〔実施の形態1〕
本実施の形態では、主として健康器具として利用される(筆記しなくとも指を効果的に動かせる)指動作補助具について説明する。
図1(a)は、本実施の形態に係る指動作補助具の斜視図であり、(b)はその断面図である。本指動作補助具1は、互いに対峙する上壁部12および下壁部22と、挟持壁部30と、把握部23とを備える。
上壁部12および下壁部22は、2枚の長方形の板状部材を対向させ、互いに逆方向に緩やかに反らせた構成となっている。挟持壁部30も長方形の板状部材であり、この上下壁部12・22を所定の間隔をおいて連結している。ここで、上下壁部12・22と挟持壁部30との交わり部分は上下壁部12・22の中央部分を横切るとともに、該交わり部分における上壁部12の法線および下壁部22の法線がほぼ直交する。これにより、上壁部12および下壁部22に挟まれた空間は挟持壁部30によって2つの凹部に区切られ、2つの凹部それぞれに指が挿入される。
なお、以下では、下壁部22から上壁部12へ向かう方向を上方向、上壁部12から下壁部22へ向かう方向を下方向、上下壁12・22を構成する板状部材の長手方向を左右方向と定義する。例えば、上壁部12は上に反った(下に凸)形状である。
また、上壁部12と挟持壁部30との交わり部分によって上壁部12は2つの領域に分けることができるが、その一方を第1上壁部12a、他方を第2上壁部12bとする。同様に、下壁部22と挟持壁部30との交わり部分によって下壁部22を2つの領域に分けることができ、その一方を第1下壁部22a、他方を第2下壁部22bとする。さらに、第1上壁部12aあるいは第2上壁部12bについて、その左右方向の長さ(円周に沿った長さ)を第1上壁部12aあるいは第2上壁部12bの幅と称する。同様に、第1下壁部22aあるいは第2下壁部22bについて、その左右方向の長さ(円周に沿った長さ)を第1下壁部22aあるいは第2下壁部22bの幅と称する。また、挟持壁部30の上下方向の長さを上下壁部間の距離と称する。また、第1上壁部12aおよび挟持壁部30並びに第1下壁部22aで囲まれた凹部空間を第1指挿入部25a、第2上壁部12bおよび挟持壁部30並びに第2下壁部22bで囲まれた凹部空間を第2指挿入部25bとする。
下壁部22の下側には球体の把握部23が固着されており、その表面の一部が下壁部22の下面と面一(つらいち)となっている。把握部23の大きさは、5本の指で全体を余裕で取り囲める大きさ〜テニスボール大が好ましい。その素材にはゴム、ウレタン、発泡体(スポンジ)あるいはシリコン、軟性樹脂等の弾性素材が好ましい。また、表面をゴムやウレタン製にして中に気体や液体を詰めたような構成であっても構わない。
第1上壁部12aおよび第2上壁部12aの幅は人差指の幅より幾分短く、第1下壁部22aおよび第2下壁部22bの幅は人差指の幅より幾分長い程度とする。挟持壁部30(上下壁部12・22)の指挿入方向の長さは、人差指あるいは中指の付け根から第1関節までが十分におさまる程度とする。また、上下壁部間の距離(挟持壁部30の上下方向の長さ)は、人差指あるいは中指の付け根から第1関節までの厚みより若干大きい程度とする。なお、上壁部12、下壁部22あるいは挟持壁部30の材質としては、例えば、プラスチック樹脂あるいは木を挙げることができる。
以下に、図2(a)〜(d)および図3(a)〜(c)を参照して本指動作補助具1の一使用形態を説明する。
ユーザは、本指動作補助具1の第1指挿入部25aおよび第2指挿入部25b(図1(a)(b)参照)に、隣り合う指(例えば、人差指および中指)を挿入し、例えば、人差指の付け根から第1関節までの大半が第1指挿入部25aにおさまり、中指の付け根から第1関節までの大半が第2指挿入部25bに収まるようにする(図2(a)参照)。このとき、人差指および中指の付け根部分で持壁部30を軽く挟み、人差指の上に第1上壁部12aが位置するとともにその下に第1下壁部22aが位置し、かつ、中指の上に第2上壁部12bが位置するとともにその下に第2下壁部22bが位置する格好となる(パーの状態、図2(b)参照)。なお、上壁部12が上に反った形状であるため、指の大きなユーザであっても窮屈感を感じることなく、また、指の小さなユーザであってもフィット感を失うことなく、第1および第2指挿入部25a・25bに各指を挿入できる。
この状態でユーザは各指を曲げてゆき、人差指および中指の第1関節から指先までの部分および他の3本の指(親指・薬指・小指)を把握部23の表面に接触させた(把握部23に各指をおいた状態)後徐々に各指をもって弾性体である把握部23を握ってゆく(グーの状態、図2(c)参照)。把握部23がある程度の小ささになるまで握りしめれば、今度は各指を開いてゆき、図2(b)のパーの状態とする。また、指を開くときに親指、小指および薬指を閉じておけばチョキの状態(図2(d))をすることができる。
このパー、グー、チョキの状態(動作)を適宜取り混ぜて繰り返すことで、5本の指を効果的に動かすことができ、脳の活性化を図ることができる。
ここで、本指動作補助具1を装着すれば、上記のとおり、人差指および中指で持壁部30を挟み、一方の指の上に第1上壁部12aが位置するとともにその下に第1下壁部22aが位置し、かつ、他方の指の上に第2上壁部12bが位置するとともにその下に第2下壁部22bが位置する格好となる。
したがって、一旦本指動作補助具1を装着すれば、各指を屈伸(グーおよびパーあるいはチョキ)させるのはもちろん、それを激しく繰り返しても手をどの方向に向けても(裏返しても)、本指動作補助具1が指(手)から外れることがない。しかも、その装着は2本の指を第1および第2指挿入部25a・25bに挿入するだけであり、極めて容易である。すなわち、本指動作補助具1によれば、脳の活性化に有効な指動作を手軽かつ効果的に行うことができる。
なお、上記動作を何度か繰り返したら、本指動作補助具1の挿入指を変えるとさらに効果的である。例えば、図3(a)に示すように、第1指挿入部25aおよび第2指挿入部25bに薬指および小指を挿入し、同様に上記各動作(グー、チョキ、パー)を行う。この場合、各指の動きは、本指動作補助具1を人差指および中指に挿入した場合と全く異なるため、さらなる脳の活性化を図ることができる。また、左右の手それぞれに本指動作補助具1を装着し、上記各動作を繰り返すこともできるし、このとき左右の腕を動かしながら(例えば、∞の字を描くように振りながら)行えば一層効果的である。
また、図3(b)(c)に示すように、1つの手に本指動作補助具1を2個同時装着して使用することも可能である。例えば、一方の指動作補助具1(把握部23が小さいもの)を人差指および中指を挿入し、もう一方の指動作補助具1(把握部23がより小さいもの)を薬指および小指に挿入して上記各動作(グー、チョキ、パー)を行う。この場合、各指の動きが、指動作補助具1を1つだけ装着した場合より複雑となるため、さらなる脳の活性化を図ることができる。
なお、指動作補助具1を筆記具の持ち方矯正具として用いる場合は以下のように使用する。
例えば、鉛筆を持つ場合、図2(a)の状態の後、ユーザは各指を曲げて親指、人差指および中指で鉛筆下部の所定ポイントを挟むとともに、第1下壁部22aの端部(指挿入方向の端部)に、筆記具上部の所定ポイントを載せる(引っ掛ける)。このとき、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部を軽く握る感じになる。これにより、手の内側に適当な空間がいわば強制的にでき、また、自然と人差指、親指の関節が丸みをもつようになる。したがって、課題に記載した、ポイント1(c)やポイント2(b)等を極めて効果的に(いわば強制的に)習得させることができる。さらに、この正しい持ち方で筆記すれば、上記した16個の関節すべてが効果的に動き、脳の活性化を高めることができる。
以下に、図4(a)(b)〜図6(a)(b)を参照して、本実施の形態にかかる指動作補助具の変形構成例を説明する。
本実施の形態においては、図5(c)に示されるように、把握部23の表面に多数の突起(刺激用表面突起)55を設けても良い。こうすれば、ユーザが把握部23を握ったときに各指および手のひらに刺激が与えられ、脳活性化効果が一層高められる。また、把握部23の内部に磁性体や人間に良い効果を及ぼす鉱物等(図示せず)を設けても良い。こうすれば、把握部23の周囲に発生する磁界等によって手の血流を一層よくする等の付加的効果が得られる。
また、本実施の形態においては、図4(a)に示されるように、把握部23を下壁部22に固着せず、取り外し可能にしておくこともできる。この場合、例えば、下壁部22下面の中央部分(下壁部22を構成する板状部材の重心近傍)に、下向きに突出する交換用凸部26を設けておく。これに対応して、把握部23には把握部交換用凹部27を設けておく。把握部23に、大きさ、弾性力あるいは素材等が異なる様々な種類を用意しておけば、把握部23を交換(下壁部22から着脱)するだけで各ユーザの体格(手や指の大きさ、握力)や好みに対応できる。加えて、指動作自体(およびその効果)にもバリエーションをつけることができる。
この把握部交換用凸部26の構造例としては、図4(a)に示すように、例えば、頸部26aと鰓(えら)部26pを有する球状の頭部26bとを設けておく。一方、把握部交換用凹部27には、頸部26aに対応する開口孔27aと、頭部26bに対応する、球状の空間部27bとを設けておく。こうすれば、把握部交換用凸部26を把握部交換用凹部27に差し込んだとき、頭部26bが空間部27bに嵌まり込み、使用中に把握部23に力(例えば下向きの遠心力等)がかかっても空間部27bの入口部分が鰓部26pにひっかかる。これにより、本指動作補助具1の使用中に把握部23が下壁部22から抜けてしまうといった問題を回避できる。
また、本指動作補助具1においては、上下壁部間の距離を調節可能に構成することもできる。この場合、図4(b)に示すように、挟持壁部30を分離して、上挟持壁部30aと、これより厚みの大きい下挟持壁部30bとで構成し、上壁部12および上挟持壁部30aを一体化するとともに下壁部22および下挟持壁部30bを一体化する。そして、上挟持壁部30a上部の両側面に、上下方向に所定の間隔をおいて複数の凸部31を設けておく。この凸部31は、指挿入方向に平行な畝状突起であっても構わない。一方、下挟持壁部30bには、その上面から下へ掘り下げられ(上下方向の深みを持ち)、指挿入方向に沿って伸びる溝32を設ける。この溝32の幅(左右方向の幅)は上挟持壁部30aの厚みに対応するものとする。さらに、この溝32の左右2つの壁面に、左右方向(溝の中心)に出っ張ったストッパ41a・41bを形成しておく。なお、上記のように凸部31が畝状突起であれば、ストッパ41a・41bも(指挿入方向に沿って伸びる)畝状となる。
こうしておけば、上挟持壁部30aを、下挟持壁部30bに形成された溝32に差し込んだときに、上挟持壁部30aの凸部31と溝32のストッパ41a・41bとが係合し、上壁部12および下壁部22を連結することができる。そして、ストッパ41a・41bに嵌めこむ凸部31を適宜変更することで、上下壁部間の距離を自在に調節できる。これにより、各ユーザの体格(指の厚み)や好み(指動作補助具のフィット感)に対応することができる。
なお、上記把握部23の形状は球体に限定されず、例えば、楕円球体(たまご型、図5(b)参照)や曲面をもつ他の形状、あるいは多面体(正12面体等)形状であっても構わない。また、上壁部12は上方向に反った形状であるがこれに限定されず、図5(a)のように、平板状であっても構わない。また、第1上壁部12a(第2上壁部12b)と第1下壁部22a(第2下壁部22b)の幅についても、上記のように第1下壁部22a(第2下壁部22b)の方が広い構成に限定されない。図5(a)のように、第1上壁部12a(第2上壁部12b)と第1下壁部22a(第2下壁部22b)の幅がほぼ同じ幅であっても構わない。また、下壁部22はプラスチック等の硬質素材でも良いが、より強く指に接触する部分であるため、ゴムや軟性樹脂等の柔らかい材質を用いることが非常に好ましい。
また、上壁部12の左右両端部と下壁部22の左右方向の両端部とをそれぞれ連結する左右2つの端挟持壁部を設けても構わない。この場合、本指動作補助具1の上部(把握部23以外の部分)の断面は、「日」の字を90度回転した形状となる。この端挟持壁部を設けることで、指動作補助具1をより確かに各指に装着できる。また、この端挟持壁部の素材にはゴム等の柔らかいものを用いることが好ましい。
また、上記の指動作補助具1では下壁部22の下面に把握部23を固着あるいは把握部交換用凸部26にて取り付けた構成を説明したがこれに限定されない。例えば、図6(a)に示す本指動作補助具10のように、下壁部22を設けることなく、前記上壁部12と同様の形状のストッパ壁部52と、把握部23と、このストッパ壁部52および把握部23を、所定間隔をおいて連結する挟持壁部30とで構成しても構わない。
この場合、挟持壁部30に直接把握部23を取り付けても良い。すなわち、図6(b)に示すように、挟持壁部30に、下向きに突出する把握部交換用凸部を設けておき、把握部23には把握部交換用凹部を設けておけばよい。
また、下壁部22を設けない場合には、挟持壁部30と把握部23とを同一素材(例えば、ゴム)を用いて一体形成する構成も可能である。また、ストッパ壁部52と、挟持壁部30と、把握部23とをすべて同一素材(例えば、ゴム等の柔らかい素材)を用いて一体形成することも可能である。
なお、この本指動作補助具10(図6(a))の使用方法は、上記した指動作補助具1と同様である。すなわち、ストッパ壁部52、挟持壁部30および把握部23で囲まれる2つの凹部空間に2本の指を挿入すればよい。下壁部22を省略することで、指の屈伸の際に指に下壁部22が触れることがなくなり、より快適に(違和感を感じることなく)本指動作補助具を使用できる。また各部を一体化することで製造コストを削減することもできる。
なお、本実施の形態1の技術思想には、例えば、指1本に装着可能なもの(例えば、ゴム等で形成された幅広のリング状のもの)や複数の指に装着可能なもの(例えば、手袋状のもの)に、把握部(例えば、球体、楕円球体、半球体、多面体等の弾性体)を取り付けあるいは一体化した構造物が含まれる。
〔実施の形態2〕
本実施の形態では、主として筆記具や箸等を正しく持つことで各指を効果的に動作させる指動作補助具(兼筆記具等の持ち方矯正具)について説明する。
図7(a)は、本実施の形態に係る指動作補助具の斜視図であり、(b)はその断面図である。本指動作補助具101は、互いに対峙する上壁部112および下壁部122と、挟持壁部130と、把握部123とを備える。
上壁部112および下壁部122は、2枚の長方形の板状部材を対向させ、互いに逆方向に緩やかに反らせた構成となっている。挟持壁部130も長方形の板状部材であり、この上下壁部112・122を所定の間隔をおいて連結している。ここで、上下壁部112・122と挟持壁部130との交わり部分は上下壁部112・122の中央部分を横切るとともに、該交わり部分における上壁部112の法線および下壁部122の法線がほぼ直交する。これにより、上壁部112および下壁部122に挟まれた空間は挟持壁部130によって2つの凹部に区切られ、2つの凹部それぞれに指が挿入される。
なお、以下では、下壁部122から上壁部112へ向かう方向を上方向、上壁部112から下壁部122へ向かう方向を下方向、上下壁112・122を構成する板状部材の長手方向を左右方向と定義する。例えば、上壁部112は上に沿った(下に凸)形状である。
また、上壁部112と挟持壁部130との交わり部分によって上壁部112は2つの領域に分けることができるが、その一方を第1上壁部112a、他方を第2上壁部112bとする。同様に、下壁部122と挟持壁部130との交わり部分によって下壁部122を2つの領域に分けることができ、その一方を第1下壁部122a、他方を第2下壁部122bとする。さらに、第1上壁部112aあるいは第2上壁部112bについて、その左右方向の長さ(円周に沿った長さ)を第1上壁部112aあるいは第2上壁部112bの幅と称する。また、挟持壁部130の上下方向の長さを上下壁部間の距離と称する。また、第1上壁部112aおよび挟持壁部130並びに第1下壁部122aで囲まれた凹部空間を第1指挿入部(人差指挿入部)125a、第2上壁部112bおよび挟持壁部130並びに第2下壁部122bで囲まれた凹部空間を第2指挿入部(中指挿入部)125bとする。
下壁部122の下側には球体の把握部123が設けられており、その表面の一部が下壁部122の下面と面一(つらいち)となっている。把握部123の大きさは、5本の指でその大半を取り囲める大きさである。把握部123の素材にはゴム、ウレタン、発泡体(スポンジ)あるいはシリコン等の弾性素材を用いることが好ましい。また、表面をゴムやウレタン製にして中に気体や液体を詰めたような構成であっても構わないし、木やプラスチック等、弾性のない素材を用いることも可能である。
第1上壁部112aおよび第2上壁部112aの幅は人差指の幅より幾分短く、第1下壁部122aの幅は人差指の幅より十分長く、第2下壁部122bの幅は人差指の幅より若干長い程度とする。これにより、第1下壁部122aには指が接触しない余剰領域122yができることになり、その端部(指を挿入する向きの端部)に斜め窪み155が形成されている。
挟持壁部130(上下壁部112・122)の指挿入方向の長さは、人差指あるいは中指の付け根から第1関節までが十分におさまる程度とする。また、上下壁部間の距離(挟持壁部130の上下方向の長さ)は、人差指あるいは中指の付け根から第1関節までの厚みより若干大きい程度とする。
以下に、本指動作補助具101の一使用形態を説明する。
ユーザは、本指動作補助具101の第1指挿入部125aおよび第2指挿入部125bに、人差指および中指を挿入し、人差指の付け根から第1関節までの大半が第1指挿入部125aにおさまり、中指の付け根から第1関節までの大半が第2指挿入部125bにおさまるようにする。このとき、人差指および中指で持壁部130を挟み、人差指の上に第1上壁部112aが位置するとともにその下に第1下壁部122aが位置し、かつ、中指の上に第2上壁部112bが位置するとともにその下に第2下壁部122bが位置する格好となる。なお、上壁部112が上に反った形状であるため、指の大きなユーザであっても窮屈感を感じることなく、また、指の小さなユーザであってもフィット感を失うことなく、第1および第2指挿入部125a・125bに各指を挿入できる。
ついで、鉛筆を持つ場合には、図8(a)に示すように、ユーザは各指を曲げて親指、人差指および中指で鉛筆下部の所定ポイントW1を挟むとともに、第1下壁部122aに形成された斜め窪み155に鉛筆上部の所定ポイントW2を載せる。このとき、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部123をわずかに(触れる程度)握り、鉛筆と紙面との角度を50〜60度にする。なお、ボールペンやシャープペンシルの場合は、図8(b)に示すように、把握部123を鉛筆の場合より若干強めに握ることで、鉛筆と紙面との角度を70〜80度にできる。
これにより、手の内側に適当な空間がいわば強制的にでき、また、自然と人差指、親指の関節が丸みをもつようになる。したがって、課題に記載した、「中指、薬指、小指は軽く内側に曲げ、手の内側は卵を握った状態にすること(ポイント1(c))」や「人差指、親指に力を入れすぎないで、それらの関節が丸みを持つようにすること(ポイント2(b))を極めて効果的に(いわば強制的に)習得させることができる。加えて、ユーザが把握部123の握る強さを変えることで、鉛筆にもボールペン・シャープペンンシル等にも対応できる。さらに、この正しい持ち方で筆記すれば、上記した16個の関節すべてが効果的に動き、脳の活性化を高めることができる。
また、図8(c)に示すように、箸C1・C2を持つ場合、ユーザは各指を曲げて親指で2本の箸C1・C2の上部を押さえるとともに、人差指および中指で一方の箸C1を挟み、薬指で他方の箸C2を支え、かつ、人差指および中指で挟んだほうの箸C1の上部を斜め窪み155に載せる。このとき、親指、中指、薬指および掌の一部にて把握部123を軽く握る感じになり、容易にかつ正しく箸をもつことができる。このようにして食事すれば、上記した16個の関節すべてが効果的に動き、脳の活性化を高めることができる。
ついで、図9(a)に示すように、筆を持つ場合、ユーザは各指を曲げて親指、人差指および中指で筆中ごろの所定ポイントW1を挟むとともに、第1下壁部122aに形成された斜め窪み155に筆上部の所定ポイントW2を接触させる。このとき、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部123を軽く握る感じになる。これにより、ユーザの手の内側に適当な空間がいわば強制的にでき、正しく筆を持つことができる。
なお、本指動作補助具101を、中指および薬指に挟みかえる(指動作補助具101の第1指挿入部125aおよび第2指挿入部125bに、中指および薬指を挿入する)と、筆と紙面との角度を変えることができる。例えば、書道流儀等によって筆と紙面の角度を変えたい場合、本指動作補助具101を挟む(装着する)指を変更する(例えば、中指および薬指とする、図9(b)参照)あるいは把握部123の握る強さを変えるだけでこれに対応することができる。さらに、この正しい持ち方で筆記すれば、上記した16個の関節すべてが効果的に動き、脳の活性化を高めることができる。
また、本実施の形態においては、図10(b)に示されるように、下壁部122下面の中央部分(下壁部122を構成する板状部材の重心近傍)に、下向きに突出する把握部交換用凸部126を設けておくことが好ましい。これに対応して、把握部123には把握部交換用凹部27を設けておく。把握部123に、大きさ、弾性力あるいは素材等が異なる様々な種類を用意しておけば、把握部123だけを交換(下壁部122から着脱)するだけでユーザの体格(手や指の大きさ)や好みあるいは筆記流儀に対応できる。
この把握部交換用凸部126の構造としては、図10(b)に示すように、例えば、頸部126aと鰓部126pを有する球状の頭部126bとを設けておく。一方、把握部交換用凹部127には、頸部126aに対応する開口孔127aと、頭部126bに対応する、球状の空間部127bとを設けておく。こうすれば、把握部交換用凸部126を把握部交換用凹部127に差し込んだとき、頭部126bが空間部127bに嵌まり込み、使用中に把握部123に力(例えば下向きの遠心力等)がかかっても空間部127bの入口部分が鰓部126pにひっかかる。これにより、本指動作補助具101の使用中に把握部123が下壁部122から抜けてしまうといった問題を回避できる。
また、本実施の形態においては、本指動作補助具101と筆記具や箸等との位置関係が決まっているため、図10(a)に示すように、把握部123にあらかじめ筆記具や箸等の位置設定用溝部133を形成しておいても良い。位置設定用溝部133は、第1下壁部122aの斜め窪み155から把握部123における人差指の指先接触位置近傍に向けて形成される。この位置設定用溝部133の形状は、筆記具(鉛筆、ボールペン等)や箸等様々な太さのものに対応すべく、その断面がほぼ半円あるいはU字型になるように構成することが好ましい。また、筆記具用あるいは箸用といった練習具の用途に応じて、位置設定用溝部133の位置や溝幅を調整することが好ましい。
また、本指動作補助具101においては、上下壁部間の距離を調節可能に構成することもできる。この場合、図10(c)に示すように、挟持壁部130を分離して、上挟持壁部130aと、これより厚みの大きい下挟持壁部130bとで構成し、上壁部112および上挟持壁部130aを一体化するとともに下壁部122および下挟持壁部130bを一体化する。そして、上挟持壁部130aの両面に、上下方向に所定の間隔をおいて複数の凸部131を設けておく。この凸部131は、指挿入方向に平行な畝状突起であっても構わない。一方、下挟持壁部130bには、その上面から下へ掘り下げられ(上下方向の深みを持ち)、指挿入方向に沿って伸びる溝132を設ける。この溝132の幅(左右方向の幅)は上挟持壁部130aの厚みに対応するものとする。さらに、この溝132の左右2つの壁面に、左右方向(溝の中心)に出っ張ったストッパ141a・141bを形成しておく。なお、上記のように凸部131が畝状突起であれば、ストッパ141a・141bも(指挿入方向に沿って伸びる)畝状となる。
こうすれば、上挟持壁部130aを、下挟持壁部130bに形成された溝132に差し込んだときに、上挟持壁部130aの凸部131と溝132のストッパ141a・141bとが係合し、上壁部112および下壁部122を連結することができる。ここで、ストッパ141a・141bに嵌めこむ凸部131を適宜変更することで、上下壁部間の距離を自在に調節できる。これにより、各ユーザの体格(指の厚さ)や好み(指動作補助具のフィット感)に対応することができる。
なお、把握部123の形状は球体に限定されず、例えば、楕円球体や曲面をもつ他の形状、あるいは立方体形状であっても構わない。また、上壁部112は上方向に反った形状であるがこれに限定されず、平板状であっても構わない。また、第1上壁部112a(第2上壁部112b)と第1下壁部122a(第2下壁部122b)の幅についても、上記のように第1下壁部122a(第2下壁部122b)の方が広い構成に限定されない。例えば、第1上壁部112a(第2上壁部112b)と第1下壁部122a(第2下壁部122b)の幅が同じ幅であっても構わない。
さらに、本指動作補助具101は、(筆記を伴わない)単なる健康器具としても用いることができる。その使用方法は以下のとおりである。
すなわち、ユーザは本指動作補助具101を任意の指にパーの状態で装着する(例えば、人差指および中指の付け根部分で持壁部130を軽く挟み、人差指の上に第1上壁部112aが位置するとともにその下に第1下壁部122aが位置し、かつ、中指の上に第2上壁部112bが位置するとともにその下に第2下壁部122bが位置するように、2本指を本指動作補助具101に挿入する)。そして、この状態でユーザは各指を曲げてゆき、人差指および中指の第1関節から指先までの部分および他の3本の指(親指・薬指・小指)を把握部123の表面に接触させた(把握部123に各指をおいた)後徐々に各指をもって把握部123を握ってゆく(グーの状態)。把握部123がある程度の小ささになるまで握りしめれば、今度は各指を開いてゆき、上記パーの状態とする。また、指を開くときに親指、小指および薬指を閉じておけばチョキの状態にすることができる。
上記各動作(パー、グー、チョキ)を適宜取り混ぜて繰り返すことで、5本の指を効果的に動かすことができ、脳の活性化を図ることができる。
さらに、本指動作補助具101を使用中、各指を屈伸(グー、パー、チョキ)させるのはもちろん、それを激しく繰り返しても手をどの方向に向けても(裏返しても)、本指動作補助具101が指(手)から外れることがない。一方で、その装着は2本の指を第1および第2指挿入部125a・125bに挿入するだけであり、極めて容易である。すなわち、本指動作補助具101によれば、脳の活性化に有効な指動作を手軽かつ効果的に行うことができる。
〔実施の形態3〕
本実施の形態に係る筆記具の持ち方矯正具261を図11(a)〜(c)に基づいて説明すれば、以下の通りである。図11(a)に示すように、筆記具の持ち方矯正具261には、同図における上部側のほぼ中央に、紙面に直交する方向に貫通して延びる嵌合溝(嵌合部)207が設けられ、その下側に、本体下部208を挟んで把握部223が設けられている。この嵌合溝207は、鉛筆やボールペン、筆等の棒状の筆記具を、紙面手前側を筆先方向として嵌着して固定するのに適した断面弧状の形状および大きさで形成されており、内周部には、筆記具が緊密に嵌合して位置ずれしないように、円弧状凸条部210が設けられている。
上記嵌合溝207の図11(a)における左方側部には、突出する挾持突片201が形成されている。この挾持突片201の上面には人差指または中指の側腹を当接させるための第1凹部202が形成され、また、挾持突片201の下面には中指または薬指の側腹を当接させるための第2凹部203が形成されている。上記第1凹部202は、全体に緩やかな湾曲面を形成し、かつ後端側に向かって徐々に幅広く形成された下り傾斜面を有している。
また、上記第2凹部203は、全体に緩やかな湾曲面を形成し、かつ筆記具の軸心方向先端側(以下、先端側と略記する)に向かう傾斜面を有している。なお、上記第1凹部202と嵌合溝207との交差角は、筆記具を正しく持った状態において、人差指の中指側の側腹と筆記具とが作る角度と等しいことが要求され、第1凹部202の中心底線と嵌合溝207の中心底線とが40度以内、好ましくは10〜20度の角度を有することが適切である。また、第1凹部202と第2凹部203との間の挾持突片201の厚さは可及的に薄くすることが好ましい。
一方、図11(a)において、嵌合溝207よりも下側の本体下部208は、先端部側が幅狭に突出していて、上記第2凹部203および後述する第3凹部205に所定の指を当接した際に安定した状態で本体下部208の先端部両側を挾持し得る程度の高さを有する形状となっている。
本体下部208から嵌合溝207への方向を上方向として、本体下部208の下側に把握部223が設けられている。把握部223は、弾性を有する球体や楕円球体(たまご型)であり、本体下部208に一体化されている。第1凹部202、嵌合溝(嵌合部)207および把握部223の配置関係は、用途(筆記具や箸)あるいはユーザの体型・好み等に応じて適宜設計されるものであるが、第1凹部202に当接する人差指の爪の先端と把握部223の中心とを結ぶ直線が嵌合溝(嵌合部)207の中央近傍を通過するように、把握部223を本体下部208に取り付けあるいは一体化することが好ましい。さらに、図11(c)のように、本体下部208に把握部交換用凸部を設け、把握部223には把握部交換用凹部を設けておくことがなお好ましい。こうすれば、把握部223を好みの(大きさ、形あるいは材質の)ものに自在に交換できる。
さらに、本体下部208の図11(a)における右側面側は、後端側ほど右方に膨出する形状の親指保持部204として形成されており、この親指保持部204における先端側には、親指の人差指側の側腹を当接させるための第3凹部205が形成される一方、親指保持部204における後端側には、人差指と反対側の親指側腹を当接させるための第4凹部206が形成されている。上記第3凹部205は全体に緩やかな湾曲面を形成し、また、第4凹部206は後端側に向かう上り傾斜面を形成している。なお、上記第1凹部202、第2凹部203、第3凹部205および第4凹部206は、それぞれ当接する指に適合した大きさの湾曲形状を有し、かつ各種筆記具を正しい持ち方で保持した状態を保ち得るように、各々所定の位置および傾斜角度で形成されている。
そして、上記親指保持部204における第3凹部205と第4凹部206との間は、上部側が親指幅にほぼ匹敵する幅寸法で上記嵌合溝207を囲うと共に、下部側でそれぞれ上記第3凹部205と第4凹部206との各傾斜縁に連なる側方への膨出面となっており、この膨出面が、親指当接部212として形成されている。すなわち、この親指当接部212の外周面は、図11(a)のように、上部側を嵌合溝207における右上方の内周面にほぼ沿う円弧形状で形成すると共に、その右端の位置から曲率を徐々に大きくして下部側のほぼ鉛直面へと連ねる形状とすることで、全体が滑らかな湾曲面となるように形成されている。なお、この親指当接部212における上記嵌合溝207の内周面に沿う弧状部の厚さは、可及的に薄く形成されている。また、この弧状部の上面には、嵌合溝207に嵌着される筆記具の先端方向を示す矢印線が設けられている。
なお、把握部223の素材は上記のようにゴム、スポンジあるいはウレタン等の弾性体が好ましいが、木やプラスチック等弾性のない素材を用いることもできる。また、把握部223の表面に多数の突起を設けても良い。さらに、把握部223を本体下部208に取り付け可能(着脱可能)とするべく、本体下部208に凸部を設け、これに対応して把握部223に凹部を設けることもできる。
本筆記具の持ち方矯正具261の使用方法は以下のとおりである。
嵌合溝207に鉛筆Aの所定部を嵌着した矯正具を、上記矢印線が紙面を指すように位置させる。このとき、第1凹部202に人差指の第1関節付近の側腹を当接すると共に、第2凹部203に中指の第1関節と第2関節との間の側腹を当接して、人差指と中指とで挾持突片201を挾持し、人差指の指先下腹部を軽く鉛筆Aの外周上面に載せると共に、上記中指の第1関節を若干屈曲して第1関節から指先間の側腹を鉛筆Aの外周下面に当接し、この側腹によって鉛筆Aを支持する。また、第3凹部205に親指の第1関節より先方の下腹および側腹を当接し、親指の先端下腹を鉛筆Aの外周側面に軽く当接して、これら親指と人差指と中指との3本の指先部で鉛筆Aを軽く挾持する。さらに、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部223を軽く(接触する程度に)握る。薬指と小指は上記中指と共に軽く丸めて手の内側に位置させ、小指を軽く紙上に置く。そして、親指保持部204の上面に設けた上記矢印線が鉛筆Aの軸中心線上に重なるように筆記者からみえる状態に腕および手首を位置させる。
上記により、鉛筆Aを正しく持つ上で最も重要な親指と人差指と中指の位置が第3凹部205、第1凹部202、第2凹部203によって自ずと決定される。また、第1凹部202に人差指の側腹を当接することによって人差指が反らない持ち方となる。
ここで、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部223を軽く握るため、手の内側に適当な空間がいわば強制的にでき、また、自然と人差指、親指の関節が丸みをもつようになる。したがって、課題に記載した、「中指、薬指、小指は軽く内側に曲げ、手の内側は卵を握った状態にすること(ポイント1(c))」や「人差指、親指に力を入れすぎないで、それらの関節が丸みを持つようにすること(ポイント2(b))を極めて効果的に(いわば強制的に)習得させることができる。
さらに、この状態を維持したまま小指を軽く紙上に置くことによって、鉛筆Aにおける紙面とのなす角度が略50〜60度に形成され、鉛筆Aの正しい傾き角度になると共に、矢印線を目印として腕や手首の位置が自ずと決定される。この正しい持ち方で筆記すれば、上記した16個の関節すべてが効果的に動き、脳の活性化を高めることができる。
そして、上記筆記具の持ち方矯正具261は、上記した鉛筆や毛筆の他に、さらにボールペンや小筆等の持ち方矯正用として使用することが可能である。この場合、図11(b)に示すように、親指を除く人差指および中指等の位置については、前記鉛筆Aのときと同様であるが、親指については、前記親指当接部212に親指の第1関節より先方の下腹を当接し、親指当接部312における嵌合溝207の外周壁面を介してボールペンC等を支持する。これにより、紙面とのなす角度を略70〜80度とするボールペンCや小筆等の持ち方を習得することができる。
次に、上記矯正具を毛筆(太筆)の持ち方矯正用として使用する場合は、図11(c)に示すように、第1凹部202に人差指を並置した中指の側腹を当接させると共に、第2凹部203に小指を並置した薬指側腹を当接することにより、挾持突片201を挾持する。親指については、第4凹部206に親指の第1関節付近における側腹を当接し、この親指の下腹を毛筆Bの軸部外周側面に当接して、この親指と上記人差指間で毛筆Bの軸部を挾持する。同時に、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部223を軽く(接触する程度に)握る。これにより、ユーザは正しく筆を持つことができる。このように、筆Bを正しく持って筆記を行うことにより、ユーザの16関節すべてを効果的に動かすことができ、その脳の活性化を図ることができる。
〔実施の形態4〕
本実施の形態の筆記具の持ち方矯正具を図13(a)〜(c)を用いて説明する。同図に示すように、筆記具の持ち方矯正具310は、本体部311、取付部312、延伸部313、壁状部314および把握部323を有しており、本体部311、延伸部313、壁状部314には、指を当接可能とする当接部が形成されている。
本体部311は、上記取付部312および壁状部314の間に凹部315が形成されている形状を有しており、それ単独で見れば、略U字状の形状を有している。つまり、取付部312と壁状部314とが互いに対向して配置され、これらが一方の端部でつながっている形状となっている。上記凹部315は、指の先端の少なくとも一部を挟むことができる形状となっており、本発明では、中指の先端を挟むことができるようになっている。この凹部315と対向する側、すなわち、本体部311の略U字状の形状において「底」に相当する部位には、親指当接部316が形成されている。
親指当接部316は、図13(a)に示すように、本体部311の「底」の部分だけでなく、延伸部313の一部も含めて、親指の先端の形状に応じた湾曲面が、親指当接部316として形成されている。
取付部312は、上記のように、壁状部314とつながって本体部311の一部を形成している。すなわち、取付部312は凹部315を挟んで本体部311の一方の端部に位置する。取付部312は筆記具を安定して装着できる構成であれば、特に限定されるものではないが、例えば、図13(a)・(b)に示すように、嵌合孔を有する円環形状を有し、筆記具を貫通状態で装着できるような構成を挙げることができる。
また、上記取付部312の外周のうち、凹部315の表面となっている部位は、本体部311の底部側とともに、中指の側方の一部を当接する中指側方当接部319となっている。すなわち、上記凹部315は、当該凹部315に中指の先端を入れた状態で、中指の側方を上記取付部312の外周となる位置および本体部311の底部(中指側方当接部319)となる位置に当接可能とする形状といえる。
延伸部313は、取付部312における凹部315と対向する側の外周に位置している。したがって、上記中指側方当接部319と延伸部313は互いに対向する位置に配置されている。延伸部313は、取付部312に筆記具を装着したときの後端側に向かって、取付部312の外周から伸びた形状を有している。この延伸部313の表面には人差指当接部317が形成されている。人差指当接部317は、親指の腹側の少なくとも一部を当接可能とする形状である。
壁状部314は、前記のように、取付部312とつながって本体部311の一部を形成している。すなわち、壁状部314は凹部315を挟んで本体部311の他方の端部に位置する。この壁状部314の形状は特に限定されるものではないが、壁状部14における凹部315側に中指当接部318が形成されているため、壁状部314は、少なくとも凹部315側の表面に、中指の腹側を当接できるような形状を有していることが好ましい。なお、壁状部314の名称が示す通り、壁状すなわち厚みを有する板状の形状を有していることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、デザイン上では、中指当接部318に対向する面(壁状部314における凹部315とは反対側の面)が平面でなく突出面になっていてもよい。また、中指当接部318は、中指の腹側の少なくとも一部を当接可能とする形状を有していればよいが、前記親指当接部316や人差指当接部317と同様に、中指の腹側の先端を安定して当接できるような形状、例えば湾曲面が形成されていてもよい。
把握部323は、弾性を有する球体や楕円球体(たまご型:縦・横どちら向きでも可)であり、中指当接部318の、壁状部314を挟んだ向かい側(裏側)の領域に、該壁状部314と一体化されている。本体部311と把握部323との配置関係は、用途(筆記具や箸)あるいはユーザの体型・好み等に応じて適宜設計されるものであるが、取付部312の中心と把握部323の中心とを結ぶ直線が中指当接部318を通過するように両者を配置することが好ましい。さらに、図13(c)のように、本体部311の下面に把握部交換用凸部を設け、把握部323には把握部交換用凹部を設けておくことがなお好ましい。こうすれば、把握部323を好みの(大きさ、形あるいは材質の)ものに自在に交換できる。
なお、把握部323の素材は上記のようにゴム、スポンジあるいはウレタン等の弾性体が好ましいが、木やプラスチック等弾性のない素材を用いることもできる。また、把握部323の表面に多数の突起を設けても良い。さらに、把握部323を該壁状部314に取り付け可能(着脱可能)とするべく、壁状部314に凸部を設け、これに対応して把握部323に凹部を設けることもできる。
本実施の形態に係る筆記具の持ち方矯正具301の使用方法を、図14(a)(b)を用いて説明する。
同図に示すように、取付部312に筆記具(例えば鉛筆300)を装着し、鉛筆300の削り部(他の筆記具の場合、削り部に相当する略円錐状の部位)を取付部312から突き出させる。次いで、延伸部313の人差指当接部317(図14(a)では人差指により隠れている)に、人差指の先端の腹側を当接し、人差指の第一関節近傍の腹側を軽く鉛筆300の外周上面に載せる。これとともに、中指の先端を凹部315に挟み込み、中指側方当接部319に中指の側方を当接させる。これによって、人差指と中指とで取付部312を挟持することになる。このとき中指は、側方が中指側方当接部319に当接しているだけでなく、腹側が壁状部314の中指当接部318に当接しており、結果的に、凹部315により安定した当接位置となるように保持されている。
そして、親指当接部316に親指の第一関節より先の腹を当接するとともに、薬指の側方を壁状部314の先端に軽く当接させる。さらに、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部323を軽く(接触する程度に)握る。この状態で、薬指は中指とともに軽く丸められることになるので、小指も薬指に沿わせてこれら各指に合わせて軽く丸める。そして、この状態で小指を軽く紙の上に置く。
これによって、鉛筆300を正しく持つ上で最も重要な親指と人差指との位置が、親指当接部316および人差指当接部317によって自ずと決定されるだけでなく、凹部315によって中指の位置が安定して保持される。そのため、人差指の腹側が鉛筆300に当接することで人差指の第一関節が反らずに適度に曲がった状態になり、中指は人差指とともに鉛筆300を支えるような位置に規定され、親指は鉛筆300を軽く支える程度に鉛筆300を支持するような位置に規定される。よって、鉛筆300と紙面とによって形成される角度が略50〜60°に形成され、筆記具の正しい傾斜角が実現される。
さらに、親指、薬指、小指および掌の一部にて把握部323を軽く握るため、ユーザの手の内側に適当な空間がいわば強制的にでき、また、自然と人差指、親指の関節が丸みをもつようになる。したがって、課題に記載した、「中指、薬指、小指は軽く内側に曲げ、手の内側は卵を握った状態にすること(ポイント1(c))」や「人差指、親指に力を入れすぎないで、それらの関節が丸みを持つようにすること(ポイント2(b))を極めて効果的に(いわば強制的に)習得させることができる。この正しい持ち方で筆記すれば、上記した16個の関節すべてが効果的に動き、脳の活性化を高めることができる。
このように、筆記具の持ち方矯正具301を用いることでユーザは筆記具を正しくもって筆記することが可能となる。また、これにより、ユーザの16関節すべてを効果的に動かすことができ、その脳の活性化を図ることができる。
〔実施の形態5〕
本実施の形態に係る棒状道具の持ち方練習具を図15(a)〜(e)および図16(a)〜(e)に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図15(a)に示すように、棒状道具の持ち方練習具401は、把握部405と装着部406とを備え、該装着部406は、保持部406aおよびアーチ部406bを備える。把握部405は直径約34mm(子供用の場合はこれより小さいことが好ましい)の弾性球体であり、保持部406aは、内径約8.0mm,外径約9.5mm,長さ約13mmの筒に延伸方向の切り欠き(幅1mm程度)を設けた形状であり、その断面はCの字を有する。こうすれば、保持部406aに、様々な形状(形・太さ)の棒状道具(筆記具や箸)をうまく保持(ホールド)させることができる。アーチ部406bは把握部405表面から突出するように設けられ、このアーチ部406bのアーチ内側に上記の保持部406aが固定される。ここで、保持部406aの外周の一部が把握部405の表面に接している。
筆記具の持ち方練習具として利用する場合を、図15(b)〜(d)に示す。すなわち、保持部406aの筒内に筆記具を挿入し、把握部405を、その表面が掌に接触する程度にごく軽く握り、かつ装着部406を人差指内側にあてながら、筆記具の先端から所望距離おいた部分を人差指および親指並びに中指で取り囲むように支持し、この状態で筆記を行う。これにより、正しい筆記具の持ち方を会得することができる。なお、図15(b)〜(d)に示すように、筆記具の装着位置や装着部406と各指(特に人差指)との位置関係を適宜変更すれば、鉛筆、ボールペン等様々な筆記具を正しく持つことができる。また、箸の持ち方練習具として利用する場合を図15(e)に示す。すなわち、保持部406aの筒内に一方の箸を装着し、該箸が親指の付け根部分に接触するように掌並びに薬指および小指で把握部405を軽く握りつつ、親指並びに人差指および中指でもう一方の箸を支持し、この状態で箸を使う。これにより、正しい箸の持ち方を会得することができる。
本棒状道具の持ち方練習具を図16(a)に示すように構成することもできる。すなわち、棒状道具の持ち方練習具411は、把握部405と、2つの装着部406x・406yとを備える。ここで、各装着部406x・406yを図15(a)の装着部406と同様に構成し、両者を把握部405上に一定距離をおいて配置する。このとき、筆記具をどちらの装着部に装着しても利用できるように両者を配置することが好ましい。こうすれば、図16(d)のように筆記具を装着部406xに装着し、図16(c)のように利用することができる。すなわち、把握部405を、その表面が掌に接触する程度にごく軽く握り、かつ装着部406xを人差指内側にあてる一方装着部406yを親指側面(人差指側の側面)にあてながら、筆記具の先端から所望距離おいた部分を人差指および親指並びに中指で取り囲むように支持し、この状態で筆記を行う。また、図16(e)のように筆記具を装着部406yに装着し、図16(b)のように利用することができる。すなわち、把握部405を、その表面が掌に接触する程度にごく軽く握り、かつ装着部406yを人差指内側にあてる一方装着部406xを親指側面(人差指側の側面の反対側)にあてながら、筆記具の先端から所望距離おいた部分を人差指および親指並びに中指で取り囲むように支持し、この状態で筆記を行う。なお、図16(d)・(e)に示すように、2つの装着部406x・406yの近傍に、筆記具の挿入方向を示す矢印を設けておくことが好ましい。
さらに、図16(a)のように、2つの装着部406x・406yを把握部405上に一定距離をおいて配置することで、把握部405を顔に(例えば、把握部表面にキャラクタの顔を描いておく)、2つの装着部406(それぞれの保持部)を耳にみたてることができ、棒状道具の持ち方練習具411に娯楽性(いわゆるキャラクタ商品としての付加価値)を持たせることができる。