以下に、図1から図4を用いて、本発明に係るエンジンの第一実施形態であるエンジン1について説明する。
図1に示すように、エンジン1は、軽油若しくは重油を燃料とするディーゼルエンジンである。エンジン1は、主に出力用気筒2、過給機14、燃料改質装置である改質用気筒15、吸気用インタークーラー33、改質燃料用インタークーラー34、EGRガス用インタークーラー35、可変動弁装置36および制御装置であるECU59を具備する。なお、本実施形態において、エンジン1をディーゼルエンジンとしたがこれに限定するものではない。
出力用気筒2は、燃料の燃焼により動力を発生させて出力軸に伝達するものである。出力用気筒2は、出力用シリンダ3、出力用ピストン4および出力用コンロッド5、および副燃料噴射装置6を具備する。
出力用気筒2は、出力用シリンダ3の内部に出力用ピストン4が摺動自在に内装されている。出力用シリンダ3は、一側が図示しないシリンダヘッドによって閉塞され、他側が開放するように構成されている。開放出力用ピストン4は、出力用コンロッド5によって出力軸である出力用クランク軸7に連結されている。出力用気筒2の圧縮率は、早期着火や失火の発生を考慮して13以上(例えば13〜18程度)に設定されている。
出力用クランク軸7には、出力用クランク角検出センサ8が設けられている。出力用気筒2には、出力用シリンダ3の内壁と出力用ピストン4の端面とから燃焼室9が構成されている。出力用気筒2は、燃焼室9に燃料を噴射可能な副燃料噴射装置6が設けられている。副燃料噴射装置6は、ホールタイプのノズルを有するインジェクタから構成されている。出力用気筒2には、出力用吸気弁10を介して吸気管11が接続され、出力用排気弁12を介して排気管13が接続されている。なお、本実施形態において、出力用気筒2は、単数であっても複数であってもよい。
過給機14は、外気を断熱圧縮して出力用気筒2の燃焼室9に供給するものである。過給機14は、タービン14aとコンプレッサー14bとを具備する。タービン14aには、排気管13が接続され、燃焼室9からの排気が供給可能に構成されている。コンプレッサー14bには、吸気管11が接続され、外気を吸引して吸気として燃焼室9に供給可能に構成されている。つまり、過給機14は、排気の圧力をタービン14aによって回転動力に変換してコンプレッサー14bに伝達し、コンプレッサー14bによって外気を吸引し、断熱圧縮可能に構成されている。
燃料改質装置である改質用気筒15は、軽油等の高級炭化水素燃料を低級炭化水素燃料(例えばメタン)に改質し、過早着火を抑制するものである。改質用気筒15は、吸気と排気(EGRガス)との混合気(以下、単に「給気」と記す)に燃料を噴射したものを断熱圧縮することで燃料を改質する。改質用気筒15は、改質用シリンダヘッド16、改質用シリンダ17、改質用ピストン18、改質用コンロッド19、主燃料噴射装置20等を具備する。
改質用気筒15は、改質用シリンダ17の一側が改質用シリンダヘッド16によって閉塞され、内部に改質用ピストン18が摺動自在に内装されている。改質用ピストン18は、改質用コンロッド19によって改質用クランク軸21に連結されている。改質用クランク軸21には、改質用クランク角検出センサ22が設けられる。改質用気筒15の改質用ピストン18は、出力用クランク軸7と連動連結されている改質用クランク軸21からの動力によって往復動作可能に構成されている。なお、本実施形態において、改質用気筒15は、出力用クランク軸7からの動力が伝達されている構成としたがこれに限定されているものではなく、独立した動力源からの動力でもよい。また、改質用気筒15は、出力用気筒2毎にあってもよく、複数の出力用気筒2に対して1つであってもよい。また、出力用気筒2と改質用気筒15とを兼用することも可能である。
改質用気筒15には、改質用シリンダヘッド16、改質用シリンダ17および改質用ピストン18の端面とから反応室23が構成されている。反応室23は、改質用ピストン18の往復動作によりその容積が変化するように構成されている。反応室23は、その容積の変化により給気と燃料とを断熱圧縮するものである。反応室23の圧縮率は、熱損失を考慮して15以上(例えば15〜20程度)に設定されている。
主燃料噴射装置20は、反応室23の内部に燃料を供給するものである。主燃料噴射装置20は、改質用シリンダヘッド16に設けられている。主燃料噴射装置20は、反応室23の内部に燃料を任意の時期に任意の量で供給可能に構成されている。主燃料噴射装置20は、ピントル型ノズル、スワールインジェクタ、エアアシストインジェクタ等のノズルから構成されている。
改質用気筒15には、改質用吸気弁24を介して供給管25が接続されている。供給管25には、吸気管11から吸気の一部が供給可能に構成されている。また、供給管25は、EGR管28を介して排気管13に接続されている。つまり、供給管25には、出力用気筒2の燃焼室9からの排気の一部がEGR管28を通じてEGRガスとして供給可能に構成されている。従って、改質用気筒15の反応室23には、供給管25から吸気とEGRガスとの混合気(以下、単に「給気」と記す)とが供給可能に構成されている。
改質用気筒15には、改質用排気弁26を介して排出管27が接続されている。排出管27は、ミキサー27aを介して供給管25よりも下流側の吸気管11に接続されている。また、改質用気筒15は、改質された低級炭化水素燃料(以下、単に「改質燃料」と記す)が反応室23から排出管27を介して吸気管11に排出可能に構成されている。また、排出管27には、後述の改質燃料用インタークーラー34よりも上流側に改質燃料温度センサ29が設けられている。改質燃料温度センサ29は、改質用気筒15から排出された直後の改質燃料の温度を検出する。
吸気管11には、供給管25の接続位置よりも下流側であって、排出管27の接続位置よりも上流側に第1吸気調量弁30が設けられる。第1吸気調量弁30は、出力用吸気流量A1を変更するものである。第1吸気調量弁30は、電磁式流量制御弁から構成されている。第1吸気調量弁30は、後述の制御装置であるECU59からの信号を取得して第1吸気調量弁30の開度を変更することができる。なお、本実施形態において、第1吸気調量弁30を電磁式流量制御弁から構成しているが、出力用吸気流量A1を変更することができるものであればよい。
供給管25には、EGR管28の接続位置よりも上流側に第2吸気調量弁31が設けられる。第2吸気調量弁31は、改質用吸気流量A2を変更するものである。第2吸気調量弁31は、電磁式流量制御弁から構成されている。第2吸気調量弁31は、後述のECU59からの信号を取得して第2吸気調量弁31の開度を変更することができる。なお、本実施形態において、第2吸気調量弁31を電磁式流量制御弁から構成しているが、改質用吸気流量A2を変更することができるものであればよい。
EGR管28には、EGRガス調量弁32が設けられる。EGRガス調量弁32は、EGRガス流量A3を変更するものである。EGRガス調量弁32は、電磁式流量制御弁から構成されている。EGRガス調量弁32は、後述のECU59からの信号を取得してEGRガス調量弁32の開度を変更することができる。なお、本実施形態において、EGRガス調量弁32を電磁式流量制御弁から構成しているが、EGRガス流量A3を変更することができるものであればよい。
このように構成することで、エンジン1は、吸気と改質用気筒15の反応室23から排出されている改質燃料との混合比を第1吸気調量弁30によって変更可能に構成されている。また、エンジン1は、反応室23に供給されている吸気とEGRガスとの混合比を第2吸気調量弁31とEGRガス調量弁32とによって変更可能に構成されている。
吸気用インタークーラー33、改質燃料用インタークーラー34およびEGRガス用インタークーラー35は、気体を冷却するものである。吸気用インタークーラー33は、吸気管11に設けられる。吸気用インタークーラー33は、コンプレッサー14bで断熱圧縮された吸気を冷却可能に構成されている。改質燃料用インタークーラー34は、排出管27に設けられる。改質燃料用インタークーラー34は、改質用気筒15の反応室23から排出されている改質燃料を冷却可能に構成されている。改質燃料用インタークーラー34は、空気または水を冷却媒体とする放熱器または熱交換器から構成されている。EGRガス用インタークーラー35は、EGR管28に設けられる。EGRガス用インタークーラー35は、燃料の燃焼により加熱された排気を冷却可能に構成されている。
図2から図4に示すように、可変動弁装置36は、吸気弁24および排気弁26をそれぞれ所定の時期に開閉するためのものである。可変動弁装置36は、吸気弁24を開閉するための機構として、スイングアーム軸37、第1スイングアーム38、第2スイングアーム41、プッシュロッド43、弁腕44、カム軸45、吸気用切換手段48(図4参照)等を具備し、改質用クランク軸21の回転運動に連動して駆動されて、吸気弁24を開閉する。さらに、可変動弁装置36は、排気弁26を開閉するための機構として、第3スイングアーム55、第4スイングアーム56、排気用切換手段57等を具備し(図4参照)、改質用クランク軸21の回転運動に連動して駆動されて排気弁26を開閉する。なお、第3スイングアーム55、第4スイングアーム56、排気用切換手段57等は、第1スイングアーム38、第2スイングアーム41、吸気用切換手段48と同様の構成であるため重複する部分は同一の符号を付して具体的な説明を省略する。
図3と図4とに示すように、スイングアーム軸37は、改質用クランク軸21の軸方向(以下、改質用クランク軸21の軸方向を「前後方向」と定義して説明する。)と平行に横架される。
第1スイングアーム38は、略直方体状に形成される部材である。第1スイングアーム38の長手方向の一端は、スイングアーム軸37によって揺動可能に支持されている。第1スイングアーム38の長手方向の他端下部には、第1カムローラ39が回転自在に支持されている。第1スイングアーム38の他端上面には、上向きに凹む半球面状の凹部が形成されたロッド支持部材40が取り付けられる。
第2スイングアーム41は、略直方体状に形成される部材である。第2スイングアーム41の長手方向の一端は、第1スイングアーム38と隣接してスイングアーム軸37によって揺動可能に支持されている。つまり、第2スイングアーム41は、第1スイングアーム38と隣接した状態で、スイングアーム軸37に揺動可能に支持される。第2スイングアーム41の長手方向の他端下部には、第二カムローラ42が回転自在に支持されている。
図2に示すように、プッシュロッド43は、略円柱状の部材であり、第1スイングアーム38と弁腕44とを連動連結するものである。プッシュロッド43の下端は、半球面状に形成されて、第1スイングアーム38のロッド支持部材40の凹部に揺動可能に嵌められる。プッシュロッド43の上端は弁腕44の一端に揺動可能に嵌められる。
弁腕44は、プッシュロッド43と吸気連結部材24aとを連結するものである。弁腕44は、前後方向に横架される弁腕軸41aに揺動可能に支持される。弁腕44の一端はプッシュロッド43の上端に連結され、他端は吸気連結部材24aに連結される。
図2と図4に示すように、カム軸45は、第1スイングアーム38および第2スイングアーム41の長手方向の他端下方において、前後方向に延長して配置される。カム軸45は、改質用クランク軸21にギヤ等を介して連動連結され、改質用クランク軸21が回転することにより回転する。カム軸45には、第1カム46および第2カム47が軸方向(前後方向)に所定間隔を隔てて形成される。第2カム47は、第1カム46とプロファイルの異なるように構成されている。第1カム46は、第1スイングアーム38の第1カムローラ39にその下方から当接するようにカム軸45上に配置される。第2カム47は、第2スイングアーム41の第二カムローラ42にその下方から当接するようにカム軸45上に配置される。
また、カム軸45上には排気弁26用の第3カム53および第4カム54が形成される。第4カム54は、第3カム53とプロファイルの異なるように構成されている。図示せぬ排気弁26用の第3スイングアーム55および第4スイングアーム56は、図示せぬプッシュロッドおよび弁腕を介して排気弁26の上端に配置される排気連結部材に連結される。
図4に示すように、吸気用切換手段48は、第1スイングアーム38および第2スイングアーム41の動作状態、ひいては吸気弁24の開閉時期を切り換えるものである。吸気用切換手段48は、油圧ポンプ49、吸気弁用電磁切換弁50、油圧ピストン51、受け部材52等を具備し、これらの部材やスイングアーム軸37および第1スイングアーム38に形成される油路により構成される。
吸気弁用電磁切換弁50は、制御信号を受信した場合に油圧ピストン51に供給される作動油の流路を切り換える弁である。油圧ポンプ49により圧送された作動油は、吸気弁用電磁切換弁50を介して第1スイングアーム38の油圧ピストン51に供給される。
油圧ピストン51は、第1スイングアーム38に配置される油圧アクチュエータである。油圧ピストン51は、半球面状の底部を有し、その底部がカム軸45側に移動自在に構成されている。油圧ピストン51は、吸気弁用電磁切換弁50による作動油の流路の切り換えにより底部がカム軸45側に突出するように構成されている。
図3と図4とに示すように、受け部材52は、第2スイングアーム41のカム軸45側の側面に取り付けられる板状の部材である。受け部材52は、第2スイングアーム41から第1スイングアーム38のカム軸45側の側面まで延出される。受け部材52の延出端部は、底面視において第1スイングアーム38の油圧ピストン51に重複して対向するように配置される。受け部材52は、第2スイングアーム41の可動範囲において第1スイングアームと接触しないように構成されている。また、受け部材52は、油圧ピストン51の底部が突出した場合にその底部が当接するように構成されている。
同様にして、図4に示すように、排気用切換手段57は、第3スイングアーム55および第4スイングアーム56の動作状態、ひいては排気弁26の開閉時期を切り換えるものである。排気用切換手段57は、油圧ポンプ49、排気弁用電磁切換弁58、油圧ピストン51および受け部材52等を具備し、これらの部材やスイングアーム軸37および第3スイングアーム55に形成される油路により構成される。
排気弁用電磁切換弁58は、制御信号を受信した場合に油圧ピストン51に供給される作動油の流路を切り換える弁である。油圧ポンプ49により圧送された作動油は、排気弁用電磁切換弁58を介して第3スイングアーム55の油圧ピストン51に供給される。
図1と図4とに示すように、制御装置であるECU59は、エンジン1を制御するものである。具体的には、ECU59は、副燃料噴射装置6、主燃料噴射装置20、第1吸気調量弁30、第2吸気調量弁31、EGRガス調量弁32、吸気弁用電磁切換弁50、排気弁用電磁切換弁58等を制御する。ECU59には、エンジン1の制御を行うための種々のプログラムやデータが格納されている。ECU59は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続されている構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
ECU59は、燃料の噴射制御を行うための種々のプログラムや、エンジン1の目標回転数Ntおよび目標出力Wtに基づいて主燃料噴射量Qmを算出するための主燃料噴射量QmマップM1、目標回転数Ntおよび主燃料噴射量Qmに基づいて出力用気筒2の燃焼室9に供給する出力用吸気流量A1を算出するための吸気流量マップM2、目標回転数Ntおよび主燃料噴射量Qmに基づいて改質用気筒15の反応室23に供給する改質用吸気流量A2とEGRガス流量A3とを算出するための混合気流量マップM3、目標回転数Ntおよび主燃料噴射量Qmに基づいて燃焼室9に噴射されている着火用の副燃料噴射量Qsを算出するための副燃料噴射量マップM4等を記憶する。
図1に示すように、ECU59は、副燃料噴射装置6に接続され、副燃料噴射装置6の燃料噴射を制御することが可能である。
ECU59は、主燃料噴射装置20に接続され、主燃料噴射装置20の燃料噴射を制御することが可能である。
ECU59は、改質燃料温度センサ29に接続され、改質燃料温度センサ29が検出する改質燃料の温度を取得することが可能である。
ECU59は、第1吸気調量弁30に接続され、第1吸気調量弁30の開閉を制御することが可能である。
ECU59は、第2吸気調量弁31に接続され、第2吸気調量弁31の開閉を制御することが可能である。
ECU59は、EGRガス調量弁32に接続され、EGRガス調量弁32の開閉を制御することが可能である。
ECU59は、出力用クランク角検出センサ8に接続され、出力用クランク角検出センサ8が検出する出力用クランク軸角度θ1を取得することが可能である。
ECU59は、改質用クランク角検出センサ22に接続され、改質用クランク角検出センサ22が検出する改質用クランク軸角度θ2を取得することが可能である。
図4に示すように、ECU59は、吸気弁用電磁切換弁50に接続され、吸気弁用電磁切換弁50を制御することが可能である。
ECU59は、排気弁用電磁切換弁58に接続され、排気弁用電磁切換弁58を制御することが可能である。
ECU59は、図示しない冷却水温度センサに接続され、冷却水温度センサが検出する冷却水の温度を取得することが可能である。
以下では、図1から図8を用いて、本発明の一実施形態に係るエンジン1の各部の動作態様について説明する。
始めに、エンジン1における吸気および排気の経路について説明する。
図1に示すように、過給機14のコンプレッサー14bによって吸引された外気は、吸気として断熱圧縮された状態で吸気管11に排出される。吸気は、吸気用インタークーラー33で冷却された後、吸気管11を介して出力用気筒2の燃焼室9に供給される。吸気の一部は、吸気管11に接続されている供給管25、改質用吸気弁24を介して改質用気筒15の反応室23に供給される。
出力用気筒2の燃焼室9からの排気は、排気管13を介して過給機14のタービン14aを回転させた後、外部に排出される。排気の一部は、EGR管28およびEGR管28が接続されている供給管25を介してEGRガスとして改質用気筒15の反応室23に供給される。
反応室23に供給された給気(吸気とEGRガス)は、反応室23内に噴射された燃料とともに改質用ピストン18によって断熱圧縮される。給気と改質燃料とは、改質用ピストン18の移動により断熱膨張する。そして、給気と改質燃料とは、改質用ピストン18の移動による圧縮により反応室23から排出され、改質用排気弁26、排出管27を介して吸気管11に還流して燃焼室9に供給される。
次に、ECU59における各種所定量の算出について説明する。図6に示すように、ECU59は、図示しない操作具の操作量等から定まるエンジン1の目標回転数Ntおよび目標出力Wtに基づいて燃料噴射量マップM1から主燃料噴射量Qmを算出する。
ECU59は、目標回転数Ntおよび主燃料噴射量Qmに基づいて吸気流量マップM2から出力用気筒2の燃焼室9に供給する出力用吸気流量A1を算出する。
ECU59は、目標回転数Ntおよび主燃料噴射量Qmに基づいて混合気流量マップM3から改質用気筒15の反応室23に供給する改質用吸気流量A2とEGRガス流量A3とを算出する。
ECU59は、目標回転数Ntおよび主燃料噴射量Qmに基づいて着火用燃料噴射量マップM4から出力用気筒2の燃焼室9に供給される着火用燃料の副燃料噴射量Qsを算出する。
ECU59は、出力用クランク角検出センサ8が検出する出力用クランク軸角度θ1、改質用クランク角検出センサ22が検出する改質用クランク軸角度θ2を取得し、出力用気筒2および改質用気筒15の行程を算出する。
次に、図2、図4、図5、図7および図8を用いて、上記の如く構成した可変動弁装置36の動作態様について説明する。なお、吸気弁24における可変動弁装置36の動作態様と排気弁26における可変動弁装置36の動作態とは同様の態様であるため排気弁26における可変動弁装置36の動作態様についての具体的な説明を省略する。
図4に示すように、ECU59が油圧ピストン51の底部をカム軸45側に突出させないように可変動弁装置36の吸気弁用電磁切換弁50を制御している場合、第1スイングアーム38の第1カムローラ39は、第1カム46と当接しながら回転する。つまり、第1スイングアーム38は、第1カム46のプロファイルに従ってスイングアーム軸37を支点として揺動する。第2スイングアーム41の第2カムローラ42は、第2カム47と当接しながら回転する。つまり、第2スイングアーム41は第2カム47のプロファイルに従ってスイングアーム軸37を支点として揺動する。この際、第1スイングアーム38と第2スイングアーム41とは、互いに独立して揺動している。
第1スイングアーム38と第2スイングアーム41とは、第1カム46と第2カム47とが白抜き矢印の方向に回転すると、それぞれのカムのプロファイルに応じて同時に反カム軸45側へと揺動する。第1スイングアーム38が反カム軸45側へと揺動した場合、第1スイングアーム38のロッド支持部材40に嵌められているプッシュロッド43、弁腕44、および吸気連結部材24aを介して吸気弁24が開弁される(図2参照)。
第1カム46および第2カム47が白抜き矢印の方向に更に回転すると、第1カム46のプロファイルに従って第1スイングアーム38が第2スイングアーム41よりも先にカム軸45側へと揺動する。この際、第1スイングアーム38はそのカム軸45側面の凹み部分により反カム軸45側へと揺動したままの第2スイングアーム41の受け部材52と接触せずに済み、この受け部材52によりカム軸45側への揺動を阻害されない。第1スイングアーム38がカム軸45側へと揺動した後、第2カム47のプロファイルに従って第2スイングアーム41がカム軸45側へと揺動する。第1スイングアーム38が下方へと揺動した場合、吸気弁24が閉弁される(図2参照)。つまり、第1スイングアーム38と第2スイングアーム41とは個別に動作して、第2スイングアーム41の動作にかかわらず、第1スイングアーム38の動作が吸気弁24の開閉時期を決定する。
図7に示すように、第1カム46のプロファイルは、改質用ピストン18の吸気工程における上死点(以下、「吸気上死点」と記す)Tよりも早い時期(S1)に吸気弁24の開弁を開始し、改質用ピストン18の吸気上死点Tにおいて吸気弁24のバルブリフトが最大になるように設定されている。また、第1カム46のプロファイルは、改質用ピストン18の吸気工程における下死点(以下、「吸気下死点」と記す)Bよりも早い時期に吸気弁24の閉弁を開始し、改質用ピストン18の吸気下死点Bよりも早い時期(S2)に吸気弁24が完全に閉弁するように設定されている。つまり、第1カム46は、後述する第2カム47による吸気弁24の開閉時期よりも早い時期に吸気弁24の開閉を行うように構成されている。
図5に示すように、ECU59が油圧ピストン51の底部をカム軸45側に突出させるように可変動弁装置36の吸気弁用電磁切換弁50を制御している場合、油圧ピストン51に供給されている作動油によってその底部がカム軸45側に向かって押圧される。作動油によって押圧された油圧ピストン51は、カム軸45側へと摺動して第1スイングアーム38のカム軸45側面から突出する。油圧ピストン51は、その底部が第2スイングアーム41に取り付けられた受け部材52に当接する。
第1スイングアーム38は、油圧ピストン51が第2スイングアーム41の受け部材52に当接することで、第2スイングアーム41に支持された状態になる。このため、第1スイングアーム38は、第1カム46のプロファイルに従わず、受け部材52が取り付けられている第2スイングアーム41に従って揺動する。すなわち、第2スイングアーム41が第2カム47のプロファイルに従ってカム軸45側へと揺動すると、第1スイングアーム38もカム軸45側へと揺動する。第1スイングアーム38がカム軸45側へと揺動した場合、吸気弁24が閉弁される(図2参照)。つまり、吸気弁24の閉弁時には、第1スイングアーム38が第2スイングアーム41と一体的に動作して、第2スイングアーム41の動作が吸気弁24の開閉時期を決定する。
図8に示すように、第2カム47のプロファイルは、改質用ピストン18の吸気上死点Tよりも早い時期(S1)に吸気弁24の開弁を開始し、改質用ピストン18の吸気上死点Tにおいて吸気弁24のバルブリフトが最大になるように設定されている。また、改質用ピストン18の吸気下死点B近傍で吸気弁24の閉弁を開始し、その後(S3)に吸気弁24が完全に閉弁するように設定される。つまり、第2カム47は、前述した第1カム46による吸気弁24の開閉時期よりも遅い時期に吸気弁24の開閉を行うように構成されている。なお、本実施形態においては改質用ピストン18の吸気下死点B近傍で吸気弁24の閉弁を開始するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、改質用ピストン18の吸気下死点Bにおいて吸気弁24の閉弁を開始する構成とすることも可能である。
また、ECU59は、可変動弁装置36によって吸気弁24の開閉時期を切り換える動作態様と同様にして、可変動弁装置36の排気弁用電磁切換弁58を切り換えて排気弁26の開閉時期を変更することができる。ここで、第3スイングアーム55を揺動させる第3カム53は、第4スイングアーム56を揺動させる第4カム54による排気弁26の開閉時期よりも早い時期に排気弁26の開閉を行うように構成されている。
図4に示すように、ECU59が第3スイングアーム55の油圧ピストン51の底部をカム軸45側に突出させないように可変動弁装置36の排気弁用電磁切換弁58を制御している場合、第3スイングアーム55と第4スイングアーム56とは、互いに独立して揺動している。つまり、第3スイングアーム55は、第3カム53のプロファイルに従って動作し、第4スイングアーム56は、第4カム54のプロファイルに従って動作する。これにより、第4スイングアーム56の動作にかかわらず、第3スイングアーム55の動作が排気弁26の開閉時期を決定する。
図5に示すように、ECU59が第3スイングアーム55の油圧ピストン51の底部をカム軸45側に突出させるように可変動弁装置36の排気弁用電磁切換弁58を制御している場合、第3スイングアーム55は、油圧ピストン51が第4スイングアーム56の受け部材52に当接することで、第4スイングアーム56に支持された状態になる。つまり、第3スイングアーム55は、第3カム53のプロファイルに従わず、受け部材52が取り付けられている第4スイングアーム56の揺動に従って揺動する。これにより、第3スイングアーム55の動作にかかわらず、第4スイングアーム56の動作が排気弁26の開閉時期を決定する。なお、本実施形態において、圧縮比と膨張比との制御は、油圧ピストン51によるカムの切り替えによって実施しているがこれに限定されるものではなく、例えばオーバヘッドカム式の可変動弁機構等によって圧縮比と膨張比とを変更できる機構であればよい。
次に、図9を用いて改質用気筒15における燃料の改質の態様について説明する。
図9に示すように、改質用気筒15の吸引行程において、改質用気筒15は、改質用ピストン18が上死点から下死点にむかって移動する。このため、改質用気筒15の反応室23は、改質用ピストン18の移動により容積が増大することによって内部圧力が低下する。また、改質用気筒15の吸引行程において、改質用気筒15は、反応室23に給気と排気とを供給するため吸気弁24が開弁するように構成されている。ECU59は、取得した改質用クランク軸角度θ2に基づいて、改質用気筒15の行程が吸引行程の間(例えば改質用ピストン18が下死点付近のとき)、に低下した内部圧力を利用して改質用気筒15の反応室23に算出した改質用吸気流量A2だけ吸気が供給されるように第2吸気調量弁31の開閉を制御する。合わせてECU59は、改質用気筒15の反応室23に算出したEGRガス流量A3だけEGRガスが供給されるようにEGRガス調量弁32の開閉を制御する。これにより、反応室23には、燃料を改質するために適した酸素濃度で給気が供給される(図9における給気吸引)。
改質用気筒15の圧縮行程において、改質用気筒15は、改質用ピストン18が下死点から上死点にむかって移動する。つまり、改質用気筒15の反応室23は、改質用ピストン18の移動により容積が減少することによって内部圧力が増大する。これにより、反応室23に供給された給気は、改質用ピストン18によって断熱圧縮される。改質用気筒15は、給気を断熱圧縮することで、反応室23の内部を高温、高圧の状態にする。
改質用気筒15の圧縮行程において、ECU59は、取得した改質用クランク軸角度θ2に基づいて、改質用気筒15の反応室23に算出した主燃料噴射量Qmだけ燃料が供給されるように主燃料噴射装置20を制御する。これにより、改質用気筒15は、高温、高圧の状態の反応室23の内部に燃料が噴射される(図9における燃料噴射)。反応室23には、反応室23に供給されている給気を用いて低級炭化水素燃料に改質させるために必要な当量比の燃料が供給される。
反応室23の内部に噴射された燃料は、噴射された燃料の拡散と、高温、高圧の反応室23内で給気と急速に混合(予混合)されて蒸発する。給気と予混合された燃料は、改質用ピストン18が上死点付近に到達し、反応室23の内部が最も高温、高圧の状態になると改質反応が開始される(図9における薄墨領域)。
改質用気筒15の膨張行程において、改質用気筒15は、改質用ピストン18が上死点から下死点にむかって移動する。つまり、改質用気筒15の反応室23は、改質用ピストン18の移動により容積が増大することによって内部圧力が減少する。改質燃料は、反応室23の容積の増大に伴って断熱膨張される。これにより、改質燃料は、冷却されて圧力が低下した状態になることで改質反応が停止する(図9における改質停止)。
改質用気筒15の排出行程において、改質用気筒15は、改質用ピストン18が下死点から上死点にむかって移動する。このため、改質用気筒15の反応室23は、改質用ピストン18の移動により容積が減少することによって内部圧力が増大する。また、改質用気筒15の排出行程において、改質用気筒15は、反応室23から改質燃料を排出するため改質用排気弁26が開弁するように構成されている。従って、改質燃料は、反応室23から改質用排気弁26を通じて排出され、排出管27を介して吸気管11に還流される(図9における燃料排出)。
改質燃料は、給気の熱量のうち改質時の吸熱分解反応に用いられなかった残留熱量によって高温の燃料ガスとして排出管27に供給されている。排出管27に供給された高温の改質燃料は、排出管27の改質燃料用インタークーラー34によって冷却されている。これにより、出力用気筒2における早期の自己着火が抑制されている。改質燃料用インタークーラー34によって冷却された改質燃料は、ミキサー27aを介して吸気管11に供給されている。
次に、改質用気筒15における圧縮比と膨張比との制御態様について説明する。
ECU59は、改質燃料温度センサ29からから取得した信号に基づいて改質燃料温度Tfが上限値Tuよりも高いと判断した場合、吸気弁24を開閉する第1スイングアーム38が第1カム46のプロファイルに従って揺動するように吸気用切換手段48の吸気弁用電磁切換弁50を制御する(図7参照)。つまり、ECU59は、改質用気筒15に供給される給気が少なくなるように吸気弁用電磁切換弁50を制御する。これにより、改質用気筒15は、実質的な圧縮比が小さくなり、改質用気筒15によって断熱圧縮された改質燃料の温度上昇が抑制される。
また、ECU59は、改質燃料温度センサ29からから取得した信号に基づいて改質燃料温度Tfが上限値Tuよりも高いと判断した場合、排気弁26を開閉する第3スイングアーム55が第4カム54のプロファイルに従って揺動するように排気用切換手段57の排気弁用電磁切換弁58を制御する(図8参照)。つまり、ECU59は、改質用気筒15が下死点付近にある時期に改質燃料が排出されるように排気弁用電磁切換弁58を制御する。これにより、改質用気筒15の実質的な膨張比は大きくなり、改質用気筒15によって断熱膨張された改質燃料の温度低下が促進される。
さらに、ECU59は、改質燃料温度センサ29からから取得した信号に基づいて改質燃料温度Tfが上限値Tuよりも高いと判断した場合、吸気弁24を開閉する第1スイングアーム38が第1カム46のプロファイルに従って揺動するように吸気用切換手段48の吸気弁用電磁切換弁50を制御し(図7参照)、排気弁26を開閉する第3スイングアーム55が第4カム54のプロファイルに従って揺動するように排気用切換手段57の排気弁用電磁切換弁58を制御してもよい(図8参照)。これにより、改質用気筒15は、実質的な圧縮比が小さくなるとともに実質的な膨張比が大きくなる。
ECU59は、図示しない冷却水センサからから取得したエンジン1の冷却水温度Twが下限値Tl以下、またはエンジンの始動開始から所定時間以内であると判断した場合、改質燃料温度センサ29からから取得した改質燃料温度Tfに関わらず吸気弁24を開閉する第1スイングアーム38が第2カム47のプロファイルに従って揺動するように吸気用切換手段48の吸気弁用電磁切換弁50を制御する(図8参照)。つまり、ECU59は、改質用気筒15に供給される給気が多くなるように吸気弁用電磁切換弁50を制御する。これにより、改質用気筒15の実質的な圧縮比は大きくなり、改質用気筒15によって断熱圧縮された際の圧力、温度が上昇し、燃料の改質反応が促進される。
以上の如く、出力用気筒2と改質用ピストン18の往復動作によって燃料を改質する改質用気筒15とを備えたエンジン1において、改質燃料温度センサ29からから取得した信号に基づいて可変動弁装置36を用いて吸気弁24と排気弁26との開閉時期のうち少なくとも1つを変更する。改質燃料温度Tfが上限値Tuよりも高い場合、エンジン1は、改質用気筒15の実質的な膨張比が大きくなったり実質的な圧縮比が小さくなったりすることで、改質された燃料の温度が一定の範囲内に維持される。これにより、運転条件によらず改質燃料を安定した状態で供給することによりエンジン出力の低下を防止することができる。
また、エンジン1は、冷却水センサからから取得した冷却水温度Twが所定値以下、またはエンジン1の始動開始から所定時間以内であると判断した場合、改質燃料温度Tfに関わらず可変動弁装置36を用いて吸気弁24の開閉時期を変更する。つまり、エンジン1は、改質用気筒15の実質的な圧縮比が大きくなることでエンジン1や外気が低温であっても燃料の改質が確実に行われる。これにより、運転条件によらず改質燃料を安定した状態で供給することによりエンジン出力の低下を防止することができる。