつ、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向を指標する場合と、(b)前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向を指標し、かつ、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが離間する方向を指標する場合との少なくとも一方において、前記少なくともねじロッドのナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥が生じていると判定するものである(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、前述した相対移動方向指標に基づいて失陥を検出する態様において、ねじロッド分断失陥を検出するための具体的手法に限定を加えた態様である。前述したように、ねじロッド分断失陥が生じた場合には、原則的には、モータの回転する方向は、ばね上部とばね下部との接近・離間する方向に対して逆方向となるため、本項の態様は、相対移動方向指標が互いに異なる方向を指標する場合に、ねじロッド分断失陥が生じていると判定されるようになっている。本項の態様は、ある時点での検出結果が上記の条件を満たした場合にねじロッド分断失陥と判定されてもよく、上記の条件を設定された回数満たした場合に失陥と判定されてもよい。
(5)前記失陥検出装置が、当該車両用サスペンションシステムの失陥として、さらに、前記ねじ機構における前記ねじロッドと前記ナットとの固着を検出する(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
ねじロッドとナットとが固着した場合には、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが相対動作できず、モータも回転できない状態となる。つまり、本項の態様は、例えば、ばね上ばね下間距離とモータの回転角とが0である場合に、ねじロッドとナットとが固着していると判定する態様とすることが可能である。
(6)前記ショックアブソーバが、
前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとのいずれかと前記ねじロッドとに係合して、前記ねじロッドを、それの軸線回りの回転を禁止しつつ軸線方向の移動を許容する移動許容回転禁止機構を含んで構成され、
前記ナットが回転可能に設けられるとともに、そのナットが前記モータ軸に連結されて、前記電磁式モータが前記ナットに付与する回転力に依拠してアブソーバ力を発生させるように構成された(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「移動許容回転禁止機構」は、それの具体的な構造が特に限定されるものではなく、例えば、ねじロッドに、それの軸線方向に延びるようにしてキー溝(ガイド溝)が設けられるとともに、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとのいずれかの構成要素に、キーを設け、それらが嵌合する構造を採用することが可能である。また、後に述べるように、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとのいずれかとねじロッドとをスプライン嵌合させる構造を採用することも可能である。
アブソーバが上記移動許容回転禁止機構を含んで構成される場合には、ねじロッド分断失陥が生じた場合であっても、モータによってナットが回転させられると、ねじロッドがそれの軸線方向に動作することになる。つまり、ねじロッド分断失陥が生じても、ねじロッドを、そのねじロッドが設けられていたばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に向かって動作させて、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方を押す方向の力、つまり、ばね上部とばね下部とを離間させる方向の力を付与することが可能である。したがって、ばね上部とばね下部との離間動作に対する抵抗力は発生させることはできないが、ばね上部とばね下部との接近動作に対する抵抗力は発生させることが可能である。
ねじロッド分断失陥が生じた場合、上述のような状態となることから、アブソーバが前記移動許容回転禁止機構を含んで構成される場合には、アブソーバがばね上部とばね下部との離間動作に対する抵抗力を発生させる場合の2種類のセンサの検出結果に基づいて、ねじロッドの分断失陥を検出することが可能である。例えば、ばね上ばね下間距離指標に基づいてシステムの失陥を検出する態様の場合には、ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定されたばね上ばね下間距離指標が、ショックアブソーバがアブソーバ力を発生させていない状態におけるばね上ばね下間距離である中立距離に比較して大きいことを指標し、かつ、回転角センサの検出結果から推定されたばね上ばね下間距離指標が、中立距離に比較して小さいことを指標する場合に、ねじロッド分断失陥が生じていると判定する態様を採用可能である。また、相対移動方向指標に基づいてシステムの失陥を検出する態様の場合には、ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定される前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが離間する方向を指標しかつ、前転角センサの検出結果から推定される相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向を指標する場合に、ねじロッド分断失陥が生じていると判定する態様を採用可能である。
(7)前記移動許容回転禁止機構が、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとのいずれかと前記ねじロッドとをスプライン嵌合させる機構である(6)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、移動許容回転禁止機構の構造を、具体的に限定した態様である。移動許容回転禁止機構に、例えば、ボールスプライン機構を採用すれば、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとのいずれかに対するねじロッドの移動を滑らかなものとすることが可能である。
(8)前記失陥検出装置が、それぞれが前記ばね上ばね下間距離を指標するばね上ばね下間距離指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものであり、
前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標が、前記ショックアブソーバがアブソーバ力を発生させていない状態におけるばね上ばね下間距離である中立距離に比較して小さいことあるいは大きいことのいずれを指標する場合においても、前記回転角センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標が、前記中立距離に比較して小さいことを指標する場合に、前記少なくともねじロッドのナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥が生じていると判定するものである(6)項または(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(9)前記失陥検出装置が、それぞれがばね上部とばね下部との相対移動の方向を指標する相対移動方向指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものであり、
前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定される前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向あるいは離間する方向のいずれを指標する場合においても、前記回転角センサの検出結果から推定される前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向を指標する場合に、前記少なくともねじロッドのナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥が生じていると判定するものである(6)項または(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、アブソーバが移動許容回転禁止機構を含んで構成される態様において、ねじロッド分断失陥を検出するための具体的手法に限定を加えた態様である。前者の態様は、前述したばね上ばね下間距離指標に基づいてねじロッド分断失陥を検出する態様であり、後者の態様は、前述した相対移動方向指標に基づいてねじロッド分断失陥を検出する態様である。また、上記2つの項に記載の態様は、ばね上部とばね下部との離間動作に対する抵抗力としてアブソーバ力を発生させる場合だけでなく、ばね上部とばね下部との接近動作に対する抵抗力としてアブソーバ力を発生させる場合をも考慮して失陥の判定を行うため、ねじロッド分断失陥の判定を確実に行うことが可能である。
(10)当該車両用サスペンションシステムが、
ばね上部とばね下部との一方である一方部と、その一方部に連結される前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方である一方部側ユニットとの間に設けられて前記一方部と前記一方部側ユニットとを弾性的に連結する連結スプリングを含んで構成され、前記一方部と前記一方部側ユニットとを連結する連結機構を備えた(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、簡単に言えば、ばね上部とばね下部との一方とアクチュエータとの連結をスプリングを介して連結した態様である。本項の態様によれば、例えば、連結スプリングのばね定数の適切化等により、アクチュエータの制御が追従し得ないような高周波振動がばね下部に入力されたような場合であっても、その高周波振動のばね上部への伝達を効果的に抑えることが可能になる。また、ばね下部に加わる衝撃から、アクチュエータを保護することも可能となる。
本項の態様の場合には、連結機構を介して、つまり、連結機構の動作を伴って、アブソーバ力がばね上部とばね下部とに作用するため、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量と、ばね上部とばね下部とが接近・離間する動作量とは、必ずしも一致しないことになる。したがって、上記連結機構の動作量を考慮して、2種類のセンサの検出結果からシステムの失陥を検出するための指標を推定することが望ましい。また、一方部と一方部側ユニットとの相対動作の激しさの程度が比較的低い状況において、システムの失陥を検出する態様とされることが望ましい。例えば、後に説明するように、ばね上部やばね下部の振動の激しさの程度が比較的低い状況下において、システムの失陥の検出を行うことが望ましい。
(11)前記連結機構が、
前記連結スプリングと並設されて前記一方部と前記一方部側ユニットとの相対動作に対する減衰力を発生させるダンパを含んで構成された(10)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ダンパにより、連結機構によって連結されているばね上部とばね下部との一方とアクチュエータとの相対振動を効果的に減衰させることができる。そのため、本項の態様によれば、例えば、ダンパの減衰係数の適切化等によって、ばね下共振周波数およびその近傍の周波数の振動のばね下部からばね上部への伝達が効果的に抑制されたサスペンションシステムとすることも可能である。
(12)前記連結機構が、前記一方部としてのばね下部と、前記一方部側ユニットとしての前記ばね下部側ユニットとの間に設けられた(10)項または(11)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ばね下部とばね下部側ユニットとの間に連結機構を配置したものであり、本項の態様によれば、ばね下部からアクチュエータに入力される振動を効果的に吸収することができ、アクチュエータの保護という観点において有利なサスペンションシステムが実現する。
(13)前記制御装置が、
前記アブソーバ力を、車体の姿勢の変動を抑制するための姿勢変動抑制力として作用させる車体姿勢制御を実行可能とされ、
前記失陥検出装置が、前記ショックアブソーバが前記姿勢変動抑制力としてアブソーバ力を発生させる場合における前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果と前記回転角センサの検出結果とに基づいて、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものである(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、失陥検出を行う場合に限定を加えた態様である。本項に記載の「車体姿勢制御」は、平たく言えば、車体の傾きを抑制する制御である。本項の態様によれば、アブソーバに対して、システムの失陥を検出するための特別の動作を必要とせず、通常の走行状態において失陥を検出することが可能である。なお、システムの失陥の検出は、アブソーバの主たる機能である振動減衰を目的とした振動減衰制御において行われてもよいが、その振動減衰制御は、一般的に、抵抗力だけでなく推進力としてアブソーバ力を発生させる場合もある。また、車体姿勢制御における車体の変動は、振動減衰制御における車体の変動に比較して比較的緩やかであるため、本項の態様によれば、2種類のセンサの検出結果を比較すること等が、比較的容易である。
(14)前記車体姿勢制御が、車体に作用する外力によってばね上部とばね下部とが接近する量あるいは離間する量を減少させるものである(13)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、車体姿勢制御部による制御を具体化した態様であり、本項の態様には、例えば、ばね上部とばね下部との接近あるいは離間する量を、ある量だけ減少させる態様,ある割合だけ減少させる態様等が含まれる。本項の態様は、システムが正常である場合、車体に外力が作用すると車体にある程度の姿勢変化が生じるため、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作ができない状態となったこと、例えば、前述したねじロッドとナットとの固着を検出する態様に有効な態様である。
(15)前記車体姿勢制御が、少なくとも車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するものである(13)項または(14)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(16)前記車体姿勢制御が、少なくとも車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するものである(13)項ないし(15)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、車体姿勢制御部による制御に限定を加えた態様である。前者の態様は、例えば、フィードフォワード制御によって車体のロールを抑制する態様で実施することができ、具体的には、車体に発生する横加速度,ヨーレート等の車体に作用するロールモーメントを指標する値に応じて、姿勢変動抑制力を決定する態様を採用可能である。後者の態様は、例えば、フィードフォワード制御によって車体のピッチを抑制する態様で実施することができ、具体的には、車体に発生する前後加速度等の車体に作用するピッチモーメントを指標する値に応じて、姿勢変動抑制力を決定する態様を採用可能である。
(17)前記失陥検出装置が、車両の振動の激しさの程度が設定された程度より低い状況であることを条件として、当該車両用サスペンションシステムの失陥の検出を行うものである(1)項ないし(16)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「振動の激しさの程度」は、例えば、ばね上部,ばね下部の加速度や速度、ばね上部とばね下部との相対速度、ばね上振動,ばね下振動,相対振動の振幅等によって判断することが可能である。本項の態様によれば、2種類のセンサの検出結果を比較することが容易であり、簡便にシステムの失陥検出を行うことが可能である。なお、システムが連結機構を備える場合、前述したように、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量と、ばね上部とばね下部とが接近・離間する動作量とは、必ずしも一致しないことになるが、一方部と一方部側ユニットとの相対動作の激しさの程度が比較的低くなるため、2種類のセンサの検出結果を比較することが容易であり、そのようなシステムの失陥検出が容易となる。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
≪第1実施例≫
<サスペンションシステムの構成>
図1に、請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
スプリング・アブソーバAssy20は、図2に示すように、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設されている。スプリング・アブソーバAssy20は、大きくは、電磁式ショックアブソーバとしてのアクチュエータ30と、そのアクチュエータ30とロアアーム22とを連結するための連結機構32と、サスペンションスプリングとしてのエアスプリング34とに区分することができ、それらを構成要素として含んで構成されており、それらが一体化されたものとなっている。
アクチュエータ30は、ねじ溝40が形成された雄ねじ部としてのねじロッド42と、ベアリングボールを保持してねじロッド42と螺合する雌ねじ部としてのナット44とを含んで構成されるボールねじ機構と、動力源としての電磁式モータ46(以下、単に「モータ46」という場合がある)と、それらボールねじ機構およびモータ46を収容するケーシング48とを備えている。そのケーシング48が、外周部において、マウント部24に連結されている。モータ46は、中空とされたモータ軸50を有しており、そのモータ軸50の下端部の内側には、ナット44が固定されている。つまり、モータ46は、ナット44に回転力を付与するものとなっている。そして、ねじロッド42が、ナット44と螺合させられて、モータ軸50内から下方に延び出した状態で配設される。
また、ケーシング48内には、ロッドホルダ60が、上記ナット44と同軸的に固定されている。一方、ボールねじ機構の構成要素であるねじロッド42には、スプライン溝62も形成されており、ねじロッド42とロッドホルダ60とが、スプライン嵌合できるように構成されている。それらねじロッド42とロッドホルダ60とを含んで構成されるボールスプライン機構によって、ねじロッド42がケーシング48に対して相対回転不能、かつ、軸線方向に相対移動可能とされている。つまり、アクチュエータ30は、移動許容回転禁止機構を有するものとされているのである。そして、ねじロッド42は、ケーシング48から下方に延び出して、連結機構32に連結される。
連結機構32は、液圧式ダンパ68を有している。そのダンパ68は、ツインチューブ型の液圧式ショックアブソーバに類似する構造のものであり、2重筒とされて作動液を収容するハウジング70と、そのハウジング70にそれの内筒の内部において液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン72とを含んで構成されている。そのダンパ68は、ピストン72の移動に伴って、そのピストン72に設けられたバルブによって、ハウジング70内の2つの作動液室の間の作動液の流通に対する抵抗を付与するとともに、ベースバルブ体74によって、2重筒の間に形成されたリザーバ室とピストン72の下側の作動液室との間の作動液の流通に対する抵抗を付与するものとされている。ハウジング70は、それの下端部に設けられたブシュ76を介してロアアーム22に連結されている。一方、アクチュエータ30の上記ねじロッド42の下端部に固定されたピストンロッド78がハウジング70内に延び入っており、ピストン72は、そのピストンロッド78の下端部に連結されている。そのような構造により、ねじロッド42は、ダンパ68を介してロアアーム22に連結されているのである。なお、ダンパ68は、ロアアーム22とねじロッド42との相対動作に対する減衰力を発生させるものとなっている。
ダンパ68のハウジング70には、それの外周部に環状の下部リテーナ90が設けられている。その下部リテーナ90とアクチュエータ30のケーシング48との間には、ケーシング48に上端部が固定されたアウタチューブ92と、そのアウタチューブ92に嵌入されて下端部が下部リテーナ90に固定されたインナチューブ94とを含んで構成されるシリンダ96が設けられている。一方、ねじロッド42とピストンロッド78との接続部には、浮動部材98が固定されている。そして、その浮動部材98が、それに設けられたフランジ部の下面側と下部リテーナ90との間に配設された圧縮コイルスプリング100と、浮動部材98のフランジ部の上面側とインナチューブ94の上端部に形成されたフランジ部との間に配設された圧縮コイルスプリング102とによって挟持されている。つまり、2つのスプリング100,102は、ダンパ68と並設されており、連結機構32の構成要素となっている。それらスプリング100,102は、両者が協働してねじロッド42とロアアーム22とを弾性的に連結する連結スプリングとして機能する。
エアスプリング34は、マウント部24に連結されるチャンバシェル120と、ロアアーム22に連結されるエアピストン筒122と、それらを接続するダイヤフラム124とを含んで構成されている。チャンバシェル120は、それの蓋部126が、防振ゴムを有するスプリングサポート128を介してアクチュエータ30のケーシング48に連結されている。また、蓋部126は、防振ゴムを有するアッパーサポート130を介してマウント部に24に連結されている。エアピストン筒122は、シリンダ106を内部に収容した状態で、下端部がシリンダ106のインナチューブ104の外周部に固定されている。ダイヤフラム124が、一端部がチャンバシェル120の下端部に固定され、他端部がエアピストン筒122の上端部に固定されており、それらチャンバシェル120とエアピストン筒122とダイヤフラム124とによって圧力室132が区画形成されている。その圧力室132には、流体としての圧縮エアが封入されている。このような構造から、エアスプリング24は、その圧縮エアの圧力によって、ロアアーム22とマウント部24、つまり、ばね上部とばね下部とを弾性的に連結しているのである。ちなみに、前述した圧縮コイルスプリング100,102を1つのばねと仮定した場合におけるばね定数が、エアスプリング34のばね定数よりも大きく設定されている。
上述のような構造から、アクチュエータ30は、ナット44,モータ46,ケーシング48,ロッドホルダ60,アウタチューブ92を含んでマウント部24に連結されるばね上部側ユニットと、ねじロッド42,ピストンロッド78,浮動部材98を含んでロアアーム22に連結されるばね下部側ユニットとを有する構造のものとなっている。また、上記連結機構32は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方である一方部側ユニットとしてのばね下部側ユニットと、そのばね下部側ユニットと連結されるばね上部とばね下部との一方である一方部としてのばね下部との連結部に配設され、それらを連結するものとされている。
アクチュエータ30は、ばね上部とばね下部とが接近・離間する場合に、ねじロッド42とナット44とが軸線方向に相対移動可能、つまり、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが相対移動可能とされ、その相対移動に伴って、ナット44がねじロッド42に対して回転する。それによって、モータ軸50も回転することになる。モータ46は、ナット44に回転トルクを付与可能とされ、この回転トルクによって、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対して、その相対動作を阻止する方向の抵抗力を発生させることが可能である。この抵抗力をばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する減衰力、ひいては、ばね上部とばね下部との接近・離間に対する減衰力として作用させることで、アクチュエータ30は、いわゆるショックアブソーバとして機能するものとなっている。また、アクチュエータ30は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対する推進力をも発生させることが可能とされており、いわゆるスカイフックダンパ理論,擬似的なグランドフック理論等に基づく制御を実行することが可能とされている。アクチュエータ30が、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対して抵抗力および推進力を発生させることから、上記のような減衰力を発生させることに加えて、さらに、ばね上部とばね下部との離間距離、つまり、ばね上ばね下間距離を任意の距離に維持することが可能であり、車両旋回時の車体のロール,車両加速・減速時の車体のピッチ等を効果的に抑制することや、車両の高さいわゆる車高を調整すること等が可能とされているのである。
なお、アクチュエータ30の振動減衰機能に着目すれば、アクチュエータ30は、5Hz以下の比較的周波数の低い振動に対しては動作が円滑に追従し、そのような低周波数振動に対しては、効果的な振動減衰が可能である。しかし、10Hzを超えるような周波数の高い振動に対しては、自身の追従性から、効果的な振動減衰が難しい。本スプリング・アブソーバAssy20では、上述した連結機構32によって、アクチュエータ30とロアアーム22とが連結されており、その連結機構32によって、10Hzを超えるような高周波振動であっても、その振動のばね下部からばね上部への高周波振動の伝達が、効果的に抑制されることになる。
サスペンションシステム10は、図1に示すように、各スプリング・アブソーバAssy20が有するエアスプリング34に対して流体としてのエア(空気)を流入・流出させるための流体流入・流出装置、詳しく言えば、エアスプリング34の圧力室132に接続されて、その圧力室132にエアを供給し、圧力室132からエアを排出するエア給排装置140を備えている。詳しい説明は省略するが、本サスペンションシステム10は、エア給排装置140によって、各エアスプリング34の圧力室132内のエア量を調整することが可能とされており、エア量の調整によって、各エアスプリング34のばね長を変更し、各車輪12についてのばね上ばね下間距離を変化させることが可能とされている。具体的に言えば、圧力室132のエア量を増加させてばね上ばね下間距離を増大させ、エア量を減少させてばね上ばね下間距離を減少させることが可能とされている。つまり、本システム10は、いわゆる車高調整が可能とされているのである。
本サスペンションシステム10は、制御装置としてのサスペンション電子制御ユニット200(以下、「ECU200」という場合がある)によって、スプリング・アブソーバAssy20の作動、つまり、アクチュエータ30およびエアスプリング34の制御が行われる。ECU200は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたものである。そのECU200には、エア給排装置140の駆動回路としてのドライバ[DRV]202と、各アクチュエータ30が有するモータ46に対応して設けられて、それぞれが、対応するモータ46の駆動回路として機能する4つのインバータ[INV]204とが接続されている。それらドライバ202およびインバータ204は、コンバータ[CONV]206を介してバッテリ[BAT]208に接続されており、エア給排装置140が有する各制御弁,ポンプモータ等、および、各アクチュエータ30のモータ46には、そのコンバータ206とバッテリ208とを含んで構成される電源から電力が供給される。また、インバータ204は、起電力によってモータ46にて発電された電力を電源に回生可能な構造とされており、モータ46は、供給電流に依存したモータ力だけでなく、起電力に依拠したモータ力を発生可能となっている。そして、インバータ204は、電源からの供給電流であるか、起電力によって生じる発電電流であるかに拘わらず、モータ46を流れる電流、つまり、モータ46の通電電流を調整して、モータ力を制御する構造とされている。なお、通電電流は、各インバータ204がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって調整される。
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]220,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]222,各車輪12についてのばね上ばね下間距離を検出する4つのハイトセンサ[h]224,車高変更指示のために運転者によって操作される車高変更スイッチ[HSw]226,ステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ[δ]228,車体に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]230,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]232,各車輪12に対応する車体の各マウント部24の縦加速度(上下加速度)を検出する4つのばね上縦加速度センサ[Gzs]234,各車輪12の縦加速度を検出する4つのばね下縦加速度センサ[Gzg]236,アクセルスロットルの開度を検出するスロットルセンサ[Sr]238,ブレーキのマスタシリンダ圧を検出するブレーキ圧センサ[Br]240,各モータ46の回転角を検出する回転角センサであるレゾルバ[θ]242等が設けられており、それらはECU200のコンピュータに接続されている。ECU200は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、スプリング・アブソーバAssy20の作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、ECU200のコンピュータが備えるROMには、アクチュエータ30の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<サスペンションシステムの基本的な制御>
i)アクチュエータの制御の概要
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ26のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回に起因する車体のロールと、車両の加減速に起因する車体のピッチとによる車体の姿勢変動を抑制するための制御 (以下、「車体姿勢制御」という場合がある)が実行される。
上記振動減衰制御,車体姿勢制御のロール抑制制御およびピッチ抑制制御は、総合的に行われるが、その前提として、それぞれに定められた規則に従って、それぞれの制御毎に必要なアクチュエータ力が求められる。そして、それらのアクチュエータ力が、それぞれ、振動減衰成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分とされ、それらが合計されて、目標アクチュエータ力が決定される。アクチュエータ30は、その目標アクチュエータ力を発生させるように制御され、その結果、上記振動減衰制御,車体姿勢制御のロール抑制制御およびピッチ抑制制御が、総合的に実行されるのである。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
ii)振動減衰制御
振動減衰制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動減衰成分FVが決定される。つまり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御と、擬似的なグランドフック理論に基づいた制御との両者を総合して行う制御である。具体的には、車体のマウント部24に設けられたばね上縦加速度センサ234によって検出されるばね上縦加速度から得られる車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上絶対速度Vsと、ロアアーム22に設けられたばね下縦加速度センサ236によって検出されるばね下縦加速度から得られる車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下絶対速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動減衰成分FVが演算される。
V=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、Cgは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
iii)車体姿勢制御
車体姿勢制御は、ばね上部とばね下部との接近・離間する量をある程度減少させる制御であり、その制御における姿勢変動抑制成分は、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力である。車体姿勢制御は、具体的に言えば、車両の旋回に起因して車体に作用するロールモーメントに応じたアクチュエータ力を発生させるためのロール抑制制御と、車両の加減速に起因して車体に作用するピッチモーメントに応じたアクチュエータ力を発生させるためのピッチ抑制制御とを併せた制御である。つまり、アクチュエータ力の姿勢変動抑制成分FSは、ロール抑制成分FRとピッチ抑制成分FPとの和で求められる。
S=FR+FP
以下に、ロール抑制制御,ピッチ抑制制御の各々を、ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPの決定方法を中心に説明する。
a)ロール抑制制御
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ30にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ30にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ232によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分FRが、次式に従って決定される。
R=K3・Gy* (K3:ゲイン)
b)ピッチ抑制制御
車体の制動時等の減速時において車体のノーズダイブが生じる場合には、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車体の加速時において車体のスクワットが生じる場合には、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合のばね上ばね下間距離の変動を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ230によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制成分FPが、次式に従って決定される。
P=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ238によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ240によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
iv)目標アクチュエータ力とモータの作動制御
アクチュエータ26の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の振動減衰成分FV,姿勢変動抑制成分FSが決定されると、それらに基づき、次式に従って目標となるアクチュエータ力F*が決定される。
*=FV+FS
そして、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*を発生させるためのモータ46の作動制御が、インバータ204によって行われる。詳しく言えば、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ204に送信される。インバータ204は、その適切なデューティ比の下、インバータ204が備えるスイッチング素子の開閉が制御されて、目標アクチュエータ力F*を発生させるようにモータ46を作動させる。
v)車高変更制御
なお、本サスペンションシステム10では、エアスプリング34によって、路面の起伏が大きい道路の走行への対処、車両の操縦安定性の向上等を目的として運転者の意思に基づいて車両の車高を変更する制御(以下、「車高変更制御」という場合がある)が実行される。簡単に説明すれば、車高変更制御は、運転者の意図に基づく車高変更スイッチ166の操作によって実現すべき設定車高である目標設定車高が変更された場合において、実行される。その目標設定車高の各々に応じて、各車輪12についての目標となるばね上ばね下間距離が設定されており、ハイトセンサ224の検出値に基づいて、それぞれの車輪12についてのばね上ばね下間距離が目標距離になるように、エア給排装置140の作動が制御され、各車輪12のばね上ばね下間距離が目標設定車高に応じた距離に変更されるのである。さらに、この車高変更制御では、例えば、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等による車高の変動に対処することを目的とした、いわゆるオートレベリングと呼ばれる制御も行われる。
<サスペンションシステムの失陥の検出>
本サスペンションシステム10は、自己診断機能を有しており、自身に失陥が生じた場合に、その失陥の種別を判別するとともにその失陥に対処することが可能とされている。その失陥の検出は、アクチュエータ30がばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力となるアクチュエータ力を発生させる場合、より詳しく言えば、前述した車体姿勢制御によって姿勢変動抑制力を発生させる場合におけるハイトセンサ224の検出結果とレゾルバ242の検出結果とに基づいて行われる。また、本システム10では、ねじ機構についての失陥を種別の判定の対象としている。なお、システムの失陥を検出する処理(以下、「失陥検出処理」という場合がある)は、ECU200によって実行される。
本システム10における失陥検出処理では、ばね上ばね下間距離指標として、車両が水平な路面状に静止しているとみなせる状態における標準的なばね上ばね下間距離である中立位置に対する位置、換言すれば、標準的なばね上ばね下間距離を基準としたばね上ばね下間距離の変化量であるばね上部とばね下部との接近・離間動作量(以下、「ストローク量」という場合がある)が採用される。上述したレゾルバ242から検出されるモータ46の回転角は、ある回転角度位置からの累積的な回転角であり、ばね上側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作量に対応する。そして、連結機構32の変動がないものとすれば、レゾルバ242の検出値からストローク量を推定可能である。つまり、本失陥検出処理では、そのレゾルバ242の検出値から推定された推定ストローク量Steと、ハイトセンサ224の検出値から求められた実際のストローク量である実ストローク量Strとを比較して、システムの失陥を検出するようにしている。なお、詳しい説明は省略するが、上記の標準的ななばね上ばね下間距離は、乗員数、前述した車高調整における設定車高といった要因により変動するが、本システム10では、それらの要因による変動を考慮した値が随時求められるようにされている。そして、連結機構32の動作を考慮して、それら実ストローク量Strと推定ストローク量Steとの偏差であるストローク量偏差ΔSt(=|Str−Ste|)が、閾値ΔSt0以下である場合には、原則的に、システムは正常であると判定される。ちなみに、本システム10では、車両の振動の激しさの程度が比較的低い状況下において失陥検出処理が実行されるように、ばね上縦加速度センサ234とばね下縦加速度センサ236との検出値に基づいて求められた相対振動の振幅が閾値より小さいことを条件として、失陥検出処理が実行されるようになっている。つまり、車両の振動の激しさの程度が低い場合、連結機構32の動作の激しさの程度も比較的低いと推定されるため、実ストローク量Strと推定ストローク量Steとを容易に比較できるようになっている。図3に、実ストローク量Strと推定ストローク量Steとの関係を示す図であり、図3(a)の斜線を施した範囲である場合には、原則的に、システムが正常であると判定されるのである。
失陥検出処理では、前述したように、ねじ機構についての失陥が、失陥の種別を判定する対象とされており、具体的には、例えば、ねじロッド42とナット44との固着を検出可能とされている。ねじロッド42とナット44とが固着(以下、「ねじ機構の固着」という場合がある)した場合、アクチュエータ30が姿勢変動抑制力を発生させようとしても、モータ46が回転できないため、推定ストローク量Steは常に0となる。つまり、上述したストローク量偏差ΔStが閾値ΔSt0以下であっても、推定ストローク量Steが0である場合には、ねじ機構が固着していると判定されるのである。なお、ねじ機構が固着した場合、実ストローク量Strと推定ストローク量Steとは、図3(b)の実線部分に示す関係となる。
失陥検出処理では、また、少なくともねじロッド42のナット44と螺合する部分のばね下部側ユニットに対する移動が許容される失陥を検出可能とされている。その少なくともねじロッド42のナット44と螺合する部分のばね下部側ユニットに対する移動が許容される失陥とは、具体的に言えば、例えば、ねじロッド42がロッドホルダ60とピストンロッド78への連結部との間で破断することや、ねじロッド42とピストンロッド78との固定が外れること等である。以下、そのような失陥を、ねじロッド分断失陥と呼ぶこととし、ねじロッド42のばね下部側ユニットに対して移動が許容された部分をねじロッド42の分断部分と呼ぶこととする。
上記ねじロッド分断失陥が生じた場合には、各スプリング・アブソーバAssy20が有するアクチュエータ30が移動許容回転禁止機構を有しているため、モータ46の回転動作によってねじロッド42の分断部分は、ナット44に対して軸線方向に動作することになる。詳しく言えば、バウンド方向のアクチュエータ力を発生させる場合に、ねじロッド42の分断部分をナット44に対してマウント部24側に動作させ、リバウンド方向のアクチュエータ力を発生させる場合に、ねじロッド42の分断部分をロアアーム22側に動作させることになる。
上記のことを考慮して、まず、車体にロールやピッチが作用して、ばね上部とばね下部とが離間する場合、つまり、リバウンドする場合を考える。この場合、ねじロッド42の分断部分は、ばね下部側ユニットから離間する状態となる。アクチュエータ30は、車体姿勢制御によってばね上部とばね下部とが離間する量を抑制すべく、バウンド方向のアクチュエータ力を発生させるのであるが、モータ46は、ねじロッド42の分断部分のみをマウント部24側に動作させるだけである。したがって、ハイトセンサ224の検出値から求められた実ストローク量Strは、リバウンド側のストローク量であるのに対して、レゾルバ242の検出値から推定された推定ストローク量Steは、バウンド側のストローク量となるのである。実ストローク量Strと推定ストローク量Steとは、図3(c)の領域[A]に示す関係となる。
次に、車体にロールやピッチが作用して、ばね上部とばね下部とが接近する場合、つまり、バウンドする場合を考える。この場合、ねじロッド42の分断部分は、ばね下部側ユニットに当接することになる。つまり、アクチュエータ30は、車体姿勢制御によってばね上部とばね下部とが接近する量を抑制すべく、リバウンド方向のアクチュエータ力を発生させて、ばね上側ユニットとばね下部側ユニットとに対して相対動作を抑制する力を作用させることが可能である。したがって、ハイトセンサ224の検出値から求められた実ストローク量Str、および、レゾルバ242の検出値から推定された推定ストローク量Steは、ともに、リバウンド側のストローク量となるのである。実ストローク量Strと推定ストローク量Steとは、図3(c)の領域[B]に示す関係となる。
以上のことから、ハイトセンサ224の検出値から求められた実ストローク量Strが、バウンド側のストローク量、リバウンド側のストローク量のいずれの場合であっても、レゾルバ242の検出値から推定された推定ストローク量Steが、リバウンド側のストローク量となる場合に、ねじロッド分断失陥が生じていると判定されるようになっている。
さらに、実ストローク量Strと推定ストローク量Steとの関係が、図3(a)〜図3(c)に示した領域以外の関係となった場合には、システム10にその他の何らかの失陥が生じていると判定される。
本サスペンションシステム10において失陥が検出された場合には、失陥が発生していることが、車室内に設けられたインジケータを介して、運転者に報知される。そして、それらの失陥の各々に対処するための制御が、ECU200によって実行される。それらの制御についての詳しい説明は省略するが、例えば、4つのアクチュエータ30のうちのいずれかにおいてねじロッド分断失陥が生じた場合には、その失陥が検出されたねじ機構を有するアクチュエータ30のみならず、その他の3つのアクチュエータ30に対しても、それらが発生させるアクチュエータ力が制限される。具体的に言えば、前述した振動減衰制御および車体姿勢制御の実行が禁止され、4つのアクチュエータ30のいずれもが作動を制御されない状態とされる。これにより1つのアクチュエータ30が有するねじ機構においてねじロッド分断失陥が生じても、車体の挙動、詳しく言えば、ばね上部の挙動が、車両の前後左右においてバランスを失った挙動となることが回避される。
<制御プログラム>
前述のようなアクチュエータ26の制御は、図4にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、イグニッションスイッチ220がON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいてECU200により繰り返し実行されることによって行われる。また、上述した自己診断機能は、図5にフローチャートを示す自己診断処理プログラムが、イグニッションスイッチ220がON状態とされている間、設定された時間間隔(例えば、数sec)をおいてECU200により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それら制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、アクチュエータ制御プログラムおよび自己診断処理プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ30の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ30に対してのプログラムによる処理について説明する。
上記のアクチュエータ制御プログラムおよび自己診断処理プログラムによる処理では、サスペンションシステムに失陥が生じていることを示す失陥フラグFDが採用されており、その失陥フラグFDのフラグ値は、失陥が生じていない場合には[0]に、失陥が生じている場合には、後に説明する処理によりその失陥の種別に応じて[1],[2],[3]のいずれかにされる。なお、失陥フラグFDは、初期値として[0]にされている。また、失陥フラグFDは、4つのアクチュエータ30の各々に対して、同様に設けられている。
アクチュエータ制御プログラムにおいては、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、本プログラムに対応するアクチュエータ30の失陥フラグFDのフラグ値が確認されるとともに、S2において、他の3つのアクチュエータ30のフラグ値が確認される。失陥が生じている場合については、後に詳しく説明するため、ここでの説明は留保し、失陥が生じていない場合について先に説明する。失陥が生じていない場合には、S3〜S5において、先に説明したような手法で、振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定される。次いで、S6において、ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPを足し合わせて、姿勢変動抑制成分FSが決定され、S7において、その姿勢変動抑制成分FSと振動減衰成分FVとを足し合わせて、目標アクチュエータ力F*が決定される。そして、S8において、その目標アクチュエータ力に基づいて、モータ46の制御を行うためのデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ204に送信される。このプログラムの処理により、アクチュエータ30のモータ46の作動が制御されることで、アクチュエータ30は、必要とされるアクチュエータ力を発生させることになる。
自己診断処理プログラムにおいては、まず、S11において、本プログラムに対応するアクチュエータ30の失陥フラグFDのフラグ値が確認される。フラグ値が[0]で失陥が生じていないと判断された場合には、S12において、アクチュエータ制御プログラムにおいて求められた姿勢変動抑制成分FSが0か否かによって、アクチュエータ30が姿勢変動抑制力としてアクチュエータ力を発生させているか否かが判断される。また、S13において、ばね上部とばね下部との相対振動の振幅が閾値以下か否かによって、車両の振動の激しさの程度が設定された程度より低いか否かが判断される。姿勢変動抑制成分が0ではないこと、相対振動の振幅が閾値以下であることは、失陥検出処理を実行するための条件であり、それらの両者を満たす場合にのみ、失陥検出処理が実行される。
失陥検出処理では、まず、S14において、ハイトセンサ224の検出値に基づいて実ストローク量Strが取得され、S15において、レゾルバ242の検出値に基づいて推定ストローク量Steが取得される。次いで、S16において、失陥が生じているかを判定するとともに、生じている失陥の種別を判定する処理が、図6にフローチャートを示す失陥種別判定処理サブルーチンが実行されることによって行われる。失陥検出処理は、先に説明したように、ねじ機構についての失陥を検出の対象としており、ねじ機構の固着が生じた場合に、失陥フラグのフラグ値が[1]にされ、ねじロッド分断失陥が生じた場合に、フラグ値が[2]にされ、その他の失陥が生じている場合に、フラグ値が[3]にされるようになっている。なお、失陥検出処理では、それぞれの失陥であることを満たす条件が設定された回数だけ検出された場合に、失陥が生じていると判定されるようになっており、それら失陥の各々の条件が満たされた回数を刻むためのカウンタが採用されている。ねじ機構の固着のカウンタがC1,ねじロッド分断失陥のカウンタがC2,その他の失陥のカウンタがC3とされている。
失陥種別判定処理サブルーチンでは、まず、S21において、ねじロッド分断失陥のカウンタC2が確認され、C2が0でない場合には、S30以下の処理が実行される。そのS30以下については、後に詳しく説明する。C2が0である場合には、S22において、実ストローク量Strと推定ストローク量Steとの偏差であるストローク量偏差ΔSt(=|Str−Ste|)が閾値ΔSt0以下か否かが判断される。ストローク量偏差ΔStが閾値ΔSt0以下である場合には、S23において、推定ストローク量Steが0であるか否かが判断され、0でない場合(図3(a)に示す関係)には、システム10は正常であると判定される。また、推定ストローク量Steが0である場合(図3(b)に示す関係)には、アクチュエータ30が動作していない状態、つまり、ねじロッド42とナット44との固着が生じている可能性があると判断される。実際に、ねじ機構の固着が生じている場合には、本プログラムの実行のたびに、S25においてカウントされ、C1が閾回数C1’以上となった場合に、ねじ機構の固着が生じていると判定され、失陥フラグFDのフラグ値が[1]にされる。
S22おいて、ストローク量偏差ΔStが閾値ΔSt0を超える場合には、S28において、実ストローク量Strがリバウンド側のストローク量であり、かつ、推定ストローク量Steがバウンド側のストローク量であるか否かが判断される。その条件を満たす場合(図3(c)の領域[A]に示す関係)には、S29において、ねじロッド分断失陥のカウントC2が1にされる。この場合、次のプログラム実行時には、先に説明したようにS30以下が実行されることになる。S30以下においては、推定ストローク量Steが常にバウンド側のストローク量であるか否かが判断されるのであり、常にバウンド側のストローク量である場合(図3(c)の領域[A]および[B]に示す関係)には、S31においてC2がカウントされ、閾回数C2’以上となった場合に、ねじロッド分断失陥が生じていると判定され、失陥フラグFDのフラグ値が[2]にされる。
S28において、実ストローク量Strがリバウンド側のストローク量であり、かつ、推定ストローク量Steがバウンド側のストローク量であることを満たさない場合には、システム10にその他の何らかの失陥が生じている可能性があると判断される。そして、他の失陥と同様に、C3がカウントされ、閾回数C3’以上となった場合に、その他の失陥が生じていると判定され、失陥フラグFDのフラグ値が[3]にされる。
以上の失陥種別判定処理サブルーチンの実行の後、自己診断処理プログラムのS17において、失陥フラグFDが確認され、フラグ値が[0]でない場合には、S18において、失陥が生じていることが、インジケータを介して運転者に報知される。また、アクチュエータ制御プログラムにおいては、S1において、本プログラムに対応するアクチュエータ30に失陥が生じていると判断された場合には、S2以下の処理がスキップされ、アクチュエータ30が制御されない状態となる。さらに、S2において、他の3つのアクチュエータのうちのいずれかにおいてねじロッド分断失陥が生じていると判定された場合にも、S2以下の処理がスキップされ、アクチュエータ30が制御されない状態とされ、車体の挙動が、車両の前後左右においてバランスを失った挙動となることが回避される。
<制御装置の機能構成>
サスペンションシステム10の制御装置であるECU200は、アクチュエータ制御プログラムおよび自己診断処理プログラムの実行により、上述したような種々の処理を実行する。この種々の処理の実行によって、ECU200は、図7に示すような機能部を有していると考えることができる。基本的な機能部として、ECU200は、アクチュエータ制御プログラムのS3の処理を実行して振動減衰成分FV決定する機能部として、振動減衰制御部260を、S4〜S6の処理を実行して姿勢変動抑制成分を決定する機能部として、車体姿勢制御部262を、それぞれ有している。
また、サスペンションシステム10の自己診断に関しての機能部として、ECU200は、失陥検出指標取得部270,失陥種別判定処理部272,失陥対処部274を有している。具体的に言えば、失陥検出指標取得部270は、ハイトセンサ224の検出値とレゾルバ242の検出値に基づいてシステムの失陥を検出するための指標を取得する機能部であり、上記自己診断処理プログラムにおけるS14,S15の処理を実行する部分が相当する。また、失陥種別判定処理部272は、システム10に失陥が生じているか否かを判定するとともに、失陥が生じていた場合にその失陥の種別を判定する機能部であり、上記失陥種別判定処理サブルーチンの処理を実行する部分が相当する。さらに、失陥対処部274は、システム10に失陥が生じた場合にその事実を運転者に報知するとともに、アクチュエータ制御の実行を禁止する機能部であり、自己診断処理プログラムにおけるS17,S18およびアクチュエータ制御プログラムにおけるS1,S2の処理を実行する部分を含んで構成されている。そして、ECU200は、それら失陥検出指標取得部270,失陥種別判定処理部272,失陥対処部274を含んで構成された装置、すなわち、サスペンションシステムの失陥として、少なくともねじロッドのナットと螺合する部分のばね下部側ユニットに対する移動が許容される失陥を、アクチュエータがばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力となるアクチュエータ力を発生させる場合におけるハイトセンサ224の検出結果とレゾルバ242の検出結果とに基づいて検出する失陥検出装置280を備えるものとなっている。
<変形例>
上記実施例のサスペンションシステム10においては、システム10の失陥を検出するための指標として、ばね上ばね下間距離指標であるばね上部とばね下部との接近・離間動作量が採用されていたが、ばね上部とばね下部との相対移動の方向を指標する相対移動方向指標を採用することも可能である。相対移動方向指標は、具体的には例えば、ばね上部とばね下部とが接近・離間する動作速度、つまり、ストローク速度Vstを採用可能である。本変形例においては、ハイトセンサ224の検出値に基づいて実ストローク速度Vstrが取得され、レゾルバ242の検出値に基づいて推定ストローク速度Vsteが推定され、それらを比較することによって失陥検出処理が行われる。
本変形例においては、ハイトセンサ224の検出値に基づいて実ストローク速度Vstrが取得され、レゾルバ242の検出値に基づいて推定ストローク速度Vsteが推定され、それらを比較することによって失陥検出処理が行われる。なお、そのストローク速度は、アクチュエータ制御プログラムと同じ時間間隔をおいて、ハイトセンサ224とレゾルバ242とによる検出が行われ、失陥検出処理の実行時と検出値と1回前の検出値との差に基づいて求められるようになっている。つまり、本変形例の失陥検出処理においては、実ストローク速度Vstrと推定ストローク速度Vsteとの偏差であるストローク速度偏差ΔVst(=|Vstr−Vste|)が、閾値ΔVst0以下である場合には、原則的に、システムは正常であると判定される。ただし、推定ストローク速度Vsteが常に0である場合には、ねじ機構の固着が生じていると判定される。また、実ストローク速度Vstrが、バウンド方向、リバウンド方向のいずれの場合であっても、推定ストローク速度Vsteが、リバウンド方向となる場合に、ねじロッド分断失陥が生じていると判定されるのである。
≪第2実施例≫
第2実施例の車両用サスペンションシステムは、そのハード構成が、スプリング・アブソーバAssyの構造を除いて、第1実施例のシステムと同様の構成であるため、本実施例の説明においては、第1実施例のシステムと同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するものとする。
スプリング・アブソーバAssy300は、図8に示すように、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設された電磁式ショックアブソーバとしてのアクチュエータ302と、それと並列的に設けられたサスペンションスプリングとしてのエアスプリング304とを備えている。
アクチュエータ302は、アウタチューブ310と、そのアウタチューブ310に嵌入してアウタチューブ310の上端部から上方に突出するインナチューブ312とを含んで構成されている。アウタチューブ310は、それの下端部に設けられた取付部材314を介してロアアーム22に連結され、一方、インナチューブ312は、それの上端部に形成されたフランジ部316においてマウント部24に連結されている。アウタチューブ310には、その内壁面にアクチュエータ302の軸線の延びる方向に延びるようにして1対のガイド溝318が設けられるとともに、それらのガイド溝318の各々には、インナチューブ312の下端部に付設された1対のキー320の各々が嵌まるようにされており、それらガイド溝318およびキー320によって、アウタチューブ310とインナチューブ312とが、相対回転不能、軸線方向に相対移動可能とされている。
また、アクチュエータ302は、第1実施例のアクチュエータ30と同様に、ねじロッド330とナット332とを含んで構成されるボールねじ機構と、電磁式モータ334とを備えている。モータ334はモータケース336に固定して収容されるとともに、そのモータケース336の鍔部がマウント部24の上面側に固定されており、モータケース336の鍔部にインナチューブ312のフランジ部316が固定されていることで、インナチューブ312は、モータケース336を介してマウント部24に連結されている。モータ334の回転軸であるモータ軸338は、ねじロッド330の上端部と一体的に接続されている。つまり、ねじロッド330は、モータ軸338を延長する状態でインナチューブ312内に配設され、モータ334によって回転させられる。一方、ナット332は、ねじロッド330と螺合させられた状態で、アウタチューブ310の内底部に付設されたナット支持筒340の上端部に固定支持されている。
上述のような構造から、ばね上部とばね下部とが接近・離間する場合、アウタチューブ310とインナチューブ312とは、軸線方向に相対移動が可能とされている。その相対移動に伴って、ねじロッド330とナット332とが軸線方向に相対移動するとともに、ねじロッド330がナット332に対して回転する。モータ334は、ねじロッド330に回転トルクを付与可能とされ、この回転トルクによって、ばね上部とばね下部との相対動作(ストローク動作)に対する力を発生させることが可能とされている。ちなみに、アクチュエータ302は、インナチューブ312,ねじロッド330,モータ334,ケーシング336を含んでマウント部24に連結されるばね上部側ユニットと、アウタチューブ310,ナット332,ナット支持筒340を含んでロアアーム22に連結されるばね下部側ユニットとを有する構造のものとなっている。なお、本実施例においても、第1実施例と同様に、振動減衰制御,車体姿勢制御が実行され、アクチュエータ力の制御が行われるようになっている。
上記のような構造とされてアクチュエータ302を有する本システムにおいて、少なくともねじロッド330のナット332と螺合する部分のばね下部側ユニットに対する移動が許容される失陥が生じた場合を考える。その失陥は、具体的には例えば、ねじロッド330がナット332とモータ軸338への連結部との間で破断することや、ねじロッド330とモータ軸338との固定が外れること等である。そのようなねじロッド分断失陥が生じた場合には、モータ334の回転動作と、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作とは、相互に変換されない状態となる。つまり、その状態でアクチュエータ302が姿勢変動抑制力としてアクチュエータ力を発生させる場合、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとがの相対動作する方向に対して、モータ334は、その相対動作に対する抵抗力を発生させようとして、その相対動作に対応する方向とは逆方向に回転してしまうことになるのである。
本実施例のシステムは、上記の内容を考慮して、第1実施例のシステムとはECU200による制御が、第1実施例のシステムとは異なるものとされている。本実施例のシステムにおけるアクチュエータ302の制御は、図9にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、イグニッションスイッチ220がON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいて繰り返し実行されることによって行われるようになっている。アクチュエータ制御プログラムは、第1実施例の自己診断処理プログラムに類似するものであるが、S52において、アクチュエータ力を制御するための処理が実行される。このアクチュエータ力制御処理は、図10にフローチャートを示すアクチュエータ力制御サブルーチンが実行されることによって行われる。このアクチュエータ力制御サブルーチンにおいては、第1実施例のアクチュエータ制御プログラムと同様に、目標アクチュエータ力が決定され、その目標アクチュエータ力に基づいて、モータ334の制御を行うためのデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ204に送信される。
また、本実施例のサスペンションシステムにおいては、システムの失陥を検出するための指標として、ばね上部とばね下部との相対移動の方向を指標する相対移動方向指標が採用される。その相対移動方向指標は、ばね上部とばね下部とが接近・離間する動作速度、つまり、ストローク速度Vstであり、本実施例においては、今回のプログラム実行時の検出値と前回のプログラム実行時の検出値との差に基づいて、S55において、ハイトセンサ224の検出値に基づいて実ストローク速度Vstrが取得され、S56において、レゾルバ242の検出値に基づいて推定ストローク速度Vsteが推定され、それらに基づいて失陥検出処理が行われる。
次いで、アクチュエータ制御プログラムにおいては、S57において、失陥が生じているかを判定するとともに、生じている失陥の種別を判定する処理が、図11にフローチャートを示す失陥種別判定処理サブルーチンが実行されることによって行われる。失陥種別判定処理サブルーチンでは、まず、S71において、実ストローク速度Vstrと推定ストローク速度Vsteとが一致しているか否かが判断される。一致していると判断された場合には、S72において、実ストローク速度Vstrと推定ストローク速度Vsteとが0であるか否かが判断される。0でない場合には、システムは正常であると判定され、0である場合には、ねじ機構の固着が生じていると判定される。また、S71において、実ストローク速度Vstrと推定ストローク速度Vsteとが一致していないと判定された場合には、S75において、それら実ストローク速度Vstrと推定ストローク速度Vsteとが互いに逆方向であるか否かが判定される。図12に示すように、実ストローク速度Vstrと推定ストローク速度Vsteとが互いに逆方向である場合には、ねじロッド分断失陥が生じていると判定され、また、同じ方向である場合には、システムにその他の何らかの失陥が生じていると判定されるようになっている。
本実施例のサスペンションシステムは、第1実施例のシステムと同様に、制御装置としてのECU200が、サスペンションシステムの失陥として、少なくともねじロッドのナットと螺合する部分のばね下部側ユニットに対する移動が許容される失陥を、アクチュエータがばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力となるアクチュエータ力を発生させる場合におけるハイトセンサ224の検出結果とレゾルバ242の検出結果とに基づいて検出する失陥検出装置を備えるものとなっている。
請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1に示すスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 ばね上ばね下間距離センサの検出値に基づいて推定されたばね上ばね下間距離指標と回転角センサの検出値に基づいて推定されたばね上ばね下間距離指標との関係を示す図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行される自己診断処理制御プログラムを表すフローチャートである。 図5の自己診断処理プログラムにおいて実行される失陥種別判定処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットの機能に関するブロック図である。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 第2実施例の車両用サスペンションシステムが備えるサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 図9のアクチュエータ制御プログラムにおいて実行されるアクチュエータ力制御サブルーチンを示すフローチャートである。 図9のアクチュエータ制御プログラムにおいて実行される失陥種別判定処理サブルーチンを示すフローチャートである。 ねじロッド分断失陥と判定する場合における、ばね上ばね下間距離センサの検出値に基づいて推定された相対移動方向指標と回転角センサの検出値に基づいて推定された相対移動方向指標との関係を示す図である。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 20:スプリング・アブソーバAssy 22:ロアアーム(ばね下部) 24:マウント部(ばね上部) 30:アクチュエータ(ショックアブソーバ) 32:連結機構 34:エアスプリング(サスペンションスプリング) 42:ねじロッド(雄ねじ) 44:ナット(雌ねじ) 46:電磁式モータ 50:モータ軸 60:ロッドホルダ(移動許容回転禁止機構) 68:液圧式ダンパ 100,102:圧縮コイルスプリング(連結スプリング) 140:エア給排装置 200:サスペンション電子制御ユニット(ECU,制御装置) 224:ハイトセンサ(ばね上ばね下間距離センサ) 242:レゾルバ(回転角センサ) 260:振動減衰制御部 262:車体姿勢制御部 270:失陥検出指標取得部 272:失陥種別判定処理部 274:失陥対処部 280:失陥検出装置 300:スプリング・アブソーバAssy 302:アクチュエータ(ショックアブソーバ) 304:エアスプリング(サスペンションスプリング) 330:ねじロッド 332:ナット 334:電磁式モータ 338:モータ軸

Claims (8)

  1. ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングと、
    (A)ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、(B)ばね下部に連結されてばね上部ととばね下部との接近・離間に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作可能なばね下部側ユニットと、(C)前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方に相対移動不能に設けられて雄ねじが形成されたねじロッドと、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの他方に相対移動不能に設けられて雌ねじが形成されて前記ねじロッドと螺合するナットとを有し、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に応じて前記ねじロッドと前記ナットとの一方が回転する構造とされたねじ機構と、(D)前記ねじロッドとナットとの一方に連結されるモータ軸を有し、そのねじロッドとナットとの一方に回転力を付与することが可能な電磁式モータとを含んで構成され、前記電磁式モータが前記ねじロッドとナットとの一方に付与する回転力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する力であるアブソーバ力を発生させる電磁式のショックアブソーバと、
    前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御する制御装置と
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    当該車両用サスペンションシステムが、
    ばね上部とばね下部との間の距離であるばね上ばね下間距離を検出するばね上ばね下間距離センサと、
    前記電磁式モータの回転角を検出する回転角センサと、
    前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果と前記回転角センサの検出結果とに基づいて当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出する装置であって、当該車両用サスペンションシステムの失陥として、少なくとも前記ねじロッドの前記ナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥を、前記ショックアブソーバが前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する抵抗力となるアブソーバ力を発生させる場合における前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果と前記回転角センサの検出結果とに基づいて検出する失陥検出装置と
    を備えたことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
  2. 前記失陥検出装置が、それぞれが前記ばね上ばね下間距離を指標するばね上ばね下間距離指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものである請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記失陥検出装置が、それぞれがばね上部とばね下部との相対移動の方向を指標する相対移動方向指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものである請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記失陥検出装置が、(a)前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが離間する方向を指標し、かつ、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向を指標する場合と、(b)前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向を指標し、かつ、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが離間する方向を指標する場合との少なくとも一方において、前記少なくともねじロッドのナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥が生じていると判定するものである請求項3に記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記ショックアブソーバが、
    前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとのいずれかと前記ねじロッドとに係合して、前記ねじロッドを、それの軸線回りの回転を禁止しつつ軸線方向の移動を許容する移動許容回転禁止機構を含んで構成され、
    前記ナットが回転可能に設けられるとともに、そのナットが前記モータ軸に連結されて、前記電磁式モータが前記ナットに付与する回転力に依拠してアブソーバ力を発生させるように構成された請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記失陥検出装置が、それぞれが前記ばね上ばね下間距離を指標するばね上ばね下間距離指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものであり、
    前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標が、前記ショックアブソーバがアブソーバ力を発生させていない状態におけるばね上ばね下間距離である中立距離に比較して小さいことあるいは大きいことのいずれを指標する場合においても、前記回転角センサの検出結果から推定された前記ばね上ばね下間距離指標が、前記中立距離に比較して小さいことを指標する場合に、前記少なくともねじロッドのナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥が生じていると判定するものである請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記失陥検出装置が、それぞれがばね上部とばね下部との相対移動の方向を指標する相対移動方向指標であって、前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標と、前記回転角センサの検出結果から推定された前記相対移動方向指標とを比較することで、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものであり、
    前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果から推定される前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向あるいは離間する方向のいずれを指標する場合においても、前記回転角センサの検出結果から推定される前記相対移動方向指標がばね上部とばね下部とが接近する方向を指標する場合に、前記少なくともねじロッドのナットと螺合する部分の前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方に対する移動が許容される失陥が生じていると判定するものである請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記制御装置が、
    前記アブソーバ力を、車体の姿勢の変動を抑制するための姿勢変動抑制力として作用させる車体姿勢制御を実行可能とされ、
    前記失陥検出装置が、前記ショックアブソーバが前記姿勢変動抑制力としてアブソーバ力を発生させる場合における前記ばね上ばね下間距離センサの検出結果と前記回転角センサの検出結果とに基づいて、当該車両用サスペンションシステムの失陥を検出するものである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
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