JP4874532B2 - 睡眠改善剤 - Google Patents

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Description

本発明は、沖縄、南九州、奄美地域に自生しているアキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var sempervirens)を、乳酸菌、酵母、麹等により発酵させて得られる発酵処理物を有効成分とする睡眠改善剤及び/又はACE阻害剤や、前記発酵処理物を含有することを特徴とする睡眠改善作用及び/又はACE阻害作用を有する機能性食品に関する。
植物を原料とし、植物自体をそのまま、或いはそれから抽出し、又は乾燥し煎じて飲用するなど種々の形態で、病気の治療、予防に用いられ、生薬と称して、古くから知られている。植物の一つであるアキノワスレグサは、ノカンゾウの仲間で、ユリ科キスゲ属に属し、方言名をクヮンソウといい、沖縄では、民間薬として従来知られている植物である。最近ではアキノワスレグサの花の乾燥粉末が動物実験により、睡眠時間が1.5倍ほど延びたということが報告されている。
また、アキノワスレグサ から水及び/または水溶性の極性有機溶媒を用いて肝臓障害抑制剤の有効成分を抽出し、肝臓障害抑制剤とすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、アキノワスレグサ 、イタドリ、オオイタビ、オオゴチョウ、カタバミ、クマツヅラ、サツマイモ、ジュズダマ、ツルグミ、ツルソバ、トウアズキ、トウガン、ニガニガグサ、ノカラムシ、ノビル、パパイア、ビョウヤナギ、モクセンナおよびヤマモモからなる群から選ばれた1種類以上の生物素材の乾燥粉末又は抽出物中の成分が作用するように乾燥および抽出条件を定めたことを特徴とする血糖上昇抑制(抗糖尿病・抗肥満)剤、血圧上昇抑制(抗高血圧症)剤、α−アミラーゼ阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤、アンジオテンシン(1)変換酵素阻害剤、食品および食品添加物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
このように従来のものは、アキノワスレグサの植物体そのもの又はその抽出物に関するものであって、発酵させて得られる処理物に関するものでなく、アキノワスレグサを発酵処理させて得られる発酵処理物が未発酵の植物体そのもの又はその抽出物に比して、優れた睡眠改善作用やACE阻害作用を有することは知られていなかった。
特開2001−10968号公報 特開2004−75638号公報
本発明の課題は、睡眠改善作用や高血圧の予防・治療のためのACE阻害作用に優れ、かつ安全な天然資源や、かかる天然資源を含有する睡眠改善作用やACE阻害作用を備えた機能性食品を提供することにある。アキノワスレグサをより有効利用を図るため、該植物を発酵処理することにより、アキノワスレグサの植物自体の摂取より、よりよい睡眠改善作用や、ACE阻害活性作用を奏し得る発酵処理物、及び発酵植物を含有する食品素材・食品
本発明者らは、現代社会においてストレス、食物の偏食、環境等種々の要因により、多くの人が罹患している不眠症、高血圧症等に対し、その予防や治療に有効な天然資源について研究を続けており、アキノワスレグサのより有効な利用を図るため、睡眠改善作用等を有するアキノワスレグサを乳酸菌等により発酵処理すると、睡眠改善作用やACE阻害作用が増強され、かつ風味が向上されて摂取しやすいものとなることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を有効成分とすることを特徴とする睡眠改善剤や、(2)アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする上記(1)記載の睡眠改善剤や、(3)乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の睡眠改善剤や、(4)酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の睡眠改善剤や、(5)麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の睡眠改善剤や、(6)アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を含有することを特徴とする睡眠改善作用を有する機能性食品や、(7)アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする上記(6)記載の睡眠改善作用を有する機能性食品や、(8)乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする上記(6)又は(7)記載の睡眠改善作用を有する機能性食品や、(9)酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする上記(6)又は(7)記載の睡眠改善作用を有する機能性食品や、(10)麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする上記(6)又は(7)記載の睡眠改善作用を有する機能性食品に関する。
また本発明は、(11)アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を有効成分とすることを特徴とするACE阻害剤や、(12)アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする上記(11)記載のACE阻害剤や、(13)乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする上記(11)又は(12)記載のACE阻害剤や、(14)酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする上記(11)又は(12)記載のACE阻害剤や、(15)麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする上記(11)又は(12)記載のACE阻害剤や、(16)アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を含有することを特徴とするACE阻害作用を有する機能性食品や、(17)アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする上記(16)記載のACE阻害作用を有する機能性食品や、(18)乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする上記(16)又は(17)記載のACE阻害作用を有する機能性食品や、(19)酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする上記(16)又は(17)記載のACE阻害作用を有する機能性食品や、(20)麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする上記(16)又は(17)記載のACE阻害作用を有する機能性食品に関する。
本発明によると、アキノワスレグサを発酵処理することにより、未発酵の植物そのものより、睡眠改善作用やACE阻害作用が増強され、かつ、風味が向上した、睡眠改善剤及び/又はACE阻害剤や、睡眠改善作用及び/又はACE阻害作用を有する機能性食品を得ることができる。
本発明の睡眠改善剤及び/又はACE阻害剤としては、アキノワスレグサの発酵処理物を有効成分とするものであれば特に制限されず、また、本発明の睡眠改善作用及び/又はACE阻害作用を有する機能性食品としては、アキノワスレグサの発酵処理物を含有するものであれば特に制限されず、上記アキノワスレグサの発酵処理物の製造方法としては、沖縄、台湾などに自生するアキノワスレグサを、乳酸菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物を用いて発酵させる方法を挙げることができ、発酵の対象となる部分は、全草であっても、また、葉、茎、根、花等、特定の部分であってもよく、これらは生体であっても、乾燥体であってもよい。
また、発酵処理物の製造方法において使用される微生物としては、乳酸菌、枯草菌、酵母、麹を挙げることができ、これらを単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
上記乳酸菌としては、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物が好ましい。上記ストレプトコッカス属に属する微生物としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)を好適に例示することができ、ストレプトコッカス・サーモフィルスIFO13957菌株を具体的に例示することができる。また、ラクトバチルス属に属する微生物としては、ラクトバチルス・プランタリム(L. plantrum)、ラクトバチルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバチルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバチルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属する微生物であることが好ましく、これらの菌のうち、特にラクトバチルス・プランタリムが好ましい。かかるラクトバチルス・プランタリムとしてIFO14712菌株やIFO14713菌株を、ラクトバチルス・デルブリッキとしてIFO13953菌株を、ラクトバチルス・ペントサスとしてIFO12011菌株を、ラクトバチルス・カセイとしてIFO15883菌株を、それぞれ具体的に例示することができる。また、テトラジェノコッカス属に属する微生物としては、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることが好ましく、テトラジェノ・ハロフィルスIFO12172菌株を具体的に例示することができる。また、枯草菌としては、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)IFO3013菌株を具体的に例示することができる。これら乳酸菌や枯草菌は、アキノワスレグサの乾物1g当たり、通常、10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
また、本発明の発酵処理物の製造方法において用いられる酵母としては、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物が好ましい。かかるカンジダ属に属する微生物として、カンジダ・ビルサチルス(Candida versatilis)であることが好ましく、カンジダ・ビルサチルスとしてIFO10038菌株を具体的に例示することができる。サッカロマイセス属に属する微生物として、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシアエとしてIFO0555菌株を具体的に例示することができる。これら酵母菌は、アキノワスレグサの乾物1gあたり、通常10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
また、本発明の発酵処理植物の製造方法において用いられる麹菌は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が好ましい。これら麹菌として、アスペルギルス・アワモリIFO4033菌株やアスペルギルス・ニガーIFO31125菌株を具体的に例示することができる。これら麹菌は、アキノワスレグサの乾物1gあたり、湿菌体として通常1〜5重量%用いることが好ましい。
アキノワスレグサの発酵処理物には、発酵処理後の乾燥物や乾燥粉末やこれらの熱水抽出物も含まれ、これらアキノワスレグサの発酵処理物は、優れた睡眠改善作用を有し、服用前と比較して、30%以上のより長い睡眠時間をとることができるので、睡眠不足を改善するのに役に立つ。また、アキノワスレグサの発酵処理物は、未発酵植物と比べて、風味が向上されて摂取しやすい上に、6%以上のより長い睡眠時間をとることが可能となる。
また、アキノワスレグサの発酵処理物のうち、乳酸発酵処理物は、血圧上昇抑制効果があり、未発酵処理物に比してもより効果が向上される。これは、本発明により得られる発酵処理物について、ACE(Angiotensin I Converting enzyme)阻害活性が未発酵植物より増加することに起因する。ACEは、アンギオテンシンIをアンギオテンシンIIへ変換するのに係わるアンギオテンシンI変換酵素であり、アンギオテンシンIIは血圧を上昇させるホルモンであるところから、ACEの活性を阻害することにより、血圧上昇を予防することが可能となる。
未発酵植物を服用したものと比べると、ACE活性を50%以下にまで阻害することができる。アキノワスレグサは、発酵前にもACE阻害活性を有するが、発酵処理によってACE阻害活性が更に高められ、顕著なACE阻害活性を示すものである。
本発明の発酵処理物の製造方法においては、アキノワスレグサの葉、茎、根、花あるいは全草等の生体又は乾燥体を、3mm以下、好ましくは0.5〜1.0mmの粒径まで粉砕する。3mm以下の粒径とすることにより、発酵菌との接触面積を十分に確保することができ、発酵を効果的に進行させることができる。このような植物の粉砕物に、発酵の進行を促進するため、乾物1重量部に対し、2〜10重量部、特に5重量部程度の水分を添加することが好ましい。かかる粉砕植物に、上述の乳酸菌等の微生物を添加する。菌を培養後、培地へ添加する前に予め混合し、乾燥体である場合の植物の重量に対して、1〜10重量%添加することが好ましい。発酵は、温度20〜50℃、好ましくは40℃で行なわれることが好ましく、発酵時間は、pHや、菌数等の条件による発酵の進行状況や、嗜好により適宜選択することができ、例えば、pH4〜5、菌数10以上であれば、全草では約72時間とするのが好ましい。発酵処理時、必要に応じてエアレーションや脱酸素処理を行なうことができるが、脱酸素処理後に静置培養において発酵させることもでき、この場合の発酵形式は、液体培養でなく固体培養が好ましい。
かかる発酵処理において、発酵菌の資化剤として炭水化物や蛋白質を添加することができる。資化剤としての炭水化物は市販のブドウ糖、蔗糖、廃糖蜜等の糖が好ましく、これらの添加量としては培地当たり1〜10重量%が好ましく、特に3重量%前後が適当である。資化剤としての蛋白質は米糠、ふすま等が好ましく、これらの添加量としては培地当たり1〜5重量%が好ましい。これらの資化剤は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
発酵終了後、乾燥機により水分値が10重量%以下となるように乾燥させることが好ましく、乾燥方法としては、加熱乾燥や凍結乾燥によることができ、熱風乾燥等の加熱乾燥の場合は、品温が100℃以下で行われることが、生理活性成分の失活を防止することができるため好ましい。乾燥後、必要に応じて加熱等公知の方法により滅菌処理を行ない、食品やエキスの原料として使用することができる発酵処理物が得られる。
上記発酵処理物は、乾燥微粉末あるいは熱水抽出液として、睡眠改善剤やACE阻害剤とすることができる。これらを医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。またこれら予防若しくは治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができるが、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することが好ましい。
また、発酵処理物は、乾燥微粉末あるいは熱水抽出液として、食品や食品素材として用い、睡眠改善作用及び/又はACE阻害作用を有する機能性食品とすることができる。食品の種類としては、タブレット、顆粒、カプセル等の他、お茶、コーヒー、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ジュース等の飲料や、パン、ケーキ、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム、ゼリー等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター、ヨーグルト、アイスクリーム、プディング等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮等の各種総菜に配合した機能性食品の形態とすることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[乳酸菌を用いた発酵処理物の製造]
アキノワスレグサの全草の乾燥物を0.1〜3mmの粒径に粉砕した。このアキノワスレグサの乾燥粉砕物30gを入れた容器に水150g、糖蜜0.9g、米ぬか0.9gを添加した。かかる粉砕アキノワスレグサを収納した容器に、ラクトバチルス・プランタリムIFO14712、ストレプトコッカス・サーモフィルスIFO13957、バチルス・ズブチルスIFO3013の各々の菌を培養後、菌数の割合が1:1:1となるように混合した培養液アキノワスレグサ重量に対し10重量%を添加・混合し、容器を密閉し、静置培養により発酵を行った。発酵温度は40℃、発酵時間は72時間とした。その後、乾燥機により水分値が10重量%以下になるまで60℃で乾燥した後、滅菌処理(130℃蒸気、5〜15秒)を行い、アキノワスレグサ醗酵処理物30gを得た。
[酵母菌を用いた発酵処理物の製造]
アキノワスレグサの全草の乾燥物を0.1〜3mmの粒径に粉砕した。このアキノワスレグサの乾燥粉砕物30gを入れた容器に水150g、糖蜜0.9g、米ぬか0.9gを添加した。かかる粉砕アキノワスレグサを収納した容器に、サッカロマイセス・セレビシアエIFO0555の培養液をアキノワスレグサ重量に対し10重量%を添加・混合し、容器を密閉し、静置培養により発酵を行った。発酵温度は30℃、発酵時間は72時間とした。その後、乾燥機により水分値が10重量%以下になるまで60℃で乾燥した後、滅菌処理(130℃蒸気、5〜15秒)を行い、アキノワスレグサ醗酵処理物30gを得た。
[麹菌を用いた発酵処理物の製造]
アキノワスレグサの全草の乾燥物を0.1〜3mmの粒径に粉砕した。このアキノワスレグサの乾燥粉砕物30gを入れた容器に水150g、糖蜜0.9g、米ぬか0.9gを添加した。かかる粉砕アキノワスレグサを収納した容器に、アスペルギルス・アワモリIFO4033の培養後の菌体3g(湿重量)を添加・混合し、容器を密閉し、静置培養により発酵を行った。発酵温度は30℃、発酵時間は72時間とした。その後、乾燥機により水分値が10重量%以下になるまで60℃で乾燥した後、滅菌処理(130℃蒸気、5〜15秒)を行い、アキノワスレグサ醗酵処理物30gを得た。
[アキノワスレグサ発酵処理物の睡眠改善効果]
実施例1〜3より得られた乾燥アキノワスレグサ醗酵処理物、及び乾燥アキノワスレグサ未発酵物を、沸騰させた熱水1リットル(L)に対し各5gずつの割合で加え、5分間抽出し、濾過した濾液を供試液とした。これら4種類の供試液の各々につき、寝つきが悪いか又は不眠症の5名の被験者(計20名)に各200ccを就寝前に4週間にわたり服用してもらい、服用前4週間及び服用後4週間の総睡眠時間及び寝つきの状況について調べた。各被験者には、調査期間中、日時、就寝時刻、入眠時刻、起床時刻、総睡眠時間、備考欄を設けたデータ用紙に記入してもらいデータとした。結果を表1に示す。5名の平均睡眠時間が、乾燥アキノワスレグサ未発酵物投与群では3.92時間から5.14時間と1.22時間延長されたが、実施例1の乳酸菌による発酵処理物投与群では3.98時間から5.46時間と1.48時間延長され、実施例2の酵母菌による発酵処理物投与群では3.98時間から5.45時間と1.47時間延長され、実施例3の麹菌による発酵処理物投与群では3.82時間から5.49時間と1.67時間延長され、これらはいずれも未発酵物投与群の睡眠延長時間を上回っていた。
[発酵処理物の成分分析]
実施例1で得られたアキノワスレグサ醗酵処理物と、発酵処理前のアキノワスレグサ乾燥粉砕物の各1gをそれぞれ80℃熱水25mlで20分間抽出し、これを2回繰り返し50mlに定溶した、抽出液を供試サンプルとして、以下の条件で、HPLC分析を行なった。
カラム:Develosil ODS−HG−5 φ4.6×250mm
波長:260nm
移動相:0.1%TFA−メタノールの0〜100%までのグラジエント分析
流速:1mL/min
注入量:10μL
アキノワスレグサ乾燥粉末の発酵前と醗酵後のそれぞれの熱水抽出液におけるHPLC分析の結果を図1及び2に示す。図1及び2から、明らかなようにアキノワスレグサ醗酵処理物では、発酵前のアキノワスレグサに比べ、10分付近にピークを示す物質(未同定)が有意に増加していることがわかった。
[ACE阻害活性の測定]
実施例1の乳酸菌によるアキノワスレグサ発酵処理物についてACE阻害活性を測定し、発酵前の未発酵アキノワスレグサのACE阻害活性と比較した。ACE(ウサギ肺アセトンパウダー由来、67mU/ml)50μlに、実施例1で得られたアキノワスレグサ醗酵処理物と、発酵処理前のアキノワスレグサ乾燥粉砕物の各1gをそれぞれ80℃熱水25mlで20分間抽出し、これを2回繰り返し50mlに定溶した抽出液それぞれ15μLを添加し37℃、5分間加温した。その後608mM塩化ナトリウムを含むホウ酸緩衝液(pH8.3)に7.6mMとなるように溶解したHippuryl L-histidyl L-leucineを125μL添加し、正確に37℃、30分間反応させた。反応停止には10%トリフルオロ酢酸(TEA)20μLを加え酵素を失活させた。ACE阻害活性は高速液体クロマトグラフィーを用いて遊離した馬尿酸を測定した。コントロールとして水を用いた場合をACE活性100%とした結果を図3に示す。この結果、アキノワスレグサを発酵処理することにより、ACE活性を約50%程度にまで阻害できることがわかった。
[風味の官能検査]
アキノワスレグサの発酵処理物について、嗜好性の試験を行った。実施例1〜3より得られた乾燥アキノワスレグサ醗酵処理物、及び乾燥アキノワスレグサ未発酵物を、沸騰させた熱水1リットル(L)に対し各5gずつの割合で加え、5分間抽出し、濾過した濾液を供試液とし、これら4種類の供試液の各々につき、10人のパネラーが試飲した。評価基準は、特に飲みやすい(5点)、飲みやすい(4点)、ふつう(3点)、飲みにくい(2点)、特に飲みにくい(1点)の5段階とし、乾燥アキノワスレグサ未発酵物の抽出液をふつう(3点)とし、10人のパネラーの平均値として評価したところ、実施例1の乳酸菌による発酵処理物の抽出液は4.2点、酵母菌による発酵処理物の抽出液は3.9点、麹菌による発酵処理物の抽出液は3.4点であった。以上の官能検査の結果から、アキノワスレグサを発酵処理することにより、食味が向上され、嗜好性の改善が図れたことが明らかとなった。
発酵前(比較例:熱水抽出)のHPLCの測定を示す図である。 本発明の発酵処理物(熱水抽出)のHPLCの測定を示す図である。 本発明の発酵処理物のACE阻害活性の測定結果を示す。

Claims (20)

  1. アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を有効成分とすることを特徴とする睡眠改善剤
  2. アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする請求項1記載の睡眠改善剤
  3. 乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠改善剤
  4. 酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠改善剤
  5. 麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠改善剤
  6. アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を含有することを特徴とする睡眠改善作用を有する機能性食品。
  7. アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする請求項記載の睡眠改善作用を有する機能性食品。
  8. 乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする請求項6又は7記載の睡眠改善作用を有する機能性食品。
  9. 酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする請求項6又は7記載の睡眠改善作用を有する機能性食品。
  10. 麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする請求項6又は7記載の睡眠改善作用を有する機能性食品。
  11. アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を有効成分とすることを特徴とするACE阻害剤。
  12. アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする請求項11記載のACE阻害剤。
  13. 乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする請求項11又は12記載のACE阻害剤。
  14. 酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする請求項11又は12記載のACE阻害剤。
  15. 麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする請求項11又は12記載のACE阻害剤。
  16. アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var.sempervirens)を乳酸菌、枯草菌、酵母、麹菌又はこれらの混合物により発酵させて得られる発酵処理物を含有することを特徴とするACE阻害作用を有する機能性食品。
  17. アキノワスレグサの全草の発酵処理物であることを特徴とする請求項16記載のACE阻害作用を有する機能性食品。
  18. 乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する微生物であることを特徴とする請求項16又は17記載のACE阻害作用を有する機能性食品。
  19. 酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物であることを特徴とする請求項16又は17記載のACE阻害作用を有する機能性食品。
  20. 麹菌が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする請求項16又は17記載のACE阻害作用を有する機能性食品。
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