JP2004201598A - 発酵処理物及びその製造方法 - Google Patents

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盛雄 稲福
Tamae Sonomoto
たまえ 祖納元
Megumi Yonaha
恵 与那覇
Okihiro Arime
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Abstract

【課題】ミネラルが豊富な有効成分を含有するにも拘わらず、その苦味のために摂取が困難な田七人参について食感や食味の改善を図り、血糖値上昇抑制効果や肥満抑制効果を有し、利用価値が大きい食品や食品素材を得る。
【解決手段】田七人参(Panax notoginseng)の発酵処理物であって、好ましくは、田七人参の根の発酵処理物であり、田七人参の根が0.1〜3mmの粒径を有する乾燥根とし、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られるものが好ましく、特に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの混合菌により発酵させて得られるものが好ましい。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、田七人参、特にその根を、乳酸菌、酵母、枯草菌等により発酵させ食味を改善した発酵処理物やその製造方法、これを含有する食品素材や食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
田七人参(Panax notoginseng)はウコギ科(Rubiacea)オタネニンジン属に属し、中国雲南省等で栽培されており、サポニン配糖体を含有し循環器疾患、糖尿病、肝臓疾患等に効能があり、漢方薬として利用されているが、苦味が強く、食用としては用いられてはいない。
【0003】
一方、田七人参にマイクロ波を照射することにより、リパーゼ活性阻害作用を有し、血糖値を低下させ、抗糖尿作用を有する生薬(例えば、特許文献1参照。)や、田七人参から溶媒を用いて抽出したエキス又は田七人参の組織をオーキシンやサイトカイン等のホルモンを添加して培養した培養物を溶媒を用いて抽出したエキスを含有した免疫抑制効剤(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−114696号公報
【特許文献2】
特開平11−139979号公報
【0005】
しかしながら、これら特許文献に記載される生薬や免疫抑制剤等は、血糖値を低下させ、糖尿病や免疫性疾患に対して効能があっても、食味が改善されたものではなく、このため、食品や食品素材として使用される場合であっても好まれて食されるに至るものではなく、その摂取量は極少量に限られ、顕著なる効果を得ることに対して限界があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、血糖値上昇抑制作用を有する優れた天然資源の開発を目的とし、血糖値上昇抑制作用や、肥満抑制作用を有しつつ、その苦味のため、食品や食品素材として利用範囲が限られていた田七人参の、食品や食品素材としての有効利用を図るため、田七人参、特にその根を発酵処理することにより、血糖値上昇抑制作用や、肥満抑制作用を維持しつつ、食感や食味を改善した発酵処理物やその製造方法、発酵処理物を含有する食品や、食品素材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、血糖値上昇抑制作用等を有する有効成分を含有する優れた天然資源の開発のため、食材としての利用されていない植物の有効利用を図る研究を行ない、アミラーゼ阻害活性や、抗酸化活性を有する成分を、葉に含有するグアバについて、発酵させた葉の薬効が増進されつつ渋味やえぐ味が抑制され食味が改善されることを見い出し、発酵させたグアバの葉を含む発酵食材を既に開発し(特願2001−63142号)、更に、ニガナの葉やシークワーサーの外果皮等を乳酸菌等により発酵処理すると、食味が向上され、摂取しやすくなると共に、抗酸化性を有する有効成分のケルセチンの含量の増加に伴い抗酸化作用が増加し、血圧上昇抑制作用が強化されることを見い出し、ニガナやシークワーサーの乳酸発酵処理物等を開発し(特願2002−236155号)、沖縄で街路樹としてよく見られ食材として利用されていないモモタマナの葉にミネラルが多く含有することを見い出し、モモタマナの葉を乳酸菌等を用いて発酵させることにより得られる発酵処理物が発酵前には含有されないケルセチンを含有し、優れた抗酸化活性を有する発酵処理物等を開発した。更に、本発明者らは血糖値上昇抑制作用、肥満抑制作用、抗高脂血症作用、抗酸化活性作用等を有する田七人参を乳酸菌等により発酵処理すると、これらの作用を維持しつつ、食味が向上され、摂取しやすくなるため、増量して摂取しやすくなることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、田七人参(Panax notoginseng)の発酵処理物であることを特徴とする発酵処理物(請求項1)や、田七人参の根の発酵処理物であることを特徴とする請求項1記載の発酵処理物(請求項2)や、田七人参の根が0.1〜3mmの粒径を有する乾燥根であることを特徴とする請求項2記載の発酵処理物(請求項3)や、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の発酵処理物(請求項4)や、乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属することを特徴とする請求項4記載の発酵処理物(請求項5)や、ストレプトコッカス属に属する菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)であることを特徴とする請求項5記載の発酵処理物(請求項6)や、ラクトバシルス属に属する菌が、ラクトバシルス・プランタリム(L. plantarum)、ラクトバシルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバシルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバシルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属することを特徴とする請求項5記載の発酵処理物(請求項7)や、テトラジェノコッカス属に属する菌が、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることを特徴とする請求項5記載の発酵処理物(請求項8)や、酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属することを特徴とする請求項4記載の発酵処理物(請求項9)や、カンジダ属に属する菌が、カンジダ・ビルサチルス(C. versatilis)であることを特徴とする請求項9記載の発酵処理物(請求項10)や、サッカロマイセス属に属する菌が、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることを特徴とする請求項9記載の発酵処理物(請求項11)や、枯草菌が、バシルス・ズブチルス(B. subtilis)であることを特徴とする請求項4記載の発酵処理物(請求項12)や、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの混合菌の発酵によることを特徴とする請求項4記載の発酵処理物(請求項13)や、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの菌数がほぼ同数の発酵によることを特徴とする請求項13記載の発酵処理物(請求項14)や、ラクトバシルス・プランタリムの菌数が全体の菌数に対してほぼ1/3〜1/2の発酵によることを特徴とする請求項13記載の発酵処理物(請求項15)や、請求項1〜15のいずれか記載の発酵処理物を含有することを特徴とする食品素材又は食品(請求項16)に関する。
【0009】
また本発明は、田七人参(Panax notoginseng)の根を発酵させることを特徴とする発酵処理物の製造方法(請求項17)や、田七人参が0.1〜3mmの粒径を有する乾燥根であることを特徴とする請求項17記載の発酵処理物の製造方法(請求項18)や、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌を用いて発酵させることを特徴とする請求項17又は18記載の発酵処理物の製造方法(請求項19)や、乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属することを特徴とする請求項19記載の発酵処理物の製造方法(請求項20)や、ストレプトコッカス属に属する菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)であることを特徴とする請求項20記載の発酵処理植物の製造方法(請求項21)や、ラクトバシルス属に属する菌が、ラクトバシルス・プランタリム(L. plantarum)、ラクトバシルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバシルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバシルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属することを特徴とする請求項20記載の発酵処理物の製造方法(請求項22)や、テトラジェノコッカス属に属する菌が、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることを特徴とする請求項20記載の発酵処理物の製造方法(請求項23)や、酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属することを特徴とする請求項18記載の発酵処理物の製造方法(請求項24)や、カンジダ属に属する菌が、カンジダ・ビルサチルス(C. versatilis)であることを特徴とする請求項24記載の発酵処理物の製造方法(請求項25)や、サッカロマイセス属に属する菌が、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることを特徴とする請求項24記載の発酵処理物の製造方法(請求項26)や、枯草菌が、バシルス・ズブチルス(B. subtilis)であることを特徴とする請求項19記載の発酵処理物の製造方法(請求項27)ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの混合菌を用いることを特徴とする請求項19記載の発酵処理物の製造方法(請求項28)や、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスのほぼ同数の混合菌を用いることを特徴とする請求項28記載の発酵処理物の製造方法(請求項29)や、ラクトバシルス・プランタリムの菌数が全体の菌数に対してほぼ1/3〜1/2であることを特徴とする請求項28記載の発酵処理物の製造方法(請求項30)や、乾物根1重量部に対し1〜10重量部の水分の存在下で発酵させることを特徴とする請求項17〜30のいずれか記載の発酵処理物の製造方法(請求項31)や、炭水化物及び/又は蛋白質を添加して発酵させることを特徴とする請求項17〜31のいずれか記載の発酵処理物の製造方法(請求項32)や、蛋白質が、米ぬか及び/又はふすまであることを特徴とする請求項32記載の発酵処理物の製造方法(請求項33)に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、田七人参(Panax notoginseng)の発酵処理物であれば、特に制限されることはない。本発明に適用される田七人参は、ウコギ科(Rubiacea)オタネニンジン属に属し、中国雲南省の海抜800〜1000m産の草本植物である。田七人参の発酵処理の対象となる部分は、葉、茎、種子、花、細根、主根等いずれであってもよいが、根が好適であり、生体であっても、乾燥体であってもよい。
【0011】
本発明の田七人参の発酵処理物は、発酵によりその成分が変化したものであり、HPLCで測定した分析値は、未発酵の田七人参の分析値(図2)と比較して、21分、22分における成分が増加したものである(図1)。
【0012】
また、本発明の田七人参の発酵処理物は、発酵により全糖量の含有量が低減されたものである(図3)。全糖量の測定は、例えば、ナフトール・硫酸法(Molish法)、ナフトレゾルシン・塩酸法、レゾルシン・塩酸法(Seliwanoff法)、アンスロン・硫酸法、フロログルシン・硫酸法、オルシン・塩酸第二鉄・硫酸法等のフェノール性化合物と、強酸及び糖から生成するフルフラール又はヒドロキシメチルフルフラールとの反応生成物を定量する方法により測定することができる。
【0013】
また、本発明の田七人参の発酵処理物は、発酵によりミネラルの含量が変化したものであり、カリウム、ナトリウム、鉄、カルシウム、亜鉛等のミネラルは未発酵物における含有量より増加する(図4)。
【0014】
本発明の発酵処理物の製造方法は、田七人参を発酵させる方法であれば特に制限されるものではないが、発酵処理するために使用される微生物としては、乳酸菌、酵母、枯草菌を挙げることができ、これらを単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することもでき、これらのうち乳酸菌を用いることが好ましく、乳酸菌単独、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌等の組み合わせとして使用することができる。
【0015】
本発明の発酵処理物の製造方法に用いられる乳酸菌としては、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する菌が好ましく、特にラクトバシルス属が好ましい。上記ストレプトコッカス属に属する菌としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)であることが好ましく、ストレプトコッカス・サーモフィルスIFO13957菌株を具体的に例示することができる。また、ラクトバシルス属に属する菌としては、ラクトバシルス・プランタリム(L. plantrum)、ラクトバシルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバシルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバシルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属する菌であることが好ましく、これらの菌のうち、特にラクトバシルス・プランタリムが好ましい。かかるラクトバシルス・プランタリムとしてIFO14712菌株やIFO14713菌株を、ラクトバシルス・デルブリッキとしてIFO13953菌株を、ラクトバシルス・ペントサスとしてIFO12011菌株を、ラクトバシルス・カセイとしてIFO15883菌株を、それぞれ具体的に例示することができる。また、テトラジェノコッカス属に属する菌としては、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることが好ましく、テトラジェノ・ハロフィルスIFO12172菌株を具体的に例示することができる。これら乳酸菌は、田七人参の根の乾物1gあたり、通常10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明の発酵処理物の製造方法において用いられる酵母は、主として香りの改善のために添加され、かかる酵母としては、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する菌が好ましい。かかるカンジダ属に属する菌として、カンジダ・ビルサチルス(Candida versatilis)であることが好ましく、カンジダ・ビルサチルスとしてIFO10038菌株を具体的に例示することができる。サッカロマイセス属に属する菌として、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシアエとしてIFO0555菌株を具体的に例示することができる。これら酵母菌は、田七人参の根の乾物1gあたり、通常10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
【0017】
更に、本発明の発酵処理物の製造方法において用いられる枯草菌としては、バシルス・ズブチルス(B. subtilis)IFO3013菌株を具体的に例示することができる。これら枯草菌は、田七人参の乾物1gあたり、通常10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
【0018】
本発明の発酵処理物の製造方法において、好ましく用いられる微生物群としては、乳酸菌、酵母及び枯草菌を含む微生物群が好ましく、これら微生物群の中でも、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの混合菌であることが好ましく、これらは田七人参の乾物に対し、菌数として同数を使用してもよく、また、ラクトバシルス・プランタリムの菌数として全体の菌数に対してほぼ1/3〜1/2であってもよい。このような菌数の組合せにおいて菌を使用することにより、発酵時間の短縮を図り、ひいては雑菌の繁殖を抑制することができる。
【0019】
本発明の発酵処理物の製造方法においては、田七人参の根の乾燥体を、3mm以下、好ましくは0.5〜1.0mmの粒径まで粉砕する。3mm以下の粒径とすることにより、発酵菌との接触面積を十分に確保することができ、発酵を効果的に進行させることができ、0.5〜1.0mmの範囲の粒径であれば、かかる効果がより顕著に得られる。このような植物の粉砕物に、発酵の進行を促進するため、乾物1重量部に対し、1〜10重量部、特に4〜6重量部程度の水分を添加することが好ましい。かかる粉砕植物に、上述の菌又は菌群を添加する。菌群は各々菌を培養後、培地へ添加する前に予め混合し、乾燥体である場合の植物の重量に対して、1〜10重量%添加することが好ましい。発酵は、温度20〜50℃、好ましくは40℃で行なわれることが好ましく、発酵時間は、pHや、菌数等の条件による発酵の進行状況や、嗜好により適宜選択することができ、例えば、pH3〜6、菌数10以上であれば、約72時間とすることが好ましい。発酵処理時、必要に応じてエアレーションや脱酸素処理を行なうことができるが、脱酸素処理後に静置培養において発酵させることができる。発酵形式は、液体培養でなく固体培養が好ましい。
【0020】
かかる発酵処理において、発酵菌の資化剤として炭水化物や蛋白質を添加することができる。資化剤としての炭水化物は市販のブドウ糖、蔗糖、廃糖蜜等の糖が好ましく、これらの添加量としては培地当たり1〜10重量%が好ましく、特に3重量%前後が適当である。資化剤としての蛋白質は米糠、ふすま等が好ましく、これらの添加量としては培地当たり1〜5重量%が好ましい。これらの資化剤は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
発酵終了後、乾燥機により水分値が10重量%以下となるように乾燥させることが好ましく、乾燥方法としては、加熱乾燥や凍結乾燥によることができ、加熱乾燥の場合は、品温が100℃以下で行われることが、生理活性成分の失活を防止することができるため好ましい。乾燥後、必要に応じて加熱等公知の方法により滅菌処理を行ない、食品素材や、エキスの原料として使用される発酵処理物が得られる。
【0022】
本発明の発酵処理物は、食品素材としては発酵処理物自体や、飲用水に抽出したエキスから作製するタブレット、顆粒、カプセル等や、ティーバック、ペットボトル、缶、ドリンク剤用の茶葉を挙げることができる。また、発酵処理物自体や抽出したエキスから作製する顆粒等をふりかけ等の食品素材として利用したり、健康食品として利用することもできる。また、かかるエキスや顆粒を飲用水や、ジュース等に溶解した飲料や、パン、ケーキ、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム、ゼリー等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター、ヨーグルト、アイスクリーム、プディング等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮等の各種総菜に配合した食品として使用することができる。
【0023】
また、本発明の発酵処理物のエキス等を抗酸化活性組成物や肥満抑制剤等の医薬品として用いることもでき、その場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。またこれら予防若しくは治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することもできる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1:発酵処理物の製造
乾燥した田七人参の根30gを0.1〜3mmの粒径に粉砕し容器に入れた。田七人参を入れた容器に水150g、糖蜜0.9gを添加した。かかる粉砕田七人参を収納した容器に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの各々の菌を培養後、ラクトバシルス・プランタリムと、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びバシルス・ズブチルスの菌数がほぼ1:1の割合となるように混合し、田七人参の重量に対し、10重量%を添加し、容器を密閉し、静置培養により発酵を行った。発酵温度は40℃、発酵時間は72時間とした。発酵処理工程において、乳酸菌及び一般生菌の菌数とpHを測定した。その後、乾燥機により水分値が10重量%以下になるまで60℃で乾燥した後、滅菌処理(130℃蒸気、5〜15秒)を行い、醗酵田七人参30gを得た。発酵処理工程における乳酸菌及び一般生菌の菌数を表1、図5に、pHを表2に示す。
【0025】
【表1】
Figure 2004201598
【0026】
【表2】
Figure 2004201598
【0027】
結果から、乳酸菌、一般生菌ともほぼ同様に変化することがわかった。
【0028】
実施例2:発酵処理物の成分分析
実施例1で得られた醗酵田七人参と、発酵処理前の田七人参について、それぞれ50%エタノール抽出物10mg/mlサンプルを調製し、以下の条件で、HPLC分析を行なった。醗酵田七人参と発酵前の田七人参についての結果をそれぞれ図1、図2に示す。
カラム:Develosil ODS−HG−5 φ4.6×250mm
波長:250nm
移動相:0.1%TFA−メタノールの0〜100%までのグラジエント分析
流速:1ml/min
注入量:10μl
結果から、明らかなように醗酵田七人参は、発酵前の田七人参に比べ、21分における値が未発酵の値と比較して1.8倍となり、22分における値が未発酵の値の1.6倍となった。
【0029】
実施例3:発酵処理物の成分含有量の測定
(1)ミネラルの測定
各種ミネラルについて、実施例1で得られた醗酵田七人参と未発酵の田七人参の含有量を測定した。測定は原子吸光法により行った。
試料0.5gをユニシールに入れ、硝酸10mlを加え、150℃で90分間反応させた。放冷後、100mlトールビーカーに移し、塩酸:過酸化水素(1:1)溶液を10ml加えサンドバス上にて蒸発乾固した後、希塩酸10mlを加え加熱した。放冷後50mlに定容し測定用サンプルとした。調製したサンプルは適宜希釈し、原子吸光度計(SHIMADZU社製:AA−660)を用いサンプルの吸光度を測定し、測定値から濃度を算出し、ミネラルの含有量を求めた。結果を表3、図4に示す。
【0030】
【表3】
Figure 2004201598
【0031】
(2)全糖量の測定
還元糖及び非還元糖の合計の全糖の含有量について、フェノール・硫酸法によって測定した。
粉砕試料1gに水20ml添加後超音波抽出を10分間行なった。濾過後、残渣について、同様に5回超音波抽出を反復し、残渣を100mlに定容した。得られた液の0.5mlに5%フェノール溶液0.5mlを添加後、濃硫酸2.5mlを加え攪拌し、15分間放置後、吸光度計(SHIMADZU社製:UV−1200V)490nmで吸光度を測定し、グルコース量に換算した。結果を表4、図3に示す。結果から発酵後の全糖の含有量は減少していることが明らかである。
【0032】
【表4】
Figure 2004201598
【0033】
実施例4:食味の検査
醗酵田七人参について、嗜好性の試験を行った。
実施例1で得られた醗酵田七人参と、未醗酵田七人参とを29人のパネラーが試食した。17人のパネラーが醗酵田七人参の苦味、食感が改善されていると感じた。
また、実施例1で得られた醗酵田七人参2g及び醗酵ウコン((株)琉球バイオリソース開発社製)1gとの混合物と、未発酵乾燥田七人参について、29人のパネラーが試食した。21人のパネラーが醗酵田七人参と醗酵ウコンの混合物の苦味や、食感が改善されていると感じた。
結果から、醗酵田七人参の食感や食味が向上され、特に醗酵ウコンと混合すると、より苦味が改善され、嗜好性の改善が図られることが明らかである。
【0034】
【発明の効果】
本発明の発酵処理物やその製造方法によれば、ミネラルを豊富に含有し、血糖値上昇抑制作用を有するにも拘わらず、その苦味のため、食品や食品素材として利用範囲が限られていた田七人参の有効利用を図り、田七人参、特にその根を発酵処理することにより、血糖値上昇抑制作用や、肥満抑制作用を維持しつつ、食感や食味を改善し、ミネラルが豊富で抗酸化活性を強化した発酵処理物を得、利用価値が大きい食品や食品素材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発酵処理物のHPLCの測定を示す図である。
【図2】未発酵の田七人参のHPLCの測定を示す図である。
【図3】本発明の発酵処理物の全糖量を示す図である。
【図4】本発明の発酵処理物のミネラル含有量を示す図である。
【図5】本発明の発酵処理物の発酵処理工程における菌数を示す図である。

Claims (33)

  1. 田七人参(Panax notoginseng)の発酵処理物であることを特徴とする発酵処理物。
  2. 田七人参の根の発酵処理物であることを特徴とする請求項1記載の発酵処理物。
  3. 田七人参の根が0.1〜3mmの粒径を有する乾燥根であることを特徴とする請求項2記載の発酵処理物。
  4. 乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の発酵処理物。
  5. 乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属することを特徴とする請求項4記載の発酵処理物。
  6. ストレプトコッカス属に属する菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)であることを特徴とする請求項5記載の発酵処理物。
  7. ラクトバシルス属に属する菌が、ラクトバシルス・プランタリム(L. plantarum)、ラクトバシルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバシルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバシルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属することを特徴とする請求項5記載の発酵処理物。
  8. テトラジェノコッカス属に属する菌が、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることを特徴とする請求項5記載の発酵処理物。
  9. 酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属することを特徴とする請求項4記載の発酵処理物。
  10. カンジダ属に属する菌が、カンジダ・ビルサチルス(C. versatilis)であることを特徴とする請求項9記載の発酵処理物。
  11. サッカロマイセス属に属する菌が、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることを特徴とする請求項9記載の発酵処理物。
  12. 枯草菌が、バシルス・ズブチルス(B. subtilis)であることを特徴とする請求項4記載の発酵処理物。
  13. ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの混合菌の発酵によることを特徴とする請求項4記載の発酵処理物。
  14. ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの菌数がほぼ同数の発酵によることを特徴とする請求項13記載の発酵処理物。
  15. ラクトバシルス・プランタリムの菌数が全体の菌数に対してほぼ1/3〜1/2の発酵によることを特徴とする請求項13記載の発酵処理物。
  16. 請求項1〜15のいずれか記載の発酵処理物を含有することを特徴とする食品素材又は食品。
  17. 田七人参(Panax notoginseng)の根を発酵させることを特徴とする発酵処理物の製造方法。
  18. 田七人参が0.1〜3mmの粒径を有する乾燥根であることを特徴とする請求項17記載の発酵処理物の製造方法。
  19. 乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌を用いて発酵させることを特徴とする請求項17又は18記載の発酵処理物の製造方法。
  20. 乳酸菌が、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属することを特徴とする請求項19記載の発酵処理物の製造方法。
  21. ストレプトコッカス属に属する菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)であることを特徴とする請求項20記載の発酵処理植物の製造方法。
  22. ラクトバシルス属に属する菌が、ラクトバシルス・プランタリム(L. plantarum)、ラクトバシルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバシルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバシルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属することを特徴とする請求項20記載の発酵処理物の製造方法。
  23. テトラジェノコッカス属に属する菌が、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることを特徴とする請求項20記載の発酵処理物の製造方法。
  24. 酵母が、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属することを特徴とする請求項18記載の発酵処理物の製造方法。
  25. カンジダ属に属する菌が、カンジダ・ビルサチルス(C. versatilis)であることを特徴とする請求項24記載の発酵処理物の製造方法。
  26. サッカロマイセス属に属する菌が、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることを特徴とする請求項24記載の発酵処理物の製造方法。
  27. 枯草菌が、バシルス・ズブチルス(B. subtilis)であることを特徴とする請求項19記載の発酵処理物の製造方法。
  28. ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの混合菌を用いることを特徴とする請求項19記載の発酵処理物の製造方法。
  29. ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスのほぼ同数の混合菌を用いることを特徴とする請求項28記載の発酵処理物の製造方法。
  30. ラクトバシルス・プランタリムの菌数が全体の菌数に対してほぼ1/3〜1/2であることを特徴とする請求項28記載の発酵処理物の製造方法。
  31. 乾物根1重量部に対し1〜10重量部の水分の存在下で発酵させることを特徴とする請求項17〜30のいずれか記載の発酵処理物の製造方法。
  32. 炭水化物及び/又は蛋白質を添加して発酵させることを特徴とする請求項17〜31のいずれか記載の発酵処理物の製造方法。
  33. 蛋白質が、米ぬか及び/又はふすまであることを特徴とする請求項32記載の発酵処理物の製造方法。
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