JP4847006B2 - 新規なフルオレン含有樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、熱および放射線硬化性を有する新規なフルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂、フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂、該樹脂の製造方法、そして該樹脂を含む熱硬化性あるいは放射線硬化性の樹脂組成物に関する。さらに本発明は、該樹脂組成物を用いて得られる、耐熱性、電気特性に優れ、高い硬度を有する成形体に関する。本発明は、さらに、上記アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を含む感放射線性樹脂組成物であって、液晶ディスプレイや電子部品等における層間絶縁膜や保護膜(例えば、カラーフィルター、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などに用いられる層間絶縁膜や保護膜)を調製するために有用な組成物に関する。
一般的にエポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物を形成する。そのため、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂として液状および固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂がある。エポキシ系の機能性高分子材料としては、従来からエポキシアクリレート樹脂が汎用されている。この樹脂は、例えば感光性材料などの分野で使用されている(非特許文献1)が、これらの樹脂は耐熱性、電気特性および硬度が不十分であり、高いレベルの耐熱性が要求される分野においては不充分である。これらの問題を解決するために、フルオレン骨格を持つエポキシ樹脂やエポキシアクリレート樹脂が紹介されている(特許文献1、特許文献2)。これらの特許文献においては、ビスフェノールフルオレン型の骨格を持つエポキシ樹脂やエポキシアクリレート樹脂が紹介されており、これらの樹脂は耐熱性や電気特性が向上している。
しかし、近年の電気・電子分野の用途においては、さらに高いレベルの耐熱性、電気特性が要求されている。また、ビスフェノールフルオレン型骨格を持つ高純度のエポキシ樹脂は、高融点で且つ、各種硬化剤や溶剤等に対する相溶性が悪く、ハンドリング性に欠けるという一面がある。高分子量型のビスフェノールフルオレン型骨格をもつエポキシ樹脂を合成することで、低融点化が可能であり、各種硬化剤や溶剤等に対する相溶性を改善することができるものの、高分子量型のビスフェノールフルオレン型骨格をもつエポキシ樹脂は、溶融粘度が非常に高くなる。このため、ビスフェノールフルオレン型骨格をもつエポキシ樹脂の製造には、大量の溶剤を用いたり、プロセス温度を高く保ったりする必要があり、コスト面で不利である。また、相溶性が悪い、溶融粘度が高いという特性から、エポキシ樹脂組成物とした場合、組成物中に添加され得るフルオレン化合物の添加量に制約があり、十分にフルオレン化合物の特徴を生かすことが困難であったり、これらエポキシ樹脂を用いた変性反応の条件に制約があったりする。
山岡亜夫および森田浩著「感光性樹脂」、共立出版、1988年3月初版発行、82〜84頁 特開昭63−218725号公報 特開平7−48424号公報
本発明の目的は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、その硬化物が高硬度であり、高いレベルでの耐熱性および電気特性を有し、硬化時の収縮率が低く、パターニング性に優れた、熱硬化性あるいは放射線硬化性の機能性エポキシ樹脂を提供することにある。本発明の他の目的は、該樹脂の製造方法、および該樹脂を含む組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、このような樹脂組成物を硬化させて得られる成形体を提供することにある。さらには、従来のフルオレン系化合物に比べ、溶剤等に対する相溶性が高く、ハンドリング性の良好なフルオレン化合物を安価に提供し、これらのフルオレン化合物の応用範囲を広げる事にある。
本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される:
Figure 0004847006
(式中、nは0から10の整数である。)で示されるフルオレン含有エポキシ樹脂に関する。
本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂の製造方法は、下記一般式(2):
Figure 0004847006
で示されるフルオレン化合物にエピクロルヒドリンを作用させる工程を包含する方法に関する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、フルオレン含有エポキシ樹脂を含有する組成物に関する。
本発明は、前記記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる成形体に関する。
本発明のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂は、下記一般式(3):
Figure 0004847006
(式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である。)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂に関する。
本発明のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂の第1の製造方法は、下記一般式(1):
Figure 0004847006
(式中、nは0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を作用させる工程を包含する方法に関する。
本発明のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂の第2の製造方法は、下記一般式(2):
Figure 0004847006
で示されるフルオレン化合物に、(メタ)アクリル酸グリシジルを作用させる工程を包含する方法に関する。
本発明は、前記いずれかに記載のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂を含有する熱硬化性組成物に関する。
本発明は、前記いずれかに記載のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物に関する。
本発明は、前記熱硬化性組成物又は感放射線性樹脂組成物を硬化させて得られる成形体に関する。
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)は、下記一般式(3):
Figure 0004847006
(式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる、樹脂に関する。
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)の製造方法は、下記一般式(3):
Figure 0004847006
(式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させる工程を包含する方法に関する。
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(B)は、下記一般式(3):
Figure 0004847006
(式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールとの混合物に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる、樹脂に関する。
好ましい実施態様としては、下記一般式(3):
Figure 0004847006
(式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂の水酸基と多価アルコールの水酸基のモル比が99/1〜50/50であることを特徴とする前記記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に関する。
好ましい実施態様としては、多価アルコールがトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの中から選択してなる1種または2種以上の多価アルコールであることを特徴とする前記記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に関する。
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(B)の製造方法は、下記一般式(3):
Figure 0004847006
(式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールとの混合物に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させる工程を包含する方法に関する。
本発明は、前記に記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)または(B)を含有する感放射線性樹脂組成物に関する。
本発明は、前記記載の感放射線性樹脂組成物により形成される液晶ディスプレイの層間絶縁膜に関する。
本発明は、前記記載の感放射線性樹脂組成物により形成される液晶ディスプレイの保護膜に関する。
本発明によれば、このように、新規なフルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂、およびフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂、およびそれらの簡便な製造方法が提供される。これらの樹脂は熱または放射線により重合し、硬化することが可能である。これらを含む樹脂組成物を用いて得られる硬化成形体あるいは薄膜は、高硬度で、透明性が高く、高いレベルでの耐熱性および電気特性を有し、硬化収縮の度合いが少ない。さらに、本発明のアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を用いると、基板上に所望のパターンの、上記優れた性質を有する薄膜が精度良く形成される。特に多価アルコールを添加した本発明のアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を用いると、更に耐熱変色性が向上する。従って、本発明の樹脂あるいは樹脂組成物は、液晶ディスプレイや電子部品等(カラーフィルター、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等)の保護膜形成材料;層間絶縁膜の形成材料、カラーレジスト用バインダー組成物;プリント配線板製造の際に用いられるソルダーレジスト;コーティング剤;光学部品材料などとして好適に用いられる。
A.フルオレン含有エポキシ樹脂
本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される:
Figure 0004847006
ここで、nは0から10の整数である。
このフルオレン含有エポキシ樹脂は、本明細書中で、「フルオレン含有エポキシ樹脂(1)」、「エポキシ樹脂(1)」などと記載される場合がある。
上記エポキシ樹脂(1)は、例えば、下記一般式(2)で表されるフルオレン化合物にエピクロルヒドリンを作用させることにより得られる:
Figure 0004847006
このフルオレン化合物は、本明細書中で、「フルオレン化合物(2)」と記載される場合がある。
このフルオレン化合物(2)は、当該分野で知られている方法により調製され得る。例えば、特開2003−221352号公報に記載の方法により調製され得る。
上記フルオレン化合物(2)とエピクロルヒドリンとの反応は、通常50〜120℃の温度範囲において3〜10時間行われる。一般式(1)におけるnは、フルオレン化合物(2)とエピクロルヒドリンのモル比により、決定される。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂(1)を含有する。このエポキシ樹脂(1)は1種のみを単独で使用できる他、2種以上の混合物としても使用することができる。このエポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて(i)上記エポキシ樹脂(1)以外のエポキシ樹脂、(ii)反応性希釈剤、(iii)硬化剤、(iv)硬化促進剤、(v)添加剤、(vi)溶剤などが含有され得る。
上記(i)のエポキシ樹脂(1)以外のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどのビスフェノール系エポキシ樹脂;フェノール樹脂、クレゾールノボラック型樹脂などの多官能フェノール系エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂などのナフタレン系エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;上記エポキシ樹脂(1)以外のフルオレン系エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記(ii)の反応性希釈剤としては、粘度調整を行うために添加する低粘度なエポキシ化合物であり、特に二官能以上の低粘度エポキシ化合物が好ましい。反応性希釈剤としては、例えば、次の化合物が挙げられる:ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、o-フェニルフェニルグリシジルエーテルなど。これら反応性希釈剤は1種のみを単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
上記(iii)の硬化剤としては、特に限定されないが、アミン化合物類、イミダゾール化合物、カルボン酸類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類、メチロール基含有化合物類、トリフル酸(Trif1ic
acid)塩類、三弗化硼素エーテル錯化合物類、三弗化硼素、光または熱により酸を発生するジアゾニウム塩類、スルホニウム塩類、ヨードニウム塩類、ベンゾチアゾリウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類のような潜在性カチオン重合触媒などが挙げられる。
上記(iv)の硬化促進剤としては、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7およびそのフェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などのアミン類(第三アミンを含む)およびその誘導体;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;エチルホスフィン、プロピレンホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフイン、トリアルキルホスフィンなどの、オルガノホスフィン類(第1、第2、および第3ホスフィン類)などが挙げられる。
上記(v)の添加剤としては、補強材または充填材、着色剤、顔料、難燃剤、硬化性の化合物(硬化性モノマー、オリゴマー、または樹脂)などが挙げられる。上記補強剤または充填剤としては、粉末状あるいは繊維状の補強剤や充填剤が用いられる。粉末状の補強剤または充填剤としては、例えば次の素材でなる材料が挙げられる:酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩;ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなど。繊維状の補強剤または充填剤としては、次の材料が挙げられる:ガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維など。上記着色剤、顔料、または難燃剤としては、例えば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐、ブロム化合物、トリフェニルホスフェートなどが挙げられる。上記硬化性化合物は、最終的な塗膜、接着層、成形品などにおける樹脂の性質を改善する目的で用いられる。それには、例えば、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などがある。これら硬化性化合物は、本発明の樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量で含有される。これら添加剤は、いずれも1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(vi)の溶剤としては、例えば、次の溶剤が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の組成物は、目的に応じた成形体とされる。この成形体は、組成物自体の硬化物でなる所望の形状の製品、あるいは基材上に形成された該組成物の硬化物でなる塗膜であってもよい。例えば上記組成物は、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱しあるいは放射線照射することにより硬化し、所望の形状の成形体が得られる。あるいは、溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥し、次いで加熱しあるいは放射線照射することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。
成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法が用いられる。加熱加圧による方法としては、例えば、ハンドレイアップやスプレーレイアップと呼ばれる方法により常圧で本発明組成物を金型に充填した後、加熱硬化させる方法;トランスファープレス装置を用いて射出成形により加熱圧縮する方法;および連続積層成形法、プルトルージョンと呼ばれる連続引抜成形法、フィラメントワインディング成形法などの連続成形法が挙げられる。またこれらの成形方法においては、上記樹脂組成物を補強剤と混合、あるいは補強剤に含浸させることにより中間成形材料を得、これを成形し、硬化させることもできる。補強剤としては、樹脂、ガラスなどでなる織布、不織布などが挙げられる。これを用いて得られる中間成形材料としては、例えば、SMC(シートモールデイングコンパウンド)と呼ばれるシート状の中間成形材料;BMC(ベルクモールデイングコンパウンド)あるいはプレミックスと呼ばれる液状または固形状の中間成形材料;ガラスクロスやマットなどに本発明組成物を含浸させたプリプレグなどが挙げられる。
本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂は、耐熱性に優れ、熱または放射線照射により容易に硬化する。このエポキシ樹脂を含む樹脂組成物は成形加工性に優れるため、上述のように、金型により所定の形状に成形し、あるいは基板上に薄膜を形成することが容易である。これらを熱または放射線により硬化させて得られた成形体(薄膜を含む)は、耐熱性および耐環境性に優れ、曲げ特性などの機械的強度が高く、高い靱性、熱衝撃性、および良好な成形加工性を有する。
このエポキシ樹脂組成物から得られる成形体は、上記耐熱性などの性質に加え、絶縁性に優れており、硬化収縮が小さく寸法安定性にも優れていることから、該組成物は、電気・電子材料封止剤に有用である。さらに、この組成物は、耐熱性、接着性、硬化性などに優れていることから、コンデンサーなど各種電子部品のポッティング材、コーティング材などに好適に用いられる。電子絶縁材料用の封止材や、ポッティング剤として使用する場合には、従来から一般に使用されるエポキシ樹脂を用いた封止用樹脂と同様の方法で使用することができる。さらに硬化物は透明性に優れていることから、光学デバイス用熱硬化性樹脂組成物としても有用である。
B.フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂
本発明のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂は、下記一般式(3)で表される:
Figure 0004847006
ここで、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である。
このフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂は、本明細書中で、「フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(3)」、「エポキシアクリレート樹脂(3)」などと記載される場合がある。
上記エポキシアクリレート樹脂(3)は例えば、次の一般式で表される上述のエポキシ樹脂(1)に(メタ)アクリル酸を作用させることにより得られる:
Figure 0004847006
ここで、nは0から10の整数である。
あるいは、次の一般式で表されるフルオレン化合物(2)に、(メタ)アクリル酸グリシジルを作用させることにより得られる:
Figure 0004847006
上記エポキシ樹脂(1)と(メタ)アクリル酸との反応、およびフルオレン化合物(2)と(メタ)アクリル酸グリシジルとの反応は、いずれも必要に応じて適切な溶媒を用いて、50〜120℃の温度範囲において5〜30時間行なわれる。上記用いられ得る溶媒としては、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレンモノアルキルエーテルアセテート類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン類などがある。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび3−メトキシブチル−1−アセテートが好適である。
上記エポキシアクリレート樹脂(3)は、熱硬化性および放射線硬化性を有する。ここで、放射線とは、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などを総称していう。従って、このエポキシアクリレート樹脂(3)を含む樹脂組成物は、熱硬化性または感放射線性の樹脂組成物として機能する。いずれの組成物においても上記エポキシアクリレート樹脂(3)は単独で含有されていてもよく、2種以上の混合物として含有されていてもよい。
上記エポキシアクリレート樹脂(3)を含む樹脂組成物が、感放射線性樹脂組成物である場合には、該組成物には、上記エポキシアクリレート樹脂(3)に加えて(I)光重合開始剤が含有され得、熱硬化性樹脂組成物である場合には(II)ラジカル開始剤が含有され得る。さらにこれらの組成物のいずれにも、上記(III)エポキシアクリレート樹脂(3)以外の光または熱硬化性のアクリレート化合物、(IV)添加剤、(V)溶剤などが含有され得る。
本発明のエポキシアクリレート樹脂(3)を含む感放射線性樹脂組成物中に含有され得る(I)の光重合開始剤は、上記エポキシアクリレート樹脂(3)および必要に応じて含有される上記光硬化性のアクリレート化合物の光重合を開始させる効果を有する化合物および/または増感効果を有する化合物である。このような光重合開始剤としては、例えば次の化合物が挙げられる:アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物。
これらの化合物は、その1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、それ自体では光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。このような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
上記熱硬化性樹脂組成物に含有され得る(II)のラジカル開始剤としては、ケトンパーオキサイド系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、アルキルパーエステル系化合物、パーカーボネート系化合物、アゾビス系化合物などでなるラジカル開始剤が用いられる。特に、ジアシルパーオキサイド系あるいはアゾビス系のラジカル開始剤が好適であり、例えば過酸化ベンゾイル、α,α’−アゾビス(イソブチロニトリル)などが汎用される。
上記(III)のエポキシアクリレート樹脂(3)以外の光または熱硬化性のアクリレート化合物は、組成物が必要とされる物性に応じて、粘度調整剤あるいは光架橋剤として利用され、該化合物は所定の範囲内で組成物中に含有される。このようなアクリレート化合物としては、例えば、次の化合物がある:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの1価のアクリレート;およびエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの多価(メタ)アクリレート。
これらの化合物は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。
上記(IV)の添加剤としては、該組成物の使用目的に応じて、熱重合禁止剤、密着助剤、消泡剤、界面活性剤、可塑剤などが用いられる。
これらのうち熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。
密着助剤は、エポキシアクリレート樹脂(3)を含む液状の組成物が基材に塗布される場合に、基材との接着性を向上させる目的で添加される。該密着助剤としては、好ましくは、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナト基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン化合物(官能性シランカップリング剤)が用いられる。このような官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、アクリル系化合物などが挙げられる。
界面活性剤は、液状の組成物を塗布しやすくすること、得られる塗膜の平担度を向上させることなどの目的で含有される。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、およびアクリル系の化合物が挙げられる。具体的には例えば、BM−1000[BMへミー社製];メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173およびメガファックF183[大日本インキ化学工業(株)製];フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430およびフロラードFC−431[住友スリーエム(株)製];サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141およびサーフロンS−145[旭硝子(株)製];SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57およびDC−190[東レシリコーン(株)製]などが挙げられる。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルなどが挙げられる。
上記(V)の溶剤としては、例えば、次の溶剤が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の感放射線性樹脂組成物を硬化させるのに用いる放射線としては、波長の長いものから順に、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などが挙げられる。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも、波長の短い前記放射線は、化学反応性が高いため理論的には紫外線より優れているが、経済性の観点から紫外線が実用的である。
本発明の組成物は、目的に応じた成形体とされる。この成形体は、組成物自体の硬化物でなる所望の形状の製品、あるいは基材上に形成された該組成物の硬化物でなる塗膜であってもよい。
例えば溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥し、次いで放射線(例えば光)を照射しあるいは加熱することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。あるいは、上記放射線硬化性あるいは熱硬化性の組成物は、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱しあるいは放射線照射することにより、所望の形状の成形体が得られる。
上記本発明の組成物により形成された成形体(塗膜を含む)は、高い硬度を有し、耐熱性に極めて優れ、さらに、高い屈折率を有する。
本発明のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(3)は、耐熱性に優れ、熱または放射線照射により容易に硬化する。このエポキシアクリレート樹脂を含有する熱硬化性あるいは感放射線性組成物は、種々の用途に利用される。具体的には、例えば、各種コーティング剤、特に高い硬度と耐熱性とを要求されるコーティング剤として有用である。あるいは、カラーフィルター用レジストインク材料;液晶ディスプレイや電子部品等の保護膜用材料(例えば、カラーフィルター、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などに用いられる保護膜の形成材料);層間絶縁および/または平坦化膜の形成材料;プリント配線板の製造に用いられるソルダーレジスト;あるいは、液晶ディスプレイにおけるビーズスペーサーの代替となる柱状スペーサーの形成に好適な感光性組成物として好適に用いられる。さらに、本発明の組成物は、各種光学部品(レンズ、LED、プラスチックフィルム、基板、光ディスクなど)の材料;該光学部品の保護膜形成用のコーティング剤;光学部品用接着剤(光ファイバー用接着剤など);偏光板製造用のコーティング剤;ホログラム記録用感光性樹脂組成物原料などとして好適に利用される。
C.フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)は、下記一般式(3)で表されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂:
Figure 0004847006
(ここで、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは0から10の整数である)に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる。
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(B)は、下記一般式(3)で表されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂:
Figure 0004847006
(ここで、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは0から10の整数である)と多価アルコールとの混合物に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる。
上記フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)または(B)の調製に用いられる多塩基性カルボン酸は、ジカルボン酸、テトラカルボン酸などの複数のカルボキシル基を有するカルボン酸であり、このような多塩基性カルボン酸、あるいはその無水物としては、次の化合物が挙げられる:マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸などのジカルボン酸およびそれらの無水物;トリメリット酸またはその無水物、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4-(1,2−ジカルボキシエチル)-1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸およびそれらの酸二無水物など。
上記フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(B)の調製に用いられる多価アルコールとは、分子中に水酸基を二つ以上含有する化合物を指し、例えば、次の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、酒石酸、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、キリシトール、ソルビトール、イノシトール、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリンなど。これらのうち、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3官能以上の化合物を用いると、得られる樹脂を含む組成物から得られる薄膜と基板との密着性が優れ、かつ該膜の透明性が優れるため、好ましい。これらの多価アルコールは単独で用いても良く、2以上を組み合わせても良い。
フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(B)は、上記フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂、多価アルコール、および多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる。この反応において、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂、多価アルコール、および多塩基性カルボン酸の添加順序は特に問わない。例えば、これらを同時に混合して反応させる、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールとを混合し、ついで、多塩基性カルボン酸またはその無水物を添加、混合して反応させるなどの方法がある。また、これらの反応生成物にさらに多塩基性カルボン酸を添加し、反応させてもよい。
多塩基性カルボン酸またはその無水物の種類および数を適宜選択することによって、ビスキシレノールフルオレン骨格を有し、かつ、構造の異なる種々のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)または(B)を製造することができる。具体的には、例えば、以下の(A-i)〜(A-iii)、(B-i)〜(B-iii)に示す第1〜第6のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂が調製されるが、これらは例示である。
(A-i)第1のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と、1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物とを混合し、反応させて得られる樹脂;
(A-ii)第2のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と、2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物(例えば、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物)とを混合し、反応させて得られる樹脂。;および、
(A-iii)第3のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と、テトラカルボン酸またはその二無水物とを反応させ、得られる反応生成物とジカルボン酸またはその無水物とを反応させて得られる樹脂。
(B-i)第4のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と、多価アルコールと、1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物とを混合し、反応させて得られる樹脂;
(B-ii)第5のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と、多価アルコールと、2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物(例えば、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物)とを混合し、反応させて得られる樹脂。;および、
(B-iii)第6のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と、多価アルコールと、テトラカルボン酸またはその二無水物とを反応させ、得られる反応生成物とジカルボン酸またはその無水物とを反応させて得られる樹脂。
このようにして得られる、構造が異なるフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)または(B)は、それぞれ、目的の用途に応じて利用される。
なお、「多塩基性カルボン酸またはその無水物」とは、「特定の多塩基性カルボン酸およびそれに対応する無水物のうちの少なくとも一方」という意味であり、例えば、多塩基性カルボン酸がフタル酸であれば、フタル酸およびフタル酸無水物のうちの少なくとも一方を指していう。
また、「多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物」、「2種類以上の混合物」とは、少なくとも2種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物が同時に存在することをいう。従って、上記(A-ii)および(B-ii)の方法においては、少なくとも2種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物が反応に関与する。
フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、上記いずれの方法においても、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂、多価アルコール、多塩基性カルボン酸またはその無水物を、上記例示の方法(順序)で、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒中に溶解(懸濁)し、加熱して反応させることにより製造される。
上記フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の製造において、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールとは、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂の水酸基と多価アルコールの水酸基とのモル比が、99/1から50/50となるように調整することが好ましく、95/5から60/40であることがより好ましい。多価アルコールの水酸基のモル比が50%を超えると、得られる樹脂の分子量が急激に増大し、ゲル化の恐れがある。また、1%未満では、耐熱性や耐熱変色性を向上させにくい傾向がある。
多塩基性カルボン酸またはその無水物は、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールの水酸基の合計1当量(モル)に対して、酸無水物基換算で0.3〜1当量、好ましくは0.4〜1当量の割合で反応に供される。多塩基性カルボン酸またはその無水物が酸無水物基換算で、0.3当量未満では、得られるアルカリ可溶性樹脂の分子量が高くならない。そのため、このようなアルカリ可溶性樹脂を含む感放射線性樹脂組成物を用いて露光および現像を行った場合に、得られる被膜の耐熱性が不充分であったり、被膜が基板上に残存する場合がある。上記多塩基性カルボン酸またはその無水物が酸無水物基換算で1当量を超える場合には、未反応の酸あるいは酸無水物が残存し、得られるアルカリ可溶性樹脂の分子量が低くなり、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物の現像性に劣る場合がある。
なお、酸無水物基換算とは、使用する多塩基性カルボン酸またはその無水物に含まれるカルボキシル基および酸無水物基を全て酸無水物に換算したときの量を示す。
上記第2および第3のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の製造に際しては、2以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物を用いる。一般的に、ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物とが用いられる。ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物との割合は、モル比で1/99〜90/10であることが好ましく、5/95〜80/20であることがより好ましい。ジカルボン酸無水物の割合が、全酸無水物の1モル%未満では樹脂粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。さらに、得られる樹脂の分子量が大きくなりすぎるため、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に薄膜を形成し、露光を行った場合に、該露光部が現像液に対して溶解しにくくなり、目的のパターンが得られにくくなる傾向にある。ジカルボン酸無水物の割合が全酸無水物の90モル%を超えると得られる樹脂の分子量が小さくなりすぎるため、該樹脂を含む組成物を用いて基板上に塗膜を形成した際に、プリベーグ後の塗膜にスティッキングが残るなどの問題が生じやすくなる。
上記いずれの場合の場合にも、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールと多塩基性カルボン酸またはその無水物の反応時には、反応温度は50〜130℃が好ましく、より好ましくは70〜120℃である。反応温度が130℃を超えるとカルボキシル基と水酸基の縮合が一部起こり、急激に分子量が増大する。一方、50℃未満では反応がスムーズに進行せず、未反応の多塩基性カルボン酸またはその無水物が残存する。
このようにして得られる本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、感放射線性樹脂組成物の主成分として好適に用いられる。
上記フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、本明細書中で、「フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂」、「アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂」、「放射線重合性不飽和樹脂」などと記載される場合がある。
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物は、該フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂、および必要に応じて、(a)光重合開始剤、(b)該フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂以外の重合性のモノマーまたはオリゴマー、(c)エポキシ基を有する化合物、(d)添加剤、(e)溶剤などを含有する。
上記(a)の光重合開始剤とは、光重合開始作用を有する化合物および/または増感効果を有する化合物をいう。このような化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる:アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物。
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、それ自体では、光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
上記(b)の該フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂以外の重合性のモノマーまたはオリゴマーは、放射線で重合することのできるモノマーやオリゴマーであり、組成物の使用目的に応じた物性にあわせて含有させることができる。このような放射線で重合し得るモノマーあるいはオリゴマーとしては、以下のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するモノマー類;およびエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類。これらのモノマーあるいはオリゴマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのモノマーあるいはオリゴマーは、粘度調整剤あるいは光架橋剤として作用し、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、上記モノマーおよびオリゴマーの少なくとも1種が、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂100重量部に対して50重量部以下の範囲で組成物中に含有される。このモノマーあるいはオリゴマーの含有量が50重量部を超えるとプリベーク後のスティッキング性に問題が出てくる。
上記(c)のエポキシ基を有する化合物としては、エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーまたはモノマーが用いられる。エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーとしては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂がある。エポキシ基を少なくとも1個有するモノマーとしては、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらのエポキシ基を有する化合物は、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、該フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂100重量部当たり、エポキシ基を有する化合物が50重量部以下の割合で含有される。50重量部を超える場合には、該成分を含む組成物を硬化させたときに割れが起こり、密着性も低下しやすくなる。
上記(d)の添加剤としては、熱重合禁止剤、密着助剤、エポキシ基硬化促進剤、界面活性剤、消泡剤などがあり、これらは本発明の目的が損なわれない範囲の量で組成物中に含有される。
上記熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。
上記密着助剤は、得られる組成物の接着性を向上させるために含有させる。密着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナト基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン化合物(官能性シランカップリング剤)が好ましい。この官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
上記エポキシ基硬化促進剤としては、アミン化合物類、イミダゾール化合物類、カルボン酸類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類またはメチロール基含有化合物類などが挙げられる。エポキシ基硬化促進剤を少量含有させることにより、加熱により得られる硬化膜の耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐メッキ性、密着性、電気特性、硬度などの諸特性が向上する。
上記界面活性剤は、例えば、液状の組成物を基板上に塗布することを容易にするために含有させ、これにより得られる膜の平担度も向上する。界面活性剤としては、例えばBM−1000(BMヘミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173およびメガファックF183(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430およびフロラードFC−431(住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141およびサーフロンS−145(旭硝子(株)製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57およびDC−190(東レシリコーン(株)製)などが挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アクリル系などの化合物が挙げられる。
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有され得る上記(e)の溶剤は、組成物中の各成分を均一に溶解し、例えば基板上への塗工を容易にするために用いられる。このような溶剤としては、組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に制限はない。例えば、次の化合物が挙げられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなとのジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。
これらの中でグリコールエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ケトン類およびエステル類が好ましく、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびメチルアミルケトンが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、アルカリに可溶であり、かつ放射線照射により硬化可能である。この放射線重合性不飽和樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物は、所望の形状に成形し、放射線により硬化させて、種々の目的に利用される。特に、該組成物により基板上に薄膜を形成し、放射線照射を行った後、現像することにより所定のパターンを有する薄膜を形成する目的に利用される。
例えば、上述のように、基板上に薄膜を形成して、放射線硬化および現像を行う場合には、通常、まず溶媒を含む上記組成物の各成分を混合して液状の組成物を得る。これを例えば、孔径1.0〜0.2μm程度のミリポアフィルターなどでろ過して、均一な液状物とするのがより好適である。次いで、この液状の組成物を、基板上に塗布して塗膜を得る。塗布する方法としては、ディッピング法、スプレー法、ローラーコート法、スリットコート法、バーコート法、スピンコート法などがある。特にスピンコート法が汎用される。これらの方法によって、液状の樹脂組成物を1〜30μm程度の厚さに塗布した後、溶剤を除去すれば薄膜が形成される。通常、溶剤を充分に除去するためプリベーク処理が行われる。
この基板の薄膜上に所望のパターンを有するマスクを載置した後、放射線による照射を行う。用いられる放射線としては、波長の長いものから順に、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線は、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも、波長の短い放射線は、化学反応性が高く、理論的には紫外線より優れているが経済性の観点から紫外線が実用的である。
上記照射により、露光部分は重合反応により硬化する。未露光部分は現像液で現像される。このことにより、放射線の未照射部分が除去され、所望のパターンを有する薄膜が得られる。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法などが挙げられる。
上記現像液としては、アルカリ性水溶液、該アルカリ性水溶液と水溶性有機溶剤および/または界面活性剤との混合液、および本発明の組成物が溶解し得る有機溶剤が挙げられ、好ましくはアルカリ性水溶液と界面活性剤との混合液である。
本発明の感放射線性樹脂組成物を現像するのに適したアルカリ性水溶液の調製に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノナンが挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどが用いられる。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、アセトンなどが挙げられる。
このアルカリ性水溶液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどの水溶性有機溶剤、界面活性剤などが適量添加される。
本発明の樹脂組成物の現像は、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度で、市販の現像機や超音波洗浄機を用いて行うことができる。
アルカリ現像後、耐アルカリ性を向上させるために、加熱してエポキシ硬化処理を施すことが望ましい(ポストベーク処理)。本発明の樹脂組成物においては、加熱処理を行うことにより、強アルカリ水に対する耐久性が著しく向上するばかりでなく、銅などの金属あるいはガラスに対する密着性、耐熱性、表面硬度などの諸性質も向上する。この加熱硬化条件における加熱温度と加熱時間については、例えば、80〜250℃、10〜120分が挙げられる。好ましい加熱温度は100〜200℃である。このようにして、所望のパターンを有する硬化薄膜を得ることができる。
本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜は、耐熱性、透明性、基材との密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐溶剤性、表面硬度などに優れる。さらにこの硬化膜は有機性の塗膜であるため、低誘電率である。そのため、本発明の組成物は、例えば液晶ディスプレイや電子部品等の保護膜用材料(例えば、カラーフィルター、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などに用いられる保護膜の形成材料);層間絶縁膜および/または平坦化膜の形成材料(例えば、カラーフィルター、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などに用いられる層間絶縁膜および/または平坦化膜の形成材料);カラーレジスト用バインダー:プリント配線板の製造に用いられるソルダーレジスト;あるいは、液晶ディスプレイにおけるビーズスペーサーの代替となる柱状スペーサーの形成に好適なアルカリ可溶型の感光性組成物として好適に用いられる。さらに、本発明の組成物は、各種光学部品(レンズ、LED、プラスチックフィルム、基板、光ディスクなど)の材料;該光学部品の保護膜形成用のコーティング剤;光学部品用接着剤(光ファイバー用接着剤など);偏光板製造用のコーティング剤;ホログラム記録用感光性樹脂組成物などとして好適に利用される。
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
(エポキシ樹脂の合成)
以下の式(2)で示されるフルオレン化合物
407gをエピクロルヒドリン1390gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド2.2gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液210gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロルヒドリンを固形分が50%になるまで留去し、メタノールを1000g添加した。析出した結晶を濾別、乾燥し、以下の式(1)においてn≒0である白色粉末状のエポキシ樹脂(1.a)460gを得た。この樹脂のエポキシ当量は265g/eqであった。
Figure 0004847006
Figure 0004847006
Figure 0004847006
得られたエポキシ樹脂を分取GPCにより精製し、得られた精製エポキシ樹脂について構造解析を行った。次にその結果を示す。またH−NMRのチャートを図1に、13C−NMRのチャートを図2に、FD−MS(電界脱離イオン化質量分析)のチャートを図3に各々示す。
〔1〕 融点:194℃(DSCによる)
〔2〕 H−NMR(溶媒:CHCl3−d1、内部標準:TMS)
ピーク δ、ppm
d, e, d', e' 2.16 12H
a1, a1' 2.67-2.68 2H
a2, a2' 2.84-2.86 2H
b, b' 3.29-3.34 2H
c1, c1' 3.68-3.72 4H
c2, c2' 3.96-3.99 4H
f, f', h, l 6.78 4H
g, g', i, j, m, n 7.24-7.40 6H
k, o 7.73-7.75 4H
〔3〕 13C−NMR(溶媒:CHCl3−d1、内部標準:TMS)
ピーク δ、ppm
d, e, d', e' 16.671
a, a' 44.781
b, b' 50.813
l 64.728

c, c' 73.172
k, g, k', g' 120.250
o, u 126.502
m, s 127.503
h, h' 127.769
n, p, t, v 128.748
j, j' 130.394
i, i' 140.204
q, w 141.623
r, x 151.767
f, f' 154.513
〔3〕 FD−MS m/n=518(m
比較合成例1
以下の式(4)で示されるフルオレン化合物
350gをエピクロルヒドリン1390gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド2.2gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液210gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロルヒドリンを固形分が50%になるまで留去し、メタノールを1000g添加した。析出した結晶を濾別、乾燥し、以下の式(5)においてn≒0である白色粉末状のエポキシ樹脂(5.a)420gを得た。この樹脂のエポキシ当量は233g/eqであった。
Figure 0004847006
Figure 0004847006
Figure 0004847006
実施例2
(フルオレン含有エポキシ樹脂の溶剤溶解性評価)
実施例1で得られたエポキシ樹脂(1.a)20重量部と、溶剤80重量部を混合し、溶解性を確認した。溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルについて、評価を行った。評価のランクは次の通り。
○:室温で溶解する
△:加温すると溶解し、冷却しても結晶が析出しない
×:加温すると溶解するが、冷却すると結晶が析出する、あるいは、加温しても溶解しない。
本実施例および、後述の比較例1の評価結果を表1に示す。
比較例1
実施例2において、エポキシ樹脂(1.a)を比較合成例1で得られたエポキシ樹脂(5.a)とした以外は、実施例と同様に評価を行った。
Figure 0004847006
実施例3
(エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた成形体の調製および評価)
実施例1で得られた、エポキシ樹脂(1.a)100重量部とメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700)55重量部との混合物に、触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)1重量部を混合し、得られた混合物を100mm×100mm、厚み1mmのステンレス製金型に入れ、100℃のオーブンで1時間、ついで180℃で4時間加熱し、熱硬化させた。得られた成形体(試験片)を用い、次の項目について評価を行った。
[1]耐熱性:
DSC(DSC210型 エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)により、Tgの測定を行う。
[2]誘電率および誘電正接:
TR−1100形 誘電体損自動測定装置(安藤電気株式会社製)にて測定する。
[3]弾性率:
動的粘弾性測定装置DMS6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用い、−50〜250℃の温度範囲において、両持ち曲げモードで1Hzの正弦波を与えた場合の応答を測定し、貯蔵弾性率E’を求める。
本実施例に用いた組成物の組成を表2に、得られた試験片の評価結果を表3に示す。後述の実施例4、実施例5、比較例2、および比較例3についても合わせて表2および表3に示す。
Figure 0004847006
Figure 0004847006
実施例4
エポキシ樹脂(1.a)100重量部を、エポキシ樹脂(1.a)73重量部および4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、デナコールEX-146)27重量部の混合物に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を59重量部に変更したこと以外は、実施例3と同様に試験片を調製し、評価を行った。
実施例5
エポキシ樹脂(1.a)100重量部、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、デナコールEX-146)38重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製
TD-2131)57重量部の混合物に、硬化触媒としてトリフェニルホスフイン(TPP)1重量部を混合し、得られた混合物を100mm×100mm、厚み1mmのステンレス製金型に入れ、100℃のオーブンで1時間、ついで180℃で4時間加熱し、熱硬化させた。得られた成形体(試験片)を用い、実施例3の試験片と同様の評価を行った。
比較例2
エポキシ樹脂(1.a)100重量部を、比較合成例1で合成したビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(5.a)100重量部に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を63重量部に変更したこと以外は、実施例3と同様に試験片の調整を試みたが、メチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤との相溶性が悪く、試験片を作成することが出来なかった。
比較例3
実施例5において、エポキシ樹脂(1.a)100重量部を比較合成例1で合成したビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(5.a)100重量部に変更し、且つフェノールノボラック型硬化剤(大日本インキ化学工業(株)製、TD−2131)を63重量部に変更した以外は、実施例4と同様に試験片を作成し、得られた成形体(試験片)を用いて、実施例3の試験片と同様の評価を行った。
実施例6
(エポキシアクリレート樹脂の合成)
500ml四つ口フラスコ中に、実施例1で得られたエポキシ樹脂(1.a)265g(エポキシ当量265g/eq)、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド1.3g、2,6−ジイソブチルフェノール140mg、およびアクリル酸72gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで15時間を要した。淡黄色透明で固体状の多官能エポキシアクリレート樹脂(3.a)を得た。
Figure 0004847006
比較合成例2
500ml四つ口フラスコ中に、比較合成例1で得られたエポキシ樹脂(5.a)233g(エポキシ当量233g/eq)、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド1.3g、2,6−ジイソブチルフェノール140mg、およびアクリル酸72gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで15時間を要した。淡黄色透明で固体状の多官能エポキシアクリレート樹脂(6.a)を得た。
Figure 0004847006
実施例7
(エポキシアクリレート樹脂を含む光硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜の調製および評価)
実施例6で得られたエポキシアクリレート樹脂(3.a)を100重量部、そしてイルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)を3重量部、溶剤であるPGMEA中に溶解し、濃度30重量%の溶液とした。このエポキシアクリレート系樹脂を含む溶液を、スピンナーを用いてガラス基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、厚みが約2μmの塗膜を得た。次に、高圧水銀灯(400W)にて300mJ/cmの光を照射し、塗膜を硬化させた。得られた光硬化膜について、次の項目の評価を行った。
(1)屈折率:
上記得られた熱硬化膜につき、光干渉式膜質測定機にて632.8nmにおける屈折率を測定する。
(2)光線透過率:
上記得られた熱硬化膜につき、日立製分光光度計U−2000にて可視光領域における分光透過率を測定する。
(3)耐磨耗性(耐擦傷性)
基材上の熱硬化膜表面を、#1000のスチールウールで軽く押さえながら、該スチールウールを30往復させて摩擦する。この塗膜表面の傷の程度を次の基準で判断し、耐摩耗性を評価する。
○:傷がつかない
△:傷はつくが光沢は保たれている
×:無数に傷がつき、光沢が失われる
(4)密着性
JIS−Z−1552に準じ、碁盤目剥離試験により評価する。
(5)鉛筆硬度
JIS−K−5400に準じ、鉛筆硬度を測定する。
(6)膜収縮率
ポストベーク前後における膜厚変化率[(ポストベーク前の膜厚−ポストベーク後の膜厚)/(ポストベーク前の膜厚)]×100を求める。
本実施例に用いた組成物の組成を表4に、得られた薄膜の評価結果を表5に示す。後述の実施例8および比較例4についても合わせて表4および表5に示す。
Figure 0004847006
Figure 0004847006
実施例8
実施例7におけるエポキシアクリレート樹脂(3.a)100重量部をエポキシアクリレート樹脂(3.a)60重量部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)40重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例7と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
比較例4
実施例8中のエポキシアクリレート樹脂(3.a)をビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂(6.a)に変更したこと以外は、実施例7と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
実施例9(アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(A)の合成)
実施例6で調製したエポキシアクリレート樹脂(3.a)100gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)115gを加えて溶解した後、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)23.1gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.2gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で12時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)11.3gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(7)を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液について、次の項目の評価を行った。
(1)酸価(mgKOH/g)
アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液約1g精秤し、1,4−ジオキサン30mlに溶解する。指示薬として1%フェノールフタレインエタノール溶液2,3滴を添加し、0.1N水酸化ナトリウム溶液にて中和滴定する。酸価は次式により求める。
酸価(mgKOH/g)=(0.1N水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)×0.1N水酸化ナトリウム溶液のファクター×0.1×56.11)/サンプル採取量(g)
(2)平均分子量
GPC測定により決定する。平均分子量は、ポリスチレンスタンダードにて作製した検量線より計算する。
(3)色(APHA)
日本日本電色工業株式会社製 色差・濁度測定器COH-300Aと専用1cmガラスセルを用いて測定する。
(4)固形分(%)
アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液約1gをアルミ製シャーレに精秤し、140℃に設定した減圧乾燥機にて、20mmHg以下で2時間減圧乾燥させる。サンプルの計量の際、予めアルミ製シャーレの重量を測定しておく。固形分は次式により求める。
固形分(%)=(乾燥後のアルミ製シャーレの重量を含むサンプル重量(g)−アルミ製シャーレの重量(g))/サンプル採取量(g)×100
以上の結果を表6に示す。後述の実施例10〜14および比較合成例3〜5の結果も合わせて表6に示す。
Figure 0004847006
実施例10
実施例9において、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)を19.0gとした以外は、実施例9と同様な反応を行い、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(8)を得た。
実施例11
実施例9において、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)を無水ピロメリット酸(PMDA)16.3gとし、テトラハイドロ無水フタル酸(THPA)を12.5gとした以外は、実施例9と同様な反応を行い、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(9)を得た。
実施例12(アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(B)の合成)
実施例6で調製したエポキシアクリレート樹脂(3.a)100gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)115gを加えて溶解した後、ジトリメチロールプロパン1.0g、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)24.3gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.2gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で12時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)11.8gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(10)を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
実施例13
実施例12において、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)を無水ピロメリット酸(PMDA)18.0gとした以外は、実施例12と同様な反応を行い、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(11)を得た。
実施例14
実施例12において、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)を無水ピロメリット酸(PMDA)17.0gとし、ジトリメチロールプロパンをトリメチロールエタン
0.66g、テトラハイドロ無水フタル酸(THPA)を13.2gに変更した以外は、実施例12と同様な反応を行い、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(12)を得た。
比較合成例3
比較合成例2で調製したエポキシアクリレート樹脂(6.a)100gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)115gを加えて溶解した後、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)25.7gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.2gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で12時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)12.5gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。
このようにして、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(913)を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
比較合成例4
比較合成例3において、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)を無水ピロメリット酸(PMDA)18.0gとし、テトラハイドロ無水フタル酸(THPA)を14.1gとした以外は、比較合成例3と同様な反応を行い、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(14)を得た。
比較合成例5
比較合成例2で調製したエポキシアクリレート樹脂(6.a)100gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)115gを加えて溶解した後、トリメチロールエタン
0.66g、無水ピロメリット酸(PMDA)18.8gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.2gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で12時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)14.8gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂のPGMEA溶液(15)を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
実施例15
(アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を含む組成物を用いた薄膜の調製および評価)
実施例9で得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を固形分として30重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を15重量部、そしてイルガキュア907を3重量部、溶剤のPGMEA中に溶解し、濃度30重量%の溶液を得た。この溶液を、スピンナーを用いてガラス基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、厚み約2μmの塗膜を形成した。この塗膜を有するガラス基板の塗膜表面に所定のパターンを有するマスクを置き、窒素雰囲気下で、250Wの高圧水銀ランプを用いて、波長405nmにて光強度9.5mW/cmの紫外線を1000mJ/cmのエネルギー量となるように照射した。次いで、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて25℃で30秒間の現像処理を行ない、塗膜の未露光部を除去した。その後、超純水でリンス処理を行なった。得られた薄膜を有する基板を200℃のオーブンに入れ、ポストベーク処理を30分間行ない、薄膜を加熱硬化させた(以下、このように硬化した膜を加熱硬化膜と称する)。
本実施例における加熱硬化薄膜の調製時における評価、および得られた硬化膜についての評価を、以下に示す項目につき、行った。
<1>塗膜の乾燥性
上記プリベーク後の塗膜につき、乾燥性を、JIS−K−5400に準じて評価する。評価のランクは次の通りである。
○:全くスティッキングが認められない
△:わずかにスティッキングが認められる
×:顕著にスティッキングが認められる
<2>アルカリ水溶液に対する現像性
上記塗膜を有するガラス基板を露光処理せずに1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に30秒間浸漬して現像を行う。現像後のガラス基板を、50倍に拡大して残存する樹脂を目視で評価する。評価のランクは次の通りである。
○:現像性が良好である(ガラス上に樹脂が全く残らない)
△:現像性が不良である(ガラス上に樹脂がわずかに残る)
×:現像性が不良である(ガラス上に樹脂が多く残る)
<3>露光感度
上記マスクとして、ステップタブレット(光学濃度12段差のネガマスク)を塗膜に密着し、露光・現像を行う。その後、残存するステップタブレットの段数を調べる(この評価法では、高感度であるほど残存する段数が多くなる。)
<4>塗膜硬度
得られた加熱硬化膜につき、その硬度を、JIS−K−5400の試験法に準じて、鉛筆硬度試験機を用いて荷重9.8Nをかけた際の塗膜にキズが付かない最も高硬度をもって表示する。使用する鉛筆は「三菱ハイユニ」である。
<5>基板との密着性
得られた加熱硬化膜に、少なくとも100個の碁磐目を作るようにクロスカットを入れて、次いでセロテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行い、碁盤目の剥離の状態を光学顕微鏡で50倍に拡大して評価する。評価のランクは次の通りである。
○:全く剥離が認められない
×:剥離が少しでも認められる
<6>耐熱性
得られた加熱硬化膜を250℃、3時間オーブンに入れキュアベークを行う。キュアベーク前後における膜厚変化率[(キュアベーク前の膜厚−キュアベーク後の膜厚)/(キュアベーク前の膜厚)]×100を求める。評価のランクは次の通りである。
◎:膜厚変化率が非常に低い(膜厚変化率3%未満)
○:膜厚変化率が低い(膜厚変化率3%以上〜5%未満)
△:膜厚変化率がやや高い(膜厚変化率5%以上〜10%未満)
×:膜厚変化率が高い(膜厚変化率10%以上)
<7>耐熱変色性
得られた加熱硬化膜を250℃、3時間オーブンに入れキュアベークを行う。キュアベーク前後における光の透過率を、分光光度計「U−2000(日立製作所製)」を用いて400〜700nmの波長で測定する。透過率の変化は、次式により求める。
透過率の変化=[(加熱前透過率−加熱後透過率)/加熱前透過率]×100(%)
◎:透過率の変化が3%未満である
○:透過率の変化が3%以上、5%未満の範囲にある
△:透過率の変化が5%以上〜10%未満の範囲にある
×:透過率の変化が10%以上である
<8>耐薬品性
得られた加熱硬化膜を有する基板を、下記の薬品に下記の条件で浸漬する。
(i)酸性溶液:5重量%HCl水溶液中に室温で24時間浸漬
(ii)アルカリ性溶液
ii-1:5重量%NaOH水溶液中に室温で24時間浸漬
ii-2:4重量%KOH水溶液中に50℃で10分間浸漬
ii-3:1重量%NaOH水溶液中に80℃で5分間浸漬
(iii)溶剤
iii-1:N−メチルピロリドン中に40℃で10分間浸漬
iii-2:N−メチルピロリドン中に80℃で5分間浸漬
浸漬前後における膜厚変化率(%) ((浸漬前の膜厚−浸漬後の膜厚)/(浸漬前の膜厚))×100を求める。算出された膜厚変化率を基に、耐薬品性を評価する。評価の基準は次の通りである。
◎:耐薬品性に大変優れている(すべての溶液における膜厚変化率3%未満)
○:耐薬品性に優れている(すべての溶液における膜厚変化率3%以上〜5%未満)
△:耐薬品性がやや劣る(いずれかの溶液における膜厚変化率5%以上
〜10%未満)
×:耐薬品性に劣る(いずれかの溶液における膜厚変化率10%以上)
以上の結果を表7に示す。後述の実施例16〜22および比較例5〜7の結果も合わせて表7に示す。
Figure 0004847006
実施例16
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行なった。
実施例17
さらにテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製
エピコートYX−4000)6重量部を含む組成物を用いたこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
実施例18
アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を、実施例10で得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(8)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行なった。
実施例19
アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を、実施例11で得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(9)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行なった。
実施例20
アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を、実施例12で得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(10)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行なった。
実施例21
アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を、実施例13で得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(11)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行なった。
実施例22
アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を、実施例14で得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(12)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行なった。
比較例5
実施例15において、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を比較合成例3で合成したビスフェノールフルオレン型アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(13)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行なった。
比較例6
実施例15において、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を比較合成例で合成したビスフェノールフルオレン型アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(14)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行なった。
比較例7
実施例15において、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(7)を比較合成例で合成したビスフェノールフルオレン型アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(15)に変更したこと以外は、実施例15と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行なった。
表1〜6の結果から明らかなように、本発明のフルオレン含有樹脂を用いると、高硬度で、透明性が高く、高いレベルでの耐熱性および電気特性を有し、硬化収縮の度合いが少ない成形体および硬化薄膜が得られることがわかる。さらに、本発明のアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を用いると、露光および現像により基板上に所望のパターンの、上記優れた性質を有する薄膜が精度良く形成されることが明らかである。特に多価アルコールを添加した本発明のアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を用いると、更に耐熱変色性が向上することが明らかである。
本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂のH−NMRのチャートである。 本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂の13C−NMRのチャートである。 本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂のFD−MSのチャートである。

Claims (9)

  1. 下記一般式(3):
    Figure 0004847006
    (式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂とテトラカルボン酸またはその二無水物とを反応させ、得られる反応生成物とジカルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる、フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂。
  2. 請求項1に記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の製造方法であって、下記一般式(3):
    Figure 0004847006
    (式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させる工程を包含する方法。
  3. 下記一般式(3):
    Figure 0004847006
    (式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールとの混合物に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる、フルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂。
  4. 下記一般式(3):
    Figure 0004847006
    (式中、RおよびRは各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂の水酸基と多価アルコールの水酸基のモル比が99/1〜50/50であることを特徴とする請求項3に記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂。
  5. 多価アルコールがトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの中から選択してなる1種または2種以上の多価アルコールであることを特徴とする請求項3に記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂。
  6. 請求項3から5に記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の製造方法であって、下記一般式(3):
    Figure 0004847006
    (式中、R1およびR2は各々独立して水素原子またはメチル基、nは各々独立して0から10の整数である)で示されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂と多価アルコールとの混合物に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させる工程を包含する方法。
  7. 請求項1または請求項3から5のいずれかに記載のフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物。
  8. 請求項7に記載の感放射線性樹脂組成物により形成される液晶ディスプレイの層間絶縁膜。
  9. 請求項7に記載の感放射線性樹脂組成物により形成される液晶ディスプレイの保護膜。
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