JP4854992B2 - 固体高分子型燃料電池用セパレータおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は自動車および小規模発電システムなどに用いられる固体高分子型燃料電池用セパレータおよびその製造方法に関し、特に導電性化合物粒子が固着された表層部を有するステンレス鋼またはチタンからなる固体高分子型燃料電池用セパレータおよびその製造方法に関するものである。
固体高分子型燃料電池は、燃料として、純水素、アルコール類を改質して得られる水素ガスなどを用い、水素と空気中の酸素との反応を電気化学的に制御することによって、電力を取り出すシステムである。
固体高分子型燃料電池は、固体の水素イオン選択透過型有機物膜を電解質として用いるため、従来のアルカリ型燃料電池、燐酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型燃料電池などように、電解質として水溶液系電解質や溶融塩系電解質などの流動性媒体を用いる燃料電池に比べてコンパクト化が可能となり、電気自動車用などへの応用に向けた開発が進められている。
代表的な固体高分子型燃料電池の構成を図1に示す。
固体高分子型燃料電池1は、電解質となる固体高分子膜2と、この固体高分子膜2の両面に設けられた炭素微粒子と貴金属超微粒子からなる触媒電極部3と、この触媒電極部3で発生した電力を電流として取り出すとともに、触媒電極部3へ反応ガスである酸素主体ガスまたは水素主体ガスを供給する機能を持ったフェルト状炭素繊維集合体からなるカレントコレクター(通称カーボンペーパー4)と、カーボンペーパー4から電流を受けるとともに、酸素主体ガスと水素主体ガスを隔離するセパレータ5とが積層されて構成されている。
固体高分子型燃料電池1の基本原理は、概略以下の通りである。つまり、固体高分子型燃料電池1において、燃料である水素ガス(H2)8はアノード側6から供給され、ガス拡散層であるカーボンペーパー4、触媒電極部3を通過して水素イオン(H+)となって電解質である固体高分子膜2を透過し、カソード側7の触媒電極部3において、水素イオン(H+)と、カソード側7から供給された空気9中の酸素(O2)との酸化反応(2H++2e-+1/2O2→H2O)が生じ、水(H2O)が生成される。この酸化反応の際にアノード側6の触媒電極部3で生成した電子をカーボンペーパー4を介してアノード側6のセパレータ5からカソード側7のセパレータ5に電子10が流れることにより、両極間に電流、電圧が発生するというものである。
固体高分子膜2は、強酸性を有する電解質が膜中に固定されており、電池内の露点を制御することによって水素イオン(H+)を透過させる電解質として機能する。
固体高分子型燃料電池1の構成部材であるセパレータ5は、2種の反応ガスであるカソード側7の空気9とアノード側6の水素ガス8とを隔離するとともに、それぞれの反応ガスを供給する流路としての役割と、反応により生成した水をカソード側7から排出する役割を担っている。また、一般に、固体高分子型燃料電池1は、強酸性を示す電解質からなる固体高分子膜が用いられ、反応により約150℃以下の温度で稼動し、水が生成するため、固体高分子型燃料電池用のセパレータ5は、その材質特性として、耐食性と耐久性が要求されるとともに、カーボンペーパー4を介して電流を効率的に通電させるための良好な導電性と、カーボンペーパーとの接触抵抗が低いことが要求される。
従来、固体高分子型燃料電池用のセパレータの材料として、炭素系材料が多く使用されていた。しかし、炭素系材料からなるセパレータは、脆性の問題から厚さを薄くできないためコンパクト化に支障をきたしている。近年、割れにくい炭素系材料からなるセパレータも開発されつつあるが、コスト的に高価であるため経済性で不利である。
一方、金属材料を用いたセパレータは、炭素系材料に比べて脆性に対する問題がないため、特に、固体高分子型燃料電池システムのコンパクト化が可能となり、かつ低コスト材料である、ステンレス鋼やチタンあるいはチタン合金などの金属材料を用いたセパレータの開発が進められ、多数提案されている(例えば、特許文献1、2、12〜20参照)。
しかし、ステンレス鋼製セパレータあるいはチタンおよびチタン合金製セパレータは、これらの表面に形成される不動態皮膜に起因してカーボンペーパーとの接触抵抗が大きくなり、燃料電池のエネルギー効率を大幅に低下させることが問題であった。
このため、従来からステンレス鋼製セパレータあるいはチタンおよびチタン合金製セパレータに対して、部材表面とカーボンペーパーとの接触抵抗を低減させるための方法が、数多く提案されている。
例えば、ステンレス(SUS304)の表面にプレス成形により多数個の膨出成形部を形成し、この先端側端面に所定厚さの金メッキ層を形成させたり(例えば、特許文献3参照)、ステンレスまたはチタン表面に貴金属または貴金属合金を付着させることにより、カーボンペーパーとの接触抵抗を低下させる(例えば、特許文献4参照)などの固体高分子型燃料電池用のセパレータが提案されている。しかし、これらの方法は、ステンレスまたはチタン表面に、導電性を付与するための金メッキなどの高価な貴金属層を形成する表面処理が必要であるため、セパレータの製造コストが増大するという問題があった。
一方、高価な貴金属の使用量を低減するか、あるいは用いずに、セパレータ部材表面とカーボンペーパーとの接触抵抗を低減するための方法も種々提案されている。
例えば、ステンレス表面とカーボンペーパーとの接触抵抗を低減するために、ステンレスの焼鈍過程でステンレス中のCrをクロム炭化物として析出させ、ステンレス表面に形成される不動態被膜表面から露出したクロム炭化物を介してカーボンペーパーから受ける電流の通電性を高める方法(例えば、特許文献5参照)や、ステンレス表面にSiC、B4C、TiO2等の導電性化合物粒子が分散している塗膜を設けた後、このステンレスを非酸化性雰囲気下で300〜1100℃に加熱し、塗膜主要成分を分解・消失させたり、表面に炭化物系導電性セラミクスを被覆することにより、ステンレス表面に前記導電性化合物粒子を形成させる方法(例えば、特許文献6、7参照)が知られている。しかし、これらの方法は、ステンレス表面に導電性化合物を形成させるために長時間加熱処理する工程が必要であるため、セパレータの生産性低下、製造コスト増加の問題があった。また、焼鈍過程でステンレス中のCrをクロム炭化物として析出させる方法では、特に焼鈍時間が十分でない場合に鋼中のクロム炭化物周辺においてクロム欠乏層が生じ、この領域で局部的に耐食性の低下が生じたり、ステンレスをプレス成形してセパレータ表面のガス流路を形成するなどの際に、クロム炭化物が起点となってステンレス表面に割れが発生するなどが懸念される。
また、ステンレス鋼表面に導電性が良好なカーボン層またはカーボン粒子を固着する方法も提案されており、例えば、金属薄板上で触媒電極が位置する主要部にプレス成形などによりガス流路を形成した後、その表面に炭素系導電塗層を形成させる方法(例えば、特許文献8参照)、ステンレス鋼表面にカーボン粉末を分散圧着させて導電性を改善させる方法(例えば、特許文献9参照)、ステンレス鋼表面にカーボン系粒子を分散させたNi−Cr系メッキ層またはTa、TiまたはTi−Ta系メッキ層を形成する方法(例えば、特許文献10、11参照)が知られている。しかし、これらの方法によるセパレータでは、金属とカーボンとの界面の電子構造においてカーボン側に生ずる擬似的なショットキー障壁に起因して、ステンレス鋼とカーボン層またはカーボン粒子との界面で大きな接触抵抗が生じる結果、カーボンペーパーとの接触抵抗を十分に低減する効果は得られない。
また、ステンレス鋼製セパレータの水素主体ガスを供給する燃料極側に、TiN、TiC、CrC、TaC、B4C、SiC、WC、TiN、ZrN、CrN、HfCの1種又は2種以上の導電性セラミックス層を形成する方法(例えば、特許文献21参照)が提案されている。この方法は、真空装置等を用いた蒸着または乾式コーティング法などにより導電性セラミックス層を形成するものであるが、成膜速度の制約がありかつ被覆物質の歩留まり低下を余儀なくされるため、製造コストが増加する問題がある。
また、導電性を有する硬質微粉末をショットなどにより基材表面に固着させる方法も提案されている。
例えば、M236型、M4C型、もしくはMC型であって、金属元素(M)がクロム、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、ボロンの1種以上を含んでいる導電性硬質粒子を基材表面に埋め込み、分散・露出させたチタンあるいはチタン合金製セパレータ(例えば、特許文献22参照)や、M236型、M4C型、M2C型、MC型炭化物系金属介在物およびM2B型硼化物系金属介在物のうち1種以上であって、金属元素(M)がクロム、モリブデン、タングステンの一種以上である、導電性硬質粒子を基材表面に埋め込み、分散・露出させ、かつ表面粗さが中心線平均粗さRaで0.06〜5μmであるステンレス鋼およびステンレス鋼製セパレータ(例えば、特許文献23参照)、がそれぞれ提案されている。
また、燃料電池を形成するセパレータに、このセパレータより高硬度の核粒子に高耐食性かつ対カーボン低接触抵抗性の金属をコーティングした固体プレーティング材を投射して、この固体プレーティング材にコーティングされた金属をセパレータに強制的に付着する方法(例えば、特許文献24参照)や、同じ手法を用いてごく微量の貴金属をステンレスやチタンおよびチタン合金に埋め込むことで、金メッキのような全面の貴金属被覆をしなくても十分な低接触抵抗を得る方法(例えば、特許文献25参照)が提案されている。
これらの導電性を有する硬質微粉末をショットなどにより基材表面に固着させる方法は、加熱処理や真空蒸着による方法に比べて、生産性を低下させず、製造コストが安い、簡便な方法であるなどの点で有利な方法である。一方で、所望の形状に成形加工したメタルセパレータ基材表面に硬質な導電性粒子をブラスト法などによって機械的に打ち込む方法では、基材表層部に歪が導入されて変形する可能性があり、セパレータの平坦性が低下する場合がある。
一般に固体高分子型燃料電池は、1個あたりの出力電圧が1V程度と低いため、所望の出力を得るためには、燃料電池を多数積層してスタック型燃料電池として用いることが多い。このため、導電性を有する硬質微粉末をショットなどにより基材表面に固着させる方法においては、セパレータに反りや歪の発生を抑制し、燃料電池のスタック化が可能な良好な平坦性を有するセパレータを得るための条件および後処理を行う必要がある。
以上のように、従来から、セパレータ基材として、耐食性に優れたステンレス鋼やチタンあるいはチタン合金などの金属材料を用い、これらのセパレータ基材表面とカーボンペーパーとの接触抵抗を改善するために、種々の方法により基材表面に導電性化合物層を形成したり、または、導電性化合物粒子を固着させた固体高分子型燃料電池用の金属製セパレータが提案されているが、固体高分子型燃料電池用セパレータとして要求される接触抵抗および平坦性、さらには、成形加工性の点から、または、生産性や製造コストの点から必ずしも十分なものとは言えなかった。
また、本発明者らの従来技術の検討から、セパレータ表面の接触抵抗を低減するために、基材表面に導電性化合物を固着したステンレス鋼やチタンあるいはチタン合金などのメタルセパレータでは、燃料電池使用時に、基材表面の導電性化合物からMEA(固体高分子型電解質膜と電極の複合体)中に金属イオンが溶出し、起電力低下などの電池特性の劣化が生じ、発電能力を低下させる問題があることが判った。一方、基材表面に、導電性物質として、貴金属をめっきまたは埋め込んだメタルセパレータでは、このような問題がないものの、上述したように、貴金属の使用は、資源量が限られ、製造コストが高くなる問題がある。
特開2000−260439号公報 特開2000−256808号公報 特開2004−265695号公報 特開2001−6713号公報 特開2000−309854号公報 特開平11−260383号公報 特開平11−219713号公報 特開2000−021419号公報 特開平11−121018号公報 特開平11−126621号公報 特開平11−126622号公報 特開2004−107704号公報 特開2004−156132号公報 特開2004−273370号公報 特開2004−306128号公報 特開2004−124197号公報 特開2004−269969号公報 特開2003−223904号公報 特開2004−2960号公報 特開2004−232074号公報 特開2003−123783号公報 特開2001−357862号公報 特開2003−193206号公報 特開2001−250565号公報 特開2001−6713号報
上記従来技術の現状に鑑みて、本発明は、導電性化合物粒子が固着された表層部を有するステンレス鋼またはチタンからなる固体高分子型燃料電池用セパレータにおいて、燃料電池の使用時に、セパレータ表面の接触抵抗劣化による起電力低下などの電池特性の劣化が少なく、セパレータ表面のカーボンペーパーとの低接触抵抗性に優れ、さらには、スタック化のための平坦性に優れた、固体高分子型燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、すなわち、その要旨とするところは、以下の通りである。
(1)導電性化合物粒子が固着された表層部を有するステンレス鋼またはチタンからなる固体高分子型燃料電池用セパレータにおいて、前記導電性化合物粒子が、VB、V 8 7 およびVNのうちの1種または2種以上からなり、平均粒径が0.01〜20μmであり、かつ表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率が30%以下であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータ。
)ステンレス鋼またはチタンを成形加工した後、VB、V 8 7 およびVNのうちの1種または2種以上からなり、かつ平均粒径が0.01〜20μmである導電性化合物粒子を超硬コア粒子表面に被覆した粒子を、前記ステンレス鋼またはチタン表面に投射するブラスト加工を施した後、pHが2〜5、温度が40〜80℃の条件で酸洗処理を行うことを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法。
)前記超硬コア粒子の平均粒径が200μm以下であることを特徴とする上記()記載の固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法。
)前記ブラスト加工における投射圧力が0.4MPa以下であることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法。
本発明によれば、固体高分子型燃料電池の使用時に、ステンレス鋼製セパレータ表層部またはチタン製セパレータ表層部に固着した導電性化合物粒子がイオン溶出した後、導電性化合物粒子の表面に酸化物を形成することを防止し、カーボンペーパーとの接触抵抗が面圧10kgf/cm2において15mΩcm2以下と低く、使用時の低接触抵抗の劣化およびこれにより起電力の低下が少なく、かつ燃料電池のスタック化に十分適用できる平坦性を備えたステンレス製またはチタン製の固体高分子型燃料電池用セパレータを提供することが可能となる。
本発明について以下詳細に説明する。
前述の通り、図1に示す固体高分子型燃料電池1の構成部材であるセパレータ5は、その基本特性として、導電性、特にカーボンペーパー4からの電流を受ける際に、セパレータ5表面とカーボンペーパー4との接触抵抗が小さいことが要求される。
また、固体高分子型燃料電池1は、強酸性を有する電解質である固体高分子膜2を有し、約150℃以下の温度で進行する反応により水を生成するため、セパレータ5の材質として、これらの温度、酸性水溶液での腐食環境で十分耐えられる耐食性と耐久性が要求される。
さらに、固体高分子型燃料電池1は、所望の電力を得るために多数積層したスタック型燃料電池として用いることが多いため、セパレータ5は、燃料電池のスタック化に十分適用できる平坦性が要求される。
以上の点を踏まえて、本発明は、固体高分子型燃料電池用セパレータの素材として、上記温度、酸性水溶液での腐食環境下で、良好な耐食性を有するステンレス鋼またはチタンを用い、この表層部に導電性化合物粒子を有するセパレータであることを前提とし、導電性化合物粒子の形態を制御することを発明の基本思想とする。
先ず、本発明の基本思想および発明の主要部について説明する。
本発明者らは、従来技術の確認試験などから、従来から知られるステンレス鋼またはチタン表層部に導電性化合物粒子を固着したセパレータは、固体高分子型燃料電池の使用経過とともに、セパレータ表面とカーボンペーパーとの接触抵抗が大きくなり、これに起因して燃料電池の起電力が低下することを確認した。そして、この起電力の低下原因は、燃料電池の使用時に、ステンレス製セパレータ表層部またはチタン製セパレータ表層部に固着した導電性化合物粒子がイオン溶出した後、導電性化合物粒子の表面に酸化物を形成することにより、導電性化合物粒子の導電性が劣化するためであることが判明した。
また、本発明者らは、多数の種類の異なる導電性化合物粒子を用いて、固体高分子型燃料電池の使用環境、つまり、150℃以下の温度、強酸性水溶液の環境下において、導電性化合物が溶出し、酸化物を形成する機構について、鋭意検討した。その結果、導電性化合物が溶出後、水和属イオン同士が脱水縮合反応する場合に酸化物が形成されること、また、導電性化合物を構成する金属元素およびその化学形態によって安定して存在する水和属イオンの形態が異なり、特に2個以上のOH基を有する水和属イオンを形成しやすい導電性化合物を用いた場合に、前記水和属イオン同士の脱水縮合反応が顕著となることが判った。
さらに、本発明者らは、量子化学計算を用いて、pH2、80℃における強酸性水溶液において安定して存在し得る水和属イオンの形態について検討した。本計算では、金属イオンのヘキサ水和錯体から最大6個までのプロトンが解離する際の自由エネルギー変化ΔGを、Gaussian03プログラムのmPW1PW91密度汎関数法とSDD基底関数、溶媒和を考慮するためにCOSMO法を用いて算出した。さらに、算出されたΔGから、pH2、80℃における水和属錯体のプロトン解離反応の平衡定数を算出し、プロトン解離によって生じる様々な化学種の存在比率を求めた。その結果の一例を表1に示す。
Figure 0004854992
表1に示されるVは、Ti、Nb、Ta、Cr、Mo、Wなどの他の遷移金属とは異なり、固体高分子型燃料電池の使用環境下の酸性水溶液中において、安定に存在する水和属イオン中にOH基は存在しにくいことが明らかになった。
図2は、(a)1個以下のOH基を有する水和属イオンを形成する導電性化合物粒子(VB、V87、VNなど)、(b)2個以上のOH基を有する水和属イオンを形成する導電性化合物粒子(TiC、TiNなど)を用いてそれぞれ表面に固着したステンレス鋼製セパレータまたはチタン製セパレータを固体高分子型燃料電池の使用環境下で使用した場合の模式図である。
図2(a)に示すように、VB、V87、VNなどからなる導電性化合物は、酸性水溶液中においてOH基を有しない水和金属(V)イオンを形成するか、または、多くても1個のOH基を有する水和金属(V)イオンを形成する。このため、水和金属(V)イオン同士の脱水縮合反応は起きず、金属(V)酸化物は生成されない。
一方、図2(b)に示すように、TiC、TiNなどからなる導電性化合物は、酸性水溶液中において2個以上のOH基を有する水和金属(Ti)イオンを形成するため、水和金属(Ti)イオン同士の脱水縮合反応により、金属(Ti)酸化物が生成される。
以上の知見から、固体高分子型燃料電池用のステンレス鋼製セパレータまたはチタン製セパレータにおいて、その表層部に固着した導電性化合物粒子を構成する金属元素として、例えば、Vなどのように、燃料電池使用時の腐食環境を想定した酸性水溶液中において、安定して形成される水和属イオンが多くても1個のOH基しか有しないような金属を選択することにより、燃料電池使用時の導電性化合物粒子表面における金属酸化物の生成を防止し、起電力の劣化を抑制することが可能となる。
本発明は、以上の知見および技術思想を基になされたものであり、導電性化合物粒子が固着された表層部を有するステンレス鋼またはチタンからなる固体高分子型燃料電池用セパレータにおいて、前記導電性化合物粒子が、酸性水溶液中で多くても1個のOH基しか有しない水和属イオンを形成する金属元素からなる導電性化合物粒子、例えば、VB、V87、VNなどの導電性化合物粒子とすることを主要構成とする。
また、本発明は、上記主要構成による燃料電池使用時のセパレータ表面における低接触抵抗の劣化を抑制し、初期の低接触抵抗を維持させる効果を十分発揮させ、また、目標とする固体高分子型燃料電池用セパレータの基本特性を達成するために、さらに、セパレータの平坦性を向上させるために、上記主要構成に加えて、上記導電性化合物粒子の平均粒径、および、この粒子表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率を限定することを特徴とする。
また、上記の特徴を有する固体高分子型燃料電池用セパレータを製造する方法として、上記導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率を達成するために、酸洗処理条件を限定することを特徴とする。
本発明によれば、目標として、カーボンペーパーとの接触抵抗が面圧10kgf/cm2において15mΩcm2以下と低く、使用時の低接触抵抗の劣化およびこれにより起電力の低下が少なく、かつ燃料電池のスタック化に十分適用できる平坦性を備えたステンレス製またはチタン製の固体高分子型燃料電池用セパレータを達成することができる。
以下に、本発明における固体高分子型燃料電池用セパレータおよびその製造方法の限定理由について説明する。
先ず、上記の固体高分子型燃料電池用セパレータにおける限定理由を以下に説明する。
(固体高分子型燃料電池用セパレータ)
(導電性化合物粒子の種類)
上述したように、本発明において、固体高分子型燃料電池用セパレータの表層部に固着された導電性化合物粒子は、酸性水溶液中で多くても1個のOH基しか有しない水和属イオンを形成する金属元素からなる導電性化合物粒子とする。導電性化合物粒子を構成する金属元素を、酸性水溶液中で多くても1個のOH基しか有しない水和属イオンを形成する金属元素とすることにより、燃料電池使用時に導電性化合物が溶出した後、水和属イオン同士の脱水縮合反応による金属酸化物の生成を防止できる。その結果、燃料電池使用時の導電性化合物粒子の導電性劣化による起電力の低下を抑制することが可能となる。
本発明において、導電性化合物粒子を構成する金属元素は、安定供給が可能であるVが好ましく、その導電性化合物粒子として、VB、V87およびVNのうちの1種または2種以上からなる導電性化合物粒子が好ましい。
(導電性化合物粒子の平均粒径)
導電性化合物粒子の平均粒径が0.01ミクロン未満では、導電性化合物粒子によるセパレータ表面の接触抵抗の低下効果が十分に得られず、固体高分子型燃料電池用セパレータとして目的とする低接触抵抗が得られない。
一方、導電性化合物粒子の平均粒径が20μmを超えると、後述する、導電性化合物粒子を超硬コア粒子表面に被覆した投射粒子を用いてステンレス鋼表層部またはチタン表層部のブラスト処理を行う際に、ステンレス鋼表層部またはチタン表層部への導電性化合物粒子の埋め込み深さが小さくなり、結果的に、表層部中の導電性化合物粒子の密度が低下し、ステンレス鋼基材またはチタン基材への所望の低接触抵抗が得られなくなる。但し、ブラスト処理以外の方法を用いて導電性化合物粒子をステンレス鋼表層部またはチタン表層部に固着する場合には、ステンレス鋼表面またはチタン表面の接触抵抗の点から導電性化合物粒子の平均粒径の上限を規定する必要はない。
上記理由から、本発明において、導電性化合物粒子の平均粒径は、0.01〜20μmとした。
(表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率)
導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物は、導電性化合物粒子によるセパレータ表面の接触抵抗の低下作用を阻害する。導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率が30%を超えると、上記導電性化合物粒子の作用が顕著に阻害され、結果的に固体高分子型燃料電池用セパレータとして目的とする低接触抵抗が得られない。
上記理由から、本発明において、導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率は、30%以下とした。
なお、導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率は、例えば、次のようにして測定できる。先ず、透過型電子顕微鏡を用いてステンレス鋼表層部またはチタン表層部に存在する導電性化合物粒子の断面を観察し、導電性化合物粒子の全体および表層部の面積率を測定し、次に、光電子分光分析法を用いて導電性化合物粒子の表層部分子、表層部中に存在する金属酸化物分子を定量することによって、導電性化合物粒子全体に対する表層部中の金属酸化物の質量比率を求めることができる。
また、導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率は、後述するブラスト加工後の酸洗処理により達成できる。
以上説明した本発明の固体高分子型燃料電池用セパレータにおける技術的特徴の限定により、従来のセパレータに比べて接触抵抗が小さく、かつ固体高分子型燃料電池の使用環境における低接触抵抗の劣化が抑制できる固体高分子型燃料電池用セパレータを得ることが可能となる。
なお、本発明の固体高分子型燃料電池用セパレータにおいて、セパレータ表層部に固着する導電性化合物粒子の量は特に限定する必要はないが、上述した導電性化合物粒子の作用効果を十分に発揮させ、セパレータ表面の接触抵抗をより低減させるためには、セパレータ表層部における導電性化合物粒子の単位面積当たりの個数、つまり、密度を1×108個/cm2以上、さらに望ましくは1×1010個/cm2以上とするのがより好ましい。
次に、上記の固体高分子型燃料電池用セパレータを製造するための製造方法の限定理由を以下に説明する。
(固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法)
(ブラスト処理)
本発明では、ステンレス鋼またはチタンを成形加工した後、その表造部に導電性化合物粒子を固着する方法として、ステンレス鋼表層部またはチタン表層部にブラスト処理を施すことにより行う。
ブラスト処理における投射粒子は、上記本発明の固体高分子型燃料電池用セパレータの表層部に固着させる導電性化合物粒子として、上述した理由から、酸性水溶液中で多くても1個のOH基しか有しない水和属イオンを形成する金属元素からなり、かつ平均粒径が0.01〜20μmである導電性化合物粒子を用い、この導電性化合物粒子を超硬コア粒子表面に被覆した投射粒子とする。
なお、上記導電性化合物粒子は、上述した理由から、VB、V87およびVNのうちの1種または2種以上からなる導電性化合物とすることが好ましい。
また、上記導電性化合物粒子の平均粒径の下限は、上述した理由から、0.01μmとする。一方、導電性化合物粒子の平均粒径の上限は、平均粒径が20μmを超えると、導電性化合物粒子を超硬コア粒子表面に被覆した投射粒子を用いてステンレス表層部またはチタン表層部のブラスト処理を行う際に、ステンレス表層部またはチタン表層部への導電性化合物粒子の埋め込み深さが小さくなり、結果的に、表層部中の導電性化合物粒子の密度が低下し、ステンレス鋼基材またはチタン基材への所望の低接触抵抗が得られなくなるため、20μmとする。
また、上記導電性化合物粒子を超硬コア粒子表面に被覆した投射粒子において、超硬コア粒子の平均粒子は、得られたセパレータ表面の接触抵抗に影響するものではないから、接触抵抗の点からは限定する必要はない。
しかし、超硬コア粒子の平均粒子が200μmを超えると、ブラスト処理において投射圧力を調整しても平坦なセパレータ形状を得ることが困難となるため、固体高分子型燃料電池用セパレータとして要求されるスタック化が可能な平坦性を安定して確保するために、超硬コア粒子の平均粒径は200μm以下とするのが好ましい。さらに望ましくは超硬コア粒子の平均粒径を100μm以下とするのが良い。
なお、超硬コア粒子の硬度および材質は、通常のブラスト処理に用いられている硬度および材質で良く、例えば、炭化タングステンなどがあげられる。また、上記導電性化合物粒子を超硬コア粒子表面に被覆した投射粒子は、導電性化合物粒子に対して、例えば、Co、Cr、Ni、Fe、Cu、Snのいずれか1種または2種以上からなるバインダーを1質量%以上添加、混合した後、これを超硬コア粒子表面に塗布する方法を用いて製造することができる。
また、上記ブラスト処理における投射圧力(衝突エネルギー)は、得られたセパレータ表面の接触抵抗に影響するものではないから、接触抵抗の点からは限定する必要はない。
しかし、投射圧力が0.4MPa超となると、ステンレス鋼表層部またはチタン表層部の歪量が増加し、セパレータ形状の平坦性が劣化し、安定して良好な平坦性を確保することが難しくなるため、投射圧力の上限は0.4MPa以下に制限するのが好ましい。より好ましくは、投射圧力を0.3MPa以下に制限するのが良い。一方、ブラスト処理における投射圧力の下限は、通常のブラスト処理の投射圧力範囲であれば良く、特に限定する必要はない。ブラスト処理におけるセパレータの形状調整などの作業性を鑑みると、望ましくは0.01MPa以上が良い。
本発明では、ステンレス鋼表層部またはチタン表層部に導電性化合物粒子を固着する方法として、上記ブラスト処理方法を適用する。本ブラスト処理により、上述したようなセパレータ表面の接触抵抗を低減できる効果が得られる他、ステンレス鋼またはチタンのロール加工またはプレス加工などの成形加工を行う際に生じたC方向(圧延方向に垂直な方向)のそりとひねりが低減され、セパレータ形状の平坦性を向上することができる。
(酸洗処理)
酸洗処理は、上述したブラスト処理後に、上述した理由から、上記本発明の固体高分子型燃料電池用セパレータの表層部に固着させる導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率を30%以下とするために、本発明では、酸洗処理の条件を、pHが2〜5、温度が40〜80℃とする必要がある。
酸洗処理時のpHが5を超える条件では、導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物を除去する作用が十分でなく、一方、pHが2未満の条件では、金属酸化物以外の導電性化合物粒子自体が溶出して減少し、導電性化合物粒子によるセパレータ表面の接触抵抗の低減効果が低下するため、酸洗処理時のpHを2〜5とした。
また、酸洗処理時の温度が40℃未満の条件では、導電性化合物粒子の表層に形成された金属酸化物を除去する作用が十分でなく、一方、温度が80℃を超える条件では、金属酸化物以外の導電性化合物粒子自体が溶出して減少し、導電性化合物粒子によるセパレータ表面の接触抵抗の低減効果が低下するため、酸洗処理時の温度を40〜80℃とした。
また、酸洗処理の時間は、特に限定するものではないが、酸洗処理の作業効率の点から、1時間以上とするのが好ましい。また、酸洗処理に使用する酸洗溶液も特に限定するものではなく、例えば、硫酸溶液を用いて酸洗槽にブラスト処理後のセパレータを浸漬することでよい。
セパレータ表面のブラスト処理後に、酸洗処理をすることにより、上述した導電性化合物粒子表層に形成された金属酸化物が除去され、導電性化合物粒子の導電性が向上し、目的とするセパレータ表面の低接触抵抗を確保することができる。また、この効果に加えて、ブラスト処理によって導電性粒子表面に導入された欠陥を除去し、燃料電池使用時の導電性粒子のイオン溶出を抑制する効果も得られる。
以上説明した本発明の固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法により、上述した従来のセパレータに比べて接触抵抗が小さく、かつ固体高分子型燃料電池の使用環境における低接触抵抗の劣化が抑制できる固体高分子型燃料電池用セパレータを得ることが可能となる。
なお、本発明の固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法において、上記ブラスト処理の前に行うステンレス鋼またはチタンの成形加工は特に限定するものではなく、例えば、ロール加工またはプレス加工などにより、セパレータの基材となるステンレス鋼板表面またはチタン表面における所定位置に所定形状、所定サイズの溝を形成することにより、図2に示すような水素ガス8または空気9および水の流路を有するセパレータ部材とすることができる。
この際、セパレータの基材として用いるステンレス鋼板またはチタン板の厚さは限定されるものではないが、固定燃料電池用のセパレータを製造する際の実用的な鋼板の厚さは0.1〜0.2mm程度のものが用いられている。
また、上述したように、一般に固体高分子型燃料電池の1個当たりの出力電圧は、約1V程度と低いため、実用上、所望出力を得るために複数の燃料電池を積層したスタック型燃料電池として用いられることが多い。このため、固体高分子型燃料電池用のステンレス鋼板またはチタン板を成形して得られたセパレータは反りや残留歪が少ない平坦性を有するものであることが要求される。上記ロール加工またはプレス加工などの成形加工では、成形加工後にステンレス鋼板またはチタン板に主としてL方向(圧延方向)の反りが生じて、セパレータ形状の平坦性が失われることも生じる。このような場合には、上記成形加工後にセパレータに生じたL方向のそりは、セパレータの四周平坦部の内、L方向に沿った2辺を圧延または強圧下する矯正を施すことによって解消できる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。長さ50mm、幅50mm、厚さ0.2mmの高耐食ステンレス鋼およびチタンを試験材の基材として用いた。水和属イオンで結合しているOH基が多くとも1個以下であるような金属元素を成分とする導電性化合物粒子として、平均粒径が5μmから50μmのVB、V8C7、VN、およびそれらの混合物を、平均粒径が100μm〜300μmである炭化タングステン製の超硬コア粒子に、バインダーとしてCuを導電性化合物に対して1重量%混合して被覆し、上記の試験基材に0.3MPa〜0.5MPaの投射圧力で打ち込み、試験材とした。また比較のため水和属イオンにOH基を持つ金属元素を成分とする導電性化合物粒子としてTiN、TiCを同様の条件のブラスト法によって上記試験基材に打ち込み、試験材とした。
上記のブラスト処理後、pHを2〜6に設定した硫酸中に浸漬処理により導電性粒子表面の酸化物やクラックおよび転位などの欠陥を除去する清浄化処理を行った。浸漬温度は40℃〜90℃、浸漬時間は2時間に設定した。上記試験材の詳細を表2〜表5に示す。
対カーボンペーパー接触抵抗値を、面圧10kgf/cm2において測定した。測定された接触抵抗の値が15mΩcm2以下である場合を接触抵抗が合格であるとし、15mΩcm2を超えた場合を接触抵抗が不合格とした。
また、セパレータの平坦性は、図3に示すように、ステンレス鋼製セパレータまたはチタン製セパレータの四隅近傍の所定の位置に、原点をO、原点Oから原板の圧延方向にある角近傍にL、原点Oから原板の圧延垂直方向にある角の近傍にC、原点Oから対角線方向にある角近傍に Xを置き、OL間の線分の長さをLL、OC線分の長さをLC、OX間の長さをLXとし、直線OLと加工品の厚さ方向中心面までの最大ひずみ高さをHL1、直線CXとのそれをHL2、直線OCとのそれをHC1、直線LXとのそれをHC2、直線OXとのそれをHXCとし、点Xと3点O、L、Cにて構成される平面との距離をHXTとし、以下の(1)〜(7)式で定義されるセパレータの平坦性を指標であるWL1、WL2、WC1、WC2、WXC、TXLおよびTXCの値を求めて評価した。これらのWL1、WL2、WC1、WC2、WXC、TXLおよびTXCの値のうちいずれの値も0.1を超えない場合を平坦性が合格であるとし、どれか1つの値でも0.1を超えた場合を平坦性不合格とした。
Figure 0004854992
セパレータ基材表面に埋め込んだVB、V8C7、VN化合物粒子からのVイオン溶出量を以下の試験方法により実施した。上記試験材を、pHを2に調整した硫酸水溶液300mL中に80℃で、酸素または水素をバブリングしながら300時間放置した後、静置して得た上澄み液中のVイオン溶出量をICP発光分光分析法によって定量した。Vイオンの硫酸水溶液中への溶出量が50ppm以下をイオン溶出特性が合格であるとし、50ppm超を不合格とした。
上記導電性化合物表面における酸化物分子が、導電性化合物粒子表面の分子に占める割合は、光電子分光分析法により、酸化Vのケミカルシフトしたピークの強度をピーク分離して測定し、定量化することによって定量評価した。また、導電性化合物粒子表面酸化物および転位やクラックなどの欠陥の有無は、該埋め込み粒子表面部の断面を透過型電子顕微鏡で確認した。
表2〜表5に試験条件とともに、上記の試験結果を示す。
Figure 0004854992
Figure 0004854992
Figure 0004854992
Figure 0004854992
表2〜表5において、試験材No.3、4、7、10、11、14、17、18、21、22、24、25、28、31、32、35、38、39、42、45、46、49〜52、55、56、59、62、63、66、69、70、73、74、76、77、80、83、84、87、90、91、94、97、98、101〜104は、比較例であり、導電性化合物粒子の種類、平均粒径、表層金属酸化物の粒子全体に対する質量比率、酸洗時のpHおよび温度の条件のうち、少なくとも何れかが、本発明で規定する範囲から外れているため、初期のセパレータ表面の接触抵抗、および、燃料電池時使用時の接触抵抗の劣化に影響する金属イオン溶出の両方の評価を満足することはできなかった。
一方、試験材No.1、2、5、6、8、9、12、13、15、16、19、20、23、26、27、29、30、33、34、36、37、40、41、43、44、47、48、53、54、57、58、60、61、64、65、67、68、71、72、75、78、79、81、82、85、86、88、89、92、93は、本発明例であり、導電性化合物粒子の種類、平均粒径、および、表層金属酸化物の粒子全体に対する質量比率、酸洗時のpHおよび温度の条件の何れも本発明で規定する範囲内であるため、初期のセパレータ表面の接触抵抗、および、燃料電池時使用時の低接触抵抗の劣化に影響する金属イオン溶出の両方の評価を満足することができた。
また、これらの発明例のうち、試験材No.1、2、5、8、9、12、15、16、19、23、26、29、30、33、37、40、43、44、47、53、54、57、60、61、64、67、68、71、75、78、81、82、85、89、92、95、96、99は、上記本発明で規定条件に加えて、ブラスト処理条件である、超硬コア粒子の平均粒径および投射圧力が好ましい範囲内であるため、初期のセパレータ表面の接触抵抗、および、燃料電池時使用時の低接触抵抗の劣化の評価とともに、平坦性の評価も満足したより好ましい結果が得られた。
固体高分子型燃料電池の構成を説明する図である。 本発明の実施の形態を説明する図であり、基材に埋め込まれた導電性化合物が(a)は、本発明である水和属イオンで結合しているOH基が多くとも1個以下であるような金属元素の化合物である場合、(b)は比較例として水和属イオンにOH基を有する場合について、それぞれの表面状態を示す断面図である。(a)の本発明では具体的には導電性化合物としてVB,V8C7, VNとした。また(b)の比較例ではTiN、TiCとした。 ブラスト法により導電性表面処理を行った固体高分子型燃料電池用のステンレス鋼フラット化セパレータおよびチタンフラットセパレータの平坦性を評価するための指標の説明図である。
符号の説明
1 固体高分子型燃料電池
2 固体高分子膜
3 触媒電極部
4 カーボンペーパー
5 セパレータ
6 アノード側
7 カソード側
8 水素ガス
9 空気
10 電子

Claims (4)

  1. 導電性化合物粒子が固着された表層部を有するステンレス鋼またはチタンからなる固体高分子型燃料電池用セパレータにおいて、
    前記導電性化合物粒子が、VB、V 8 7 およびVNのうちの1種または2種以上からなり、平均粒径が0.01〜20μmであり、かつ表層に形成された金属酸化物の粒子全体に対する質量比率が30%以下であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  2. ステンレス鋼またはチタンを成形加工した後、VB、V 8 7 およびVNのうちの1種または2種以上からなり、かつ平均粒径が0.01〜20μmである導電性化合物粒子を超硬コア粒子表面に被覆した粒子を、前記ステンレス鋼またはチタン表面に投射するブラスト加工を施した後、pHが2〜5、温度が40〜80℃の条件で酸洗処理を行うことを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法。
  3. 前記超硬コア粒子の平均粒径が200μm以下であることを特徴とする請求項記載の固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法。
  4. 前記ブラスト加工における投射圧力が0.4MPa以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法。
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