JP3667679B2 - 低温型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ - Google Patents

低温型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池を始め、低温稼動可能な燃料電池のセパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池のなかでも、固体高分子型の燃料電池は、100℃以下の温度で動作可能であり、短時間で起動する長所を備えている。また、各部材が固体からなるため、構造が簡単でメンテナンスが容易で、振動や衝撃に曝される用途にも適用できる。更に、出力密度が高いため小型化に適し、燃料効率が高く、騒音が小さい等の長所を備えている。これらの長所から、電気自動車搭載用としての用途が検討されている。ガソリン自動車と同等の走行距離を出せる燃料電池を自動車に搭載できると、NOx,SOxの発生がほとんどなく、CO2の発生が半減する等、環境に対して非常にクリーンな動力源になる。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、分子中にプロトン交換基をもつ固体高分子樹脂膜がプロトン導電性電解質として機能することを利用したものであり、他の形式の燃料電池と同様に固体高分子膜の一側に水素等の燃料ガスを流し、他側に空気等の酸化性ガスを流す構造になっている。
具体的には、固体高分子膜1の両側に酸化極2及び燃料極3を接合し、それぞれガスケット4を介しセパレータ5を対向させている(図1a)。酸化極2側のセパレータ5に空気供給口6,空気排出口7が形成され、燃料極3側のセパレータ5に水素供給口8,水素排出口9が形成されている。
【0004】
セパレータ5には、水素g及び酸素又は空気oの導通及び均一分配のため、水素g及び酸素又は空気oの流動方向に延びる複数の溝10が形成されている。また、発電時に発熱があるため、給水口11から送り込んだ冷却水wをセパレータ5の内部に循環させた後、排水口12から排出させる水冷機構をセパレータ5に内蔵させている。
水素供給口8から燃料極3とセパレータ5との間隙に送り込まれた水素gは、電子を放出したプロトンとなって固体高分子膜1を透過し、酸化極2側で電子を受け、酸化極2とセパレータ5との間隙を通過する酸素又は空気oによって燃焼する。そこで、酸化極2と燃料極3との間に負荷をかけるとき、電力を取り出すことができる。
【0005】
燃料電池は、1セル当りの発電量が極く僅かである。そこで、セパレータ5,5で挟まれた固体高分子膜を1単位とし、複数のセルを積層すること(図1b)により取出し可能な電力量を大きくしている。多数のセルを積層した構造では、セパレータ5の抵抗が発電効率に大きな影響を及ぼす。発電効率を向上させるためには、導電性が良好で接触抵抗の低いセパレータが要求され、リン酸塩型燃料電池と同様に黒鉛質のセパレータが使用されている。
黒鉛質のセパレータは、黒鉛ブロックを所定形状に切り出し、切削加工によって各種の孔や溝を形成している。そのため、材料費や加工費が高く、全体として燃料電池の価格を高騰させると共に、生産性を低下させる原因になっている。しかも、材質的に脆い黒鉛でできたセパレータでは、振動や衝撃が加えられると破損する虞が大きい。そこで、プレス加工やパンチング加工等によって金属板からセパレータを作ることが特開平8−180883号公報で提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
酸素又は空気oが通過する酸化極2側は、酸性度がpH2〜3の酸性雰囲気にある。このような強酸性雰囲気に耐え、しかもセパレータに要求される特性を満足する金属材料は、これまでのところ実用化されていない。
酸性雰囲気に耐え、接触抵抗の低い金属材料としてAu,Pt等の貴金属が知られているが、非常に高価な材料であることから燃料電池用セパレータとして実用的な材料とはいえない。また、Niは、Au,Ptに比較すると非常に安価で、優れた電子伝導体でもあるが、pH2〜3の酸性雰囲気における耐食性が不足する。
【0007】
他方、強酸に耐える金属材料としては、ステンレス鋼に代表される耐酸性材料が考えられる。これらの材料は、表面に形成した強固な不動態皮膜によって耐酸性を呈するが、不動態皮膜によって表面抵抗や接触抵抗が高くなる。接触抵抗が高くなると、接触部分で多量のジュール熱が発生し、大きな熱損失となり、燃料電池の発電効率を低下させる。
表面抵抗や接触抵抗に及ぼす不動態皮膜の影響が抑制されると、ステンレス鋼本来の優れた耐食性を活用し、黒鉛質に代わるステンレス鋼製セパレータが使用可能になる。このような観点から、Auめっき層やTiN被覆層(特開平11−162478号公報)をステンレス鋼表面に形成することにより接触抵抗を下げる方法が開発されている。しかし、Auめっきは高価なものであり、TiN被覆したステンレス鋼製セパレータでは起動から数十時間で燃料電池の出力が低下する。
【0008】
本出願人も、表面全域にわたって多数の微細なピットを設けることにより表面接触抵抗が減少することを見出し、特願2000−276893号として出願した。多数の微細なピットは、たとえば塩化第二鉄水溶液中でステンレス鋼板を交番電解エッチングすることにより形成される。接触抵抗は、微細ピットの形成により約10〜20mΩ・cm2に低下するが、Auめっきレベルまで下がらず、多数のセルユニットをスタックした場合におけるジュール熱の発生等により熱損失が依然として無視できない状況である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、TiN被覆層の形成及び粗面化処理による接触抵抗の低下を燃料極側と酸化極側とで使い分けることにより、接触抵抗を低下させると共に電池特性の劣化を防止できるステンレス鋼製セパレータを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の低温型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータは、その目的を達成するため、燃料電池の燃料極に対向するステンレス鋼板の表面に酸化物皮膜を介することなく直接導電性セラミックス層が形成され、酸化極に対向する前記ステンレス鋼板の表面には、導電性セラミックス層にて覆われることのない不動態皮膜が形成されていることを特徴とする。
導電性セラミックス層としては、TiN,TiC,CrC,TaC,B4C,SiC,WC,TiN,ZrN,CrN,HfC等があり、スパッタリング,蒸着等によってステンレス鋼板表面に形成される。酸化極に対向するステンレス鋼板の表面は、交番電解エッチングで粗面化処理した後で硝酸浸漬することにより不動態皮膜を形成することが好ましい。
【0011】
【作用】
本発明者等は、TiN被覆層が形成されたステンレス鋼製セパレータを燃料電池に組み込み、接触抵抗,電池性能等を調査した。その結果、無垢のステンレス鋼板をセパレータに使用した場合に比較して、TiN被覆層によって接触抵抗が大きく低減していた。接触抵抗の低減は、TiNが導電性の良好なセラミックスであり、ステンレス鋼のように電気伝導性に劣る不動態皮膜を表面に形成しない結果である。
【0012】
ステンレス鋼製セパレータを組み込んだ燃料電池の性能を低下させる要因の一つに、ステンレス鋼製セパレータから溶出した金属イオンによって電極触媒やイオン交換膜が汚染されることが挙げられる。すなわち、酸性水溶液に接触するセパレータ表面から金属イオンが溶出し、長期的には電極触媒やイオン交換膜を汚染し,電池性能を低下させる。
【0013】
特に、水素の酸化反応によって水素イオンが生成する燃料極側は、水素イオンよりもイオン化傾向の大きな材料が溶解しやすい環境にある。この点、水素イオンよりもイオン化傾向の小さな材料でステンレス鋼をコーティングすることにより金属イオンの溶出が抑制される。イオン化傾向の小さな金属材料には、Au,Pt等の貴金属やCu等があるが、貴金属は高価な材料であることからコスト面で問題があり、Cuは燃料電池雰囲気下での耐酸性に乏しい。この点、TiN,TiC,CrC,TaC,B4C,SiC,WC,TiN,ZrN,CrN,HfC等の導電性セラミックス層は、金属イオンを溶出させることが少なく燃料電池雰囲気下で十分な耐酸性を呈し、しかも蒸着,スパッタリング等の気相コーティングによって容易に成膜できる。
【0014】
しかし、TiN被覆層を形成したステンレス鋼製セパレータを組み込んだ燃料電池では、起動から数十時間で出力が低下する傾向がみられる。出力低下した燃料電池を解体してステンレス鋼製セパレータを観察したところ、酸化極に対向するセパレータ表面に腐食が検出された。この結果から、NよりもOに対するTiの親和力が強く、酸素が存在する環境では表面酸化によってTiN被覆層が電気伝導性の低い酸化物に変化することにより接触抵抗が上昇し、出力低下が引き起こされたことが窺われる。
したがって、酸化極に対向するステンレス鋼表面に形成したTiN被覆層は有効とはいえず、燃料極側に比較して一層優れた耐食性が要求される。そこで、本発明では、ステンレス鋼板表面に形成される不動態皮膜によって耐食性の要求を満足させている。
【0015】
不動態皮膜の形成に先立ってステンレス鋼表面を粗面化処理しておくと、接触抵抗の低下にも有効である。粗面化処理としては、塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングが好ましい。電解粗面化により接触抵抗が低下する理由は、次のように推察される。
ステンレス鋼の表面は、酸化物,水酸化物等からなる不動態皮膜で覆われている。このステンレス鋼表面を交番電解エッチングすると、先ずアノード電解によって不動態皮膜にピットが発生する。続くカソード電解でH2が発生すると、フラットな部分に比較してピット内部では一時的にFe3++3OH-→Fe(OH)3の反応が起きる領域までpHが上昇する。続くアノード電解では、ピットの内壁を覆っているFe(OH)3が保護膜fとして作用し、すでに形成されているピットの内部よりもH2の発生により活性化されたフラットな部分が優先的に溶解する。その結果、新たなピットがフラットな部分に形成される(図2)。
【0016】
アノード電解及びカソード電解の繰返しにより、多数の微細なピットdがステンレス鋼全面にわたって均一に形成され、ピットdの周縁に微細突起pが林立した表面形態になる(図3)。ピットd及び微細突起pの上に形成される保護膜fは、ステンレス鋼板の表面に通常形成される酸化皮膜と異なり、多量のFeを含み溶解しやすい部分が電解エッチングで除去されることによって生成した粗面化面に形成された皮膜であって、膜厚が不均一で一部に微小な皮膜欠陥も存在するが、表面にCrが濃化されるために耐食性が向上する。
【0017】
このような表面形態になっているステンレス鋼板を黒鉛質の酸化極2(図1)に重ね合わせて加圧すると、黒鉛に比較して硬質の微細突起pが酸化極2の内部に押し込まれ、良好な密着状態でステンレス鋼板が酸化極2に接触する。また、酸化極2に微細突起pが押し込まれる際、単なるスタック圧だけでなく微細突起pに当たる部分では電極の弾性変形応力も加わるため、非常に良好な密接状態が得られる。したがって、粗面化していないステンレス鋼板に比較して,接触抵抗が低減する。また、保護膜fの膜厚が不均一で一部に皮膜欠陥があることも、接触抵抗の低減に有利に働くと考えられる。なお,保護膜fに皮膜欠陥があることから,燃料電池環境でFeの溶出を完全に防止することはできないが、Crリッチな表面層になっているため腐食の発生が抑えられ、接触抵抗が著しく増加することもない。
【0018】
【実施の形態】
セパレータ基材として使用されるステンレス鋼板には、燃料電池雰囲気で必要とする耐食性を呈する限り鋼種に特段の制約が加わるものではなく、各種のフェライト系,オーステナイト系,二相系等のステンレス鋼板がある。使用するステンレス鋼板としては、必要な耐酸性を確保する上で12質量%以上のCrを含み、燃料電池の組立てを考慮すると板厚が0.1〜0.4mmの範囲にあるものが好ましい。
【0019】
ステンレス鋼製セパレータは、表面の不動態皮膜によって燃料電池雰囲気下でも十分な耐酸性を呈するが、接触抵抗を低下させる上でステンレス鋼板の表面,裏面の何れか一方が粗面化処理することが好ましい。粗面化処理ではFe(OH)3の保護膜としての作用を利用して多数のピットを形成することから、NO3 -,SO4 2-等のイオンを多量に含まない塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングが採用される。NO3 -,SO4 2-等のイオンが多量に含まれると、ステンレス鋼の酸化反応が促進しピットdの形成に支障をきたし、必要とする粗面化状態が得られない。
【0020】
交番電解エッチングでは、塩化第二鉄水溶液中でのCl-イオンの分解反応を抑えるためアノード電流密度を10.0kA/m2以下にすることが好ましい。10.0kA/m2を超えるアノード電流密度では、Cl-イオンの分解反応が顕著になり、作業効率及び作業環境が悪化する。また、ピットdの周縁に多数の微細突起pが林立した表面状態にするため、アノード通電時間を0.05〜1秒の範囲に設定することが好ましい。
【0021】
カソード電解では、ステンレス鋼表面にH2を発生させてフラット部分を活性化すること及びピットdの内壁にFe(OH)3保護膜fを形成させることを狙っていることから、H2発生を伴う電流密度が必要である。しかし、カソード電流密度が大きすぎると、過剰なH2発生によってステンレス鋼表面が必要以上に活性化されるため、ピットdの内壁に生成したFe(OH)3保護膜fが除去され、ピットdが浅くなると共に微細突起pが林立した表面状態が得られない。このようなことから、カソード電流密度を0.1〜1kA/m2の範囲に設定し、カソード通電時間を0.01秒以上に設定することが好ましい。
【0022】
交番電解1サイクル当たりの適正通電時間はアノード電解で0.05〜1秒,カソード電解で0.01秒以上であるが、工業規模での交番電源を考慮するとアノード電解とカソード電解との通電時間を1:1にすることがコスト面で有利である。この場合には、交番電解のサイクルを0.5〜10Hzに設定することが好ましい。
交番電解エッチングを20秒以上継続すると、必要とする粗面化状態が得られる。20秒に達しない交番電解エッチングでは、ステンレス鋼表面にピット未発生部分が残り、接触抵抗が十分に低下せず、低温型燃料電池用セパレータに適用できないことがある。逆に、120秒を超える長時間の交番電解エッチングを施しても、粗面化形態及び接触抵抗に大きな改善がみられない。
【0023】
粗面化処理を施さないステンレス鋼板の表面には、TiN,,TiC,CrC,TaC,B4C,SiC,WC,TiN,ZrN,CrN,HfC等の導電性セラミックス層が蒸着,スパッタリング等の気相コーティング法で形成される。たとえば、イオン化蒸着による成膜では、先ずステンレス鋼基板の表面から酸化物皮膜を除去するため、アルゴン雰囲気中でイオンビーム照射して基板表面を前処理する。次いで、アルゴンと共に窒素をチャンバに導入し、各種金属をイオン蒸着する。
【0024】
スパッタリングによる成膜では、イオン化蒸着による成膜と同様にアルゴンスパッタリングでステンレス鋼基板表面から酸化物皮膜を除去した後、アルゴン+窒素の雰囲気下で各種金属をスパッタリングすることにより窒化物皮膜を得る。窒素に代えアセチレンガスをチャンバに導入すると、炭化物皮膜が得られる。
耐食性に優れたセラミック皮膜を得る場合には、ステンレス鋼基板と皮膜との結合を良好にし、欠陥の少ない緻密な皮膜を形成させることが重要である。そのための手段としては、ステンレス鋼が鋭敏化しない温度域でステンレス鋼基板を加熱する方法が好適である。
【0025】
片面を粗面化し、他面に導電性セラミックス層が形成されたステンレス鋼板をセパレータとして燃料電池に組み込む場合、粗面化された面を酸化極側、導電性セラミックス層が形成された面を燃料極側にして燃料電池を組み立てる。腐食環境が厳しい酸化極側では、ステンレス鋼本来の耐食性が活用され、且つ粗面化による低接触抵抗が利用される。腐食環境が比較的穏やかな燃料極では、導電性セラミックス層によって一層の低接触抵抗化が図られ、金属イオンの溶出も抑制される。その結果、ジュール発熱による損失や電池性能の劣化が抑えられ、長期間にわたって高い発電効率を示す燃料電池が得られる。
【0026】
【実施例】
以下に掲げる各種セパレータを用意した。
(1)SUS304ステンレス鋼板をセパレータ形状に加工した後、マグネトロンスパッタリング法で膜厚0.08μmのTi層,次いで膜厚0.3μmのTiN層をステンレス鋼板の両面に形成したステンレス鋼製セパレータ(燃料極側)及びカーボン製セパレータ(酸化極側)の組合せ。
(2) TiN被覆層を形成しないSUS304ステンレス鋼製セパレータ(燃料極側)及びカーボン製セパレータ(空気極側)の組合せ。
【0027】
(3) カーボンセパレータ(燃料極側)及びTiN被覆層を形成したSUS304ステンレス鋼製セパレータ(空気極側)の組合せ。
(4) 燃料極に対向するSUS304ステンレス鋼表面に膜厚0.3μmのTiN被覆層を形成し、酸化極に対向する表面に平均膜厚30Åの不動態皮膜を形成したステンレス鋼製セパレータ。
(5) 燃料極に対向するSUS304ステンレス鋼表面に膜厚0.3μmのTiN被覆層を形成し、酸化極に対向する表面を粗面化処理した後で平均膜厚20Åの不動態皮膜を形成したステンレス鋼製セパレータ。粗面化処理では、ステンレス鋼板をFe3+:55g/l,液温:57.5℃の塩化第二鉄水溶液に浸漬し、アノード電流密度:3.0kA/m2,カソード電流密度:0.5kA/m2,処理時間60秒,交番サイクル5サイクルの条件下で交番電解エッチングした。
【0028】
各セパレータを燃料電池の燃料極側及び酸化極側に組み込み、燃料電池を組み立てた。燃料ガスとして水素、酸化ガスとして空気を使用し、燃料電池を電流密度0.5A/cm2で100時間連続運転した。何れの燃料電池でも、連続運転中の出力低下は検出されなかった。次いで、ステンレス鋼製セパレータの腐食状態を観察すると共に、カーボン電極に対する接触抵抗を測定した。
表1の調査結果にみられるように、酸化極側をTiNコーティングしたステンレス鋼製セパレータを用いた燃料電池(No.1)は、カーボンコーティングに次いで低い接触抵抗を示し、カーボンコーティングした燃料極側の腐食も検出されなかった。
【0029】
TiNコーティングのない無垢のステンレス鋼製セパレータを用いた燃料電池(No.2)は、酸化極側の接触抵抗が高く、燃料極側では酸化皮膜の溶解により接触抵抗は低下したがTiNレベルまでは下がらなかった。この場合、酸化極側,燃料極側の何れも腐食が検出されなかった。
酸性環境となる酸化極側をTiNコーティングしたステンレス鋼製セパレータを用いた燃料電池(No.3)では、TiNに腐食が発生し、接触抵抗も増加した。
【0030】
酸化極側を不動態化処理したステンレス鋼製セパレータを用いた燃料電池(No.4)では、不動態皮膜により酸化極側の腐食は抑制されたが、大きな接触抵抗を示した。
酸化極側に不動態化処理及び粗面化処理を施したステンレス鋼製セパレータを用いた燃料電池(No.5)では、粗面化処理による接触抵抗の低減効果が発現しており、燃料極側,酸化極側共に腐食が発生しなかった。
【0031】
Figure 0003667679
【0032】
この対比から明らかなように、燃料極側にTiN被覆層を形成し、酸化極側に不動態皮膜を形成したステンレス鋼製セパレータを組み込んだ燃料電池は、過酷な腐食環境に曝される酸化極側でも接触抵抗の増加が少なく、長時間運転後においても高い発電効率を示すことが判る。更に、不動態皮膜の形成に先立って粗面化処理した(5)のステンレス鋼製セパレータは、接触抵抗が一層低下しており、過酷な腐食環境に曝される酸化極側にカーボン製セパレータを使用する(1)の組合せに匹敵する電池性能を呈し、長期間にわたって高い発電効率を呈する。しかも、脆弱なカーボンを必要とせず同じステンレス鋼製セパレータを用いて燃料電池が組み立てられることから、振動や衝撃に対して強い抵抗力を示す燃料電池が得られる。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の低温型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータは、燃料極に対向する面に導電性セラミックス層を形成することによって接触抵抗を低下させ、空気極側に不動態皮膜を形成することによって耐酸性を付与している。不動態皮膜は、電池性能に悪影響を及ぼす金属イオンの溶出を防止する上でも効果がある。そのため、このステンレス鋼製セパレータを組み込んだ燃料電池は、長期間にわたって高位に安定した電池性能を呈する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の固体高分子膜を電解質として使用した燃料電池の内部構造を説明する断面図(a)及び分解斜視図(b)
【図2】 交番電解エッチングでステンレス鋼板表面が粗面化する過程を説明する模式図
【図3】 電解粗面化された表面形態の模式図

Claims (3)

  1. 燃料電池の燃料極に対向するステンレス鋼板の表面に酸化物皮膜を介することなく直接導電性セラミックス層が形成され、酸化極に対向する前記ステンレス鋼板の表面には、導電性セラミックス層にて覆われることのない不動態皮膜が形成されていることを特徴とする低温型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ。
  2. 導電性セラミックス層がTiN,TiC,CrC,TaC,B4C,SiC,WC,TiN,ZrN,CrN,HfCの1種又は2種以上からなる請求項1記載の低温型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ。
  3. 粗面化処理されたステンレス鋼板の表面に不動態皮膜が形成されている請求項1記載の低温型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ。
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