JP4842882B2 - インジェクタ保護制御方法及びコモンレール式燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
かかるコモンレール式燃料噴射装置においては、噴射後にインジェクタ内の余剰燃料を燃料タンクに戻すのが通常であり、上述の特許文献1等に開示された従来装置においても、そのような構成が採られている。
このような事から、新たな部品を追加することなく、しかも、インジェクタの温度を直接検出すること無しに、余剰燃料の温度上昇に起因するインジェクタの機能低下を確実に防止でき、装置の信頼性向上を図る方策が所望されている。
コモンレール式燃料噴射制御装置におけるインジェクタ保護制御方法であって、
予め定められた1つ又は複数の判断指標が、それぞれの所定の基準を越えているか否かを周期的に判定し、その判定結果を得る毎に、その判定結果に応じて判定用カウンタの計数値を増減させると共に、当該増減の後の計数値が所定の保護開始基準を越えたか否かを判定し、前記計数値が所定の保護開始基準を越えた場合に、燃料温度が所定の保護開始温度を超えているか否かを判定し、燃料温度が所定の保護開始温度を超えている場合に、前記計数値が前記所定の保護開始基準を下回るまで、燃料噴射量とレール圧の制限を行うよう構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るコモンレール式燃料噴射制御装置は、
燃料タンク内の燃料が高圧ポンプにより加圧、圧送されてコモンレールに蓄積され、当該コモンレールに接続されたインジェクタへ高圧燃料を供給し、当該インジェクタによる燃料噴射を可能として構成されてなると共に、前記高圧ポンプ及びインジェクタの動作を制御する電子制御ユニットを有してなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
予め定められた1つ又は複数の判断指標が、それぞれの所定の基準を越えているか否かを周期的に判定し、その判定結果を得る毎に、その判定結果に応じて判定用カウンタの計数値を増減させると共に、当該増減の後の計数値が所定の保護開始基準を越えたか否かを判定し、前記計数値が所定の保護開始基準を越えたと判定された場合に、燃料温度が所定の保護開始温度を超えているか否かを判定し、燃料温度が所定の保護開始温度を超えていると判定された場合に、前記計数値が前記所定の保護開始基準を下回るまで、燃料噴射量とレール圧の制限を行うよう構成されてなるものである。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるインジェクタ保護制御方法が適用されるコモンレール式燃料噴射制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
インジェクタ1は、図示されないディーゼル機関の各々の気筒に対応して設けられて、それぞれコモンレール2と配管接続されて、コモンレール2からの高圧燃料が供給されるようになっている。
コモンレール2には、所定圧力以上に上昇したコモンレール2の余剰燃料を燃料タンク5へ戻すため、排出口(図示せず)が設けられると共に、リリーフ弁6が取着されており、このリリーフ弁6は、インジェクタ1の余剰燃料の逃がし口(図示せず)と共に、燃料タンク5と配管接続されたものとなっている。
なお、これらのセンサは、本発明のインジェクタ保護制御のために新たに必要となるものではなく、通常、車両の電子制御のために装備されているものであり、それらの出力信号を流用するようにすれば良いものである。
レール圧センサ12は、コモンレール2内の圧力を検出するためのもので、コモンレール2の適宜な箇所に取着されるものである。
クランク角度センサ13は、エンジン(図示せず)のクランクシャフトに取り付けられ、クランクシャフトの回転角度を検出し、検出信号の時間間隔からエンジン回転数Neが検出できるようになっているものである。
水温センサ15は、図示されないエンジンの冷却水の温度を検出するため、冷却水の流通部分に設けられ、検出温度に応じて適宜な信号を出力するよう構成されたものである。
車速センサ17は、車両の走行速度を検出するためのもので、種々の構成のものがあるが、ここでは、特定の構成のものに限定される必要はない。
処理が開始されると、判断指標としてのエンジン回転数Neが所定の基準値Nsより大であるか否かが判定され(図2のステップS100参照)、エンジン回転数Neが所定の基準回転数Nsより大(Ne>Ns)であると判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS102の処理へ進む一方、Ne>Nsではないと判定された場合(NOの場合)には、後述するステップS108の処理へ進むこととなる。
なお、エンジン回転数Neは、クランク角度センサ13の検出信号を基に、電子制御ユニット4において所定の演算式により演算算出されるものとなっている。
本発明の実施の形態においては、先のステップS100〜104が全てYESと判定された場合に、判定用カウンタの計数値を所定値(例えば「1」)だけ増やし、後述するように計数値が所定値を越えた場合に後述するインジェクタ保護のための処理が実行されるようにしており、ステップS106は、その前提となる計数処理である。
ここで、所定の基準回転数Nslは、先のステップS100における所定の基準回転数Nsに対して、Nsl<Nsの関係となるように設定されたものである。このようにエンジン回転数Neの上昇を検出する場合(ステップS100参照)と、エンジン回転数Neの下降を検出する(ステップS108参照)場合で、基準回転数に差を設けることは、いわゆるヒステリシスを設けたことに相当し、これによって、基準回転数前後における判定動作の安定性が確保されるものである。
ここで、所定の基準車速Vslは、先のステップS102における所定の基準車速Vsに対して、Vsl<Vsの関係となるように設定されたもので、これは、先の基準回転数の場合(ステップS108参照)同様、判定基準にヒステリシスを設けることに相当するものである。
ここで、所定の基準レール圧Prslは、先のステップS104における所定の基準レール圧Prsに対して、Prsl<Prsの関係となるように設定されたもので、これは、先の基準回転数の場合(ステップS108参照)同様、判定基準にヒステリシスを設けることに相当するものである。
なお、カウンタ値を減算する所定値は、先にステップS106で説明したように、燃料冷却水の水温及び外気温度に応じて種々設定されるものとなっている。
なお、このように、判定用カウンタの計数値が所定値Csを越える場合とは、例えば、冬季に、ラジエータグリルが雪により幹線に覆われて凍結し、エンジンルーム内に外気が流入できなくなったようなことに起因して、インジェクタ1の余剰燃料温度が異常上昇したような場合が考えられる。
また、所定値Csは、ヒシテリシスを設定したものとするとより好適である。
すなわち、先のステップS106における計数値の加算が実行される一方、ステップS114における計数値の減算が実行されることなくステップS116が実行される場合の所定値Cs1(第1の保護開始基準)と、これとは逆に、先のステップS106における計数値の加算が実行されることなく、ステップS114における計数値の減算が実行される場合の所定値Cs2(第2の保護開始基準)とを設け、Cs1>Cs2とすることにより、動作の安定性を確保でき、好適である。
ステップS120の処理へ進むか否かの判定において、この第2の基準燃料温度Tgs2と先のステップS118における第1の基準燃料温度Tgs1とを用いるようにしたのは、次述するような理由によるものである。
すなわち、ステップS118は、あくまでも燃料噴射動作などが正常に行われている中で、エンジン回転数や車速、外気温度などの諸条件の変化によって余剰燃料温度が上昇した場合に、インジェクタ保護のための制御を行う必要と判断される状態にあるか否かを判定するものであり、エンジンが正常動作にあることが前提である。
ここで、燃料関連部品のエラーとは、電子制御ユニット4により判定されるものである。すなわち、本発明の実施の形態においては、詳細は省略するが、電子制御ユニット4により、燃料制御に関連する各種のセンサ等の部品、例えば、燃料温度センサ11、外気温センサ16などについて、その動作のエラー、故障発生の有無などの判定処理が行われるようになっており、S128においては、そのようなエラーなどが発生しているか否かを判定するものである。
すなわち、上述した一連の処理によって、燃料温度がインジェクタ1の保護を行うに値する状態にあると判定されたことに対応し、インジェクタ1による燃料噴射量が、エンジン回転数及び燃料温度を基にインジェクタ保護の観点から演算算出された制限値に規制されて、インジェクタ1による燃料噴射が行われることとなる。ここで、制限値の算出には、実験やシュミレーション等に基づいて予め設定された所定の演算式を用いるのが好適である。
ここで、レール圧の制限値は、エンジン回転数及び燃料温度を基に、所定の演算式により算出される。そして、このレール圧の制限値を算出するための演算式は、実験やシュミレーション等に基づいて予め設定されているものである。
ここで、補正係数は、ステップS122において算出されたレール圧の制限値と通常の制御状態におけるレール圧の目標値との差分と、エンジン回転数とに基づいて、すなわち、換言すれば、これらの値をパラメータとして、所定のマップや演算式から求められるものとなっている。なお、所定のマップ、演算式は、エンジンの規模等に応じて、実験やシュミレーション結果に基づいて設定するのが好適である。
すなわち、この場合、燃料温度がインジェクタ保護のための制御を必要とする状態では無いので、燃料噴射量、レール圧、スモークリミット値は、通常の制御処理で定まる値とされて燃料噴射制御などが行われることとなる。
そして、ステップS124又はステップS130が実行された後は、一連の処理が終了し、図示されないメインルーチンへ一旦戻り、他の処理が実行された後、再び、図2及び図3に示された一連の処理が実行されることとなる。
2…コモンレール
3…高圧ポンプ
4…電子制御ユニット
11…燃料温度センサ
12…レール圧センサ
13…クランク角度センサ
14…カム角度センサ
15…水温センサ
16…外気温センサ
17…車速センサ
Claims (15)
- コモンレール式燃料噴射制御装置におけるインジェクタ保護制御方法であって、
予め定められた1つ又は複数の判断指標が、それぞれの所定の基準を越えているか否かを周期的に判定し、その判定結果を得る毎に、その判定結果に応じて判定用カウンタの計数値を増減させると共に、当該増減の後の計数値が所定の保護開始基準を越えたか否かを判定し、前記計数値が所定の保護開始基準を越えた場合に、燃料温度が所定の保護開始温度を超えているか否かを判定し、燃料温度が所定の保護開始温度を超えている場合に、前記計数値が前記所定の保護開始基準を下回るまで、燃料噴射量とレール圧の制限を行うことを特徴とするインジェクタ保護制御方法。 - 判断指標は、少なくともエンジン回転数、車速及びレール圧であって、これらの判断指標が、それぞれの所定の基準を越えた場合には、判定用カウンタの計数値を増す一方、前記判定指標が、それぞれの所定の基準を下回る場合には、判定用カウンタの計数値を減ずることを特徴とする請求項1記載のインジェクタ保護制御方法。
- 燃料噴射量の制限は、インジェクタの燃料噴射量が、エンジン回転数と燃料温度に基づいて定められる噴射量制限値を越えないよう前記インジェクタの燃料噴射動作を規制する一方、レール圧の制限は、レール圧が、エンジン回転数と燃料温度に基づいて定められるレール圧制限値を越えないように高圧ポンプの動作を規制することを特徴とする請求項2記載のインジェクタ保護制御方法。
- 燃料噴射量とレール圧の制限を行うと共に、スモークが発生する限界値として噴射可能な燃料噴射量であるスモークリミット値を、通常制御状態におけるレール圧の目標値とレール圧制限値との差分と、エンジン回転数とに基づいて定められる係数によって補正することを特徴とする請求項3記載のインジェクタの保護制御方法。
- 判定用カウンタの計数値が所定の保護開始基準を越えていない場合にあって、燃料温度が第2の所定の保護開始温度を超えている場合に、燃料噴射量とレール圧の制限を行うことを特徴とする請求項4記載のインジェクタの保護制御方法。
- 燃料タンク内の燃料が高圧ポンプにより加圧、圧送されてコモンレールに蓄積され、当該コモンレールに接続されたインジェクタへ高圧燃料を供給し、当該インジェクタによる燃料噴射を可能として構成されてなると共に、前記高圧ポンプ及びインジェクタの動作を制御する電子制御ユニットを有してなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
予め定められた1つ又は複数の判断指標が、それぞれの所定の基準を越えているか否かを周期的に判定し、その判定結果を得る毎に、その判定結果に応じて判定用カウンタの計数値を増減させると共に、当該増減の後の計数値が所定の保護開始基準を越えたか否かを判定し、前記計数値が所定の保護開始基準を越えたと判定された場合に、燃料温度が所定の保護開始温度を超えているか否かを判定し、燃料温度が所定の保護開始温度を超えていると判定された場合に、前記計数値が前記所定の保護開始基準を下回るまで、燃料噴射量とレール圧の制限を行うよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。 - 判断指標は、少なくともエンジン回転数、車速及びレール圧であって、これらの判断指標が、それぞれの所定の基準を越えたと判定された場合には、判定用カウンタの計数値を増す一方、前記判定指標が、それぞれの所定の基準を下回ると判定された場合には、判定用カウンタの計数値を減ずることを特徴とする請求項6記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
- 燃料噴射量の制限は、インジェクタの燃料噴射量が、エンジン回転数と燃料温度に基づいて定められる噴射量制限値を越えないよう前記インジェクタの燃料噴射動作を規制すると共に、レール圧の制限は、レール圧が、エンジン回転数と燃料温度に基づいて定められるレール圧制限値を越えないように高圧ポンプの動作を規制することを特徴とする請求項7記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
- 燃料噴射量とレール圧の制限を行うと共に、スモークが発生する限界値として噴射可能な燃料噴射量であるスモークリミット値を、通常制御状態におけるレール圧の目標値とレール圧制限値との差分と、エンジン回転数とに基づいて定められる係数によって補正することを特徴とする請求項8記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
- 判定用カウンタの計数値が所定の保護開始基準を越えていないと判定された場合にあって、燃料温度が第2の所定の保護開始温度を超えていると判定された場合に、燃料噴射量とレール圧の制限を行うことを特徴とする請求項9記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
- 燃料タンク内の燃料が高圧ポンプにより加圧、圧送されてコモンレールに蓄積され、当該コモンレールに接続されたインジェクタへ高圧燃料を供給し、当該インジェクタによる燃料噴射を可能として構成されてなると共に、前記高圧ポンプ及び前記インジェクタの駆動制御を実行する電子制御ユニットを有してなるコモンレール式燃料噴射制御装置における前記電子制御ユニットにおいて実行されるインジェクタ保護制御プログラムであって、
予め定められた1つ又は複数の判断指標が、それぞれの所定の基準を越えているか否かを判定するステップと、
予め定められた1つ又は複数の判断指標が、それぞれの所定の基準を越えていると判定された場合に、判定用カウンタの計数値を、所定値だけ増すステップと、
予め定められた1つ又は複数の判断指標が、それぞれの所定の基準を越えていないと判定された場合に、判定用カウンタの計数値を、所定値だけ減ずるステップと、
判定用カウンタの計数値の増減の後の計数値が所定の保護開始基準を越えたか否かを判定するステップと、
判定用カウンタの計数値の増減の後の計数値が所定の保護開始基準を越えたと判定された場合、燃料温度が所定の保護開始温度を超えているか否かを判定するステップと、
燃料温度が所定の保護開始温度を超えていると判定された場合、判定用カウンタの計数値が所定の保護開始基準を下回るまで、燃料噴射量とレール圧の制限を行うステップと、
を有してなることを特徴とするインジェクタ保護制御プログラム。 - 判断指標は、少なくともエンジン回転数、車速及びレール圧であることを特徴とする請求項11記載のインジェクタ保護制御プログラム。
- 燃料噴射量の制限は、インジェクタの燃料噴射量が、エンジン回転数と燃料温度に基づいて定められる噴射量制限値を越えないよう前記インジェクタの燃料噴射動作を規制し、レール圧の制限は、レール圧が、エンジン回転数と燃料温度に基づいて定められるレール圧制限値を越えないように高圧ポンプの動作を規制するものであることを特徴とする請求項12記載のインジェクタ保護制御プログラム。
- 燃料温度が所定の保護開始温度を超えていると判定された場合、判定用カウンタの計数値が所定の保護開始基準を下回るまで、スモークが発生する限界値として噴射可能な燃料噴射量であるスモークリミット値を、通常制御状態におけるレール圧の目標値とレール圧制限値との差分と、エンジン回転数とに基づいて定められる係数によって補正するステップを含むことを特徴とする請求項13記載のインジェクタ保護制御プログラム。
- 判定用カウンタの計数値の増減の後の計数値が所定の保護開始基準を越えていないと判定された場合、燃料温度が第2の保護開始基準を越えているか否かを判定するステップと、
燃料温度が第2の保護開始基準を越えていると判定された場合に、燃料噴射量とレール圧の制限を行うステップと、
を有してなることを特徴とする請求項14記載のインジェクタ保護制御プログラム。
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