JP4860020B2 - エチレンのコポリマー及びターポリマーの分子量減少方法 - Google Patents

エチレンのコポリマー及びターポリマーの分子量減少方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、エチレン含量が20%を超えるエチレンのコポリマー及びターポリマー、特にエチレン−プロピレン(EPM)又はエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)エラストマーの分子量減少方法に関する。
【0002】
重合の下流側の操作によりEP(D)Mの分子量を減少させることは、低分子量、従って低粘度のポリマーを製造するのに極めて有利な技術である。
標準ポリマーの分解をおこなって所望の分子量のポリマーを得ることの利点を評価するとき、工業プラントにおいて、形態の安定性なく高流動性、従って粘着性のポリマーを製造するのが困難であることを考慮しなければならない。材料の弾性が大きいほどこの傾向が顕著となる。
解重合、すなわち、分子量を減少できる種々の方法が文献から公知である。特に、熱酸化、熱分解及びラジカル開始剤(ペルオキシド)による分解が、使用されている。
【0003】
熱酸化(例えば、US−A−4,372,863参照)は、酸素(又は空気)の存在下で実施される方法であり、機械的剪断、温度及び酸素の作用の組み合わせにより分解を生じさせる。公知の方法では、主にバッチ式装置、長処理時間及び十分な空気流量を確保するために部分的にのみ設けられた機械を使用している。これにより得られた物質は、暗色で、酸化されており且つ取扱いが困難である。
熱機械分解(CA−A−991,792参照)は、窒素下、好ましくは押出しにおいて、極めて高温(約330〜400℃)で実施される。これらの熱的条件下で操作するとき、機械的剪断及び熱応力により形成されるラジカルは、再結合するのに十分な寿命を有していない。
【0004】
ペルオキシドによる分解反応は、公知であり、エチレン含量が約20%未満であるポリα−オレフィンの分野で広く使用されている(例えば、CA−A−999,698参照)。これは、EP(D)Mに特有であり且つペルオキシド加硫反応の基礎である更なる架橋反応を受けるのを防止する第三炭素におけるラジカルが不安定であることによる。
EP−A−123,424は、ペルオキシドとヒドロペルオキシドとから実質的になる混合物の存在下でのオレフィン系ポリマーの分解方法を記載している。
【0005】
今般、200℃を超えない温度であっても、高分子物質の分解を極めて強力に促進できる方法を見出した。
即ち、本発明は、EPMコポリマーと、EPDMターポリマーと、それらの混合物とから選択される高分子物質の分子量減少方法であって、前記高分子物質を、分子量を減少させるのに有効な量の少なくとも一種のヒドロペルオキシドで処理することを特徴とする方法に関する。
【0006】
本発明の方法に使用できるEPMコポリマーに関して、これらのエチレン/プロピレンコポリマーは、プロピレン含量が16〜50モル%の範囲、好ましくは20〜45%の範囲にあり、Mnが10,000〜200,000の範囲のものである。
EPDMは、非共役エチレン/プロピレン/ジオレフィンターポリマーである。非共役ジオレフィンの典型例には、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンがある。これらのEPDMターポリマーは、通常エチレン含量が30〜85モル%、好ましくは40〜70モル%の範囲にあり、プロピレン含量が15〜70モル%、好ましくは30〜60モル%の範囲にあり、非共役ジエン含量が0.5〜20モル%、好ましくは1〜15モル%、さらに好ましくは2〜10モル%の範囲内にある。EPDMの分子量Mnは、15,000〜200,000、好ましくは20,000〜70,000の範囲内にあり、非共役ジエンは、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
チーグラー−ナッタ触媒の存在下におけるEPDMの製造方法は、周知である(例えば、US−A−2,933,589、US−A−3,000,866、US−A−3,093,621参照)。これらのターポリマーは、主にエラストマー組成物の成分として製造され、主鎖に不飽和がないこと及び環状基又は主鎖の横に位置する基に不飽和部位が存在することを特徴としている。
【0007】
本発明の方法では、ポリマーの混合物を使用することもできる。有用な混合物は、異なるエチレン含量及び/又は異なる分子量を有する二種以上のEPMの混合物である。
本発明の方法を実施する温度は、80〜250℃、好ましくは140〜200℃である。
【0008】
上記ヒドロペルオキシド(又はヒドロペルオキシドの混合物)に関する限り、これを、EP(D)M自体又は好適な溶媒に溶解したEP(D)M、好ましくは適当な溶媒に溶解したEP(D)Mに添加する。ヒドロペルオキシドは、好ましくは工程温度で顕著な分解を受けない特性を有していなければならない。換言すれば、ヒドロペルオキシドは、半減期が、工程時間よりも長いことが好ましく、さらに好ましくは工程時間の10倍以上である。
ヒドロペルオキシドの典型例には、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサンがある。前記EP(D)Mに対するヒドロペルオキシドの濃度は、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。
【0009】
好ましい実施態様では、本発明の方法を、通常100秒−1を超える高剪断条件下、好ましくは1,000秒−1を超える高剪断条件下で実施する。
本発明の方法は、好ましくは押出機、さらに好ましくは二軸スクリュー押出機で実施する。
本発明の方法は、酸素の導入なしに実施し、バッチ式及び連続式の両方で行うことができる。バッチ操作では、単一成分を、溶媒の存在下又は不存在下、好ましくは溶媒の不存在下で、一緒に又は少しづつ好適な反応器に添加する。連続操作の場合には、試薬を、好適な供給速度で、サーモスタットで所望の温度に調整された反応器(又は反応帯域)に連続的に添加する。
【0010】
本発明の方法で得ることができる製品は、数多くの分野、特に低分子量を必要とする分野に適用できる。これらの製品の典型的な用途には、エンジンオイル潤滑剤用粘度調整剤の分野、高流動性プラスチック材料の変性がある。
【0011】
本発明の更なる理解のために、以下、実施例により本発明を説明する。
全ての実施例は、同じポリマー(市販のEPM ENICHEM DUTRAL(登録商標)CO 034、プロピレン含量28重量%)を用いて実施した。
メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM−D1238に記載の方法に準じて測定する。MFI(E)は190℃、2.16kgの条件で測定し、MFI(F)は190℃であるが21.6kgの条件で測定する。
上記EPMは、以下の特性を有していた:
MFI(E)=0.56g/10分
MFI(F)=12.5g/10分
MWD=2.9
Mw=138,000
t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)は、Akzo Nobel社製のものを使用した(商品名:Trigonox(登録商標)AW70、70%水溶液)。
ジクミルペルオキシド(DCP)は、Akzo Nobel Chem.社製のものを使用した(商品名:Perkadox(登録商標)BC40、不活性物質上の濃度40%)。
【0012】
比較例1
70cc混合チャンバーにポリマー40gを装入し、サーモスタットで135℃(外部)に調整し、混合しながら、回転速度を30rpmに維持する。温度は、147℃で平衡となる。生成物を2秒間可塑化した後、ローター速度を、急に195rpmに増加する。これにより、温度が上昇し、測定器により測定されるトルクモーメントがゆっくりと減少する。3分間混練した後、実験を中断して、以下の特性を有する生成物を回収する:
MFI(E)=1.3g/10分
MFI(F)=31.2g/10分
【0013】
実施例2
比較例1の70cc混合チャンバーに、ポリマー40gとt−ブチルヒドロペルオキシド1%とを装入した後、サーモスタットで135℃(外部)に調整し、混合しながら、回転速度を30rpmに維持する。温度は、146℃で平衡となる。生成物を2秒間可塑化した後、ローター速度を、急に195rpmに増加する。これにより、温度が上昇し、測定器により測定したトルクモーメントが比較例1の試験の場合よりもはるかに迅速に減少する。2分間混練した後、実験を中断し、生成物を冷却し、回収する。この生成物は、以下の特性を有する:
MFI(E)=2.4g/10分
MFI(F)=83.5g/10分
【0014】
比較例3
比較例1の70cc混合チャンバーに、ポリマー40gとジクミルペルオキシド3%(t−ブチルヒドロペルオキシド1%と等モル量)とを装入した後、サーモスタットで135℃(外部)に調整し、混合しながら、回転速度を30rpmに維持する。温度は、146℃で平衡となる。生成物を2秒間可塑化した後、ローター速度を、急に195rpmに増加する。この時点で、温度が上昇し、測定器により測定したトルクモーメントが迅速に増加する。これは、上記工程で架橋が生じたことを示している。さらに、かなりの容積の膨張があり、成形不可能な粉末状の架橋ポリマーが排出される。
上記比較試験は、ペルオキシドが本発明の方法には有効でないことを示している。
【0015】
比較例4
比較例1の70cc混合チャンバーに、ポリマー40gとジクミルペルオキシド1%(t−ブチルヒドロペルオキシド1%と等モル量)とを装入した後、サーモスタットで135℃(外部)に調整し、混合しながら、回転速度を30rpmに維持する。温度は、146℃で平衡となる。生成物を2秒間可塑化した後、ローター速度を、急に195rpmに増加する。この時点で、温度が上昇し、測定器により測定したトルクモーメントは、減少する代わりに振動し、ローター速度を増加してから約1分後に、二番目の最大トルクに達する。3分間混練した後、実験を中断し、生成物を冷却し、回収する。この生成物は、以下の特性を有する:
MFI(E)=押出し不可
MFI(F)=7.5g/10分
この比較例もまた、ペルオキシドが本発明の方法には有効でないことを明確に示している。
【0016】
比較例5
70ccの混合チャンバーに、ポリマー40gと、ジクミルペルオキシド1%と、t−ブチルヒドロペルオキシド3%とを装入し、サーモスタットで135℃(外部)に調整し、混合しながら、回転速度を20rpmに維持する。温度は、145℃で平衡となる。生成物を2秒間可塑化した後、ローター速度を、急に195rpmに増加する。これにより、温度が上昇し、測定器により測定したトルクモーメントが減少する。3分間混練した後、実験を中断し、生成物を冷却し、回収する。この生成物は、以下の特性を有する:
MFI(E)=0.12g/10分
MFI(F)=16.5g/10分
【0017】
【表1】
Figure 0004860020
【0018】
比較例1と実施例2とを比較すると、本発明の方法の有効性が明らかである。すなわち、実施例2の分解ポリマーは、対照例(比較例1)に対して、分子量が低く且つ分子量分布が狭い。
比較例3及び比較例4を実施例2と比較すると、本発明の方法の有効性がヒドロペルオキシドの存在によることが明らかである。すなわち、ヒドロペルオキシドの代わりにペルオキシドを存在させると、ポリマーが効果的に分解しない。
また、ペルオキシドとヒドロペルオキシドとを併用すると(比較例5)、実施例2でヒドロペルオキシドを単独で使用したときよりも結果がよくない。
本発明による実施例2では、混練時間が他の試験の混練時間(3分間)よりも短くても(2分間)、はるかに高い性能が得られる。

Claims (11)

  1. EPMコポリマーと、EPDMターポリマーと、それらの混合物とから選択される高分子物質の分子量減少方法であって、前記高分子物質を、分子量を減少させるのに有効な量の一種または二種以上のヒドロペルオキシドのみによって処理する工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記EPMコポリマーは、プロピレン含量が16〜50モル%の範囲にあり、Mnが10,000〜200,000の範囲にある、請求項1に記載の方法。
  3. 前記EPMコポリマーは、プロピレン含量が20〜45モル%の範囲にある、請求項2に記載の方法。
  4. 前記EPDMターポリマーは、エチレン含量が30〜85モル%の範囲にあり、プロピレン含量が15〜70モル%の範囲にあり、非共役ジエン含量が0.5〜20モル%の範囲にあり、EPDMの分子量Mnが15,000〜200,000の範囲にある、請求項1に記載の方法。
  5. 前記エチレンが40〜70モル%の範囲にあり、前記プロピレンが30〜60モル%の範囲にあり、前記非共役ジエンが1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%の範囲にある、請求項4に記載の方法。
  6. 前記EPDMターポリマーは、Mnが20,000〜70,000の範囲にある、請求項4に記載の方法。
  7. 前記処理温度が、80〜250℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記温度が、140〜200℃の範囲である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記EP(D)Mに対するヒドロペルオキシドの濃度が、0.1〜20重量%の範囲にある、請求項1に記載の方法。
  10. 前記EP(D)Mに対するヒドロペルオキシドの濃度が、0.2〜10重量%の範囲にある、請求項9に記載の方法。
  11. 前記EP(D)Mに対するヒドロペルオキシドの濃度が、0.5〜5重量%の範囲にある、請求項10に記載の方法。
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