JP4288469B2 - 銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴、及び銅侵食防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴、並びに当該メッキ浴を用いた銅侵食防止方法に関して、銅又は銅合金製の微細パターンをソルダーレジストで被覆した形態のフィルムキャリア、フレキシブルプリント回路基板などの銅侵食を有効に防止できるものを提供する。
【0002】
【従来の技術】
スズメッキは、ハンダ付け性向上用皮膜、エッチングレジスト用皮膜などとして、弱電工業並びに電子工業部品などに広く利用されている。
従来、無電解スズの有機酸浴、なかでも、有機スルホン酸浴は、排水処理の容易性、スズ塩の溶解性などの見地から多く研究され、報告されている。
例えば、特許文献1〜6などには、浴ベースとしての有機スルホン酸と、可溶性第一スズ塩と、銅製素地との置換反応を促進するためのチオ尿素類とを基本組成とする無電解スズメッキ浴が開示されている。
【0003】
しかしながら、無電解スズの有機スルホン酸浴を用いて、フィルムキャリアやフレキシブル回路基板などの微細パターン上にスズメッキを行うと、ソルダーレジストの端部周辺の密着性が低下して部分剥離を起こし易くなり、メッキ液がソルダーレジストの端部から微細パターンに沿うようにしてその下面にまで侵入し、銅を溶出させて製品の信頼性を低下させてしまう恐れがある。
【0004】
このソルダーレジストの剥離を防止する従来技術としては、下記のものなどがある。
(1)特許文献7
微細パターン上にスズ又は金のメッキ皮膜を形成し、このメッキ皮膜上にソルダーレジストを被覆して、ソルダーレジストの密着性を高めたフレキシブル回路基板が開示されている。
【0005】
(2)特許文献8
銅製の微細パターン上にスズのメッキ皮膜を形成し、このスズメッキ皮膜を加熱して銅を拡散させ、微細パターンの端子部分を除く所定部位であって、銅が拡散したスズメッキ皮膜上にソルダーレジストを被覆し、前記端子部分の上に実質的に銅を含有しないスズメッキ皮膜を形成し、下層のスズ皮膜の表面から上層のスズ皮膜の表面に向かって銅拡散濃度が次第に低下する銅・スズ含有領域が上層スズ皮膜と連続するようにして、ソルダーレジストと下層のスズ皮膜の間へのメッキ液の侵入を防止したフィルムキャリアが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−186878号公報
【特許文献2】
特開平7−113179号公報
【特許文献3】
特開平10−36973号公報
【特許文献4】
特開平11−61426号公報
【特許文献5】
特開平11−256350号公報
【特許文献6】
特開平11−343578号公報
【特許文献7】
特開平6−342969号公報
【特許文献8】
特許第3076342号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献7〜8は、微細パターン上にスズ又は金皮膜を形成した後に、この下地皮膜上にソルダーレジストを被覆することにより、ソルダーレジストの剥離を防止しようとする特殊な方法であり、ソルダーレジストを直接被覆した一般的なフィルムキャリアの微細パターン上にスズメッキを施すに際して、無電解スズの有機スルホン酸浴を工夫することにより、ソルダーレジストの剥離防止を図ろうとするものではない。
本発明は、無電解スズの有機スルホン酸浴を用いてフィルムキャリアやフレキシブル回路基板などの微細パターン上にスズ皮膜を形成するに際して、フィルムキャリアなどを特殊な構造に変更する手法ではなく、無電解メッキ浴の組成を改変することにより、微細パターンの侵食を有効に防止することを技術的課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、無電解スズの有機スルホン酸浴の組成を制御することにより、微細パターンの侵食を有効に防止することを鋭意研究した結果、浴中にアルカノールスルホン酸のアニオン部分が存在した状態で、錯化作用をするチオ尿素類の含有量並びに当該チオ尿素類と可溶性スズ塩のモル比率を所定範囲に条件付けると、フィルムキャリアやフレキシブル回路基板などでのソルダーレジストの密着性が確保されて、微細パターンの侵食が有効に防止できること、また、アルカノールスルホン酸をクエン酸やリンゴ酸などのカルボン酸に代替し、或はこれらを併用しても、上記成分の含有量やモル比率の条件を満たす限り、同様に銅侵食が防止できることを見い出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明1は、可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類を含有する無電解スズメッキ浴において、
可溶性第一スズ塩(Sn2+換算)とチオ尿素類の単位リットル当たりの含有モル比率が、チオ尿素類/Sn2+=4.0〜8.4であり、
チオ尿素類の含有量が2〜4モル/Lであり、
上記有機スルホン酸としてアルカノールスルホン酸及び/又はカルボン酸を含有することを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴である。
【0011】
本発明2は、上記本発明1において、可溶性第一スズ塩(Sn2+換算)の含有量が35〜70g/Lであることを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴である。
【0012】
本発明3は、上記本発明1又は2において、アルカノールスルホン酸が、C1〜C4アルカノールスルホン酸であることを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
【0013】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、カルボン酸が、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸であることを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
【0014】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、チオ尿素類がチオ尿素であることを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴である。
【0015】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、次亜リン酸及びその塩などの酸化防止剤を含有することを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴である。
【0016】
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかにおいて、さらに、界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤などの各種添加剤を含有することを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴である。
【0017】
本発明8は、上記本発明1〜7のいずれかの無電解スズメッキ浴に銅製の被メッキ物を浸漬して、銅侵食のない状態で被メッキ物上にスズメッキ皮膜を形成することを特徴とする銅侵食防止方法である。
【0018】
本発明9は、上記本発明8の被メッキ物が、銅又は銅合金製の微細パターンの一部をソルダーレジストで被覆した形態のフィルムキャリア、プリント回路基板、フレキシブルプリント基板から選ばれたいずれかであることを特徴とするフィルムキャリアなどの銅侵食防止方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、第一に、有機スルホン酸をアルカノールスルホン酸に特定化するとともに、チオ尿素類の含有量並びにチオ尿素類と可溶性スズ塩のモル比率を特定化した無電解スズの有機スルホン酸メッキ浴であり、第二に、上記所定成分の含有量とモル比率を特定化しながら、ベース酸をアルカノールスルホン酸からカルボン酸に替えた無電解スズメッキ浴であり、第三に、アルカノールスルホン酸とカルボン酸を併用した無電解スズメッキ浴であり、第四に、これらの無電解スズ浴を用いてフィルムキャリアやフレキシブルプリント基板の配線パターン上などにスズメッキを行って、配線パターンなどの銅侵食を防止する方法である。
尚、本発明では、配線の微細パターンの材質は銅に限らず、銅合金を含むものとする。
【0020】
上記第一の発明は、可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類を基本組成とする無電解スズメッキ浴において、下記の(a)〜(b)の条件を満たす浴である。
(a)有機酸として、アルカノールスルホン酸を含有することが必要である。
アルカノールスルホン酸の含有とは、遊離酸としてのアルカノールスルホン酸、及び/又はアルカノールスルホン酸の第一スズ塩を含有することを意味し、要するに、浴中にアルカノールスルホン酸のアニオン部分が含まれることが重要である。
但し、メッキ浴中には、アルカンスルホン酸、芳香族スルホン酸などの他の有機スルホン酸、或は、無機酸などが併存しても差し支えない。
【0021】
(b)可溶性第一スズ塩(Sn2+換算)とチオ尿素類の単位リットル当たりの含有モル比率が、チオ尿素類/Sn2+=4.0〜8.4であり、且つ、チオ尿素類の含有量が2〜4モル/Lであることが必要である。
フィルムキャリアなどの微細パターンの侵食を防止するには、錯化剤であるチオ尿素類の含有量を適正範囲に調整し、且つ、このチオ尿素類とSn2+の含有モル比率を所定範囲に制御する必要がある。即ち、チオ尿素類/Sn2+のモル比率が大きくなり過ぎると、Sn2+とチオ尿素類との相互作用のバランスが崩れ、銅製パターンへの侵食作用が高まる恐れがあるとともに、チオ尿素類のSn2+に対するキレート効果が増大し、適正なスズ皮膜の形成に支障を来す恐れもある。また、チオ尿素類/Sn2+のモル比率が適正であっても、チオ尿素類の含有量が小さくなり過ぎると、Sn2+とチオ尿素類による上記相互作用のバランスが崩れ、やはり微細パターンを侵食する恐れが出て来るとともに、チオ尿素類のSn2+に対するキレート効果が低減し、浴が不安定化する恐れもある。また、浴中への溶解性を担保する見地から、チオ尿素類の含有量を所定量以下に抑えることが必要である。
【0022】
本発明の無電解スズメッキ浴は、前述したように、可溶性第一スズ塩と、浴ベースとしての有機酸と、錯化剤としてのチオ尿素類を基本組成とする。
そこで、上記浴ベースとしての有機酸を前記条件(a)〜(b)に基づいて説明すると、先ず、有機酸としてアルカノールスルホン酸を必須成分とする。
上記アルカノールスルホン酸は単用又は併用でき、遊離酸として浴中に含有することが好ましいが、アルカノールスルホン酸の第一スズ塩として含有しても差し支えなく、両者を含有しても良いことは言うまでもない。
尚、前述したように、浴中には、アルカノールスルホン酸の外に、アルカンスルホン酸やスルホコハク酸などの他の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフトールスルホン酸、クレゾールスルホン酸などの芳香族スルホン酸が併存しても良いし、或は、硫酸、塩酸、リン酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などの無機酸が併存しても良い。
【0023】
上記アルカノールスルホン酸は、化学式
CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものであり、具体的には、ヒドロキシメタンスルホン酸、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、3―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
本発明で使用するアルカノールスルホン酸としては、本発明4に示すように、C1〜C4アルカノールスルホン酸が好ましく、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシブタンスルホン酸、3−ヒドロキシブタンスルホン酸、4−ヒドロキシブタンスルホン酸などがより好ましい。
【0024】
上記可溶性第一スズ塩を上記条件(a)〜(b)に基づいて説明すると、ホウフッ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズ、ピロリン酸スズ、スルファミン酸スズ、亜スズ酸塩などの無機系の可溶性塩、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸などの有機スルホン酸の第一スズ塩、脂肪族カルボン酸などのカルボン酸の第一スズ塩などの有機系の可溶性塩などが挙げられる。
可溶性第一スズ塩としては、上記条件(a)により、アルカノールスルホン酸の第一スズ塩が好ましい(また、第二の発明に基づき、カルボン酸の第一スズ塩も好ましい)。
【0025】
上記チオ尿素類は、素地金属の銅、銅合金に配位して錯イオンを形成し、銅の電極電位を卑の方向に変移させて、スズとの化学置換反応を促進し、また、スズイオンを安定化させる目的で含有される。
このチオ尿素類には、チオ尿素、或は、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジドなどのチオ尿素誘導体が挙げられる。
尚、当該チオ尿素類と同様の錯化作用を奏する化合物としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、ベンジルアミン、2―ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミンなども有効である。
【0026】
上記可溶性第一スズ塩(Sn2+換算)とチオ尿素類の単位リットル当たりの含有モル比率はチオ尿素類/Sn2+=4.0〜8.4であることが必要であり、Sn2+に対するチオ尿素類のキレート作用を良好に担保する見地から、チオ尿素類/Sn 2+ =4.5〜7.0が好ましい。
また、浴中でのチオ尿素類の含有量は2〜4モル/Lであることが必要であり、好ましくは2.2〜3.5モル/Lである。チオ尿素類の含有量が4モル/Lより多くなると、常温での浴中への溶解性が低減するため、溶解性を確保するために浴を加温する必要が出て来る。
上記チオ尿素類とのモル比率を満たす限り、浴中でのSn2+の含有量は特に制限されないが、本発明2に示すように、35〜70g/L程度が適当であり、好ましくは45〜60g/L、より好ましくは50〜60g/Lである。
【0027】
前記第二の発明は、浴中にアルカンスルホン酸の替わりに、カルボン酸を含有した無電解スズメッキ浴である。
上記カルボン酸は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸などである。当該脂肪族カルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、グリコール酸などのオキシカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ジグリコール酸、グルタル酸、アジピン酸などのポリカルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸などが挙げられる。
上記芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サルチル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
上記カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸が好ましく、特に、本発明4に示すように、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸がより好適である。
上記カルボン酸の含有とは、遊離酸としてカルボン酸を含有することを基本とするが、前記アルカノールスルホン酸と同様に、カルボン酸の第一スズ塩として含有しても良く、要するに、浴中にカルボン酸のアニオン部分が含まれることが重要である。
この第二の発明においては、第一の発明と同様の条件で、チオ尿素類とSn2+の含有モル比率、並びにチオ尿素類の含有量を所定範囲に調整することは勿論である。フィルムキャリアなどの微細パターンの侵食を有効に防止するには、カルボン酸の存在下で、Sn2+とチオ尿素類の組み合わせによる適正な相互作用の発現が必要になるからである。
【0028】
無電解スズメッキ浴において、上記第三の発明のように、前記アルカノールスルホン酸をこのカルボン酸と併用しても良いことは勿論である。
無電解スズ浴に共存させるアルカノールスルホン酸とカルボン酸としては、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸よりなる群からなるアルカノールスルホン酸と、クエン酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、グリコール酸、コハク酸、シュウ酸、ギ酸よりなる群からなるカルボン酸の組み合わせが好ましい。
【0029】
一方、無電解スズメッキ浴には上記基本成分以外に、必要に応じて公知の酸化防止剤、界面活性剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤、防腐剤などの各種添加剤を含有できることはいうまでもない。
上記酸化防止剤は、浴中のSn2+の酸化を防止するためのもので、次亜リン酸、及び次亜リン酸のナトリウム、カリウムなどのアルカル金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカル土類金属塩などが好ましい。
メッキ浴中に、Sn2+と、素地金属への錯化作用及びSn2+への安定化作用を奏するチオ尿素類に加えて、Sn2+の酸化防止作用に優れる次亜リン酸類が共存すると、これらの相互作用により、フィルムキャリアなどの微細パターンの侵食防止への寄与がさらに増すことが期待できる。
次亜リン酸類の含有量は、0.1〜1.0モル/L程度が適当であり、0.1〜0.7モル/Lが好ましい。
また、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなども酸化防止剤として有効である。
【0030】
上記界面活性剤には通常のノニオン系、アニオン系、両性、或はカチオン系などの各種界面活性剤が挙げられ、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善に寄与する。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0031】
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリルデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0032】
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられるが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類などが有効である。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
【0033】
無電解スズメッキの条件としては任意であるが、浴温は45〜90℃が好ましく、析出速度を増す見地から50〜70℃がより好ましい。
【0034】
本発明8は、上記無電解スズメッキ浴に被メッキ物を浸漬して、被メッキ物上にスズメッキ皮膜を形成する銅侵食防止方法である。
素地に銅又は銅合金が使用されている被メッキ物であれば、任意のものが適用でき、特段の制限はないが、本発明9に示すように、銅又は銅合金製の微細パターンを保護用のソルダーレジストで被覆した形態のフィルムキャリア、プリント回路基板(PCB)、フレキシブルプリント基板(FPC)などが好ましい。
【0035】
【発明の効果】
銅又は銅合金製の微細パターンをソルダーレジストで被覆した形態のフィルムキャリア、PCB、FPCなどに従来の無電解スズメッキ浴を適用すると、ソルダーレジストの密着性が低下して、ソルダーレジストの端部から配線パターンに沿ってソルダーレジストの下面にメッキ液が侵入し、銅の溶出による侵食被害を配線パターンが受けるという問題があった。
これに対して、本発明では、アルカノールスルホン酸及び/又はカルボン酸を存在させた無電解スズメッキ浴において、可溶性第一スズ塩(Sn2+換算)とチオ尿素類の混合モル比率と、チオ尿素類の含有量を所定範囲に調整するため、この無電解スズ浴をフィルムキャリアなどに適用しても、ソルダーレジストの密着性を良好に確保でき、インナリードなどの微細パターンが侵食されることを有効に防止できる。
【0036】
ちなみに、冒述の特許文献3の実施例10(段落62参照)に記載された無電解スズの有機スルホン酸浴では、アルカノールスルホン酸(アニオン部分)を含み、チオ尿素類/Sn2+のモル比率は2.67であるが、チオ尿素類の含有量は1.12モル/Lであって、本発明の同含有量の条件(2〜4モル/L)から外れている。また、同文献3の実施例11(段落65参照)に記載された無電解スズの有機スルホン酸浴では、アルカノールスルホン酸を含み、チオ尿素類/Sn2+のモル比率は5.02であるが、チオ尿素類の含有量は1.48モル/Lであって、本発明の同含有量の条件(2〜4モル/L)から外れている。
また、冒述の特許文献6の実施例5(段落50参照)に記載された無電解スズの有機スルホン酸浴では、アルカノールスルホン酸(アニオン部分)を含み、チオ尿素類の含有量は2.29モル/Lであるが、チオ尿素類/Sn2+のモル比率は9.05であって、本発明の同モル比率の条件(4.0〜8.4)から外れている。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の無電解スズメッキ浴の実施例、当該無電解メッキ浴を用いた銅侵食防止試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0038】
下記の実施例1〜11のうち、実施例1〜3はアルカノールスルホン酸を含有する例、実施例4〜6は脂肪族オキシカルボン酸の含有例、実施例7〜8はアルカノールスルホン酸と脂肪族オキシカルボン酸の併用例、実施例9は2種のアルカノールスルホン酸の併用例、実施例10は2種の脂肪族オキシカルボン酸の併用例、実施例11はアルカノールスルホン酸とアルカンスルホン酸の併用例である。
一方、比較例1〜5のうち、比較例1は冒述の特許文献6の実施例5に準拠して、アルカノールスルホン酸を含み、チオ尿素類/Sn2+のモル比率が上限値を越える例、比較例2は冒述の特許文献3の実施例11に準拠して、アルカノールスルホン酸を含み、チオ尿素類の含有量が下限値より少ない例、比較例3はカルボン酸を含み、チオ尿素類/Sn2+のモル比率が上限値を越える例、比較例4はカルボン酸を含み、チオ尿素類の含有量が下限値より少ない例、比較例5はチオ尿素類/Sn2+のモル比率とチオ尿素類の含有量が本発明の適正範囲内であるが、有機スルホン酸としてフェノールスルホン酸のみを含み、アルカノールスルホン酸を含まない例である。
【0039】
《実施例1》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・2−ヒドロキシエタン
−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
・2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :2.30モル/L
・チオ尿素 :2.50モル/L
・次亜リン酸 :0.50モル/L
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO10) :10.0g/L
本実施例1の組成を前記条件(a)〜(b)に基づいて説明すると、2−ヒドロキシエタンスルホン酸を含み、チオ尿素類の含有量は2.50モル/Lであり、チオ尿素類/Sn2+のモル比率は2.50/0.35=7.14である。
【0040】
《実施例2》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・2−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.50モル/L
・2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :2.30モル/L
・次亜リン酸 :0.40モル/L
・ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10):8.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.30/0.50=4.60である。
【0041】
《実施例3》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・3−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
・3−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・次亜リン酸 :0.30モル/L
・ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO10):5.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.00/0.30=6.67である。
【0042】
《実施例4》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・乳酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
・乳酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・次亜リン酸 :0.08モル/L
上記チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.00/0.30=6.67である。
【0043】
《実施例5》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・リンゴ酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
・リンゴ酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :2.20モル/L
・次亜リン酸 :0.70モル/L
・ステアリン酸アミドプロピルベタイン :8.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.20/0.30=7.33である。
【0044】
《実施例6》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・クエン酸第一スズ(Sn2+として) :0.25モル/L
・クエン酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・次亜リン酸 :0.60モル/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO8) :8.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.00/0.25=8.00である。
【0045】
《実施例7》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・2−ヒドロキシエタン
−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.45モル/L
・クエン酸 :1.50モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・1,3−ジメチルチオ尿素 :0.20モル/L
・次亜リン酸カリウム :0.20モル/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO8) :6.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は、(2.00+0.20)/0.45=4.89である。
【0046】
《実施例8》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・リンゴ酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
・3−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 :1.80モル/L
・チオ尿素 :2.50モル/L
・次亜リン酸 :0.60モル/L
・ポリオキシエチレン
−スチレン化フェニルエーテル(EO10) :3.0g/L
上記チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.50/0.30=8.33である。
【0047】
《実施例9》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・4−ヒドロキシブタン
−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.40モル/L
・2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 :1.50モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・1,3−ジメチルチオ尿素 :0.10モル/L
・次亜リン酸 :0.50モル/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は、(2.00+0.10)/0.40=5.25である。
【0048】
《実施例10》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・クエン酸第一スズ(Sn2+として) :0.25モル/L
・酒石酸 :2.50モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・次亜リン酸 :0.70モル/L
・ステアリン酸アミドプロパンベタイン :5.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.00/0.25=8.00である。
【0049】
《実施例11》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・2−ヒドロキシエタン
−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.50モル/L
・メタンスルホン酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :2.50モル/L
・次亜リン酸ナトリウム :0.40モル/L
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO8) :12.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.50/0.50=5.00である。
【0050】
《比較例1》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・2−ヒドロキシエタン
−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.253モル/L
・スルホ安息香酸 :0.373モル/L
・チオ尿素 :1.31モル/L
・エチレンチオ尿素 :0.98モル/L
・次亜リン酸 :1.21モル/L
・ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド:6.0g/L
チオ尿素類の含有量は1.31+0.98=2.29モル/Lであるが、チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.29/0.253=9.05である。
【0051】
《比較例2》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・2−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.295モル/L
・2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 :0.786モル/L
・アセチルチオ尿素 :1.48モル/L
・p−フェノールスルホン酸ビスマス(Bi3+) :0.0024モル/L・1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン
−ポリエトキシレート(EO10) :10.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は1.48/0.252=5.02であるが、チオ尿素類の含有量は1.48モル/Lである。
【0052】
《比較例3》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・クエン酸第一スズ(Sn2+として) :0.15モル/L
・クエン酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・次亜リン酸 :0.90モル/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO8) :8.0g/L
チオ尿素類の含有量は2.00モル/Lであるが、チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.00/0.15=13.33である。
【0053】
《比較例4》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・クエン酸第一スズ(Sn2+として) :0.25モル/L
・クエン酸 :2.00モル/L
・チオ尿素 :1.80モル/L
・次亜リン酸 :0.90モル/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO8) :8.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は1.80/0.25=7.20であるが、チオ尿素類の含有量は1.80モル/Lである。
【0054】
《比較例5》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
・p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.25モル/L
・p−フェノールスルホン酸 :1.50モル/L
・チオ尿素 :2.00モル/L
・次亜リン酸ナトリウム :0.50モル/L
・α−ナフトールポリエトキシレート(EO10) :5.0g/L
チオ尿素類/Sn2+(モル比)は2.00/0.25=8.00であり、チオ尿素類の含有量は2.00モル/Lであるが、アルカノールスルホン酸又はカルボン酸は含有されていない。
【0055】
《スズメッキ皮膜形成に伴う銅侵食防止度合の評価試験例》
そこで、SLP(電解銅箔の一種)でパターン形成したTABのフィルムキャリアを被メッキ物として、このフィルムキャリアのインナリード上に、上記実施例1〜11及び比較例1〜5の各無電解スズメッキ浴を用いて、浴温65℃、メッキ時間5分の条件で無電解メッキを施して、インナリード上にスズメッキ皮膜を形成した。
次いで、上記フィルムキャリアにおけるスズメッキ皮膜とソルダーレジストとの境界部位を中心に粘着テープを貼り付け、当該テープを垂直方向に速やかに引き上げた後、ソルダーレジストの端部の剥離状況を目視観察して、ソルダーレジストの剥離の有無によるインナリードの露出度合を判定することにより、インナリードの銅侵食防止の優劣を評価した。
その評価基準は次の通りである。
○ :ソルダーレジストの剥離はなく、インナリードの露出は観察されなかっ
た。
× :ソルダーレジストが剥離し、インナリードが剥き出しになった。
【0056】
図1はその試験結果を示す。
実施例1〜11では、共にソルダーレジストの剥離はなく、インナリードが露出することはなかったが、比較例1〜5では、いずれもソルダーレジストが剥離し、インナリードが露出した。
即ち、実施例1〜3を比較例5に対比すると、無電解スズの有機スルホン酸浴にあっては、チオ尿素類/Sn2+のモル比率とチオ尿素類の含有量が本発明の適正範囲内にある場合、アルカノールスルホン酸が浴中に存在する実施例1〜11ではソルダーレジストの剥離を阻止できるが、芳香族スルホン酸しか存在しない比較例5ではインナリードの露出を防止できないことが判り、インナリードの銅侵食を防止する点で、アニオン供給用の有機スルホン酸をアルカノールスルホン酸に特定化することの意義が明らかになった。
この場合、実施例11のように、浴中に有機スルホン酸としてアルカノールスルホン酸と共にアルカンスルホン酸が共存しても、ソルダーレジストの剥離防止効果を良好に発揮できることが確認できた。また、実施例4〜6のように、有機酸をアルカノールスルホン酸からカルボン酸に代替しても、或は、アルカノールスルホン酸と共にカルボン酸を併用しても、ソルダーレジストの剥離防止効果を良好に発揮できることが確認できた。
【0057】
次いで、実施例1〜3を比較例1に対比すると、浴中にアルカノールスルホン酸が含まれ、チオ尿素類の含有量が本発明の適正範囲内であっても、チオ尿素類/Sn2+の含有モル比率が4.0〜8.4の範囲内の実施例1〜3ではソルダーレジストの剥離を阻止できるが、この上限値を越える比較例1ではインナリードの露出を防止できないため、無電解スズの有機スルホン酸メッキ浴にあっては、インナリードの銅侵食を防止する点で、上記含有モル比率を所定値以下に特定化することの重要性が明らかになった。
さらに、実施例1〜3を比較例2に対比すると、浴中にアルカノールスルホン酸が含まれ、チオ尿素類/Sn2+のモル比率が本発明の適正範囲内であっても、チオ尿素類を2〜4モル/Lの範囲で含有する実施例1〜3ではソルダーレジストの剥離を阻止できるが、2モル/Lより少ない比較例2ではインナリードの露出を防止できないため、無電解スズの有機スルホン酸メッキ浴においては、インナリードの銅侵食防止の点で、チオ尿素の含有量を所定範囲に特定化することの重要性が明らかになった。
【0058】
一方、実施例4〜6と比較例3の各カルボン酸浴を対比すると、チオ尿素類の含有量が本発明の適正範囲内であっても、チオ尿素類/Sn2+の含有モル比率の上限値を越える比較例3ではインナリードの露出を防止できないため、当該カルボン酸浴にあっても、インナリードの銅侵食を防止する点で、上記含有モル比率を所定値以下に特定化することの重要性が明らかになった。
また、実施例4〜6と比較例4のカルボン酸浴を対比すると、チオ尿素類/Sn2+の含有モル比率が本発明の適正範囲内であっても、チオ尿素類の含有量が2モル/Lより少ない比較例4ではインナリードの露出を防止できないため、当該有機カルボン浴にあっても、インナリードの銅侵食防止の点で、チオ尿素類の含有量を所定範囲内に特定化することの重要性が明らかになった。
【0059】
以上の点を総合すると、無電解スズの有機スルホン酸メッキ浴を用いて、銅製の微細パターンをソルダーレジストで被覆した形態のTABのフィルムキャリアなどをスズメッキする場合には、ソルダーレジストの剥離を阻止して微細パターンの銅侵食を防止する点で、アニオンを供給する有機スルホン酸としてアルカノールスルホン酸への特定化と、チオ尿素類/Sn2+の含有モル比率及びチオ尿素の含有量の夫々の特定化とが必要であることが確認できた。また、アルカノールスルホン酸に替えてカルボン酸が存在しても、或は、アルカノールスルホン酸と共にカルボン酸が共存しても、他の特定化条件を満たす限り、同様に微細パターンの銅侵食を防止できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜11及び比較例1〜5の各無電解スズメッキ浴を用いて、TABのフィルムキャリアにスズメッキを形成した際の、インナリードの銅侵食防止評価試験の結果を示す図表である。
Claims (9)
- 可溶性第一スズ塩と有機酸とチオ尿素類を含有する無電解スズメッキ浴において、
可溶性第一スズ塩(Sn2+換算)とチオ尿素類の単位リットル当たりの含有モル比率が、チオ尿素類/Sn2+=4.0〜8.4であり、
チオ尿素類の含有量が2〜4モル/Lであり、
上記有機酸としてアルカノールスルホン酸及び/又はカルボン酸を含有することを特徴とする銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。 - 可溶性第一スズ塩(Sn2+換算)の含有量が35〜70g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
- アルカノールスルホン酸が、C1〜C4アルカノールスルホン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
- カルボン酸が、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
- チオ尿素類がチオ尿素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
- 次亜リン酸及びその塩などの酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
- さらに、界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤などの各種添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の銅侵食防止用の無電解スズメッキ浴。
- 請求項1〜7のいずれか1項の無電解スズメッキ浴に銅製の被メッキ物を浸漬して、銅侵食のない状態で被メッキ物上にスズメッキ皮膜を形成することを特徴とする銅侵食防止方法。
- 請求項8の被メッキ物が、銅又は銅合金製の微細パターンの一部をソルダーレジストで被覆した形態のフィルムキャリア、プリント回路基板、フレキシブルプリント基板から選ばれたいずれかであることを特徴とするフィルムキャリアなどの銅侵食防止方法。
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