A.フルオレン含有エポキシ樹脂
本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される:
ここでmは0から20までの整数、そしてXは各々独立して下記式(2)で示される単位であり、
R1およびR2は各々独立して、水素原子、またはC1〜5の直鎖アルキル基または分岐アルキル基、R3は各々独立して水素原子またはメチル基、そしてnは各々独立して0から10の整数である。
このフルオレン含有エポキシ樹脂は、本明細書中で、「フルオレン含有エポキシ樹脂(1)」、「エポキシ樹脂(1)」などと記載される場合がある。上記一般式(1)において、mは、好ましくは、0〜5、そして一般式(2)においてnは、好ましくは0〜5である。一般式(2)において、ベンゼン環に結合する酸素原子は、好ましくは該ベンゼン環上の硫黄原子に対してp位に存在する。
上記エポキシ化合物(1)は、例えば次の一般式(3)で表されるフルオレン化合物:
(ここでR1およびR2は各々独立して、水素原子、またはC1〜5の直鎖アルキル基または分岐アルキル基、R3は各々独立して水素原子またはメチル基、そしてnは各々独立して0から10の整数である)にエピクロルヒドリンを作用させることにより得られる。
上記フルオレン化合物(以下、フルオレン化合物(3)、本明細書中で、多官能水酸基含有フルオレン化合物(3)などという場合がある)は、例えば、4−ヒドロキシチオフェノールのようなチオール類とフルオレノンとの反応により製造される。
上記多官能水酸基含有フルオレン化合物(3)とエピクロルヒドンリンとの反応は通常50〜120℃の温度範囲において3〜10時間行われる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂(1)を含有する。このエポキシ樹脂(1)は1種のみの単独の化合物であっても、2種以上の混合物であってもよい。
このエポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて(i)上記エポキシ樹脂(1)以外のエポキシ樹脂、(ii)反応性希釈剤、(iii)硬化剤、(iv)硬化促進剤、(v)添加剤、(vi)溶剤(溶媒)などが含有され得る。
上記(i)のエポキシ樹脂(1)以外のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどのビスフェノール系エポキシ樹脂;フェノール樹脂、クレゾールノボラック型樹脂などの多官能フェノール系エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂などのナフタレン系エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;上記エポキシ樹脂(1)以外のフルオレン系エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記(ii)の反応性希釈剤は粘度調整を行うために添加する低粘度なエポキシ化合物であり、特に二官能以上の低粘度エポキシ化合物が好ましい。反応性希釈剤としては、例えば、次の化合物が挙げられる:ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど。これら反応性希釈剤は1種のみを単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
上記(iii)の硬化剤としては、特に限定されないが、アミン化合物類、イミダゾール化合物、カルボン酸類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類、メチロール基含有化合物類、トリフル酸(Trif1ic acid)塩類、三弗化硼素エーテル錯化合物類、三弗化硼素、光または熱により酸を発生するジアゾニウム塩類、スルホニウム塩類、ヨードニウム塩類、ベンゾチアゾリウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類などが挙げられる。
上記(iv)の硬化促進剤としては、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7およびそのフェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などのアミン類(第三アミンを含む)およびその誘導体;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;エチルホスフィン、プロピレンホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリアルキルホスフィンなどの、オルガノホスフィン類(第1、第2、および第3ホスフィン類)などが挙げられる。
上記(v)の添加剤としては、補強材または充填材、着色剤、顔料、難燃剤、硬化性化合物(硬化性モノマー、オリゴマー、または樹脂)などが挙げられる。上記補強剤または充填剤としては、粉末状あるいは繊維状の補強剤や充填剤が用いられる。粉末状の補強剤または充填剤としては、例えば次の素材でなる材料が挙げられる:酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩;ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなど。繊維状の補強剤または充填剤としては、次の材料が挙げられる:ガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維など。上記着色剤、顔料、または難燃剤としては、例えば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐、ブロム化合物およびトリフェニルホスフェイトなどが挙げられる。上記硬化性化合物は、最終的な塗膜、接着層、成形品などにおける樹脂の性質を改善する目的で用いられる。それには、例えば、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などがある。これら硬化性化合物は、本発明の樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量で含有される。上記添加剤は、いずれも1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(vi)の溶剤としては、例えば、次の溶剤が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の組成物は、目的に応じた成形体とされる。この成形体は、組成物自体の硬化物でなる所望の形状の製品、あるいは基材上に形成された該組成物の硬化物でなる塗膜であってもよい。例えば上記組成物は、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱しあるいは放射線照射することにより硬化し、所望の形状の成形体が得られる。あるいは、溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥し、次いで加熱しあるいは光照射することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。
成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法が用いられる。加熱加圧による方法としては、例えば、ハンドレイアップやスプレーレイアップと呼ばれる方法により常圧で本発明の組成物を金型に充填した後、加熱硬化させる方法;トランスファープレス装置を用いて射出成形により加熱圧縮する方法;および連続積層成形法、プルトルージョンと呼ばれる連続引抜成形法、フィラメントワインディング成形法などの連続成形法が挙げられる。またこれらの成形方法においては、上記樹脂組成物を補強剤と混合、あるいは補強剤に含浸させることにより中間成形材料を得、これを成形し、硬化させることもできる。補強剤としては、樹脂、ガラスなどでなる織布、不織布などが挙げられる。これを用いて得られる中間成形材料としては、例えば、SMC(シートモールデイングコンパウンド)と呼ばれるシート状の中間成形材料;BMC(ベルクモールデイングコンパウンド)あるいはプレミックスと呼ばれる液状または固形状の中間成形材料;ガラスクロスやマットなどに本発明の組成物を含浸させたプリプレグなどが挙げられる。
本発明のフルオレン含有エポキシ樹脂は、熱または放射線照射により容易に硬化する。このエポキシ樹脂を含む樹脂組成物は成形加工性に優れるため、上述のように、金型により所定の形状に成形し、あるいは基板上に薄膜を形成することが容易である。これらを熱または放射線により硬化させて得られた成形体(薄膜を含む)は、耐熱性および耐環境性に優れ、屈折率が高く、透明性、絶縁性、および接着性に優れる。
従って、本発明のエポキシ樹脂またはこれを含む樹脂組成物は、絶縁性、耐熱性、高い屈折率、および透明性を必要とする光学デバイス用または光学材料用硬化性樹脂組成物として有用である。あるいは、絶縁性、耐熱性、耐環境性などを必要とする電気・電子絶縁材料用の封止材;コンデンサーなど各種電子部品のポッティング材、コーティング材などに好適に用いることが可能である。ポッティング剤として使用する場合には、従来から一般に使用されるエポキシ樹脂を用いた封止用樹脂と同様の方法で使用することができる。
B.フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂
本発明のエポキシアクリレート樹脂は、下記一般式(4)で表される:
ここで、R4は各々独立して水素原子またはメチル基、mは0から20の整数、そしてXは各々独立して下記の一般式(2)で表される単位であり、
R1およびR2は各々独立して、水素原子、またはC1〜5の直鎖アルキル基または分岐アルキル基、R3は各々独立して水素原子またはメチル基、そしてnは各々独立して0から10の整数である。
上記一般式(4)において、mは、好ましくは、0〜5、そして一般式(2)においてnは、好ましくは0〜5である。一般式(2)において、ベンゼン環に結合する酸素原子は、好ましくは該ベンゼン環上の硫黄原子に対してp位に存在する。
このフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂は、本明細書中で、「フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)」、「エポキシアクリレート樹脂(4)」などと記載される場合がある。
上記エポキシアクリレート樹脂(4)は、例えば、次の一般式で表されるエポキシ樹脂(1)に(メタ)アクリル酸を作用させることにより得られる:
(ここでmは0から20までの整数、そしてXは各々独立して下記式(2)で示される単位であり、
R1およびR2は各々独立して、水素原子、またはC1〜5の直鎖アルキル基または分岐アルキル基、R3は各々独立して水素原子またはメチル基、そしてnは各々独立して0から10の整数である)。
あるいは、次の一般式で表されるフルオレン化合物(3)に、(メタ)アクリル酸グリシジルを作用させることにより得られる:
(ここでR1およびR2は各々独立して、水素原子、またはC1〜5の直鎖アルキル基または分岐アルキル基、R3は各々独立して水素原子またはメチル基、そしてnは各々独立して0から10の整数である。)。
上記エポキシ樹脂(1)と(メタ)アクリル酸との反応、およびフルオレン化合物(3)と(メタ)アクリル酸グリシジルの反応は、いずれも必要に応じて適切な溶媒を用いて、50〜120℃の温度範囲において5〜30時間行なわれる。上記用いられ得る溶媒としては、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレンモノアルキルエーテルアセテート類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン類などがある。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、および3−メトキシブチル−1−アセテートが好適である。
上記エポキシアクリレート樹脂(4)は、熱硬化性および放射線硬化性を有する。ここで、放射線とは、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などを総称していう。従って、このエポキシアクリレート樹脂(4)を含む樹脂組成物は、熱硬化性または感放射線性の樹脂組成物として機能する。いずれの組成物においても上記エポキシアクリレート樹脂(4)は単独で含有されていてもよく、2種以上の混合物として含有されていてもよい。
上記エポキシアクリレート樹脂(4)を含む樹脂組成物が、感放射線性樹脂組成物である場合には、該組成物には、上記エポキシアクリレート樹脂(4)に加えて(I)光重合開始剤が含有され得、熱硬化性樹脂組成物である場合には(II)ラジカル開始剤が含有され得る。さらにこれらの組成物のいずれにも、(III)上記エポキシアクリレート樹脂(4)以外の光または熱硬化性のアクリレート化合物、(IV)添加剤、(V)溶剤(溶媒)などが含有され得る。
本発明の感放射線性樹脂組成物中に含有され得る上記(I)の光重合開始剤は、上記エポキシアクリレート樹脂(4)および必要に応じて含有される上記光硬化性のアクリレート化合物の光重合を開始させる作用を有する化合物および/または増感効果を有する化合物である。このような光重合開始剤としては、例えば次の化合物が挙げられる:アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物。
これらの化合物は、その1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。さらに、それ自体では光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。このような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
上記熱硬化性樹脂組成物に含有され得る(II)のラジカル開始剤としては、ケトンパーオキサイド系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、アルキルパーエステル系化合物、パーカーボネート系化合物、アゾビス系化合物などでなるラジカル開始剤が用いられる。特に、ジアシルパーオキサイド系あるいはアゾビス系のラジカル開始剤が好適であり、例えば過酸化ベンゾイル、α,α’−アゾビス(イソブチロニトリル)などが汎用される。
上記(III)のエポキシアクリレート樹脂(4)以外の光または熱硬化性のアクリレート化合物は、組成物が必要とされる物性に応じて、粘度調整剤あるいは光架橋剤として利用され、該化合物は所定の範囲内で組成物中に含有される。このようなアクリレート化合物としては、例えば、次の化合物がある:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する1価のアクリレート;およびエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの多価(メタ)アクリレート。
これらの化合物は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。
上記(IV)の添加剤としては、該組成物の使用目的に応じて、熱重合禁止剤、酸化防止剤、密着助剤、消泡剤、界面活性剤、可塑剤などが用いられる。
これらのうち熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、2,6−ジt−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール系酸化防止剤、およびトリフェニルフォスファイトなどのリン系酸化防止剤が挙げられる。
密着助剤は、エポキシアクリレート樹脂(4)を含む液状の組成物が基材に塗布される場合に、基材との接着性を向上させる目的で添加される。該密着助剤としては、好ましくは、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナト基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン化合物(官能性シランカップリング剤)が用いられる。このような官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、アクリル系化合物などが挙げられる。
界面活性剤は、液状の組成物を塗布しやすくすること、得られる塗膜の平担度を向上させることなどの目的で含有される。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、およびアクリル系の化合物が挙げられる。具体的には例えば、BM−1000[BMへミー社製];メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173およびメガファックF183[大日本インキ化学工業(株)製];フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430およびフロラードFC−431[住友スリーエム(株)製];サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141およびサーフロンS−145[旭硝子(株)製];SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57およびDC−190[東レシリコーン(株)製]などが挙げられる。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルなどが挙げられる。
上記(V)の溶剤としては、例えば、次の化合物が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の感放射線性樹脂組成物を硬化させるのに用いる放射線としては、波長の長いものから順に、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などが挙げられる。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも、波長の短い前記放射線は、化学反応性が高いため理論的には紫外線より優れているが、経済性の観点から紫外線が実用的である。
本発明のエポキシアクリレート樹脂組成物は、上記エポキシアクリレート樹脂(4)、および必要に応じて上記エポキシアクリレート樹脂(4)以外の光または熱硬化性のアクリレート化合物、ラジカル開始剤(熱硬化性樹脂組成物の場合)、光重合開始剤(感放射線性樹脂組成物の場合)各種添加剤などを含む。これらの成分は適宜混合、あるいは溶剤中に分散され、目的に応じた成形体とされる。この成形体は、組成物自体の硬化物でなる所望の形状の製品、あるいは基材上に形成された該組成物の硬化物でなる塗膜であってもよい。
例えば溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥し、次いで放射線(例えば光)を照射しあるいは加熱することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。あるいは、上記放射線硬化性あるいは熱硬化性の組成物は、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱しあるいは放射線照射することにより、所望の形状の成形体が得られる。
上記本発明の組成物により形成された成形体(塗膜を含む)は、耐熱性、電気特性に優れ、さらに、高い屈折率を有する。
本発明のフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)および該樹脂を含む組成物は、種々の用途に利用される。例えば、各種成形体、コーティング剤、特に高い屈折率と耐熱性とを要求されるコーティング剤として有用である。具体的には、本発明の組成物は、光導波路、マイクロレンズなどの形成に好適な感光性組成物;各種光学部品(レンズ、LED、プラスチックフィルム、基板、光ディスクなど)の材料;該光学部品の保護膜形成用のコーティング剤;光学部品用接着剤(光ファイバー用接着剤など);偏光板製造用のコーティング剤;ホログラム記録用感光性樹脂組成物原料などとして好適に利用される。
C.フルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂
本発明のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、下記一般式(4)で表されるフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂:
(ここで、R4は各々独立して水素原子またはメチル基、mは0から20の整数、そしてXは各々独立して下記の一般式(2)で表される単位であり、
R1およびR2は各々独立して、水素原子、またはC1〜5の直鎖アルキル基または分岐アルキル基、R3は各々独立して水素原子またはメチル基、そしてnは各々独立して0から10の整数である)に、少なくとも1種の多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる樹脂である。
上記一般式(2)において、ベンゼン環に結合する酸素原子は、好ましくは該ベンゼン環上の硫黄原子に対してp位に存在する。
このフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、本明細書中で、「放射線重合性不飽和樹脂」、「不飽和樹脂」、「アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂」などと記載される場合がある。
上記フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させるに際して、使用する多塩基性カルボン酸またはその無水物を適宜選択することによって、フルオレン骨格を有し、異なる構造の放射線重合性不飽和樹脂が得られる。例えば、次の3つのタイプのフルオレン含有不飽和樹脂が得られる。
(C.1) 第1のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂:上記フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させて得られる樹脂;
(C.2) 第2のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物とを反応させて得られる樹脂;および、
(C.3) 第3のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂:フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させ、得られる反応生成物とジカルボン酸無水物とを反応させて得られる樹脂。
これらの構造が異なる樹脂は、それぞれ、目的の用途に応じて利用される。
本発明に用いられる多塩基性カルボン酸は、ジカルボン酸、テトラカルボン酸などの複数のカルボキシル基を有するカルボン酸であり、これらの多塩基性カルボン酸、あるいはその無水物としては、次の化合物が挙げられる:マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸などのジカルボン酸およびそれらの無水物;トリメリット酸などのトリカルボン酸およびその無水物;ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸およびそれらの酸二無水物など。
第1のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、例えば、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と、1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させて得られる。具体的には、例えばエチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤を用い、加熱して反応させることにより製造される。
上記「1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物」とは、「特定の多塩基性カルボン酸およびそれに対応する無水物のうちの少なくとも一方」という意味であり、例えば、多塩基性カルボン酸がフタル酸であれば、フタル酸およびフタル酸無水物のうちの少なくとも一方を指していう。
第2のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、例えば、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物とを反応させて得られる。具体的には、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒を用い、加熱して反応させることにより製造される。第2のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、代表的には、下記の一般式(5)で表される:
ここで、Yは各々独立して一般式(6)で示されるジカルボン酸無水物の残基、Zは各々独立して一般式(7)で示されるテトラカルボン酸二無水物の残基であり、
kおよびlは、それぞれ重合度を示し、Qは、一般式(8)で示される基であり:
R4は各々独立して水素原子またはメチル基、mは0から20までの整数であり、Xは各々独立して下記の一般式(2)で表される単位であり、
R1およびR2は各々独立して、水素原子、またはC1〜5の直鎖アルキル基または分岐アルキル基、R3は各々独立して水素原子またはメチル基、そしてnは各々独立して0から10の整数である。上記ジカルボン酸を含む単位およびテテトラカルボン酸を含む単位は、樹脂中において任意の数および順序で結合している。上記kおよびlについては、それらのモル比(k/l)が1/99〜99/1であることが好ましく、5/95〜80/20であることがより好ましい。
本明細書中で、「ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物を反応させる」とは、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物が同時に存在する条件下で反応を行うことを意味する。
上記第3のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、例えばまず、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させた後、反応生成物にカルボン酸無水物を反応させることにより得られる。いずれの反応も、通常、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒中で加熱することにより行われる。本発明の第3のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、代表的には以下の一般式(9)で表される:
式中、Q、Y、およびZは上記式(5)におけるのと同じであり、pは1以上の整数である。pは1〜20の整数であることが好ましい。
上記フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と多塩基性カルボン酸またはその無水物との反応においては、上記第1〜第3のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂のいずれにおいても、多塩基性カルボン酸またはその無水物とフルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)中に存在する水酸基とが定量的に反応することが望ましい。
上記フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と多塩基性カルボン酸またはその無水物の反応時には、反応温度は50〜130℃が好ましく、より好ましくは70〜120℃である。反応温度が130℃を超えるとカルボキシル基と水酸基の縮合が一部起こり、急激に分子量が増大する。一方、50℃未満では反応がスムーズに進行せず、未反応の多塩基性カルボン酸またはその無水物が残存する。
上記フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)と多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させて、フルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂を合成する場合に、該多塩基性カルボン酸またはその無水物は、フルオレン含有エポキシアクリレート樹脂(4)の水酸基1当量(モル)に対して、酸無水物基換算で0.4〜1当量、好ましくは0.75〜1当量の割合で反応に供される。ここで酸無水物換算とは、使用する多塩基性カルボン酸またはその無水物に含まれるカルボキシル基および酸無水物基をすべて酸無水物基に換算したときの量を示す。
上記第2および第3のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹の製造に際し、ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物との割合は、モル比で1/99〜99/1であることが好ましい。ジカルボン酸無水物の割合が、全酸無水物の1モル%未満では生成する樹脂の粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。さらに、得られる樹脂の分子量が大きくなりすぎるため、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に薄膜を形成し、露光を行った場合に、該露光部が現像液に対して溶解しにくくなり、目的のパターンが得られにくくなる傾向にある。
このようにして、本発明の放射線重合性不飽和樹脂が調製される。
本発明のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物は、該フルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂、および必要に応じて、(a)光重合開始剤、(b) 本発明のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂以外の重合性のモノマーまたはオリゴマー、(c)エポキシ基を有する化合物、(d)添加剤、(e)溶剤(溶媒)などを含有する。
上記(a)の光重合開始剤とは、光重合開始作用を有する化合物および/または増感効果を有する化合物をいう。このような化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる:アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物。
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、それ自体では、光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
上記(b)のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂以外の重合性のモノマーまたはオリゴマーは、放射線で重合することのできるモノマーやオリゴマーであり、組成物の使用目的に応じた物性にあわせて含有させることができる。このような放射線で重合し得るモノマーあるいはオリゴマーとしては、以下のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するモノマー類;およびエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類。これらのモノマーあるいはオリゴマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのモノマーあるいはオリゴマーは、粘度調整剤あるいは光架橋剤として作用し、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、上記モノマーおよびオリゴマーの少なくとも1種が、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂100重量部に対して50重量部以下の範囲で組成物中に含有される。このモノマーあるいはオリゴマーの含有量が50重量部を超えるとプリベーク後のスティッキング性に問題が出てくる。
上記(c)のエポキシ基を有する化合物としては、エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーまたはモノマーが用いられる。エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーとしては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂がある。エポキシ基を少なくとも1個有するモノマーとしては、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらのエポキシ基を有する化合物は、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、フルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂100重量部当たり、エポキシ基を有する化合物が50重量部以下の割合で含有される。50重量部を超える場合には、該成分を含む組成物を硬化させたときに割れが起こり、密着性も低下しやすくなる。
上記(d)の添加剤としては、熱重合禁止剤、密着助剤、エポキシ基硬化促進剤、界面活性剤、消泡剤などがあり、これらは本発明の目的が損なわれない範囲の量で組成物中に含有される。
熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。
上記密着助剤は、得られる組成物の接着性を向上させるために含有させる。密着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナト基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン化合物(官能性シランカップリング剤)が好ましい。この官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
上記エポキシ基硬化促進剤としては、アミン化合物類、イミダゾール化合物類、カルボン酸類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類またはメチロール基含有化合物類などが挙げられる。エポキシ基硬化促進剤を少量含有させることにより、加熱により得られる硬化膜の耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐メッキ性、密着性、電気特性、硬度などの諸特性が向上する。
上記界面活性剤は、例えば、液状の組成物を基板上に塗布することを容易にするために含有させ、これにより得られる膜の平担度も向上する。界面活性剤としては、例えばBM−1000(BMヘミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173およびメガファックF183(大日本インキ化学工業(株)製);フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430およびフロラードFC−431(住友スリーエム(株)製);サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141およびサーフロンS−145(旭硝子(株)製);SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57およびDC−190(東レシリコーン(株)製)などが挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アクリル系などの化合物が挙げられる。
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有され得る上記(e)の溶剤は、組成物中の各成分を均一に溶解し、例えば基板上への塗工を容易にするために用いられる。このような溶剤としては、組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に制限はない。例えば、次の化合物が挙げられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなとのジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。
これらの中でグリコールエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ケトン類およびエステル類が好ましく、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびメチルアミルケトンが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のフルオレン含有放射線重合性不飽和樹脂は、アルカリに可溶であり、かつ放射線照射により硬化可能である。この放射線重合性不飽和樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物は、所望の形状に成形し、放射線により硬化させて、種々の目的に利用される。特に、該組成物により基板上に薄膜を形成し、放射線照射を行った後、現像することにより所定のパターンを有する薄膜を形成する目的に利用される(後述)。
例えば、上述のように、基板上に薄膜を形成して、放射線硬化および現像を行う場合には、通常、まず溶媒を含む上記組成物の各成分を混合して液状の組成物を得る。これを例えば、孔径1.0〜0.2μm程度のミリポアフィルターなどでろ過して、均一な液状物とするのがより好適である。次いで、この液状の組成物を、基板上に塗布して塗膜を得る。塗布する方法としては、ディッピング法、スプレー法、ローラーコート法、スリットコート法、バーコート法、スピンコート法などがある。特にスピンコート法が汎用される。これらの方法によって、液状の樹脂組成物を1〜30μm程度の厚さに塗布した後、溶剤を除去すれば薄膜が形成される。通常、溶剤を充分に除去するためプリベーク処理が行われる。
この基板の薄膜上に所望のパターンを有するマスクを載置した後、放射線による照射を行う。用いられる放射線としては、波長の長いものから順に、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線は、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも、波長の短い放射線は、化学反応性が高く、理論的には紫外線より優れているが経済性の観点から紫外線が実用的である。
上記照射により、露光部分は重合反応により硬化する。未露光部分は現像液で現像される。このことにより、放射線の未照射部分が除去され、所望のパターンを有する薄膜が得られる。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法などが挙げられる。
上記現像液としては、アルカリ性水溶液、該アルカリ性水溶液と水溶性有機溶剤および/または界面活性剤との混合液、および本発明の組成物が溶解し得る有機溶剤が挙げられ、好ましくはアルカリ性水溶液と界面活性剤との混合液である。
本発明の感放射線性樹脂組成物を現像するのに適したアルカリ性水溶液の調製に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノナンが挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどが用いられる。通常、1重量%程度の炭酸ナトリウム水溶液が好適に用いられる。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、アセトンなどが挙げられる。
このアルカリ性水溶液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどの水溶性有機溶剤、界面活性剤などが適量添加される。
本発明の樹脂組成物の現像は、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度で、市販の現像機や超音波洗浄機を用いて行うことができる。
アルカリ現像後、耐アルカリ性を向上させるために、加熱してエポキシ硬化処理を施すことが望ましい(ポストベーク処理)。本発明の樹脂組成物においては、加熱処理を行うことにより、強アルカリ水に対する耐久性が著しく向上するばかりでなく、ガラス、銅などの金属に対する密着性、耐熱性、表面硬度などの諸性質も向上する。この加熱硬化条件における加熱温度と加熱時間については、例えば、80〜250℃、10〜120分が挙げられる。好ましい加熱温度は100〜200℃である。このようにして、所望のパターンを有する硬化薄膜を得ることができる。
本発明の放射線重合性不飽和樹脂は、熱あるいは放射線により容易に重合して硬化する。この放射線重合性不飽和樹脂あるいは該樹脂を含有する組成物は、所望の形状の硬化物とすることができる。例えば、該組成物を用いて基板上に硬化膜を形成することができる。この硬化膜は、耐熱性、透明性、基材との密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐溶剤性、表面硬度などに優れる。さらにこの硬化膜は高屈折率を有し、誘電率が低い。そのため、本発明の組成物は例えば、各種成形体およびコーティング剤、特に高い屈折率と耐熱性とを要求されるコーティング剤として有用である。具体的には本発明の組成物は、光導波路やマイクロレンズなどの形成に好適な感光性組成物;各種光学部品(レンズ、LED、プラスチックフィルム、基板、光ディスクなど)の材料;該光学部品の保護膜形成用のコーティング剤;光学部品用接着剤(光ファイバー用接着剤など);偏光板製造用のコーティング剤;ホログラム記録用感光性樹脂組成物原料などとして好適に利用される。
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
(エポキシ樹脂の合成)
下記式(3.a)で示されるフルオレン化合物(上記一般式(3)においてn=0、R1=H、R2=H)100gをエピクロルヒドリン450gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液50gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロルヒドリンを留去し、下記のエポキシ樹脂(1.a)115gを得た。この化合物のエポキシ当量は300g/eqであった。
ここで、各Xは下記式(2.a)で表される単位であり、mの値は0〜3であり、その平均値は約0.2(m=0の化合物の存在比率は90%以上)であった。
実施例2
(エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた成形体の調製および評価)
実施例1で得られた、エポキシ樹脂(1.a)100重量部とメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤(新日本理化(株)製リカシッドMH−700)49重量部との混合物に、触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)1重量部を混合し、得られた混合物を100mm×100mm、厚み1mmのステンレス製金型に入れ、100℃のオーブンで1時間、ついで180℃で4時間加熱し、熱硬化させた。得られた成形体(試験片)を用い、次の項目について評価を行った。
(1)耐熱性:
DSC(DSC210型 セイコー電子工業株式会社製)により、Tgの測定を行う。
(2)誘電率および誘電正接:
TR−1100形 誘電体損自動測定装置(安藤電気株式会社製)にて測定する。
(3)弾性率:
動的粘弾性測定装置DMS6100(セイコー電子工業(株)製)を用い、−50〜250℃の温度範囲において、両持ち曲げモードで1Hzの正弦波を与えた場合の応答を測定し、貯蔵弾性率E’を求める。
本実施例に用いた組成物の組成を表1に、得られた試験片の評価結果を表2に示す。後述の実施例3〜4、および比較例1についても合わせて表1および表2に示す。
実施例3
エポキシ樹脂(1.a)100重量部を、エポキシ樹脂(1.a)40重量部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)製AER−260)60重量部の混合物に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を66重量部に変更したこと以外は、実施例2と同様に試験片を調製し、評価を行なった。
実施例4
実施例1で得られたエポキシ樹脂(1.a)100重量部と2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)5重量部とを混合し、得られた混合物をステンレス製の型に流し込み、100℃のオーブンで1時間、ついで180℃で4時間加熱し、熱硬化させて、実施例2と同様の形状の試験片を調製した。この試験片について、実施例2と同様に評価を行った。
比較例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)製:AER−260)100重量部とフェノールノボラック型硬化剤(大日本インキ化学工業(株)製 TD−2131)79重量部との混合物に、触媒としてトリフェニルホスフィン(TPP)1重量部を混合し、得られた混合物をステンレス製の型に流し込み、100℃のオーブンで1時間、ついで180℃で4時間加熱し、熱硬化させた。得られた成形体(試験片)を用いて、実施例2の試験片と同様の評価を行なった。
実施例5
(エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた薄膜の調製および評価)
実施例1で得られたエポキシ樹脂(1.a)30重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70重量部に溶解し、触媒としてサンエイド SI−60(三新化学工業(株)製)3重量部を混合した。次に、得られた混合物をスピンナーを用いてガラス基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、膜厚約2μmの塗膜を得た。次いで、240℃のオーブンで1時間ポストベークして熱硬化させた。得られた熱硬化膜について、次の項目の評価を行った。
(1)屈折率:
上記得られた熱硬化膜につき、光干渉式膜質測定機にて632.8nmにおける屈折率を測定する。
(2)光線透過率:
上記得られた熱硬化膜につき、日立製分光光度計U−2000にて可視光領域における分光透過率を測定する。
(3)耐磨耗性(耐擦傷性):
基材上の熱硬化膜表面を、#1000のスチールウールで軽く押さえながら、該スチールウールを30往復させて摩擦する。この塗膜表面の傷の程度を次の基準で判断し、耐摩耗性を評価する。
○:傷がつかない
△:傷はつくが光沢は保たれている
×:無数に傷がつき、光沢が失われる
(4)密着性:
JIS−Z−1552に準じ、碁盤目剥離試験により評価する。
(5)鉛筆硬度
JIS−K−5400に準じ、鉛筆硬度を測定する。
本実施例に用いた組成物の組成を表3に、得られた薄膜の評価結果を表4に示す。後述の実施例6および比較例2についても合わせて表3および表4に示す。
実施例6
エポキシ樹脂(1.a)30重量部を、エポキシ樹脂(1.a)12重量部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製エピクロン860)18重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例5と同様の条件で硬化膜を作成し、評価を行なった。
比較例2
エポキシ樹脂(1.a)をビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 エピクロン860)に変更したこと以外は、実施例5と同様の条件で硬化膜を作成し、評価を行なった。
実施例7
(エポキシアクリレート樹脂の合成)
300ml四つ口フラスコ中に、実施例1で得られたエポキシ樹脂(1.a)100g(エポキシ当量300g/eq)、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド350mg、2,6−ジイソブチルフェノール53mg、およびアクリル酸24gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで15時間を要した。淡黄色透明で固体状の多官能エポキシアクリレート樹脂(4.a)を得た。
ここで、各Xは下記構造式(2.a)で表される単位であり、mの値は0〜3であり、その平均値は約0.2(m=0の化合物の存在比率は90%以上)であった:
実施例8
(エポキシアクリレート樹脂を含む放射線硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜の調製および評価)
実施例7で得られたエポキシアクリレート樹脂(4.a)を100重量部、そしてイルガキュア907を3重量部、溶剤であるPGMEA中に溶解し、濃度30重量%の溶液とした。このエポキシアクリレート系樹脂を含む溶液を、スピンナーを用いてガラス基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、厚みが約2μmの塗膜を得た。次に、高圧水銀灯(400W)にて300mJ/cm2の光を照射し、塗膜を硬化させた。得られた硬化薄膜の表面特性を実施例5と同様の試験法に従って評価した。本実施例に用いた組成物の組成を表5に、そして得られた硬化膜の評価結果を表6に示す。後述の実施例9および比較例3についても合わせて表5および表6に示す。
実施例9
実施例8におけるエポキシアクリレート樹脂(4.a)100重量部をエポキシアクリレート樹脂(4.a)60重量部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)40重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例8と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行なった。
比較例3
実施例8におけるエポキシアクリレート樹脂(4.a)をビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂に変更したこと以外は、実施例8と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行なった。
実施例10
(アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の合成)
実施例7で調製したエポキシアクリレート樹脂(4.a)58gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)70gを加えて溶解した後、テトラハイドロ無水フタル酸(THPA)23gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合した。これを徐々に昇温して110〜115℃で6時間反応させた。このようにして、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(9.a)のPGMEA溶液(淡黄色透明液体)を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
ここで、各Xは下記構造式(2.a)で表される単位であり、mの値は0〜3であり、その平均値は約0.2(m=0の化合物の存在比率は90%以上)であった:
実施例11
(アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を含む組成物を用いた薄膜の調製および評価)
実施例10で得られたアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(9.a)のPGMEA溶液を該樹脂換算で30重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を20重量部、そしてイルガキュア907を3重量部、溶剤のPGMEA中に溶解し、濃度30重量%の溶液を得た。この溶液を、スピンナーを用いてガラス基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、厚み約2μmの塗膜を形成した。この塗膜を有するガラス基板の塗膜表面に所定のパターンを有するマスクを置き、窒素雰囲気下で、250Wの高圧水銀ランプを用いて、波長405nmにて光強度9.5mW/cm2の紫外線を1000mJ/cm2のエネルギー量となるように照射した。次いで、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて25℃で30秒間の現像処理を行ない、塗膜の未露光部を除去した。その後、超純水でリンス処理を行なった。得られた薄膜を有する基板を200℃のオーブンに入れ、ポストベーク処理を30分間行ない、薄膜を加熱硬化させた(以下、このように硬化した膜を加熱硬化膜と称する)。
本実施例における加熱硬化薄膜の調製時における評価、および得られた硬化膜についての評価を、以下に示す項目につき行った。
(1)塗膜の乾燥性
上記プリベーク後の塗膜につき、乾燥性を、JIS−K−5400に準じて評価する。評価のランクは次の通りである。
○:全くスティッキングが認められない
△:わずかにスティッキングが認められる
×:顕著にスティッキングが認められる
(2)アルカリ水溶液に対する現像性
上記塗膜を有するガラス基板を露光処理せずに1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に30秒間浸漬して現像を行う。現像後のガラス基板を、50倍に拡大して残存する樹脂を目視で評価する。評価のランクは次の通りである。
○:現像性が良好である(ガラス上に樹脂が全く残らない)
△:現像性が不良である(ガラス上に樹脂がわずかに残る)
×:現像性が不良である(ガラス上に樹脂が多く残る)
(3)露光感度
上記マスクとして、ステップタブレット(光学濃度12段差のネガマスク)を塗膜に密着させ、露光・現像を行う。その後、残存するステップタブレットの段数を調べる(この評価法では、高感度であるほど残存する段数が多くなる。)
(4)塗膜硬度
得られた加熱硬化膜につき、その硬度を、JIS−K−5400の試験法に準じて、鉛筆硬度試験機を用いて荷重9.8Nをかけた際の塗膜にキズが付かない最も高硬度をもって表示する。使用する鉛筆は「三菱ハイユニ」である。
(5)基板との密着性
得られた加熱硬化膜に、少なくとも100個の碁磐目を作るようにクロスカットを入れて、次いでセロテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行い、碁盤目の剥離の状態を光学顕微鏡で50倍に拡大して評価する。評価のランクは次の通りである。
○:全く剥離が認められない
×:剥離が少しでも認められる
(6)耐熱性
得られた加熱硬化膜を250℃、3時間オーブンに入れキュアベークを行う。キュアベーク前後における膜厚変化率[(キュアベーク前の膜厚−キュアベーク後の膜厚)/(キュアベーク前の膜厚)]×100を求める。評価のランクは次の通りである。
○:膜厚変化率が非常に低い(膜厚変化率5%未満)
△:膜厚変化率が低い(膜厚変化率5%以上〜10%未満)
×:膜厚変化率が高い(膜厚変化率10%以上)
(7)耐薬品性
得られた加熱硬化膜を有する基板を、下記の薬品に下記の条件で浸漬する。
(i)酸性溶液:5重量%HCl水溶液中に室温で24時間浸漬
(ii)アルカリ性溶液
ii-1:5重量%NaOH水溶液中に室温で24時間浸漬
ii-2:4重量%KOH水溶液中に50℃で10分間浸漬
ii-3:1重量%NaOH水溶液中に80℃で5分間浸漬
(iii)溶剤
iii-1:N−メチルピロリドン中に40℃で10分間浸漬
iii-2:N−メチルピロリドン中に80℃で5分間浸漬
浸漬前後における膜厚変化率(%) [(浸漬前の膜厚−浸漬後の膜厚)/(浸漬前の膜厚)]×100を求める。算出された膜厚変化率を基に、耐薬品性を評価する。評価の基準は次の通りである。
○:耐薬品性に優れている(すべての溶液における膜厚変化率5%未満)
△:耐薬品性がやや良好である(いずれかの溶液における膜厚変化率5%以上
〜10%未満)
×:耐薬品性に劣る(いずれかの溶液における膜厚変化率10%以上)
(8)屈折率
塗膜を形成後、塗膜全体を露光して硬化させ、さらに200℃のオーブン内でポストベーク処理を30分間行ない、該膜を加熱硬化させた。このパターンのない加熱硬化膜について、光干渉式膜質測定機にて632.8nmにおける屈折率を測定する。
以上の結果を表7に示す。後述の実施例12および比較例4の結果も合わせて表7に示す。
実施例12
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)に変更したこと以外は、実施例11と同様の条件で試料を作成し、評価を行なった。
比較例4
実施例11において、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(9.a)を下記構造式に示すビスフェノール型放射線重合性不飽和樹脂に変更したこと以外は、実施例11と同様の条件で硬化膜を作成し、評価を行なった。
ここでqは約0.5である。
表1〜7の結果から明らかなように、本発明のフルオレン含有樹脂を用いると、高硬度で高屈折率を有し、透明性が高く、高いレベルでの耐熱性および優れた電気特性を有する成形体および硬化薄膜が得られることがわかる。さらに、本発明の放射線重合性不飽和樹脂を用いると、露光および現像により基板上に所望のパターンの、上記優れた性質を有する薄膜が精度良く形成されることが明らかである。