JP4886218B2 - 再生樹脂組成物および再生樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

再生樹脂組成物および再生樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主成分として芳香族ポリカーボネートからなる熱可塑性硬質ポリマーと繊維状充填剤との樹脂組成物からなる成形品を、バージンの熱可塑性樹脂に混合することにより再生した再生樹脂組成物に関する。より詳しくは、本発明は、集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された繊維状充填剤からなる成形品を利用して、該成形品をバージン原料に配合することにより、環境負荷の低減と改良された耐湿熱性とを両立した再生樹脂組成物に関する。特に本発明は、いわゆるクローズドリサイクルと称される、回収された成形品と同様の組成からなる再生樹脂組成物およびその製造方法を提供することにより、更なる環境負荷の低減を可能とするものである。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、優れた機械的特性、寸法精度、熱的特性、および難燃性等を有しているため、電気・電子機器分野、OA機器分野、および自動車分野等で広く利用されている。芳香族ポリカーボネート樹脂とガラス繊維および炭素繊維などに代表される繊維状充填材からなる樹脂組成物も広く知られるところであり、多くの分野に利用されている。かかる芳香族ポリカーボネート樹脂と強化型フィラーとからなる樹脂組成物は、その剛性、寸法安定性、および熱的特性などの優れた特性から、高い寸法精度が要求されるカメラの鏡筒やシャーシおよびOA機器のシャーシなどの様々な分野に広く使用されている。
一方、近年は資源の再利用および環境保護の観点から不用になった製品を回収し再利用する、いわゆるリサイクルの検討が盛んに行われている。樹脂のリサイクルは大量の樹脂を使用する電気・電子機器分野、OA機器分野、自動車分野において重要課題の1つとされている。かかる樹脂のリサイクルに関しては、従来は元々高度な機械的特性や難燃性などの特性を有する樹脂成形品から回収された樹脂を、それらの特性が特に要求されない分野に再使用する方法が主として取られてきた。近年は「リサイクル」なる語が本来有する概念、すなわち、再生前の樹脂組成物が本来有する特性とほぼ同等の特性を再生後の樹脂組成物においても達成すること、いわゆるクローズドリサイクルを達成することが求められている。このため廃棄された製品、またはスプルー、ランナ−、およびパージ屑などの回収された樹脂に、バージン樹脂などを適量混合および溶融混練し、再生前の樹脂組成物が有する特性に近い再生樹脂組成物を得る試みが盛んになされている。
例えば、回収材とバージン材の量比を特定することで再生品製造時の消費エネルギーを減らす技術が提案されている(特許文献1参照)。また、原料樹脂、少なくとも1種の樹脂用添加材、並びに原料樹脂組成物および/またはリサイクル樹脂組成物からなる成形品の製造の際に生じるスプルーおよびランナーなどの回収成形物の粉砕品をコンパウンディングすることにより製造されたリサイクル樹脂組成物が提案されている(特許文献2参照)。かかるリサイクル樹脂組成物は、フィード特性および成形性の点で、原料樹脂および樹脂用添加剤のみからなる原料樹脂組成物と同等の性能を有することが示されている。
破砕品のカサ密度と真密度との比を特定することで、得られる再生樹脂組成物の機械的特性の低下を抑制する技術が提案されている(特許文献3参照)。更にポリカーボネート樹脂を特定量含有し、その分子量が特定範囲であり、かつ湿熱保持率が特定値以上であることを満足する成形品粉砕物を利用した再生樹脂組成物が提案されている(特許文献4参照)。かかる文献には、かかる特定の規定を満足することで、良好なクローズドリサイクルが可能であることが示されている。
しかしながら、上記従来技術は成形品粉砕物の混合による悪影響を抑制することを主眼としている。上記従来技術は、成形品粉砕物の使用によって、バージン材のみからなる組成物よりも優れた特性を有する樹脂組成物を提案するものではない。したがって成形品粉砕物の配合によって特性の低下が避けられない樹脂組成物においては、リサイクルが積極的になされにくい状況にあった。例えばガラス繊維や炭素繊維が配合された樹脂組成物では、成形品粉砕物の配合により少なからず繊維長が短くなることが避けられない。特に良好な寸法精度や剛性を要求する分野の製品は、成形品粉砕物の配合に消極的になりがちであった。
しかし、成形品粉砕物の配合によってバージン材よりも優れた特性が付与されると、成形品粉砕物の配合に対してより積極的な動機付けが生じると考えられる。かような再生樹脂組成物が提案された従来技術として、以下が例示される。
光ディスク粉砕化物に芳香族ポリカーボネート樹脂とゴム質の熱可塑性グラフト共重合体を配合した組成物(特許文献5参照)、並びに無機充填材を配合した組成物(特許文献6参照)が提案され、これらの文献には、光ディスク粉砕化物の配合が、該組成物に適度な流動性およびメタリック外観に代表される良好な外観を更に付与することが示されている。また、ゴム質重合体を特定量含有する成形品粉砕物をバージン熱可塑性樹脂やバージン無機充填材と溶融混練した再生樹脂組成物によって、そのウエルド強度やタップ強度を改良することが提案されている(特許文献7参照)。更に、ハードコート被膜の如き硬化樹脂が積層された成形品粉砕物、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、およびリン酸エステルからなり、難燃剤として塩素および臭素化合物を含有しない樹脂組成物が提案されている(特許文献8参照)。かかる樹脂組成物は向上した難燃性を有することが該文献に記載されている。
しかしながら、上記方法はいずれもガラス繊維や炭素繊維を含有する樹脂組成物のリサイクルに関して明確な技術的知見を示すものではなかった。更にいずれの文献もクローズドリサイクルとは異なる再生樹脂組成物を提案するものである。
一方で、ガラス繊維や炭素繊維は、かかる繊維製造時における環境負荷の低減のため、しばしば集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理されるようになっている。尚、以下“集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された”との表記を単に“水系エマルション集束された”と表記する場合がある。
しかし、かかる水系エマルション集束された繊維状充填材は、湿熱雰囲気下における芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量低下を促進させる。よってかかる特性低下の改良が求められる場合がある。特に難燃剤として有機金属塩系難燃剤が配合された場合、その低下がより促進される。したがって、環境負荷の低減された繊維状充填材が有効に利用できない場合があった。尚、水系エマルション集束された炭素繊維が配合された芳香族ポリカーボネート樹脂は、上記特許文献7や特許文献9に記載がある。
芳香族ポリカーボネート樹脂、ガラス繊維および炭素繊維などに代表される繊維状充填材、並びにパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩に代表される有機金属塩系難燃剤を難燃剤として配合する例としては、次のものが公知である。
芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂との密着性が低い被覆剤で予め被覆されたガラス繊維、並びに有機アルカリ金属塩および/または有機アルカリ土類金属塩からなる樹脂組成物は公知である(特許文献10参照)。該文献には、該樹脂組成物は、ガラス繊維と芳香族ポリカーボネートの密着性が低いため、リサイクルするための溶融加工時や粉砕加工時において、ガラス繊維は樹脂から大きな応力を受けなくなる結果、ガラス繊維はこれらの加工工程において折れが低減され、リサイクル処理においても剛性の維持が可能となることが記載されている。
また芳香族ポリカーボネート樹脂、炭素繊維、およびパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩からなる樹脂組成物も公知である(特許文献11参照)。
特開2000−159900号公報 特開2001−26719号公報 特開2002−265798号公報 WO01/72900号パンフレット 特開平8−311326号公報 特開平9−316316号公報 特開2004−323825号公報 特開2004−238613号公報 特開2004−244531号公報 特開2002−309076号公報 特開2003−105184号公報
上述のごとく、ガラス繊維および炭素繊維などの繊維状充填材は、成形品粉砕物の配合により繊維長が短くなることが避けられない。そのため、該粉砕物をバージン原料に配合した再生樹脂組成物の製造に対して消極的となる状況があった。かかる状況は、粉砕物の配合によりバージン原料のみからでは得られない特性が付与できれば解決されると考えられる。かかる解決によりリサイクルが可能となり環境負荷がより低減される。
一方で、繊維状充填材は、原料段階では水系エマルション集束されることにより環境負荷の低減がなされている。しかし湿熱劣化のために芳香族ポリカーボネートでは、その環境負荷に対する有効性を十分に利用できない場合があった。かかる湿熱劣化は特に難燃剤として有機スルホン酸のアルカリ金属塩が配合された場合に促進される。
以上より、水系エマルション集束された繊維状充填材を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、該成形品粉砕物の配合によりバージン原料のみからの組成物以上に湿熱劣化が抑制されると、原材料段階から樹脂組成物の段階まで環境負荷が低減され、かつ良好な耐湿熱性を有する再生樹脂組成物の提供が可能となる。すなわち本発明は環境負荷の低減と耐湿熱性の改善とを両立した、繊維状充填材で強化された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の再生樹脂組成物を提供することを目的とする。
特に本発明の目的は、かかる再生樹脂組成物の組成が成形品粉砕物の組成と実質的に一致する、クローズドリサイクルが達成された再生樹脂組成物および該樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
本発明者は、驚くべきことに水系エマルション集束された繊維状充填材を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形品粉砕物を、バージン原料とベント式押出機で溶融混練して樹脂組成物を製造すると、該樹脂組成物は、バージン原料のみからの樹脂組成物に比較して湿熱劣化が改良されることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づき更に鋭意検討を進め、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、上記本発明の目的は、(1)バージン熱可塑性硬質ポリマー(Aa成分)、成形品粉砕物(B成分)、および必要に応じてバージン繊維状充填材(Ab成分)を溶融混練することにより製造された再生樹脂組成物であって、
(i)該成形品粉砕物(B成分)は、100重量部の熱可塑性硬質ポリマー(Ba成分)および3〜200重量部の繊維状充填材(Bb成分)からなる樹脂組成物より形成され、該Ba成分における芳香族ポリカーボネート(Ba−1成分)の割合は50〜100重量%であり、かつ該Bb成分における集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された繊維状充填剤の割合は50〜100重量%であり、
(ii)100重量部のAa成分を基準として、B成分は5〜200重量部、Ab成分は0〜200重量部であり、並びに
(iii)該再生樹脂組成物は、100重量部の熱可塑性硬質ポリマー(Ca成分)を基準として3〜200重量部の繊維状充填材(Cb成分)を含有してなる
ことを特徴とする再生樹脂組成物により達成される。
上記の成形品粉砕物の配合された再生樹脂組成物が、バージン原料のみからの組成物に比較して湿熱劣化が抑制される原因は次のように推察される。水系エマルション液の形態にされる集束剤は、乳化剤や乳化成分などの親水性成分を少なからず含有する。かかる成分が芳香族ポリカーボネートの湿熱劣化の要因になると考えられる。一方、成形品粉砕物の配合された再生樹脂組成物は、かかる集束剤の親水性成分が減少していると推察される。これは成形品粉砕物がその形成過程で多くの熱履歴を受けていることに起因する。かかる熱履歴により親水性成分が熱分解し、再生樹脂組成物の形成までに揮発すると予想される。本発明者は、バージンの樹脂組成物のペレットから発生する揮発成分と、成形品粉砕物からの揮発成分とを比較したとき、成形品粉砕物の揮発成分には、集束剤由来の成分が増加することを確認している。かかるデータは上記の推察を支持すると考える。更に再生樹脂組成物製造時のベント吸引度の差異によっても、湿熱劣化の抑制に差異が認められる。かかる差異も上記推察を支持すると考える。
上記構成(1)において、成形品粉砕物(B成分)中における100重量部の熱可塑性硬質ポリマー(Ba成分)を基準とする繊維状充填材(Bb成分)の重量比は、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは8〜50重量部である。繊維状充填材が3重量部未満では、再生樹脂組成物中でのかかるBb成分に由来する繊維状充填材の割合が少ないことから、本発明の効果が十分に発揮されない。一方、繊維状充填材が200重量部を超えることは稀であると共に、ガラス繊維や炭素繊維においては繊維の折れが顕著となる。したがって再生樹脂組成物に対する悪影響が目立ちやすくなる。
また100重量%のBb成分における集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された繊維状充填剤の割合は、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、更に好ましくは100重量%である。かかるより好ましい範囲であると、再生樹脂組成物は、より環境負荷の低減されたものとなる。
上記構成(1)において、100重量部のバージン熱可塑性硬質ポリマー(Aa成分)を基準とする成形品粉砕物の重量比は5〜200重量部であるが、かかる下限は好ましくは10重量部、より好ましくは18重量部、更に好ましくは25重量部である。一方かかる上限は好ましくは90重量部、より好ましくは70重量部である。かかる重量比が5重量部未満であると再生効率が高まらず環境負荷の低減が不十分となりやすく、200重量部を超えると繊維の折れによる悪影響が目立つようになり好ましくない。
尚、成形品破砕物の再生樹脂組成物100重量%中での割合は、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%である。
上記構成(1)において、再生樹脂組成物中100重量部の熱可塑性硬質ポリマー(Ca成分)を基準とする繊維状充填材(Cb成分)の重量比は、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは8〜50重量部である。繊維状充填材が3重量部未満では、再生樹脂組成物に十分な補強効果が与えられず、強度、剛性および寸法精度などの点で不十分となりやすい。一方、繊維状充填材が200重量部を超えると、溶融混練時の繊維の折れが顕著となりやすく、補強効果に対する効率が低下し好ましくない場合が多い。上記の好ましい範囲では、繊維の補強効果がより良好に発揮される。
本発明では、100重量%の該Ba成分における芳香族ポリカーボネート(Ba−1成分)の割合は50〜100重量%であることを要件とする。かかる芳香族ポリカーボネートの割合は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。更にかかる熱可塑性硬質ポリマー中における芳香族ポリカーボネートの割合は、再生樹脂組成物中においても満足されることが好ましい。即ち、100重量%のCa成分におけるCa−1成分の割合は、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
以下、本明細書において成分の名称とその成分の内容は下記の意味を有する。
成分の名称; 成分の内容
A成分; バージン原料
Aa成分; バージンの熱可塑性硬質ポリマー
Aa−1成分; バージンの芳香族ポリカーボネート
Ab成分; バージンの繊維状充填材
Ab−1成分; バージンの水系エマルション集束された繊維状充填材
Ac成分; バージンの有機金属塩系難燃剤
B成分; 成形品粉砕物
Ba成分; B成分中の熱可塑性硬質ポリマー
Ba−1成分; B成分中の芳香族ポリカーボネート
Bb成分; B成分中の繊維状充填材
Bb−1成分; B成分中の水系エマルション集束された繊維状充填材
Bc成分; B成分中の有機金属塩系難燃剤
Ca成分; 再生樹脂組成物中の熱可塑性硬質ポリマー
Ca−1成分; 再生樹脂組成物中の芳香族ポリカーボネート
Cb成分; 再生樹脂組成物中の繊維状充填材
Cb−1成分; 再生樹脂組成物中の水系エマルション集束された繊維状充填材
Cc成分; 再生樹脂組成物中の有機金属塩系難燃剤
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記Ab成分は、100重量部のAa成分を基準として、3〜200重量部配合される上記構成(1)の再生樹脂組成物である。
本発明の再生樹脂組成物は、バージン原料として強化充填材を全く配合されなくともよい。かかる場合には、成形品粉砕物中の繊維状充填材によって、再生樹脂組成物が強化される。しかしながら、かかる場合には繊維の折れによる特性低下がバージン原料からの組成物に比較して大きくなりやすい。よってバージンの強化充填材を配合して、かかる繊維の折れの悪影響を補うのがよい。特にバージンの強化充填材が繊維状充填材であれば、かかる補強効果が大きく、折れの悪影響を十分に緩和できる。
Ab成分は水系エマルション集束された繊維状充填材であっても、有機溶剤の如き非水系で集束された繊維状充填材であってもよいが、好ましくは水系エマルション集束された繊維状充填材である。かかる理由は次のとおりである。再生樹脂組成物を製造するに至るまでの環境負荷を考慮すれば、Ab成分のバージン繊維状充填材が、水系エマルション集束された繊維状充填材であることが好ましく、一方で本発明の樹脂組成物はかかる水系エマルション集束された繊維状充填材が配合された樹脂組成物の欠点を改良するものであるためである。
Ab成分のバージン繊維状充填材は、Bb成分の繊維状充填材と同一種であっても、異種であってもよい。尚、同一種の繊維状充填材とは、繊維を、形状、層構造、大きさ、材質、および集束剤の点から比較したとき、これらが全て同一とみなせる場合をいう。繊維状充填材が二種以上の混合物である場合には、更にかかる混合物の重量比も実質的に同一であるときをいう。重量比が実質的に同一であるとの意は、後述する構成(4)の場合と同様である。同一種として最も好ましい態様は、Ab成分がBb−1成分の原材料として使用された繊維状充填材と同一の場合である。また異種とは、同一種でない場合をいう。
尚、100重量部のバージン熱可塑性硬質ポリマー(Aa成分)を基準とするバージン繊維状充填材の配合割合は、好ましくは3〜200重量部、より好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは8〜50重量部である。
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記Aa成分とB成分との溶融混練は、0.1〜60kPaの減圧下においてなされることを特徴とする上記構成(1)〜(2)の再生樹脂組成物である。上述のとおり、本発明の再生樹脂組成物の湿熱劣化が抑制されている原因は、成形品粉砕物中の繊維状充填材の集束剤が一部熱分解し、かかる分解物が再生樹脂組成物の製造時に揮発するためと考えられる。したがってかかる揮発がより活発となる条件で再生樹脂組成物を製造することが好ましい。上記構成(3)の減圧条件は、かかる揮発をより活発にする実用的な製造条件として適切である。かかる減圧は、より好ましくは1〜20kPa、更に好ましくは2〜10kPaである。
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記Aa成分およびBa成分は同一種の熱可塑性硬質ポリマーであり、上記Ab成分およびBb成分は同一種の繊維状充填材であり、並びにAa成分に対するBa成分の重量比はAb成分に対するBb成分の重量比に実質的に同一であることを特徴とする上記構成(1)〜(3)の再生樹脂組成物である。かかる構成(4)によれば、いわゆるクローズドリサイクルが達成される。すなわち、成形品粉砕物により得られる特性とほぼ同じ特性を有する再生樹脂組成物が得られる。かかる条件を満足する範囲において、かかる構成(4)の“同一種”の語は用いられ、厳密に同一であることを求めるものではない。またほぼ同じ特性とは、通常の樹脂組成物の発揮する特性において許容される範囲のばらつきは同一とみなす特性をいう。
クローズドリサイクルから得られる再生樹脂組成物は、いずれの段階においても環境負荷が低減され、かつ湿熱劣化の改善がなされている。したがって、該再生樹脂組成物は、リサイクル時の繊維の折れによる悪影響を十分に補い、リサイクルの実効を上げるものである。
ここで“実質的に同一の重量比”とは、通常の樹脂組成物の製造において許容される範囲のばらつきは同一とみなす重量比をいう。かかる許容範囲はもちろん目的とする用途や製品で異なるものであるが、好ましくは±2重量部、より好ましくは±1重量部程度の差異を同一とする範囲である。
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された繊維状充填剤(Bb−1成分)における集束剤は、その100重量%中50重量%以上のポリウレタン樹脂を含有する上記構成(1)〜(4)の再生樹脂組成物である。
本発明のBb−1成分の水系エマルション集束された繊維状充填材の集束剤としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、およびポリエステル樹脂が好適に例示され、これらの樹脂が使用できる。中でも靱性および集束性に優れることから、ポリウレタン樹脂が好ましい。したがって、好ましいBb−1成分の集束剤は、その100重量%中、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上のポリウレタン樹脂を含有する。ポリウレタン樹脂と共に併用される集束剤としては、エポキシ樹脂が好ましい。繊維状充填材への集束処理は、2種以上の集束剤を多段階で処理することもできる。例えばエポキシ樹脂で集束処理した後、その上にウレタン樹脂で集束処理することができる。
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記Bb成分の繊維状充填材は、炭素繊維であるか、または30重量%以上の炭素繊維と70重量%以下のガラス繊維との合計100重量%からなる組合せである上記構成(1)〜(5)の再生樹脂組成物である。Bb成分の繊維状充填材は、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、およびセラミック繊維、並びに金属被覆ガラス繊維や金属被覆炭素繊維に代表されるこれら繊維の表面に異種材料が被覆された繊維が含まれ、これらのいずれであってもよい。中でも好ましいのは、炭素繊維である。炭素繊維は比較的高価であることから、リサイクルの利益はより大きくなる。また炭素繊維は表面の活性が低く、そのため通常集束剤量が多い。本発明は集束剤の湿熱劣化に対する影響を低減する効果があるため、炭素繊維のかかる効果はより有効に発揮される。
また炭素繊維とガラス繊維との組合せは、強度および寸法精度と、そのコストとを両立するのに極めて有効である。また難燃性が求められる場合、炭素繊維配合材料は、難燃性の付与が困難となる場合がある。ガラス繊維と炭素繊維との組合せは難燃性を改良できる利点もある。
本発明の好適な態様の1つは、(7)上記再生樹脂組成物は、更に100重量部の芳香族ポリカーボネート(Aa−1成分)を基準として0.001〜1重量部の有機金属塩系難燃剤(Ac成分)が配合されることにより、および/または上記成形品粉砕物(B成分)において100重量部の芳香族ポリカーボネート(Ba−1成分)を基準として0.001〜1重量部の有機金属塩系難燃剤(Bc成分)が含有されることにより、100重量部の芳香族ポリカーボネート(Ca−1成分)を基準として0.001〜1重量部の有機金属塩系難燃剤(Cc成分)を含有してなる上記構成(1)〜(6)の再生樹脂組成物である。
有機金属塩系難燃剤が芳香族ポリカーボネート樹脂に配合されると、得られる樹脂組成物の湿熱劣化は促進される。したがって、湿熱劣化が抑制されるとの樹脂組成物の効果は、かかる促進物質が含まれる場合ほどより有効に発揮される。一方で、近年難燃剤として、塩素や臭素を分子内に含有するいわゆるハロゲン系難燃剤やリン酸エステルの如きリン系難燃剤を用いることなく良好な難燃性を有する樹脂材料が求められるようになっている。その理由の1つは、製品廃棄時の環境負荷の低減にある。かかる構成(7)の再生樹脂組成物はかかる要求にも合致し、より環境負荷の低減された樹脂組成物が提供される。
かかる有機金属塩系難燃剤が配合された場合、熱可塑性硬質ポリマー100重量%中における芳香族ポリカーボネートの重量割合は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。また有機金属塩系難燃剤の含有量、即ちAc成分、Bc成分、およびCc成分が、それぞれ100重量部のAa−1成分、Ba−1成分、およびCa−1成分に対する重量比は、好ましくは0.01〜0.3重量部、更に好ましくは0.05〜0.2重量部である。
本発明の好適な態様の1つは、(8)上記Aa成分およびBa成分は同一種の熱可塑性硬質ポリマーであり、上記Ab成分およびBb成分は同一種の繊維状充填材であり、上記Ac成分およびBc成分は同一種の有機金属塩系難燃剤であり、Aa成分に対するBa成分の重量比はAb成分に対するBb成分の重量比に実質的に同一であり、並びにAa−1成分に対するAc成分の重量比はBa−1成分に対するBc成分の重量比に実質的に同一であることを特徴とする上記構成(7)の再生樹脂組成物である。かかる構成(8)によれば、上記構成(4)と同様にいずれの段階においても環境負荷が低減され、かつ湿熱劣化の改善がなされ、更に難燃性にも優れた再生樹脂組成物が提供される。尚、かかる構成(8)における“同一種”および“実質的に同一の重量比”の語の意は、上記構成(4)の場合と同じである。
本発明の好適な態様の1つは、(9)上記構成(1)〜(8)の再生樹脂組成物からなる樹脂ペレットである。更に好適な態様の1つは、(10)上記構成(9)の樹脂ペレットを溶融成形して得られた成形品である。本発明の再生樹脂組成物は、溶融混練により一旦樹脂ペレットに成形された後、該ペレットを射出成形機および押出成形機などに供給して溶融成形され、所望の成形品形状とされることが好ましい。
本発明の別の態様によれば、(11)成形品粉砕物を配合した再生樹脂組成物を製造する方法であって、
(I)バージン熱可塑性硬質ポリマー(Aa成分)、成形品粉砕物(B成分)、および必要に応じてバージン繊維状充填材(Ab成分)を準備する工程(工程−I)、但し該成形品粉砕物(B成分)は、芳香族ポリカーボネート(Ba−1成分)50〜100重量部を含有する熱可塑性硬質ポリマー(Ba成分)100重量部に、集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された繊維状充填剤(Bb−1成分)3〜200重量部が配合されてなる樹脂組成物から形成されている、
(II)100重量部のバージン熱可塑性硬質ポリマー(Aa成分)を基準として、5〜200重量部の成形品粉砕物(B成分)および0〜200重量部のバージン繊維状充填材(Ab成分)を溶融混練機に供給する工程(工程−II)、並びに
(III)該溶融混練機に供給された成分を溶融混練し、100重量部の熱可塑性硬質ポリマー(Ca成分)を基準として3〜200重量部の繊維状充填材(Cb成分)を含有してなる再生樹脂組成物を得る工程(工程−III)
からなることを特徴とする再生樹脂組成物の製造方法が提供される。
以下、本発明の詳細について説明する。
(B成分:成形品粉砕物について)
本発明でいう「成形品の粉砕物」とは、(i)成形品が製品の一部として市場で使用され、消費者等においてその製品の使用期間が終了し、回収された成形品の粉砕物、並びに(ii)市場に出る前の成形の過程で発生する不良品やスプルー、ランナーなどの成形工程で付随して発生する成形物、および製品化工程での不良品、在庫として不用になった成形品などバージンペレットを少なくとも一度加工した成形物の粉砕物を指す。これら(i)および(ii)を広く成形品の粉砕物として本発明に使用することができる。
B成分の成形品粉砕物は、通常製品からプラスチック部材を同種部品に仕分けをしながら回収した後、粉砕機を用いて粉砕される。粉砕機としては、例えばロールクラッシャーの如き圧縮式粉砕機;インパクトクラッシャーおよびハンマーミルなどの衝撃式粉砕機;カッターミル、往復動式粉砕機、および二軸せん断粉砕機に代表される低速回転式粉砕機などの切断式またはせん断式粉砕機;シュレッダーの如き衝撃せん断式粉砕機、並びにボールミル、ディスクミル、ピンミル、ハンマーミル、ターボミル、およびジェットミルなどに代表される各種微粉砕機などが例示される。これらの中でも成形品を直接供給可能で、粉砕効率に優れ、かつ必要とされる粒径に対応するなどの点から切断式またはせん断式粉砕機が好ましい。その中でも靭性の高い外装成形品などにおいても適度なカサ密度を有し好ましい粉砕物が得られやすいことから、低速回転式粉砕機が好ましい。かかる低速回転式粉砕機としては一軸型、二軸型、および三軸型などいずれのタイプも使用可能である。
また粉砕機の回転刃や固定刃の状態を良好に保つことが重要である。回転刃や固定刃などが摩耗していると、靭性の高い材料では破断面の変形が大きくなる傾向がある。かかる変形は不必要にカサ密度を増加させ製造工程上も好ましくない。更に靭性の低い材料では不必要に成形品を破砕し、結果して繊維状充填材の繊維の折れを大きくする。粉砕物のカサ密度と真密度の比(カサ密度/真密度)は、その下限が好ましくは0.3(特に好ましくは0.38)であり、その上限が好ましくは0.5(特に好ましくは0.49)である。
粉砕物(B成分)の形状や大きさは特に限定されるものではないが、押出機への供給性および取扱い性などの点から、粉砕物の粒径(最大の粒体長径に相当する)は好ましくは1〜30mm、より好ましくは1〜15mm、更に好ましくは1.5〜12mm、特に好ましくは2〜10mmの範囲である。尚、かかる粉砕物の粒径は、標準篩法に準じて測定することが可能である。また、上記粒径の粉砕物は、目的とする粒径に近い目開きのスクリーンを破砕機に設置することにより得られる。また通常粉砕で発生する微粉はスクリーンやフィルターを通して取り除かれることが好ましい。
成形品に印刷塗膜、シール、ラベル、化粧塗装膜、導電塗装、導電メッキ、および金属蒸着などが施されている場合、成形品粉砕物としてこれらを除去した粉砕物および除去しない粉砕物のいずれも使用可能である。印刷塗膜やメッキなどを除去する場合には、その方法として2本のロール間で圧延する方法、加熱・加圧水、各種溶剤、酸・アルカリ水溶液などに接触させる方法、かかる除去部分を機械的に削り取る方法、超音波を照射する方法、およびブラスト処理する方法などを挙げることができ、これらを組み合わせて使用することも可能である。
(A成分:バージン原料について)
上記の成形品粉砕物に対して、A成分のバージン原料とは、樹脂組成物を構成するための原材料として未だ使用されてない原材料をいう。したがって、一度、樹脂組成物を製造するために使用された成形物粉砕物中の熱可塑性硬質ポリマーおよび繊維状充填材とは明確に区別される。これらバージン材料の形態は、粉状、ペレット状、チップ状、または球状など通常使用される各種の形態を取ることができる。ここでペレット状とは円形状または楕円形状の断面を持つ円柱状の粒体であり、その断面の長径は1〜4mm、長さは2〜6mmが好ましい。また既に各種の添加剤を混合された状態のものも使用可能である。
(繊維状充填材の集束剤について)
本発明で使用される繊維状充填材の集束剤について説明する。尚、本発明の成形品粉砕物および得られる再生樹脂組成物は、水系エマルション集束された繊維状充填材を必須成分として含有することは上記のとおりである。一方本発明の再生樹脂組成物は、それ以外の繊維状充填材の含有を排除しているわけではない。即ち、バージンの繊維状充填材は必ずしも水系エマルション集束された繊維状充填材に限られず、また成形品粉砕物中にも、水系エマルション集束された繊維状充填材に加えて、該充填材以外の繊維状充填材を含有してもよい。かかる前提の下で以下に、水系エマルション集束された繊維状充填材とそれ以外とをまとめて説明する。但し、繊維状充填材のすべてが水系エマルション集束された繊維状充填材である態様がより好ましい。
繊維状充填材の集束剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、およびフェノール樹脂等が例示される。かかる集束剤は、マトリックス樹脂の種類に応じ適宜選択することができるが、靭性に優れることからポリウレタン樹脂が好ましい。集束剤は、その100重量%中、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上のポリウレタン樹脂を含有する。ポリウレタン樹脂と共に併用される集束剤としては、エポキシ樹脂が好ましい。繊維状充填材への集束処理は、2種以上の集束剤を多段階で処理することもできる。例えばエポキシ樹脂で集束処理した後、その上にウレタン樹脂で集束処理することができる。
集束剤を繊維ストランドに付着させる方法は、集束剤を溶解させる溶媒によりエマルション法と溶剤法とに分けることができる。溶剤法で使用する溶剤としては、アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類、並びにメチレンクロライドの如き有機塩素化合物などが例示される。かかる方法では、これらの溶剤に集束剤が溶解される。集束剤の付着処理は、溶剤法またはエマルション法のいずれの方法で行われてもよいが、環境負荷の低減の観点からエマルション法が好ましい。尚、本発明の集束処理に用いられるエマルションとは、厳密な意味でのエマルションを意味せず、完全に樹脂が溶解され透明液体とならず分散形態をとるものをエマルションであるとする。したがって、かかるエマルションの分散粒子径は、0.1〜1μmの範囲が好ましいが、0.01〜0.1μmの範囲(マイクロエマルションまたはコロイダルディスパージョン)並びに1μmを超える範囲(水性スラリー)を含む。
集束剤を繊維ストランドに付着させる方法としては、スプレー法および液浸法など公知の方法を採択し得る。中でも汎用性、効率性、および被覆の均一性に優れることから、液浸法が好ましい。かかる集束剤の付着処理は、通常繊維ストランドを集束剤の溶液槽または水系エマルション槽中に設けられた液没ローラまたは液浸ローラを介して、開繊と絞りを繰り返し、ストランドの芯まで、これらの集束剤含有液を含浸させる。本発明においてもかかる方法で集束剤の付着処理されることが好ましい。
水系エマルションの場合、繊維ストランドに付与する集束剤量を適正化する上で、集束剤の濃度は1〜100g/L、25℃での溶液粘度は0.1〜100Poiseが好ましい。集束剤の付着処理における工程温度は0〜50℃が好ましい。また集束剤の付着量を制御するために、集束剤を付着させた後、スクイズ処理してもよい。集束剤の付着処理は、単独または二種類以上の集束剤を用いて一段階で行うことも、または二段階以上に分けて行うこともできる。
本発明における繊維状充填材の集束剤付着量は0.2〜6重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.4〜5重量%の範囲である。表面の活性が比較的高く集束処理が容易なガラス繊維や金属繊維では、かかる範囲は0.4〜2重量%の範囲が特に好ましい。一方、表面の活性が低く集束処理が困難な炭素繊維では、かかる範囲は2〜5重量%の範囲が特に好ましい。尚、集束剤の付着量は、600℃の電気炉において6時間処理した後の灰化残渣の重量からその重量減少分を測定し、該減少分を集束剤によるものとして算出される。しかしながら繊維状充填材が炭素繊維から構成される場合は、炭素繊維自体の重量減少分が加わりやすいことから、JIS R7601の硫酸洗浄法により測定される。
繊維ストランドに集束剤の溶液または水系エマルションを付着させた後、通常乾燥ゾーンに送り、これを乾燥させる。乾燥ゾーンの雰囲気温度は、溶剤を使用した場合は、その溶剤の種類により決まる。該雰囲気温度は、水系エマルションの場合は通常80〜200℃に設定される。乾燥温度が高い場合あるいは乾燥時間が長い場合、乾燥状態は良好となる。しかしながら、熱履歴を多く与えると、集束剤の劣化が起こりストランドの柔軟性が欠けるようになる。その結果、ストランドを切断する時にストランドが割れてチョップドストランドの嵩密度が低くなるとの弊害も起こる。したがって適正な乾燥条件で乾燥することが好ましい。
繊維状充填材は、ストランドの集束性を高めるために、集束剤液乾燥までの工程において加撚されてもよい。例えば炭素繊維の場合には、プリカーサー製造後から加撚することもできる。加撚は、ストランドの集束のみならず、単糸切れによるストランドの毛羽立ちを抑制するためにも有効である。加撚の程度は、2個/m〜30個/mが好ましい。
集束剤の付着処理後、乾燥され、集束処理されたストランドは、切断工程に供される。切断にはロービングカッターの如きロータリー式カッターや、ギロチンカッターの如き常用いられているカッターを用いることができる。
繊維状充填材のチョップドストランドの繊維長は、通常1〜10mmとすることが好ましく、特に3〜8mmとすることが好ましい。また得られたチョップドストランドのかさ密度は、繊維長や材料の真密度によって若干の変動はあるが、300g/L以上が好ましく、350g/L以上がより好ましく、400g/L以上が更に好ましい。かかるかさ密度の好ましい上限は、2,500g/Lであり、更に好ましくは2,000g/Lである。
水系エマルションは、自己乳化タイプのエマルションおよび強制乳化タイプのエマルションのいずれも利用できる。自己乳化タイプのエマルションは、集束剤の分子骨格に親水基を有することにより、乳化剤を用いなくとも乳化分散を可能とするものである。また強制乳化タイプのエマルションは、疎水性の集束剤、特にその有機溶媒溶液を乳化剤の存在下に強制的に乳化するものである。自己乳化タイプのエマルションは強制乳化タイプのエマルションに比べエマルション粒子の粒径が小さく、繊維ストランド内部への浸透性は良好である。しかし自己乳化タイプのエマルションは、乾燥工程において繊維ストランド内でマイグレーションを起こしやすい。しかし、粒径の大きい強制乳化タイプの集束剤エマルションを自己乳化タイプの集束剤エマルションに混合するとマイグレーションを防止し、炭素繊維ストランド中に集束剤が均一に付着しやすい。その結果、炭素繊維チョップドストランドとしたときの集束性が向上する。強制乳化タイプの集束剤と自己乳化タイプの集束剤の重量比は好ましくは10:90〜90:10の範囲、より好ましくは10:90〜50:50の範囲である。
自己乳化タイプの水系エマルションは、集束剤ポリマーを乳化重合法によって合成する直接法、または転相乳化法のいずれも利用できるが、特に転相乳化法が好ましい。転相乳化法は、有機溶剤中または無溶剤で合成されたポリマーを、水媒体に転相乳化して製造する方法であり、広く知られている。尚、かかる水媒体への分散においては、熱溶融したポリマーを水媒体に強制的に分散する方法をとることもできる。
また集束剤を自己乳化タイプに変性するために利用される親水基は、アニオン性、カチオン性、およびノニオン性のいずれであってもよい。アニオン性の親水基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、およびリン酸エステル基などが例示され、特にカルボキシル基およびスルホン酸基が好ましい。かかるアニオン性の親水基は、更に金属イオン(特にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン)、並びにアンモニウムイオンおよびホスホニウムイオンなどの有機オニウムイオンをカウンターイオンとして、中和されていることが好ましい。
カチオン性の親水基としては、アミノ基、イミノ基、三級アミノ基、4級アンモニウム塩基、およびビトラジノ基などが例示される。更にノニオン性の親水基としては、ヒドロキシル基、エーテル基、およびアミド基などが例示される。
また、集束剤を形成するポリマーやプレポリマーに親水基を導入する方法としては、親水基含有モノマーをポリマーまたはプレポリマーの合成時に共重合する方法、並びに親水基含有モノマーをポリマーまたはプレポリマーにグラフト重合する方法が例示される。ポリマーまたはプレポリマーが付加重合型である場合、またはグラフト重合する場合には、かかる親水基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの親水基含有エステル;マレイン酸および該酸の親水基含有エステル;アリル基と親水基とを含有する化合物などが好適に例示される。かかる親水基含有モノマーはカルボキシル基を導入した後アンモニアやアミンなどで中和する方法が一般的であるが、いわゆる界面活性モノマーと称される化合物を直接集束剤と重合することもできる。またポリマーまたはプレポリマーが重縮合型である場合には、無水トリメリット酸および無水コハク酸などの多価カルボン酸化合物が親水基含有モノマーとして例示される。かかるモノマーをポリマーやプレポリマー中のヒドロキシル基と反応させてハーフエステル化し、かかるカルボキシル基をアミンで中和して親水基とする。またスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩の如きスルホン酸塩基含有モノマーも重縮合型ポリマーやプレポリマーにおける親水基含有モノマーとして例示される。
自己乳化タイプの水系エマルションは、乳化剤や有機溶媒を必ずしも必要としないが、その乳化状態の調整のため、両親媒性溶剤や乳化剤を配合することができる。また乳化剤としてはポリマー型乳化剤を利用することができる。
上述のとおり、本発明の好ましい集束剤は、ポリウレタン樹脂である。かかるポリウレタン樹脂は、1液型であっても2液型であってもよい。ポリウレタン樹脂のイソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、並びにヘキサメチレンジアイソシアネートやジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートまたは脂環式イソシアネートが例示される。ポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートポリオールのいずれも利用できる。ポリウレタン樹脂におけるかかるポリオール成分の詳細は、多くの分野において広く知られている。ポリエステルポリオールとしては、例えばエチレングリコールおよびエタノールアミンなどの開始剤を使用してα−カプロラクトンを重合して製造されるもの、並びにフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、およびアゼライン酸などの多官能性カルボン酸をエチレングリコール、ブタンジオール、グリセロール、およびトリメチロールプロパンなどの多価アルコール類でエステル化して製造されるものなどが挙げられる。ポリオール成分として好ましいのは、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールである。かかるポリオールから得られるポリウレタン樹脂は耐熱性に優れ、芳香族ポリカーボネートへの悪影響が少なく相容性にも優れる。
(炭素繊維)
本発明の繊維状充填材として、炭素繊維、または炭素繊維とガラス繊維との組合せが好適であることは上述のとおりである。
本発明の炭素繊維は、例えば、フェノール樹脂、レーヨン、およびポリアクリロニトリルなどの高分子繊維を出発原料とする炭素繊維、並びに石炭系ピッチ、石油系ピッチまたは液晶ピッチなどのピッチ系繊維を出発原料とする炭素繊維のいずれであってもよい。更に芳香族スルホン酸類またはそれらの塩のメチレン型結合による重合体との溶媒よりなる原料組成物を紡糸または成形し、次いで炭化する方法に代表される不融化工程を経ることなく紡糸を行う方法により得られた炭素繊維も使用可能である。
本発明の炭素繊維は、汎用タイプ、中弾性率タイプ、および高弾性率タイプのいずれであってもよい。特にポリアクリロニトリルを出発原料とする高弾性率タイプの炭素繊維が好ましい。かかる炭素繊維は、紡糸したポリアクリロニトリルのプリカーサーを耐炎化処理し、その後炭化処理を行うことにより製造される。必要に応じて、炭化処理後更に黒鉛化処理を行ってもよい。耐炎化処理は、酸化性雰囲気中240〜270℃で行われることが好ましく、炭化処理は不活性ガス雰囲気中450〜1,500℃で行われることが好ましい。また黒鉛化処理は、1,500〜3,300℃の範囲で行われることが好ましい。尚、かかる黒鉛化処理によって必ずしも黒鉛の結晶構造を生ずることは必要とされない。
かかる炭素繊維の製造において、その炭素繊維ストランドに含有される金属元素、特に1価または2価の金属元素の含有量を低減させるため、紡糸したプリカーサーの凝固液を洗浄水として用いた洗浄工程において、洗浄流量、洗浄時間、および洗浄液量に対する洗浄対象物の割合を制御することが好ましい。かかる1価または2価の金属元素の炭素繊維中の好ましい含有量は、総含有量として70〜550ppmである。かかる炭素繊維の詳細は上記特許文献9(特開2004−244531号公報)に記載されている。
更に、炭素繊維は集束剤やマトリックス樹脂との密着性を高めるため、表面酸化処理されることが好ましい。表面酸化処理は、炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)が、好ましくは0.05〜0.2、より好ましくは0.1〜0.19、更に好ましくは0.15〜0.18の範囲となるよう行われることが好ましい。かかる処理の方法は多くの分野で公知であり、特に限定されるものではない。例えば、(1)炭素繊維を酸もしくはアルカリまたはそれらの塩、あるいは酸化性気体により処理する方法、(2)炭素繊維化可能な繊維または炭素繊維を、含酸素化合物を含む不活性ガスの存在下、700℃以上の温度で焼成する方法、および(3)炭素繊維を酸化処理した後、不活性ガスの存在下で熱処理する方法などが好適に例示される。かかる(1)の方法では、炭素繊維に電流を流し、電解酸化を行わせる方法も有効であり、例えば炭素繊維に電流を流しながら炭素繊維を硫酸塩の水溶液中を通過させる方法が好適に例示される。
炭素繊維ストランドのフィラメント(単繊維)の本数は、特に限定されないが、成形加工性等を考慮して3,000本(3K)〜50,000本(50K)であることが好ましい。また、単繊維の平均径(直径)は好ましくは4〜10μm、より好ましくは5〜8μmである。
炭素繊維の再生樹脂組成物中での数平均繊維長は、100〜500μm、好ましくは140〜400μm、特に好ましくは200〜350μmの範囲である。尚、かかる数平均繊維長は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、および薬品による分解等の処理で採取されるカーボンファイバーの残さから光学顕微鏡観察などから画像解析装置により算出される値である。また、かかる値の算出に際しては繊維長以下の長さのものはカウントしない方法による値である。炭素繊維のアスペクト比は、好ましくは15〜100の範囲、より好ましくは20〜60の範囲、更に好ましくは30〜50の範囲である。繊維状充填材のアスペクト比は平均繊維長を平均径で除した値をいう。
(ガラス繊維)
ガラス繊維は、当業者にとって周知のものであり、且つ多数の業者から入手可能である。本発明で使用されるガラス繊維としては、Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成を特に限定するものではなく、場合によりTiO、SO、P等の成分を含有するものであってもよい。但し、Eガラス(無アルカリガラス)がより好ましい。ガラス繊維は、溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定の繊維状にしたものである。かかる場合の急冷および延伸についても特に限定されるものではない。また、断面の形状は真円状の他に、楕円状、マユ状、および三つ葉状などの真円以外の形状であってもよい。更に真円状ガラスファイバーと真円以外の形状のガラスファイバーが混合したものでもよい。
また、ガラス繊維の単繊維の平均径(直径)は特に限定されるものではないが1〜25μmが好ましく、3〜17μmがより好ましい。この範囲の単繊維径を持つガラス繊維は、成形品外観を損なうことなく良好な機械的強度を発現する樹脂組成物を与える。また、ガラス繊維ファイバーの繊維長は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中における数平均繊維長として、60〜500μmが好ましく、100〜400μmがより好ましく、120〜350μmが特に好ましい。尚、かかる数平均繊維長は、上記炭素繊維の場合と同様の方法で計測されるものである。ガラスファイバーのアスペクト比は、好ましくは10〜200の範囲、より好ましくは15〜100の範囲、更に好ましくは20〜50の範囲である。
(熱可塑性硬質ポリマー)
本発明の熱可塑性硬質ポリマーとは、非晶性ポリマーにおいては少なくともそのガラス転移温度が40℃以上であるポリマーをいい、結晶性ポリマーの場合にはその融点が40℃以上であるポリマーをいう。これらのガラス転移温度および融点はJIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求めることが可能である。
本発明の熱可塑性硬質ポリマーとしては、芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリアリレート(非晶性ポリアリレート、液晶性ポリアリレート)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、および環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、MS共重合体、AS共重合体、水添ポリスチレン、およびSMA共重合体などのスチレン系重合体、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル重合体などを挙げることができる。尚、ここでMS共重合体はメチルメタクリートとスチレンから主としてなる共重合体、AS共重合体はアクリロニトリルとスチレンから主としてなる共重合体、SMA共重合体はスチレンと無水マレイン酸(MA)から主としてなる共重合体を指す。
成形品粉砕物には、少なくとも芳香族ポリカーボネートが50〜100重量%含有される。またバージン熱可塑性硬質ポリマーとして2種以上のポリマーを使用することができる。再生樹脂組成物は2種以上の熱可塑性硬質ポリマーを含有してよい。
(芳香族ポリカーボネート)
本発明の再生樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネートを必須成分とする。その中でも特に、再生樹脂組成物中の熱可塑性硬質ポリマーが実質的に芳香族ポリカーボネートからなる態様が好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネートは、従来種々の成形品のために使用されている、それ自体公知のものである。すなわち、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。しかしながら、ビスフェノールAの単独重合体からなるポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性に優れる点で特に好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂の詳細については、WO03/080728号パンフレットに記載されている。
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは13,000〜40,000、より好ましくは15,000〜38,000である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
(有機金属塩系難燃剤)
有機金属塩系難燃剤は、芳香族ポリカーボネートの難燃剤として数多く提案されている。本発明において最も有利に使用される有機金属塩系難燃剤は、含フッ素有機金属塩化合物である。本発明の含フッ素有機金属塩化合物とは、フッ素置換された炭化水素基を有する有機酸からなるアニオン成分と金属イオンからなるカチオン成分からなる金属塩化合物をいう。より好適な具体例としては、フッ素置換有機スルホン酸の金属塩、フッ素置換有機硫酸エステルの金属塩、およびフッ素置換有機リン酸エステルの金属塩が例示される。含フッ素有機金属塩化合物は1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。その中でも好ましいのはフッ素置換有機スルホン酸の金属塩であり、とくに好ましいのはパーフルオロアルキル基を有するスルホン酸の金属塩である。ここでパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18の範囲が好ましく、1〜10の範囲がより好ましく、更に好ましくは1〜8の範囲である。
有機金属塩系難燃剤の金属イオンを構成する金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。したがって好適な有機金属塩系難燃剤は、パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩である。かかるアルカリ金属の中でも、透明性の要求がより高い場合にはルビジウムおよびセシウムが好適である一方、これらは汎用的でなくまた精製もし難いことから、結果的にコストの点で不利となる場合がある。一方、コストや難燃性の点で有利であるがリチウムおよびナトリウムは逆に透明性の点で不利な場合がある。これらを勘案してパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属を使い分けることができるが、いずれの点においても特性のバランスに優れたパーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩が最も好適である。かかるカリウム塩と他のアルカリ金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
かかるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、およびパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。これらの中で特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
上記の含フッ素有機金属塩はイオンクロマトグラフィー法により測定した弗化物イオンの含有量が好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。弗化物イオンの含有量が低いほど良好な難燃性が達成され、また耐湿熱性の向上にも寄与する。弗化物イオンの含有量の下限は実質的に0とすることも可能であるが、精製工数と効果との兼ね合いから実用的には0.2ppm程度が好ましい。かかる弗化物イオンの含有量のパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩は例えば次のように精製される。パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩を、該金属塩の2〜10重量倍のイオン交換水に、40〜90℃(より好適には60〜85℃)の範囲において溶解させる。該パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩は、パーフルオロアルキルスルホン酸をアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物で中和する方法、もしくはパーフルオロアルキルスルホニルフルオライドをアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物で中和する方法により(より好適には後者の方法により)生成される。また該イオン交換水は、特に好適には電気抵抗値が18MΩ・cm以上である水である。金属塩を溶解した液を上記温度下で0.1〜3時間、より好適には0.5〜2.5時間撹拌する。その後該液を0〜40℃、より好適に10〜35℃の範囲に冷却する。冷却により結晶が析出する。析出した結晶をろ過によって取り出す。これにより好適な精製されたパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩が製造される。
その他上記含フッ素有機金属塩化合物以外の有機金属塩系難燃剤としては、フッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩が好適である。該金属塩としては、例えば脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、および芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩等(いずれもフッ素原子を含有しない)が挙げられる。
脂肪族スルホン酸金属塩の好ましい例としては、アルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる(ここで、アルカリ(土類)金属塩の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する)。かかるアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用するアルカンスルホン酸の好ましい例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、メチルブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、へプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用する芳香族スルホン酸としては、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、および芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体などが例示される。これらを1種でもしくは2種以上の組合せで使用することができる。
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の具体例としては、例えばジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムな、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、およびアントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
一方、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしてはメチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、およびステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
また他のアルカリ(土類)金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、例えばサッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。
上記の中でも好ましいフッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩は、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩であり、特にカリウム塩が好適である。
(必要により配合し得る付加的成分について)
本発明における樹脂組成物には、更には必要に応じ、離型剤(例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、シリコーン化合物、およびフッ素オイルなど)、有機金属塩系難燃剤以外の難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、アリールホスフェートオリゴマー、およびシリコーン系難燃剤など)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、および三酸化アンチモンなど)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンに代表される)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物、およびイオウ系酸化防止剤など)、紫外線吸収剤、光安定剤、折れ抑制剤(例えば、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体、および炭素数4〜20のアルキルアルコキシシラン化合物など)、摺動剤(例えばPTFE粒子および高分子量ポリエチレン粒子など)、着色剤(例えばカーボンブラックおよび酸化チタンなどの顔料、並びに染料)、光拡散剤、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、導電剤(例えばカーボンブラック、気相成長炭素繊維、およびカーボンナノチューブなど)、流動改質剤(ポリカプロラクトン、およびスチレン系オリゴマーなど)、無機もしくは有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、および微粒子酸化亜鉛など)、赤外線吸収剤(ATO微粒子、ITO微粒子、ホウ化ランタン微粒子、ホウ化タングステン微粒子、およびフタロシアニン系金属錯体など)、フォトクロミック剤、並びに蛍光増白剤などが配合できる。
(再生樹脂組成物の製造方法について)
本発明の再生樹脂組成物は、少なくともバージンの熱可塑性硬質ポリマーと成形品粉砕物とを溶融混練して製造される。本発明においては特にその溶融混練方法や装置は特に限定されない。溶融混練機として、例えばロールミル、インターナルミキサー(バンバリーミキサーなど)、および押出機などが例示される。しかしながら中でも押出機は、溶融混練とその後の該溶融混練物からの分解物の除去とが連続的に行えることから、本発明の再生樹脂組成物の製造が効率的に実施できる点で好ましい。殊に、本発明の再生樹脂組成物の製造が、少なくとも1個の減圧されたベントを備えてなるベント式押出機を用いて行われ、かつ上記溶融混練物からの分解物の除去は、かかる減圧されたベントで行われることが効率的であり好ましい。
ここで押出機としては、単軸スクリュー型押出機、2軸スクリュー型押出機、多軸スクリュー押出機(3軸以上の押出機)、および遊星ローラ型押出機などを挙げることができる。
単軸スクリュー型押出機としては、フルフライトとダルメージやトーピードなどとを組合せたタイプのものが代表的に挙げられる。その他フィード部分のみ2本のスクリューを有するタイプや、トランスファーミックスなど特殊なタイプも挙げることができる。
2軸スクリュー型押出機(以下単に“2軸押出機”と称する場合がある)の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。ZSKと同様のタイプの具体例としはてTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX(神戸製鋼所(株)製、商品名)などを挙げることができる。その他、FCM(Farrel社製、商品名)、Ko−Kneader(Buss社製、商品名)、およびDSM(Krauss−Maffei社製、商品名)などの溶融混練機も具体例として挙げることができる。更に、上記のスクリュー型押出機としては、円錐型スクリューのタイプや、可塑化工程とメータリング工程が独立したタイプなども挙げることができる。
上記の押出機の中でも混合効率に優れた2軸押出機が好ましく、更にZSKに代表されるタイプがより好ましい。かかるタイプの押出機は高い混練性と優れた溶融樹脂の搬送能力を持つ。更にバージン繊維状充填材および成形品粉砕物を押出機途中から溶融した樹脂中に供給可能であり、良好な特性を有する再生樹脂組成物が得られやすいとの利点をかかるタイプの押出機は有する。
2軸押出機においては、スクリューの回転方向も特に制限はなく同方向回転、および異方向回転の2軸押出機のいずれも使用できる。せん断作用の点で同方向回転の2軸押出機がより好ましい。2軸押出機においては、そのスクリューも適宜選択できる。例えば、形状は1条、2条、および3条のネジスクリューを使用することができる。かかるスクリューの条数はスクリューセグメント全域にわたって同一であっても、異なる条数を有するセグメントの組合せであってもよい。また2軸押出機におけるスクリューの長さ(L)と直径(D)との比(L/D)は、20〜50が好ましく、更に28〜45が好ましい。L/Dが大きい方が供給口を増やすことが容易となり押出の自由度が確保される一方、大きすぎる場合には再生樹脂組成物にかかる熱負荷が高くなり過ぎて熱安定性を低下させる。またL/Dが大きすぎ、かつ成形品粉砕物やバージン繊維状充填材の供給位置が不適切であると、繊維の折れが大きくなり好ましくない。
2軸押出機のスクリュー構成としては各種の仕様が可能である。かかる仕様が任意に変更できる点もZSKタイプの大きな利点である。ニーディングディスクセグメント(またはそれに相当する混練セグメント;例えばローターセグメントなど)から構成された混練ゾーン(以下単に“混練ゾーン”と称する場合がある)は1個所以上備えられる。ニーディングディスクセグメントは各ディスク間の位相、正送り/逆送り/送りなしの比率、セグメント長、並びにクリアランスなどにおいて特に制限されない。しかしながらより好適には、例えば混練ゾーンのセグメント長はスクリューの直径(D)に対して、各混練ゾーンにおいて好ましくは1D〜5Dの範囲であり、更に好ましくは1.5D〜4Dの範囲である。また混練ゾーンは2個所以上設けられていることが好ましい。少なくともバージン繊維状充填材の供給される前および該充填材が供給された後のいずれにも混練ゾーンが設けられているスクリュー構成がより好ましい。更にバージン繊維状充填材および成形品粉砕物の供給される前および該充填材および該粉砕物が供給された後のいずれにも混練ゾーンが設けられているスクリュー構成が更に好ましい。
本発明の再生樹脂組成物を製造するのに用いられるAa成分、B成分、および好適にはAb成分、並びにその他任意の各成分(以下単に“樹脂組成物の各成分”と称する場合がある)の押出機への供給は1箇所または2箇所以上の供給口から行うことができる。押出機への樹脂組成物の各成分の供給においては、これらの成分を予備混合することなく供給することも、または一部または全部を予備混合した後に供給することもできる。予備混合を行う場合には、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などの予備混合装置を用いることができる。また、予備混合においては、必要に応じて該予備混合物を押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒した後、押出機に供給してもよい。
樹脂組成物の各成分を供給するため、各供給口にフィーダー(供給装置)が設置されることが好適である。かかるフィーダーは計量器上に設置され、所定の割合で押出機に原料を供給する。フィーダーは振動式、スクリュー式、翼回転式のものが好ましい。さらに供給口にはフィーダーから排出された各原料を押出機内部へ送り込むための装置であるサイドフィーダーが設置されるものであってもよく、特に第1供給口以外の供給口では設置されることが好ましい。
本発明のバージン繊維状充填材は、第1供給口以外の供給口から溶融樹脂中に供給されることが好ましい。これにより繊維の折れが抑制され良好な特性の再生樹脂組成物が製造される。同様の理由から成形品粉砕物も第1供給口以外の供給口から溶融樹脂中に供給されることが好ましい。但し、かかる成形品粉砕物は元々繊維が折れておりその繊維の折れによる悪影響は、バージン繊維状充填材に比較して少ない。また第1供給口からの樹脂分があまりに少ないことも好ましくない場合がある。よってこれらを勘案して目的に合致するよう成形品粉砕物の供給口は適宜設定されることが好ましい。
減圧されたベントは、少なくともシリンダーバレルに設けられたベントと、該ベントに接続された配管と、該配管に接続された真空ポンプなどの減圧装置により構成される。かかる構成にあっては配管に減圧状態を監視するための真空計を設けること、並びに脱揮した成分により減圧装置が汚染されないようトラップ(より好ましくは冷却方式のトラップ)を設けることが好ましい。またポンプは、真空ポンプの代わりにまたはベントと真空ポンプとの間に水流型減圧ポンプを設けてもよい。
かかる減圧されたベントにおける減圧度は、特に揮発成分の脱揮を十分に行うために好ましくは0.1〜60KPaとされる。減圧度は実質的に殆ど0とすることも可能であるものの、不必要に強力な吸引による減圧度の低下は、製造上効率的とはいえないことから、0.1KPa以上が好ましい。尚、かかる減圧度は、減圧部分の圧力を表し減圧度のない大気圧の場合には98KPaである。またかかる減圧度は、一般の各種真空圧力計によって測定可能であり、かかる真空圧力計は、ベントの孔部分に接続して測定される。
また減圧されたベントは1箇所または2箇所以上設けることができ、複数の減圧されたベントを設ける場合には、かかるベントの減圧度はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また減圧されたベントからの脱揮を行う前に予備脱揮の工程を含んでいてもよい。例えば減圧されていないベント(いわゆるオープンベント)が更に設けられ、かかるオープンベントにおいてある程度の脱揮を行った後、十分に減圧されたベントで脱揮することもできる。また押出機には注入された水を脱揮する目的以外のベントを設けることも可能である。例えば水注入口の前の部分にベントを設けることもできる。
ベントは揮発成分の脱揮が十分に行われれば、その形状および大きさは特に限定されないものの、ベントの大きさは、次の範囲が好ましい。すなわちベントの長さは押出機のバレル内壁面において、スクリューの直径(D)に対して、好ましくは0.1D〜5D、より好ましくは0.5D〜4D、更に好ましくは1D〜3Dの範囲である。ベントの孔の幅は、好ましくは0.1D〜1D、より好ましくは0.15D〜0.6Dの範囲である。
上記押出機の好ましい運転条件は、温度240〜320℃、好ましくは240〜310℃、スクリュー回転数80〜500rpm、好ましくは100〜300rpmである。
また押出原料中に混入した異物等を除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網を挙げることができる。
(再生樹脂組成物のペレット)
上記の如く、押出された再生樹脂組成物は、通常直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。通常ペレタイザーの後工程において設置された分級機によって所定の大きさのペレットが選別される。更に必要に応じて磁力選別機を用いて、再生樹脂組成物製造のための原料中、および得られた再生樹脂組成物のペレット中に不要な金属成分が含まれないかを確認することが好ましい。
(成形品)
本発明の再生樹脂組成物からなる成形品は、通常そのペレットを射出成形して得ることができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また再生樹脂組成物を押出成形し、各種異形押出成形品、シート、およびフィルムなどを製造することもできる。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の再生樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。かように本発明によれば、本発明の再生樹脂組成物を溶融状態として所定の賦形を行う溶融成形して得られた成形品が提供される。
(表面処理)
さらに本発明の再生樹脂組成物から形成された成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、並びに印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常の樹脂成形品に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、塗装、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。
本発明は、再生樹脂組成物およびその成形品に関するものであって、かかる再生樹脂組成物は、環境負荷の低減と改良された耐湿熱性とを両立する。かかる耐湿熱性の改良はバージン原料のみの組成物に比較して優れる。よって繊維状充填材配合組成物では従来消極的であったリサイクル、特にクローズドリサイクルに対して好ましい動機付けを与え、リサイクルの実効を向上させる効果を本発明の樹脂組成物は有する。かかる再生樹脂組成物は、OA機器分野、電気電子機器分野などの各種工業用途に極めて有用である。特に寸法精度や剛性に対して厳しい要求のある光学機器や精密機器などにおいて本発明の再生樹脂組成物は有用である。
本発明の再生樹脂組成物が利用される用途としては、例えばパソコン、ノートパソコン、ゲーム機(家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、パチンコ、およびスロットマシーンなど)、ディスプレー装置(LCD、有機EL、電子ペーパー、プラズマディスプレー、およびプロジェクタなど)、送電部品(誘電コイル式送電装置のハウジングに代表される)が例示される。かかる用途としては、例えばプリンター、コピー機、スキャナーおよびファックス(これらの複合機を含む)が例示される。かかる用途としては、VTRカメラ、光学フィルム式カメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ用レンズユニット、防犯装置、および携帯電話などの精密機器が例示される。特に本発明の再生樹脂組成物は、カメラ鏡筒、デジタルカメラの如きデジタル画像情報処理装置の筐体、カバー、および枠に好適に利用される。
その他更に本発明の再生樹脂組成物は、マッサージ機や高酸素治療器などの医療機器;画像録画機(いわゆるDVDレコーダーなど)、オーディオ機器、および電子楽器などの家庭電器製品;パチンコやスロットマシーンなどの遊技装置;並びに精密なセンサーを搭載する家庭用ロボットなどの部品にも好適なものである。
また本発明の再生樹脂組成物は、各種の車両部品、発電装置(風力発電機のブレードに代表される)、回路基板、集積回路のモールド、光学ディスク基板、ディスクカートリッジ、光カード、ICメモリーカード、電池ハウジング、コネクター、ケーブルカプラー、並びに各種機構部品(ギア、ターンテーブル、ローター、およびネジなど。マイクロマシン用機構部品を含む)に利用可能である。
本発明は、特にクローズドリサイクルを目的とすることから、成形品粉砕物も上記の如き用途の成形品から得られることが好ましい。更に得られた再生樹脂組成物は、同様の用途に利用されることが好ましい。
以上のごとく、本発明の再生樹脂組成物が奏する工業的効果は極めて大である。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
[実施例1〜20および比較例1〜8]
(I)評価項目
(I−1)耐湿熱性
厚み2mmの板状試験片を恒温恒湿試験機(タバイエスペック(株)製プラチナスF)を用いて、温度85℃、相対湿度85%の条件下で合計1000時間処理した。500時間経過時および1000時間経過時において、試験片を取り出し、それらの粘度平均分子量を測定した。かかる測定によりバージン原料のみからなる(即ちリサイクル0回)の組成物とリサイクルが5回行われた組成物との間で湿熱劣化の程度を比較した。
(I−2)曲げ弾性率
ISO178に準拠して曲げ弾性率(MPa)を測定した。試験片形状は、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmであった。なお、圧子の降下速度は2mm/minで行なった。
(I−3)成形収縮率
幅50mm×長さ100mm×厚み4mmの角板を同一の条件で射出成形により成形し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で24時間放置した後、かかる角板寸法を3次元測定機(ミツトヨ(株)製)により測定し、成形収縮率を算出した。
(I−4)燃焼性
UL規格94Vに従い表2〜5に記載した厚みの試験片を用い、燃焼試験を実施した。
(II)再生樹脂組成物の製造
(II−1)バージンペレットの製造
表1記載の配合割合からなる樹脂組成物を以下の要領で作成した。尚、説明は以下の表中の記号にしたがって説明する。表1に記載の成分のうち、繊維状充填材を除いた成分をV型ブレンダーにて混合して混合物を作成した。尚、PC以外の少量の添加剤は、その含有率が10重量%となる予備混合物を、スーパーミキサーを用いて製造した。かかる複数の予備混合物を残りのPCと共にV型ブレンダーで均一に混合した。
スクリュー径30mmのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30XSST)を用いて、V型ブレンダーによる混合物を最後部の第1投入口に供給した。また繊維状充填材をシリンダー途中の第2供給口よりサイドフィーダーを用いて供給した。サイドフィーダー供給口部分は、いずれの投入原料も計量器を用いることにより所定の割合となるようにした。かかる押出機は、第1供給口から第2供給口の間にニーディングディスクによる混練ゾーンがあり、その直後に開放されたベント口が設けられていた。ベント口の長さはスクリュー径(D)に対して約2Dであった。かかるベント口の後にサイドフィーダーが設置され第2供給口から供給された原料が溶融された樹脂中に供給された。サイドフィーダー以後に更にニーディングディスクによる混練ゾーンおよびそれに続くベント口が設けられていた。かかる部分のベント口の長さは約1.5Dであり、その部分では真空ポンプを使用し3KPaの減圧度とした。押出は、シリンダー温度230℃〜280℃(スクリュー根元のバレル〜ダイスまでほぼ均等に上昇)、スクリュー回転数180rpm、および時間当りの吐出量20kgの条件で行った。押出されたストランドを水浴において冷却した後、ペレタイザーで切断しペレット化した。
(II−2)バージン成形品の製造
上記(II−1)で得られたペレットを120℃で6時間、熱風循環式乾燥機を用いて乾燥した。かかる乾燥直後のペレットを射出成形機(東芝機械(株)IS150EN−5Y)を用いて、上記評価項目に必要な成形品を成形した。成形条件はシリンダー温度300℃、および金型温度100℃とした。成形された試験片のうち一部をランダムに抜き取り、かかる抜き取り試験片を上記の評価に供した。
(II−3)バージン成形品の粉砕物の製造
上記(II−2)で得られた成形品のうち、評価に供しなかったものをスプルーおよびランナーを含めて、直径8mmの小孔を多数有する金属製スクリーンを設置した粉砕機((株)朋来鉄工所製SB−210)にて、70kg/hの処理能力で破砕した。
(II−4)リサイクル1回目の再生樹脂組成物の製造
上記(II−3)で得られた成形品粉砕物x重量部とバージン原料y重量部との合計x+y=100重量部を溶融混合することにより、リサイクル1回目の再生樹脂組成物を製造した。かかる場合、リサイクル率がx%であると称する。バージン原料中の各成分の含有割合は、各参考例のバージンペレットの製造における各成分の含有割合と同一とした。したがって、同一の構成成分からなるクローズドリサイクルされた再生樹脂組成物を製造した。成形品粉砕物を繊維状充填材と同じ供給口に供給したこと、並びに実施例3、6、9、12、15および18において減圧度を70kPaとしたことを除き、バージンペレットの製造と同様の押出機および条件でペレットの製造を行った。
(II−5)リサイクル5回目の再生樹脂組成物の製造
上記(II−4)で得られたリサイクル1回目のペレットを、上記(II−2)および(II−3)と同様にして成形および粉砕し、更に上記(II−4)と同様にして再生樹脂組成物のペレットを製造した。同様の操作を計5回繰り返し、リサイクル5回目の再生樹脂組成物からなる成形品を得た。即ち、かかる成形品はリサイクル率x%のリサイクルを5回繰り返した後の再生樹脂組成物である。得られた成形品から、ランダムに抽出された成形品を用いて、再生樹脂組成物の効果を確認した。
上記実施例および比較例で使用した原材料は、下記のとおりである。
(a成分:熱可塑性硬質ポリマー)
PC−1:粘度平均分子量22,500の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製パンライトL−1225WP(商品名))
PC−2:粘度平均分子量19,700の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製パンライトL−1225WX(商品名))
(b成分:繊維状充填材)
CF−1:強制乳化タイプのビスフェノールA型エポキシ樹脂の水系エマルション液とポリウレタン樹脂で集束処理された炭素繊維のチョップドストランド(東邦テナックス(株)製ベスファイト HTA−C6−UA L1(商品名)、繊維直径7μm、繊維長6mm、集束剤付着量2.5重量%)
CF−2:下記の製法で製造されたエポキシ樹脂およびウレタン樹脂で集束処理された炭素繊維
(CF−2の製法)
炭素繊維ストランドの原糸として上記CF−1と同じものを用いた(東邦テナックス(株)製、直径7μm×12,000本フィラメント)。ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート828)をノニオン系界面活性剤(旭電化(株)製ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコール)を用いて濃度40g/lの水系エマルションに調整した。かかるエマルションに炭素繊維ストランドを浸漬させることにより炭素繊維表面にエマルションを付着させた後に乾燥し、エポキシ樹脂の付着量が1.3重量%のストランドを作成した。次に自己乳化タイプの非芳香族ポリウレタンエマルション溶液であるディスパコールU54(バイエル社製)のエマルションに浸漬し、その後120℃の乾燥機にて乾燥させた後、繊維長6mmに切断した。集束剤付着量の合計は2.5重量%であった。
CS:アミノシラン処理の後、自己乳化タイプのポリウレタン樹脂を主体とする集束剤の水系エマルションで集束処理されたガラス繊維(日本電気硝子(株)製ECS−03−T511(商品名)、繊維径13μm、カット長3mm、集束剤付着量0.6重量%)
(c成分:有機金属塩系難燃剤)
C−1:弗化物イオン量40ppmのパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(バイエル社製BayowetC4)
C−2:上記C−1を下記方法により精製処理して得られた弗化物イオン量1ppmのパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩
(C−2の製法)
C−1:100重量部、イオン交換水:400重量部を温度計および撹拌装置を備えたガラスフラスコに仕込んだ後80℃まで昇温し、窒素気流下0.5時間攪拌を続けた後室温(23℃)まで冷却し、析出した結晶を濾過によってとり出した。その結晶をイオン交換水:700重量部により洗浄し、これをさらにメタノール600重量部で洗浄した。続いてイオン交換水600重量部で洗浄後、湿潤パウダーを窒素雰囲気下80℃で20時間熱風乾燥し、得られたパウダーを粉砕ミルを用いて粉砕し、標準篩400番を通過させて目的物を得た。尚、イオン交換水はヤマト科学(株)製オートピュアWQ500型を通して得られた電気抵抗値が18MΩ・cm以上(すなわち電気伝導度が約0.55μS/cm以下)
(その他)
TMP:トリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製TMP(商品名))
PEW:数平均分子量1,510のポリオレフィンワックス(三井化学(株)製:ハイワックス310MP(商品名))
SL:ステアリルステアレートおよびグリセリントリステアレートを主成分とする脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製リケマールSL900)
PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製:ポリフロンMPA FA500)
CB:カーボンブラック(三菱化学(株)製ファーネスブラック#970(商品名))
Figure 0004886218
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上記表2〜5から、本発明の再生樹脂組成物がバージン原料のみからなる樹脂組成物に比較して、良好な耐湿熱性を有し、一方で曲げ弾性率、寸法精度および難燃性に関して、特に大きな低下が認められないことがわかる。またベントでの減圧がほとんどない場合は、十分に減圧された場合に比較して、耐湿熱性の改良効果はやや劣ることがわかる。
[参考例9]
上記70重量部のPC−1、20重量部のCF−1、10重量部のCS、および0.1重量部のTMPからなる樹脂組成物のペレットを、上記(II−1)のバージンペレットの製造と同様の装置および条件で製造した。更にその一部を上記(II−2)および(II−3)のように処理して、成形品粉砕物を得た。かかるペレットおよび粉砕物から発生するガス成分の分析を行った。ガスクロマトグラフ−質量分析(GC/MS)装置として、GC:HP6890型およびMS:HP5973型(共にヒューレット・パッカード社製)を接続したものを使用し、熱処理装置としてJHP−3(日本分析工業製)を使用して、ガス分析を行った。ペレットを温度320℃で10分間熱処理し、発生したガスを分析した。予めCFおよびPC単体の分析を行い、それぞれ発生するガスをCF−1、即ちその集束剤に由来するピークとPC由来のピークとに同定した。ペレットおよび粉砕物から得られたガスのピークを、集束剤に由来する成分、PCに由来する成分、およびそれ以外の成分にわけ、そのサンプルのピーク面積比率を算出した。該比率を[集束剤/PC/その他]とする。
更にガス発生量の絶対値を確認するため、熱重量測定(TGA)をTA−instruments社製のHi−Res TGA2950 Thermogravimetric Analyzerを使用し、N雰囲気下において20℃/minで昇温させ、320℃で25分間保持した。その重量減少量から揮発ガス発生量を確認した。
かかる測定から、ペレットの揮発ガス発生量は0.37重量%、粉砕物の揮発ガス発生量は0.39重量%であることを確認した。一方で、GC/MSの測定からペレットにおける[集束剤/PC/その他]は、49.1/44.9/6であるのに対し、粉砕物における[集束剤/PC/その他]は、55.3/36.1/8.6であることを確認した。即ち、PCに由来する揮発ガス量に対して、集束剤に由来する揮発ガスおよびその他の揮発ガスの割合が大きく増加していた。PC由来分に対する集束剤およびその他分の比率を算出すると、ペレットでは1.23倍であるのに対し、粉砕物では1.77倍となる。したがって、かかる揮発分を加工時に十分に除去することにより、組成物中の集束剤成分を減少可能であることが推察される。
また絶対量においてペレットと粉砕物の揮発ガスの絶対量は大きな相違はないことから、粉砕物において集束剤および他の成分に由来する揮発ガスの絶対量が増加していると考えられる。尚、PCおよび集束剤由来以外のガスとは集束剤およびその分解物が、PCと反応することにより生じたものと推察される。
[実施例21]
上記実施例14、ならびに17のリサイクル5回目の樹脂ペレットを用いて、カメラ用鏡筒を成形した。かかる鏡筒は、外径30.0mm、肉厚1.0mmであり、3点のピンゲートからなるコールドランナー方式の成形であった。いずれもバージンの樹脂ペレットと同等の寸法精度を有し、実用上問題のないものであった。

Claims (11)

  1. 成形品粉砕物を配合した再生樹脂組成物を製造する方法であって、
    (I)バージン熱可塑性硬質ポリマー(Aa成分)、成形品粉砕物(B成分)、および必要に応じてバージン繊維状充填材(Ab成分)を準備する工程(工程−I)、但し該成形品粉砕物(B成分)は、芳香族ポリカーボネート(Ba−1成分)50〜100重量部を含有する熱可塑性硬質ポリマー(Ba成分)100重量部に、集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された繊維状充填剤(Bb−1成分)3〜200重量部が配合されてなる樹脂組成物から形成されている、
    (II)100重量部のバージン熱可塑性硬質ポリマー(Aa成分)を基準として、5〜200重量部の成形品粉砕物(B成分)および0〜200重量部のバージン繊維状充填材(Ab成分)を溶融混練機に供給する工程(工程−II)、並びに
    (III)該溶融混練機に供給された成分を溶融混練し、100重量部の熱可塑性硬質ポリマー(Ca成分)を基準として3〜200重量部の繊維状充填材(Cb成分)を含有してなる再生樹脂組成物を得る工程(工程−III)
    からなることを特徴とする再生樹脂組成物の製造方法。
  2. 上記Ab成分は、100重量部のAa成分を基準として、3〜200重量部である請求項1に記載の再生樹脂組成物の製造方法
  3. 上記Aa成分とB成分との溶融混練は、0.1〜60kPaの減圧下においてなされることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の再生樹脂組成物の製造方法
  4. 上記Aa成分およびBa成分は同一種の熱可塑性硬質ポリマーであり、上記Ab成分およびBb−1成分は同一種の繊維状充填材であり、並びにAa成分に対するBa成分の重量比はAb成分に対するBb−1成分の重量比に実質的に同一であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の再生樹脂組成物の製造方法
  5. 上記集束剤の水系エマルション液を用いて集束処理された繊維状充填剤(Bb−1成分)における集束剤は、その100重量%中50重量%以上のポリウレタン樹脂を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の再生樹脂組成物の製造方法
  6. 上記Bb−1成分の繊維状充填材は、炭素繊維であるか、または30重量%以上の炭素繊維と70重量%以下のガラス繊維との合計100重量%からなる組合せである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の再生樹脂組成物の製造方法
  7. 上記再生樹脂組成物は、更に100重量部の芳香族ポリカーボネート(Aa−1成分)を基準として0.001〜1重量部の有機金属塩系難燃剤(Ac成分)が配合されることにより、および/または上記成形品粉砕物(B成分)において100重量部の芳香族ポリカーボネート(Ba−1成分)を基準として0.001〜1重量部の有機金属塩系難燃剤(Bc成分)が含有されることにより、100重量部の芳香族ポリカーボネート(Ca−1成分)を基準として0.001〜1重量部の有機金属塩系難燃剤(Cc成分)を含有してなる再生樹脂組成物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の再生樹脂組成物の製造方法
  8. 上記Aa成分およびBa成分は同一種の熱可塑性硬質ポリマーであり、上記Ab成分およびBb−1成分は同一種の繊維状充填材であり、上記Ac成分およびBc成分は同一種の有機金属塩系難燃剤であり、Aa成分に対するBa成分の重量比はAb成分に対するBb−1成分の重量比に実質的に同一であり、並びにAa−1成分に対するAc成分の重量比はBa−1成分に対するBc成分の重量比に実質的に同一であることを特徴とする請求項7に記載の再生樹脂組成物の製造方法
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により製造された樹脂組成物。
  10. 上記請求項9に記載の再生樹脂組成物からなる樹脂ペレット。
  11. 上記請求項10の樹脂ペレットを溶融成形して得られた成形品。
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