JP4871141B2 - 副室式エンジン - Google Patents
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Description
弁室に供給された燃料ガスを、弁部を通じて前記副室に供給する副室燃料供給弁を備えた副室式エンジンに関する。
また、このような副室式エンジンは、単室式エンジンと比較して、燃焼室全体として空気に対して燃料が希薄な状態で燃料を燃焼させる希薄燃焼が実現できるため、高効率化を図ることが可能であり、特に、効率向上が求められるコージェネレーションシステム等に導入されている。
このような副室への燃料ガス供給量の変動は、ノッキングや失火等の異常燃焼の発生や、NOxや未燃成分等の排気量増加などのように、エンジン性能の悪化の原因となる。特に、高効率化を実現するためのエンジンの運転条件下においては、エンジン性能に対する副室への燃料ガス供給量の変動の影響が大きい。
したがって、従来の副室式エンジンでは、エンジン性能の大幅な悪化を防止するために、高効率化を犠牲にして、エンジン性能に対する副室への燃料ガス供給量の変動の影響が少ない運転条件で運転されており、十分にはエンジン性能を向上できなかった。
弁室に供給された燃料ガスを、弁部を通じて前記副室に供給する副室燃料供給弁を備えた副室式エンジンであって、その第1特徴構成は、前記副室燃料供給弁の弁室から燃料ガスをリークさせるリーク路を備え、
前記リーク路に、前記弁室からの燃料ガスのリーク量を調整可能なリーク量調整弁を備え、
運転開始時点からの運転経過時間が予め設定された設定時間未満である起動運転時か否か、冷却水とエンジンオイルとシリンダブロックと外気の何れか一つの温度が予め設定された設定温度未満である冷間運転時か否か、低負荷運転時か否かの何れかの運転状態に基づいて前記リーク量調整弁の開度を調整して前記燃料ガスのリーク量を制御するリーク量制御手段を備えた点にある。
従って、本発明により、副室への燃料ガスの供給を安定且つ正確に行って、高効率化を実現するためのエンジンの運転条件下で運転してもエンジン性能の大幅な悪化を防止できる副室式エンジンを実現することができる。
更に、副室燃料供給弁の弁室からリーク路に燃料ガスをリークさせる場合には、そのリーク量を変化させることにより、弁室から副室への燃料ガス供給量を変化させることができる。
よって、上記第1特徴構成によれば、リーク路に設けられたリーク量調整弁の開度を調整することにより、起動運転時か否か、冷間運転時か否か、低負荷運転時か否かの何れかの運転状態に基づいて燃料ガスのリーク量を制御することにより、副室への燃料ガス供給量を運転状態に合った適切なものに維持することができる。
従って、安定且つ未燃成分の排出量が少ない状態で起動運転を行った後に、高効率な定常運転に移行させることができる。
従って、冷間運転時には、安定且つ未燃成分の排出量が少ない状態で暖機を進行させた後に、高効率な温間運転に移行させることができる。
尚、上記冷間運転時と上記温間運転時との判定は、冷却水やエンジンオイルやシリンダブロック等の温度が設定温度未満のときを上記冷間運転時として判定し、当該温度が設定温度以上のときを上記温間運転時として判定するなどの形態で行うことができる。
よって、高負荷運転時には、上記リーク量を増加させて、脈動が適切に抑制された弁室から安定且つ正確に燃料ガスを副室に供給し、燃料ガス供給量の変動によるエンジン性能の大幅な悪化を防止できる。一方、燃料ガスの供給圧力の減少などにより副室への燃料ガス供給量が減少される低負荷運転時においては、弁室において脈動が発生し難く、上記リーク量を減少させても比較的安定且つ正確に燃料ガスを副室に供給することができ、更に、燃料ガスを供給するための動力消費を抑えることができる。従って、エンジン負荷に拘わらず、副室への燃料ガスの供給を安定且つ正確に行うことができる。
図1に示す副室式エンジン100は、ピストン2と、ピストン2を収容してピストン2の頂面と共に主室1を形成するシリンダ3とを備え、ピストン2をシリンダ3内で往復運動させると共に、吸気バルブ6及び排気バルブ7を開閉動作させて、主室1において吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行い、ピストン2の往復動を連結棒(図示せず)によってクランク軸(図示せず)の回転運動として出力されるものであり、このような構成は、通常の4ストローク内燃機関と変わるところはない。
尚、この副室式エンジン100は、通常、エンジン回転数が一定の定格回転数となるように定格運転されるように構成されている。
更に、燃料供給路25には、ミキサ28への燃料供給量を調整可能な調整弁26と、ミキサ28への燃料供給圧を一定に維持するガバナ27が設けられている。
尚、本実施形態では、過給機29としてターボチャージャーを設けるが、このターボチャージャーの代わりに、クランク軸4の回転力を利用してコンプレッサを回転駆動するスーパーチャージャー等の別の形式の過給機を設けても構わない。
点火プラグ19は1サイクル毎に火花を発生させることにより、副室17に形成された混合気を火花点火するように構成されている。
尚、副室燃料供給路22には、弁室13への燃料ガスGの供給圧力を0.2MPa(Gauge)程度まで昇圧させる供給ポンプ20と、弁室13への燃料ガス供給量を調整可能な調整弁21とが設けられている。
副室式エンジン100は、先ず、吸気バルブ6が開状態となり、ピストン2のTDC(上死点)からの下降により、吸気ポート5から主室1に新気Iが吸入される吸気行程が行われる。
このとき副室17に設置された副室燃料供給弁15は、吸気バルブ6の開時期に対して若干遅れた時期に、弁部14を閉状態から開状態に変化させ、弁室13に供給された燃料ガスGの副室17への供給を開始する。
尚、圧縮行程初期の副室17がまだ低圧状態のときに、副室燃料供給弁15の弁部14を開状態として燃料ガスGを副室17に供給しても良い。
即ち、上記圧縮行程終了時にて、副室17には、当量比が比較的高い混合気が存在するのに対して、主室1には、当量比が比較的低い新気Iが存在することになる。
すると副室17では、燃焼が進み、副室17の燃焼しなかった燃料ガスGと共に、火炎ジェットFが噴孔18を介して主室1に噴出される。
更に、副室17と主室1とを連通する複数の噴孔18が、上記主室1の中心軸Xを中心に周方向に等間隔で分散配置され、放射状に延出する筒状の開口部として形成されており、火炎ジェットFが夫々の噴孔18から主室1に放射状に噴射されるように構成されている。
このような主室1における燃焼状態は、通常のSIエンジンに近い状態であるが、圧縮比を高く設定した場合においてもノッキングが発生しないため、熱効率を向上することができる。また、主室1に吸気される新気Iの当量比を大きくして、出力を増加させた場合でも、良好にノッキングを回避することができるため、ノッキング限界における当量比を高くすることができ、広い出力調整範囲が確保される。
尚、図1では、副室機構10の内部構造を認識しやすくするために、全体に対する副室機構10の大きさの割合を大きめに描いている。
副室式エンジン100は、副室燃料供給弁15の弁室13における脈動の発生を抑制して、副室17への燃料ガスGの供給を安定且つ正確に行うために、当該弁室13から燃料ガスGをリークさせるリーク路31が設けられている。尚、詳細については後述するがリーク路31に設けられているリーク量調整弁32は常時開状態であるため、主室13に供給された燃料ガスGはリーク路31側へ流れることができる。
即ち、弁室13においては、副室燃料供給弁15の弁部14の開閉動作に拘わらず、燃料ガスGが常に流れていることになり、更に、そのリーク路31に流れ込んだ燃料ガスGは後述するリーク量調整弁32を通じて吸気路4に供給されるので、弁部14の開閉操作による脈動の発生が抑制される。よって、弁部14を閉状態から開状態に変化させて、副室17への燃料ガスGの供給を開始したときには、脈動が抑制された弁室13から副室17に、安定且つ正確に燃料ガスGが供給されることになる。
尚、本実施形態では、リーク路31を吸気路4における過給機29の上流側に接続したが、別に、リーク路31を、燃料供給路22における供給ポンプ20の入口側などのような別の箇所に接続して、リーク路31にリークした燃料ガスGを燃焼に利用するように構成しても構わない。
更に、複数具体的には2個のリーク量調整弁32が、リーク路31に並列配置されており、全てのリーク量調整弁32の開度が同時に調整されることにより、リーク路31を介した燃料ガスGのリーク量が調整される。
よって、夫々のリーク量調整弁32の調整幅及び調整精度が比較的小さくても、上記リーク量を比較的大幅且つ正確に調整することができる。
次に、かかるリーク量制御手段33による具体的なリーク量の制御方法としての起動制御、暖機状態制御、負荷状態制御について、説明を加える。
リーク量制御手段33は、起動運転時において燃料ガスGのリーク量を定常運転時よりも低減させる形態でリーク量を制御する起動制御を実行するように構成されている。
即ち、当該起動制御において、リーク量制御手段33は、運転開始時点からの運転経過時間を起動情報として計測し、その運転経過時間が予め設定した設定時間未満である間を起動運転時と判定し、その運転経過時間が同設定時間以上であるときを定常運転時として判定する。
リーク量制御手段33は、上記起動運転時において、上記定常運転時と比較して、上記リーク量調整弁32の開度を縮小して、弁室13からリーク路31への燃料ガスGのリーク量を低減させるので、結果、起動運転時における弁室13から副室17への燃料ガスGの供給量が定常運転時よりも増加することになる。
従って、起動運転時には、副室17において比較的高濃度の混合気が形成され、その高濃度の混合気が失火することなく安定して燃焼するので、暖機がスムーズに進行し、早期に定常運転に移行することができる。
一方、運転経過時間が設定時間に達した定常運転時には、副室17においては、十分な暖機がなされている状態となるので、上記リーク量を増加させて副室17への燃料ガスGの供給量をできるだけ減少させることで、高効率化を図っても、副室17において安定した混合気の燃焼状態を維持することができる。
リーク量制御手段33は、冷間運転時において燃料ガスGのリーク量を温間運転時よりも低減させる形態でリーク量を制御する暖気状態制御を実行するように構成されている。
即ち、当該暖気状態制御において、リーク量制御手段33は、冷却水やエンジンオイルやシリンダブロックや外気等の温度を暖機状態情報として計測し、その温度が設定温度未満である間を上記冷間運転時として判定し、当該温度が設定温度以上である間を上記温間運転時として判定する。
リーク量制御手段33は、上記冷間運転時において、上記温間運転時と比較して、上記リーク量調整弁32の開度を縮小して、弁室13からリーク路31への燃料ガスGのリーク量を低減させるので、結果、冷間運転時における弁室13から副室17への燃料ガスGの供給量が温間運転時よりも増加することになる。
従って、冷間運転時には、副室17において比較的高濃度の混合気が形成され、その高濃度の混合気が失火することなく安定して燃焼するので、暖機がスムーズに進行し、早期に温間運転に移行することができる。
一方、上記暖気状態情報としての温度が設定温度に達した温間運転時には、副室17においては、十分な暖機がなされている状態となるので、上記リーク量を増加させて副室17への燃料ガスGの供給量をできるだけ減少させることで、高効率化を図っても、副室17において安定した混合気の燃焼状態を維持することができる。
この副室式エンジン100は、エンジン負荷に基づいて、調整弁21及び調整弁26を作動させ、副室燃料供給弁15及びミキサ28への燃料ガスGの供給量を制御する所謂負荷制御を実行する。
即ち、当該負荷制御においては、エンジン負荷が高くなるほど、調整弁21及び調整弁26の開度が拡大され、副室燃料供給弁15及びミキサ28への燃料ガスGの供給量を増加されるので、当該エンジン負荷に合った出力を取り出すことができる。しかし、このような負荷制御においては、エンジン負荷が高くなるほど、副室17への燃料ガスGの供給量が増加されるので、副室燃料供給弁15の弁室13において脈動が発生しやすくなる。
そこで、リーク量制御手段33は、上記ような負荷制御を行うにあたり、高負荷運転時において燃料ガスGのリーク量を低負荷運転時よりも増加させる形態でリーク量を制御する負荷状態制御を実行するように構成されている。
即ち、当該負荷状態制御において、リーク量制御手段33は、エンジン回転数やトルク等のエンジン負荷を求めるための負荷状態情報を計測し、その負荷状態情報から求めたエンジン負荷が予め設定した設定負荷以上である間を高負荷運転時と判定し、そのエンジン負荷が同設定時間未満であるときを低負荷運転時として判定する。
リーク量制御手段33は、上記高負荷運転時において、上記低負荷運転時と比較して、上記リーク量調整弁32の開度を拡大して、弁室13からリーク路31への燃料ガスGのリーク量を増加させるので、結果、副室燃料供給弁15の弁室13における脈動が適切に抑制されることになる。
従って、副室17への燃料ガスGの供給量が増加される高負荷運転時には、脈動が適切に抑制された弁室13から安定且つ正確に燃料ガスGが副室17に供給され、燃料ガスGの供給量の変動によるエンジン性能の大幅な悪化が防止されることになる。
一方、副室17への燃料ガスGの供給量が減少される低負荷運転時には、弁室13において脈動が発生し難いことから、燃料ガスGのリーク路31へのリーク量が減少されて、燃料ガスGを供給するための供給ポンプ20による動力の浪費が抑制されながら、弁室13から安定且つ正確に燃料ガスGが副室17に供給されることになる。
(1)本発明に係る副室式エンジンは、上記実施形態で説明したように、都市ガス等の気体の燃料ガスを利用する場合に優れた効果を発揮するものであり、このような燃料ガスとしては、上記都市ガス以外に水素やプロパン等のCOやH2を主成分とする炭化水素以外の気体燃料がある。
4:吸気路
9:排気路
13:弁室
14:弁部
15:副室燃料供給弁
17:副室
18:噴孔
22:副室燃料供給路
31:リーク路
32:リーク量調整弁
33:リーク量制御手段
100:副室式エンジン
A:空気
E:排ガス
F:火炎ジェット
G:燃料ガス
I:新気
Claims (6)
- 燃焼室として、ピストンに面する主室と、当該主室に噴孔を介して連通する副室とを備えると共に、
弁室に供給された燃料ガスを、弁部を通じて前記副室に供給する副室燃料供給弁を備えた副室式エンジンであって、
前記副室燃料供給弁の弁室から燃料ガスをリークさせるリーク路を備え、
前記リーク路に、前記弁室からの燃料ガスのリーク量を調整可能なリーク量調整弁を備え、
運転開始時点からの運転経過時間が予め設定された設定時間未満である起動運転時か否か、冷却水とエンジンオイルとシリンダブロックと外気の何れか一つの温度が予め設定された設定温度未満である冷間運転時か否か、低負荷運転時か否かの何れかの運転状態に基づいて前記リーク量調整弁の開度を調整して前記燃料ガスのリーク量を制御するリーク量制御手段を備えた副室式エンジン。 - 前記リーク路が、前記弁室からリークさせた燃料ガスを燃料供給路又は吸気路に供給するように接続されている請求項1に記載の副室式エンジン。
- 前記リーク量制御手段が、前記起動運転時において前記燃料ガスのリーク量を定常運転時よりも低減させる形態で前記リーク量を制御する請求項1又は2に記載の副室式エンジン。
- 前記リーク量制御手段が、前記冷間運転時において前記燃料ガスのリーク量を温間運転時よりも低減させる形態で前記リーク量を制御する請求項1又は2に記載の副室式エンジン。
- 前記低負荷運転時よりも高負荷運転時において燃料供給量を増加させる負荷制御を実行するように構成され、
前記リーク量制御手段が、前記高負荷運転時において前記燃料ガスのリーク量を前記低負荷運転時よりも増加させる形態で前記リーク量を制御する請求項1〜4の何れか一項に記載の副室式エンジン。 - 前記リーク量調整弁の複数が、前記リーク路に並列配置されている請求項1〜5の何れか一項に記載の副室式エンジン。
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