以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態に係るトナー残量推定システムを含む画像形成装置100を示す概略構成図である。この画像形成装置100は、複写機、プリンタ、ファクシミリなど、トナーを用いて紙等の記録材に画像をプリントする装置であり、特に、交換式のトナーカートリッジが着脱可能に画像形成装置本体に装着されるものである。図1に示される例では、画像形成装置100は、タンデム型のカラー電子写真方式のフルカラー画像形成装置である。ただし、画像形成装置100はモノクロ画像形成装置であっても構わない。
図1において、画像形成装置100は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成する4つのユニット10Y,10M,10C,10Kと、当該4つのユニットに接触しながら循環移動する中間転写ベルト20と、それぞれ各ユニットで形成された各色のトナー像を中間転写ベルト20に1次転写する1次転写ロール5Y,5M,5C,5K(以下、適宜「1次転写ロール5」と総称する)と、中間転写ベルト20上に1次転写されたトナー像を記録材に2次転写する2次転写ロール15と、記録材に転写されたトナー像を加熱および加圧することにより記録材上に定着させる不図示の定着器とを備えている。なお、上記各色のユニット10Y,10M,10C,10K(以下、適宜「ユニット10」と総称する)は、殆ど同じ構成を有する。
図2は、ユニット10の拡大構成図である。図2に示されるように、ユニット10は、感光体ドラム1、帯電器2、および現像器4を備えている。このユニット10では、次のようにトナー像が形成される。すなわち、感光体ドラム1は、不図示のモータにより回転駆動され、帯電器2により所定電位に一様に帯電される。帯電した感光体ドラム1表面には、露光装置3(図1に図示、具体的にはROS:Raster Output Scanner)により画像パターンに応じたレーザ光が照射され、当該画像パターンに応じた静電潜像が形成される。この静電潜像は現像器4によりトナーで現像され、感光体ドラム1表面には上記画像パターンに応じたトナー像が形成される。なお、感光体ドラム1表面に形成されたトナー像は、1次転写ロール5により中間転写ベルト20上に転写され、転写後の感光体ドラム1は不図示のクリーニング装置によって表面の残留トナーが除去される。
現像器4は、現像容器4a、現像ロール4b、および2本のスパイラル状のオーガ4c、4dを備えている。現像容器4aは、トナーおよびキャリアを含有する二成分現像剤を収容する。現像ロール4bは、感光体ドラム1に隣接するように配設され、軸線周りに回転して現像容器4a内のトナーを感光体ドラム1に供給する。2本のオーガ4c、4dは、現像容器4a内の現像剤を攪拌しながら現像ロール4b方向へ搬送する攪拌搬送部材である。
現像器4には、当該現像器4内のトナー残量を検知するトナー残量検知センサとして、現像容器4aの底面近傍における現像ロール4bの反対側に、ATCセンサ6が設置されている。このATCセンサ6は、現像容器4a内の現像剤のトナー濃度(実際には透磁率)を検出し、トナー濃度に応じた電圧値を後述する制御装置30に出力する磁気センサである。
また、現像器4には、トナー搬送機構7を介して、現像器4に補給されるトナーを収容する交換式のトナーカートリッジ8が接続されている。トナー搬送機構7は、トナーカートリッジ8に収容されたトナーを現像器4に搬送するための機構であり、トナーカートリッジ8と現像器4とを連通させるパイプ7aと、このパイプ7aに内蔵された不図示のオーガと、このオーガを駆動するトナーディスペンスモータ7bとを含んで構成されている。また、トナーカートリッジ8が装着される画像形成装置本体側には、トナーカートリッジ8の交換を検知する新旧検知センサ9が設置されている。この新旧検知センサ9は、トナーカートリッジ8の交換を検知すると、それを示す信号を後述する制御装置30に出力する。
図1に戻ると、画像形成装置100は、さらに、画像形成装置100全体を制御する制御装置30を備えている。この制御装置30は、本実施の形態に係るトナー残量推定システムとして機能する。制御装置30は、ここでは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Member)、RAM(Random Access Memory)等が搭載された回路基板であり、その機能は、ROM等の記録媒体に格納されたプログラムがCPUにより実行されることによって実現される。
図3は、制御装置30の機能構成を示すブロック図である。図3において、制御装置30は、トナー搬送制御部31、トナー残量推定部32、トナー残量報知部33、および推定精度判定部34を有する。以下、制御装置30の各機能ブロック31〜34について詳しく説明する。
トナー搬送制御部31は、現像器4のトナー消費に応じてトナー搬送機構7を制御し、トナーカートリッジ8から現像器4へのトナー供給を制御する。具体的には、トナー搬送制御部31は、ATCセンサ6により検知された現像器4内のトナー濃度(トナー残量)に基づいて、トナーディスペンスモータ7bの回転駆動を制御する。
図4は、トナー搬送制御部31の動作手順を示すフローチャートである。図4において、トナー搬送制御部31は、ATCセンサ6の出力電圧値を読み取り(S11)、読み取られた出力電圧値で示されるトナー残量Aと目標トナー残量A0との差分ΔATC(=A0−A)を算出する(S12)。ついで、トナー搬送制御部31は、算出された差分ΔATCからトナーディスペンス時間を算出する(S13)。このとき、差分ΔATCが大きいほど、すなわち現在のトナー残量Aが目標トナー残量A0に対して少ないほど、算出されるトナーディスペンス時間は長くなる。そして、トナー搬送制御部31は、不図示のモータ駆動回路を介して、算出されたトナーディスペンス時間だけトナーディスペンスモータ7bを駆動する(S14)。これにより、トナーディスペンスモータ7bが回転してパイプ7a内のオーガが回転し、トナーディスペンス時間に応じた量のトナーがトナーカートリッジ8から現像器4に供給される。上記ステップS11〜S14は、繰り返し実行される。
トナー残量推定部32は、トナーカートリッジ8内のトナー残量を複数の推定方式で推定する。ここで、トナーカートリッジ8内のトナー残量は、初期のトナー量からトナーカートリッジ8のトナー消費量を減算して得られるので、トナーカートリッジ8内のトナー残量を推定することには、トナーカートリッジ8のトナー消費量を推定することが含まれる。なお、本件明細書では、「トナーカートリッジ8のトナー消費量」とは、トナーカートリッジ8から排出されたトナー量を意味し、現像器4から感光体ドラム1へのトナー供給量を意味する「現像器4のトナー消費量」と区別される。
本実施の形態では、上記複数の推定方式として、トナーディスペンスモータ7bの作動時間の積算値(以下、「トナーディスペンス積算時間」と称す)をトナーカートリッジ8のトナー消費量の推定値として算出するトナーディスペンス積算時間方式と、静電潜像の画像ピクセル数の積算値(以下、「ピクセル積算値」と称す)をトナーカートリッジ8のトナー消費量の推定値として算出するピクセル積算値方式との2つの推定方式が採用される。
トナーディスペンス積算時間方式の考え方は次のとおりである。すなわち、トナーカートリッジ8から排出されるトナー量は、トナーディスペンスモータ7bの回転時間により調節され、この回転時間と比例関係等の相関関係がある。そこで、トナーディスペンス積算時間方式は、この相関関係を利用する。
図5は、トナー残量推定部32のトナーディスペンス積算時間方式に係る動作手順を示すフローチャートである。図5において、トナー残量推定部32は、トナー搬送制御部31の制御信号のモニタ等により、トナーディスペンスモータ7bの回転時間を検知し(S21)、検知された回転時間を累積加算してトナーディスペンス積算時間を算出する(S22)。上記ステップS21〜S22は、繰り返し実行される。
一方、ピクセル積算値方式の考え方は次のとおりである。すなわち、露光装置3は、ビットマップ形式の画像データに基づきレーザをオンオフし、感光体ドラム1表面のうち印字されるべき画素(画像ピクセル)に対応する箇所を除電して、ビットマップ状の静電潜像を形成する。現像器4は、静電潜像のうち除電された箇所にトナーを付着させる。したがって、現像器4から感光体ドラム1に供給されるトナー量は、静電潜像の画像ピクセル数と比例関係等の相関関係がある。そして、トナー搬送制御部31の作用により、現像器4のトナー消費量に応じた量のトナーがトナーカートリッジ8から現像器4に供給されるので、トナーカートリッジ8から排出されるトナー量は、静電潜像の画像ピクセル数と比例関係等の相関関係があると言える。そこで、ピクセル積算値方式では、この相関関係を利用する。
図6は、トナー残量推定部32のピクセル積算値方式に係る動作手順を示すフローチャートである。図6において、トナー残量推定部32は、露光装置3によりレーザ露光される画像ピクセル数をカウントしてピクセルカウント値を得る(S31)。具体的には、トナー残量推定部32は、露光装置3のレーザ露光に用いられる画像データを取得して、当該画像データの画像ピクセル数をカウントしてもよいし、露光装置3によるレーザ露光のオン時間をカウントしてもよい。そして、トナー残量推定部32は、得られたピクセルカウント値を累積加算してピクセル積算値を算出する(S32)。上記ステップS31〜S32は、繰り返し実行される。なお、上記画像データには、ADC(Auto Density Control)パッチなどと呼ばれる濃度制御用のトナーパッチ、レジコンパターンなどと呼ばれる色ずれ検出用パターン、潤滑剤として感光体ドラム1上に形成されるトナーバンドなどの画像データも含まれる。
ところで、トナーカートリッジ8が新品に交換された場合には、トナーカートリッジ8のトナー残量は初期のトナー量となる。したがって、この場合には、各推定方式によるトナーカートリッジ8のトナー消費量(トナー残量)の推定値は、初期値にクリアされる必要がある。
図7は、トナー残量推定部32の推定値クリアに係る動作手順を示すフローチャートである。図7において、トナー残量推定部32は、新旧検知センサ9によりトナーカートリッジ8の新品への交換が検知されるまで待機し(S41:NO)、新品に交換されたことが検知されると(S41:YES)、トナー残量推定部32は、トナーディスペンス積算時間およびピクセル積算値をゼロにクリアする。上記ステップS41〜42は、繰り返し実行される。
トナー残量報知部33は、トナー残量推定部32により特定の推定方式で推定されたトナー残量を報知する。ここで、トナー残量報知部33の報知に採用される特定の推定方式は、後述する推定精度判定部34によって最も推定精度が高いと特定された推定方式である。ただし、推定精度判定部34による推定方式の特定には、少なくとも1本のトナーカートリッジ8の消費が必要である。このため、トナーカートリッジ8が消費される前、例えば初回のトナーカートリッジ8の使用時には、トナー残量報知部33は、他の方法で決められた特定の推定方式(例えば工場出荷時に設定された推定方式やユーザやサービスエンジニアによって設定された推定方式)を採用する。
トナー残量報知部33は、トナー残量を報知する態様として、トナーカートリッジ8内のトナー残量を示す適宜の情報を適宜の報知先(ユーザや保守センター等)に報知することができるが、本実施の形態では、トナー残量を25%刻みで画像形成装置100の不図示のUI上に表示させるとともに、推定トナー残量が空に近い所定トナー残量に達したときに、トナーカートリッジ8が空に近い状態(プレニアエンプティ状態という)に応じたメッセージをUI上に表示させる。
また、トナー残量報知部33は、ATCセンサ6により検知される現像器4のトナー残量が空に近い所定トナー残量に達したとき、現像器4が空に近い状態(ニアエンプティ状態という)に応じたメッセージをUI上に表示させる。
また、トナー残量報知部33は、ATCセンサ6により検知される現像器4のトナー残量が空に近い所定トナー残量に達した後、さらに所定量のトナーが消費されると、例えば所定枚数のプリントまたは所定画像ピクセル数の印字が行われると、現像器4が略空状態(エンプティ状態という)に応じたメッセージをUI上に表示させるとともに、プリントを禁止する。
図8は、トナーディスペンス積算時間方式が採用される場合におけるトナー残量報知部33の動作手順を示すフローチャートである。図8において、トナー残量報知部33は、エンプティ状態にあるか否か、具体的にはATCセンサ6により検知される現像器4のトナー残量が空に近い所定トナー残量に達した後、所定枚数のプリントが行われたか否かを判断する(S51)。
そして、エンプティ状態にある、すなわち現像器4のトナー残量が所定トナー残量に達した後に所定枚数のプリントが行われたと判断された場合には(S51:YES)、エンプティ状態に応じたメッセージとして、トナーが空でありプリントが不可能である旨のメッセージをUI上に表示させるとともに、プリントを禁止する(S52)。一方、そうでない場合には(S51:NO)、ニアエンプティ状態にあるか否か、具体的にはATCセンサ6により検知される現像器4のトナー残量が空に近い所定トナー残量以下であるか否かを判断する(S53)。
そして、ニアエンプティ状態にある、すなわち現像器4のトナー残量が所定トナー残量以下であると判断された場合には(S53:YES)、ニアエンプティ状態に応じたメッセージとして、0%のインジケータ表示およびトナーカートリッジ8の交換を促すメッセージ(トナー交換表示)をUI上に表示させる(S54)。一方、そうでない場合には(S53:NO)、トナーディスペンス積算時間が75%積算値未満であるか否かを判断する(S55)。ここで、75%積算値とは、トナーカートリッジ8内のトナー残量が初期(満杯状態)の75%であると推定されるトナーディスペンス積算時間であり、予め設定されている値である。例えば、トナーディスペンス積算時間Tだけトナーディスペンスモータ7bが回転するとトナーカートリッジ8が空状態になるとする場合、75%積算値は(0.25×T)に設定される。これは、以下に示される50%積算値および25%積算値についても同様である。
75%積算値未満であると判断された場合には(S55:YES)、100%のインジケータ表示をUI上に表示させる(S56)。そうでない場合には(S55:NO)、トナーディスペンス積算時間が50%積算値未満であるか否かを判断する(S57)。
50%積算値未満であると判断された場合には(S57:YES)、75%のインジケータ表示をUI上に表示させる(S58)。そうでない場合には(S57:NO)、トナーディスペンス積算時間が25%積算値未満であるか否かを判断する(S59)。
25%積算値未満であると判断された場合には(S59:YES)、50%のインジケータ表示をUI上に表示させる(S60)。そうでない場合には(S59:NO)、25%のインジケータ表示をUI上に表示させ(S61)、さらにプレニアエンプティ状態にあるか否か、具体的にはトナーディスペンス積算時間がプレニアエンプティ閾値Tpnを超えているか否かを判断する(S62)。そして、プレニアエンプティ状態にある、すなわちプレニアエンプティ閾値Tpnを超えていると判断すると(S62:YES)、プレニアエンプティ状態に応じたメッセージとして、予備のトナーカートリッジ8の準備を促すメッセージ(予備トナー準備表示)をUI上に表示させる(S63)。ここで、プレニアエンプティ閾値Tpnとは、トナー残量が空に近い所定トナー残量であると推定されるトナーディスペンス積算時間であり、予め設定されている値である。プレニアエンプティ閾値Tpnは、(0.75×T)<Tpn<Tの範囲内で設定される。上記ステップS51〜S63は、繰り返し実行される。
図9は、ピクセル積算値方式が採用される場合におけるトナー残量報知部33の動作手順を示すフローチャートである。図9において、ステップS75,S77,S79,S82以外のステップは、図8の対応するステップと同様である。そこで、図9については、ステップS75,S77,S79,S82のみについて説明する。
ステップS75,S77,S79では、トナー残量報知部33は、それぞれピクセル積算値が75%積算値,50%積算値,25%積算値未満であるか否かを判断する。ここでの75%積算値とは、トナー残量が初期(満杯状態)の75%であると推定されるピクセル積算値であり、予め設定されている値である。例えば、ピクセル積算値Pだけ印字されるとトナーカートリッジ8が空状態になるとする場合、75%積算値は(0.25×P)に設定される。これは以下の50%積算値および25%積算値についても同様である。
ステップS82では、トナー残量報知部33は、プレニアエンプティ状態にあるか否かを判断するため、ピクセル積算値がプレニアエンプティ閾値Ppnを超えているか否かを判断する。ここでのプレニアエンプティ閾値Ppnとは、トナー残量が空に近い所定トナー残量であると推定されるピクセル積算値であり、予め設定されている値である。ここでのプレニアエンプティ閾値Ppnは、(0.75×P)<Ppn<Pの範囲内で設定される。
推定精度判定部34は、トナー残量検知センサの出力に基づき、上記各推定方式による推定結果の精度を判定して、最も精度が高い推定方式を特定する。この推定精度判定部34による精度判定の概略は次のとおりである。
すなわち、トナーカートリッジ8が空状態になると、トナーディスペンスモータ7bを回しても現像器4内のトナー残量は増加しない。そこで、精度判定の一態様では、トナーディスペンスモータ7bを回しても現像器4内のトナー残量が増加しなくなった時点を、トナーカートリッジ8が空状態になったタイミングとして、トナー残量検知センサの出力に基づいて検知する。そして、当該検知タイミングに基づいて各推定方式による推定結果の精度を判定する。例えば、検知タイミングと、ある推定方式によりトナーカートリッジ8の空状態が推定された時点との間のプリント枚数や画像ピクセル数を推定誤差として求め、その推定方式の精度を判定する。あるいは、検知タイミングにおいてある推定方式により推定されるトナー残量を推定誤差として求め、その推定方式の精度を判定する。
また、トナーカートリッジ8が空状態になると、現像器4内のトナー残量は、トナーディスペンスモータ7bを回しても増加せず、プリントが行われる毎に減少していく。そして、トナーカートリッジ8が空状態になった後、所定量のトナーが消費されると、トナーカートリッジ8が空でなければ到達しない所定レベルまでトナー残量が減少する。そこで、精度判定の別の一態様では、上記所定レベルまでトナー残量が減少した時点を、トナーカートリッジ8が空状態になった後に所定量のトナーが消費されたタイミングとして、トナー残量検知センサの出力に基づいて検知する。そして、上記検知タイミングに基づいて各推定方式による推定結果の精度を判定する。例えば、検知タイミングとそれ以前のプリント履歴とに基づいてトナーカートリッジ8が空または空に近い所定トナー残量となった時点を算出し、算出された時点と、ある推定方式により上記所定トナー残量が推定された時点との間のプリント枚数や画像ピクセル数を推定誤差として求め、その推定方式の精度を判定する。あるいは、ある推定方式によりある時点でトナーカートリッジ8の空または空に近い所定トナー残量が推定された場合に、当該時点におけるトナー残量を、上記検知タイミングとそれ以前のプリント履歴とに基づいて算出し、算出されたトナー残量と上記所定トナー残量との差を推定誤差として求め、当該推定方式の精度を判定する。
また、トナーカートリッジ8のトナー残量が空状態近くまで少なくなってくると、単位トナーディスペンス時間当たりの現像器4へのトナー供給量が減少してくる。そこで、精度判定の別の一態様では、単位トナーディスペンス時間当たりの現像器4へのトナー供給量が所定閾値以下になった時点を、トナーカートリッジ8のトナー残量が空に近い所定量に達したタイミングとして、トナー残量検知センサの出力に基づいて検知する。そして、当該検知タイミングに基づいて精度を判定する。
また、トナーカートリッジ8のトナー残量が空に近い所定量まで少なくなると、単位トナーディスペンス時間当たりの現像器4へのトナー供給量が減少することにより、現像器4のトナー残量が所定レベルまで減少する。そこで、精度判定の別の一態様では、上記所定レベルまでトナー残量が減少した時点を、トナーカートリッジ8のトナー残量が空に近い所定量に達したタイミングとして、トナー残量検知センサの出力に基づいて検知する。そして、当該検知タイミングに基づいて精度を判定する。
なお、推定精度判定部34による精度の判定は、上記態様に限定されるわけではなく、上記態様と同様または類似の考え方に基づく他の態様により実現されてもよい。
本実施の形態においては、推定精度判定部34は、複数の推定方式のそれぞれについて、当該推定方式により推定されるトナーカートリッジ8内のトナー残量が空に近い所定トナー残量に達した時点(すなわちプレニアエンプティ状態と判断された時点)から、ATCセンサ6により検知される現像器4内のトナー残量が空に近い所定トナー残量に達した時点(すなわちニアエンプティ状態と判断された時点)までの現像器4のトナー消費量を算出し、算出されたトナー消費量と目標トナー消費量との差を推定誤差として、精度を判定する。なお、ここでは、A4サイズにエリアカバレッジ(印字率)5%でプリントしたときのプリント枚数によりトナー消費量を表現する。
図10は、推定精度判定部34の動作手順を示すフローチャートである。図10において、推定精度判定部34は、ATCセンサ6によりニアエンプティ状態が検知されると、トナーディスペンス積算時間方式によりプレニアエンプティ判定された時点(すなわちトナーディスペンス積算時間がプレニアエンプティ閾値Tpnに達した時点)からニアエンプティ状態が検知された時点までの換算PV値P1を、当該期間におけるプリント実績に基づいて算出する(S91)。ここで、換算PV値とは、実際のプリント枚数を、プリント毎の記録材サイズやエリアカバレッジなどに基づいて、A4サイズにエリアカバレッジ5%でプリントしたときのプリント枚数に換算して得られるプリント枚数である。また、推定精度判定部34は、ピクセル積算値方式によりプレニアエンプティ判定された時点(すなわちピクセル積算値がプレニアエンプティ閾値Ppnに達した時点)からニアエンプティ状態が検知された時点までの換算PV値P2を、当該期間におけるプリント実績に基づいて算出する(S92)。
そして、推定精度判定部34は、換算PV値P1および換算PV値P2のうち、どちらが予め設定された目標PV値(ここでは2.5KPV)に近いかを判断し(S93)、換算PV値P1の方が近い場合には(S93:P1)、最も精度が高い推定方式としてトナーディスペンス積算時間方式を特定し(S94)、換算PV値P2の方が近い場合には(S93:P2)、最も精度が高い推定方式としてピクセル積算値方式を特定する(S95)。なお、ここで特定された推定方式は、次回のトナー残量報知用の推定方式に採用されることとなる。すなわち、トナーカートリッジ8が新品に交換された後、新たなトナーカートリッジ8については、トナー残量報知部33は、上記のとおり推定精度判定部34により特定された推定方式をトナー残量報知用の特定の推定方式として採用する。
以上、機能ブロック31〜34のそれぞれについて詳しく説明したが、以下、制御装置30全体の動作について簡単に説明する。制御装置30は、複数の推定方式によりトナーカートリッジ8内のトナー残量を推定し、複数の推定方式のうち特定の推定方式により推定されたトナー残量を報知する。そして、制御装置30は、ATCセンサ6の出力に基づきニアエンプティ状態を検知した場合に、どの推定方式が最も精度良く推定できたかによって次回の推定方式を決定する。すなわち、複数の推定方式による推定結果の精度を判定し、最も精度が高いものを次回の推定方式に採用する。
以上のとおり、本実施の形態では、トナーカートリッジ内のトナー残量を複数の推定方式で推定し、現像器のトナー残量検知センサの出力に基づき、各推定方式による推定結果の精度を判定して最も精度が高い推定方式を特定し、特定された推定方式をトナー残量報知用の推定方式として採用する。このため、本実施の形態によれば、複数の推定方式のうち、最も推定精度が高い推定方式を用いてトナー残量の報知を行うことができ、トナーカートリッジ内のトナー残量をより正確に報知することが可能となる。
具体的には、トナーディスペンスモータの単位作動時間当たりのトナーカートリッジから現像器へのトナー供給量や単位画像ピクセル当たりのトナー消費量は、ユーザによる装置の使用状況(使用頻度、白黒/カラー比率、紙種や用紙サイズの使用比率、ジョブ平均ページ数、ページ当たり平均ピクセルカウント数)や環境温湿度などによってバラつく。このため、トナー残量の推定の精度は、ユーザによる装置の使用状況や環境温湿度の影響を受ける。本実施の形態によれば、これらの影響を踏まえて最適な推定方式をトナー残量の報知に使用することができる。
なお、上記実施の形態では、トナー残量の推定方式として、トナーディスペンス積算時間方式とピクセル積算値方式とを例示したが、累積プリント枚数に基づいてトナー残量を推定する方式など、他の推定方式も採用可能である。
また、上記実施の形態では、いわゆる2成分現像方式を例にとって説明したが、本発明はいわゆる1成分現像方式についても同様に適用可能である。また、トナー残量検知センサは、磁気センサに限られず、ピエゾ式センサ等、他のセンサであってもよい。
[第2の実施の形態]
図11は、本実施の形態に係るトナー残量推定システムを含む画像形成システム1000の概略構成図である。以下、図11に従って画像形成システム1000について説明するが、上記第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を用い、説明を省略する。また、説明の便宜上、トナーディスペンス積算時間方式、ピクセル積算値方式をそれぞれ第1推定方式、第2推定方式と呼ぶこととする。
図11において、画像形成システム1000は、複数台の画像形成装置100A,100B,100Cと、これらとインターネットなどの適宜の通信回線を介して接続されたサーバ200とを含んで構成されている。
画像形成装置100A,100B,100Cは、上記第1の実施の形態に係る画像形成装置100と殆ど同じものであるが、制御装置40の機能が異なっている。なお、以下の説明では、画像形成装置100A,100B,100Cを適宜「画像形成装置100」と総称する。
サーバ200は、各画像形成装置100からトナー残量の推定結果や使用状況を取得して各画像形成装置100に適した推定方式を決定するサーバであり、例えば画像形成装置100の製造者や販売者の保守センターに設置される。
図12は、制御装置40およびサーバ200の機能構成を示すブロック図である。以下、同図に従って制御装置40およびサーバ200について説明する。
図12において、制御装置40は、トナー搬送制御部41、トナー残量推定部42、およびトナー残量報知部43を有する。これらのうちトナー搬送制御部41は、上記トナー搬送制御部31と同様のものである。
トナー残量推定部42は、トナーカートリッジ8内のトナー残量を複数の推定方式で推定するほか、精度判定用情報および使用状況情報をサーバ200に送る。ここで、精度判定用情報は、各推定方式による推定結果の精度を判定するために用いられる情報であり、本実施の形態では、第1推定方式によるプレニアエンプティ判定時のプリント枚数、第2の推定方式によるプレニアエンプティ判定時のプリント枚数、およびニアエンプティ検知時のプリント枚数を含む。使用状況情報は、画像形成装置100の使用状況を示す情報であり、例えば、使用頻度、白黒/カラー比率、紙種や用紙サイズの使用比率、ジョブ平均ページ数、ページ当たり平均ピクセルカウント値、環境温湿度などである。上記精度判定用情報および使用状況情報は、それぞれ適宜のタイミングでサーバ200に送られればよいが、本実施の形態では、トナー残量推定部42は、ニアエンプティ状態が検知された場合に、精度判定用情報および使用状況情報を一緒に、不図示の通信インタフェースを介してサーバ200に送る。
トナー残量報知部43は、トナー残量推定部42により特定の推定方式で推定されたトナー残量を報知する。本実施の形態では、トナー残量の報知に採用される特定の推定方式は、後述するとおりサーバ200によって決められる。ただし、サーバ200により決定される前は、他の方法(例えば工場出荷時の設定やユーザ設定など)で決められてもよい。なお、推定精度判定部は、本実施の形態では省略可能である。
サーバ200は、情報収集部201、推定精度判定部202、および推定方式決定部203を有する。
情報収集部201は、各画像形成装置100から精度判定用情報および使用状況情報を受け取り、受け取った情報をデータベースに格納する。例えば、情報収集部201は、画像形成装置100Aから図13(A)に示される情報を受け取り、画像形成装置100Bから図13(B)に示される情報を受け取ると、これらの情報を図13(C)のようにデータベースに格納する。
推定精度判定部202は、情報収集部201のデータベースを参照して、各画像形成装置100について、各推定方式による推定結果の精度を判定する。具体的には、推定精度判定部202は、精度判定用情報に基づき、各推定方式について、プレニアエンプティ判定時からニアエンプティ検知時までのプリント数を算出し、算出されたプリント数と予め設定された目標プリント数との差を推定誤差として求める。
推定方式決定部203は、推定精度判定部202により判定された各画像形成装置100についての各推定方式の精度と、情報収集部201に保持されている各画像形成装置100の使用状況情報とに基づき、各推定方式の精度と使用状況との相関関係を求め、当該相関関係に基づいて画像形成装置100毎にその使用状況に適した推定方式を決定する。分かり易い例を挙げると、推定方式決定部203は、ジョブ平均ページ数と第1推定方式の精度との関係式f1およびジョブ平均ページ数と第2推定方式の精度との関係式f2を求める。そして、関係式f1およびf2を用いて、対象となる画像形成装置100のジョブ平均ページ数から第1推定方式および第2推定方式のそれぞれの精度を算出し、精度が高い方の推定方式を使用状況に適した推定方式として決定する。
また、推定方式決定部203は、画像形成装置100毎に決定された推定方式を各画像形成装置100に通知する。そして、この通知に従って、各画像形成装置100のトナー残量報知部43は、推定方式決定部203により決定された推定方式をトナー残量報知用の特定の推定方式として採用する。
以上、制御装置40およびサーバ200の各機能ブロックについて説明したが、以下、画像形成システム1000全体の動作について簡単に説明する。各画像形成装置100は、複数の推定方式によりトナーカートリッジ8内のトナー残量を推定し、複数の推定方式のうち特定の推定方式により推定されたトナー残量を報知する。そして、各画像形成装置100は、ATCセンサ6の出力に基づきニアエンプティ状態を検知した場合、精度判定用情報および使用状況情報をサーバ200に送信する。
サーバ200は、各画像形成装置100から精度判定用情報および使用状況情報を受信して保持する。そして、サーバ200は、収集された各精度判定用情報に基づき各推定方式の精度を判定し、収集された各使用状況情報に基づき各推定方式の精度と使用状況との相関関係を求め、当該相関関係を用いて画像形成装置100毎にその使用状況に応じた最適な推定方式を決定する。そして、サーバ200は、決定された推定方式を各画像形成装置100に指示する。
各画像形成装置100は、サーバ200から上記指示を受けると、当該指示に従ってトナー残量の報知に用いられる推定方式を切り替える。
以上のとおり、本実施の形態では、複数の画像形成装置から各推定方式の推定結果と使用状況とを収集し、収集された情報に基づいて各推定方式の精度と使用状況との相関関係を求め、当該相関関係に基づいて画像形成装置毎にその使用状況に適した推定方式を決定し、決定された推定方式を各画像形成装置のトナー残量報知用の推定方式に採用する。このため、本実施の形態によれば、複数の画像形成装置から収集される多くの情報を用いて各推定方式の精度と使用状況との相関関係を求めることができ、画像形成装置毎にその使用状況に応じた適切な推定方式を、トナー残量報知用の推定方式として決定することができる。また、1本のトナーカートリッジで例えば数万枚のプリントが可能であることから、単独の画像形成装置でのトナーカートリッジの交換回数および推定精度の判定回数は限られる。これに対し、本実施の形態では、複数の画像形成装置から各推定方式による推定結果を収集し、各推定方式の精度を判定するので、より多くの情報に基づく最適な推定方式を早期に採用することができる。また、上述したとおり、トナー残量の推定の精度は、ユーザによる装置の使用状況や環境温湿度の影響を受けるところ、本実施の形態によれば、これらの影響を踏まえて最適な推定方式をトナー残量報知に採用することができる。
なお、上記の実施の形態では、画像形成装置100側にトナー残量推定部32およびトナー残量報知部33が設けられているが、これらはサーバ200側に設けられてもよい。
[第3の実施の形態]
本実施の形態に係る画像形成装置300は、上記第1の実施の形態に係る画像形成装置100と殆ど同じであるが、ユーザによるトナーカートリッジ8の交換タイミングに基づき、トナーカートリッジ8の交換を促す報知タイミングを補正することを特徴とするものである。具体的には、制御装置50の機能が次のように異なる。
本実施の形態では、制御装置50は、トナーカートリッジ8内のトナー残量の検知値または推定値に基づき、所定の報知タイミングでトナーカートリッジ8の交換を促す報知をユーザに対して行う。ここで、トナー残量の検知値または推定値としては、トナーディスペンス積算時間、ピクセル積算値、累積プリント枚数、あるいはATCセンサ6の出力値、またはこれらの組み合わせ等に基づく推定値や、トナーカートリッジ8内のトナー残量を検知する不図示のセンサに基づく検知値が挙げられる。すなわち、本実施の形態では、トナーカートリッジ8内のトナー残量はどのように検知または推定されてもよい。なお、以下の説明では、検知値および推定値を適宜「推定値」と総称する。
制御装置50は、交換を促す報知を行った後、所定の目標交換タイミング前にトナーカートリッジ8が交換された場合には、上記報知タイミングを遅らせる方向に補正し、目標交換タイミング後にトナーカートリッジ8が交換された場合には、上記報知タイミングを早める方向に補正する。これは、目標より早くまたは遅く交換を行うというユーザの特性を補正して、ユーザによる交換タイミングを目標交換タイミングに近付けようというものである。このように補正された報知タイミングは、次回の報知に使用される。すなわち、あるトナーカートリッジ8の交換タイミングに基づいて補正された報知タイミングは、そのトナーカートリッジ8の次のトナーカートリッジ8について使用される。
より具体的な態様を示すと、制御装置50は、図14に示されるように、トナー残量の推定値が所定の第1判定閾値に達した時点で、トナーカートリッジ8の交換を促すメッセージを不図示のUI上に表示させる。また、トナー残量の推定値が所定の第2判定閾値に達した時点で、トナーが空である旨のメッセージを表示させてプリントを禁止する。そして、第1判定閾値と第2判定閾値との間に目標交換値が設定されており、制御装置50は、推定値が目標交換値に達する前に(例えば時点t1で)交換された場合には、第1判定閾値を小さくする方向に補正し、推定値が目標交換値を下回った後に(例えば時点t2で)交換された場合には、第1判定閾値を大きくする方向に補正する。このとき、制御装置50は、交換時の推定値と目標交換値との差に応じて補正量を決めるとよい。例えば、両者の差に係数α(0<α≦1)を乗じた値を補正量にするとよい。
本実施の形態の好適な態様では、制御装置50は、今回のトナーカートリッジ8におけるユーザの使用状況と前回のトナーカートリッジ8におけるユーザの使用状況との差が所定範囲内でない場合には、今回のトナーカートリッジ8の報知タイミングについて、前回の交換タイミングに基づく補正を行わない。すなわち、今回と前回とで使用状況が異なる場合には、ユーザが異なる可能性が高いものとして、前回の交換タイミングに基づく報知タイミングの補正は行わない。上記の使用状況としては、使用頻度、白黒/カラー比率、紙種や用紙サイズの使用比率、ジョブ平均ページ数、あるいはページ当たり平均ピクセルカウント数、またはこれらの組み合わせ等が挙げられ、差が所定範囲内にあるか否かの判断は適宜の方法で行うことができる。
以上のとおり、本実施の形態では、交換を促す報知を行った後、目標交換タイミング前にトナーカートリッジが交換された場合には、報知タイミングを遅らせる方向に補正し、目標交換タイミング後に交換された場合には、報知タイミングを早める方向に補正する。このため、本実施の形態によれば、ユーザの交換タイミングに関する特性を補正し、交換タイミングを目標交換タイミングに近付けることができる。
また、本実施の形態では、今回のトナーカートリッジにおける使用状況と前回のトナーカートリッジにおける使用状況との差が所定以上である場合には、前回の交換タイミングに基づく今回の報知タイミングの補正を行わない。このため、本実施の形態によれば、前回と今回とでユーザが異なる場合に、不適切な補正を行ってしまうことを回避することができる。
[第4の実施の形態]
本実施の形態に係る画像形成装置400は、上記第1の実施の形態に係る画像形成装置100と殆ど同じであるが、ユーザによるトナーカートリッジ8の交換タイミングに基づき、プレニアエンプティ状態に応じたメッセージの表示(以下、プレニアエンプティ表示という)のタイミングおよびニアエンプティ状態に応じたメッセージの表示(以下、ニアエンプティ表示という)のタイミングを補正することを特徴とするものである。具体的には、制御装置60の機能が次のように異なる。
図15は、制御装置60の機能構成を示すブロック図である。図15において、制御装置60は、トナー搬送制御部61、トナー残量推定部62、およびトナー残量報知部63を有する。これらのうちトナー搬送制御部61は、上記トナー搬送制御部31と同様のものである。
トナー残量推定部62は、上記トナー残量推定部32と同様、トナーカートリッジ8内のトナー残量を複数の推定方式で推定するものである。なお、以下の説明では、トナーディスペンス積算時間およびピクセル積算値を、それぞれ履歴データAおよび履歴データBと称する。
トナー残量報知部63は、上記トナー残量報知部33と同様、トナー残量推定部62にて特定の推定方式により推定されるトナー残量が空に近い所定トナー残量に達すると(すなわちプレニアエンプティ状態に達すると)、プレニアエンプティ表示を行い、ATCセンサ6により検知されるトナー残量が空に近い所定トナー残量に達すると(すなわちニアエンプティ状態に達すると)、ニアエンプティ表示を行い、ニアエンプティ状態から更に所定枚数のプリントが行われると(すなわちエンプティ状態に達すると)、エンプティ状態に応じたメッセージの表示(以下、エンプティ表示という)を行う。
本実施の形態では、トナー残量報知部63は、ユーザによるトナーカートリッジ8の交換タイミングに基づき、次回のプレニアエンプティ表示およびニアエンプティ表示のタイミングを補正する。以下、当該補正について、場合を分けて説明する。
(1)プレニアエンプティ表示中にトナー交換された場合
図16は、プレニアエンプティ表示中にトナー交換された場合における補正を説明するための図である。このケースでは、プレニアエンプティ表示のタイミングが早すぎたものとして、トナーカートリッジ8の使用期間を長くするように、プレニアエンプティ表示のタイミングを遅らせる方向に補正する。この補正は、プレニアエンプティ閾値を単純に大きくする補正により行われてもよいが、ここでは次のように行われる。
すなわち、トナー残量報知部63は、交換タイミングでの各履歴データのうち、ニアエンプティ状態での履歴データの設計値に対する割合が最も小さい履歴データを特定する。図16では、履歴データAについての割合が110%、履歴データBについての割合が90%であるので、履歴データBが特定される。そして、トナー残量報知部63は、次回のプレニアエンプティ表示用の推定方式として、履歴データBを用いる推定方式(すなわちピクセル積算値方式)を選択する。
(2)ニアエンプティ表示中にトナー交換された場合
図17は、ニアエンプティ表示中にトナー交換された場合における補正を説明するための図である。このケースでは、ニアエンプティ表示のタイミングが早すぎたものとして、トナーカートリッジ8の使用期間を長くするように、ニアエンプティ表示のタイミングを遅らせる方向に補正する。この補正は、ニアエンプティ状態を検知するための所定トナー残量(実際にはATCセンサ6の出力に対応する閾値)を単純に小さくする補正により行われてもよいが、ここでは次のように行われる。
すなわち、トナー残量報知部63は、ニアエンプティ状態〜交換タイミング間での各履歴データの変化量のうち、ニアエンプティ状態〜目標交換タイミング間での各履歴データの変化量の設計値に対する割合が最も小さい履歴データを特定する。図17では、履歴データAについての割合が100%、履歴データBについての割合が70%であるので、履歴データBが特定される。そして、トナー残量報知部63は、ニアエンプティ状態〜目標交換タイミング間での履歴データBの変化量の設計値と、ニアエンプティ状態〜交換タイミング間の履歴データBの変化量との差分ΔBを算出する。そして、トナー残量報知部63は、次回、ATCセンサ6によりニアエンプティ状態が検知された後、その時点からの履歴データBの変化量が差分ΔBに達したタイミングで、ニアエンプティ表示を行うこととする。
(3)エンプティ表示でトナー交換された場合
図18は、エンプティ表示でトナー交換された場合における補正を説明するための図である。このケースでは、エンプティ表示のタイミングが遅すぎたものとして、より早く交換が行われるように、ニアエンプティ表示のタイミングを早める方向に補正する。この補正は、ニアエンプティ状態を検知するための所定トナー残量(実際にはATCセンサ6の出力に対応する閾値)を単純に大きくする補正により行われてもよいが、ここでは次のように行われる。
すなわち、トナー残量報知部63は、ニアエンプティ検知時点での各履歴データのうち、ニアエンプティ状態での各履歴データの設計値に対する割合が最も大きい履歴データを特定する。図18では、履歴データAについての割合が110%、履歴データBについての割合が90%であるので、履歴データAが特定される。そして、トナー残量報知部63は、次回、履歴データAがニアエンプティ状態での履歴データAの設計値に達した時点およびATCセンサ6によりニアエンプティが検知された時点のうち、いずれか早い方の時点をニアエンプティ表示のタイミングとする。
さらに、本実施の形態では、トナー残量報知部63は、前回のトナーカートリッジ8におけるユーザの使用状況を保持しておき、今回のトナーカートリッジ8におけるユーザの使用状況と前回のトナーカートリッジ8におけるユーザの使用状況とを比較し、両者の差が所定範囲内でない場合には、前回の交換タイミングに基づく今回のプレニアエンプティ表示およびニアエンプティ表示のタイミングの補正を行わない。
具体的には、トナー残量報知部63は、プレニアエンプティ表示中にトナー交換された場合には、図19に示されるように、プレニアエンプティ時および交換時における使用状況履歴データを保持しておく。また、ニアエンプティ表示中にトナー交換された場合には、図20に示されるように、プレニアエンプティ時、ニアエンプティ時、および交換時における使用状況履歴データを保持しておく。また、エンプティ表示でトナー交換された場合には、図21に示されるように、プレニアエンプティ時、ニアエンプティ時、エンプティ時、および交換時における使用状況履歴データを保持しておく。図19〜21では、使用状況履歴データとして、プリント枚数P、ピクセルカウント積算値X、ディスペンス積算時間D、カラー比率(A4換算)C、サイズ比率S、ジョブ平均ページ数N、および平均ピクセルカウントX~が示されている。また、データ項目ごとにデータ値を所定のレベルで区切りデータ範囲(カテゴリ)分けされている。
そして、トナー残量報知部63は、プレニアエンプティ表示を行う際、前回の使用状況履歴データのプレニアエンプティ時の欄と、現状の使用状況履歴データとを比較して、全てのデータ項目についてデータ範囲が一致した場合にのみ、前回の交換タイミングに基づくプレニアエンプティ表示のタイミング補正を行う。同様に、ニアエンプティ表示を行う際、前回の使用状況履歴データのニアエンプティ時の欄と、現状の使用状況履歴データとを比較して、全てのデータ項目についてデータ範囲が一致した場合にのみ、前回の交換タイミングに基づくニアエンプティ表示のタイミング補正を行う。
以上のとおり、本実施の形態によれば、ユーザの交換タイミングに基づき、プレニアエンプティ表示およびニアエンプティ表示のタイミングを補正するので、ユーザ毎に表示タイミングを最適化することができ、より目標に近いタイミングでのトナーカートリッジ交換を実現することが可能になる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更することができる。例えば、第1または第2の実施の形態に係るトナー残量推定システムが、第3または第4の実施の形態に係る制御装置50または60の機能を備えていてもよい。すなわち、第1または第2の実施の形態において、制御装置30または40は、トナーカートリッジの交換タイミングに基づいて、プレニアエンプティやニアエンプティの表示タイミングを補正してもよい。
また、トナーカートリッジが不揮発性メモリを備える構成においては、制御装置は、トナーディスペンス積算時間、ピクセル積算値、累積プリント枚数など、トナー残量の推定に用いられるデータを、当該不揮発性メモリに書き込むことが好ましい。
1 感光体ドラム、2 帯電器、3 露光装置、4 現像器、4a 現像容器、4b 現像ロール、4c,4d オーガ、5(5Y,5M,5C,5K) 転写ロール、6 ATCセンサ、7 トナー搬送機構、7a パイプ、7b トナーディスペンスモータ、8 トナーカートリッジ、9 新旧検知センサ、10(10Y,10M,10C,10K) ユニット、20 中間転写ベルト、30,40,60 制御装置、31,41,61 トナー搬送制御部、32,42,62 トナー残量推定部、33,43,63 トナー残量報知部、34 推定精度判定部、100,100A,100B,100C 画像形成装置、200 サーバ、201 情報収集部、202 推定精度判定部、203 推定方式決定部、1000 画像形成システム。