JP2007255654A - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モーメント荷重に対する負荷能力が高く、軸受スリーブの製造が容易で、かつ、組立作業の効率化を図り得る動圧軸受装置を提供する。
【解決手段】動圧軸受装置1は、ハウジング2と、ハウジング2の内周に収容された2つの軸受スリーブ3、4と、第1、第2軸受スリーブ3、4の内周に挿入された軸部材5とを備えている。第1軸受スリーブ3の軸方向長さL1は、第2軸受スリーブ4の軸方向長さL2よりも大きく設定されている。
【選択図】図1
【解決手段】動圧軸受装置1は、ハウジング2と、ハウジング2の内周に収容された2つの軸受スリーブ3、4と、第1、第2軸受スリーブ3、4の内周に挿入された軸部材5とを備えている。第1軸受スリーブ3の軸方向長さL1は、第2軸受スリーブ4の軸方向長さL2よりも大きく設定されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、動圧軸受装置に関するものである。
動圧軸受装置は、軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材を非接触支持する軸受装置である。この動圧軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用される。
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるラジアル軸受部としては、例えば軸受スリーブの内周面と、これに対向する軸部材の外周面との何れか一方に、動圧発生部としての動圧溝を形成すると共に、両面間にラジアル軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
ところで、上記構成の動圧軸受装置を組込んだ情報機器、例えばHDD等のディスク駆動装置においては、読み取り速度の更なる高速化を目的として、より一層の高速回転化が要請されるが、その場合には、スピンドル軸を回転自在に支持する軸受部に作用するモーメント荷重が大きくなる。そのため、このモーメント荷重の増大に対応するために、ラジアル軸受部を軸方向に離隔して複数箇所に設けると共に、ラジアル軸受部間のスパンを大きくする必要が生じる。また、これら複数のラジアル軸受部を1つの軸受スリーブの内周側に設けた構成が特許文献1も含め従来採用されているが、モータの小型化、それに伴うスピンドル軸及び軸受スリーブの小径化の要請もあり、ラジアル軸受部間のスパン増大に対応し得る軸受スリーブを製造することが困難になる場合がある。
ラジアル軸受部間のスパンを増大させ、かつ、軸受スリーブの製造を容易にする手段として、軸受スリーブを軸方向の複数箇所に配置する構成が考えられる(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、特許文献2に記載の動圧軸受装置において、各軸受スリーブは、回転方向等を考慮して内周面等に設けられる動圧溝の配列パターンや形成箇所を異ならせてはいるものの、その軸方向寸法が同一に形成され、外観上の差異が極めて微小なものである。そのため、組み付け方向や組み付け位置を誤り易いばかりでなく、部品管理が煩雑になるという問題がある。
特開2003−239951号公報
特開平11−269475号公報
本発明の課題は、モーメント荷重に対する負荷能力が高く、軸受スリーブの製造が容易で、かつ、組立や部品管理の作業効率を改善し得る動圧軸受装置を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、ラジアル軸受面を有し、ハウジングに収容された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、軸受スリーブのラジアル軸受面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、軸受スリーブは軸方向に複数配置され、かつ、各軸受スリーブは相互に軸方向長さを異ならせて形成されている構成を提供する。
上記構成によれば、軸受スリーブを軸方向の複数箇所に配置したので、ラジアル軸受部間のスパンを大きくして、モーメント荷重に対する負荷能力を高めることができると共に、軸受スリーブの製造を容易にすることができる。また、軸方向に複数配置した軸受スリーブの軸方向長さを相互に異ならせたので、外観上の差異が明確になり、組み間違いを確実に防止することが、また、部品管理の簡略化を図ることが可能となる。
例えば、軸受スリーブを軸方向の二箇所に配置する場合、ラジアル軸受部の軸受スパンを大きくとる観点から、一方の軸受スリーブのラジアル軸受面は、他方の軸受スリーブから離反する側の端部内周に設けられるのが通例である。しかしながら、この場合、特に軸方向寸法を長大化させた側の軸受スリーブは、その上下で内径寸法が異なる。そのため、その軸受スリーブの両端部間、さらに軸受スリーブ(ラジアル軸受面)相互間での同軸確保が難しくなり、軸受装置の回転性能に悪影響を及ぼす恐れがある。
そこで、本発明では、隣接する二つの軸受スリーブのうち、少なくとも何れか一方の内周面に、ラジアル軸受面よりも他方の軸受スリーブ側に位置し、ラジアル軸受面と同径の凸部を設けた構成を提供する。かかる構成とすることにより、例えば組立ピンを挿入した場合には、単体の軸受スリーブの両端部間、および軸受スリーブ相互間で同軸確保しつつ容易に組立作業を進めることができる。なお、凸部は、動圧発生機能を有する形状に形成するとトルクアップを招くので、動圧発生機能を有さない形状(例えば、帯状等)に形成するのが望ましい。ところで凸部は、回転性能に悪影響を及ぼさない程度の同軸確保ができればラジアル軸受面と若干異径であってもよい。従って、ここで言う「同径の凸部」には、若干量異径の凸部も含まれる。
また、上記構成において、軸部材に外径側に突出した突出部を設け、突出部の端面と軸受スリーブの端面との間に、スラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部を設けても良い。突出部は、軸部材に一体形成されたものであっても良いし、軸部材に固定されたものであっても良い。また、スラスト軸受部の動圧発生手段(動圧溝等)は、突出部の端面及び軸受スリーブの端面のうち一方に形成すれば良い。
また、軸部材の突出部の外周側にシール空間が形成されるようにしても良い。このシール空間は、ハウジング内部空間に充填された潤滑流体の温度変化に起因する容積変化(膨張・収縮)を吸収する機能、いわゆるバッファ機能を有する。
本発明の動圧軸受装置は、特に、高速回転し、高いモーメント荷重に対する負荷能力を必要とするモータに好適である。
本発明によれば、モーメント荷重に対する負荷能力が高く、軸受スリーブの製造が容易で、かつ、組立や部品管理の作業効率改善を図り得る動圧軸受装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る動圧軸受装置(流体動圧軸受装置)1を示している。この動圧軸受装置1は、HDD、特にサーバ用HDDに組み込まれるモータにおいて、スピンドル軸の回転を支持するものである。この動圧軸受装置1は、ハウジング2と、軸方向に相互に離隔した位置でハウジング2に固定された複数、例えば2つの軸受スリーブ(第1軸受スリーブ3、第2軸受スリーブ4)と、該第1、第2軸受スリーブ3、4間に配設されたスペーサ部材8と、第1、第2軸受スリーブ3、4の内周に挿入された軸部材5とを主要な構成部品として備えている。
後述するように、第1軸受スリーブ3の内周面3aと軸部材5の外周面5aとの間に第1ラジアル軸受部R1が設けられ、第2軸受スリーブ4の内周面4aと軸部材5の外周面5aとの間に第2ラジアル軸受部R2が設けられる。さらに、この実施形態では、第1軸受スリーブ3の上側端面3bとシール部材6の下側端面6bとの間に第1スラスト軸受部T1が設けられ、第2軸受スリーブ4の下側端面4bとシール部材7の上側端面7bとの間に第2スラスト軸受部T2が設けられる。なお、説明の便宜上、ハウジング2から軸部材5の端部が突出している側を上側、その軸方向反対側を下側として説明を進める。
ハウジング2は、例えば、樹脂材料を射出成形して略円筒状に形成され、第1、第2軸受スリーブ3、4およびスペーサ部材8が固定される第1内周面7aはストレートな円筒面に形成されている。また、第1内周面7aの両端部には、第1内周面7aよりも大径の、第2、第3内周面2b、2cが設けられており、第2、第3内周面2b、2cは段面2d、2eを介してそれぞれ第1内周面2aに繋がっている。
ハウジング2を形成する樹脂材料に用いるベース樹脂としては、射出成形可能なものであれば非晶性樹脂・結晶性樹脂を問わず使用可能で、例えば、非晶性樹脂として、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等、結晶性樹脂として、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。もちろんこれらは一例にすぎず、使用環境等を考慮してその他のベース樹脂を使用することもできる。また、上記のベース樹脂に充填する充填材の種類も特に限定されないが、例えば、充填材として、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの充填材は、単独で用い、あるいは、二種以上を混合して使用しても良い。
この他、黄銅やアルミニウム合金等の軟質金属材料、その他の金属材料でハウジング7を形成することもできる。
軸部材5は、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、全体として概ね同径の軸状をなしている。さらに、この実施形態では、軸部材5に環状のシール部材6、7が適宜の固定手段、例えば接着又は圧入接着(圧入と接着の併用)により固定されている。これらシール部材6、7は、軸部材5の外周面5aから外径側に突出した形態となり、それぞれハウジング2の第2、第3内周面2b、2cの内周側に収容される。また、接着剤による固定強度を高めるため、シール部材6、7の固定位置となる軸部材5の外周面5aに接着剤溜まりとなる円周溝5a1、5a2が設けられている。なお、シール部材6、7は、真ちゅう(黄銅)等の軟質金属材料やその他の金属材料で形成しても良いし、樹脂材料で形成しても良い。また、シール部材6、7のうち一方は、軸部材5に一体形成しても良い。
シール部材6の外周面6aはハウジング2の第2内周面2bとの間に所定の容積のシール空間S1を形成し、シール部材7の外周面7aはハウジング2の第3内周面2cとの間に所定の容積のシール空間S2を形成する。この実施形態において、シール部材6の外周面6a及びシール部材7の外周面7aは、それぞれハウジング2の外部側に向かって漸次縮径したテーパ面状に形成されている。そのため、シール空間S1、S2は、ハウジング2の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈する。
第1、第2軸受スリーブ3、4は共に、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成され、本実施形態では、それぞれ、ハウジング2の第1内周面2aに圧入、接着、あるいは圧入接着等の手段で固定される。尚、軸受スリーブ3、4は、焼結金属以外にも銅合金等の金属材料で形成することもできる。第1、第2軸受スリーブ3、4は相互に軸方向長さを異ならせて形成され、本実施形態では、第1軸受スリーブ3の軸方向長さL1が第2軸受スリーブ4の軸方向長さL2よりも大きく(L1>L2)形成されている。
図2(b)に示すように、第1軸受スリーブ3の内周面3aには、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受面Aとなる領域が形成され、該ラジアル軸受面Aにはヘリングボーン形状の動圧溝3a1が形成されている。このラジアル軸受面Aは、第2軸受スリーブ4から離反する側(上側)の端部に形成されている。また、第1軸受スリーブ3の内周面3aのうち、ラジアル軸受面Aと軸方向に離隔した反対側(下側)の端部には、帯状の凸部Bが形成されている。この凸部Bは、動圧溝3a1を区画形成する丘部と略同径に形成されている。
図2(a)に示すように、第1軸受スリーブ3の上側端面3bの一部又は全部環状領域には、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受面となる領域が形成され、該スラスト軸受面にはヘリングボーン形状の動圧溝3b1が形成されている。さらに外周面3dには、円周方向等間隔に配された複数(図示例は3本)の軸方向溝3d1が形成されている。
また、図2(b)に示すように、第2軸受スリーブ4の内周面4aには、第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面A’となる領域が形成され、該ラジアル軸受面A’にはヘリングボーン形状の動圧溝4a1が形成されている。また図2(c)に示すように、第2軸受スリーブ4の下側端面4bの一部又は全部環状領域には、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受面となる領域が形成され、該スラスト軸受面にはヘリングボーン形状の動圧溝4b1が形成されている。さらに外周面4dには、円周方向等間隔に配された複数(図示例では3本)の軸方向溝4d1が形成されている。
第1、第2軸受スリーブ3、4の間には、例えば黄銅やアルミ等の軟質金属、樹脂材料、あるいは焼結金属等で形成された円筒状のスペーサ部材8が介装され、ハウジング2の第1内周面2aに圧入、接着、あるいは圧入接着等の手段で固定されている。スペーサ部材8の内周面8aは両軸受スリーブ3、4の内周面3a、4aよりも若干量大径に形成されており、軸部材5の回転時(動圧軸受装置1の運転時)、軸部材5との間にラジアル軸受隙間は形成されない。さらに、外周面8dには円周方向等間隔に配された複数(例えば、3本)の軸方向溝8d1が形成されている。
上記構成部材からなる動圧軸受装置1は、例えば次のような工程で組み立てられる。
まず、第1、第2軸受スリーブ3、4、およびスペーサ部材8を図2に示す態様でハウジング2の第1内周面2aに固定する。固定時における両軸受スリーブ3、4間の同軸確保は、例えば図3(a)に示すような組立ピンPを用いて行われる。このとき、第1軸受スリーブ3の内周面3aには、ラジアル軸受面Aから離隔した下端部側にラジアル軸受面Aと略同径の凸部Bが設けられているので、第1軸受スリーブ3は姿勢を悪化させることなく、その両端部間における同軸確保が確実に行われる。さらにこの組立ピンPを用いることで、第1、第2軸受スリーブ3、4間における同軸確保が確実に行われる。
また、両軸受スリーブ3、4、およびスペーサ部材8のハウジング2への固定時には、図3(b)に拡大して示すように、第1軸受スリーブ3の上側端面3bがハウジング2の上側の段面2dと面一になるか、あるいは、段面2dから僅かな寸法δ2だけ突出した状態となるように、第1軸受スリーブ3の軸方向位置を調整した状態で内周面2aに固定する。同図に示すように、第1軸受スリーブ3の上側端面3bを段面2dから寸法δ2だけ突出させた場合、シール部材6の下側端面6bと段面2fとの間の軸方向寸法は、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間δ1よりも大きくなる。また、図示は省略するが、第2軸受スリーブ4も第1軸受スリーブ3と同様の位置調整を行った状態でハウジング2の第1内周面2aに固定する。
上記の態様で両軸受スリーブ3、4の軸方向位置を調整してハウジング2の内周面2aに固定する結果、図1及び図2に示すように、第1軸受スリーブ3の下側端面3cとスペーサ部材8の上側端面8bとの間、第2軸受スリーブ4の上側端面4cとスペーサ部材8の下側端面8cとの間に僅かな隙間ができる場合がある。尚、第1、第2軸受スリーブ3、4、およびスペーサ部材8とハウジング2の内周面2aの軸方向寸法によっては、上記の隙間が軸受スリーブ3、4のうち一方の側にのみできる場合もある。あるいは、軸受スリーブ3、4の双方がスペーサ部材8に当接する場合もある。
つぎに、軸部材5を第1、第2軸受スリーブ3、4の内周面3a、4a及びスペーサ部材8の内周面8aに挿入し、シール部材6、7を軸部材5の所定位置に固定する。尚、シール部材6、7のうちの何れか一方は、挿入前に予め軸部材5に固定しておいても良いし、軸部材5に一体形成しても良い。
上記の工程を経て組立が完了した後、シール部材6、7でシールされたハウジング2の内部空間に、両軸受スリーブ3,4の内部気孔(多孔質体組織の内部気孔)も含め、潤滑流体として例えば潤滑油を充填する。潤滑油の充填は、例えば組立が完了した動圧軸受装置1を真空槽内で潤滑油中に浸漬した後、大気圧に開放することにより行うことができる。
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材5が回転すると、第1軸受スリーブ3の内周面3aのラジアル軸受面Aは、軸部材5の外周面5aとラジアル軸受隙間を介して対向する。ラジアル軸受面Aでは、ラジアル軸受隙間に充満された潤滑油が動圧溝3a1の動圧作用によってその圧力を高められ、この圧力によって軸部材2がラジアル方向に回転自在に非接触支持される。また、本実施形態では、凸部Bと軸部材5の外周面5aとの間にラジアル軸受隙間が形成され、このラジアル軸受隙間には、第1軸受スリーブ3から滲み出した油で油膜が形成され、この油膜で軸部材5がラジアル方向に回転自在に支持される。これにより、動圧軸受および真円軸受で軸部材5をラジアル方向に回転自在に支持する第1ラジアル軸受部R1が構成される。第2軸受スリーブ4でもラジアル軸受面A’によって動圧軸受が構成され、軸部材5をラジアル方向に回転自在に支持する第2ラジアル軸受部R2が構成される。
また、軸部材5が回転すると、第1軸受スリーブ3の上側端面3bのスラスト軸受面がシール部材6の下側端面6bと所定のスラスト軸受隙間を介して対向し、第2軸受スリーブ4の下側端面4bのスラスト軸受面がシール部材7の上側端面7bと所定のスラスト軸受隙間を介して対向する。そして軸部材2の回転に伴い、各スラスト軸受隙間に充満された潤滑油は、動圧溝3b1、4b1の動圧作用によってその圧力が高められ、軸部材5が両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材5を両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2とが形成される。
また、軸部材5の回転時には、上述のように、シール部材6の外周面6aの側とシール部材7の外周面7aの側に形成されるシール空間S1、S2が、ハウジング2の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈しているため、両シール空間S1、S2内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用と、回転時の遠心力による引き込み作用とにより、シール空間が狭くなる方向、すなわちハウジング2の内部側に向けて引き込まれる。これにより、ハウジング2の内部からの潤滑油の漏れ出しが効果的に防止される。また、シール空間S1、S2は、ハウジング2の内部空間に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内では、潤滑油の油面は常にシール空間S1、S2内にある。
また、第1軸受スリーブ3の軸方向溝3d1によって形成される流体通路、第2軸受スリーブ4の軸方向溝4d1によって形成される流体通路、スペーサ部材8の軸方向溝8d1によって形成される流体通路、各軸受隙間(第1ラジアル軸受部R1及び第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受隙間、第1スラスト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間)、及びスペーサ部材8の内周面8aと軸部材5の外周面5aとの間の隙間により、ハウジング2の内部に一連の循環通路が形成される。そして、ハウジング2の内部空間に充填された潤滑油がこの循環通路を介して流動循環することにより、潤滑油の圧力バランスが保たれると同時に、局部的な負圧の発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等が防止される。また、第1軸受スリーブ3の軸方向溝3d1によって形成される流体通路の一端と、第2軸受スリーブ4の軸方向溝4d1によって形成される流体通路の一端は、それぞれ、大気開放側となるシール空間S1、S2に通じている。そのため、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、気泡が潤滑油に伴って循環する際に外気開放側に排出されるので、気泡による悪影響はより一層効果的に防止される。
なお、図示は省略するが、両軸受スリーブ3、4およびスペーサ部材8とハウジング2との間に形成される軸方向の流体通路は、ハウジング2の内周面2aに軸方向溝を設けることによって形成することもできる。この場合、組立時における、各軸受スリーブ3、4およびスペーサ部材8の円周方向の位置合わせを不要とすることもできるので、図示する形態に比べ、組立工程を簡略化して製造コストを低減することができる。
以上に示した構成であれば、ラジアル軸受部R1,R2間の軸方向スパンを大きくしてモーメント荷重に対する負荷能力を高めることができ、その一方で個々の軸受スリーブの長大化を防止することができるから、所期の精度の軸受スリーブ3、4を容易に製造することができる。また、第1軸受スリーブ3と第2軸受スリーブ4の軸方向長さを相互に異ならせたので、外観上の差異が明確になり、組み間違いを確実に防止することが、さらに、部品管理の簡略化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、軸方向長さを長大化させた第1軸受スリーブ3の内周面3aのうち、ラジアル軸受面Aとは離隔した軸方向下端部にラジアル軸受面Aと同径の凸部Bを形成したので、組立時には確実にラジアル軸受面A、A’間で同軸確保することができ、この種の精度低下による軸受性能の低下を防止することができる。なお、本実施形態では、凸部Bを内周面3aの全周に亘って連続した帯状に形成したが、軸受スリーブの同軸確保が確実に行うことができれば、凸部Bを、例えば円周方向等間隔で間欠した形状としてもよい。
図4は、第2の実施形態に係る動圧軸受装置21を示している。この動圧軸受装置21が、上述した第1の実施形態に係る動圧軸受装置1と異なる点は、ハウジング2の内周面2aが均一径でハウジング2の端面まで延びている点、それに伴ってシール部材6、7が比較的小径になっている点にある。第1の実施形態の動圧軸受装置1に比べて、ハウジング2の形状を簡素化し、かつ、小径化することができるという利点がある。尚、この実施形態では、軸受スリーブ3の下側端面3cとスペーサ部2cの上側端面2c2とが当接し、軸受スリーブ4の上側端面4cとスペーサ部2cの下側端面2c3とが当接している。その他の事項は、第1の実施形態に準じるので、実質的に同一の部材及び部位は同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
以上の説明では、ラジアル軸受部R1、R2及びスラスト軸受部T1、T2の動圧発生手段として、ヘリングボーン形状の動圧溝を例示しているが、スパイラル形状やその他の形状の動圧溝でも良い。あるいは、動圧発生手段として、いわゆるステップ軸受や多円弧軸受を採用しても良い。
図5は、本発明の一実施形態、特に図2に示す実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、例えばサーバ用HDDに用いられるもので、動圧軸受装置1と、動圧軸受装置1の軸部材5に装着されたロータ(ディスクハブ)12と、例えば半径方向(ラジアル方向)のギャップを介して対向させたステータコイル10およびロータマグネット11とを備えている。ステータコイル10はブラケット9の外周に取付けられ、ロータマグネット11はディスクハブ12の内周に取付けられている。動圧軸受装置1のハウジング2は、ブラケット9の内周に装着される。ディスクハブ12には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータコイル10に通電すると、ステータコイル10とロータマグネット11との間の電磁力でロータマグネット11が回転し、それによって、ディスクハブ12およびディスクハブ12に保持されたディスクDが軸部材5と一体に回転する。
なお、本発明にかかる動圧軸受装置は、HDD等のディスク装置用のスピンドルモータに限らず、高速回転し、高いモーメント荷重に対する負荷能力を要求されるモータ、例えばファンモータにも好ましく用いることができる。
図6は、本発明の第1実施形態に係る動圧軸受装置1を組み込んだファンモータ、その中でも半径方向(ラジアル方向)のギャップを介してステータコイル10およびロータマグネット11を対向させた、いわゆるラジアルギャップ型ファンモータの一例を概念的に示すものである。図示例のモータは、主に、軸部材5の上端外周に固定されるロータ13が外周面に羽根を有する点、およびブラケット9がモータの各構成部品を収容するケーシングとしての機能を果たす点で、図5に示すスピンドルモータと構成を異にする。なお、その他の構成部材は、図5に示すスピンドルモータの各構成部材と機能・作用を同一にするため、共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
1、21 動圧軸受装置
2 ハウジング
3 第1軸受スリーブ
4 第2軸受スリーブ
5 軸部材
6 シール部材
7 シール部材
8 スペーサ部材
A、A’ ラジアル軸受面
B 凸部
L1 第1軸受スリーブの軸方向長さ
L2 第2軸受スリーブの軸方向長さ
P 組立ピン
R1 第1ラジアル軸受部
R2 第2ラジアル軸受部
T1 第1スラスト軸受部
T2 第2スラスト軸受部
S1、S2 シール空間
2 ハウジング
3 第1軸受スリーブ
4 第2軸受スリーブ
5 軸部材
6 シール部材
7 シール部材
8 スペーサ部材
A、A’ ラジアル軸受面
B 凸部
L1 第1軸受スリーブの軸方向長さ
L2 第2軸受スリーブの軸方向長さ
P 組立ピン
R1 第1ラジアル軸受部
R2 第2ラジアル軸受部
T1 第1スラスト軸受部
T2 第2スラスト軸受部
S1、S2 シール空間
Claims (5)
- ハウジングと、ラジアル軸受面を有し、前記ハウジングに収容された軸受スリーブと、該軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、前記軸受スリーブのラジアル軸受面と前記軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、
前記軸受スリーブは軸方向に複数配置され、かつ各軸受スリーブは相互に軸方向長さを異ならせて形成されたことを特徴とする動圧軸受装置。 - 隣接する二つの軸受スリーブのうち、少なくとも何れか一方の内周面に、前記ラジアル軸受面よりも他方の軸受スリーブ側に位置し、前記ラジアル軸受面と同径の凸部を設けた請求項1に記載の動圧軸受装置。
- 前記軸部材は外径側に突出した突出部を有し、該突出部の端面と前記軸受スリーブの端面との間に、スラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受装置。
- 前記軸部材の突出部の外周側にシール空間が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の動圧軸受装置。
- 請求項1〜4の何れかに記載の動圧軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを有するモータ。
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-
2006
- 2006-03-24 JP JP2006083470A patent/JP2007255654A/ja not_active Withdrawn
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