JP2009067201A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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弘一 藪元
Hirobumi Inoue
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Abstract

【課題】実用性の高い車両用サスペンションシステムを提供する。
【解決手段】電磁式のショックアブソーバと、そのショックアブソーバに対して直列的に配設される弾性連結体と液圧式のダンパとを有する連結機構と、ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御する制御装置と備えた車両用サスペンションシステムにおいて、制御装置によるアブソーバ力についての指令(実線)へのばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力(作用アブソーバ力)の追従性(点線,一点鎖線)の、アブソーバ力の変化方向による相違(T2−T1)に基づいて、ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を調整可能に構成する。このように構成されたシステムによれば、アブソーバ力の変化方向が異なることによって生じる作用アブソーバ力の相対的なズレ(斜線部)を少なくすることが可能となる。
【選択図】図6

Description

本発明は、ばね上部とばね下部との相対移動に対して抵抗力を発生させる電磁式のショックアブソーバを含んで構成されるサスペンションシステムに関する。
近年では、車両用サスペンションシステムとして、電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部との相対移動に対する抵抗力を発生させる電磁式のショックアブソーバ(以下、単に「アブソーバ」という場合がある)を含んで構成されるいわゆる電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のサスペンションシステムが存在する。この電磁式サスペンションシステムは、ばね上部とばね下部との相対移動に対する推進力をも発生させ得ることから、いわゆるスカイフック理論に基づくサスペンション特性を容易に実現できる等の利点を有し、高性能なサスペンションシステムとして期待されている。
特開2006−143146号公報 特開2005−119563号公報 特開2005−256887号公報
上記特許文献に記載のサスペンションシステムは、電磁式のショックアブソーバとともに液圧式ダンパ等を備えており、様々な周波数域の振動に対処することが可能とされている。ただし、そのような構造のシステムでは、液圧式ダンパ等の影響を考慮してアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御する必要がある。未だ開発途上にある電磁式のサスペンションシステムは、このように制御手法の改善の余地を多分に残すものとなっている。したがって、種々の改善を施すことによって、サスペンションシステムの実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両用サスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のサスペンションシステムは、(a)電磁式のショックアブソーバと、(b)ばね上部とばね下部との一方と、その一方に連結されるショックアブソーバの構成要素であるばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方とを連結させる機構であって、それらを弾性的に連結する弾性連結体とそれらの相対動作に対する抵抗力を発生させる液圧式のダンパとを有する連結機構と、(c)ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御する制御装置と備えたシステムであって、制御装置によるアブソーバ力についての指令へのばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の追従性の、アブソーバ力の変化方向による相違に基づいて、ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を調整可能に構成される。
液圧式ダンパと弾性連結体とを有する連結機構とアブソーバとを直列的に設けたシステムでは、アブソーバが発生させるアブソーバ力が連結機構を介してばね上部とばね下部とに作用するため、アブソーバ力の変化方向によって上記追従性が相違することがある。このため、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向である場合のばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力(以下、「作用アブソーバ力」という場合がある)と、アブソーバ力の変化方向が第2変化方向である場合の作用アブソーバ力とが相対的にズレて、アブソーバ力の変化方向が変わるごとに作用アブソーバ力の大きさの相違となって現れる。本発明のサスペンションシステムにおいては、アブソーバ力の変化方向による上記追従性の相違を考慮して、アブソーバが発生させるアブソーバ力を調整することが可能であることから、本発明のシステムによれば、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を少なくすることが可能となる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項ないし(11)項の各々が、請求項1ないし請求項11の各々に相当し、(14)項が請求項12に、(19)項が請求項13に、それぞれ相当する。
(1)ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との相対移動に伴って前記ばね上部側ユニットと相対移動可能とされたばね下部側ユニットと、電磁モータとを有し、ばね上部とばね下部とを相対移動させる方向の力であるアブソーバ力を前記電磁モータの力に依拠して発生させる電磁式のショックアブソーバと、
ばね上部とばね下部との一方と、その一方に連結される前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方とを連結させる機構であって、前記ばね上部とばね下部との一方と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方とを弾性的に連結する弾性連結体と、その弾性連結体によって許容された前記ばね上部とばね下部との一方と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方との相対動作に対する抵抗力を発生させる液圧式ダンパとを有する連結機構と、
アブソーバ力についての指令を発して前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御する制御装置と、
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、
当該制御装置によるアブソーバ力についての指令へのばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の追従性の、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向である場合とそれの反対の第2変化方向である場合との相違に基づいて、前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を調整する変化方向依拠調整部を有する車両用サスペンションシステム。
電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部との相対移動に対する抵抗力を発生させる電磁式のショックアブソーバ(以下、単に「アブソーバ」という場合がある)は、電磁モータの作動が追従し得ないような高周波的な振動、例えば、ばね下共振周波数域の振動等に対して、充分に対処できるとは言い難い。つまり、そのような高周波的な振動のばね上部への伝達を緩和することができるとは言い難い。そこで、車輪から入力されてばね上部に伝達される高周波的な振動を吸収するために、弾性連結体と液圧式ダンパとから構成される連結機構をアブソーバに対して直列的に設けたシステムが検討されている。このような構造のシステムにおいては、アブソーバが発生させるアブソーバ力は、連結機構を介してばね上部とばね下部とに作用するため、連結機構等に起因してアブソーバ力の変化方向によって上記追従性が相違することがあり、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向である場合のばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力(以下、「作用アブソーバ力」という場合がある)と、アブソーバ力の変化方向が第2変化方向である場合の作用アブソーバ力とが相対的にズレることがある。詳しく言えば、例えば、特定の大きさのアブソーバ力についての指令が発令された場合の作用アブソーバ力の変化の様子が、第1変化方向と第2変化方向とで時間的にズレることがある。つまり、作用アブソーバ力がその特定の大きさのアブソーバ力まで変化するのに要する時間が、アブソーバ力の変化方向によって異なり、第1変化方向と第2変化方向とのうちの上記追従性の低い方にアブソーバ力が変化する場合の作用アブソーバ力が、第1変化方向と第2変化方向とのうちの上記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合の作用アブソーバ力に対して、時間的に遅れて変化する。このため、アブソーバ力の変化方向が変わるごとに作用アブソーバ力の大きさの相違となって現れる。
本項に記載の態様では、アブソーバ力の変化方向による上記追従性の相違を考慮して、アブソーバが発生させるアブソーバ力を調整することが可能であることから、本項に記載の態様によれば、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を少なくすることが可能となる。
本項に記載の「追従性」は、制御装置によるアブソーバ力についての指令に対する作用アブソーバ力のレスポンス、つまり、応答性であり、制御装置によってアブソーバ力についての指令が発令された場合に、作用アブソーバ力がその指令値に相当する力に到達する際の作用アブソーバ力の変化の早さ、言い換えれば、作用アブソーバ力の変化速度の高さを意味する。
本項に記載の「アブソーバ力の変化方向」は、アブソーバ力を増加、若しくは、減少させる方向であり、具体的に言えば、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(以下、「リバウンド方向」という場合がある)のアブソーバ力を増加させる場合と減少させる場合とでは異なり、ばね上部とばね下部とを接近させる方向(以下、「バウンド方向」という場合がある)のアブソーバ力を増加させる場合と減少させる場合とでは異なる。さらに言えば、リバウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合のアブソーバ力変化方向と、バウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合のアブソーバ力変化方向とは同じ方向となり、バウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合のアブソーバ力変化方向と、リバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合のアブソーバ力変化方向とは同じ方向となる。したがって、本項に記載の「第1変化方向」と「第2変化方向」との一方は、リバウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合のアブソーバ力変化方向であり、他方は、バウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびリバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合のアブソーバ力変化方向である。また、リバウンド方向のアブソーバ力の符号とバウンド方向のアブソーバ力の符号とが異なるような場合には、「アブソーバ力の変化方向」は、アブソーバ力を時間的に微分したもの、つまり、アブソーバ力の変化速度の符号によって示すことが可能である。
本項に記載の「ばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力」を、ばね上部とばね下部との相対動作に対する抵抗力としてのみ作用させるだけでなく、例えば、ばね上部とばね下部とを積極的に相対動作させる推進力や、外部からの入力に対してばね上部とばね下部とを相対動作させないようにする力として作用させてもよい。その場合、アブソーバは、ばね上振動に対する減衰力を発生させるいわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御や、車体のロールやピッチの抑制を目的とした車体の姿勢制御等を実行することが可能である。そのアブソーバの動力源である「電磁モータ」は、その型式等は特に限定されず、DCブラシレスモータを始めとして種々の型式のモータを採用可能であり、また、動作に関して言えば、回転モータであっても、リニアモータであってもよい。
本項に記載の「ばね上部」は、例えば、サスペンションスプリングによって支持される車体の部分を広く意味し、「ばね下部」は、例えば、サスペンションアーム等、車輪軸とともに上下動する車両の構成要素を広く意味する。また、本明細書において「連結」という文言は、直接的に接続されることのみを意味するものではなく、何らかの部品,部材,ユニット等を介し、間接的に接続されることをも意味する。例えば、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットがばね上部,ばね下部と連結されるとは、それらが直接的に連結される場合の他、それらの間に弾性連結体,液圧式ダンパ等を介して連結されるような場合も含まれる。なお、本項に記載の「弾性連結体」は、ばね上部とばね下部との一方とアブソーバとを弾性的に連結するものであればよく、例えば、スプリング,トーションバー等、種々の構造の弾性体を採用することができる。
(2)前記変化方向依拠調整部が、前記連結機構に起因する前記追従性の相違に基づいて前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を調整するものである(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「連結機構」は、アブソーバに対して直列的に設けられ、ばね上部とばね下部との一方とアブソーバとを弾性的に連結するとともに、それらの相対動作に対して抵抗力を発生させる構造とされている。このため、アブソーバが発生させるアブソーバ力は、ばね上部とばね下部とが液圧式のダンパの抵抗力の反力および弾性連結体の弾性力の反力を受けつつ、ばね上部とばね下部とに作用することになる。アブソーバ力がばね上部とばね下部とに作用する際の連結機構による抵抗力,弾性力等の特性がアブソーバ力の変化方向によって異なるような場合には、アブソーバ力の変化方向によって上記追従性が異なる。具体的に言えば、例えば、液圧式ダンパには減衰特性がそれの動作方向によって異なる構造のものがあり、そのような構造の液圧式ダンパがアブソーバに対して直列的に設けられる場合には、後に詳しく述べるように、アブソーバ力の変化方向が変わるとダンパの動作方向が変わり、液圧式ダンパの抵抗力の反力が変化して、アブソーバ力の変化方向によって上記追従性が相違することになる。したがって、本項に記載の態様のように、連結機構に起因する上記追従性の相違に基づいて、アブソーバが発生させるアブソーバ力を調整すれば、例えば、液圧式ダンパ,弾性連結体の影響を考慮して、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を少なくすることが可能となる。
(3)前記追従性が、
アブソーバ力を設定された大きさだけ変更する指令を発した時点から、ばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力が前記設定された大きさ以下の特定の大きさまで変化するのに要する時間で示される特性である(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様においては、上記追従性を時定数によって示している。本項に記載の「変化するのに要する時間」は、短いほど上記追従性が高いことを示し、長いほど上記追従性が低いことを示す。したがって、本項の態様によれば、上記追従性を適切に示すことが可能となる。
(4)前記制御装置が、ばね上部とばね下部との少なくとも一方の挙動を指標する1以上の挙動指標に基づいて前記ショックアブソーバが発生させるべきアブソーバ力を決定するアブソーバ力決定部を有し、
前記変化方向依拠調整部が、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を、前記追従性の相違に基づいて変更可能に構成され、
前記制御装置が、前記変化方向依拠調整部によって変更されたアブソーバ力についての指令を発するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「変化方向依拠調整部」は、上記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を上記追従性の相違に基づいて変更すればよく、具体的な手法が限定されるものではない。例えば、上記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力に対して、後に詳しく説明するフィルタ処理を実行してもよく、また、例えば、上記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を制御ゲイン等を用いて増加、若しくは、減少させてもよい。
本項に記載の「挙動」は、外部からの力によるばね上部とばね下部との少なくとも一方の動作であり、具体的に言えば、ばね上振動,ばね下振動,相対振動,車体のロール,車体のピッチといった種々のものが、「挙動」に該当する。本項に記載の「挙動指標」は、そのような挙動を直接的あるいは間接的に表すパラメータであり、具体的に言えば、ばね上絶対速度,ばね下絶対速度,相対速度,車体が受けるロールモーメント,車体が受けるピッチモーメントといった種々のものが、「挙動指標」に該当する。本項に記載の態様によれば、例えば、そのような挙動を抑制する際において、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を少なくすることが可能となる。ちなみに、変化方向依拠調整部における変更が実行されない場合には、アブソーバ力決定部において決定されたアブソーバ力についての指令が、そのまま、制御装置によって発令される。
(5)前記変化方向依拠調整部が、
アブソーバ力の変化が第1変化方向である場合と第2変化方向である場合とのそれぞれにおける、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力の変化に依存したばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の変化の様子が、自身による変更がないときに比べて互いに近づくように、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された(4)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(6)前記変化方向依拠調整部が、
アブソーバ力の変化が第1変化方向である場合と第2変化方向である場合とのそれぞれにおける、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力の変化に依存したばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の変化の様子が、互いに一致するように、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された(4)項または(5)項に記載の車両用サスペンションシステム。
アブソーバ力の変化方向によって上記追従性が異なると、上述したように、アブソーバ力の変化方向によって作用アブソーバ力の変化の様子が異なり、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違が生じる虞がある。上記2つの項の態様によれば、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の変化の様子の相違を少なくすることが可能となり、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を少なくすることが可能となる。上記2つの項に記載の「作用アブソーバ力の変化の様子」は、作用アブソーバ力の時間的な変化の様子であり、例えば、作用アブソーバ力の変化勾配、作用アブソーバ力の変化速度等を意味する。なお、後者の項に記載の態様は、第1変化方向におけるアブソーバ力の変化の様子と、第2変化方向におけるアブソーバ力の変化の様子とを可及的に互いに近づける態様であり、前者の項に記載の態様の究極の態様である。
(7)前記変化方向依拠調整部が、
アブソーバ力が第1変化方向に変化する場合と、第2変化方向に変化する場合との一方においてのみ、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された(4)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(8)前記変化方向依拠調整部が、第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合にのみ、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、アブソーバ力の変化方向のうちの一方においてのみ、アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更する態様である。前者の項の態様においては、例えば、アブソーバ力の変化方向のうちの上記追従性の低い方においてのみ、作用アブソーバ力の変化勾配が大きくなるように、若しくは、変化速度等が高くなるように、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更してもよく、また、アブソーバ力の変化方向のうちの上記追従性の高い方においてのみ、作用アブソーバ力の変化勾配が小さくなるように、若しくは、変化速度等が低くなるように、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更してもよい。
(9)前記変化方向依拠調整部が、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するための処理を実行する遅れフィルタを有する(4)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(10)前記遅れフィルタが、前記制御装置によるアブソーバ力についての指令へのばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の追従性を指標する時定数に基づく処理を実行する一次遅れフィルタを含む(9)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、遅れフィルタを利用した処理によって、アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更する態様である。遅れフィルタを利用すれば、作用アブソーバ力の変化勾配を小さくしたり、変化速度を低くすることが可能である。また、上述したように、第1変化方向と第2変化方向とのうちの上記追従性の低い方にアブソーバ力が変化する場合の作用アブソーバ力は、第1変化方向と第2変化方向とのうちの上記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合の作用アブソーバ力に対して、時間的に遅れて変化する。したがって、例えば、アブソーバ力の変化方向のうちの上記追従性の高い方において、アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を遅れフィルタを利用して変更すれば、制御装置によるアブソーバ力の変更指令に対する作用アブソーバ力の変化を遅らせることが可能となり、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を少なくすることが可能となる。
後者の項に記載の「時定数」は、先に説明したように、アブソーバ力を設定された大きさだけ変更する指令を発した時点から、作用アブソーバ力がその設定された大きさ以下の特定の大きさまで変化するのに要する時間、具体的に言えば、例えば、その設定された大きさの約63パーセントに変化するのに要した時間であり、上記追従性を適切に指標することが可能である。したがって、後者の項の態様によれば、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を適切に少なくすることが可能となる。
(11)前記変化方向依拠調整部が、第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合にのみ、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成され、
前記一次遅れフィルタが、(a)第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の低い方にアブソーバ力が変化する場合の前記時定数から(b)第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合の前記時定数を減じたものに基づく処理を実行するものである(10)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、一次遅れフィルタによる処理を具体的に限定した態様である。本項に記載の態様によれば、例えば、アブソーバ力の変化方向のうちの上記追従性の高い方におけるアブソーバ力の変化の様子を、アブソーバ力の変化方向のうちの上記追従性の低い方におけるアブソーバ力の変化の様子に、可及的に近づけることが可能となり、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を可及的に少なくすることが可能となる。
(12)前記制御装置が、アブソーバ力を、ばね上部の振動を減衰する減衰力として作用させる振動減衰制御を実行可能とされた(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ショックアブソーバとして機能に関する限定を加えた態様である。本項に記載の「振動減衰制御」は、アブソーバ力をばね上絶対速度に基づいて決定される減衰力として作用させる制御、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく制御であってもよく、そのスカイフックダンパ理論に基づく制御においていわゆるグランドフックダンパ理論を考慮した制御、つまり、アブソーバ力をばね上絶対速度とばね下絶対速度とに基づいて決定される減衰力として作用させる制御であってもよい。
本項に記載の「制御装置」が上記アブソーバ力決定部を有する場合には、アブソーバ力決定部が、上記挙動指標としてのばね上絶対速度に基づいてアブソーバが発生させるべきアブソーバ力を決定するように構成されてもよい。
(13)前記制御装置が、アブソーバ力を、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するロール抑制力と車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するピッチ抑制力との少なくとも一方として作用させる車体姿勢制御を実行可能とされた(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様は、ショックアブソーバの別の機能に関する限定を加えた態様である。本項に記載の「制御装置」が上記アブソーバ力決定部を有する場合には、アブソーバ力決定部が、上記挙動指標としての車体が受けるロールモーメントとピッチモーメントとの少なくとも一方に基づいてアブソーバが発生させるべきアブソーバ力を決定するように構成されてもよい。
アブソーバ力をロール抑制力として作用させる場合には、旋回内輪側のアブソーバ力を発生させる方向と旋回外輪側のアブソーバ力を発生させる方向とは反対の方向となることから、旋回内輪側のアブソーバ力の変化方向と旋回外輪側のアブソーバ力の変化方向とは反対の方向となる。このため、上記追従性がアブソーバ力の変化方向によって相違する場合には、旋回内輪側の作用アブソーバ力の大きさと旋回外輪側の作用アブソーバ力の大きさとに相違が生じる虞がある。また、アブソーバ力をピッチ抑制力として作用させる場合には、前輪側のアブソーバ力を発生させる方向と後輪側のアブソーバ力を発生させる方向とは反対の方向となることから、前輪側のアブソーバ力の変化方向と後輪側のアブソーバ力の変化方向とは反対の方向となる。このため、上記追従性がアブソーバ力の変化方向によって相違する場合には、前輪側の作用アブソーバ力の大きさと後輪側の作用アブソーバ力の大きさとに相違が生じる虞がある。上記追従性のアブソーバ力の変化方向による相違に基づいてアブソーバ力を調整可能なシステムでは、ロール抑制時に旋回内輪側の作用アブソーバ力の大きさと旋回外輪側の作用アブソーバ力の大きさとの相違を少なくすることが可能であり、また、ピッチ抑制時に前輪側の作用アブソーバ力の大きさと後輪側の作用アブソーバ力の大きさとの相違を少なくすることが可能であることから、本項の態様は好適な態様である。
(14)前記液圧式ダンパの減衰係数が、自身の発生させる抵抗力の方向によって異なる(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
液圧式ダンパは、通常、伸縮可能なシリンダ構造とされ、液体の流路抵抗を利用して自身の伸縮に対して抵抗力を発生させる構造とされており、アブソーバに直列的に設けられる液圧式のダンパには、車両の乗り心地等を考慮して、伸縮方向によって減衰特性が異なる構造のものがある。アブソーバと液圧式ダンパとが直列的に設けられるシステムにおいては、アブソーバ力の変化方向が変わると、液圧式ダンパの伸縮方向が変わる。このため、伸縮方向によって減衰特性の異なる液圧式ダンパとアブソーバとが直列的に設けられるシステムでは、アブソーバ力の変化方向によって液圧式ダンパの減衰特性が異なり、上記追従性がアブソーバ力の変化方向によって相違することになる。したがって、アブソーバ力の変化方向による追従性の相違に基づいてアブソーバ力を調整可能なシステムに対して、本項に記載の態様は好適な態様である。なお、上記追従性と液圧式ダンパの減衰特性、つまり、減衰係数との関係については、減衰係数が大きいほど上記追従性は高くなり、減衰係数が小さいほど上記追従性は低くなる。
(15)前記液圧式ダンパの減衰係数が、前記ばね上部とばね下部との一方と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方との相対速度によって異なる(14)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、液圧式ダンパが伸縮速度によって減衰特性が異なる構造のものとされた態様である。このような構造の液圧式ダンパがアブソーバに対して直列的に設けられても、アブソーバの変化方向による上記追従性の相違に基づいて、アブソーバ力を調整すれば、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を少なくすることが可能となる。
(16)前記連結機構が、前記ばね上部とばね下部との一方と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方との設定距離以下の接近と、前記ばね上部とばね下部との一方と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方との設定距離以上の離間との少なくとも一方を弾性的に規制する弾性規制体を有する(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、弾性力を利用したストッパ、いわゆるバウンドストッパとリバウンドストッパとの少なくとも一方が設けられる態様である。本項に記載の態様においては、アブソーバが発生させるアブソーバ力が、ばね上部とばね下部とが弾性規制体の弾性力の反力を受けつつ、ばね上部とばね下部とに作用する場合がある。このため、弾性規制体の弾性力の反力によって、アブソーバの変化方向による上記追従性が相違する場合がある。したがって、本項に記載の態様は、上記追従性のアブソーバ力の変化方向による相違に基づいてアブソーバ力を調整可能なシステムに対して好適な態様である。なお、本項に記載の「弾性規制体」は、ばね上部とばね下部との一方とアブソーバとの規定以上の接近・離間に対して弾性力を発揮するものであればよく、例えば、スプリング,緩衝ゴム等、種々の構造の弾性体を採用することができる。なお、接近を規制する際の設定距離と、離間を規制する際の設定距離とは異なる値に設定される。
(17)前記ショックアブソーバが、
前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方に設けられた雄ねじ部と、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの他方に設けれられてその雄ねじ部と螺合する雌ねじ部とを含んで構成され、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対移動に伴って前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが相対回転する構造のねじ機構を有し、かつ、前記電磁モータがその相対回転に対する力を発生させるように構成された(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ねじ機構を採用したアブソーバに限定した態様であり、電磁モータに回転モータを採用した場合において、そのモータの回転力を、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対する力に容易に変換することが可能となる。なお、本項の態様においては、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットのいずれに雄ねじ部を設け、いずれに雌ねじ部を設けるかは、任意である。さらに、雄ねじ部を回転不能とし、雌ねじ部を回転可能とするような構成としてもよく、逆に、雌ねじ部を回転不能とし、雄ねじ部を回転可能とするような構成としてもよい。
(18)前記ばね上部とばね下部との一方が、ばね下部であり、
前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方が、ばね下部側ユニットとされた(1)項ないし(17)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様によれば、ばね下部とアブソーバのばね下部側ユニットとの間に連結装置が配設されるため、車輪から入力されてアブソーバに伝達される衝撃の緩和,振動の減衰が可能である。つまり、本項の態様によれば、電磁モータへ伝達される振動が効果的に減衰されるため、信頼性の高いサスペンションシステムが実現することになる。
(19)当該車両用サスペンションシステムが、
前後左右の車輪に対応して、それぞれが前記ショックアブソーバである複数のショックアブソーバと、それぞれが前記連結機構である複数の連結機構とを備えるものとされ、
前記変化方向依拠調整部が、
前記複数のショックアブソーバのうちのいずれか1つが発生させるアブソーバ力の変化方向が、前記複数のショックアブソーバのうちの他のいずれか1つが発生させるアブソーバ力の変化方向と異なることを条件として、前記複数のショックアブソーバの各々が発生させるアブソーバ力を、その各々の前記追従性の相違に基づいて調整するように構成された(1)項ないし(18)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
各アブソーバが発生させるアブソーバ力の変化方向が同じであれば、各アブソーバにおける上記作用アブソーバ力の大きさの相違による影響は少ないと考えられ、アブソーバ力をあえて調整する必要はない。特に、上記遅れフィルタ等を用いた処理によってアブソーバ力を調整するような場合には、制御装置によるアブソーバ力の変更指令に対する作用アブソーバ力の変化を遅らせていることから、各アブソーバが発生させるアブソーバ力の変化方向が同じであれば、あえてそのような調整をする必要はない。したがって、本項に記載の態様によれば、例えば、各アブソーバにおける上記作用アブソーバ力の大きさの相違による影響が少ないと考えらる場合には、上記追従性の相違に基づくアブソーバ力の調整を禁止することが可能となる。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
(A)第1実施例
<車両用サスペンションシステムの構成>
図1に、実施例の車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本システム10は、前後左右4つの車輪12に対応して設けられた4つのサスペンション装置20と、それらサスペンション装置20の制御を担う制御装置とを含んで構成されている。転舵輪である前輪のサスペンション装置20と非転舵輪である後輪のサスペンション装置20とは、車輪を転舵可能とする機構を除き略同様の構成とみなせるため、説明の簡略化に配慮して、後輪のサスペンション装置20を代表して説明する。
図2に示すように、サスペンション装置20は、独立懸架式のものであり、マルチリンク式サスペンション装置とされている。サスペンション装置20は、それぞれがサスペンションアームである第1アッパアーム30,第2アッパアーム32,第1ロアアーム34,第2ロアアーム36,トーコントロールアーム38を備えている。5本のアーム30,32,34,36,38のそれぞれの一端部は、車体に回動可能に連結され、他端部は、車輪12を回転可能に保持するアクスルキャリア40に回動可能に連結されている。それら5本のアーム30,32,34,36,38により、アクスルキャリア40は、車体に対して一定の軌跡に沿った上下動が可能とされている。
サスペンション装置20は、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング50と電磁式のショックアブソーバ(以下、「アブソーバ」という場合がある)52とを備えており、それらは、それぞれ、ばね上部の一構成部分であるタイヤハウジングに設けられたマウント部54と、ばね下部の一構成部分である第2ロアアーム36との間に、互いに並列的に配設されている。
アブソーバ52は、図3に示すように、概して円筒状のアウタチューブ60と、そのアウタチューブ60に嵌入してアウタチューブ60の下端部から下方に突出するインナチューブ62とを含んで構成されている。アウタチューブ60は、それの上端部において、電磁モータ64を収納するモータケース66に固定的に連結されており、そのモータケース66は、それの外周部において、緩衝ゴムを介してマウント部54に連結されている。
電磁モータ64は、モータケース66の周壁の内面に沿って一円周上に固定して配置された複数のコイル70と、モータケース66に回転可能に保持された中空状のモータ軸72と、コイル70と向き合うようにしてモータ軸72の外周に固定して配設された永久磁石74とを含んで構成されている。電磁モータ64は、コイル70がステータとして機能し、永久磁石74がロータとして機能するモータであり、3相のDCブラシレスモータとされている。なお、モータケース66内には、モータ軸72の回転角度、すなわち、電磁モータ64の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ76が設けられている。モータ回転角センサ76は、エンコーダを主体とするものであり、それによって検出されるモータ回転角は、電磁モータ64の制御に利用される。
アブソーバ52は、ねじ溝が形成された雄ねじ部としてのねじロッド80と、ベアリングボールを保持してねじロッド80と螺合する雌ねじ部としてのナット82とを有し、それらは、ボールねじ機構を構成している。ねじロッド80は、電磁モータ64のモータ軸72を貫通する状態で、自身の上端部においてモータ軸72に固定され、上下方向に延びるようにアウタチューブ60内に配設されている。一方、ナット82は、ねじロッド80と螺合させられた状態で、インナチューブ62の上端部に固定支持されている。なお、アウタチューブ60には、その内壁面に上下方向に延びるようにして1対のガイド溝86が設けられるとともに、それらのガイド溝86の各々には、インナチューブ62の上端部に付設された1対のキー88の各々が嵌まるようにされており、それらガイド溝86およびキー88によって、アウタチューブ60とインナチューブ62とが、相対回転不能、かつ、上下方向に相対移動可能とされている。
インナチューブ62は、下端部において、概して円板状の支持部材90の上面に固着されている。その支持部材90は、2つの圧縮コイルスプリング92,94によって、後述するダンパ96を覆う概ね筒状のダンパカバー98に、それに内包される状態で弾性的に支持されている。詳しく言えば、圧縮コイルスプリング92が、支持部材90の上面とダンパカバー98の内周面に設けられた突出部100とによって、圧縮状態で挟持され、圧縮コイルスプリング94が、支持部材90の下面とダンパカバー98の下端部とによって、圧縮状態で挟持されている。それらスプリング92,94の弾性力によって、支持部材90がダンパカバー98に弾性的に支持されているのである。そのダンパカバー98は、自身の下端部において、ダンパ96に、詳しくは、それの構成要素であるダンパハウジング102(後述)の外周部に、固着されており、ダンパ96は、自身の下端部において、取付ブシュ103を介して第2ロアアーム36に連結されている。ダンパカバー98には、その外周部に環状の下部リテーナ104が固定されており、マウント部54の下面側には、防振ゴムを介して、環状の上部リテーナ105が付設されている。コイルスプリング50は、それら下部リテーナ104と上部リテーナ105とによって、それらに挟まれる状態で支持されている。
ダンパ96は、作動液を収容する概して円筒状のダンパハウジング102と、そのダンパハウジング102にそれの内部において液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン106と、そのピストン106に下端部が連結されて上端部がダンパハウジング102の上方から延び出すピストンロッド108とを含んで構成されている。ダンパハウジング102は、ダンパカバー98に、それの下方から延び出すようにして固定的に嵌め合わされており、自身の下端部において、取付ブシュ103を介して第2ロアアーム36に連結されている。ダンパハウジング102の内部は、ピストン106によって、それの上方に存在する上室110と、それの下方に存在する下室112とに区画されている。また、ピストンロッド108は、ダンパハウジング102の上部に設けられた蓋部114を貫通しており、シールを介してその蓋部114と摺接している。そして、ピストンロッド108の上端部が、支持部材90の下面に固着されている。
ダンパハウジング102は、図4に詳しく示すように、外筒120と内筒122とを含んで構成され、それらの間には、バッファ室124が形成されている。ピストン106は、その内筒122内に液密かつ摺動可能に嵌め入れられている。そのピストン106には、軸線方向に貫通して上室110と下室112とを接続させる複数の接続通路126(図4には2つ図示されている)が設けられている。ピストン106の下面には、弾性材製の円形をなす弁板128が、その下面に接するようにして配設されており、その弁板128によって接続通路126の下室112側の開口が塞がれる構造となっている。ただし、接続通路126の下室112側の開口にはオリフィス129が設けられており、接続通路126は、そのオリフィス129を介して、下室112に連通させられている。また、ピストン106には、上記接続通路126とはピストン106の半径方向において異なる位置に複数の接続通路130(図4には2つ図示されている)が設けられている。ピストン106の上面には、弾性材製の円形をなす弁板132が、その上面に接するようにして配設されており、その弁板132によって接続通路130の上室110側の開口が塞がれる構造となっている。ただし、接続通路130の上室110側の開口にはオリフィス133が設けられており、接続通路130は、そのオリフィス133を介して、上室110に連通させられている。接続通路130は、接続通路126より外周側であって弁板128から外れた位置に設けられており、常時、下室112に連通させられている。また、弁板132には開口134が設けられていることで、接続通路126の上室110側の開口は、塞がれておらず、接続通路126は、常時、上室110に連通させられている。さらに、下室112とバッファ室124とは連通させられており、下室112とバッファ室124との間には、ピストン106と同様の接続通路,弁板が設けられたベースバルブ体136が設けられている。
上述のような構造から、アブソーバ52は、アウタチューブ60,モータケース66を含んでマウント部54に連結されるばね上部側ユニットが構成されるとともに、インナチューブ62,支持部材90等を含んで第2ロアアーム36に連結されるばね下部側ユニットが構成される構造のものとなっている。アブソーバ52は、ばね上部とばね下部とが接近・離間する場合に、ねじロッド80とナット82とが軸線方向に相対移動可能、つまり、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが相対移動可能とされ、その相対移動に伴って、ねじロッド80がナット82に対して回転することになる。アブソーバ52の備える電磁モータ64は、ねじロッド80に回転力を付与することが可能とされていることから、アブソーバ52は、その回転力に依拠してばね上部側ユニットとばね下部側ユニット、つまり、ばね上部とばね下部とを相対動作させる方向の力(以下、「アブソーバ力」という場合がある)を発生させることが可能とされている。このアブソーバ力は、ばね上部とばね下部との相対動作を阻止する抵抗力として作用させることが可能であり、この抵抗力を減衰力として利用することにより、ばね上部とばね下部との相対振動を減衰することが可能である。また、アブソーバ52は、ばね上部とばね下部との相対動作に対する推進力をも発生させることが可能とされており、いわゆるスカイフックダンパ理論等に基づく制御を実行すること、旋回時の車体のロール,加速・減速時の車体のピッチ等を効果的に抑制すること、車両の車高を調整すること等が可能とされているのである。
また、ばね下部側ユニットと第2ロアアーム36とは、ダンパ96,ダンパカバー98,圧縮コイルスプリング92,94等によって構成される連結機構によって連結されている。詳しく言えば、ばね下部側ユニットと第2ロアアーム36とが、弾性連結体としての2つの圧縮コイルスプリング92,94によって弾性的に連結されており、ダンパ96は、ばね下部側ユニットとばね下部との接近・離間動作、つまり、相対動作に対して抵抗力を発生させるものとなっている。具体的に言えば、ばね下部側ユニットとばね下部とが離間する場合、ダンパ96内では、ピストン106がダンパハウジング102内を上方に移動させられて、上室110内の作動液の一部が接続通路126を通って下室112へ流れるとともに、バッファ室124の作動液の一部がベースバルブ体136の接続通路を通って下室112に流入する。その際、作動液が接続通路126のオリフィス129を介して下室112へ流入することと、作動液がベースバルブ体136の接続通路のオリフィスを介して下室128内へ流入することとによって、ピストン106の上方への移動に抵抗力が付与され、その抵抗力によってその移動に対する減衰力が発生させられる。さらに、ばね下部側ユニットとばね下部との離間速度が高くなり、作動液の流出入速度が高くなると、作動液が弁板128を撓ませて下室112内へ流入するとともに、作動液がベースバルブ体136の弁板を撓ませて下室112内へ流入することになり、接続通路126の下室112側の開口の作動液の流路、および、ベースバルブ体136の接続通路の下室112側の開口の作動液の流路が大きくなる。したがって、ダンパ96は、ばね下部側ユニットとばね下部との離間速度が高くなると、ばね下部側ユニットとばね下部との離間動作に対する減衰特性、言い換えれば、いわゆる減衰係数が低くなる構造とされている。なお、ダンパ96は、ばね下部側ユニットとばね下部との相対速度Vsが閾相対速度Vso以上となる場合に、ばね下部側ユニットとばね下部との離間動作に対する減衰係数が低くなる構造とされている。
一方、ばね下部側ユニットとばね下部とが接近する場合には、ピストン106がダンパハウジング102内を下方に移動させられて、下室112内の作動液の一部が、接続通路130を通って上室110へ流れるとともに、ベースバルブ体136の接続通路を通ってバッファ室124に流出することになる。その際、作動液が接続通路130のオリフィス133を介して上室110へ流入することと、作動液がベースバルブ体136の接続通路のオリフィスを介してバッファ室124内へ流入することとによって、ピストン106の下方への移動に抵抗力が付与され、その抵抗力によってその移動に対する減衰力が発生させられる。さらに、ばね下部側ユニットとばね下部との接近速度が高くなり、作動液の流出入速度が高くなると、作動液が弁板132を撓ませて上室110内へ流入するとともに、作動液がベースバルブ体136の弁板を撓ませてバッファ室124内へ流入することになる。したがって、ダンパ96は、ばね下部側ユニットとばね下部との接近速度が高くなる場合においても、ばね下部側ユニットとばね下部との接近動作に対する減衰係数が低くなる構造とされている。なお、ばね下部側ユニットとばね下部との接近動作に対する減衰係数も、ばね下部側ユニットとばね下部との相対速度Vsが閾相対速度Vso以上となる場合において、低くなるようにされている。
ちなみに、接続通路126のオリフィス129、およびベースバルブ体136の接続通路の下室112側のオリフィスの大きさ(断面積)は、接続通路130のオリフィス133、およびベースバルブ体136の接続通路のバッファ室124側のオリフィスより小さくされている。また、ピストン106の下面に設けられた弁板128、およびベースバルブ体136の上面に設けられた弁板は、ピストン106の上面に設けられた弁板132、およびベースバルブ体136の下面に設けられた弁板より撓められ難くされている。したがって、ばね下部側ユニットとばね下部との離間動作に対する減衰係数は、ばね下部側ユニットとばね下部との接近動作に対する減衰係数より高い。ばね下部側ユニットとばね下部との離間動作に対する抵抗力とそれらの相対速度との関係(実線)、および、ばね下部側ユニットとばね下部との接近動作に対する抵抗力とそれらの相対速度との関係(点線)を図5に示しておく。
また、本サスペンションシステム10では、図1に示すように、4つのアブソーバ52に対応する電子制御ユニット(ECU)150が設けられている。ECU150は、各アブソーバ52、詳しくは、各電磁モータ64の作動を制御する制御装置であり、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたものである。そのECU150には、各電磁モータ64に対応する駆動回路としての4つのインバータ152が接続されている(図10参照)。インバータ152の各々は、コンバータ158を介してバッテリ160に接続されており、対応するアブソーバ52の電磁モータ64に接続されている。電磁モータ64は定電圧駆動され、電磁モータ64への供給電力は、供給電流量を変更することによって変更される。供給電流量の変更は、インバータ152がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
ECU150には、上記モータ回転角センサ76とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するためのステアリングセンサ162,車体に実際に発生している横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ164,車体に発生している前後加速度を検出する前後加速度センサ166,ばね上縦加速度を検出するばね上縦加速度センサ168,ばね下部側ユニットとばね下部との間の距離、つまり、アブソーバ52とばね下部との間の距離を検出するストロークセンサ170が接続されている。ECU150には、さらに、ブレーキシステムの制御装置であるブレーキ電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という場合がある)172が接続されている。ブレーキECU172には、4つの車輪のそれぞれに対して設けられてそれぞれの回転速度を検出するための車輪速センサ174が接続され、ブレーキECU172は、それら車輪速センサ174の検出値に基づいて、車両の走行速度(以下、「車速」という場合がある)を推定する機能を有している。ECU150は、必要に応じ、ブレーキECU172から車速を取得するようにされている。ECU150は、それらのセンサからの信号に基づいて、各アブソーバ52の電磁モータ64の制御を行うものとされている。なお、ECU150のコンピュータが備えるROMには、後に説明するアブソーバ52の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<車両用サスペンションシステムの制御>
本サスペンションシステム10では、各アブソーバ52が発生させるアブソーバ力をそれぞれ独立して制御することによって、各サスペンション装置20ごとのばね上振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある),車体のロールを抑制する制御(以下「ロール抑制制御」という場合がある),車体のピッチを抑制する制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行可能とされている。振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、アブソーバ力を、それぞれ、減衰力,ロール抑制力,ピッチ抑制力として作用させることによって実行される。詳しく言えば、振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御の各制御ごとのアブソーバ力である減衰アブソーバ力成分(減衰成分),ロール抑制アブソーバ力成分(ロール抑制成分),ピッチ抑制アブソーバ力成分(ピッチ抑制成分)を合計した目標アブソーバ力を決定し、アブソーバ52が、その目標アブソーバ力を発生させるように制御されることで一元的に実行される。以下に、振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御の各々について、それら各々におけるアブソーバ力成分の決定方法を中心に詳しく説明するとともに、アブソーバ力を制御するための電磁モータ64の作動制御を詳しく説明する。なお、以下の説明において、アブソーバ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
i)振動減衰制御
振動減衰制御では、アブソーバ力を、車体の上下方向への移動速度、いわゆるばね上絶対速度に応じた大きさの減衰力として発生させており、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御が実行される。具体的には、ばね上絶対速度に応じた大きさのアブソーバ力を発生させるべく、車体のマウント部54に設けられた縦加速度センサ168によって検出されるばね上縦加速度Guに基づき、ばね上絶対速度Vuが計算され、次式に従って、減衰成分fGが演算される。
G=Cs・Vu (Cs:スカイフック理論に基づく減衰係数)
なお、本振動減衰制御において、ばね上縦加速度Gu、および、ばね上絶対速度Vuが、ばね上振動を指標する挙動指標である。
ii)ロール抑制制御
ロール抑制制御では、車両の旋回時において、その旋回に起因するロールモーメントに応じて、旋回内輪側のアブソーバ52にバウンド方向のアブソーバ力を、旋回外輪側のアブソーバ52にリバウンド方向のアブソーバ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車両走行速度vに基づいて推定された推定横加速度Gycと、実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定され、
Gy*=KA・Gyc+KB・Gyr (KA,KB:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分fRが決定される。ECU150内には制御横加速度Gy*をパラメータとするロール抑制成分fRのマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して、ロール抑制成分fRが決定される。なお、本ロール抑制制御において、車体が受けるロールモーメント、および、制御横加速度Gy*が、車体のロールを指標する挙動指標である。
iii)ピッチ抑制制御
ピッチ抑制制御では、車体の制動時に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントに応じて、前輪側のアブソーバ52にリバウンド方向のアブソーバ力を、後輪側のアブソーバ52にバウンド方向のアブソーバ力をそれぞれピッチ抑制力として発生させる。また、車体の加速時に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントに応じて、後輪側のアブソーバ52にリバウンド方向のアブソーバ力を、前輪側のアブソーバ52にバウンド方向のアブソーバ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、挙動関連量としての車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、実測された前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制成分fPが、次式に従って決定される。
P=KC・Gx (KC:ゲイン)
なお、本ピッチ抑制制御において、車体が受けるピッチモーメント、および、実前後加速度Gxが、車体のピッチを指標する挙動指標である。
iv)電磁モータの作動制御
上述のように減衰成分fG,ロール抑制成分fR,ピッチ抑制成分fPが決定されると、振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御を一元化すべく、次式に従って目標アブソーバ力fAが決定される。
A=fG+fR+fP
そして、この決定された目標アブソーバ力fAを発生させるように電磁モータ64が制御される。
上記目標アブソーバ力fAを発生させるための電磁モータ64の作動制御は、インバータ152によって行われる。詳しく言えば、決定された目標アブソーバ力fAに基づいて、モータ力の発生方向およびモータ力の大きさに応じたデューティ比についての指令が、ECU150によってインバータ152に発令される、インバータ152は、自身が備えるスイッチング素子を指令に基づいて切り換えることで、電磁モータ64を駆動し、電磁モータ64は、その発令されたモータ力方向、および、デューティ比に応じた大きさのアブソーバ力を発生させるのである。
v)目標アブソーバ力の調整
本サスペンションシステム10では、アブソーバ52に対して、圧縮コイルスプリング92,94とダンパ96とで構成される連結機構が直列的に配設されているため、アブソーバ力が、連結機構を介してばね上部とばね下部とに作用することになる。つまり、アブソーバ52が発生させるアブソーバ力が、ばね上部とばね下部とがダンパ96の抵抗力の反力および圧縮コイルスプリング92,94の弾性力の反力を受けつつ、ばね上部とばね下部とに作用することになる。このため、ECU150によってアブソーバ力についての指令が発令されても、ばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力(以下、「作用アブソーバ力」という場合がある)がその指令の指令値に相当する力に変化するのにある程度の時間がかかる。また、連結機構を構成するダンパ96の減衰特性は、上述のように、それの伸縮方向によって異なっており、そのダンパ96の伸縮方向はアブソーバ力の変化方向に応じて変化する。このため、ダンパ96の抵抗力の反力が、アブソーバ力の変化方向によって異なり、ECU150によってアブソーバ力についての指令が発令された場合に作用アブソーバ力が指令値に相当する力に変化するのに要する時間が、アブソーバ力の変化方向によって異なる。つまり、ECU150によるアブソーバ力についての指令への作用アブソーバ力の追従性が、アブソーバ力の変化方向によって相違するのである。
詳しく言えば、バウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびリバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合には、ダンパ96はアブソーバ52とばね下部との離間動作に対して抵抗力を発生させ、一方、リバウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合には、ダンパ96はアブソーバ52とばね下部との接近動作に対して抵抗力を発生させる。アブソーバ52とばね下部との接近動作に対するダンパ96の減衰特性、つまり,減衰係数は、離間動作に対する減衰係数より小さくされており、リバウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合において、バウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびリバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合より、ダンパ96の伸縮速度がそれぞれの場合において同じであれば、ダンパ96の抵抗力は小さく、その抵抗力の反力も小さい。このため、バウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびリバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合のアブソーバ力の変化方向(以下、「第1変化方向」という場合がある)における追従性と、リバウンド方向のアブソーバ力を増加させる場合およびバウンド方向のアブソーバ力を減少させる場合のアブソーバ力の変化方向(以下、「第2変化方向」という場合がある)における追従性とを比較すると、第2変化方向における追従性が、第1変化方向における追従性より低い。
図6に、バウンド方向に特定の大きさのアブソーバ力|f0|を発生させる指令、つまり、第1変化方向にアブソーバ力を変化させるステップ的な指令が発令された場合(実線)における作用アブソーバ力の変化の様子(点線)、および、リバウンド方向に特定の大きさのアブソーバ力|f0|を発生させる指令、つまり、第2変化方向にアブソーバ力を変化させるステップ的な指令が発令された場合(実線)における作用アブソーバ力の変化の様子(一点鎖線)を、時間Tの経過を横軸にとったチャートを用いて示す。ちなみに、図6における縦軸はアブソーバ力の大きさを示したものであり、アブソーバ力の絶対値|fA|である。
図から解るように、第2変化方向における作用アブソーバ力(一点鎖線)が特定の大きさのアブソーバ力|f0|まで変化するのに要する時間は、第1変化方向における作用アブソーバ力(点線)が特定の大きさのアブソーバ力|f0|まで変化するのに要する時間より長く、第2変化方向における追従性は、第1変化方向における追従性より低い。このため、第2変化方向における作用アブソーバ力(一点鎖線)は、その作用アブソーバ力の大きさが特定の大きさのアブソーバ力|f0|に変化するまでの間、第1変化方向における作用アブソーバ力(点線)に対して遅れて変化し、第1変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(点線)と第2変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(一点鎖線)とが時間的にズレることになる。つまり、第1変化方向における作用アブソーバ力と第2変化方向における作用アブソーバ力とに相対的なズレ(図6における斜線部分)が生じることになる。以上のことに鑑みて、本システム10においては、上記作用アブソーバ力の相対的なズレを少なくするべく、アブソーバ力の変化方向による上記追従性の相違に基づいて、アブソーバ52が発生させるアブソーバ力を調整している。詳しく言えば、第1変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(図6の点線)が、第2変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(図6の一点鎖線)に可及的に近づくように、つまり、第1変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(図6の点線)が第2変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(図6の一点鎖線)と一致するように、第1変化方向における上記目標アブソーバ力fAを、アブソーバ力の変化方向による上記追従性の相違に基づいて変更している。
ちなみに、上記追従性は、作用アブソーバ力が特定の大きさまで変化するのに要する時間によって適切に示すことが可能である。このため、本システム10においては、アブソーバ力を設定された大きさだけ変更する指令が発令された時点から、作用アブソーバ力が、その設定された大きさ以下の特定の大きさ、具体的には、その設定された大きさの約63パーセントまで変化するのに要する時間、つまり、時定数によって、上記追従性が指標されている。具体的に言えば、第1変化方向における作用アブソーバ力(図6の点線)が特定の大きさのアブソーバ力の約63パーセント0.63|f0|まで変化するのに要する時間T1、つまり、時定数T1によって、第1変化方向における追従性が指標され、第2変化方向における作用アブソーバ力(図6の一点鎖線)が特定の大きさのアブソーバ力の約63パーセント0.63|f0|まで変化するのに要する時間T2、つまり、時定数T2によって、第2変化方向における追従性が指標されている。なお、本システム10において、上述のようなステップ的な指令に対する作用アブソーバ力の時間的変化の様子が、工場において測定されており、その測定結果に基づいて時定数T1,T2があらかじめ設定されている。
本システム10において、上記追従性の相違に基づく目標アブソーバ力fAの変更は、第1変化方向における目標アブソーバ力fAに対して、いわゆる遅れフィルタ処理を実行することによって行われている。詳しく言えば、一次遅れフィルタ処理を実行するための伝達関数G(s)が、次式に示すように、設定されており、
G(s)=1/{1+(T2−T1)s}
その伝達関数G(s)に対して第1変化方向における目標アブソーバ力fAを入力することで、上記追従性の相違に基づいて変更された変更目標アブソーバ力fAHが出力されるのである。本システム10においては、ECU150が、伝達関数が上記G(s)に設定されたフィルタ回路180(図10参照)を有しており、前述したように決定された目標アブソーバ力fAを入力すれば、変更目標アブソーバ力fAHが出力されるようになっている。このように、一次遅れフィルタ処理が、第2変化方向における追従性を指標する時定数T2から第1変化方向における追従性を指標する時定数T1を減じたものに基づいて実行されることで、第1変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(図6の点線)が、第2変化方向における作用アブソーバ力の変化の様子(図6の一点鎖線)に可及的に近づくように、極端に言えば、一致するように、第1変化方向における上記目標アブソーバ力fAが変更目標アブソーバ力fAHに変更されるのである。ちなみに、上記G(s)におけるsは、遅れフィルタ処理を実行する際のラプラス変換のパラメータである。
上記フィルタ回路180内において実行される処理について具体的に以下に説明する。上記目標アブソーバ力fAが、ECU150のコンピュータ内において、短い時間間隔をおいて繰り返し決定されており、フィルタ回路180に送信される。フィルタ回路180における処理において、まず、現時点から遡った設定時間内における目標アブソーバ力fAのデータに基づいて、s=jωをパラメータとするラプラス変換が行われる。ここで、jは複素数,ωは角周波数であり、この場合のラプラス変換は、フーリエ変換である。次いで、目標アブソーバ力のフーリエ変換したものFA(jω)が、伝達関数G(jω)に入力され、変更目標アブソーバ力のフーリエ変換したものFAH(jω)が出力される。その出力された変更目標アブソーバ力のフーリエ変換したものFAH(jω)に対してフーリエ逆変換が行われ、変更目標アブソーバ力fAHが出力されるのである。
図7(a)に、単純なモデルのばね上振動に対する目標アブソーバ力fA(実線)と作用アブソーバ力(点線)との変化の様子を、時間の経過を横軸にとったチャートにて模式的に示し、図7(b)に、目標アブソーバ力fAおよび変更目標アブソーバ力fAH(実線)と作用アブソーバ力(点線)との変化の様子を、時間の経過を横軸にとったチャートにて模式的に示す。図から解るように、単純なモデルのばね上振動に対する目標アブソーバ力fAは、図7(a)に示すように、周期的に変化する(実線)。ところが、その目標アブソーバ力fAについての指令がECU150によって発令された場合の作用アブソーバ力は、アブソーバ力の変化方向によって上記追従性が相違するため、図7(a)に示すように変化し(点線)、アブソーバ力の変化方向が変わるごとにアブソーバ力の大きさの相違となって現れる。本システム10においては、アブソーバ力の変化方向が第2変化方向である場合には、目標アブソーバ力fAについての指令がECU150によって発令され、一方、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向である場合には、上述のように遅れフィルタ処理が実行された変更目標アブソーバ力fAHについての指令がECU150によって発令されて、目標アブソーバ力fAおよび変更目標アブソーバ力fAHは、図7(b)に示すように変化する(実線)。そのように目標アブソーバ力fAおよび変更目標アブソーバ力fAHについての指令がECU150によって発令された場合の作用アブソーバ力は、図7(b)に示すように変化し(点線)、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違が解消される。なお、アブソーバ力は、リバウンド方向の力に対応するものが正の値,バウンド方向の力に対応するものが負の値とされており、アブソーバ力をこのようにあらわせば、図から解るように、目標アブソーバ力fAの値が減少する過程において、第1変化方向にアブソーバ力は変化し、目標アブソーバ力fAの値が増加する過程において、第2変化方向にアブソーバ力は変化する。
また、本システム10のダンパ96は、それの伸縮方向に応じて減衰特性が異なるだけでなく、アブソーバ52とばね下部との相対速度Vsに応じて減衰特性が異なる構造とされている。詳しく言えば、相対速度Vsが閾相対速度Vso以上の場合の減衰係数は、相対速度Vsが閾相対速度Vso未満の場合の減衰係数より小さくされている。このため、相対速度Vsが閾相対速度Vso以上の場合の上記追従性は、相対速度Vsが閾相対速度Vso未満の場合の上記追従性より低く、相対速度Vsが閾相対速度Vso以上の場合の時定数は、相対速度Vsが閾相対速度Vso未満の場合の時定数より大きい。このように、本システム10において、上記追従性を指標する時定数T1,T2は、相対速度Vsが閾相対速度Vso以上の場合と閾相対速度Vso未満の場合とで異なる値となる。図8(a)に、第1変化方向における時定数T1と相対速度Vsとの関係を示し、図8(b)に、第2変化方向における時定数T2と相対速度Vsとの関係を示しておく。
<制御プログラム>
本サスペンションシステム10の制御は、図9にフローチャートを示すアブソーバ制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてECU150により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、アブソーバ制御プログラムは、各車輪に対して設けられた4つのアブソーバ52ごとに実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアブソーバ52に対しての本プログラムによる処理について説明する。
アブソーバ制御プログラムによる処理では、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、ばね上縦加速度Guから演算されるばね上絶対速度Vuに基づいて、前述のように、振動減衰制御のための減衰成分fGが決定される。次に、S2において、制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制制御のためのロール抑制成分fRが、前述のようにして決定され、S3において、実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制制御のためのピッチ抑制成分fPが、前述のようにして決定される。続いてS4において、減衰成分fGとロール抑制成分fRとピッチ抑制成分fPとが合計されることによって、目標アブソーバ力fAが決定される。
次に、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向であるか否かが判定される。アブソーバ力は、先に説明したように、リバウンド方向の力に対応するものが正の値,バウンド方向の力に対応するものが負の値とされており、目標アブソーバ力fAの値が減少する過程では、第1変化方向にアブソーバ力は変化し、目標アブソーバ力fAの値が増加する過程では、第2変化方向にアブソーバ力は変化する。このことから、S5において、目標アブソーバ力fAが前回の本プログラムの実行において決定された前回目標アブソーバ力fAPより小さいか否かが判定される。目標アブソーバ力fAが前回目標アブソーバ力fAPより小さいと判定された場合、つまり、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向であると判定された場合には、S6において、アブソーバ52とばね下部との間の距離Xsがストロークセンサ170によって検出され、S7において、その検出された距離Xsに基づいて、アブソーバ52とばね下部との相対速度Vsが演算される。続いて、S8において、相対速度Vsに基づいて、図8(a)に示すように設定されているマップデータを参照し、第1変化方向における時定数T1が決定され、S9において、相対速度Vsに基づいて、図8(b)に示すように設定されているマップデータを参照し、第2変化方向における時定数T2が決定される。そして、S10において、決定された時定数T1,T2に基づいて、上記伝達関数G(s)が決定される。
S11において、上述のように、目標アブソーバ力fAのフーリエ変換が実行され、S12において、目標アブソーバ力fAのフーリエ変換したものFA(s)が伝達関数G(s)に入力され、変更目標アブソーバ力fAHのフーリエ変換したものFAH(s)が出力される。続いて、S13において、その変更目標アブソーバ力fAHのフーリエ変換したものFAH(s)に対してフーリエ逆変換が行われ、変更目標アブソーバ力fAHが決定され、S14において、その決定された変更目標アブソーバ力fAHについての指令が、インバータ152に発令される。また、S5において、目標アブソーバ力fAが前回目標アブソーバ力fAP以上と判定された場合、つまり、アブソーバ力の変化方向が第2変化方向であると判定された場合には、S15において、目標アブソーバ力fAについての指令が、インバータ152に発令される。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
<制御装置の機能構成>
上記アブソーバ制御プログラムを実行するECU150は、それの実行処理に鑑みれば、図10に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、ECU150は、S1〜S4の処理を実行する機能部、つまり、アブソーバ52が発生させるべきアブソーバ力を決定する機能部として、アブソーバ力決定部190を有している。また、ECU150は、先に述べたフィルタ回路180を有しており、そのフィルタ回路180は、S8〜S13の処理、つまり、アブソーバ力の変化方向による上記追従性の相違に基づいてアブソーバ力を調整する処理を実行する変化方向依拠調整部192として機能するものとなっている。なお、アブソーバ力決定部190は、S1の処理を実行する機能部、つまり、振動減衰制御のための減衰成分fGを決定する機能部として、減衰成分決定部194を、S2の処理を実行する機能部、つまり、ロール抑制制御のためのロール抑制成分fRを決定する機能部として、ロール抑制成分決定部196を、S3の処理を実行する機能部、つまり、ピッチ抑制制御のためのピッチ抑制成分fPを決定する機能部として、ピッチ抑制成分決定部198を、それぞれ有している。
(B)第2実施例
<車両用サスペンションシステムの構成>
第2実施例の車両用サスペンションシステムは、先の車両用サスペンションシステム10が備える連結機構とは構造の異なる連結機構、詳しく言えば、先のダンパ96とは構造の異なるダンパを備えたシステムである。このダンパを除き、先の車両用サスペンションシステム10と同様の構成とされているため、本実施例のサスペンションシステムについては、ダンパに関する部分のみを図示し、全体の図面を省略することとする。また、本システムの説明においては、先のシステム10と同じ機能の構成要素については、同じ符号を用い、それらの説明は省略あるいは簡略に行うものとする。
図11に示すように、本システムの備える液圧式のダンパ200には、先のシステム10のダンパ96のピストン106およびベースバルブ体136に設けられていたオリフィス129,133等が設けられていない。つまり、ダンパ200は、先のシステム10のダンパ96と異なり、アブソーバ52とばね下部との相対速度Vsによって減衰特性が異なる構造とはされていない。ただし、ピストン106の下面に設けられた弁板128、およびベースバルブ体136の上面に設けられた弁板は、ピストン106の上面に設けられた弁板132、およびベースバルブ体136の下面に設けられた弁板より撓められ難くされている。したがって、ダンパ200を備える本システムにおいても、先のシステム10と同様に、アブソーバ52とばね下部との離間動作に対する減衰係数が、アブソーバ52とばね下部との接近動作に対する減衰係数より高い。このため、作用アブソーバ力の追従性が、本システムにおいても、アブソーバ力の変化方向によって相違し、アブソーバ力の変化方向が変わるごとに作用アブソーバ力の大きさの相違となって現れる。
また、ピストン106の上面には、コイルスプリング202が固着されており、アブソーバ52とばね下部とがリバウンド方向にある程度相対移動した場合には、ピストン106の上面がコイルスプリング202を介して、ダンパハウジング102の蓋部114の下面に当接するようになっている。つまり、ダンパ200には、アブソーバ52とばね下部との設定距離以上の離間を弾性力によって規制する弾性規制体としてのコイルスプリング202が設けられている。
<車両用サスペンションシステムの制御>
本システムにおいても、先のシステム10と同様に、振動減衰制御とロール抑制制御とピッチ抑制制御とを一元的に実行すべく、各制御の成分fG,fR,fPを合計して目標アブソーバ力fAを決定し、アブソーバ力の変化方向による作用アブソーバ力の大きさの相違を解消すべく、第1変化方向にアブソーバ力が変化する場合にのみ、その決定された目標アブソーバ力fAを上記追従性の相違に基づいて変更している。本システムの備えるダンパ200の減衰特性は、アブソーバ52とばね下部との相対速度Vsによって変化しないことから、上記追従性を指標する時定数T1,T2は、アブソーバ52とばね下部との相対速度Vsによって変化しない。ただし、ダンパ200には、アブソーバ52とばね下部との規定以上の離間を弾性的に規制するコイルスプリング202が設けられているため、アブソーバ52とばね下部とが設定距離以上に離間する場合には、アブソーバが発生させるアブソーバ力が、ばね上部とばね下部とがコイルスプリング202の弾性力の反力を受けつつ、ばね上部とばね下部とに作用することになる。したがって、アブソーバ52とばね下部とが離間する場合、つまり、第1変化方向にアブソーバ力が変化する場合の時定数T1は、アブソーバ52とばね下部との間の距離Xsによって変化する。詳しく言えば、アブソーバ52とばね下部との間の距離Xsが設定距離Xsoになると、ピストン106の上面がコイルスプリング202を介して、ダンパハウジング102の蓋部114の下面に当接するようになっている。このため、第1変化方向にアブソーバ力が変化する場合に、アブソーバ52とばね下部との間の距離Xsが設定距離Xso以上になると、コイルスプリング202の弾性力の反力によって、上記追従性が高くなる。したがって、本システムでは、図12に示すように、上記距離Xsが設定距離Xso以上の場合の時定数T1は、上記距離Xsが設定距離Xso未満の場合の時定数T1より小さい。なお、本システムにおいて、第2変化方向における時定数T2は、アブソーバ52とばね下部との間の距離Xsによっても変化せず、一定である。
また、先のシステム10においては、各アブソーバ52ごとにアブソーバ力の変化方向が第1変化方向となる場合には目標アブソーバ力fAを変更していたが、本システムにおいては、基本的には、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向となる場合に目標アブソーバ力fAを変更するが、各アブソーバ52のアブソーバ力の変化方向がすべて同じとなる場合には、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向となっても目標アブソーバ力fAを変更しない。つまり、本システムにおいては、いずれか1つのアブソーバ52のアブソーバ力の発生方向が、他のいずれか1つのアブソーバ52のアブソーバ力の変化方向と異なることを条件として、アブソーバ力の調整を行っている。各アブソーバ52が発生させるアブソーバ力の変化方向が同じであれば、各アブソーバ52における上記作用アブソーバ力の大きさの相違による影響は少ないと考えられ、アブソーバ力をあえて調整する必要はないと考えられるからである。特に、上記遅れフィルタを用いた処理によってアブソーバ力を調整することで、制御装置によるアブソーバ力の変更指令に対する作用アブソーバ力の変化を遅らせていることから、あえてそのような調整をする必要はないからである。
<制御プログラム>
本システムの制御は、図13にフローチャートを示す第2アブソーバ制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてECU150により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明するが、本プログラムに従う処理は、先のシステム10におけるプログラムに従う処理と略同様の処理があるため、省略あるいは簡略して説明するものとする。なお、このプログラムは、4つのアブソーバ52の全てに対して実行される。
本プログラムに従う処理では、先のプログラムに従う処理と同様に、S21〜S24において、各アブソーバ52に対して目標アブソーバ力fAが決定され、S25において、各アブソーバ52のアブソーバ力の変化方向が全て同じであるか否かが判定される。具体的に言えば、各アブソーバ52ごとのアブソーバ力の変化方向を、各アブソーバ52ごとの目標アブソーバ力fAと前回目標アブソーバ力fAPとに基づいて判定し、各アブソーバ52のアブソーバ力の変化方向が全て同じか否かを判定する。各アブソーバ52のアブソーバ力の変化方向が全て同じではないと判定された場合には、S26において、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向であるアブソーバ52において、距離Xsがストロークセンサ170によって検出され、S27において、その検出された距離Xsに基づいて、図12に示すように設定されているマップデータを参照し、第1変化方向における時定数T1が決定される。そして、S28において、時定数T1,T2に基づいて、上記伝達関数G(s)が決定される。
S29〜S31において、先のプログラムに従う処理と同様に、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向であるアブソーバ52において決定された目標アブソーバ力fAに対して上記遅れフィルタ処理を実行し、変更目標アブソーバ力fAHを決定する。続いて、S32において、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向であるアブソーバ52においては、変更目標アブソーバ力fAHについての指令が、インバータ152に発令され、一方、アブソーバ力の変化方向が第2変化方向であるアブソーバ52においては、目標アブソーバ力fAについての指令が、インバータ152に発令される。また、S25において、各アブソーバ52のアブソーバ力の変化方向が全て同じであると判定された場合には、S33において、各アブソーバ52に対する目標アブソーバ力fAについての指令が、各インバータ152に発令される。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1の車両用サスペンションシステムの備えるサスペンション装置を示す模式図である。 サスペンション装置の備える電磁式のショックアブソーバと連結機構とを示す概略断面図である。 図3の連結機構が備えるダンパの拡大概略断面図である。 ショックアブソーバとばね下部との相対速度とダンパが発生させる抵抗力との関係を概念的に示すグラフである。 特定の大きさのアブソーバ力を発生させる指令が発令された場合の第1変化方向における作用アブソーバ力および第2変化方向における作用アブソーバ力の時間経過に対する変化を概略的に示すチャートである。 (a)目標アブソーバ力とその目標アブソーバ力に対する作用アブソーバ力と、(b)目標アブソーバ力および変更目標アブソーバ力と目標アブソーバ力および変更目標アブソーバ力に対する作用アブソーバ力との時間経過に対する変化を概略的に示すチャートである。 (a)ショックアブソーバとばね下部との相対速度と第1変化方向における時定数と、(b)ショックアブソーバとばね下部との相対速度と第2変化方向における時定数との関係を示すグラフである。 アブソーバ制御プログラムを示すフローチャートである。 車両用スタビライザシステムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。 請求可能発明の第2実施例である車両用サスペンションシステムの備えるダンパの拡大概略断面図である。 ショックアブソーバとばね下部との間の距離と第1変化方向における時定数との関係を示すグラフである。 第2アブソーバ制御プログラムを示すフローチャートである。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 36:第2ロアアーム(ばね下部) 52:ショックアブソーバ 54:マウント部(ばね上部) 60:アウタチューブ(ばね上部側ユニット) 62:インナチューブ(ばね下部側ユニット) 64:電磁モータ 66:モータケース(ばね上部側ユニット) 80:ねじロッド(ねじ機構,雄ねじ部) 82:ナット(ねじ機構,雌ねじ部) 90:支持部材(ばね下部側ユニット) 92,94:圧縮コイルスプリング(弾性連結体,連結機構) 96:ダンパ(液圧式ダンパ,連結機構) 98:ダンパカバー(連結機構) 150:電子制御ユニット(制御装置) 190:アブソーバ力決定部 192:変化方向依拠調整部 200:ダンパ(液圧式ダンパ,連結機構) 202:コイルスプリング(弾性規制体)

Claims (13)

  1. ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との相対移動に伴って前記ばね上部側ユニットと相対移動可能とされたばね下部側ユニットと、電磁モータとを有し、ばね上部とばね下部とを相対移動させる方向の力であるアブソーバ力を前記電磁モータの力に依拠して発生させる電磁式のショックアブソーバと、
    ばね上部とばね下部との一方と、その一方に連結される前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方とを連結させる機構であって、前記ばね上部とばね下部との一方と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方とを弾性的に連結する弾性連結体と、その弾性連結体によって許容された前記ばね上部とばね下部との一方と前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方との相対動作に対する抵抗力を発生させる液圧式ダンパとを有する連結機構と、
    アブソーバ力についての指令を発して前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を制御する制御装置と、
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    前記制御装置が、
    当該制御装置によるアブソーバ力についての指令へのばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の追従性の、アブソーバ力の変化方向が第1変化方向である場合とそれの反対の第2変化方向である場合との相違に基づいて、前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を調整する変化方向依拠調整部を有する車両用サスペンションシステム。
  2. 前記変化方向依拠調整部が、前記連結機構に起因する前記追従性の相違に基づいて前記ショックアブソーバが発生させるアブソーバ力を調整するものである請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記追従性が、
    アブソーバ力を設定された大きさだけ変更する指令を発した時点から、ばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力が前記設定された大きさ以下の特定の大きさまで変化するのに要する時間で示される特性である請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記制御装置が、ばね上部とばね下部との少なくとも一方の挙動を指標する1以上の挙動指標に基づいて前記ショックアブソーバが発生させるべきアブソーバ力を決定するアブソーバ力決定部を有し、
    前記変化方向依拠調整部が、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を、前記追従性の相違に基づいて変更可能に構成され、
    前記制御装置が、前記変化方向依拠調整部によって変更されたアブソーバ力についての指令を発するように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記変化方向依拠調整部が、
    アブソーバ力の変化が第1変化方向である場合と第2変化方向である場合とのそれぞれにおける、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力の変化に依存したばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の変化の様子が、自身による変更がないときに比べて互いに近づくように、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された請求項4に記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記変化方向依拠調整部が、
    アブソーバ力の変化が第1変化方向である場合と第2変化方向である場合とのそれぞれにおける、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力の変化に依存したばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の変化の様子が、互いに一致するように、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された請求項4または請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記変化方向依拠調整部が、
    アブソーバ力が第1変化方向に変化する場合と、第2変化方向に変化する場合との一方においてのみ、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記変化方向依拠調整部が、第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合にのみ、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成された請求項7に記載の車両用サスペンションシステム。
  9. 前記変化方向依拠調整部が、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するための処理を実行する遅れフィルタを有する請求項4ないし請求項8のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  10. 前記遅れフィルタが、前記制御装置によるアブソーバ力についての指令へのばね上部とばね下部とに作用するアブソーバ力の追従性を指標する時定数に基づく処理を実行する一次遅れフィルタを含む請求項9に記載の車両用サスペンションシステム。
  11. 前記変化方向依拠調整部が、第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合にのみ、前記アブソーバ力決定部によって決定されたアブソーバ力を変更するように構成され、
    前記一次遅れフィルタが、(a)第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の低い方にアブソーバ力が変化する場合の前記時定数から(b)第1変化方向と第2変化方向とのうちの前記追従性の高い方にアブソーバ力が変化する場合の前記時定数を減じたものに基づく処理を実行するものである請求項10に記載の車両用サスペンションシステム。
  12. 前記液圧式ダンパの減衰係数が、自身の発生させる抵抗力の方向によって異なる請求項1ないし請求項11のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  13. 当該車両用サスペンションシステムが、
    前後左右の車輪に対応して、それぞれが前記ショックアブソーバである複数のショックアブソーバと、それぞれが前記連結機構である複数の連結機構とを備えるものとされ、
    前記変化方向依拠調整部が、
    前記複数のショックアブソーバのうちのいずれか1つが発生させるアブソーバ力の変化方向が、前記複数のショックアブソーバのうちの他のいずれか1つが発生させるアブソーバ力の変化方向と異なることを条件として、前記複数のショックアブソーバの各々が発生させるアブソーバ力を、その各々の前記追従性の相違に基づいて調整するように構成された請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
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