JP4880301B2 - 無電解スズメッキの後処理方法 - Google Patents

無電解スズメッキの後処理方法 Download PDF

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Description

本発明は無電解スズメッキの後処理方法に関して、メッキ後の水洗時にメッキ面への白色の微細粒子の付着を良好に防止できるものを提供する。
無電解スズメッキにおいては、連続使用によってメッキ液が劣化して来ると、メッキしたスズ皮膜を水洗した際に、水洗後の皮膜上に小さなゴマ状の白い微細粒子が析出することが少なくない(図2参照)。
この白い微細粒子は、メッキ液の劣化に伴って第一スズ塩の酸化で生じた4価のスズ塩であり、メッキ直後の皮膜上では酸性のメッキ液に溶解した状態で存在していたものが、水洗により凝集して析出発生したものと考えられる。
プリント基板などの電子部品に無電解スズメッキを施す場合、当該微細粒子がスズメッキ面に析出すると、商品価値を低下させるとともに、ハンダ付け性にも悪影響を及ぼし、ひいては電子部品の信頼性を損ねる恐れがある。
無電解スズメッキの後に、メッキ面に様々な後処理を施す従来技術を挙げると、次の通りである。
特許文献1には、TAB用テープキャリアのリードパターンに無電解メッキを施した後、酸洗処理を施して微細な錫ヒゲを除去する方法が開示されている(請求項1〜3、段落10〜11参照)。この錫ヒゲは錫ホイスカとは異なり、直径1μm以下で、長さが10mm前後と微細であり、時間の経過とともに成長することが述べられている(段落9参照)。
また、上記酸洗処理は濃度20〜40vol%、温度40〜60℃のアルカノールスルホン酸とフェノールスルホン酸の混合液にて0.5〜1.5分程度の条件で行い(請求項2〜3参照)、具体的には、濃度30vol%、液温60℃の上記混合液にTAB用テープキャリアを1分間浸漬して酸洗処理している(段落12〜14の実施例参照)。
また、本出願人が提案した特許文献2には、スズ皮膜の疑似ホイスカーを防止する目的で、アルカンスルホン酸を含む無電解スズの第1浴により特定以下の膜厚でスズメッキを施す工程と、アルカノールスルホン酸を含みアルカンスルホン酸を含まない無電解スズの第2浴でスズメッキを施す工程とを組み合わせた無電解スズの2段メッキ方法が開示されている。
特開平7−161773号公報 特開2004−332022号公報
上記特許文献1のように、メッキ後のスズ皮膜を酸洗浄した場合には形成された皮膜表面がエッチングされる恐れがあり、特に、同特許文献1の実施例の通り、濃度30vol%、60℃の加温状態で1分程度に亘って浸漬すると、スズ皮膜が損傷する恐れが大きくなる。
また、この損傷を回避するため、メッキ処理後の酸洗浄を酸濃度を緩和して行うと、酸洗浄後の水洗に際して、白色の微細粒子が生成する度合は酸洗処理をしない場合より減少するが、その抑制効果は充分ではなくなる(後述の試験例参照)。
一方、特許文献2の方法は、スズメッキ面に再度特定条件でスズメッキを行うものなので、メッキ面の状態をなるべく保存しながら後処理を施して、メッキ面への微細粒子の析出を防止しようとする本発明の所期の目的とは異なる。
即ち、上記特許文献1〜2では、一方が無電解メッキで形成したメッキ面をエッチングする懸念があり、他方が当初のメッキ面上にさらにスズ皮膜を被覆するものであり、共にメッキ表面の保存性は担保できない。
本発明は、メッキ面の保存性を損なわない条件で、スズメッキ後の水洗に際してメッキ面上への白色の微細粒子の発生を防止することを技術的課題とする。
本発明者らは、酸性無電解スズメッキ液によるメッキ工程の後、劣化のない酸性無電解スズメッキ液(基本的にメッキ工程と同組成)でメッキ面を洗浄してから水洗することで、水洗時での白色の微細粒子の析出を良好に防止できることを見い出した。
本発明1は、酸性無電解スズメッキ液に被メッキ物を浸漬してスズメッキを施し、水洗し、乾燥する無電解スズメッキ方法において、
上記酸性無電解スズメッキ液によるメッキ工程の後で、且つ、水洗工程の前にメッキ面に後処理を施し、
当該後処理工程は、メッキ工程で使用した上記メッキ液とは異なる劣化のない酸性無電解スズメッキ液でメッキ面を洗浄することからなることを特徴とする無電解スズメッキの後処理方法である。
本発明2は、上記本発明1において、後処理工程で、メッキ面を40℃以下で洗浄することを特徴とする無電解スズメッキの後処理方法である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、後処理工程で、メッキ面を1〜60秒の条件で洗浄することを特徴とする無電解スズメッキの後処理方法である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、メッキ工程と後処理工程での無電解スズメッキ液が同組成である事を特徴とする無電解スズメッキの後処理方法である。
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、無電解スズメッキ液が可溶性第一スズ塩と有機スルホン酸とチオ尿素類を含有することを特徴とする無電解スズメッキの後処理方法である。
無電解スズメッキ液が劣化して来ると、メッキしたスズ皮膜を水洗した場合、水洗後の皮膜上に4価のスズ塩が小さなゴマ状の白い微細粒子として析出することが少なくない。 これに対して、本発明では、メッキ直後に水洗せずに、劣化のない無電解メッキ液(基本的にメッキ工程と同じメッキ液)で洗浄するため、水洗後に白い微細粒子が凝集することを良好に防止できる。
これは、従来では、メッキ皮膜の表面が水洗により酸性から中性に移行することなどに起因して、4価スズ塩が凝集・析出して来るが、本発明においては、皮膜上の4価スズ塩は酸性を呈するメッキ液に溶解した状態でメッキ液と共に皮膜上から除去されるため、後処理後に水洗しても微細粒子の析出はないものと推定される。尚、後述の試験例に示すように、詳細な理由はいまだ不明であるが、上記無電解メッキ液に代えて酸液で洗浄しても微細粒子の析出防止機能は不充分である。
従って、プリント基板などの電子部品に無電解スズメッキを施す場合、当該メッキ面に本発明の後処理方法を適用すると、上記白色の微細粒子の析出がなく、被メッキ物の商品価値を高めながら、良好なハンダ付けによって電子部品の信頼性を向上できる。
本発明は、酸性無電解スズメッキ液に被メッキ物を浸漬してスズメッキを施し、水洗し、乾燥する無電解スズメッキ方法において、酸性無電解スズメッキ液によりスズメッキを施し、次いで、劣化のない酸性無電解スズメッキ液で被メッキ物を洗浄する後処理を施した後、水洗し、乾燥する無電解スズメッキの後処理方法である。
上記後処理工程では、メッキ工程で形成されたメッキ表面を保存しながら、メッキ面を劣化のないスズメッキ液で洗浄することが重要であり、上記特許文献1〜2の通り、メッキ表面をエッチングする懸念があり、或は、メッキ表面上にさらにスズ皮膜を被覆する処理(即ち、メッキ処理したスズ表面の保存性を損なう恐れのある処理)は排除される。
当該メッキ工程で使用するスズメッキ液はメッキ時間の経過と共に劣化するため、後処理で使用する劣化のないスズメッキ液とは、このメッキ工程で使用したメッキ液とは異なり、未使用の新規製品としての初期状態、或はこれに近い状態を保持したメッキ液を意味する。
酸性無電解スズメッキ液は可溶性第一スズ塩と酸と錯化剤を主成分とする。
上記可溶性第一スズ塩は特に制限されず、例えば、ホウフッ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズ、ピロリン酸スズ、スルファミン酸スズ、亜スズ酸塩などの無機系の可溶性塩、アルカンスルホン酸第一スズ、アルカノールスルホン酸第一スズ、芳香族オキシスルホン酸第一スズ塩、スルホコハク酸第一スズ、脂肪族カルボン酸第一スズなどの有機系の可溶性塩などが使用できる。
無電解スズメッキ液のベースを構成する酸としては、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸などの有機酸、或は、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、過塩素酸などの無機酸が挙げられる。
上記有機酸及び無機酸は夫々を単用又は併用でき、両者を複用しても良い。上記酸には、排水処理の容易性や可溶性第一スズ塩の溶解性などの見地から、有機スルホン酸が好ましい。
上記有機スルホン酸のうち、アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられる。
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜2、p=1〜3)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
上記芳香族スルホン酸としては、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸、ナフトールジスルホン酸、ジヒドロキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、トリフルオロ酢酸、スルホコハク酸などが挙げられる。
上記錯化剤は被メッキ物の素地金属の銅、銅合金に配位して錯イオンを形成し、銅の電極電位を卑の方向に変移させ、スズとの化学置換反応を促進する目的で含有され、チオ尿素類が好ましい。
このチオ尿素類には、チオ尿素、或は、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド等のチオ尿素誘導体が挙げられる。
当該チオ尿素類と同様の錯化作用を奏する化合物としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、ベンジルアミン、2―ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミンなども有効である。
本発明の酸性無電解スズメッキ液には上記主要成分の外に、界面活性剤、酸化防止剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤などの各種添加剤を含有できる。
上記界面活性剤には通常のノニオン系、アニオン系、両性、或はカチオン系などの各種界面活性剤が挙げられ、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善に寄与する。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
上記酸化防止剤は可溶性第一スズ塩の第二スズ塩への酸化を防止する目的で含有され、次亜リン酸類を初め、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリルデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2−メルカトプトベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸等のジカルボン酸類、乳酸、酒石酸等のオキシカルボン酸類などの有機酸、或は、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられる。
本発明は、酸性無電解スズメッキ液で被メッキ物をメッキした後、水洗する前に、劣化のない酸性無電解スズメッキ液でメッキ面を洗浄する(即ち、後処理を施す)点に特徴がある。
上記後処理工程での無電解メッキ液によるメッキ面の洗浄は、メッキ面に析出した4価のスズ塩の微細粒子を除去する点を主眼としており、メッキ工程で形成されたスズ面の保存性を損なう恐れのある処理は排除される。従って、例えば、冒述の特許文献1のようにメッキ面をエッチングする懸念のある処理、或は、メッキ面に再びスズ皮膜をメッキする処理は排除される。
本発明の後処理方法は、メッキ処理を終えたメッキ面を劣化のないメッキ液で洗浄するものであり、劣化したスズメッキ液での処理は排除される。
また、後処理の時間は短く、後処理温度は低い方が良い。従って、当該後処理工程では、40℃以下の温度条件でメッキ面を洗浄することが適当であり、常温(25℃を中心とした20〜30℃程度)で洗浄することが好ましい。加温条件での洗浄では、メッキ作用が強まる恐れがあるため、処理時間を短くすることが重要である。
洗浄時間は1〜60秒が適当であり、1〜30秒が好ましく、10〜15秒がより好ましい。処理温度と処理時間の好ましい組み合わせとしては、常温で10〜15秒程度が良い。
上記洗浄処理は基本的に酸性無電解スズメッキ液に被メッキ物を浸漬することにより行うが、被メッキ物のメッキ面にメッキ液を噴霧し、或は、刷毛で塗布しても良い。
メッキ工程と後処理工程では、無電解メッキ液の組成の異同は問わず、両工程で異なる組成の無電解メッキ液を使用しても良いが、処理の簡便化の見地から、同組成の無電解メッキ液を使用する方が好ましい。
また、無電解メッキ液としては、無電解スズの有機スルホン酸液が好ましいが、それ以外のメッキ液(例えば、無電解スズの無機酸液やカルボン酸液など)を排除するものではない。
具体的に説明すると、本発明4及び5に示すように、メッキ工程と後処理工程で同組成の無電解スズの有機スルホン酸液を使用することが特に好ましいが、両工程の有機スルホン酸液の組成が異なっても良い(例えば、メッキ工程では無電解スズのアルカンスルホン酸液を使用し、後処理工程ではアルカノールスルホン酸液、或はアルカンスルホン酸と他の有機スルホン酸の混合液を使用する)。
尚、メッキ工程と後処理工程で異なる組成のメッキ液を使用する例としては、メッキ工程では無電解スズのアルカンスルホン酸液を使用し、後処理工程では硫酸液やホウフッ化水素酸液を使用する場合などが挙げられる。
本発明では、被メッキ物はメッキ工程のあと、上記後処理工程を経て、水洗を施し、乾燥処理される。上記メッキ工程では公知の無電解スズメッキが行われ、温度条件や浸漬条件は特に制限されない。水洗は直前の後処理工程での無電解メッキ液を除去することを目的とし、水洗時間などは特に制限されない。
本発明が適用される被メッキ物には、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路、抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線などの電子部品が好適である。
本発明の後処理方法で得られたスズ皮膜にあっては、白色の微細粒子の付着がなく美麗な外観を呈して商品価値を向上できるとともに、ハンダ付けでの悪影響を排除できることから、各種電子部品に本発明の方法を適用すると、電子部品の信頼性をより高めることができる。
以下、本発明の無電解スズメッキの後処理方法の実施例、当該実施例で得られたメッキ面の微視外観の評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《無電解スズメッキの後処理方法の実施例》
先ず、下記の組成にて2種類の無電解メッキ液A〜Bを建浴した。
(A)無電解スズメッキ液
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.25モル/L
メタンスルホン酸 1.50モル/L
チオ尿素 1.50モル/L
次亜リン酸 0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) 10.0g/L
(B)無電解スズメッキ液
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.25モル/L
メタンスルホン酸 1.00モル/L
フェノールスルホン酸 1.00モル/L
チオ尿素 1.50モル/L
次亜リン酸 0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) 10.0g/L
下記の実施例1〜6のうち、実施例1〜3は後処理工程において洗浄温度25℃で洗浄時間を15秒、20秒、30秒と変化させた例、実施例4は洗浄温度40℃で15秒洗浄した例、実施例5は洗浄温度60℃で10秒洗浄した例である。従って、実施例1と実施例4は洗浄時間15秒で洗浄温度を25℃、40℃に変化させた例でもある。実施例1〜5はメッキ工程と後処理工程で同じ組成の無電解スズメッキ液を用いた例、実施例6は異なる組成の無電解スズメッキ液を用いた例である。
一方、比較例1はメッキ工程のあとに後処理をしないで水洗したブランク例である。比較例2は冒述の特許文献1の実施例に準拠して、メッキ工程の後に酸洗浄を施し、水洗した例である。尚、同特許文献1の実施例では、被メッキ物を30vol%のメタンスルホン酸液に60℃、1分の条件で浸漬しているが、このような酸濃度、加温、長時間の条件ではメッキ面がエッチングされる懸念があるため、比較例2では酸濃度の条件を10vol%に緩和した。
(1)実施例1
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記の条件(a)で当該COFに上記無電解メッキ液Aを用いてスズメッキを施した後、下記の条件(b)で同じく劣化のない無電解メッキ液Aで後処理を施し、水洗した後、乾燥した。
(a)メッキ工程の条件
液温:65℃
メッキ時間:5分
(b)後処理工程の条件
洗浄温度:25℃
洗浄時間:15秒
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、後処理工程の条件(b)を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
(b)後処理工程の条件
洗浄温度:25℃
洗浄時間:20秒
(3)実施例3
上記実施例1を基本として、後処理工程の条件(b)を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
(b)後処理工程の条件
洗浄温度:25℃
洗浄時間:30秒
(4)実施例4
上記実施例1を基本として、後処理工程の条件(b)を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
(b)後処理工程の条件
洗浄温度:40℃
洗浄時間:15秒
(5)実施例5
上記実施例1を基本として、後処理工程の条件(b)を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
(b)後処理工程の条件
洗浄温度:60℃
洗浄時間:10秒
(6)実施例6
上記実施例1を基本として、後処理工程で用いる劣化のない無電解メッキ液をA液からB液に変更した以外は、実施例1と同様に処理した。従って、後処理工程の条件(b)は洗浄温度25℃、洗浄時間15秒である。
(7)比較例1
上記実施例1と同じ被メッキ物に、下記の条件(a)で上記無電解メッキ液Aを用いてスズメッキを施した後、水洗し、乾燥した。
(a)メッキ工程の条件
液温:65℃
メッキ時間:5分
(8)比較例2
上記実施例1と同じ被メッキ物に、下記の条件(a)で上記無電解メッキ液Aを用いてスズメッキを施した後、下記の条件(b)で同じく10vol%のメタンスルホン酸液で洗浄処理を施し、水洗した後、乾燥した。
(a)メッキ工程の条件
液温:65℃
メッキ時間:5分
(b)酸洗浄工程の条件
洗浄温度:60℃
洗浄時間:1分
《後処理によるメッキ面の微視外観評価試験例》
そこで、上記実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた各COFについて、リード部分のメッキ面を電子顕微鏡(S−3000H;日立製作所社製;5000倍)を用いて微視観察し、メッキ面での白色の微細粒子の析出状態を下記の条件で判定し、その外観の優劣を評価した。
○:均一で美麗なメッキ面であった。
×:白色でゴマ状の微細粒子が多数認められた。
下表はその試験結果である。
微視外観評価 微視外観評価
実施例1 ○ 比較例1 ×
実施例2 ○ 比較例2 ×
実施例3 ○
実施例4 ○
実施例5 ○
実施例6 ○
上表によると、後処理を行わず、メッキ後に直接水洗した比較例1では、メッキ面に白色ゴマ状の微細粒子が全面に亘って多数発生した(図2参照)。
これに対して、メッキ後にメッキ液による洗浄という後処理を施してから水洗した実施例1〜6では、共に白色ゴマ状の微細粒子の析出はなく、均一なメッキ面を得ることができた(図1参照)。
また、冒述の特許文献1に準拠して、メッキ液の代わりに酸で洗浄した比較例2では、白色ゴマ状の微細粒子の析出度合はブランク例である比較例1に比して後退(全面析出ではなく部分析出に後退)していたが、当該微細粒子が析出することに変わりはなく、実施例のような均一なメッキ面は得られなかった。
そこで、実施例1〜6を検討すると、洗浄温度を25℃の一定に保持し、洗浄時間を15秒、20秒、30秒と変化させた実施例1〜3では、共に均一なメッキ面が得られ、また、洗浄時間を15秒の一定に保ち、洗浄温度を25℃、40℃に変化させた実施例1と実施例4においても、同様に均一なメッキ面が得られた。
従って、効率良く後処理する見地から判断すると、常温程度(25℃)で15秒程度の条件にてメッキ面を洗浄することが生産的である。
以上のように、本発明の後処理方法をCOF、プリント基板などの電子部品に適用すると、メッキ後の水洗によって4価スズ塩の微細粒子がメッキ面に析出することを円滑に防止でき、良好なハンダ付けにより電子部品の信頼性のさらなる向上が期待できる。
実施例1の試験結果を示す電子顕微鏡写真(倍率:5000倍)である。 比較例1についての図1の相当図である。

Claims (5)

  1. 酸性無電解スズメッキ液に被メッキ物を浸漬してスズメッキを施し、水洗し、乾燥する無電解スズメッキ方法において、
    上記酸性無電解スズメッキ液によるメッキ工程の後で、且つ、水洗工程の前にメッキ面に後処理を施し、
    当該後処理工程は、メッキ工程で使用した上記メッキ液とは異なる劣化のない酸性無電解スズメッキ液でメッキ面を洗浄することからなることを特徴とする無電解スズメッキの後処理方法。
  2. 後処理工程で、メッキ面を40℃以下で洗浄することを特徴とする請求項1に記載の無電解スズメッキの後処理方法。
  3. 後処理工程で、メッキ面を1〜60秒の条件で洗浄することを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解スズメッキの後処理方法。
  4. メッキ工程と後処理工程での無電解スズメッキ液が同組成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無電解スズメッキの後処理方法。
  5. 無電解スズメッキ液が可溶性第一スズ塩と有機スルホン酸とチオ尿素類を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無電解スズメッキの後処理方法。
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