JP4093743B2 - 低温型燃料電池用セパレータ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池を始め、低温稼動可能な燃料電池のセパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池のなかでも、固体高分子型の燃料電池は、100℃以下の温度で動作可能であり、短時間で起動する長所を備えている。また、各部材が固体からなるため、構造が簡単,メンテナンスが容易で、振動や衝撃に曝される用途にも適用できる。更に、出力密度が高いため小型化に適し、燃料効率が高く、騒音が小さい等の長所を備えている。これらの長所から、電気自動車搭載用としての用途が検討されている。ガソリン自動車と同等の走行距離を出せる燃料電池を自動車に搭載できると、NOx,SOxの発生がほとんどなく、CO2の発生が半減する等、環境に対して非常にクリーンな動力源になる。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、分子中にプロトン交換基をもつ固体高分子樹脂膜がプロトン伝導性電解質として機能することを利用したものであり、他の形式の燃料電池と同様に固体高分子膜の一側に水素等の燃料ガスを流し、他側に空気等の酸化性ガスを流す構造になっている。
具体的には、固体高分子膜1の両側に酸化極2及び燃料極3を接合し、それぞれガスケット4を介しセパレータ5を対向させている(図1a)。酸化極2側のセパレータ5に空気供給口6,空気排出口7が形成され、燃料極3側のセパレータ5に水素供給口8,水素排出口9が形成されている。
【0004】
セパレータ5には、水素g及び酸素又は空気oの導通及び均一分配のため、水素g及び酸素又は空気oの流動方向に延びる複数の溝10が形成されている。また、発電時に発熱があるため、給水口11から送り込んだ冷却水wをセパレータ5の内部に循環させた後、排水口12から排出させる水冷機構をセパレータ5に内蔵させている。
水素供給口8から燃料極3とセパレータ5との間隙に送り込まれた水素gは、電子を放出したプロトンとなって固体高分子膜1を透過し、酸化極2側で電子を受け、酸化極2とセパレータ5との間隙を通過する酸素又は空気oによって燃焼する。そこで、酸化極2と燃料極3との間に負荷をかけるとき、電力を取り出すことができる。
【0005】
燃料電池は、1セル当りの発電量が極く僅かであるので、セパレータ5,5で挟まれた固体高分子膜を1単位とし、複数のセルをスタックすること(図1b)により取出し可能な電力量を大きくしている。多数のセルをスタックした構造では、セパレータ5の抵抗が発電効率に大きな影響を及ぼす。発電効率を向上させるためには、電気伝導性が良好で接触抵抗の低いセパレータが要求され、リン酸塩型燃料電池と同様に黒鉛質のセパレータが使用されている。
【0006】
黒鉛質のセパレータは、黒鉛ブロックを所定形状に切り出し、切削加工によって各種の孔や溝を形成している。そのため、材料費や加工費が高く、全体として燃料電池の価格を高騰させると共に、生産性を低下させる原因になっている。しかも、材質的に脆い黒鉛でできたセパレータでは、振動や衝撃が加えられると破損する虞が大きい。そこで、プレス加工やパンチング加工等によって金属板からセパレータを作ることが特開平8−180883号公報で提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
酸素又は空気oが通過する酸化極2側は、酸性度がpH2〜3の酸性雰囲気にある。このような強酸性雰囲気に耐え、しかもセパレータに要求される特性を満足する金属材料は、これまでのところ実用化されていない。
酸性雰囲気に耐え、接触抵抗の低い金属材料としてAu,Pt等の貴金属が知られているが、非常に高価な材料であることから燃料電池用セパレータとして実用的な材料とはいえない。また、Niは、Au,Ptに比較すると非常に安価で、優れた電子伝導体でもあるが、pH2〜3の酸性雰囲気における耐食性が不足する。
【0008】
他方、強酸に耐える金属材料としては、ステンレス鋼に代表される耐酸性材料が考えられる。これらの材料は、表面に形成した強固な不動態皮膜によって耐酸性を呈するが、不動態皮膜によって表面抵抗や接触抵抗が高くなる。接触抵抗が高くなると、接触部分で多量のジュール熱が発生し、大きな熱損失となり、燃料電池の発電効率を低下させる。
【0009】
表面抵抗や接触抵抗に及ぼす不動態皮膜の影響が抑制されると、ステンレス鋼本来の優れた耐食性を活用し、黒鉛質に代わるステンレス鋼製セパレータが使用可能になる。このような観点から、本出願人は、表面全域にわたって多数の微細なピットを設けることにより表面接触抵抗が減少することを見出し、特願2000−276893号として出願した。多数の微細なピットは、たとえば塩化第二鉄水溶液中でステンレス鋼板を交番電解エッチングすることにより形成される。
接触抵抗は、微細ピットの形成により約10〜20mΩ・cm2に低下するが、燃料電池用セパレータとして望まれている数mΩ・cm2程度の接触抵抗と比較すると若干高く、多数のセルユニットをスタックした場合におけるジュール熱の発生等により熱損失が依然として無視できない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先願で提案した微細ピットの形成による接触抵抗の低下を活用しながら、使用環境に応じた表面改質を付加することにより、多数のセルユニットをスタックしても発電効率の低下を極力抑え、十分に大きな電力量を取り出すことが可能な低温型燃料電池用セパレータを提供することを目的とする。
本発明の低温型燃料電池用セパレータは、その目的を達成するため、燃料電池の燃料極に対向するステンレス鋼板の一方の面にNiめっき層又はCuめっき層が設けられ、酸化極に対向する前記ステンレス鋼板の他方の面は、塩化第二鉄水溶液中で、電流密度:10.0kA/m2以下,通電時間:0.05〜1秒のアノード電解と、電流密度:0.1〜1kA/m2,通電時間:0.01秒以上のカソード電解との交番サイクル0.5〜10Hzの条件での交番電解処理により多数の微細ピットの周縁に微細突起が林立した表面形態に改質されていることを特徴とする。
【0011】
【作用】
本発明者等は、低温型燃料電池用セパレータとして使用されるステンレス鋼板の表面状態が接触抵抗に及ぼす影響を種々調査検討し、接触抵抗の低下に微細ピットの形成が有効であることを先願(特願2000−276893号)で紹介した。しかし、微細ピットの形成により低下した接触抵抗は約10〜20mΩ・cm2であるが、低温型燃料電池用セパレータに望まれる接触抵抗に比較すると依然として若干高い値である。
【0012】
そこで、本発明では、接触抵抗の低下に有効な微細ピットの作用を活用しながら、燃料電池の稼動雰囲気を考慮して燃料極に対向するステンレス鋼板表面にNiめっき層又はCuめっき層を形成することにより、接触抵抗の更なる低下を可能にした。Ni又はCuめっきすると、貴金属めっき等と比較して安価な方法で1〜2mΩ・cm2の低接触抵抗が得られる。
燃料極に対向するセパレータ表面は、酸化極に比較して弱い腐食雰囲気に曝される。実際、燃料電池の起動時には燃料極でのpH低下が少なく(図2)、運転中も溶存酸素が存在しない傾向が窺われる。これは、加湿した水素が燃料極に,加湿した酸素又は空気が酸化極に供給され、燃料極でH2→2H++2e-の電極反応が進行することによるものと推察される。したがって、燃料極に対向するステンレス鋼板表面にNiめっき層又はCuめっき層を形成しても、腐食反応に十分耐える。
【0013】
他方、O2+4H++4e-→2H2Oの電極反応が進行する酸化極側では、燃料電池の起動時にpHが大きく低下する(図2)。燃料電池起動時におけるpH低下は、燃料極側から固体高分子膜を透過して供給される水素イオン量に比べ酸素の供給が不十分なため、余剰な水素イオンが固体高分子膜中のスルホン基と反応して希硫酸環境になることに原因があるものと考えられる。しかも、燃料電池の運転経過に伴って酸素又は空気が供給され続けるため、溶存酸素も増加する。このような雰囲気に曝されるステンレス鋼板の酸化極側表面は、燃料極側に比較して一層優れた耐食性が要求される。そこで、酸化極に対向するステンレス鋼板表面に微細なピットを付けて接触抵抗を下げると共に、ステンレス鋼板表面に生成している不動態皮膜によって要求耐食性を満足させる。
【0014】
微細なピットとしては、塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングによってステンレス鋼板表面に付けたものが好ましい。電解粗面化により接触抵抗が低下する理由は、次のように推察される。
ステンレス鋼の表面は、酸化物,水酸化物等からなる不動態皮膜で覆われている。このステンレス鋼表面を交番電解エッチングすると、先ずアノード電解によって不動態皮膜にピットが発生する。続くカソード電解でH2が発生すると、フラットな部分に比較してピット内部では一時的にFe3++3OH-→Fe(OH)3の反応が起きる領域までpHが上昇する。続くアノード電解では、ピットの内壁を覆っているFe(OH)3が保護膜fとして作用し、すでに形成されているピットの内部よりもH2の発生により活性化されたフラットな部分が優先的に溶解する。その結果、新たなピットがフラットな部分に形成される(図3)。
【0015】
アノード電解及びカソード電解の繰返しにより、多数の微細なピットdがステンレス鋼全面にわたって均一に形成され、ピットdの周縁に微細突起pが林立した表面形態になる(図4)。ピットd及び微細突起pの上に保護膜fが形成されているものの、ステンレス鋼板の表面に通常形成される酸化皮膜と異なり、電解エッチングで一旦溶解した後に再度形成されたものであるから膜厚が一定しておらず、下地鋼sに達する皮膜欠陥が無数に生じているものと考えられる。
【0016】
このような表面形態になっているステンレス鋼板を黒鉛質の酸化極2(図1)に重ね合わせて加圧すると、黒鉛に比較して硬質の微細突起pが酸化極2の内部に押し込まれ、良好な密着状態でステンレス鋼板が酸化極2に接触する。また、酸化極2に微細突起pが押し込まれる際、単なるスタック圧だけでなく微細突起pに当たる部分では電極の弾性変形応力も加わるため、非常に良好な密接状態が得られる。しかも、保護膜fに存在するとみられる無数の皮膜欠陥を介しステンレス鋼板が酸化極2に直接接触し、接触抵抗が低下するものと考えられる。
【0017】
保護膜fを介さずに金属−黒鉛接触となる部分がステンレス鋼板表面に多数存在し、当該部分が通電サイトとして働く。そのため、不動態皮膜が形成されがちなステンレス鋼板であっても低い接触抵抗で酸化極2に接触させることが可能となる。また、通電サイト以外の表面部にはCrリッチの保護膜fが形成されているので、過酷な雰囲気に曝されても十分な耐食性を呈する。
【0018】
【実施の形態】
セパレータ基材として使用されるステンレス鋼板には、燃料電池雰囲気で必要とする耐食性を呈する限り鋼種に特段の制約が加わるものではなく、各種のフェライト系,オーステナイト系,二相系等のステンレス鋼板がある。使用するステンレス鋼板としては、必要な耐酸性を確保する上で12質量%以上のCrを含み、燃料電池の組立てを考慮すると板厚が0.1〜0.4mmの範囲にあるものが好ましい。
【0019】
ステンレス鋼板の両面又は片面が粗面化処理される。粗面化処理ではFe(OH)3の保護膜としての作用を利用して多数のピットを形成することから、NO3 -,SO4 2-等のイオンを多量に含まない塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングが好ましい。NO3 -,SO4 2-等のイオンが多量に含まれると、ステンレス鋼の酸化反応が促進しピットdの形成に支障をきたし、必要とする粗面化状態が得られない。
【0020】
交番電解エッチングでは、塩化第二鉄水溶液中でのCl-イオンの分解反応を抑えるためアノード電流密度を10.0kA/m2以下にすることが好ましい。10.0kA/m2を超えるアノード電流密度では、Cl-イオンの分解反応が顕著になり、作業効率及び作業環境が悪化する。また、ピットdの周縁に多数の微細突起pが林立した表面状態にするため、アノード通電時間を0.05〜1秒の範囲に設定することが好ましい。
【0021】
カソード電解では、ステンレス鋼表面にH2を発生させてフラット部分を活性化すること及びピットdの内壁にFe(OH)3保護膜fを形成させることを狙っていることから、H2発生を伴う電流密度が必要である。しかし、カソード電流密度が大きすぎると、過剰なH2発生によってステンレス鋼表面が必要以上に活性化されるため、ピットdの内壁に生成したFe(OH)3保護膜fが除去され、ピットdが浅くなると共に微細突起pが林立した表面状態が得られない。このようなことから、カソード電流密度を0.1〜1kA/m2の範囲に設定し、カソード通電時間を0.01秒以上に設定することが好ましい。
【0022】
交番電解1サイクル当りの適正通電時間はアノード電解で0.05〜1秒,カソード電解で0.01秒以上であるが、工業規模での交番電源を考慮するとアノード電解とカソード電解との通電時間を1:1にすることがコスト面で有利である。この場合には、交番電解のサイクルを0.5〜10Hzに設定することが好ましい。
交番電解エッチングを20秒以上継続すると、必要とする粗面化状態が得られる。20秒に達しない交番電解エッチングでは、ステンレス鋼表面にピット未発生部分が残り、接触抵抗が十分に低下せず、低温型燃料電池用セパレータに適用できないことがある。逆に、120秒を超える長時間の交番電解エッチングを施しても、粗面化形態及び接触抵抗に大きな改善がみられない。
【0023】
両面粗面化処理した場合はその片面に、片面粗面化処理した場合には粗面化処理を施さないステンレス鋼板の他面に、Niめっき層又はCuめっき層が形成される。
Niめっきには、電気めっき法,無電解めっき法等が採用される。電気めっき法でNiめっき層を形成する場合、下地ステンレス鋼とNiめっき層との密着性を確保するため、析出効率を10%以下に調整しためっき浴を用いてNiストライクめっきした後、析出効率を約80%以上としためっき浴を用いてNi本めっきすることが好ましい。本めっき浴には、ワット浴,全塩化物浴,全硫酸塩浴等のめっき浴が使用される。Niめっき層は、ステンレス鋼板の他面全域を被覆して接触抵抗を下げることから、好ましくは0.5g/m2以上の付着量で形成される。
【0024】
Cuめっき層は、主として電気めっき法により形成される。Cuめっき浴には、代表的には硫酸銅浴が使用される。この場合にも、下地ステンレス鋼とCuめっき層との密着性を改善するため、必要に応じて析出効率を約10%以下に調整しためっき浴を用いたNiストライクめっき等の前処理が施される。Cuめっき層は、ステンレス鋼板の他面全域を被覆して接触抵抗を下げることから、好ましくは0.5g/m2以上の付着量で形成される。
【0025】
両面又は片面を粗面化し、他面にNiめっき層又はCuめっき層が形成されたステンレス鋼板をセパレータとして燃料電池に組み込む場合、Niめっき層又はCuめっき層が形成された面を燃料極側,他方の粗面化された面を酸化極側にして燃料電池を組み立てる。腐食環境が厳しい酸化極側では、ステンレス鋼本来の耐食性が活用され、且つ粗面化による低接触抵抗が利用される。腐食環境が比較的穏やかな燃料極では、Niめっき層又はCuめっき層によって一層の低接触抵抗化が図られる。その結果、ジュール発熱による損失が抑えられ、発電効率の高い燃料電池が得られる。
【0026】
【実施例】
表1の組成をもつステンレス鋼板をセパレータ基材として使用し、両面又は片面を電解粗面化し、他面にNiめっき層又はCuめっき層を形成した。
【0027】
【0028】
電解粗面化では、被処理面をマスキングしたステンレス鋼板をFe3+:55g/l,液温:57.5℃の塩化第二鉄水溶液に浸漬し、アノード電流密度:3.0kA/m2,カソード電流密度:0.5kA/m2,処理時間60秒,交番サイクル5サイクルの条件下で交番電解エッチングした。両面を粗面化する場合には、以上の処理を繰り返した。
エッチングされたステンレス鋼板の表面を観察したところ、平均径2μm,平均深さ1μmの微細なピットdが表面全域にわたって均等に形成されており、ピットdの周縁に平均径2.0μm,平均深さ1.0μmの微細突起pが多数林立した表面形態になっていた。エッチングされた表面は、表面粗さがRa:0.4μmであった。
【0029】
次いで、ステンレス鋼の他面にNiめっき層又はCuめっき層を形成した。
Niめっきでは、ストライクめっき及び本めっきにより全付着量44.5g/m2のNiめっき層を形成した。ストライクめっきでは、NiSO4・6H2O:400g/l,Na2SO4:100g/lを含む液温55℃,pH1.5のめっき浴を用い、めっき条件を電流密度5A/dm2,処理時間12秒に設定した。本めっきでは、NiCl2・6H2O:300g/l,H3BO3:30g/l,液温55℃,pH2のめっき浴を用い、めっき条件を電流密度10A/dm2,処理時間290秒に設定した。
【0030】
Cuめっきでは、Niストライクめっき後のCu本めっきにより全付着量44.8g/m2のCuめっき層を形成した。ストライクめっきでは、NiSO4・6H2O:150g/l,HCl:25g/lを含む液温35℃,pH0.2のめっき浴を用い、めっき条件を電流密度5A/dm2,処理時間90秒に設定した。本めっきでは、CuSO4・5H2O:210g/l,H2SO4:45g/l,液温40℃のめっき浴を用い、めっき条件を電流密度10A/dm2,処理時間150秒に設定した。
【0031】
粗面化処理及びめっきされたステンレス鋼板を燃料電池のセパレータとし、薄膜電極アセンブリの固体高分子膜1に重ね合わせた酸化極2に粗面化された表面が対向し、固体高分子膜1に重ね合わせた燃料極3にNiめっき層又はCuめっき層が対向するように、酸化極2及び燃料極3をセパレータで挟み込んで燃料電池セルを組み立てた。
【0032】
加湿した水素及び酸素を各燃料電池セルに供給しながら、電流密度:0.5A/m2一定として100時間連続運転した後、燃料電池セルからセパレータを取り出し、セパレータの酸化極側及び燃料極側表面の腐食状況を調査した。その結果、何れの表面からも腐食が検出されなかった。また、連続運転後においても、セパレータの接触抵抗は僅かな上昇に留まり(図5)、発電効率に及ぼす悪影響を無視できた。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の低温型燃料電池用セパレータは、厳しい腐食環境に曝される酸化極側のステンレス鋼板表面を粗面化処理し、比較的穏やかな腐食環境に曝される燃料極側にNiめっき層又はCuめっき層を形成することにより、腐食による接触抵抗の増加が抑制され、長期間にわたって接触抵抗を低位に維持する。そのため、ジュール発熱に起因した損失が少なく、発電効率の高い燃料電池が得られる。しかも、金属製のセパレータであることから、たとえば車両搭載用等の用途に適した軽量化も図られ、黒鉛製セパレータに比較して振動や衝撃にも耐える燃料電池となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の固体高分子膜を電解質として使用した燃料電池の内部構造を説明する断面図(a)及び分解斜視図(b)
【図2】 燃料電池起動時における燃料極側及び酸化極側でのpH変化を示すグラフ
【図3】 交番電解エッチングでステンレス鋼板表面が粗面化する過程を説明する模式図
【図4】 電解粗面化された表面形態の模式図
【図5】 燃料電池に組み込んだステンレス鋼製セパレータの接触抵抗の変化を示すグラフ
Claims (1)
- 燃料電池の燃料極に対向するステンレス鋼板の一方の面にNiめっき層又はCuめっき層が設けられ、酸化極に対向する前記ステンレス鋼板の他方の面は、塩化第二鉄水溶液中で、電流密度:10 . 0kA/m 2 以下,通電時間:0 . 05〜1秒のアノード電解と、電流密度:0.1〜1kA/m 2 ,通電時間:0 . 01秒以上のカソード電解との交番サイクル0.5〜10Hzの条件での交番電解処理により多数の微細ピットの周縁に微細突起が林立した表面形態に改質されていることを特徴とする低温型燃料電池用セパレータ。
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