JP4855117B2 - 動圧軸受装置 - Google Patents

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Description

本発明は、動圧軸受装置に関するものである。
動圧軸受装置は、軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材を非接触支持するものである。この種の軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を備えるものであり、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的にはHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等におけるスピンドルモータ用の軸受装置として、あるいはレーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用される。
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるラジアル軸受部としては、例えば軸受スリーブの内周面と、これに対向する軸部材の外周面との何れか一方に、動圧発生部としての動圧溝を形成すると共に、両面間にラジアル軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
ところで、上記構成の動圧軸受装置を組込んだ情報機器、例えばHDD等のディスク駆動装置においては、読み取り速度の更なる高速化を目的として、より一層の高速回転化が要請されるが、その場合には、スピンドル軸を回転自在に支持する軸受部に作用するモーメント荷重が大きくなる。そのため、このモーメント荷重の増大に対応するために、ラジアル軸受部を軸方向に離隔して複数箇所に設けると共に、ラジアル軸受部間のスパンを大きくする必要が生じる。また、これら複数のラジアル軸受部を1つの軸受スリーブの内周側に設けた構成が従来より採用されているが、モータの小型化、それに伴うスピンドル軸及び軸受スリーブの小径化の要請もあり、ラジアル軸受部間のスパン増大に対応し得る軸受スリーブを製造することが困難になる場合がある。
ラジアル軸受部間のスパンを増大させ、かつ、軸受スリーブの製造を容易にする手段として、軸受スリーブを複数個とし、これらを軸方向に離隔して複数箇所に配置することが考えられる(例えば、特許文献2を参照)。
特開2003−239951号公報 特許第3602707号公報
軸受スリーブを複数箇所に配置する場合、各軸受スリーブはハウジングの内周に接着や圧入等によって固定するが、例えば、接着固定の場合、軸受スリーブの外周面側に形成される潤滑流体の流体通路が接着剤によって閉塞されないように注意して接着作業を行う必要があるため、固定作業に手間が掛かり、また、圧入固定の場合は、十分な固定力を得るために軸受スリーブの外周とハウジングの内周との締代を大きくすると、軸受スリーブの内径寸法の縮小によってラジアル軸受隙間が減少し、トルクロスの増大などラジアル軸受性能に好ましくない影響が生じることが懸念される。従って、軸受スリーブの固定作業や固定力確保の点から改良の必要性が認められる。
本発明の課題は、モーメント荷重に対する負荷能力が高く、軸受スリーブの製造及び固定作業が容易で、かつ必要な固定力が確保できる動圧軸受装置を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内部に収容された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、軸受スリーブは軸方向に離隔して複数配置され、軸方向に離隔した軸受スリーブ間にスペーサ部が設けられ、スペーサ部はハウジングに対して固定的に設けられ、軸受スリーブは、スペーサ部の端面と対向する端面でスペーサ部に接着固定されている構成を提供する。
上記構成によれば、軸受スリーブを複数個とし、これらを軸方向に離隔して複数箇所に配置したので、ラジアル軸受部間のスパンを大きくして、モーメント荷重に対する負荷能力を高めることができると共に、軸受スリーブの製造を容易にすることができる。また、軸受スリーブは、ハウジングに対して固定的に設けられたスペーサ部の端面と対向する端面で、スペーサ部の端面に接着固定するので、軸受スリーブの外周面側に潤滑流体の流体通路を形成する場合でも、該流体通路が接着剤によって閉塞される心配がなく、また、軸受スリーブの必要な固定力も確保することができる。
ここで、スペーサ部をハウジングに対して固定的に設ける構成には、スペーサ部をハウジングに一体形成する構成と、別体のスペーサ部をハウジングに接着、圧入、圧入接着(圧入接着の併用)等の適宜の手段で固定する構成が含まれる。
上記構成において、軸受スリーブの端面とスペーサ部の端面のうち少なくとも一方に、凹状の接着剤溜りを設けることが好ましい。軸受スリーブの端面とスペーサ部の端面との間に充填又は塗布された接着剤の一部を接着剤溜りによって捕捉することにより、余分な接着剤が内径側に流動して、軸受スリーブの内周面の側(ラジアル軸受隙間の側)に回り込む現象を防止することができる。
上記構成において、スペーサ部にその軸方向両側に開口した流体通路を設けることができる。さらに、スペーサ部の流体通路を、ハウジングの内周面と軸受スリーブの外周面との間に設けられた軸方向の流体通路と連通させることができる。これらの流体通路は、ハウジング内部で潤滑流体を流動循環させるための循環通路となる。潤滑流体がこの循環路を介して流動循環することにより、軸受隙間を含むハウジング内部空間に充填された潤滑流体の圧力バランスが保たれると同時に、局部的な負圧の発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑流体の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。また、循環路の一部を外気開放側に臨ませることにより、何らかの理由で潤滑流体中に気泡が混入した場合でも、気泡が潤滑流体に伴って循環する際に外気開放側に排出されるので、気泡による悪影響はより一層効果的に防止される。
また、上記構成において、軸部材に外径側に突出した突出部を設け、突出部の端面と軸受スリーブの端面との間に、スラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部を設けても良い。突出部は、軸部材に一体形成されたものであっても良いし、軸部材に固定されたものであっても良い。また、スラスト軸受部の動圧発生手段(動圧溝等)は、突出部の端面及び軸受スリーブの端面のうち一方に形成すれば良い。
また、軸部材の突出部の外周側にシール空間が形成されるようにしても良い。このシール空間は、ハウジング内部空間に充填された潤滑流体の温度変化に起因する容積変化(膨張・収縮)を吸収する機能、いわゆるバッファ機能を有する。
上記構成において、ハウジングは溶融材料の型成形品とすることができる。ハウジングの材質は、樹脂、金属の何れでも良い。ハウジングを樹脂製とする場合は、例えば熱可塑性樹脂等の射出成形を採用することができる。また、ハウジングを金属製とする場合は、例えばアルミ合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼等のダイキャスト成形、射出成形(いわゆるMIM法、チクソモールディング法)を採用することができる。
本発明の動圧軸受装置は、HDD、特にサーバ用HDD等のディスク駆動装置に組み込まれるモータに好適である。
本発明によれば、モーメント荷重に対する負荷能力が高く、軸受スリーブの製造及び固定作業が容易で、かつ必要な固定力が確保できる動圧軸受装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る動圧軸受装置(流体動圧軸受装置)1を示している。この動圧軸受装置1は、例えばHDD、特にサーバ用HDDに組み込まれるモータにおいてスピンドル軸の回転を支持するものである。この動圧軸受装置1は、ハウジング2と、軸方向に相互に離隔した位置でハウジング2の内部に収容された複数、例えば2つの軸受スリーブ3、4と、軸受スリーブ3、4の内周に挿入された軸部材5とを主要構成部品として構成される。
後述するように、軸受スリーブ3の内周面3aと軸部材5の外周面5aとの間に第1ラジアル軸受部R1が設けられ、軸受スリーブ4の内周面4aと軸部材5の外周面5aとの間に第2ラジアル軸受部R2が設けられる。さらに、この実施形態では、軸受スリーブ3の上側端面3bとシール部材6の下側端面6bとの間に第1スラスト軸受部T1が設けられ、軸受スリーブ4の下側端面4bとシール部材7の上側端面7bとの間に第2スラスト軸受部T2が設けられる。なお、説明の便宜上、ハウジング2から軸部材5の端部が突出している側(紙面上側)を上側、その反対側を下側として説明を進める。
ハウジング2は、例えば、樹脂材料を射出成形して一体に形成され、軸受スリーブ3、4が収容される内周面2a、2bと、内周面2a、2bよりも内径側に突出したスペーサ部2cとを備えている。内周面2a、2bは、軸受スリーブ3、4の配置位置に対応して、軸方向に相互に離隔した位置にあり、内周面2a、2b間の領域がスペーサ部2cになっている。尚、内周面2aと2bは同径である。また、この実施形態では、スペーサ部2cに軸方向の流体通路2c1が設けられており、流体通路2c1はスペーサ部2cの上側端面2c2と下側端面2c3にそれぞれ開口している。流体通路2c1は、複数、例えば3本形成され、円周等間隔に配列されている。さらに、ハウジング2の両端部に大径部2d、2eが設けられており、大径部2d、2eは段面2f、2gを介してそれぞれ内周面2a、2bに繋がっている。
スペーサ部2cの流体通路2c1は、ハウジング2を成形した後、孔加工を施すことによって形成しても良いが、加工工数の削減、それによる製造コストの低減を図るため、ハウジング2の成形と同時に成形するようにするのが好ましい。これは、ハウジング2を成形する成形型に、流体通路2c1の形状に対応した成形ピンを設けておくことによって実施することができる。また、流体通路2c1の横断面形状は円形状に限らず、非円形状(楕円形状や多角形状等)でも良い。さらに、流体通路2c1の横断面積は軸方向に一定である必要はなく、例えば、横断面積が相対的に大きな部分と相対的に小さな部分とがあっても良い。
ハウジング2を形成する樹脂は主に熱可塑性樹脂であり、例えば、非晶性樹脂として、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSF)、ポリエーテルイミド(PEI)等、結晶性樹脂として、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。また、上記の樹脂に充填する充填材の種類も特に限定されないが、例えば、充填材として、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの充填材は、単独で用い、あるいは、二種以上を混合して使用しても良い。この実施形態では、ハウジング2を形成する材料として、結晶性樹脂としての液晶ポリマー(LCP)に、導電性充填材としてのカーボンファイバー又はカーボンナノチューブを2〜8wt%配合した樹脂材料を用いている。
軸部材5は、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、全体として概ね同径の軸状をなしている。さらに、この実施形態では、軸部材5に環状のシール部材6、7が適宜の固定手段、例えば接着又は圧入接着(圧入と接着の併用)により固定されている。これらシール部材6、7は、軸部材5の外周面5aから外径側に突出した形態となり、それぞれハウジング2の大径部2d、2eに収容される。また、接着剤による固定強度を高めるため、シール部材6、7の固定位置となる軸部材5の外周面5aに接着剤溜まりとなる円周溝5a1、5a2が設けられている。尚、シール部材6、7は、真ちゅう(黄銅)等の軟質金属材料やその他の金属材料で形成しても良いし、樹脂材料で形成しても良い。また、シール部材6、7のうち一方は、軸部材5に一体形成しても良い。この場合、軸部材5と一方のシール部材からなるアセンブリは、金属と樹脂の複合体で構成することもできる。一例として、金属で軸部材5を製作すると共に、一方のシール部材を樹脂でインサート成形したものが考えられる。
シール部材6の外周面6aはハウジング2の大径部2dとの間に所定の容積をもったシール空間S1を形成し、シール部材7の外周面7aはハウジング2の大径部2eとの間に所定の容積をもったシール空間S2を形成する。この実施形態において、シール部材6の外周面6a及びシール部材7の外周面7aは、それぞれハウジング2の外部側に向かって漸次縮径したテーパ面状に形成されている。そのため、シール空間S1、S2は、ハウジング2の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈する。
軸受スリーブ3、4は、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成され、それぞれ、ハウジング2の内周面2a、2bに挿入され、あるいは、内周面3a、4aに変形を生じさせない程度の圧入力で圧入されている(軽圧入)。
そして、図4に拡大して示すように、軸受スリーブ3の下側端面3cはスペーサ部2cの上側端面2c2に接着剤A1で固定されている。軸受スリーブ3の下側端面3cには円周溝形状の接着剤溜り3c1が設けられており、接着剤A1の一部が接着剤溜り3c1に入ることにより、余分な接着剤A1が内径側に流動して、軸受スリーブ3の内周面3aの側(ラジアル軸受隙間の側)に回り込む現象が防止される。円周溝形状の接着剤溜り3c1は、下側端面3cに複数本設けても良い。尚、下側端面3cの内周側にチャンファ3c2があり、このチャンファ3c2も接着剤A1の内径側への回り込み防止に寄与する。また、軸受スリーブ3の下側端面3cの表面開孔率は、外周面3dの表面開孔率よりも小さくして、接着剤A1が下側端面3cの表面開孔から軸受スリーブ3の内部に侵入しにくくなるようにすることが好ましい。さらに、凹状の接着剤溜りは、スペーサ部2cの上側端面2c2に設けても良く、あるいは、軸受スリーブ3の下側端面3cとスペーサ部2cの上側端面2c2の双方に設けても良い。
同様に、軸受スリーブ4の上側端面4cはスペーサ部2cの下側端面2c3に接着剤A2で固定されている。軸受スリーブ4の上側端面4cには円周溝形状の接着剤溜り4c1が設けられており、接着剤A2の一部が接着剤溜り4c1に入ることにより、余分な接着剤A2が内径側に流動して、軸受スリーブ4の内周面4aの側(ラジアル軸受隙間の側)に回り込む現象が防止される。円周溝形状の接着剤溜り4c1は、上側端面4cに複数本設けても良い。尚、上側端面4cの内周側にチャンファ4c2があり、このチャンファ4c2も接着剤A2の内径側への回り込み防止に寄与する。また、軸受スリーブ4の上側端面4cの表面開孔率は、外周面4dの表面開孔率よりも小さくして、接着剤A2が下側端面4cの表面開孔から軸受スリーブ4の内部に侵入しにくくなるようにすることが好ましい。さらに、凹状の接着剤溜りは、スペーサ部2cの下側端面2c3に設けても良く、あるいは、軸受スリーブ4の上側端面4cとスペーサ部2cの下側端面2c3の双方に設けても良い。
図2に示すように、軸受スリーブ3は、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受面となる内周面3aにヘリングボーン形状の動圧溝3a1が形成され、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受面となる上側端面3bにヘリングボーン形状の動圧溝3b1が形成され、さらに外周面3dに軸方向溝3d1が形成されている。軸方向溝3d1は複数、例えば3本形成され、円周等間隔に配列されている。この軸方向溝3d1によって、ハウジング2の内周面2aとの間に軸方向の流体通路が形成される。同様に、軸受スリーブ4は、第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる内周面4aにヘリングボーン形状の動圧溝4a1が形成され、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受面となる下側端面4bにヘリングボーン形状の動圧溝4b1が形成され、さらに外周面4dに軸方向溝4d1が形成されている。軸方向溝4d1は複数、例えば3本形成され、円周等間隔に配列されている。この軸方向溝4d1によって、ハウジング2の内周面2bとの間に軸方向の流体通路が形成される。
図3に拡大して示すように、軸受スリーブ3はスペーサ部2cの上側端面2c2に接着剤A1で固定された状態で、その上側端面3bがハウジング2の上側の段面2fと面一になるか、あるいは、段面2fから僅かな寸法δ2だけ突出した状態となる。この状態は、軸受スリーブ3の軸方向寸法とハウジング2の内周面2aの軸方向寸法(又はスペーサ部2cの軸方向寸法)を管理することによって実現することができる。同図に示すように、軸受スリーブ3の上側端面3bを段面2fから寸法δ2だけ突出させた場合、シール部材6の下側端面6bと段面2fとの間の軸方向寸法は、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間δ1よりも大きくなる。また、図示は省略するが、軸受スリーブ4についても同様である。
この動圧軸受装置1は、例えば次のような工程で組み立てられる。
まず、軸受スリーブ3の下側端面3c又はスペーサ部2cの上側端面2c2に接着剤A1を塗布した後、軸受スリーブ3をハウジング2の内周面2aに挿入し、軸受スリーブ3の下側端面3cを接着剤A1を介してスペーサ部2cの上側端面2c2に当接させる。その際、軸受スリーブ3の軸方向溝3d1の位置をスペーサ部2cの流体通路2c1の位置と合わせる。これにより、軸方向溝3d1によって形成される流体通路がスペーサ部2cの流体通路2c1と連通する。
つぎに、軸受スリーブ4の上側端面4c又はスペーサ部2cの下側端面2c3に接着剤A2を塗布した後、軸受スリーブ4をハウジング2の内周面2bに挿入し、軸受スリーブ4の上側端面4cを接着剤A2を介してスペーサ部2cの下側端面2c3に当接させる。その際、軸受スリーブ4の軸方向溝4d1の位置をスペーサ部2cの流体通路2c1の位置と合わせる。これにより、軸方向溝4d1によって形成される流体通路がスペーサ部2cの流体通路2c1と連通する。
そして、接着剤A1、A2を固化させると、図2に示すようなハウジング2と軸受スリーブ3、4のアッセンブリが形成される。
その後、軸部材5を軸受スリーブ3、4の内周面3a、4a及びスペーサ部2cの内周面2c4に挿入し、シール部材6、7を軸部材5の所定位置に固定する。尚、シール部材6、7のうち一方は、挿入前に予め軸部材5に固定しておいても良いし、軸部材5に一体形成しても良い。
上記の工程を経て組立が完了した後、シール部材6、7でシールされたハウジング2の内部空間に、軸受スリーブ4、5の内部気孔(多孔質体組織の内部気孔)も含め、潤滑流体として例えば潤滑油を充填する。潤滑油の充填は、例えば組立が完了した動圧軸受装置1を真空槽内で潤滑油中に浸漬した後、大気圧に開放することにより行うことができる。
軸部材5の回転時、軸受スリーブ3の内周面3a及び軸受スリーブ4の内周面4aは、それぞれ、軸部材5の外周面5aとラジアル軸受隙間を介して対向する。スペーサ部2cの内周面2c4と軸部材5の外周面5aとの間の隙間は、上記のラジアル軸受隙間よりも大きい。また、軸受スリーブ3の上側端面3bはシール部材6の下側端面6bとスラスト軸受隙間を介して対向し、軸受スリーブ4の下側端面4bはシール部材7の上側端面7bとスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材5の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材5が上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材5をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材5に固定されたシール部材6、7が上記スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってスラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材5をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T2と第2スラスト軸受部T2とが構成される。
また、上述のように、シール部材6の外周面6aの側とシール部材7の外周面7aの側に形成されるシール空間S1、S2が、ハウジング2の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈しているため、両シール空間S1、S2内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用と、回転時の遠心力による引き込み作用とにより、シール空間が狭くなる方向、すなわちハウジング2の内部側に向けて引き込まれる。これにより、ハウジング2の内部からの潤滑油の漏れ出しが効果的に防止される。また、シール空間S1、S2は、ハウジング2の内部空間に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内では、潤滑油の油面は常にシール空間S1、S2内にある。
また、軸受スリーブ3の軸方向溝3d1によって形成される流体通路、軸受スリーブ4の軸方向溝4d1によって形成される流体通路、スペーサ部2cの流体通路2c1、各軸受隙間(第1ラジアル軸受部R1及び第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受隙間、第1スラスト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間)、及びスペーサ部2cの内周面2c4と軸部材5の外周面5aとの間の隙間により、ハウジング2の内部に一連の循環通路が形成される。そして、ハウジング2の内部空間に充填された潤滑油がこの循環通路を介して流動循環することにより、潤滑油の圧力バランスが保たれると同時に、局部的な負圧の発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等が防止される。また、軸受スリーブ3の軸方向溝3d1によって形成される流体通路の一端と、軸受スリーブ4の軸方向溝4d1によって形成される流体通路の一端は、それぞれ、大気開放側となるシール空間S1、S2に通じている。そのため、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、気泡が潤滑油に伴って循環する際に外気開放側に排出されるので、気泡による悪影響はより一層効果的に防止される。
図5は、第2の実施形態に係る動圧軸受装置11を示している。この動圧軸受装置11が、上述した第1の実施形態に係る動圧軸受装置1と異なる点は、スペーサ部2cをハウジング2とは別体のスリーブ状部材で構成し、このスペーサ部2cをハウジング2の内周面2aに接着、圧入、圧入接着等の敵後の手段で固定した点にある。流体通路2c1はスペーサ部2cの外周面に軸方向溝状に形成されている。このスペーサ部2cは、ハウジング2と同じ樹脂又は異なる樹脂、あるいは金属材料で形成することができる。また、ハウジング2の内周面2aは、軸受スリーブ3の装着部位から軸受スリーブ4の装着部位に亘って軸方向にストレートな形状を呈しており、第1の実施形態の動圧軸受装置1に比べて、ハウジング2の形状が簡素化されている。その他の事項は、第1の実施形態に準じるので、実質的に同一の部材及び部位は同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
図6は、第3の実施形態に係る動圧軸受装置21を示している。この動圧軸受装置21が、上述した第1の実施形態に係る動圧軸受装置1と異なる点は、ハウジング2の内周面2a、2bがそれぞれ均一径でハウジング2の端面まで延びている点、それに伴ってシール部材6、7が比較的小径になっている点にある。第1の実施形態の動圧軸受装置1に比べて、ハウジング2の形状を簡素化し、かつ、小径化することができるという利点がある。その他の事項は、第1の実施形態に準じるので、実質的に同一の部材及び部位は同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
以上の説明では、ラジアル軸受部R1、R2及びスラスト軸受部T1、T2の動圧発生手段として、ヘリングボーン形状の動圧溝を例示しているが、スパイラル形状やその他の形状の動圧溝でも良い。あるいは、動圧発生手段として、いわゆるステップ軸受や多円弧軸受を採用しても良い。
第1の実施形態に係る動圧軸受装置の断面図である。 ハウジングに軸受スリーブを固定した状態を示す上面図{図2(a)}、断面図{図2(b)}、下面図{図2(a)}である。 ハウジングの上方部分を示す拡大断面図である。 軸受スリーブとスペーサ部との接着固定部位の周辺部を示す拡大断面図である。 第2の実施形態に係る動圧軸受装置の断面図である。 第3の実施形態に係る動圧軸受装置の断面図である。
符号の説明
1 動圧軸受装置
11 動圧軸受装置
21 動圧軸受装置
2 ハウジング
2c スペーサ部
2c1 流体通路
3 軸受スリーブ
4 軸受スリーブ
5 軸部材
6 シール部材
7 シール部材
A1 接着剤
A2 接着剤
R1 第1ラジアル軸受部
R2 第2ラジアル軸受部
T1 第1スラスト軸受部
T2 第2スラスト軸受部
S1 シール空間
S2 シール空間

Claims (7)

  1. ハウジングと、該ハウジングの内部に収容された軸受スリーブと、該軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、前記軸受スリーブの内周面と前記軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、
    前記軸受スリーブは軸方向に離隔して複数配置され、
    前記軸方向に離隔した軸受スリーブ間にスペーサ部が設けられ、
    前記スペーサ部は、前記ハウジングに対して固定的に設けられ、
    前記軸受スリーブは、前記スペーサ部の端面と対向する端面で、前記スペーサ部に接着固定されていることを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 前記軸受スリーブの端面と前記スペーサ部の端面のうち少なくとも一方に、凹状の接着剤溜りが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受装置。
  3. 前記スペーサ部に、その軸方向両側に開口した流体通路が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動圧軸受装置。
  4. 前記スペーサ部の流体通路は、前記ハウジングの内周面と前記軸受スリーブの外周面との間に設けられた軸方向の流体通路と連通することを特徴とする請求項3に記載の動圧軸受装置。
  5. 前記軸部材は外径側に突出した突出部を有し、該突出部の端面と前記軸受スリーブの端面との間に、スラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受装置。
  6. 前記軸部材の突出部の外周側にシール空間が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の動圧軸受装置。
  7. 前記ハウジングが、溶融材料を型成形して形成されたものであることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の動圧軸受装置。
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