JP4868305B2 - 示差走査熱量計 - Google Patents
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Description
この種の装置は、様々なものが提供されているが、その1つとして、試料及び基準物質を収容する収容室の温度を加熱するだけでなく、冷却させる冷却機構を有するものが知られている。
また、別の装置として、試料を収容する試料室(収容室)内に、液化窒素等を気化させた極低温(例えば、−196℃)のガスを供給し、試料室内を冷却する冷却装置(ガス冷却装置)を有するものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
更には、液化窒素等を気化させた極低温のガスにより冷却を行うガス冷却装置と、コンプレッサにより冷媒を圧縮、断熱膨張させて冷却を行う電気冷却装置とを併用して、試料を収容するヒートシンク(収容室)を冷却するものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
即ち、冷却装置を有する示差走査熱量計は、試料を収容する収容室、例えば、ヒートシンクと冷却装置とを機械的に接続して、熱の流れ道である熱流路を確保している。効率良くヒートシンクを加熱及び冷却するためである。
ところが、ヒートシンクと冷却装置とは、全く同じ材質の材料で作製されているのではなく、一般的には異なる材質の材料を利用してそれぞれ作製されている。つまり、異種金属同士が機械的に接続されて熱流路が形成されている。そのため、試料を分析にするにあたって、加熱又は冷却を繰り返し行うと、熱膨張率の違いにより接合面に歪みやズレ等が生じてしまっていた。その結果、熱の流れが途中で変化してしまい、試料の分析を正確に行えない可能性があった。また、この歪みやズレは、その時の条件に応じて刻々と変化するので、再現性が悪く測定結果を補正等することができなかった。
本発明の示差走査熱量計は、被測定試料と基準物質とを内部に収納する収納室と、該収納室の周囲を囲むように取り付けられて、収納室を加熱するヒータと、前記収納室内に設けられ、前記被測定試料と前記基準物質との温度差を検知すると共に、検知した温度差を熱流差信号として出力する示差熱流検出器と、前記収納室の下方に一定距離離間して配置され、所定の温度に冷却制御される冷却ブロックと、所定の熱抵抗を有するように形成され、前記冷却ブロックと前記収納室との間に介装されて両者を機械的に接続すると共に、冷却ブロックと収納室との間の熱流路を形成する熱抵抗体と、前記冷却ブロックを支持する支持手段と、前記冷却ブロックに対して、前記熱抵抗体を一定の弾性力で付勢しながら押し付けて固定する第1の固定手段と、前記熱抵抗体に対して、前記収納室を一定の弾性力で付勢しながら押し付けて固定する第2の固定手段と、を備え、前記第1の固定手段は、前記冷却ブロックの上面と下面とを貫く貫通孔と、該貫通孔内に移動自在に挿通されて、一端が前記熱抵抗体に固定されると共に他端が貫通孔内から前記冷却ブロックの外方に突出する軸体と、該軸体の前記他端側に螺合されたナットと、該ナットと前記冷却ブロックとの間に挟まれた状態で前記軸体の周囲を囲むように軸体に被せられ、軸体を前記他端側に向けて弾性力により付勢するコイルバネと、を備え、前記ナットを螺合により前記軸体の軸方向に移動させることで、前記コイルバネの弾性力が調整可能とされ、前記第2の固定手段は、前記熱抵抗体に形成された開口と、前記冷却ブロックの上面と下面とを貫く第2の貫通孔と、前記開口及び前記第2の貫通孔内に共に移動自在に挿通され、一端が前記収納室に固定されると共に他端が前記支持手段に固定されて、収納室を前記熱抵抗体に向けて弾性力により付勢する第2のコイルバネと、を備え、前記第2のコイルバネは、自身の弾性力が調整可能に前記支持手段に固定されている、ことを特徴とするものである。
このように軸体は、他端側に向けて付勢されているので、該軸体の一端側に固定されている熱抵抗体が冷却ブロック側に引っ張られる。これにより熱抵抗体は、冷却ブロックに対して一定の弾性力で付勢されながら押し付けられて固定されている。
そして、加熱、冷却の繰り返しにより、冷却ブロックに対して熱抵抗体が歪んだり、位置ずれ等が生じたりしても、それに応じてコイルバネが伸縮して歪み等に起因する応力を吸収する。よって、熱抵抗体と冷却ブロックとの固定状態を一定にすることができ、熱流路を安定させることができる。
特に、特別な機構を用いずとも、コイルバネ、軸体やナット等により第1の固定手段を構成できるので、構成の簡略化及び低コスト化を図ることができる。
また、特別な機構を用いずとも、コイルバネ等により第2の固定手段を構成できるので、構成の簡略化及び低コスト化を図ることができる。
本実施形態の示差走査熱量計1は、図1に示すように、被測定試料及び基準物質(共に不図示)を、内部に収納するヒートシンク(収納室)2と、該ヒートシンク2の周囲を囲むように取り付けられて、ヒートシンク2を加熱するヒータ3と、ヒートシンク2内に設けられ、被測定試料と基準物質との温度差を検知すると共に、検知した温度差を熱流差信号として出力する示差熱流検出器4と、ヒートシンク2の下方に一定距離離間して配置され、所定の温度に冷却制御される冷却ブロック5と、所定の熱抵抗を有するように形成され、冷却ブロック5とヒートシンク2との間に介装されて両者を機械的に接続すると共に、冷却ブロック5とヒートシンク2との間の熱流路を形成する熱抵抗体6と、冷却ブロック5を支持する支持手段7と、冷却ブロック5に対して、熱抵抗体6を一定の弾性力で付勢しながら押し付けて固定する第1の固定手段8と、熱抵抗体6に対して、ヒートシンク2を一定の弾性力で付勢しながら押し付けて固定する第2の固定手段9とを備えている。
また、ヒートシンク2の外周には、絶縁被膜付きの上記ヒータ3が巻回されている。さらにこのヒータ3の周囲を覆うように、例えばステンレス製のカバー11が取り付けられている。ヒータ3は、このカバー11によって保護されている。
また、下側保持板21及び熱緩衝板20には、それぞれ略中心に2つの開口20a、21aが形成されている。また、ヒートシンク2の窪み2aにも同様に、略中心に2つの開口2bが形成されていると共に、これら開口2bの内側にさらに2つの微小開口2cが形成されている。
また、熱電対細線27は、下側保持板21及び熱緩衝板20の開口20a、21a内に挿通された、二芯絶縁管28を通ってヒートシンク2の窪み2a内に一旦引き出された後、窪み2aに形成された開口2bを通ってヒートシンク2の外部に引き出されている。
更に、この熱抵抗体6は、天板6aの周縁付近から周壁部6b及びフランジ部6cにかけて、周方向に向けて90度毎に4本の図示しないスリットが形成されている。これにより、周壁部6b及びフランジ部6cは、周方向に4分割されている状態となっている。
また、4分割されたフランジ部6cには、図2及び図3に示すように、それぞれ後述する
長ねじ(軸体)35が挿通される開口6eが形成されている。なお、この開口6eは、熱抵抗体6の半径方向に向かって長穴に形成されている。
なお、この冷却ブロック5は、熱抵抗体6及びヒートシンク2に均等に熱流入させるため、高熱伝導性材料により作製することが望ましい。また、ヒートシンク2の昇降温速度も、示差走査熱量計にとって重要な性能の1つとなるため、冷却ブロック5自身の熱容量も小さいことが望ましい。本実施形態では、これらの理由に加え、価格及び耐熱性等を総合的に考慮して、純アルミニウムにより作製している。
上述したように、ヒートシンク2、熱抵抗体6及び冷却ブロック5は、それぞれ熱膨張率の異なる異種金属により作製されている。
つまり、この冷却ブロック5は、極低温のガスによって冷却が行われるガス冷却方式と、コンプレッサにより冷媒を圧縮、断熱膨張させて冷却が行われる電気冷却方式との2方式により、所定の温度(例えば、−90℃〜−190℃の範囲内)に冷却制御されるようになっている。
なお、ナット36を螺合により長ねじ35の軸方向に移動させることで、コイルバネ37の圧縮量を変化させることができ、コイルバネ37の弾性力を調整することができるようになっている。
上述した貫通孔5a、長ねじ35、ナット36、コイルバネ37及びブッシング38、39は、上記第1の固定手段8を構成している。
また、固定金具41は、ベース31に対向する側の先端部41aが鉤形状になっている。また、ベース31上にも固定金具41と同様に鉤形状になった先端部42aを有する固定金具42が設けられている。この固定金具42は、基端側がねじ切られたねじ部42bとなっており、ベース31に形成されたねじ溝内に螺合により固定されている。
本実施形態の示差走査熱量計1は、ヒータ3及び冷却ブロック5を備えているので、ヒートシンク2内に密閉収納された被測定試料及び基準物質を、加熱又は冷却して所望する温度条件を容易に作りだすことができる。
始めに、ヒータ3を作動させてヒートシンク2を加熱する場合について、説明する。まず測定者は、自身で決定した任意の温度プログラムを温度プログラム設定器45に入力する。温度プログラム設定器45は、この入力されたデータに基づいてプログラム設定された温度信号をPID演算制御部13に出力する。PID演算制御部13は、温度プログラム設定器45から出力された温度信号と、制御熱電対12から出力された温度信号との差から、PID演算を行い、適切なヒーターパワー出力をだすように電力供給部14に信号を送る。これを受けて、ヒータ3が作動してヒートシンク2を加熱し始める。
このように、本実施形態の示差走査熱量計1は、加熱及び冷却を単独又は同時に行えるので、測定温度範囲を広範囲にすることができると共に、短時間で所望する温度条件にすることができる。
まず、熱抵抗体6と冷却ブロック5とは、長ねじ35を介して接続されている。この際、冷却ブロック5の下面とナット36との間には、コイルバネ37が配されているので、コイルバネ37の弾性力がブッシング39及びナット36を介して長ねじ35に伝わっている。これにより長ねじ35は、他端側に向けて常に付勢されている。そのため熱抵抗体6は、冷却ブロック5側に引っ張られて、上述したように冷却ブロック5に対して一定の弾性力で付勢されながら押し付けられて固定されている。
そして、加熱、冷却の繰り返しにより、冷却ブロック5に対して熱抵抗体6が歪んだり、位置ずれ等が生じたりしても、それに応じてコイルバネ37が伸縮して歪み等に起因する応力を吸収する。よって、上述したように、熱抵抗体6と冷却ブロック5との固定状態を一定にすることができる。
まず、ヒートシンク2とベース31とは、ワイヤ40、コイルバネ43及び固定金具41を介して接続固定されている。この際、コイルバネ43は、ワイヤ40を介してヒートシンク2を引っ張っている。そのためヒートシンク2は、上述したように熱抵抗体6に対して一定の弾性力で付勢されながら押し付けられて固定されている。
そして、加熱、冷却の繰り返しにより、ヒートシンク2に対して熱抵抗体6が歪んだり、位置ずれ等が生じたりしても、それに応じてコイルバネ43が伸縮して歪み等に起因する応力を吸収する。よって、上述したように、熱抵抗体6と冷却ブロック5との固定状態を一定にすることができる。
また、コイルバネ37と冷却ブロック5との間には、セラミックス製のブッシング38が介在しているので、コイルバネ37が冷却ブロック5に直接接触する必要がない。つまり、冷却ブロック5からコイルバネ37に直接熱が伝わることがなく、コイルバネ37の温度上昇を極力防止することができる。よって、過度の熱によるコイルバネ37の機械的性質の変化をより確実に防ぐことができる。また、コイルバネ37への熱影響を極力低減できるので、コイルバネ37の材料の選択性を増やすことができる。
更に、特別な機構を用いずとも、コイルバネ37、長ねじ35やナット36等により第1の固定手段8を構成できるので、構成の簡略化を図ることができると共に低コスト化を図ることができる。
また、第1の固定手段8と同様に、特別な機構を用いずとも、コイルバネ43やワイヤ40等により第2の固定手段9を構成できるので、構成の簡略化を図ることができると共に低コスト化を図ることができる。
但し、上記実施形状のように、第1の固定手段及び第2の固定手段を共に備えることが好ましい。
2 ヒートシンク(収納室)
3 ヒータ
4 示差熱流検出器
5 冷却ブロック
5a 冷却ブロックの貫通孔
5b 冷却ブロックの第2の貫通孔
6 熱抵抗体
6d 熱抵抗体の開口
7 支持手段
8 第1の固定手段
9 第2の固定手段
35 長ねじ(軸体)
36 ナット
37 コイルバネ
38 ブッシング
40 ワイヤ(線材)
43 第2のコイルバネ
Claims (4)
- 被測定試料と基準物質とを内部に収納する収納室と、
該収納室の周囲を囲むように取り付けられて、収納室を加熱するヒータと、
前記収納室内に設けられ、前記被測定試料と前記基準物質との温度差を検知すると共に、検知した温度差を熱流差信号として出力する示差熱流検出器と、
前記収納室の下方に一定距離離間して配置され、所定の温度に冷却制御される冷却ブロックと、
所定の熱抵抗を有するように形成され、前記冷却ブロックと前記収納室との間に介装されて両者を機械的に接続すると共に、冷却ブロックと収納室との間の熱流路を形成する熱抵抗体と、
前記冷却ブロックを支持する支持手段と、
前記冷却ブロックに対して、前記熱抵抗体を一定の弾性力で付勢しながら押し付けて固定する第1の固定手段と、
前記熱抵抗体に対して、前記収納室を一定の弾性力で付勢しながら押し付けて固定する第2の固定手段と、を備え、
前記第1の固定手段は、
前記冷却ブロックの上面と下面とを貫く貫通孔と、
該貫通孔内に移動自在に挿通されて、一端が前記熱抵抗体に固定されると共に他端が貫通孔内から前記冷却ブロックの外方に突出する軸体と、
該軸体の前記他端側に螺合されたナットと、
該ナットと前記冷却ブロックとの間に挟まれた状態で前記軸体の周囲を囲むように軸体に被せられ、軸体を前記他端側に向けて弾性力により付勢するコイルバネと、を備え、
前記ナットを螺合により前記軸体の軸方向に移動させることで、前記コイルバネの弾性力が調整可能とされ、
前記第2の固定手段は、
前記熱抵抗体に形成された開口と、
前記冷却ブロックの上面と下面とを貫く第2の貫通孔と、
前記開口及び前記第2の貫通孔内に共に移動自在に挿通され、一端が前記収納室に固定されると共に他端が前記支持手段に固定されて、収納室を前記熱抵抗体に向けて弾性力により付勢する第2のコイルバネと、を備え、
前記第2のコイルバネは、自身の弾性力が調整可能に前記支持手段に固定されている、ことを特徴とする示差走査熱量計。 - 請求項1に記載の示差走査熱量計において、
前記コイルバネは、耐熱合金製材料により形成されていることを特徴とする示差走査熱量計。 - 請求項1又2に記載の示差走査熱量計において、
前記軸体には、前記コイルバネと前記冷却ブロックとの間に挟まれた状態で軸体の周囲を囲むように、セラミックからなる環状のブッシングが被せられていることを特徴とする示差走査熱量計。 - 請求項1に記載の示差走査熱量計において、
前記収納室と前記コイルバネとが、耐熱性を有する線材を介して固定されており、収納室とコイルバネとの間が所定距離離間していることを特徴とする示差走査熱量計。
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