JP4017856B2 - 燃料電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、接触抵抗が低く耐食性に優れたステンレス鋼製の燃料電池用セパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池には、リン酸型燃料電池,溶融炭酸塩型燃料電池,固体電解質型燃料電池,固体高分子型燃料電池等がある。なかでも、固体高分子型の燃料電池は、100℃以下の温度で動作可能であり、短時間で起動する長所を備えている。また、各部材が固体からなるため、構造が簡単でメンテナンスが容易であり、振動や衝撃に曝される用途にも適用できる。更に、出力密度が高いため小型化に適し、燃料効率が高く、騒音が小さい等の長所を備えている。これらの長所から、電気自動車搭載用としての用途が検討されている。ガソリン自動車と同等の走行距離を出せる燃料電池を自動車に搭載できると、NOx,SOxの発生がほとんどなく、CO2の発生が半減する等のように環境に対して非常にクリーンな動力源になる。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、分子中にプロトン交換基をもつ固体高分子樹脂膜がプロトン導電性電解質として機能することを利用したものであり、他の形式の燃料電池と同様に固体高分子膜の一側に水素等の燃料ガスを流し、他側に空気等の酸化性ガスを流す構造になっている。
具体的には、固体高分子膜1の両側に酸化極2及び燃料極3を接合し、それぞれガスケット4を介しセパレータ5を対向させている(図1a)。酸化極2側のセパレータ5に空気供給口6,空気排出口7が形成され、燃料極3側のセパレータ5に水素供給口8,水素排出口9が形成されている。
【0004】
セパレータ5には、水素g及び酸素又は空気oの導通及び均一分配のため、水素g及び酸素又は空気oの流動方向に延びる複数の溝10が形成されている。また、発電時に発熱があるため、給水口11から送り込んだ冷却水wをセパレータ5の内部に循環させた後、排水口12から排出させる水冷機構をセパレータ5に内蔵させている。
水素供給口8から燃料極3とセパレータ5との間隙に送り込まれた水素gは、電子を放出したプロトンとなって固体高分子膜1を透過し、酸化極2側で電子を受け、酸化極2とセパレータ5との間隙を通過する酸素又は空気oによって燃焼する。そこで、酸化極2と燃料極3との間に負荷をかけるとき、電力を取り出すことができる。
【0005】
燃料電池は、1セル当りの発電量が極く僅かである。そこで、図1(b)に示すようにセパレータ5,5で挟まれた固体高分子膜を1単位とし、複数のセルを積層することにより取出し可能な電力量を大きくしている。多数のセルを積層した構造では、セパレータ5の抵抗が発電効率に大きな影響を及ぼす。発電効率を向上させるためには、導電性が良好で接触抵抗の低いセパレータが要求され、リン酸塩型燃料電池と同様に黒鉛質のセパレータが使用されている。
黒鉛質のセパレータは、黒鉛ブロックを所定形状に切り出し、切削加工によって各種の孔や溝を形成している。そのため、材料費や加工費が高く、全体として燃料電池の価格を高騰させると共に、生産性を低下させる原因になっている。しかも、材質的に脆い黒鉛でできたセパレータでは、振動や衝撃が加えられると破損する虞が大きい。そこで、プレス加工やパンチング加工等によって金属板からセパレータを作ることが特開平8−180883号公報で提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
酸素又は空気oが通過する酸化極2側は、酸性度がpH2〜3の酸性雰囲気にある。このような強酸性雰囲気に耐え、しかもセパレータに要求される特性を満足する金属材料は、これまでのところ実用化されていない。
たとえば、強酸に耐える金属材料としてステンレス鋼等の耐酸性材料が考えられる。ステンレス鋼表面に生成している不動態皮膜は、耐食性の点では有効であるが、比電気抵抗の大きなCr,Fe,Si,Mn等の酸化物や水酸化物を含む皮膜であることから接触抵抗が高い。そのため、単にステンレス鋼をセパレータとして燃料電池に組み込むと、接触部分で多量のジュール熱が発生して大きな熱損失となり、燃料電池の発電効率を低下させる。
【0007】
表面に酸化皮膜や不動態皮膜が生成することなく且つ耐食性に優れた金属材料としては、Au,Pt等の貴金属がある。Auは酸性雰囲気にも耐え得るが、非常に高価な材料であるため燃料電池のセパレータ材としては実用的でない。Ptも酸化皮膜や不動態皮膜が形成されにくく酸性雰囲気に耐え得る金属材料であるが、Auと同様に非常に高価な材料であることから実用的なセパレータ材とはいえない。
そこで、本発明者等は、ステンレス鋼の優れた耐食性を活用することを前提とし、ステンレス鋼板を表面改質することによって接触抵抗を低下することを検討した。その結果、多数の突起がピット周縁に林立した表面形態にすると、燃料電池の要求特性を満足する程度に接触抵抗が低下することを見出し、特願2000−276893号として出願した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先願で提案したステンレス鋼板の粗面化が接触抵抗の低減に有効なことを前提とし、基材であるステンレス鋼の材質を選択することにより、不動態皮膜を更に改質し、長期間にわたり良好な電気伝導性,低い接触抵抗が維持され、固体高分子型等の燃料電池に適したセパレータを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の燃料電池用セパレータは、その目的を達成するため、C:0.04〜0.07質量%,Si:0.51〜0.58質量%,Mn:0.69〜0.87質量%,Cr:15.0〜25.0質量%,Ni:25.0質量%以下,N:0.1〜0.5質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるステンレス鋼板を基材とし、基材の表面全域にわたって多数の微細なピットが形成され、ピットの周縁に基材ステンレス鋼組成の微細突起が林立した表面形態をもつことを特徴とする。
微細なピットは、平均径2μm,平均深さ1μmの形状を有するものが好ましい。
この燃料電池用セパレータは、所定組成のステンレス鋼板を塩化第二鉄水溶液中で交番電解エッチングすることにより、周縁に基材ステンレス鋼組成の微細突起が林立した多数の微細なピットが全域に形成された表面形態に改質することにより製造される。
【0010】
【作用】
本発明者等は、低温型燃料電池用セパレータとして使用されるステンレス鋼板の表面状態が接触抵抗に及ぼす影響を種々調査検討し、接触抵抗の低下に有効な表面処理方法を追求した。通常のステンレス鋼板では、母材部に比較してCrが濃化した不動態皮膜が表面に形成されており、該不動態皮膜が一種の抵抗体となって接触抵抗を上げる。他方、粗面化処理したステンレス鋼は低い接触抵抗を示す。なかでも、塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングにより粗面化すると、接触抵抗が大幅に低下する。
【0011】
電解粗面化により接触抵抗が低下する理由は、つぎのように推察される。
ステンレス鋼の表面は、酸化物,水酸化物等からなる不動態皮膜で覆われている。このステンレス鋼表面を交番電解エッチングすると、先ずアノード電解によって不動態皮膜にピットが発生する。続くカソード電解でH2が発生すると、フラットな部分に比較してピット内部では一時的にFe3++3OH-→Fe(OH)3の反応が起きる領域までpHが上昇する。続くアノード電解では、ピットの内壁を覆っているFe(OH)3が保護膜fとして作用し、すでに形成されているピットの内部よりもH2の発生により活性化されたフラットな部分が優先的に溶解する。その結果、新たなピットがフラットな部分に形成される(図2)。
【0012】
アノード電解及びカソード電解の繰返しにより、多数の微細なピットdがステンレス鋼全面にわたって均一に形成され、ピットdの周縁に微細突起pが林立した表面形態になる(図3)。ピットd及び微細突起pの上に保護膜fが形成されているものの、ステンレス鋼板の表面に通常形成される酸化皮膜と異なり、電解エッチングで一旦溶解した後に再度形成されたものであるから膜厚が一定しておらず、下地鋼Sに達する皮膜欠陥が無数に生じているものと考えられる。
【0013】
このような表面形態になっているステンレス鋼板を黒鉛質の酸化極2,燃料極3(図1)に重ね合わせて加圧すると、黒鉛に比較して硬質の微細突起pが酸化極2,燃料極3の内部に押し込まれ、良好な密着状態でステンレス鋼板が酸化極2,燃料極3に接触する。また、酸化極2,燃料極3に微細突起pが押し込まれる際、単なるスタック圧だけでなく微細突起pに当たる部分では電極の弾性変形応力も加わるため、非常に良好な密接状態が得られる。しかも、保護膜fに存在するとみられる無数の皮膜欠陥を介しステンレス鋼板が酸化極2,燃料極3に直接接触することが予想される。また、保護膜fを薄く形成した場合に生じるトンネル電流も、接触抵抗を低下させる一因と推測される。このようなことから接触抵抗が大幅に低下する。
【0014】
保護膜fを介さずに金属−黒鉛接触となる部分がステンレス鋼板表面に多数存在し、当該部分が通電サイトとして働く。そのため、不動態皮膜が形成されがちなステンレス鋼板であっても低い接触抵抗で酸化極2,燃料極3に接触させることが可能となる。また、通電サイト以外の表面部にはCrリッチの保護膜fが形成されているので、過酷な雰囲気に曝されても十分な耐食性を呈する。
【0015】
交番電解エッチングは、セパレータ材として使用される板厚0.1〜0.4mm程度のステンレス鋼薄板に対して有効な粗面化処理である。他方、ショットブラスト,サンドブラスト等の粗面化処理は、このような板厚のステンレス鋼板に適さない。しかも、交番電解エッチングされたステンレス鋼表面に生成している酸化皮膜fは、ショットブラスト,サンドブラスト等の粗面化処理が施されたステンレス鋼に比較して、Cr濃度の高い不動態皮膜になっている。この点でも、耐食性に優れたセパレータとして使用できることが判る。
【0016】
粗面化処理による接触抵抗の低減に加え、本発明では基材ステンレス鋼の材質を選択することにより、耐食性が一層優れたセパレータ材としている。燃料電池用セパレータは、燃料電池起動時には60〜100℃に昇温するpH2〜3の酸性雰囲気に晒される。しかも、セパレータ間に電位差がかかることから、強い腐食性の酸性高電位雰囲気に保持される。
【0017】
燃料電池セル内の腐食性雰囲気において長期間にわたって優れた耐食性を呈する基材として、所定量のCr,Ni,N,必要に応じMoを含むステンレス鋼板が使用される。合金成分のうち、Nは腐食環境に溶出して基材表面にアンモニアを生成し腐食環境をマイルドにする作用を呈し、酸性の高電位雰囲気においても優れた耐食性をステンレス鋼基材に付与する。Mo,Niは耐酸性に有効な合金成分である。中性雰囲気ではCr添加により耐食性が向上するが、酸性雰囲気では高電位になると過不動態域になるので、Crの過剰添加は却ってCrの優先溶解を促進させる結果となる。そこで、基材に使用するステンレス鋼板を、Cr:15.0〜25.0質量%,Ni:25.0質量%以下,N:0.1〜0.5質量%,必要に応じMo:10.0質量%以下を含む組成に設定した。
このように組成が特定されたステンレス鋼基材を表面改質することによって、燃料電池セル内の過酷な腐食雰囲気においても低い接触抵抗,優れた耐食性が長期間にわたって維持される燃料電池用セパレータとなる。
【0018】
【実施の形態】
以下、本発明が対象とするステンレス鋼板に含まれる合金成分,含有量等を説明する。
Cr:15.0〜25.0質量%
一般にCrはステンレス鋼板の耐食性を得るために必要な合金成分であるが、燃料電池セル内の環境を考慮した含有量に設定される。具体的には、酸性,70℃の雰囲気における電気化学特性から適正Cr含有量を検討した。自然電位の酸性雰囲気における不動態化限界電流密度からするとCr濃度が高いほど電流値が低く耐食性に有利であるが、高電位の酸性雰囲気では過不動態域に晒されることからCr濃度が高いほどCrの溶解電流が流れやすくなる。すなわち、Cr濃度が高いほど、セパレータに電位差がかかった場合の耐食性に不利となる。そこで、15.0〜25.0質量%の範囲にCr含有量を設定した。15.0質量%未満のCr含有量では十分な耐酸性が得られず、25.0質量%を超える過剰量のCr含有量では高電位がかかった酸性雰囲気における耐食性が低下する。Crの過剰添加は、鋼材を硬質化しセパレータへの加工性を低下させる原因ともなる。
【0019】
Ni:25.0質量%以下
酸性雰囲気における耐食性の向上に有効な合金成分であるが、Niの過剰添加は溶接性や加工性に悪影響を及ぼし、コスト的にも不利となるので、Ni含有量の上限を25.0質量%に設定した。また、Ni添加によってステンレス鋼板をオーステナイト組織又はオーステナイト+フェライトの二相組織にすることによって、酸性雰囲気における耐食性の改善に有効な量のNをステンレス鋼に含ませることができる。
【0020】
N:0.1〜0.5質量%
酸性雰囲気における耐食性を改善し、オーステナイト組織を安定化する作用を呈する合金成分であり、0.1質量%以上で添加効果が顕著になる。しかし、0.5質量%を超える過剰量のNを添加すると、窒化物の生成が助長され、結果として耐食性が飽和する。また、高濃度のN含有は、冶金学的にも制御が容易でなく、窒素ガス,アンモニアガス等を用いてNを溶鋼に吸収させる製造プロセスを必要とし、製造コスト上昇の原因となる。
【0021】
Mo:10.0質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり,酸性雰囲気における耐食性を改善する作用を呈し、Mo添加によって一層の耐食性向上が期待できる。しかし、10.0質量%を超えるMoの過剰添加は、鋼材コストを上昇させることは勿論、多量の金属間化合物が生成しやすくなりステンレス鋼板の延性が低下する。
【0022】
前掲の組成をもつステンレス鋼は、Fe(OH)3の保護膜としての作用を用いて多数のピットを形成するため、塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングによって粗面化される。塩化第二鉄水溶液は、NO3 -,SO4 2-等のイオンを多量に含まないことが好ましい。NO3 -,SO4 2-等のイオンが多量に含まれると、ステンレス鋼の酸化反応が促進しピットdの形成に支障をきたし、必要とする粗面化状態が得られない。
【0023】
交番電解エッチングでは、塩化第二鉄水溶液中でのClイオンの分解反応を抑えるためアノード電流密度を10.0kA/m2以下にすることが好ましい。10.0kA/m2を超えるアノード電流密度では、Clイオンの分解反応が顕著になり、作業効率及び作業環境が悪化する。また、ピットdの周縁に多数の微細突起pが林立した表面状態にするため、アノード通電時間を0.05〜1秒の範囲に設定することが好ましい。
【0024】
カソード電解では、前述したようにステンレス鋼表面にH2を発生させてフラット部分を活性化すること及びピットdの内壁に保護膜fを形成させることを狙っていることから、H2発生を伴う電流密度が必要である。しかし、カソード電流密度が大きすぎると、過剰なH2発生によってステンレス鋼表面が必要以上に活性化されるため、ピットdの内壁に生成したFe(OH)3保護膜fが除去され、ピットdが浅くなると共に微細突起pが林立した表面状態が得られない。このようなことから、カソード電流密度を0.1〜1kA/m2の範囲に設定し、カソード通電時間を0.01秒以上に設定することが好ましい。
【0025】
交番電解1サイクル当たりの適正通電時間はアノード電解で0.05〜1秒,カソード電解で0.01秒以上であるが、工業規模での交番電解を考慮するとアノード電解とカソード電解との通電時間を1:1にすることがコスト面で有利である。この場合には、交番電解のサイクルを0.5〜10Hzに設定することが好ましい。
交番電解エッチングを20秒以上継続すると、必要とする粗面化状態が得られる。20秒に達しない交番電解エッチングでは、ステンレス鋼表面にピット未発生部分が残り、接触抵抗が十分に低下せず、低温型燃料電池用セパレータに適用できないことがある。逆に、120秒を超える長時間の交番電解エッチングを施しても、粗面化形態及び接触抵抗に大きな改善がみられない。
【0026】
【実施例】
表1の組成をもつ各種ステンレス鋼を溶製し、鋳造,熱間鍛造,熱間圧延,焼鈍・酸洗,冷間圧延の工程を経て板厚1.0mmの冷延板を製造した。
【0027】
【0028】
各冷延板から切り出した試験片を交番電解エッチングにより粗面化した。交番電解エッチングでは,Fe3+:55g/l,液温57.5℃の塩化第二鉄水溶液を使用し、アノード電流密度3.0kA/m2,カソード電流密度1.0kA/m2,処理時間60秒,交番電解サイクル5Hzの条件を採用した。
電解エッチングされた各ステンレス鋼板の表面を顕微鏡観察したところ、平均径2μm,平均深さ1μmの微細なピットdが表面全域にわたって均等に形成されており、ピットdの周縁に高さ2μm程度の微細突起pが多数林立した表面形態になっていた。
【0029】
粗面化されたステンレス鋼板に荷重10kgf/cm2でカーボン電極を接触させ、ステンレス鋼板/カーボン電極間の接触抵抗を測定した。比較のため、ショットブラストで粗面化処理したステンレス鋼板,粗面化処理することなくフッ硝酸で酸洗したステンレス鋼板についても、同じ条件下で接触抵抗を測定した。また、各ステンレス鋼板を温水(90℃)に168時間浸漬した後で接触抵抗を測定し、温水浸漬による接触抵抗の増加度合いを調査した。
【0030】
表2の調査結果にみられるように、本発明に従って粗面化処理したステンレス鋼板は接触抵抗が大幅に低下しており、接触抵抗は温水浸漬試験後にも低レベルに維持されていた。他方、ショットブラストや酸洗で粗面化したステンレス鋼板は接触抵抗の初期値が大きく、燃料電池のセパレータ材に使用できないことが判った。この対比から明らかなように、同じ鋼種のステンレス鋼板をセパレータ材として使用した場合にあっても、粗面化処理状態に応じて接触抵抗に大きな差があることが確認された。
なお、表2では、鋼種No.1,5の接触抵抗を示したが、他の鋼種についても同様に交番電解エッチングするとき、接触抵抗の初期値が低く、温水浸漬試験後にも接触抵抗の増加が検出されなかった。
【0031】
【0032】
表1の組成をもつ各ステンレス鋼冷延板を交番電解エッチングで粗面化処理した後、セパレータ形状に打抜き加工した。固体高分子膜1に酸化極2及び燃料極3を重ね合わせた薄膜電極アセンブリを作製されたステンレス鋼製セパレータ5で挟み、燃料電池セルを構成した。この燃料電池セルに加湿した水素及び酸素を供給し、電流密度0.5A/m2一定として100時間運転した後、セパレータ5を取り出し腐食状況を調査した。
【0033】
腐食状況を示す表3にみられるように、Aグループのステンレス鋼板を電解粗面化したセパレータでは腐食が検出されなかった。ステンレス鋼板の腐食がないことは、燃料電池セル内に溶出して固体高分子膜のプロトン輸送効率を低下させる金属イオンがセパレータ材から溶出しないことを意味し、長期間にわたり高い発電効率で駆動できる燃料電池が得られる。
他方、N含有量が0.1質量%未満の鋼種B-1を電解粗面化したセパレータでは僅かに腐食が検出され、Cr含有量が少なすぎる鋼種B-2や多すぎる鋼種B-3を電解粗面化して得られたセパレータにも腐食が検出された。
【0034】
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の燃料電池用セパレータは、ステンレス鋼基材の組成を特定すると共に基材を表面改質することによって、ステンレス鋼本来の耐食性は勿論、燃料電池セル内の低pH高温雰囲気においても優れた耐食性を維持し、しかも接触抵抗が低く抑えられている。そのため、ジュール発熱による損失が少なく、長期間にわたって高い発電効率で駆動できる燃料電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 固体高分子膜を電解質に使用した燃料電池の内部構造を説明する断面図(a)及び分解斜視図(b)
【図2】 交番電解エッチングによりステンレス鋼板表面が粗面化される過程を説明するためのモデル図
【図3】 交番電解エッチングにより粗面化されたステンレス鋼板の表面を示すモデル図
【符号の説明】
S:ステンレス鋼基材 d:ピット p:微細突起 f:保護膜
Claims (4)
- C:0.04〜0.07質量%,Si:0.51〜0.58質量%,Mn:0.69〜0.87質量%,Cr:15.0〜25.0質量%,Ni:25.0質量%以下,N:0.1〜0.5質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるステンレス鋼板を基材とし、基材の表面全域にわたって多数の微細なピットが形成され、ピットの周縁に基材ステンレス鋼組成の微細突起が林立した表面形態をもつことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
- 更にMo:10.0質量%以下を含むステンレス鋼板を基材とする請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
- 微細ピットは、平均径2μm,平均深さ1μmの形状を有するものである請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータ。
- 請求項1又は2記載の組成をもつステンレス鋼板を塩化第二鉄水溶液中で交番電解エッチングすることにより、周縁に基材ステンレス鋼組成の微細突起が林立した多数の微細なピットが全域に形成された表面形態に改質することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
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