JP4967831B2 - 固体高分子形燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼およびそれを用いた固体高分子形燃料電池 - Google Patents

固体高分子形燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼およびそれを用いた固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、接触抵抗値が低く耐食性に優れる固体高分子形燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼、およびそれを用いた固体高分子形燃料電池に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、発電効率に優れ、CO2 を排出しない燃料電池の開発が進められている。この燃料電池はH2 とO2 から電気化学反応によって電気を発生させるものであり、その基本構造は、電解質膜(すなわちイオン交換膜),2つの電極(すなわち燃料極と空気極),O2(すなわち空気)とH2の拡散層,および2つのセパレータから構成される。そして、使用される電解質膜の種類に応じて、リン酸形燃料電池,溶融炭酸塩形燃料電池,固体酸化物形燃料電池,アルカリ形燃料電池,固体高分子形燃料電池等が開発されている。
これらの燃料電池のうち、固体高分子形燃料電池は、他の燃料電池に比べて、
(a) 発電温度が80℃程度であり、格段に低い温度で発電できる、
(b) 燃料電池本体の軽量化,小型化が可能である、
(c) 短時間で立上げができ、燃料効率,出力密度が高い、
等の利点を有している。このため、固体高分子形燃料電池は、電気自動車の搭載用電源,家庭用あるいは業務用の定置型発電機,携帯用の小型発電機として利用するべく、今日もっとも注目されている燃料電池である。
固体高分子形燃料電池は、高分子膜を介してH2 とO2 から電気を取り出すものであり、図1に示すように、ガス拡散層2,3(たとえばカーボンペーパ等)およびセパレータ4,5によって膜−電極接合体1を挟み込み、これを単一の構成要素(いわゆる単セル)とし、セパレータ4とセパレータ5との間に起電力を生じさせるものである。
なお膜−電極接合体1は、MEA(すなわち Membrance-Electrode Assembly )と呼ばれており、高分子膜とその膜の表裏面に白金系触媒を担持したカーボンブラック等の電極材料を一体化したものであり、厚さは数10μm〜数100μmである。ガス拡散層2,3は、膜−電極接合体1と一体化される場合も多い。
固体高分子形燃料電池を上記した用途に適用する場合は、このような単セルを直列に数十〜数百個つないで燃料電池スタックを構成して使用している。
セパレータ4,5には、
(A) 単セル間を隔てる隔壁
としての役割に加え、
(B) 発生した電子を運ぶ導電体、
(C) O2 (すなわち空気)とH2 が流れる空気流路,水素流路、
(D) 生成した水やガスを排出する排出路
としての機能が求められる。さらに固体高分子型燃料電池を実用に供するためには、耐久性や電気伝導性に優れたセパレータ4,5を使用する必要がある。
耐久性に関しては、電気自動車の搭載用電源として使用される場合は、約5000時間と想定されている。あるいは家庭用の定置型発電機等として使用される場合は、約40000時間と想定されている。したがってセパレータ4,5には、長時間の発電に耐えられる耐食性が要求される。その理由は、腐食によって金属イオンが溶出すると電解質膜のプロトン伝導性が低下するからである。
また電気伝導性に関しては、セパレータ4,5とガス拡散層2,3との接触抵抗は極力低いことが望まれる。 その理由は、セパレータ4,5とガス拡散層2,3との接触抵抗が増大すると、固体高分子型燃料電池の発電効率が低下するからである。つまり、セパレータとガス拡散層との接触抵抗が小さいほど、発電特性が優れている。
現在までに、セパレータ4,5としてグラファイトを用いた固体高分子型燃料電池が実用化されている。このグラファイトからなるセパレータ4,5は、接触抵抗が比較的低く、しかも腐食しないという利点がある。しかしながら衝撃によって破損しやすいので、小型化が困難であり、しかも空気流路6,水素流路7を形成するための加工コストが高いという欠点がある。グラファイトからなるセパレータ4,5が有するこれらの欠点は、固体高分子型燃料電池の普及を妨げる原因になっている。
そこでセパレータ4,5の素材として、グラファイトに替えて金属素材を適用する試みがなされている。特に、耐久性向上の観点から、ステンレス鋼,チタン,またはチタン合金を素材としたセパレータ4,5の実用化に向けて、種々の検討がなされている。
たとえば特開平8-180883号公報には、スタンレス鋼またはチタン合金等の不動態皮膜を形成しやすい金属をセパレータとして用いる技術が開示されている。しかし不動態皮膜の形成は、接触抵抗の上昇を招くことになり、発電効率の低下につながる。このため、これらの金属素材は、グラファイト素材と比べて接触抵抗が大きく、しかも耐食性が劣る等の改善すべき問題点が指摘されていた。
また特開平10-228914号公報には、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)等の金属セパレータの表面に金めっきを施すことにより、接触抵抗を低減し、高出力を確保する技術が開示されている。しかし、薄い金めっきではピンホールの発生防止が困難であり、逆に厚い金めっきではコストの問題が残る。
また特開2000-277133号公報には、フェライト系ステンレス鋼基材にカーボン粉末を分散させて、電気伝導性を改善(すなわち接触抵抗を低下)したセパレータを得る方法が開示されている。しかしながらカーボン粉末を用いた場合も、セパレータの表面処理には相応のコストがかかることから、依然としてコストの問題が残っている。 また、表面処理を施したセパレータは、組立て時にキズ等が生じた場合に、耐食性が著しく低下するという問題点も指摘されている。
さらに、導電性析出物を利用してセパレータの接触抵抗を低減しようとする試みがなされている。たとえば特開2000-214186号公報には、M236 型炭化物あるいはM2B型硼化物をステンレス鋼板の表面に析出させたセパレータが開示されている。しかしこの技術では、十分な析出量を得るためにCあるいはBを多量に添加する必要がある。また、その析出物は硬質であるから、ステンレス鋼板の製造が困難であるばかりでなく、セパレータに加工する際の成形性が著しく劣化するという問題がある。しかも、これらの炭化物あるいは硼化物の主体はCrであるから、これらが析出することによってCr欠乏層が形成され、耐食性を劣化させる惧れがある。
特開2004-124197号公報には、導電性析出物としてラーベス相を利用する技術が開示されている。ラーベス相は、セパレータの導電性向上に有効であるものの、燃料電池の起動停止を頻繁に繰り返すような運転を行なう場合には、長期間にわたって優れた導電性を維持すること(すなわち耐久性を確保すること)は困難である。
特開平8-180883号公報 特開平10-228914号公報 特開2000-277133号公報 特開2000-214186号公報 特開2004-124197号公報
本発明は、上記のような問題点を解決し、長期間にわたって接触抵抗を低く保ち、起動停止の回数が増大しても優れた導電性を維持できる耐久性に優れた固体高分子形燃料電池、およびそのセパレータとして使用するのに好適なフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、起動停止を繰り返すことによって接触抵抗が増加していく現象について鋭意検討を行なった。その結果、セパレータの素材であるステンレス鋼の表面に形成される不動態皮膜が起動停止時に著しく成長して、接触抵抗が増加すること、および比較的粗大に析出するσ相をステンレス鋼の表面に析出させれば、不動態皮膜が成長しても長期間にわたって優れた導電性を維持できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、Cを0.03質量%以下,Nを0.03質量%以下,C+Nを0.03質量%以下,Crを16.0〜45質量%含有し、さらに、Tiを2質量%以下、Nbを2質量%以下、Zrを2質量%以下、Vを2質量%以下、Moを7質量%以下、Wを7質量%以下、Niを4質量%以下、Siを3質量%以下、Mnを3質量%以下およびAlを0.5質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、表面に析出したσ相の面積率が1%以上である固体高分子形燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼(以下、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼という)である。
た本発明は、固体高分子膜,電極,ガス拡散層およびセパレータを有し、そのセパレータが前記したセパレータ用フェライト系ステンレス鋼からなる固体高分子形燃料電池である。
本発明によれば、長期間にわたって接触抵抗を低く保ち、起動停止の回数が増大しても優れた導電性を維持できる耐久性に優れた固体高分子形燃料電池、およびそのセパレータとして使用するのに好適なセパレータ用フェライト系ステンレス鋼を得ることができる。
まず、本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼の成分を限定した理由を説明する。
C:0.03質量%以下,N:0.03質量%以下,C+N:0.03質量%以下
CおよびNは、いずれもセパレータ用フェライト系ステンレス鋼中のCrと化合物(すなわちCr炭窒化物)を形成して粒界に析出し、耐食性の低下をもたらす。このため、C,Nの含有量は小さいほど好ましく、C:0.03質量%以下,N:0.03質量%以下であれば、耐食性の低下を抑制できる。またC+N(すなわちCとNの合計)が0.03質量%を超えると、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼をセパレータの形状にプレス加工する際に割れを生じることが多い。C+Nが0.03質量%以下では、耐食性の低下を抑制できる。したがって、Cは0.03質量%以下,Nは0.03質量%以下,C+Nは0.03質量%以下とする。好ましくは、C:0.015質量%以下,N:0.015質量%以下,C+N:0.02質量%以下である。
Cr:16.0〜45質量%
Crは、ステンレス鋼としての基本的な耐食性を確保するために必要な元素であるとともに、σ相を形成する元素である。Cr含有量が16.0質量%未満では、σ相の析出に長時間を要する。一方、45質量%を超えると、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼を製造する際にσ相が析出するので、ステンレス鋼板の製造およびセパレータの形状に成形するためのプレス加工が困難になる。したがって、Crは16.0〜45質量%の範囲内とする。好ましくは18〜40質量%,より好ましくは20〜35質量%である。
本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼は、さらに下記の元素を1種または2種以上添加することができる。
Ti:2質量%以下,Nb:2質量%以下,Zr:2質量%以下,V:2質量%以下
これらの元素は、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼中のC,Nを炭窒化物として固定し、プレス成形性を改善するのに有効な元素である。本発明では、この効果に加えて、σ相の析出を促進するために添加する。ただし、Ti,Nb,Zr,Vをそれぞれ2質量%を超えて添加すると、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼が著しく脆化して生産が困難になる。したがってTi,Nb,Zr,Vを添加する場合は、Ti:2質量%以下,Nb:2質量%以下,Zr:2質量%以下,V:2質量%以下が好ましい。一方、これらの元素の含有量が0.1質量%未満では、プレス成形性を改善する効果,σ相の析出を促進する効果が得られない。そのため、Ti:0.1〜2質量%,Nb:0.1〜2質量%,Zr:0.1〜2質量%,V:0.1〜2質量%が一層好ましい。
Mo:7質量%以下,W:7質量%以下,
MoおよびWは、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼中の耐食性を改善するのに有効な元素である。本発明では、これらの効果に加えて、σ相の析出を促進するために添加する。ただし、Mo,Wをそれぞれ7質量%を超えて添加すると、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼が著しく脆化して生産が困難になる。したがってMo,Wを添加する場合は、Mo:7質量%以下,W:7質量%以下が好ましい。一方、これらの元素の含有量が0.2質量%未満では、σ相の析出を促進する効果が得られない。そのため、Mo:0.2〜7質量%,W:0.2〜7質量%が一層好ましい。
Si:3質量%以下
Siは、製鋼工程における脱酸のために有効な元素であり、その目的で添加されるが、過度に含有させるとセパレータ用フェライト系ステンレス鋼の硬質化と延性低下を招く。したがって、Siの含有量は3質量%以下が好ましい。同時に、Siはσ相の析出を促進する元素であるが、0.05質量%未満ではこの効果は得られない。そのため、Siは0.05〜3質量%の範囲内が一層好ましい。より好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲内である。
Mn:2質量%以下
Mnは、Sと結合して固溶Sを低減することによってSの粒界偏析を抑制し、熱間圧延時の割れを防止するのに有効な元素である。ただし過度に含有させるとセパレータ用フェライト系ステンレス鋼の硬質化と延性低下を招く。したがって、Mnの含有量は2質量%以下が好ましい。同時に、Mnはσ相の析出を促進する元素であるが、0.05質量%未満ではこの効果は得られない。そのため、Mnは0.05〜2質量%の範囲内が一層好ましい。より好ましくは0.1〜2質量%の範囲内である。
Al:0.5質量%以下
Alは、製鋼工程における脱酸に有効であると同時に、σ相の析出を促進する元素である。しかしAl含有量が0.5質量%を超えて含有すると、かえってσ相の析出が遅れる。したがって、Alは0.5質量%以下が好ましい。一方、0.001質量%未満では、脱酸の効果が得られない。そのため、Alは0.001〜0.5質量%の範囲内が一層好ましい。
Ni:4質量%以下
Niは、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上する元素である。さらにσ相の析出を促進する効果も有する。ただし過度に含有させると、特にCr含有量が低い場合に、高温でオーステナイト相を生成するので、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼の成形性を劣化させる惧れがある。したがって、Niは4質量%以下が好ましい。一方、0.1質量%未満では、σ相の析出を促進する効果が得られない。そのため、Niは0.1〜4質量%の範囲内が一層好ましい。
本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼は、上記した元素に加えて、熱間加工性を向上するために、Ca:0.1質量%以下,Mg:0.1質量%以下,希土類元素:0.1質量%以下,B:0.1質量%以下の中から選ばれる1種または2種以上を添加しても良い。さらに、耐食性を向上するために、Cu:5質量%以下を添加しても良い。
次に、本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼に析出するσ相について説明する。
σ相は、FeとCrがほぼ1:1の組成比である金属間化合物であり、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼の表面に析出することによって接触抵抗を低減する効果が発揮される。セパレータとして使用すると、空気極側の不動態皮膜が著しく成長するが、表面に占めるσ相の面積率が1%以上であれば、導電性を確保できる。好ましくは5%以上である。
次に、本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
セパレータ用フェライト系ステンレス鋼の素材となる溶鋼は、一般に知られている溶製方法が全て適用できる。ただし、製鋼の工程は転炉や電気炉で1次精錬し、強攪拌真空酸素脱炭処理(すなわちSS−VOD)で2次精錬を行なうのが好ましい。溶鋼を鋳込んで得られたスラブは、熱間圧延を行ない、900〜1150℃で焼鈍した後、必要に応じて酸洗を施して熱延鋼板とする。得られた熱延鋼板を冷間圧延して所定の厚さとし、さらに850〜1150℃で焼鈍した後、必要に応じて酸洗を施して冷延鋼板とする。あるいは更に、冷延鋼板の表面に歪を蓄積してσ相の析出を促進するため、軽圧下圧延を行なっても良い。
セパレータを製作する際に切削加工を施して溝を形成する場合は、熱延鋼板に切削加工を施し、プレス加工を施して溝を形成する場合は、冷延鋼板にプレス加工を施すことが好ましい。
σ相は、600〜1000℃の温度領域で析出するが、通常の熱間圧延と焼鈍,その後の冷却過程での析出は僅かである。セパレータ用フェライト系ステンレス鋼の表面に十分な量のσ相を析出させるためには、熱間圧延,冷間圧延の工程あるいはその後の加工の工程で所定の時効熱処理を施す必要がある。
σ相の析出によって、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼の加工性が劣化するので、時効熱処理はセパレータの形状に成形した後(すなわち切削加工あるいはプレス加工の後)で行なうことが好ましい。切削加工,プレス加工によって表面に歪みが蓄積されるので、時効熱処理にてσ相の析出が促進されるという効果も得られる。
σ相の析出量や析出速度は、セパレータ用フェライト系ステンレス鋼の成分や時効熱処理の時間,温度に応じて変化する。したがって、予め実験データや操業実績を解析して適宜設定する。ただし本発明者らの研究によれば、650〜900℃で5〜100時間の時効熱処理を施すと、面積率1%以上のσ相が析出する。
時効熱処理の後、酸洗等によって酸化スケールを除去すれば、σ相が表面に露出した接触抵抗の低いセパレータ用フェライト系ステンレス鋼が得られる。また、高い耐食性が要求される場合は、光輝焼鈍によって100nm(ナノメートル)以下のCrが濃化した緻密な酸化被膜(いわゆるBA皮膜)を生成させても良い。
転炉および2次精錬(SS−VOD法)によって表1に示す成分のフェライト系ステンレス鋼を溶製し、さらに連続鋳造法によって厚さ250mm のスラブとした。このスラブを1200℃に加熱した後、熱間圧延によって厚さ5mmの熱延ステンレス鋼板として焼鈍(900〜1150℃)および酸洗処理を施し、さらに冷間圧延と焼鈍(800〜1050℃)および酸洗を繰り返し、厚さ0.2mm とした。
Figure 0004967831
得られたセパレータ用フェライト系ステンレス鋼の板幅中央部かつ長手方向中央部から200mm×200mmの試験片を4〜6枚ずつ切り出した。試験片を、それぞれプレス加工によって、所定の形状を有するセパレータとした。次いで、2枚1組で表2に示す条件の時効熱処理を行ない、さらに450℃の溶融塩(NaOH:25質量%,NaNO3 :75質量%)に浸漬してスケール改質を行なった後、硝弗酸(硝酸6質量%,弗酸3質量%)で酸洗した。
各試験片を走査型電子顕微鏡(いわゆるSEM)で観察し、無作為に20視野で3000倍の写真を撮影して、σ相の面積率を求めた。その結果を表2に示す。なお、σ相の確認はSEMに付属の特性X線分析装置を用いた。
次に、図2に示すように2枚の試験片8を両面から同じ大きさの3枚のカーボンペーパ9(東レ製TGP-H-120)で交互に挟み、さらに銅板に金めっきを施した電極10を接触させ、単位面積当たり20kgf/cm2 (=1.96MPa)の圧力をかけて2枚のセパレータ間の抵抗を測定し、接触面積を乗じ、さらに接触面数(=2)で除した値を接触抵抗値とした。得られた接触抵抗値を表2に示す。なお、測定は位置を変えて4ケ所で行ない、その平均値を示す。また参考例として、表面に厚さ0.1μmの金めっきを施したSUS304製セパレータ(全厚さ0.3mm)およびグラファイト製セパレータ(全厚さ5mm)についても同様に測定した。
接触抵抗が低いセパレータについては、同じ熱処理を施した2枚のセパレータで単セルを構成し、その単セルを用いた発電特性試験を行なった。その手順を以下に説明する。
各セパレータ用フェライト系ステンレス鋼から切り出した6枚の試験片をセパレータの形状に加工し、時効熱処理と酸洗を施した。高分子膜,電極,ガス拡散層が一体化された有効面積50cm2 の膜−電極接合体(すなわちMEA,エレクトロケム社製FC50-MEA)を用いて図1に示す形状の単セルを作成した。空気流路6,水素流路7の溝は、高さ0.5mm,幅2mmの矩形として17列設けた。
アノード側には超高純度の水素(純度99.9999質量%)を80±1℃に保持したバブラで加湿して供給し、カソード側には空気を供給した。単セル本体の温度は80±1℃に保持した。その後、燃料電池の起動停止の繰り返しを模擬するために、開回路状態で1時間保持−出力電流密度0.4A/cm2 で1時間の運転を1サイクルとして200サイクル繰り返した。そして5サイクル目と200サイクル目の電流密度0.4A/cm2 での出力電圧を測定し、起動停止の繰り返しによる劣化を評価した。その結果を表2に示す。
参考例として、SUS304を上記と同一の形状に加工した後、表面に厚さ0.1μmの金めっきを施したステンレス製セパレータおよび板厚5mmのグラファイトを切削加工して同じ形状に加工したグラファイト製セパレータを用いて、発電特性を評価した。
Figure 0004967831
表2から明らかなように、時効熱処理によってσ相が面積率で1%以上析出したセパレータは、いずれも金めっきステンレス製セパレータと同等の接触抵抗を示した。これに対して時効熱処理を施していないセパレータや時効熱処理を施してもσ相の面積率が1%未満のセパレータは、接触抵抗が高かった。
σ相が面積率1%以上析出したセパレータについては、5サイクル後と200サイクル後の出力電圧が、金めっきステンレス製セパレータやグラファイト製セパレータと同等であった。一方、σ相の面積率が1%未満のセパレータでは、200サイクル後の発電特性が著しく劣化した。また、Cr,C,C+Nの含有量が本発明の範囲を外れるセパレータは、耐食性に劣るので、200サイクル後の発電特性が著しく劣化した。
なお、ここではプレス加工の後で時効熱処理を行なってσ相を析出させたが、セパレータの加工前に時効熱処理を行なっても良い。また所定の形状に加工する際には、切削加工やコイニング等を採用しても良い。
以上に説明したように、本発明によれば、従来から使用されている金めっきステンレス製セパレータやグラファイト製セパレータと同等に接触抵抗が低くかつ耐食性に優れたセパレータを得ることができる。従来の固体高分子形燃料電池は耐久性を考慮して高価なグラファイト製セパレータを使用していたが、本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼から製作した安価なセパレータを用いることによって、固体高分子形燃料電池の製造コストを削減できる。
なお、本発明のセパレータ用フェライト系ステンレス鋼は、固体高分子形燃料電池セパレータに限ることなく、導電性を有するステンレス製電気部材として様々な用途に使用できる。
固体高分子型燃料電池の単セルの例を模式的に示す斜視図である。 接触抵抗の測定方法を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 膜−電極接合体
2 ガス拡散層
3 ガス拡散層
4 セパレータ
5 セパレータ
6 空気流路
7 水素流路
8 試験片
9 カーボンペーパ
10 電極

Claims (2)

  1. Cを0.03質量%以下、Nを0.03質量%以下、C+Nを0.03質量%以下、Crを16.0〜45質量%含有し、さらに、Tiを2質量%以下、Nbを2質量%以下、Zrを2質量%以下、Vを2質量%以下、Moを7質量%以下、Wを7質量%以下、Niを4質量%以下、Siを3質量%以下、Mnを3質量%以下およびAlを0.5質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、表面に析出したσ相の面積率が1%以上であることを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼
  2. 固体高分子膜、電極、ガス拡散層およびセパレータを有し、前記セパレータが請求項1に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼からなることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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