JP4867141B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
有機顔料の耐熱性は化学構造に起因するが、本発明において、特に優れた耐熱性を示す有機顔料は、縮合アゾ系、イソインドリン系、アンスラキノン系である。これらの有機顔料を使用することで本発明のポリエステルフィルムは特に優れた回収原料再現性を示すことができる。さらに、有機顔料の耐熱性を向上させる手段としては、例えば親水性基を導入する方法や、顔料粒子の粒径をコントロールし、取扱い性及び、透明性などが悪化しない程度に微細化を抑える方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、有機顔料の耐熱性は展色剤の影響を受けるため、顔料粉末の耐熱性が高ければよいというわけではなく、ポリエステル樹脂に混練した状態での耐熱性が高いことが重要である。
ポリマー、フィルムの物性や特性は以下の方法にて測定、評価した。
(1)ポリエステル樹脂の融点(Tm)
ポリエステル樹脂を約5mgとり、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製RDC220型)により、20℃/分の昇温速度で熱特性を測定し、融解のピーク温度を融点(Tm)とした。
(2)積層厚み比
フィルムの断面を超薄切片法で透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)にて写真撮影し、フィルムの積層厚み比を測定した。測定はフィルム幅方向での中央部の任意の5ヶ所について倍率20000倍で観察し、その平均値から積層厚み比を求めた。また、フィルム全体の厚みはダイヤルゲージを用いて任意の5ヶ所を測定し平均値を採用した。
(3)スルホン酸アルカリ金属塩を有する残基量
蛍光X線測定により、スルホン酸基が有するイオウ元素についてピーク強度を求め、ピーク強度と検量線の関係を予め作成しておくことでイオウ元素の含有量を定量した。イオウ元素の含有量からスルホン酸アルカリ金属塩を有する残基量を算出した。なお、スルホン酸アルカリ金属塩を有する残基の構造が特定されない場合は、樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)はHFIPとクロロホルムの混合溶媒など良溶媒に溶解後、1H−NMR及び13C−NMRを用いて構造と含有量を定量することができる。
(4)有機顔料濃度
フィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解後、1H−NMR及び、13C−NMRを用いて着色剤濃度を測定した。なお、積層フィルムの場合は、有機顔料含有層を削り取り測定することで定量を行った。なお、有機顔料の特定はラマン分光法における共鳴ラマン効果を用いてフィルム中の顔料からのラマンバンドを励起波長を変更することで得て、顔料標準サンプルのラマンバンドと比較することにより行うことができる。
(5)フィルム中の環状三量体量
フィルム100mgをオルソクロロフェノール1mLに溶解し、液体クロマトグラフィー(Varian社製モデル8500)で環状三量体量を測定した。なお、積層フィルムの場合は、層(A)を削り取り、測定することで定量を行った。
(6)フィルムの耐熱変色性(色差ΔE*ab)
JIS Z 8722(2000年)に基づき、分光式色差計(日本電色工業製SE−2000、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて、各フィルムの色調(L*値、a*値、b*値)を透過法により測定した。測定は温度23℃、湿度65%の雰囲気中で行った。フィルムの任意の5ヶ所を選び出して測定を行い、その平均値を採用した。
ΔE*ab=(Δa*2+ Δb*2+ΔL*2)1/2
(7)回収原料再現性(回収原料耐変色性)
回収原料とバージン原料とを所定割合で混合した樹脂原料から製膜されたフィルムの色調(L*値、a*値、b*値)を、前記した方法で測定した。バージン原料100%の樹脂原料から製膜されたフィルムの色調との差ΔL*、Δa*、Δb*を求めた。その後、ΔE*abを以下の式より求めた。
ΔE*ab=(Δa*2+ Δb*2+ΔL*2)1/2
回収原料を含有する樹脂原料から製膜されて得られたフィルムと、バージン原料100%の樹脂原料から製膜されて得られたフィルムとの色調対比、及び、ΔE*abの値から、以下の基準で、回収原料再現性の評価を行った。
○: バージン原料で製膜したフィルムと回収原料を含有する樹脂原料で製膜したフィルムの色調の違いが目視では認識できず、ΔE*abが2.0未満であった。
△: バージン原料で製膜したフィルムと回収原料を含有する樹脂原料で製膜したフィルムの色調の違いが目視では認識できないが、ΔE*abが3.0以上であった。
×: バージン原料で製膜したフィルムと回収原料を含有する樹脂原料で製膜したフィルムの色調の違いが目視で認識できた。
(8)耐有機顔料析出性
フィルムを20cm×30cmの金属枠に両面テープで貼り付けて固定し、その上に白色のポリエステルシートを重ね、さらにその上に、500gのおもりを載せ、熱風オーブンにて150℃120分の乾熱処理を行った。熱処理後、白色のポリエステルシートを観察し、以下の基準で評価した。
○:白色のポリエステルシートに変化はなかった。
×:白色のポリエステルシートに着色剤が色写りした。
(9)耐レトルト白化性
フィルムを285℃に加熱した鋼板(厚さ0.25mm)の両面に30m/分の速度で貼り合わせ、25℃の水で急冷し、フィルムラミネート鋼板を作成した。該鋼板をレトルト釜にて、130℃5分間のレトルト熱処理を行った。その際、鋼板の上に20℃の水を500mL入れたステンレス製のバットを静置した。その後、バットと反対面のフィルムの状態について以下の基準で評価を行った。なお、積層フィルムの場合は層(B)が鋼板と接触するように貼り合わせを行った。
○:レトルト熱処理でフィルムに変化が見られなかった。
×:レトルト熱処理でフィルムに水玉模様の白化が発生した。
(10)耐オリゴマー析出性
(9)と同様の方法でフィルムラミネート鋼板を作成し、得たサンプル鋼板をレトルト釜にて120℃120分間のレトルト熱処理を行った。その後、ラミネート鋼板の表面状態を目視及び、光学顕微鏡で観察(倍率400倍)し、以下の基準で評価を行った。
○:目視では白粉は確認されなかった。
×:目視で、白粉が観察された。
(ポリエステル樹脂原料の製造方法)
以下の実験において使用したポリエステル樹脂原料は以下のようにして製造した。
(ポリエステルX)
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール70重量部の混合物に酢酸マンガン0.04重量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながら、エステル交換反応を行った。次いで、リン酸85%水溶液0.025重量部、二酸化ゲルマニウム0.02重量部を添加し、徐々に昇温、減圧し、最終的に290℃、1hPaまで昇温、減圧し、極限粘度が0.67となるまで重縮合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングしてポリエチレンテレフタレート(ポリエステルX)を得た。なお、このポリエステルXの融点は255℃であった。
(ポリエステルY)
テレフタル酸ジメチル100重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル8重量部、エチレングリコール82重量部の混合物に、酢酸マグネシウム0.06重量部、酢酸リチウム0.16重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。次いで、リン酸85%水溶液0.045重量部、数平均分子量1000のポリエチレングリコール1.1重量部を添加して、徐々に昇温、減圧し、最終的に290℃、1hPaまで昇温、減圧し、極限粘度が0.67となるまで重縮合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングして5−スルホイソフタル酸ナトリウムを5モル%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリエステルY)を得た。なお、このポリエステルYの融点は246℃であった
(ポリエステルZ)
ポリエステルXを回転型真空重合装置を用いて、1hPaの減圧下、230℃で極限粘度が0.72となるまで固相重合を行い、ポリエステルZを得た。なお、このポリエステルZの融点は255℃であった。
(粒子マスター)
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール70重量部の混合物に酢酸マンガン0.04重量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながら、エステル交換反応を行った。次いで、リン酸85%水溶液0.025重量部、二酸化ゲルマニウム0.02重量部を添加した。さらに、平均二次粒子径2.2μmの凝集粒子のエチレングリコールスラリーを粒子濃度が2重量%となるように添加して、徐々に昇温、減圧し、最終的に290℃、1hPaまで昇温、減圧し、極限粘度が0.63となるまで重縮合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングして粒子マスター樹脂を得た。
(顔料マスターA)
ポリエステルXを粉末状に凍結粉砕し、縮合アゾ系の有機顔料カラーインデックス・ピグメントイエロー180(分子量732)を5重量%添加し、均一に混合した後、2軸ベント式押出機に供給し、溶融混練し、ストランド状に押出し、水中で冷却後、チップ状にカットして顔料マスターAを得た。
(顔料マスターB)
ポリエステルXを粉末状に凍結粉砕し、縮合アゾ系の有機顔料カラーインデックス・ピグメントイエロー95(分子量917)を6重量%添加し、均一に混合した後、2軸ベント式押出機に供給し、溶融混練し、ストランド状に押出し、水中で冷却後、チップ状にカットして顔料マスターBを得た。
(顔料マスターC)
ポリエステルXを粉末状に凍結粉砕し、イソインドリン系の有機顔料カラーインデックス・ピグメントイエロー139(分子量367)を6重量%添加し、均一に混合した後、2軸ベント式押出機に供給し、溶融混練し、ストランド状に押出し、水中で冷却後、チップ状にカットして顔料マスターCを得た。
(顔料マスターD)
ポリエステルXを粉末状に凍結粉砕し、キノフタロン系の有機顔料カラーインデックス・ピグメントイエロー138(分子量694)を5重量%添加し、均一に混合した後、2軸ベント式押出機に供給し、溶融混練し、ストランド状に押出し、水中で冷却後、チップ状にカットして顔料マスターDを得た。
(顔料マスターE)
ポリエステルXを粉末状に凍結粉砕し、ベンズイミダゾロン系の有機顔料カラーインデックス・ピグメントイエロー120(分子量453)を4重量%添加し、均一に混合した後、2軸ベント式押出機に供給し、溶融混練し、ストランド状に押出し、水中で冷却後、チップ状にカットして顔料マスターEを得た。
(顔料マスターF)
ポリエステルXを粉末状に凍結粉砕し、アンスラキノン系の有機顔料カラーインデックス・ピグメントイエロー147(分子量600)を4重量%添加し、均一に混合した後、2軸ベント式押出機に供給し、溶融混練し、ストランド状に押出し、水中で冷却後、チップ状にカットして顔料マスターFを得た。
(実施例1)
有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルX、粒子マスター及び顔料マスターAを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。
この回収原料を真空乾燥機にて、180℃4時間乾燥した。前記したと同様の条件で乾燥したバージン原料に、乾燥した回収原料を所定割合で添加して、回収原料が50重量%もしくは95重量%含有された樹脂原料とし、これを単軸押出機に供給した。供給した原料を280℃で溶融し、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムとした。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、最終的にフィルム温度105℃で長手方向3.2倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度95℃、延伸温度120℃で幅方向に3.2倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度230℃で5秒間の熱処理を行い、フィルム厚み12μmの二軸配向フィルムを作製した。
(実施例2)
有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルXと粒子マスター及び顔料マスターBを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。
(実施例3)
有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルXと粒子マスター及び顔料マスターCを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。
有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルXと粒子マスター及び顔料マスターDを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。
(比較例2)
有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルXと粒子マスター及び顔料マスターEを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。
(比較例3)
層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルXと粒子マスター及び顔料マスターBを重量比で9.6:0.4:90の割合で混合して使用し、実施例1と同様の方法により、有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムの製膜を試みた。
有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルXと粒子マスター及び顔料マスターFを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。
有機顔料を含有する層(A)と、含有しない層(B)でA/Bの2層積層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルXと粒子マスター及び顔料マスターAを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。層(B)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルYと粒子マスターを重量比96:4の割合で混合して使用した。
次いで、実施例1と同様の延伸方法で延伸及び熱処理を行いフィルム厚み12μmの二軸配向フィルムを作製した。
有機顔料を含有する層(A)のみから構成される単層フィルムを作製した。層(A)のポリエステル樹脂原料として、前記したポリエステルZと粒子マスター及び顔料マスターCを重量比で86.4:3.6:10の割合で混合して使用した。
Claims (6)
- カラーインデックス・ピグメントイエロー180、カラーインデックス・ピグメントイエロー95、カラーインデックス・ピグメントイエロー139、および、カラーインデックス・ピグメントイエロー147からなる群より選ばれる有機顔料を0.1〜1重量%含有する層を有し、透過法で測定されるフィルムのL*a*b*表色系におけるL*値が80〜95であり、かつ、200℃で120分間の熱処理を施した際の色差ΔE*abが10未満であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- カラーインデックス・ピグメントイエロー180、カラーインデックス・ピグメントイエロー95、カラーインデックス・ピグメントイエロー139、および、カラーインデックス・ピグメントイエロー147からなる群より選ばれる有機顔料を0.1〜1重量%含有するポリエステル樹脂層(A)の少なくとも片面に他のポリエステル樹脂層(B)が積層されてなるポリエステルフィルムであって、透過法で測定されるフィルムのL*a*b*表色系におけるL*値が80〜95であり、かつ、200℃で120分間の熱処理を施した際の色差ΔE*abが10未満であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- 有機顔料の分子量が610〜1000であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
- ポリエステル樹脂層(B)が、スルホン酸アルカリ金属塩を有する残基を0.1〜20モル%含有するポリエステル樹脂層(B)であることを特徴とする請求項2又は3に記載のポリエステルフィルム。
- 有機顔料を含有するポリエステル樹脂層(A)中におけるエチレンテレフタレート環状三量体の含有量が0.2〜0.9重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- 金属板に貼り合わせて用いられるフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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