JP4967397B2 - 固体高分子形燃料電池およびそのセパレータに好適なステンレス鋼 - Google Patents

固体高分子形燃料電池およびそのセパレータに好適なステンレス鋼 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子膜,電極,ガス拡散層およびセパレータからなる固体高分子形燃料電池に関するものであり、さらに固体高分子形燃料電池のセパレータとして使用するのに好適な、接触抵抗値が低くかつ耐久性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関するものである。
近年、地球環境保護の観点から、発電効率に優れ、二酸化炭素を排出しない燃料電池の開発が進められている。この燃料電池は、水素と酸素を反応させて電気を発生させるもので、その基本構造は、サンドイッチのような構造を有しており、電解質膜(イオン交換膜),2つの電極(燃料極と空気極),酸素(空気)と水素の拡散層,および2つのセパレータから構成されている。
燃料電池は、使用する電解質の種類に応じて、リン酸形,溶融炭酸塩形,固体酸化物形,アルカリ形,固体高分子形等が開発されている。これらの燃料電池の中で、固体高分子形燃料電池は、溶融炭酸塩形燃料電池やリン酸形燃料電池に比べて、
(a)運転温度が80℃程度と格段に低い、
(b)電池本体の軽量化,小型化が可能である、
(c)立ち上げが早く、燃料効率および出力密度が高い
等の利点を有している。そのため、固体高分子形燃料電池は、電気自動車の搭載用電源や家庭用,携帯用の小型分散型電源(定置型の小型発電機)として実用化に向けて、今日もっとも注目されている燃料電池の一つである。
固体高分子形燃料電池は、高分子膜を介して水素と酸素から電気を取り出す原理によるものである。その構造は、図1に示すように、高分子膜とその膜の表裏面に白金系触媒を担持したカーボンブラック等の電極材料を一体化した膜−電極接合体1(MEA:Membrane-Electrode Assembly,厚み:数10〜数100μm)を、カーボンクロス等のガス拡散層2,3およびセパレータ4,5によって挟み込み、これを単一の構成要素(単セル)として、セパレータ4とセパレータ5の間に起電力を生じさせるものである。このとき、ガス拡散層2,3は膜−電極接合体1と一体化される場合も多い。この単セルを数十個ないし数百個直列につないで燃料電池スタックを構成し、使用している。
セパレータには、単セル間を隔てる隔壁としての役割に加えて、
(A)発生した電子を運ぶ導電体、
(B)酸素(空気)や水素の流路(それぞれ図1中の空気流路6,水素流路7)、
(C)生成した水や排出ガスの排出路(それぞれ図1中の空気流路6,水素流路7)
としての機能が求められる。また、耐久性に関しては、自動車用の燃料電池では約5,000時間と想定されているが、家庭用の小型分散電源等として使用される定置型の燃料電池では約40,000時間と想定されており、自動車用に比べて格段の耐久性が要求される。
したがって、セパレータには次のような特性が求められる。電気伝導性に関して、セパレータとガス拡散層の間の接触抵抗が高くなると発電特性が低下するので、接触抵抗は極力低いことが望まれる。また、耐久性に関して、長期間の運転に耐えられる耐食性等の材料特性が要求される。
現在までに実用化されている固体高分子形燃料電池は、セパレータとしてカーボン素材を用いている。このカーボン製セパレータは、接触抵抗も比較的低く、腐食しないという利点がある。しかしながら、衝撃によって破損しやすく、小型化が困難で、かつ流路を形成するための加工コストが高いという欠点がある。特に加工コストの問題は、燃料電池普及の最大の障害となっている。そこで、カーボン素材にかわり金属素材、とりわけステンレス鋼を使用する試みがなされている。
たとえば特許文献1には、不動態皮膜を形成しやすい金属をセパレータとして用いる技術が開示されている。しかし不動態皮膜の形成は、接触抵抗の上昇を招くことになり、発電効率の低下につながる。このため、カーボン素材に比べて接触抵抗が高く、また耐食性が劣る等の改善すべき問題点が指摘されている。
また特許文献2には、SUS304等の金属セパレータの表面に金めっきを施すことによって、接触抵抗を低減し高出力を確保する技術が開示されている。しかし、薄い金めっきではピンホールの発生を防止するのが困難であり、逆に厚い金めっきではコストが上昇するという問題が残っている。
特許文献3には、フェライト系ステンレス鋼の基材にカーボン粉末を分散付着させて、導電性(接触抵抗)を改善したセパレータを得る技術が開示されている。しかしながらカーボンを用いた場合も、表面処理には相応のコストがかかることから、依然としてコストの問題が残っている。また、表面処理を施したセパレータは、組み立て時にキズ等が生じた場合に、耐食性が著しく低下するという問題点も指摘されている。
さらに、導電性析出物を利用してセパレータの接触抵抗を低減する試みがなされている。たとえば特許文献4には、M236型炭化物あるいはM2B型硼化物を表面に析出させたセパレータが開示されている。この技術では、十分な析出量を得るためにCあるいはBを多量に添加することが必要であり、またこれらの析出物は硬質であるから、セパレータの素材(鋼板)の製造性、あるいはセパレータに加工する際の成形性が著しく劣化するという問題がある。しかも、これらの炭化物,硼化物はCrを主体とするので、析出に伴ってCr欠乏層が形成され、耐食性を劣化させる惧れがある。
特許文献5には、導電性析出物としてラーベス相を利用する技術が開示されている。ラーベス相は、セパレータの導電性の向上に有効であるものの、燃料電池の起動停止を頻繁に繰り返すような運転を行なう場合には長期間にわたって優れた導電性を維持すること(耐久性の確保)は困難である。
特開平8-180883号公報 特開平10-228914号公報 特開2000-277133号公報 特開2000-214186号公報 特開2004-124197号公報
本発明は上記のような問題を解消し、長期間にわたって接触抵抗を低く保ち、優れた導電性を維持できる耐久性に優れた固体高分子形燃料電池、およびそのセパレータとして使用するのに好適なフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、セパレータの素材となるステンレス鋼の表面に析出するラーベス相の種類,寸法,分布密度を規定することによって、長期間にわたって(起動停止の回数が増加しても)優れた導電性を維持できる耐久性に優れた固体高分子形燃料電池、およびそのセパレータとして使用するのに好適なフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、起動停止を繰り返すことによって接触抵抗が増加していく現象について鋭意検討を行なった。その結果、セパレータの素材であるステンレス鋼の表面に形成される不動態皮膜が成長することによって接触抵抗が増加すること、不動態皮膜は空気極側で著しく成長することが判明した。さらに、特定の種類のラーベス相をステンレス鋼の表面に所定の寸法,分布密度で析出させることによって、不動態皮膜の成長に関わらず、長期間にわたって優れた導電性を維持できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、C:0.03質量%以下,N:0.03質量%以下を含有するとともにC含有量とN含有量の合計が0.03質量%以下を満足し、さらにSi:3質量%以下、Mn:1質量%以下、Al:0.2質量%以下、Cr:13〜45質量%を含み、Ti:2質量%以下、Nb:2質量%以下、Mo:7質量%以下、W:7質量%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を有するステンレス鋼であって、Ti含有量[%Ti](質量%),Nb含有量[%Nb](質量%),Mo含有量[%Mo](質量%),W含有量[%W](質量%)が下記の(1)式を満足し、かつ表面に粒径0.3μm以上の(Fe,Cr)2(Ti,Nb,Mo,W)型ラーベス相が1011個/m2以上存在するステンレス鋼である。
2[%Ti]+[%Nb]+[%Mo]+0.5[%W]≧1 ・・・(1)
た本発明は、固体高分子膜,電極,ガス拡散層およびセパレータからなる固体高分子形燃料電池であって、セパレータとして上記のステンレス鋼を用いる固体高分子形燃料電池である。
本発明の固体高分子形燃料電池においては、粒径0.3μm以上の(Fe,Cr)2(Ti,Nb,Mo,W)型ラーベス相が、セパレータの空気極側の表面に1011個/m2以上存在することが好ましい。
本発明によれば、従来のカーボンセパレータや金めっきステンレスセパレータと同等の低い接触抵抗を有し、かつ耐食性に優れ、特に固体高分子形燃料電池用セパレータとして好適なステンレス鋼を得ることができる。その結果、従来は耐久性を維持するために高価なカーボンセパレータを使用していた燃料電池に、安価なステンレス鋼セパレータを提供できるようになった。したがって、本発明のステンレス鋼を使用したセパレータを燃料電池に取り付けることによって、燃料電池のコストを低減することができる。
なお本発明のステンレス鋼は、燃料電池用セパレータのみならず導電性ステンレス鋼製電気部品としても広く使用できる。
まず本発明に係るステンレス鋼の成分の限定理由を説明する。
C:0.03質量%以下,N:0.03質量%以下,C+N:合計0.03質量%以下
C,Nは、いずれもステンレス鋼中のCrと化合物を形成し、粒界にCr炭窒化物を析出させる元素であり、ステンレス鋼の耐食性の劣化を招く。そのため、CとNの含有量は低いほど好ましい。発明者の研究によれば、C:0.03質量%以下,N:0.03質量%以下とすることによってステンレス鋼の耐食性の劣化を抑制できる。ただし、C含有量とN含有量が合計0.03質量%を超えると、ステンレス鋼を所定の形状に加工(たとえばプレス成形等)する際に割れが発生し易くなる。したがって、C:0.03質量%以下,N:0.03質量%以下かつC+N:合計0.03質量%以下とする。好ましくはC:0.015質量%以下,N:0.015質量%以下かつC+N:0.02質量%以下である。
Cr:13〜45質量%
Crは、ステンレス鋼として基本的な耐食性を確保するために必要な元素である。Cr含有量が13質量%未満では、セパレータとして長期間の使用に耐えられない。一方、45質量%を超えると、σ相の析出によって靭性が低下してステンレス鋼の製造性を低下させるとともに所定の形状に加工する際に割れが発生し易くなる。したがって、Crは13〜45質量%とする。好ましくは16〜35質量%である。
Ti:2質量%以下,Nb:2質量%以下,Mo:7質量%以下,W:7質量%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti,Nbは、いずれもステンレス鋼中のC,Nを炭窒化物として固定し、プレス成形性を改善するのに有効な元素である。またMo,Wは、いずれもステンレス鋼の耐食性を改善するのに有効な元素である。ところが、Ti含有量が2質量%,Nb含有量が2質量%,Mo含有量が7質量%,W含有量が7質量%を超えると、ステンレス鋼が脆化し、所定の形状にプレス成形する際に割れが発生し易くなる。したがって、Tiは2質量%以下,Nbは2質量%以下,Moは7質量%以下,Wは7質量%以下とする。
Ti,Nb,Mo,Wは、ステンレス鋼のプレス成形性や耐食性の改善のみならず、ステンレス鋼の表面にラーベス相を析出させる効果を発揮する元素である。発明者らの研究によれば、Ti含有量[%Ti](質量%),Nb含有量[%Nb](質量%),Mo含有量[%Mo](質量%),W含有量[%W](質量%)が下記の(1)式の範囲内であれば、(Fe,Cr)2(Ti,Nb,Mo,W)型ラーベス相がステンレス鋼の表面に析出して、電気伝導性が向上する。
2[%Ti]+[%Nb]+[%Mo]+0.5[%W]≧1 ・・・(1)
このラーベス相の粒径や分布密度については後述する。
さらに本発明のステンレス鋼は、Si,MnおよびAlの中から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
Si:3質量%以下
Siは、ステンレス鋼の溶製工程で脱酸のために添加される元素である。しかしSi含有量が3質量%を超えると、ステンレス鋼が硬質化して延性の劣化を招き、ステンレス鋼の製造性を低下させるとともに所定の形状に加工する際に割れが発生し易くなる。したがって、Siは3質量%以下が好ましい。また、Siはラーベス相の析出を促進する元素である。Si含有量が0.05質量%未満では、ラーベス相の析出促進の効果は得られない。したがって、Siは0.05〜3質量%の範囲内が一層好ましい。より好ましくは0.1〜1.5質量%である。
Mn:1質量%以下
Mnは、ステンレス鋼中のSを硫化物として固定することによってSの粒界偏析を抑制し、ステンレス鋼の製造工程(たとえば熱間圧延)における割れの発生を防止するのに有効な元素である。Mn含有量が1質量%を超えると、その効果が飽和し、コストアップとなる。したがって、Mnは1質量%以下が好ましい。より好ましくは0.001〜0.8質量%である。
Al:0.2質量%以下
Alは、ステンレス鋼の溶製工程で脱酸のために添加される元素である。Al含有量が0.2質量%を超えると、その効果が飽和し、コストアップとなる。したがって、Alは0.2質量%以下が好ましい。より好ましくは0.01〜0.2質量%である。
さらに本発明のステンレス鋼は、ステンレス鋼の製造工程における熱間加工性を改善するためにCa,Mg,B,希土類元素を添加しても良い。Ca,Mg,B,希土類元素の添加量は、各々0.1質量%以下が好ましい。また、ステンレス鋼の耐食性を改善するためにNi,Cuを添加しても良い。Niの添加量は1質量%以下,Cuの添加量は5質量%以下が好ましい。
次に、本発明に係るステンレス鋼の表面に析出するラーベス相を説明する。
ラーベス相は、鋼材の成分に応じて様々な形で析出するが、本発明のステンレス鋼では(Fe,Cr)2(Ti,Nb,Mo,W)型ラーベス相が析出する。ステンレス鋼の表面にラーベス相が析出すれば、接触抵抗を低減する効果が発揮される。ステンレス鋼をセパレータとして使用すると空気極側の不動態皮膜が著しく成長するが、粒径0.3μm以上のラーベス相がステンレス鋼の表面に1011個/m2以上の分布密度で存在することによって導電性を確保することができる。
次に、本発明に係るステンレス鋼の製造方法を説明する。
ステンレス鋼を溶製する手段は、特に限定せず、従来から知られている装置(たとえば転炉,電気炉等)を使用して溶融状態のステンレス鋼の1次精錬を行ない、さらに必要に応じて強攪拌かつ真空雰囲気中で2次精錬(たとえばSS−VOD法等)を行なうのが好ましい。
こうして溶製された溶融状態のステンレス鋼を鋳込む手段は、特に限定せず、従来から知られている連続鋳造法や造塊法を使用する。ただし、ステンレス鋼の生産性向上や品質改善の観点から、連続鋳造法を採用するのが好ましい。
セパレータに加工する工程は、切削加工を採用する場合とプレス成形を採用する場合で異なる。切削加工を採用する場合は、得られたスラブを熱間圧延した後、焼鈍(800〜1150℃)し、さらに必要に応じて酸洗を行ない、切削加工を施して溝を形成することによってセパレータを製造する。プレス成形を採用する場合は、スラブに熱間圧延と冷間圧延を施して所定の厚さのステンレス鋼板とした後、焼鈍(800〜1150℃)し、さらに必要に応じて酸洗を行ない、プレス成形によってセパレータを製造する。
ラーベス相は500〜900℃の温度域で析出するが、熱間圧延や焼鈍で析出するラーベス相は僅かである。ステンレス鋼の表面に十分な量のラーベス相を析出させるためには、ステンレス鋼スラブをセパレータに加工する過程(セパレータへの加工後も含む)で所定の条件で時効熱処理を施す。ただし、熱間圧延(あるいは冷間圧延)を行なう前に時効熱処理を施すと、ラーベス相が析出することによってステンレス鋼の加工性が劣化する。したがってステンレス鋼の加工性を維持するために、最終圧延が終了した後で時効熱処理を施すのが好ましい。セパレータの加工後に時効熱処理を施すのがさらに好ましい。この場合、切削,プレス成形等によって表面に歪みが蓄積されたステンレス鋼に時効熱処理を施すことによって、ラーベス相の析出が促進されるという効果も得られる。
ラーベス相を安定して析出させるためには、時効熱処理を700〜850℃の温度域で行なうのが好ましい。保持時間は、実験データや操業データに基づいて適宜設定する。本発明のステンレス鋼では、800℃で10時間保持することによって、表面に粒径0.3μm以上のラーベス相を1011個/m2以上の分布密度で析出させることができる。
酸洗は、時効熱処理によって生成するステンレス鋼の表面の酸化物(いわゆるスケール)を除去して、ラーベス相を露出するために行なう。
また、耐久性が厳しく要求される用途に使用するセパレータを製造する際には、時効熱処理,焼鈍に加えて、光輝焼鈍を行なって厚さ100nm(ナノメートル)以下のBA皮膜を生成させるのが好ましい。
表1に示す成分のステンレス鋼を1次精錬(転炉)および2次精錬(SS−VOD)によって溶製した後、連続鋳造にて厚さ250mmのスラブを製造した。
Figure 0004967397
次いで、各鋼種のスラブを1150℃以上に加熱し、熱間圧延にて厚さ4mmのステレンス鋼板とした。これらのステンレス鋼板を焼鈍した後、酸洗を施し、さらに冷間圧延と焼鈍,酸洗を繰り返し行なって厚さ0.2mmの冷延焼鈍板とした。
次に、冷延焼鈍板の板幅方向中央部かつ長手方向中央部から試験片(200mm×200mm)を、それぞれ6枚ずつ切り出し、プレス成形にてセパレータを作製した。各鋼種6枚ずつのセパレータのうち2枚は時効熱処理を施さず、残り4枚を2枚1組にして時効熱処理(600℃×50時間,800℃×10時間)を施した後、450℃の溶融塩(NaOH:25質量%,NaNO3:75質量%)に浸漬してスケールの改質を行ない、さらに硝弗酸(硝酸6質量%,弗酸:3質量%)で酸洗を行なった。
このようにして得られた各セパレータの接触抵抗および表面に析出したラーベス相の粒径,分布密度を測定した。また、接触抵抗の低いセパレータは、同じ条件で時効熱処理を施した2枚を1組にして単セルを構成し、その単セルで発電特性を調査した。その結果を表2,3に示す。
Figure 0004967397
Figure 0004967397
表2,3に示すデータの測定方法は以下の通りである。
ラーベス相の粒径,分布密度の測定
走査型電子顕微鏡(いわゆるSEM)を用いて各セパレータの表面を観察し、2万倍の写真を無作為に20視野ずつ撮影した。写真に撮影されたラーベス相の各粒子の円相当径を測定し、その円相当径が0.3μm以上の粒子の個数を計測して分布密度(個/m2)を算出した。表2,3に示す数値は、その平均値である。なお、ラーベス相の確認は、SEMに付属している特性X線分析装置を使用した。
接触抵抗の測定
各鋼種の時効熱処理を施さなかったセパレータ2枚を1組とし、同じ条件で時効熱処理を施したセパレータをそれぞれ2枚1組として接触抵抗を測定した。接触抵抗の測定は、図2に示すように、2枚のセパレータ8を両面から同じ面積を有する3枚のカーボンペーパ9(東レ製TGP-H-120)で交互に挟み、さらに銅板に金めっきを施した電極10を接触させ、単位面積あたり20kgf/cm2の圧力を加えて、2枚のセパレータ8間の抵抗を測定した。この測定値に接触面積を乗じ、さらに接触面の数(=2)で除した値を接触抵抗とした。
このような接触抵抗の測定を各組み合わせで4回ずつ行ない、その平均値を表2,3に示す。
また参考例として、厚さ約0.1μmの金めっきを施したステンレス鋼(SUS304)製セパレータ(厚さ0.3mm)、およびグラファイト製セパレータ(厚さ5mm)の接触抵抗を同様の方法で測定した。その結果を表3に示す。
発電特性の調査
各鋼種の時効熱処理を施さなかったセパレータ2枚を1組とし、同じ条件で時効熱処理を施したセパレータをそれぞれ2枚1組として、図1に示すような単セルを作製した。空気流路6および水素流路7の溝は、高さ0.5mm,幅2mmの矩形形とし、全部で17列を配置した。
この単セルの空気流路6(カソード側)には空気を供給し、水素流路7(アノード側)には超高純度水素(純度99.9999体積%)を供給した。これらの空気および超高純度水素は、80±1℃に保持したバブラにて加湿して単セルに供給した。また単セルも80±1℃に保持した。
その後、燃料電池の起動停止を模擬するために、開回路状態で1時間保持し出力電流密度0.4A/cm2で1時間運転した後で開回路状態に戻すというサイクルを繰り返し200回行なった。そして、5サイクル目と200サイクル目の電流密度0.4A/cm2における出力電圧を測定した。その結果を表2,3に示す。
また参考例として、厚さ約0.1μmの金めっきを施したステンレス鋼(SUS304)製セパレータ(厚さ0.3mm)、およびグラファイト製セパレータ(厚さ5mm)を用いて作製した単セルの発電特性を同様の方法で調査した。その結果を表3に示す。
表2,3から明らかなように、ラーベス相が1011個/m2以上の密度で分布するセパレータは、いずれも金めっきを施したステンレス鋼製セパレータと同等の低い接触抵抗を示す。これに対して、時効熱処理を施さなかったセパレータは、ラーベス相の分布密度が低くなり、接触抵抗が高い。
また、時効熱処理を施したにも関わらずラーベス相の分布密度が1011個/m2未満のセパレータは、ステンレス鋼製セパレータと同等の低い接触抵抗を示すが、200サイクル目の発電特性が著しく劣化する。
C含有量,Cr含有量,CとNの合計含有量が本発明の範囲を外れるセパレータは、耐食性が劣るので、200サイクル目の発電特性が著しく劣化する。
このようにして本発明のステンレス鋼を用いて作製したセパレータは、接触抵抗が低くかつ耐久性に優れていることが確認された。
なお、ここではプレス成形の後で時効熱処理を行なってラーベス相を析出させる例を示したが、プレス成形の前に時効熱処理を行なっても良い。また、セパレータの形状に加工する際には、プレス成形のみならず切削加工やコイニングの手法を用いても良い。
固体高分子形燃料電池の例を模式的に示す斜視図である。 接触抵抗の測定に用いた試料を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 膜−電極接合体
2 ガス拡散層
3 ガス拡散層
4 セパレータ
5 セパレータ
6 空気流路
7 水素流路
8 セパレータ
9 カーボンペーパ
10 電極

Claims (3)

  1. C:0.03質量%以下、N:0.03質量%以下を含有するとともにC含有量とN含有量の合計が0.03質量%以下を満足し、さらにSi:3質量%以下、Mn:1質量%以下、Al:0.2質量%以下、Cr:13〜45質量%を含み、Ti:2質量%以下、Nb:2質量%以下、Mo:7質量%以下、W:7質量%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を有するステンレス鋼であって、Ti含有量[%Ti]、Nb含有量[%Nb]、Mo含有量[%Mo]、W含有量[%W]が下記の(1)式を満足し、かつ表面に粒径0.3μm以上の(Fe,Cr)2(Ti,Nb,Mo,W)型ラーベス相が1011個/m2以上存在することを特徴とするステンレス鋼。

    2[%Ti]+[%Nb]+[%Mo]+0.5[%W]≧1 ・・・(1)
    [%Ti]:Ti含有量(質量%)
    [%Nb]:Nb含有量(質量%)
    [%Mo]:Mo含有量(質量%)
    [%W]:W含有量(質量%)
  2. 固体高分子膜、電極、ガス拡散層およびセパレータからなる固体高分子形燃料電池であって、前記セパレータとして請求項1に記載のステンレス鋼を用いることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
  3. 前記セパレータの空気極側の表面に、粒径0.3μm以上の(Fe,Cr)2(Ti,Nb,Mo,W)型ラーベス相が1011個/m2以上存在することを特徴とする請求項に記載の固体高分子型燃料電池。
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