以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下に説明する各実施形態では、更生管を埋設取付管に挿入する際に更生管内に導入して加熱するための加熱媒体として水蒸気を使用した場合について説明する。
各実施形態について説明する前に、本発明の更生方法に使用する更生管について説明する。
−更生管の説明−
更生管1は、図1に示すように、ポリ塩化ビニルや高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂によって円筒状に成形された従来と同様のものであり、埋設取付管Tに挿入される前の状態では、その断面形状が埋設取付管Tの内径よりも小径の略楕円形に形成されている。そして、更生管1は、所定の形状記憶温度(例えば、80℃)に加熱されることによって円筒状態に形状回復する性能を有している。また、更生管1の後端部(引き込み方向の上流側)には、後端側に向かって外径が漸増する略円錐台形状の拡径部1aが予め設けられている。この拡径部1aは、更生管1の後端側に向かって次第に径が大きくなる形状とされ、更生管1の後端部がこの形状に成形された一体成形によるものであってもよいし、予め略円錐台形状に成形された別部品としての樹脂成形品が更生管1の後端縁に融着等によって一体に取り付けられたものであってもよい。
以下、この更生管1を使用したライニング作業の各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本実施形態では、更生管1の先端部(引き込み方向の下流側)が先端部材2によって閉止され、その後端部(拡径部1aの直上部分)が後端部材3によって閉止されている。すなわち、更生管1の先端側の開口は先端部材2によって閉止される一方、後端部の開口は後端部材3によって閉止されており、更生管1の内部が略気密状態に維持されている。また、先端部材2には、牽引ワイヤ(牽引材)4が連結されており、更生管1は、牽引ワイヤ4を牽引することによって内部が略気密状態に維持されて埋設本管H及び埋設取付管T内にわたって挿入されるようになっている。
先端部材2は、図2に示すように、その中心部に貫通孔2aが設けられるとともに、その内周面には雌ネジが形成されている。そして、牽引ワイヤ4が連結される際には、貫通孔2aを閉鎖しながら牽引ワイヤ4の連結が可能な連結具4x(図1参照)が装着される。また、この貫通孔2aは拡径蒸気ホース11(流体導入管:図8参照)が接続されるホース接続部としても兼用され、拡径蒸気ホース11が接続される際には連結具4xが取り外され、貫通孔2aの内周面に形成された雌ネジを利用して拡径蒸気ホース11が接続される(拡径蒸気ホース11の先端に設けられた金具がねじ込まれる)ようになっている。つまり、後述する更生管挿入工程時には、貫通孔2aに牽引ワイヤ4が連結具4xを介して連結される(図1に示す状態となる)一方、取付管口止水工程に移る際には、貫通孔2aに拡径蒸気ホース11が繋ぎ換えられて、更生管1の内部に水蒸気の導入が可能な状態となる(図8参照)。
また、先端部材2には、貫通孔2aに接続された拡径蒸気ホース11から水蒸気が導入される際の過剰の水蒸気やドレン水を管外に排出するための排気チューブ71(図11参照)を挿通するためのチューブ用開口2bが形成されている。
後端部材3は、図3に示すように、中心部に開口31a,32aが形成された2枚の金属製円板31,32が対向配置されていると共に、これらの円板31,32を繋ぐように、それらの開口31a,32aにわたって金属製のパイプ33が架設されている。また、各円板31,32の外周縁には、耐熱性を有するゴム等によって形成された可撓膜34がその全周囲にわたって設けられており、この可撓膜34の内面とパイプ33の外面との間に密閉空間3xが形成されている。
そして、後端部材3を構成する後端側の円板31(更生管1に装着された状態において後端側に位置する円板)には、後端部牽引ワイヤ(後端部牽引材)5が連結されていると共に、その開口31aには、挿入用蒸気ホース(加熱媒体導入管)6が接続されている。この挿入用蒸気ホース6は地上に設置された蒸気発生加熱機10(図4参照)に接続されており、挿入用蒸気ホース6から導入された水蒸気がパイプ33の内部及び先端側の円板32の開口32aを通って更生管1内部に導かれるようになっている。
また、各円板31,32にわたって比較的小径の金属チューブ35が架設されており、更生管1内での過剰の水蒸気やドレン水を管外に排出するための排気チューブ7が、金属チューブ35に挿通されて更生管1の内部に導入されている。
更に、後端側の円板31には一端が密閉空間3xに開口する貫通孔31bが形成されており、この貫通孔31bにはエア供給管36が接続されている。このエア供給管36は図示しないブロア等の空気源に接続されており、空気源の駆動によってエア供給管36から密閉空間3xに高圧空気が供給されると、図3に仮想線で示すように可撓膜34が外周側に向かって膨張し、後端部材3の外径寸法を拡径するようになっている。つまり、後端部材3を更生管1の拡径部1a直上の後端部に挿入した状態でエア供給管36から密閉空間3xに高圧空気を供給すると、可撓膜34が外周側に向かって膨張して更生管1の内面を押圧し、これによって後端部材3が更生管1の後端部に抜け止めされた状態となり、且つ、更生管1の後端部が閉止されることになる。
このようにして、更生作業が行われる前段階での更生管1は、図1に示すように、先端部が先端部材2によって、後端部が後端部材3によってそれぞれ閉止されていると共に、先端からは牽引ワイヤ4が延びており、後端からは後端部牽引ワイヤ5、挿入用蒸気ホース6、排気チューブ7及びエア供給管36がそれぞれ延びている。また、更生管1の内部には、排気チューブ7の先端が開放されている。
−ライニング作業の説明−
次に、上記更生管1を使用したライニング作業について説明する。このライニング作業は、埋設取付管T内面の高圧水洗浄及びテレビカメラによる管内調査が行われた後に実行される。また、このライニング作業は、更生管挿入工程、フランジ形成装置搬入工程、取付管口止水工程、更生管拡径工程からなる。更に、このライニング作業は、埋設本管Hの内面が同様の更生管によってライニングされた後に行われる場合もあるし、本管をライニングすることなしに行う場合もある。以下に示す各実施形態においては、説明を簡単にするために後者の場合について説明する。
<更生管挿入工程>
更生管挿入工程においては、所定長さの更生管1を発進側のマンホールM側の地上に準備しておく一方、ライニング対象の埋設取付管Tの桝T1側には、複数本の金属パイプによって組み立てられた矢倉8を設置すると共に、矢倉8に牽引ワイヤ4を引張するためのウィンチ9(図4参照)を設置しておく。つまり、牽引ワイヤ4は、矢倉8の上部に吊り下げ状態で取り付けられた滑車8aを巻回してウィンチ9により巻き取られるようになっており、桝T1側では滑車8aの取り付け高さ位置まで更生管1を引き上げることができるようになっている。
牽引ワイヤ4を発進側のマンホールMから桝T1にわたって引き込むための作業としては、例えば、カーボンファイバ製の通線材に牽引ワイヤ4を連結しておき、この通線材を桝T1からマンホールMにわたって牽引ワイヤ4と共に挿通する。そして、通線材から牽引ワイヤ4を離脱させた後、牽引ワイヤ4の先端を更生管1の先端部材2に連結する。
同様に、後端部牽引ワイヤ5を発進側のマンホールMからライニング対象の埋設取付管Tよりも下流側(図4の右側)のマンホールM’にわたって引き込むため、通線材に後端部牽引ワイヤ5を連結しておき、この通線材を下流側のマンホールM’から発進側のマンホールMにわたって後端部牽引ワイヤ5と共に挿通する。そして、通線材から後端部牽引ワイヤ5を離脱させた後、その先端を後端部材3の後端側円板31に連結する。
この状態で後端部材3を更生管1の後端部に装着する。この後端部材3の装着動作としては、上述したように、後端部材3を更生管1の後端部に挿入した状態でエア供給管36から密閉空間3xに高圧空気を供給する。これにより、可撓膜34が外周側に向かって膨張して更生管1の内面を押圧し、後端部材3が更生管1の後端部に抜け止めされた状態となり、且つ、この更生管1の後端部が閉止される。次いで、後端部材3に挿入用蒸気ホース6を接続する。
このような状態で、蒸気発生加熱機10を駆動し、発生した水蒸気を挿入用蒸気ホース6を通して更生管1の内部に導入して予熱し、これによって、更生管1に可撓性が得られるようにしておく。そして、図4に示すように、更生管1をマンホールM内に送り出しながら、先端部材2に連結した牽引ワイヤ4を、埋設本管H、埋設取付管T、桝T1及び滑車8aを経てウィンチ9で巻き取って牽引する。このとき、後端部牽引ワイヤ5も下流側のマンホールM’から牽引ワイヤ4の巻き取りに同調して牽引する。
そして、埋設本管Hから埋設取付管Tにわたって更生管1を挿入していく過程において、更生管1の温度が低下して可撓性が低下した場合、更生管1を埋設取付管Tの所定位置まで引き込むことが困難になる。特に、埋設本管H内に水が存在している場合には、更生管1の温度が急激に低くなってしまうため、この現象は顕著である。
このような状況を回避するため、埋設本管Hから埋設取付管Tにわたって更生管1を挿入する際、蒸気発生加熱機10で発生した水蒸気を挿入用蒸気ホース6を経て更生管1の内部に導入する。これにより更生管1は高温(例えば、80℃)に維持されて可撓性を継続的に有する状態となり、埋設本管H内から埋設取付管T内にわたって円滑に挿入されていく。
ところで、更生管1を埋設本管H内から埋設取付管T内に挿入する際において、牽引ワイヤ4が巻き取られることによって牽引されると、牽引ワイヤ4は、埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に接触し、摩擦抵抗が発生する(図5参照)。また、牽引ワイヤ4がさらに巻き取られると、先端部材2が取付管口Taの周縁に干渉したり、あるいは、可撓性を有する更生管1が取付管口Taの周縁に干渉し(図6参照)、摩擦抵抗が増大してそれ以上の牽引ワイヤ4の巻き取りができなくなることがある。このような場合には、後端部牽引ワイヤ5を下流側のマンホールM’側から牽引し、更生管1の後端部を下流側のマンホールM’側に移動させることにより、埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に対する牽引ワイヤ4の接触や、先端部材2あるいは更生管1の干渉を解除し、あるいは、摩擦抵抗を軽減させればよい。
したがって、更生管1等が埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に干渉し、牽引ワイヤ4の巻き取りができなくなったとしても、後端部牽引ワイヤ5を牽引して更生管1の後端部を下流側のマンホールM’側に移動させることにより、埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に対する更生管1等の干渉を解除し、あるいは、摩擦抵抗を軽減することができ、この状態で牽引ワイヤ4を巻き取って牽引することにより、更生管1を埋設取付管T内に円滑に引き込むことができる。
この挿入工程は、更生管1の拡径部1aが取付管口Taの周縁に当接するまで行われる(図7参照)。
<フランジ形成装置搬入工程>
上記更生管挿入工程によって、更生管1の拡径部1aが取付管口Taの周縁に当接する位置まで埋設取付管T内に更生管1が引き込まれた後、フランジ形成装置搬入工程が行われる。
このフランジ形成装置搬入工程では、先ず、図8に示すように、先端部材2の貫通孔2aに連結されている牽引ワイヤ4(連結具4x)を取り外した後、拡径蒸気ホース11に繋ぎ代える。この拡径蒸気ホース11は、蒸気発生加熱機に10に接続されており、この蒸気発生加熱機10の駆動によって更生管1の内部に先端側から水蒸気が吹き込み可能となる。また、先端部材2のチューブ用開口2bを通して更生管1の内部に排気チューブ71を挿入する。この後、後端部材3の密閉空間3xに供給された高圧空気をエア供給管36を通して大気に放出し、図9に示すように、後端部材3の外径を縮小させた状態でマンホールM側から挿入用蒸気ホース6を牽引して後端部材3を更生管1の後端部から離脱させ、マンホールM側から回収する。この回収時には、後端部材3がマンホールM側に移動するのに伴って後端部牽引ワイヤ5及び排気チューブ7もマンホールM側に移動する。
このようにして後端部材3及び後端部牽引ワイヤ5を回収すると、圧力流体、例えば、高圧空気等の圧力流体導入管13を接続して用意しておいたフランジ形成装置12をマンホールMから埋設本管Hに導入する(図10参照)。
ここで、フランジ形成装置12は、ゴム製で内部が密閉された袋体によって構成されたパッカであって、内部に圧力流体が導入されていない状態では、埋設本管Hの内径寸法よりも小径の円筒形状を有している。そして、その内部に圧力流体を導入することによって埋設本管Hの内径寸法程度又はそれ以上の径まで拡径するようになっている。
上述の如く圧力流体導入管13が接続されたフランジ形成装置12は、取付管口Taを臨む位置まで埋設本管Hの内部に引き込まれる。フランジ形成装置12の引き込み動作としては、フランジ形成装置12の各側面にパッカ牽引ワイヤ41を接続し、このパッカ牽引ワイヤ41の一端をライニング対象の埋設取付管Tよりも下流側のマンホールM’に引き出しておいて、パッカ牽引ワイヤ41を牽引することにより行われる。
尚、上記フランジ形成装置12であるパッカへの圧力流体の導入は、例えば、地上に設置され、且つ、圧力流体導入管13が接続された流体圧力源、例えば、ブロア(図示省略)により行われる。
<取付管口止水工程・更生管拡径工程>
本形態では、取付管口止水工程と更生管拡径工程とが略同時に行われる。以下、この工程について説明する。
取付管口止水工程が開始されると、拡径蒸気ホース11から水蒸気を更生管1の内部に導入する。導入された水蒸気は、更生管1における拡径部1aの後端縁開口より流出し、拡径部1aを内外から加熱し、軟化させる。
次いで、圧力流体導入管13からフランジ形成装置12内に圧力流体を導入し、フランジ形成装置12を膨張させる。これにより、図11に示すように、フランジ形成装置12であるパッカの外周面が更生管1の拡径部1aを取付管口Taの周辺に向けて押圧し、この拡径部1aをフランジ形状に形成して取付管口Taの周辺に密着させる。この際、先に拡径部1aを十分に加熱軟化させているため、取付管口Taの周辺に強固に押さえ付けることができる。また、拡径部1aの外周面(取付管口Taの周辺に密着する箇所)には予めブチルゴム等の粘着性を有する材料が塗布されている。このため、フランジ形状となった拡径部1aは取付管口Taの周辺に接着することになり、この部分の止水性が良好に得られることになる。
拡径蒸気ホース11から更生管1内への水蒸気の吹き込みは継続して行なわれており、これによって更生管1は加熱されて軟化する。このとき、フランジ形成装置12であるパッカによって更生管1の後端部開口は閉止されているので、更生管1内からの水蒸気の漏れは殆どなく、更生管1全体が効率良く加熱されていく。この場合の更生管1内の過剰の水蒸気やドレン水は、先端部材2のチューブ用開口2bから更生管1内部に挿入された排気チューブ71を利用して管外に排出される。
その後、拡径蒸気ホース11から高圧空気が更生管1内に導入されて更生管1が拡径される。これにより、更生管1は、外径が拡大していき埋設取付管Tの内面に密着する(図12参照)。また、高圧空気の導入に伴って更生管1は冷却されるため、埋設取付管Tの内面に密着した状態で更生管1が硬化し、この形状が保持される。これにより、埋設取付管Tの内面がライニングされる。
その後、桝T1内に存在する余剰の更生管1を先端部材2と共に切除し、この切断縁の仕上げ加工を行う。また、フランジ形成装置12から圧力流体を抜いてフランジ形成装置12を下流側のマンホールM’側に引き抜いて回収し、更に、上記矢倉8を撤去することによって本ライニング作業が完了する。
以上のように、本実施形態では、更生管1の挿入工程において、更生管1の内部に挿入用蒸気ホース6を経て水蒸気を導入することにより、更生管1の温度が低下してその可撓性が得られなくなることがない。また、更生管1等が埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に干渉したとしても、後端部牽引ワイヤ5を牽引することで、取付管口Taの周縁に対する更生管1等の干渉を解除し、あるいは、摩擦抵抗を軽減することができ、埋設取付管T内の所定位置まで更生管1を円滑に引き込むことができる。その結果、更生管1の拡径部1aを取付管口Taまで確実に引き込むことが可能になり、拡径部1aによる取付管口Taの周辺の止水構造を良好に得ることができる。また、拡径部1aを加熱軟化させた状態でフランジ形成装置12によって取付管口Taの周辺に強固に押さえ付けることができるため、拡径部1aを取付管口Taの周辺の形状に沿うように形成して密着させることが可能となり、取付管口Taの周辺に高い止水性を得ることができる。
<更生管挿入工程の変形例>
前述した実施形態においては、更生管1の後端側からのみ水蒸気を導入する場合を説明したが、図13に示すように、更生管1の先端側(引き込み方向の下流側)からのみ水蒸気を導入するようにしてもよい。
この本変形例に使用される先端部材2は、図14に示すように、先に図2に示した先端部材2にさらに拡径蒸気ホース11を接続するためのホース接続孔2cが設けられている。このホース接続孔2cは、内周面に雌ネジが形成されており、この雌ネジを利用して拡径蒸気ホース11が接続される。つまり、後述する更生管挿入工程時には、貫通孔2aに連結具4xを介して牽引ワイヤ4が接続されると共に、ホース接続孔2cに拡径蒸気ホース11が接続されており、更生管1の内部に水蒸気の導入が可能な状態となる。また、先端部材2のチューブ用開口2bから更生管1内部に排気チューブ71が挿入される。
一方、更生管1の後端側を閉止する後端部材3には、挿入用蒸気ホース6は接続されていない。このため、後端部材3を構成する後端側の円板31の開口31a及び金属チューブ35の開口は、図示しない閉鎖具によって閉鎖される。
これらの拡径蒸気ホース11及び排気チューブ71をマンホールMから桝T1にわたって引き込むための作業としては、前述したように、通線材に牽引ワイヤ4と共に拡径蒸気ホース11及び排気チューブ71を連結しておき、この通線材を桝T1からマンホールMにわたって挿通すればよい。そして、牽引ワイヤ4の先端を更生管1の先端部材2の貫通孔2aに連結すると共に、拡径蒸気ホース11をホース接続孔2cに接続し、さらに、先端部材2のチューブ用開口2bから更生管1内部に排気チューブ71を挿入する(図15参照)。
次に、本変形例におけるライニング作業について説明する。更生管挿入工程では、図13に示すように、更生管1をマンホールM内に送り出しながら、先端部材2に連結した牽引ワイヤ4を、埋設本管H、埋設取付管T、桝T1及び滑車8aを経てウィンチ9で巻き取って牽引する。このとき、後端部牽引ワイヤ5も下流側のマンホールM’から牽引ワイヤ4の巻き取りに同調して牽引する。この際、先端部材2に接続された拡径蒸気ホース11によって更生管1の内部への水蒸気の供給が行われる。つまり、埋設本管H内から埋設取付管T内にわたって更生管1を挿入していく際に蒸気発生加熱機10を駆動し、この蒸気発生加熱機10で発生した水蒸気を拡径蒸気ホース11を経て更生管1の内部にその先端側から導入する。これにより、更生管1は高温の状態が維持され可撓性を有したまま埋設本管H内から埋設取付管T内にわたって円滑に挿入されていく(図16参照)。
ここで、牽引ワイヤ4が巻き取られることにより、更生管1等が取付管口Taの周縁に干渉して摩擦抵抗が増大し、それ以上の牽引ワイヤ4の巻き取りができなくなった場合には、前述したように、後端部牽引ワイヤ5を下流側のマンホールM’側から牽引し、更生管1の後端部を下流側のマンホールM’側に移動させることにより、埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に対する更生管1等の干渉を解除し、あるいは、摩擦抵抗を軽減させればよい。
このようにして更生管挿入工程が行われた後のフランジ形成装置搬入工程、取付管口止水工程、更生管拡径工程は、上記実施形態において説明したフランジ形成装置搬入工程、取付管口止水工程及び更生管拡径工程と同様に行われる。
すなわち、後端部材3の外径を縮小させた状態でマンホールM側からエア供給管36を牽引して後端部材3を更生管1の後端部から離脱させ、後端部牽引ワイヤ5と共にマンホールM側から回収する。
このようにして後端部材3及び後端部牽引ワイヤ5を回収すると、予め圧力流体導入管13を接続して用意しておいたフランジ形成装置12をマンホールMから埋設本管Hに導入する。
フランジ形成装置搬入工程が完了した状態では、拡径蒸気ホース11から更生管1の内部への水蒸気の導入が継続されており、水蒸気は更生管1における拡径部1aの後端開口より流出し、拡径部1aを内外から加熱し、軟化させている。
次いで、圧力流体導入管13からフランジ形成装置12内に圧力空気を導入し、フランジ形成装置12を膨張させる。これにより、フランジ形成装置12の外周面が更生管1の拡径部1aを取付管口Taの周辺に向けて押圧し、先に加熱軟化された拡径部1aをフランジ形状に形成して取付管口Taの周辺に密着させる。
拡径蒸気ホース11から更生管1内への水蒸気の吹き込みは継続して行なわれているが、フランジ形成装置12であるパッカによって更生管1の後端部開口が閉止されているため、更生管1内からの水蒸気の漏れは殆どなく、更生管1全体が効率良く加熱されていく。次いで、拡径蒸気ホース11から高圧空気が更生管1内に導入されて更生管1が拡径される。これにより、更生管1は、外径が拡大していき埋設取付管Tの内面に密着する。また、高圧空気の導入に伴って更生管1は冷却されるため、埋設取付管Tの内面に密着した状態で更生管1が硬化し、この形状が保持される。これにより、埋設取付管Tの内面がライニングされる。
また、前述した実施形態及び変形例においては、更生管1の後端側からのみ、あるいは、先端側からのみ水蒸気を導入しつつ更生管挿入工程を行なう場合を説明したが、更生管1の先端側及び後端側の両方から水蒸気を導入するようにしてもよい。
具体的には、図17に示すように、更生管1の先端側を閉止する先端部材2のホース接続孔2cに拡径蒸気ホース11を接続すると共に、後端側を閉止する後端部材3に挿入用蒸気ホース6を接続し、蒸気発生加熱機10を駆動し、蒸気発生加熱機10で発生した水蒸気を拡径蒸気ホース11を経て更生管1の内部にその先端側から導入すると共に、挿入用蒸気ホース6を経て更生管1の内部にその後端側から導入する。これにより、更生管1は高温の状態が維持されて可撓性を有したまま埋設本管H内から埋設取付管T内にわたって円滑に挿入されていく。
この場合、更生管1の内部の過剰の水蒸気やドレン水を外部に排出するため、先端部材2のチューブ用開口2bから更生管1内部に排気チューブ71が挿入されるか、後端部材3の金属チューブ35を通過して排気チューブ7が更生管1内部に挿入される。
なお、更生管1の先端側から水蒸気を導入して更生管挿入工程を行う場合、あるいは、更生管1の先端側及び後端側の両方から水蒸気を導入して更生管挿入工程を行う場合、図2に示した先端部材2の貫通孔2aに拡径蒸気ホース11を接続し、拡径蒸気ホース11を通して更生管1の内部に水蒸気を導入しつつ、拡径蒸気ホース11を図示しない巻き取り機を介して巻き取ることにより、更生管1を埋設取付管T内に引き込むようにしてもよい。この場合は、拡径蒸気ホース11として、設定された引張強度を有するものを採用すればよい。
<更生管の変形例>
この更生管1は、拡径部1aが、所定の形状記憶温度(例えば、80℃)に加熱されることによって成形時の状態に形状回復する性能を有している。具体的には、拡径部1aは、成形時においては、後端側に向かって徐々に径が大きくなる略円錐台形状とされているが、予め埋設本管Hを通過する際に抵抗にならない大きさと形状に賦形されている。例えば、図18及び図19に示すように、拡径部1aの略円錐台面部を部分的に折り込んで複数個の折り襞を有する花形状に賦形されている。このため、成形時の拡径部1aの外径よりも小さな外面間隔に形成されている。この場合、花形状に賦形された拡径部1aは、後端部材3の装着離脱を容易にできるように、後端部材3の外径よりも内面間隔が大きく形成されている。
具体例としては、埋設本管Hの内径が250mm、埋設取付管Tの内径が150mmの場合に、更生管1の管端に設けられる拡径部1aの外径が300mmでは、埋設本管Hの内部に更生管1を引き込むことができないが、成形時の拡径部1aの略円錐台面部を部分的に折り込んで4個の折り襞を形成すれば、埋設本管Hの内径よりも小径の200mmに賦形することが可能となり、埋設本管Hの内部に引き込むことができる。この場合、更生管1の後端部に装着される後端部材3の外径は75mmであり、これを考慮して賦形された拡径部1aの最小内面間隔は90mmに形成され、後端部材3の装着離脱を支障なく行なうことができる。
このような成形時の拡径部1aを埋設本管Hの内径よりも小径に賦形した更生管1を使用したライニング作業は、更生管挿入工程、拡径部復元工程、フランジ形成装置搬入工程、取付管口止水工程、更生管拡径工程からなる。本更生管1を使用したライニング作業と、前述したライニング作業との相違点は、フランジ形成装置搬入工程と取付管口止水工程との間に拡径部復元工程を有することにあり、その他の工程は、前述したライニング作業の各工程と同様である。従って、ここでは拡径部復元工程についてのみ説明する。
前述したように、成形時の拡径部1aを埋設本管Hの内径よりも小径に賦形した更生管1は、内部に水蒸気が導入された状態で、賦形された拡径部1aが取付管口Taの周縁に当接するまで、埋設本管Hから埋設取付管T内にわたって挿入される。この際、埋設本管Hの内径よりも賦形された拡径部1aの外径が小さいため、更生管1を埋設本管H内で円滑に引き込むことができる。このような更生管挿入工程が行なわれた後に、拡径部復元工程に移る。
この拡径部復元工程では、前述したように、先端部材2に設けられている貫通孔2aに牽引ワイヤ4に代えて拡径蒸気ホース11を接続する。この状態では、図20に示すように、先端部材2に拡径蒸気ホース11が接続され、後端部材3に挿入用蒸気ホース6が接続されており、蒸気発生加熱機10の駆動によって更生管1の内部に水蒸気の導入が可能な状態になる。この後、後端部材3の密閉空間3xに供給していた高圧空気を抜いて後端部材3の外径を縮小させ、挿入用蒸気ホース6を牽引して後端部材3を更生管1から離脱させる。この後、フランジ形成装置12としてのパッカを埋設本管H内に搬入し、取付管口Taに対向する位置まで引き込む。この場合、フランジ形成装置12は、拡径部1aの後端縁開口面積と同等以上の面積を有するように形成されている。そして、圧力流体導入管13からフランジ形成装置12内に所定量の圧力空気を導入し、膨張させる。これにより、図21に示すように、更生管1の拡径部1aの後端縁とフランジ形成装置12との間に水蒸気の流路が確保される。この状態で、拡径蒸気ホース11を通して更生管1の内部に水蒸気が導入される。更生管1の内部に導入された水蒸気は、更生管1を加熱しつつ、更生管1の拡径部1aの後端縁とフランジ形成装置12との流路を通して埋設本管Hに吹き出される。このとき、外部に吹き出された水蒸気は、賦形された拡径部1aに内外から接触して拡径部1aを加熱し、成形時の大きさと形状、つまり、更生管1の後端側に向かって徐々に径が大きくなる略円錐台状に復元させる。
このような拡径部復元工程によって成形時の大きさと形状に復元された拡径部1aが取付管口Taの周縁に当接する状態となれば、取付管口止水工程が行なわれる。
<更生管挿入工程の他の変形例>
次に、本発明の他の変形例について説明する。本変形例は、上述した実施形態及び各変形例の何れにも適用可能であって、更生管挿入工程に特徴がある。その他の工程は上述したものと同様であるのでここでの説明は省略する。
本変形例では、図22に示すように、更生管1をシート14でくるみ、埋設本管H内を埋設取付管Tに向けて移動させるようにしている。
シート14は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シートや、樹脂でコーティングした布等を用いることができ、厚みとしては、埋設本管Hとの接触摩擦によって破れないように、1mm以上が好ましく、一方、コストを考慮すると、2mm以下が好ましい。また、シート14は、拡径部1aを含む更生管1を包み込むように、袋状に形成されることが好ましいが、円筒状であってもよい。シート14の止着には、両面テープを用いることができる。
なお、シート14には、シート牽引ワイヤ(シート牽引材)42が連結されており、このシート牽引ワイヤ42は、後端部牽引ワイヤ5と共にライニング対象の埋設取付管Tよりも下流側のマンホールM’から地上に引き出しておく。
更生管1の挿入工程においては、更生管1の牽引ワイヤ4又は拡径蒸気ホース11が牽引されると共に、牽引ワイヤ4又は拡径蒸気ホース11の牽引に同調して後端部牽引ワイヤ5及びシート牽引ワイヤ42が下流側のマンホールM’から牽引される。更生管1の先端部が取付管口Taの直前に到達すれば、牽引ワイヤ4又は拡径蒸気ホース11を牽引して更生管1をシート14から抜き取って埋設取付管T内に引き込む。
この際、牽引ワイヤ4が埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に接触し、牽引ワイヤ4の巻き取りができなくなったとしても、シート牽引ワイヤ42又は後端部牽引ワイヤ5を牽引して更生管1の後端部を下流側のマンホールM’側に移動させることにより、埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に対する牽引ワイヤ4の摩擦抵抗を軽減することができ、牽引ワイヤ4を巻き取ることができる。また、先端部材2や更生管1が埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に干渉し、牽引ワイヤ4の巻き取りができなくなったとしても、後端部牽引ワイヤ5を牽引して更生管1の後端部を下流側のマンホールM’側に移動させることにより、埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に対する更生管1等の干渉を解除し、あるいは、摩擦抵抗を軽減することができ、この状態で牽引ワイヤ4を巻き取って牽引することにより、更生管1を埋設取付管T内に円滑に引き込むことができる。
更生管挿入工程が終了すれば、フランジ形成装置搬入工程に先立って、シート牽引ワイヤ42を牽引して埋設本管H内に取り残されたシート14をマンホールM’から取り出す(図23参照)。
この場合、シート牽引ワイヤ42をライニング対象の埋設取付管Tよりも下流側の埋設取付管(図示せず)から地上に引き出しておいてもよい。
このように、本変形例によれば、更生管1をシート14にくるんで埋設本管Hを経て埋設取付管Tに引き込むことができるため、埋設本管Hに水が存在していたとしても、更生管1が水と直接接触することを防止でき、更生管1の温度が低下することを抑制すると共に、更生管1の可撓性が低下することを抑制することができる。したがって、埋設取付管Tに曲がり個所が多い場合であっても、更生管1を埋設取付管T内に確実に引き込むことができる。また、更生管1を包むシート14が埋設本管Hの内周面に接触して移動するため、更生管1が埋設本管Hの内周面に接触して移動する場合に比較して摺動抵抗を低減させることができ、小さな牽引力で更生管1を引き込むことが可能になる。さらに、更生管1は、埋設本管Hの内周面に直接接触することがないため、更生管1の表面の汚れを防止することもでき、更生管1と埋設取付管Tとの密着性及び取付管口Taの止水性を向上できる。また、更生管1の拡径部1aの外周面に塗布されたブチルゴム等の粘着性材料が埋設本管Hに付着することもなく、埋設本管Hの内面の汚れを防止することもできる。
以上説明した実施形態では、更生管1に可撓性を得るための加熱媒体として水蒸気を使用したが、これに限らず熱風等を使用してもよい。また、埋設本管Hに埋設取付管Tが一定角度傾斜して接続されている以外に、直交して接続されている場合であっても適用することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態でも、第1実施形態において図2及び図3に示した先端部材2、後端部材3を使用することから、先端部材2、後端部材3については、同一の部材には同一の符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
但し、図24及び図25に示すように、後端部材3を構成する後方の円板31には、複数本のワイヤ(支持材)151を介して板体15が連結されている。この板体15は、拡径部1aの後端縁の開口面積よりも大きな面積に形成されており、後端部材3を更生管1の拡径部1aの直上の後端部に挿入し、エア供給管36から密閉空間3xに高圧空気を供給して後端部を閉止した際に、板体15が拡径部1aの後端縁直下に対向して位置するように、支持材151の長さが設定されている。ここで、板体15には、貫通孔15aが形成されており、この貫通孔15aを通して挿入用蒸気ホース6が後端部材3に接続されている。同様に、エア供給管36や排気チューブ7も板体15に形成された貫通孔を通して後方に引き出されている他、板体15には、後端部牽引ワイヤ5が連結されている。
本第2実施形態に係るライニング方法と上記第1実施形態のライニング方法とは、前述した後端部材3に板体15を連結して用いる以外同様である。従って、第2実施形態に係るライニング方法についても、第1実施形態のライニング方法に則って説明する。
更生作業が行われる前段階での更生管1は、図24に示したように、先端部が先端部材2によって、後端部が後端部材3によってそれぞれ閉止されていると共に、拡径部1aの後端縁に対向して板体15が配置されている。また、更生管1の先端からは牽引ワイヤ4が延びており、後端からは後端部牽引ワイヤ5、蒸気ホース6、排気チューブ7及びエア供給管36がそれぞれ延びている。また、更生管1の内部には、排気チューブ7の先端が開放されている。
<更生管挿入工程>
牽引ワイヤ4をマンホールMから桝T1にわたって挿通すると共に、後端部牽引ワイヤ5をマンホールMから下流側のマンホールM’にわたって挿通した後、牽引ワイヤ4の先端を更生管1の先端部材2に連結し、後端部牽引ワイヤ5を板体15に連結する。一方、牽引ワイヤ4は、桝T1の上部に設置された矢倉8の滑車8aを巻回してウィンチ9によって巻き取られるようになっている。
次いで、後端部材3を更生管1の後端部に挿入し、エア供給管36から密閉空間3xに高圧空気を供給すれば、可撓膜34が外周側に向かって膨張して更生管1の内面を押圧し、後端部材3が更生管1の後端部に抜け止めされるとともに、更生管1の後端部が閉止される。この場合、後端部材3にワイヤ151を介して連結された板体15が拡径部1aの後端縁直下に配置される。
このような状態で、更生管1の内部に蒸気発生加熱機10より水蒸気を導入して予熱し、これによって、更生管1に可撓性が得られるようにしておく。そして、更生管1をマンホールM内に送り出しながら、先端部材2に連結した牽引ワイヤ4を、埋設本管H、埋設取付管T、桝T1及び滑車8aを経てウィンチ9で牽引する。このとき、後端部牽引ワイヤ5も牽引ワイヤ4の牽引に同調して牽引する(図26参照)。
そして、埋設本管Hから埋設取付管Tにわたって更生管1を挿入していく途中で、蒸気発生加熱機10を駆動し、蒸気発生加熱機10で発生した水蒸気を挿入用蒸気ホース6を経て更生管1の内部に導入する。これにより更生管1は高温(例えば、80℃)に維持されて可撓性を継続的に有し、埋設本管H内から埋設取付管T内にわたって円滑に挿入されていく。このように、更生管1の挿入工程で水蒸気を更生管1の内部に導入しているため、更生管1の温度が低くなって可撓性が低下することを防止できる。
一方、牽引ワイヤ4を巻き取って更生管1を埋設本管H内から埋設取付管T内に挿入する際において、更生管1等が取付管口Taの周縁に干渉し、あるいは、摩擦抵抗が増大して、それ以上の牽引ワイヤ4の巻き取りができなくなった場合には、後端部牽引ワイヤ5を下流側のマンホールM’側から牽引し、板体15を下流側のマンホールM’側に移動させることにより、更生管1の後端部が同方向に移動し、埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に対する更生管1等の干渉を解除し、あるいは、摩擦抵抗を軽減させることができる。したがって、この状態で牽引ワイヤ4を巻き取って牽引することにより、更生管1を埋設取付管T内に円滑に引き込むことができる。
この場合、板体15は、更生管1の後端開口から離隔して配置されていることにより、後端部牽引ワイヤ5を更生管1の拡径部1aに干渉することなく牽引できることから、拡径部1aの意図しない損傷を防止できる利点がある。
<フランジ形成装置搬入工程>
更生管1の拡径部1aが取付管口Taの周縁に当接し、更生管挿入工程が終了すれば(図27参照)、先端部材2の貫通孔2aに連結されている牽引ワイヤ4を取り外した後、一端が蒸気発生加熱機10に接続された拡径蒸気ホース11に繋ぎ代える(図28参照)。この後、後端部材3の密閉空間3xに供給された高圧空気を抜いて後端部材3の外径を縮小させた状態でマンホールM側から挿入用蒸気ホース6を牽引して後端部材3を更生管1の後端部から離脱させ、後端部牽引ワイヤ5等と共にマンホールM側から回収する(図29参照)。
このようにして後端部材3等を回収すると、フランジ形成装置12がマンホールMから埋設本管Hに導入され、取付管口Taを臨む位置まで引き込まれる(図10参照)。
<取付管口止水工程・更生管拡径工程>
フランジ形成装置搬入工程が完了した後、蒸気発生加熱機10を駆動し、拡径蒸気ホース11から水蒸気を更生管1の内部に導入する。導入された水蒸気は、更生管1における拡径部1aの後端開口より流出し、拡径部1aを内外から加熱し、軟化させる。
次いで、圧力流体導入管13からフランジ形成装置12内に圧力空気を導入し、フランジ形成装置12のパッカを膨張させる。これにより、図11に示したように、フランジ形成装置12であるパッカの外周面が更生管1の拡径部1aを取付管口Taの周辺に向けて押圧し、先に加熱軟化された拡径部1aをフランジ形状に形成して取付管口Taの周辺に密着させる。
ここで、フランジ形成装置12によって更生管1の後端側が閉止されることにより、拡径蒸気ホース11から更生管1内へ継続して供給される水蒸気によって更生管1全体が効率良く加熱される。その後、拡径蒸気ホース11から高圧の空気が更生管1内に導入されて更生管1が拡径される。これにより、更生管1は、外径が拡大していき埋設取付管Tの内面に密着する(図12参照)。
その後、桝T1内に存在する余剰の更生管1を先端部材2と共に切除して仕上げ加工を行うと共に、フランジ形成装置12を引き抜いて回収し、更に、上記矢倉8を撤去することによってライニング作業が完了する。
<変形例>
この実施形態においても、更生管挿入工程において、後端部材3に接続された挿入用蒸気ホース6に代えて先端部材2の貫通孔2aもしくはホース接続孔2c(図14参照)に拡径蒸気ホース11を接続し、更生管1に先端部からのみ水蒸気を導入しながらマンホールMから埋設本管Hを経て埋設取付管Tに挿入したり、後端部材3に挿入用蒸気ホース6を接続すると共に、先端部材2に拡径蒸気ホース11を接続し、更生管1に後端部及び先端部の両方から水蒸気を導入して加熱しながらマンホールMから埋設本管Hを経て埋設取付管Tに挿入してもよい。
また、成形時に後端側に向かって徐々に径が大きくなる略円錐台形状に成形された拡径部1aを、埋設本管Hを通過する際に抵抗にならないように、成形時の拡径部1aの外径よりも小さな外径に形成し、所定の形状記憶温度(例えば、80℃)に加熱されることによって成形時の状態に形状回復する性能の更生管1に変形することもできる。
このような更生管1の拡径部復元工程においては、図28に示したように、拡径部1aの後端縁直下に対向して板体15が配置されて行なわれることから、後端部材3の外径を縮小して、拡径蒸気ホース11又は挿入用蒸気ホース6から更生管1の内部に水蒸気を供給し、あるいは、拡径蒸気ホース11及び挿入用蒸気ホース6の両方から水蒸気を供給することにより、更生管1の内部に供給された水蒸気は、更生管1の内周面と縮径された後端部材の外周面との隙間を経て板体15に衝突し、板体15によって減速されると共に、方向が変更される。この結果、水蒸気が拡径部1aの周囲に満遍なく充満し、拡径部1aを内外から加熱して、成形時の大きさと形状、つまり、更生管1の後端側に向かって徐々に径が大きくなる略円錐台状に効率よく短時間に復元することが可能となる。すなわち、埋設取付管Tが埋設本管Hの軸線に対して60°等種々の接続角度を有する場合には、更生管1の内部に供給された水蒸気は、拡径部1aの上半部に沿って流出し、その下半部を加熱して復元させるためには長時間が必要であるが、板体15を採用することによって、拡径部1aの下半部にも上半部とほぼ均等に水蒸気を接触させることができるものとなる。
このような拡径部復元工程においては、後端部材3を脱落することなく更生管1の後端部に支持するため、後端部材3の先端側に後端部材支持ワイヤ(図示せず)を連結しておき、該後端部材支持ワイヤを更生管1の内部を通過して先端部材2のワイヤ用開口を経て外部に引き出しておくことにより可能となる。この後端部材支持ワイヤは、牽引ワイヤ4と共に予めマンホールMから桝T1にわたって挿通される。
以上のように、本実施形態でも、更生管1の挿入工程において、更生管1の内部に水蒸気を導入することにより、更生管1の温度が低下してその可撓性が得られなくなることがなく、また、更生管1等が埋設取付管Tの取付管口Taの周縁に干渉したとしても、後端部牽引ワイヤ5を牽引することで、取付管口Taの周縁に対する更生管1等の干渉を解除し、あるいは、摩擦抵抗を軽減することができ、更生管1を埋設取付管T内の所定位置まで円滑に、且つ、確実に引き込むことができる。その結果、更生管1の拡径部1aを取付管口Taまで引き込むことが可能になり、拡径部1aによる取付管口Taの周辺の止水構造を良好に得ることが可能になる。また、拡径部1aを加熱軟化させた状態でフランジ形成装置12によって取付管口Taの周辺に強固に押さえ付けることができるため、拡径部1aを取付管口Taの周辺の形状に沿うように形成して密着させることが可能となり、取付管口Taの周辺に高い止水性を得ることができる。