JP2006296251A - α−グルコシダーゼ阻害剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】味、香り等において、味覚に影響を与えることがなく、単体のまま豆状でも粉状でもそのまま摂食でき、食後血糖値上昇抑制作用を有するα−グルコシダーゼ阻害物を提供する。
【解決手段】大豆を製麹原料とし、モナスカス属に属する糸状菌により培養して得た大豆紅麹及び/またはその抽出物を有効成分とするα−グルコシダーゼ阻害剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、α−グルコシダーゼ阻害剤、及び、その製造法、並びにこれを含有する食品又は医薬品に関する。
紅麹は穀類にモナスカス属の菌株を繁殖させた麹で、中国、台湾などでは紅酒、老酒、紅乳腐などの醸造原料として利用されており、また古来より生薬として「消食活血」「健脾燥胃」などの効果が知られている。(李時珍「本草綱目」(1590年))。
また、血圧降下作用、コレステロール改善作用等、様々な機能を有することが知られ、味噌、醤油、食酢等の醸造食品をはじめ、パン、麺類等、色々な食品に使われている。更に、サプリメントとして、或いは、エキスを抽出して添加したドリンク剤としても利用されている。
一方、血糖低下作用を有する麹については、例えば、特許文献1がある。
また、大豆発酵食品由来のα−グルコシダーゼ阻害剤としては、例えば、豆類又は穀類をアスペルギルス属のかびを用いて固体培養し、得られた培養物を水で抽出したものが、特許文献2、及び3に開示されている。
しかしながら、製麹原料として大豆類を特定し、モナスカス属の菌株を用いて固体培養して得られた大豆紅麹及び/またはその抽出物を用いたα−グルコシダーゼ阻害剤については開示されていない。
特公昭60−44914号公報 特開2001−186877号公報 特開2004−166628号公報
米、若しくは米を主体とした紅麹においては、独特の風味、味臭があり、通常の食品に添加する場合、自ずと添加量には限界がある。従って、米紅麹の薬理効果を利用する場合、食品本来の風味を損う傾向がある。一方、近年大豆成分の健康機能が脚光を浴びているが、大豆紅麹の場合、食感、風味に優れる特徴があり、大量摂取が可能である。
本発明の目的は、安全性が高く、医薬はもとより、健康食品、一般の食品への適用が可能であり、優れたα−グルコシダーゼ阻害活性を有するα−グルコシダーゼ阻害剤を提供することにある。
よって、これを用いることにより、食後血糖値上昇抑制作用を有し、その結果過血糖症状及び過血糖に起因する肥満症、脂肪過多症、過脂肪血症、糖尿病などの予防、治療に有効で、食餌療法に適し、さらに健康人の疾病予防の新規な食材としてその機能を発揮するものである。
本発明者等は、大豆を製麹原料として用い、紅麹菌を使用して製麹して得られる大豆紅麹、及びその抽出物には、優れたα−グルコシダーゼ阻害活性があることを見出し、改良を重ねることにより完成したもので、下記に掲げる発明を提供するものである:
項1.大豆を製麹原料とし、モナスカス属に属する糸条菌により培養して得た大豆紅麹及び/またはその抽出物を有効成分とするα−グルコシダーゼ阻害剤。
項2.抽出溶剤が含水アルコールである項1記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
項3.大豆を原料とし、モナスカス属に属する糸状菌を植菌し、3〜30日間培養することを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害物質を含有する紅麹の製造法。
項4.モナスカス属に属する糸状菌が、モナスカス・ピロウサスである項3に記載の製造法。
項5.項1又は2に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤を含有することを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害用の食品又は医薬品。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、大豆を製麹原料(固体培地)とするものである。かかる大豆の原産地、品種は特に限定されない。即ち、白大豆、黒豆、青豆等各種のものを用いることができ、勿論、これらを適宜混合して用いても良い。かかる大豆は、脱脂大豆、大豆胚軸、丸大豆、割砕大豆の何れでもよいが、特に、味・香りの理由において、丸大豆が好ましい。
上記製麹原料には、紅麹菌の生育を補助する成分が添加されていてもよく、かかる成分としては、例えば、酵母エキス、コースティーリカー、ペプトン、ビタミン、無機質等が挙げられる。
かかる製麹原料は、製麹に先立って、加熱等の公知の手段により、殺菌処理されていることが望ましい。
培養条件としては、培地の水分率を35〜60%、好ましくは、40〜55%、培地のpHを培養期間中において4.0〜8.0、好ましくは、4.5〜7.0、培養環境の室温を18〜37℃、好ましくは、25〜35℃、培養日数を3〜30日、好ましくは、6〜14日間とする。
上記pHに調整するためのpH調整剤としては、酢酸、塩酸、クエン酸、乳酸等が利用できる。
かかる条件の範囲において、α-グルコシダーゼ阻害活性の高い大豆紅麹を得ることが可能なことは新たな知見である。
培養に用いる紅麹菌としては、モナスカス(Monascus)属に属し、食品衛生上又は薬学的に許容されるものであれば、特に制限することなく使用できる。例えば、モナスカス・プルプレウス(Monascus purpureus)、モナスカス・アンカ(Monascus anka)、モナスカス・ピローサス(Monascus pilosus)モナスカス・ルーバー(Monascus ruber)や、これらの変種、変異株などが例示できるが、当該目的において、また、食用として既に用いられていることからモナスカス・ピローサス(Monascus pilosus)が好ましい。
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、特に抽出エキスにおいてその効果が高い。
かかる抽出に関しては、例えば、得られた麹、あるいはその乾燥物または粉末を、常法により、含水アルコール、アセトン、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールの溶媒で抽出して得ることができる。特に、含水アコールを用いた場合、抽出効率の点において好ましい。 また、その濃度はアルコール50重量%に対し、水50重量%の割合にあるものがα−グルコシダーゼ阻害物質の抽出度合いが高く好ましい。
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、麹の利用法として公知の全ての用途に利用でき、醸造食品の原料としてだけでなく、常法により、菌および酵素の失活物、乾燥物、乾燥粉砕物、粉末、顆粒物、水溶液、ペースト状物、抽出エキス、抽出エキス濃縮物、抽出エキスなどのごとき加工物として用いることができる。
具体的には、ジュース、清涼飲料、健康ドリンク、菓子類、パン、シリアル、アイスクリーム、お茶、ふりかけ、麺類、各種惣菜、納豆や豆腐、食用油、味噌や日本酒など醸造食品、醤油などの各種調味料、マヨネーズやマーガリンなどの乳製品、ソーセージなどの魚肉類ねり製品、カプセル化食品、錠剤、サプリメント等、いろいろな飲食物の原料、或いは、添加物として好適に用いることができる。
また、特定保健用食品や栄養補助食品等の場合であれば、錠剤、粉末、顆粒、カプセル、トローチ、トローチ、シロップ、液体等の形態のものであってもよい。これらの中で好適なものとして、錠剤、粉末、顆粒、カプセル、液体等を挙げることができる。
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を含有する食品において、該食品中の該α−グルコシダーゼ阻害剤の配合割合については、該食品の種類、有効成分の種類、対象者の年齢、性別、期待される効果等に応じて、適宜設定すればよい。例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤の有効成分として大豆紅麹を使用する場合であれば、食品の総重量に対して、大豆紅麹が、乾燥重量換算で、3〜100重量%となる割合を挙げることができる。また、例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤の有効成分として大豆紅麹の抽出物を使用する場合であれば、食品の総重量に対して、当該抽出物が、乾燥重量換算で、0.5〜50重量%となる割合を挙げることができる。
α−グルコシダーゼ阻害剤を含有する食品の摂取量については、年齢、体重、症状等により異なるが、例えば、成人1日当たりの摂取量として、該α−グルコシダーゼ阻害剤が、大豆紅麹の乾燥重量に換算して0.1〜100gに相当する量を挙げることができる。
一方、医薬分野では、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化され、α−グルコシダーゼ阻害用の医薬品に調製され、使用される。当該医薬品には、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤化剤、緩衝剤、保存剤、香料等の薬学的に許容される添加剤を任意に配合してもよい。当該医薬組品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤等を挙げることができる。
α−グルコシダーゼ阻害剤を含有する医薬品の投与量については、有効成分の種類、投与対象者の年齢や体重、症状、投与回数等によって異なり一律に規定することはできないが、例えば、成人1日当たりの投与量として、α−グルコシダーゼ阻害剤が、大豆紅麹の乾燥重量に換算して1〜100gに相当する量を挙げることができる。
α−グルコシダーゼ阻害剤を含有する医薬品の投与回数については、有効成分の種類、投与対象者の年齢や体重、症状、該医薬品の1回当たりの投与量等に応じて適宜設定できる。
なお、α−グルコシダーゼ阻害剤を含有する医薬品における該α−グルコシダーゼ阻害剤の配合割合については、該医薬品の形態や前記投与量等に応じて適宜設定すればよい。
製麹原料として大豆を用いて製麹した大豆紅麹には、他の製麹原料(例えば、米や小麦等)を使用した場合に比して、顕著に優れたα−グルコシダーゼ阻害活性を有する成分が生成されている。そのため、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、優れたα−グルコシダーゼ阻害活性を有しており、実用性が高く有用である。
また、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、長年食されている食品成分を原料として使用しており、安全性の点で優れているので、医薬品のみならず、食品としても応用可能で、これを利用し、様々な醸造食品や主食、飲料、健康食品、医薬品など幅広い食品分野に展開でき、食後血糖値上昇抑制作用を有し、その結果過血糖症状及び過血糖に起因する肥満症、脂肪過多症、過脂肪血症、糖尿病などの予防、治療に有効で、食餌療法に適し、さらに健康人の疾病予防の新規な食材としてその機能を発揮するものである。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例におけるα-グルコシダーゼ阻害活性は以下の方法により求めた。
1.α-グルコシダーゼとしては、Bacillus stearothermophilus由来のα-グルコシダーゼ(SIGMA社製)を用いた。
2.測定原理
(1) α-グルコシダーゼ活性は、p-nitrophenyl-α-D-glucopyranosideの加水分解で生成されたp-nitrophenolの量を測定したものである。
3.酵素反応
(1) 試料溶液(50μl)
被験抽出エキス(大豆紅麹培養物のエキス)を50%エタノールに溶解した。
(2) 緩衝液 (300μl)
0. 25Mりん酸緩衝液(pH6.5)を用いた。
(3)基質溶液 (100μl)
1.4mMのp-nitrophenyl-α-D-glucopyranoside溶液(0.25Mりん酸緩衝液(pH6.5)に溶解)を用いた。
(4)酵素溶液(50μl)
α―グルコシダーゼ酵素液(0.3単位、0.25Mりん酸緩衝液(pH6.5)に溶解)を用いた。
(5)反応停止液 (1000μl)
0. 2M炭酸ナトリウム溶液を用いた。
試料溶液50μlに緩衝液300μl、基質溶液100μlを加えた後、酵素溶液50μlを加えて37℃で10分間反応させた。反応停止溶液を1000μl加えて反応を終了させた後、生成されたp-nitrophenolの量を400nmの吸光度から算出した。対照には、試料溶液の代わりに50%エタノールを用いた。なお、それぞれのブランクとしては、反応停止溶液を加えたものを用いた。
(6)α-グルコシダーゼ阻害活性の算出方法
阻害活性率(%)=[( (A−B)−(C−D) / (A−B) ) ]×100
A:対照溶液の吸光度
B:対照溶液のブランクの吸光度
C:試料溶液の吸光度
D:試料溶液ブランクの吸光度
乾燥丸大豆100gを90分間水に浸漬し、45分間水切りした後、オートクレーブで125℃、30分間加圧蒸気滅菌し蒸大豆を得た。これに、Monascus pilosus NBRC4520を植菌し、培地の水分率を45%、培地のpHを培養期間中において4.5、培養環境の室温を30℃、培養日数を14日間とし、本発明にかかわる大豆紅麹(α-グルコシダーゼ阻害剤)を得た。
なお比較例として、米を原料として同様の条件で培養した米紅麹(14日間培養)、並びに処理していない乾燥米を用いた。さらに、すでに厚生労働省から許可された、穏やかな食後血糖値上昇抑制作用のある特定保健用食品の市販製品「豆鼓エキスつぶタイプ;日本サプリメント株式会社製(食事時に0.5gを服用)」とそのα-グルコシダーゼ活性阻害率を比較した。
試料調整として、培養して乾燥した大豆紅麹ならびに米紅麹、乾燥米及び「豆鼓エキスつぶタイプ」を粉砕して、20倍容量の50%エタノールを加え時々撹拌室温下に放置し、24時間抽出した後、各素材の抽出液におけるα-グルコシダーゼ活性阻害率を測定した。その結果を表1に示した。
以上の結果より、14日間培養の大豆紅麹の抽出物において高いα-グルコシダーゼ活性阻害を有し、少なくとも特定保健用食品の市販製品「豆鼓エキスつぶタイプ」以上の阻害効果を示した。
Figure 2006296251
実施例1により得た本発明大豆紅麹に20倍容量の0%,25%,50%、75%及び100%エタノールをそれぞれ加え、時々撹拌して室温下に放置し、24時間抽出した。得られた抽出液を遠心分離濾過後、減圧濃縮し、さらに凍結乾燥によって目的のα-グルコシダーゼ活性阻害物を得た。得られた各素材の抽出物におけるα-グルコシダーゼ活性阻害率及び抽出量を測定し、表2に示した。
以上の結果より、大豆紅麹の培養物は、50%濃度のエタノール抽出において高いα-グルコシダーゼ活性阻害を有するとともに、多くの抽出物が得られた。
なお、水抽出及び100%エタノール抽出においては、阻害活性が認められなかった。
Figure 2006296251
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、特に、味、香り等において、味覚に影響を与えることがなく、単体のまま豆状でも粉状でもそのまま摂食できる。
特に、食後血糖値上昇抑制作用を有するα−グルコシダーゼ阻害物を含むことから、その効果が期待される。よって、これを目的とした用途に広汎に、且つ好適に用いることができるものである。

Claims (5)

  1. 大豆を製麹原料とし、モナスカス属に属する糸条菌により培養して得た大豆紅麹及び/またはその抽出物を有効成分とするα−グルコシダーゼ阻害剤。
  2. 抽出溶剤が含水アルコールである請求項1記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
  3. 大豆を原料とし、モナスカス属に属する糸状菌を植菌し、3〜30日間
    培養することを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害物質を含有する紅麹の製造法。
  4. モナスカス属に属する糸状菌が、モナスカス・ピロウサスである請求項3に記載の製造法。
  5. 請求項1又は2に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤を含有することを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害用の食品又は医薬品。
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