JP4841769B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電極構造体をセパレータで挟持してなる単位セルを複数積層して構成された燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
単位セルには、固体高分子電解質膜の両側にそれぞれアノード電極およびカソード電極を配置してなる電極構造体を、一対のセパレータで挟持することにより平板状に構成されたものがある。このように構成された単位セルは、その厚さ方向に複数積層されることにより燃料電池を構成している。
【0003】
各単位セルでは、アノード電極に対向配置されるアノード側セパレータの一面に燃料ガス(例えば、水素)の流路が設けられ、カソード電極に対向配置されるカソード側セパレータの一面に酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)の流路が設けられている。また、隣接する単位セルの隣接するセパレータ間には、冷却媒体(例えば、純水)の流路が設けられている。
【0004】
そして、アノード電極の電極反応面に燃料ガスを供給すると、ここで水素がイオン化され、固体高分子電解質膜を介してカソード電極に移動する。この間に生じた電子は外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。カソード電極においては、酸化剤ガスが供給されているため、水素イオン、電子、および酸素が反応して、水が生成される。電極反応面では、水が生成される際に熱が発生するので、セパレータ間に流通させられる冷却媒体によって冷却されるようになっている。
【0005】
これら燃料ガス、酸化剤ガス(総称して反応ガス)および冷却媒体は、各々独立した流路に流通させる必要があるため、各流路間を液密または気密状態に仕切るシール技術が重要となる。
密封すべき部位としては、例えば、反応ガスおよび冷却媒体を燃料電池の各単位セルに分配供給するために貫通形成された供給口の周囲、各単位セルから排出された反応ガスおよび冷却媒体をそれぞれ収集して排出する排出口の周囲、電極構造体の外周、隣接する単位セルのセパレータ間の外周等がある。シール部材としては、有機ゴム等の柔らかくて、適度に反発力のある材質のものが採用されている。
【0006】
一方、近年、実車への搭載に向けた実用化の動きの中で、燃料電池の小型軽量化、低コスト化が大きな課題となっている。
燃料電池を小型化するためには、燃料電池を構成する各単位セルを薄くすること、具体的には、各単位セル内部に形成されている反応ガスの流路を最大限に確保しながら、セパレータ間の間隔寸法を小さくすることや、セパレータを薄肉化することが考えられる。
【0007】
ところが、セパレータを薄肉化することには、セパレータの強度や燃料電池の剛性上限界がある。また、セパレータ間の間隔寸法を小さくするには、シール部材の高さ寸法を低減することが効果的であるが、必要十分な密封性を確保するためには、十分な潰れ代を確保し得るシール部材の高さ寸法が必要となるため、その低減にも自ずと限界がある。
【0008】
さらに、単位セルにおいて、シール部材が占有する空間は、反応ガスおよび冷却媒体を密封するために必要不可欠ではあるものの、実質的に発電に寄与しない空間であるため、極力小さくする必要がある。
【0009】
図24は、従来の燃料電池を示す平面図である。図中、符号70は、燃料電池をセパレータ71の積層方向に貫通する燃料ガス供給口、排出口、酸化剤ガス供給口、排出口、冷却媒体供給口、排出口などの連通孔である。また、符号72は、セパレータ71に沿って複数の燃料ガス流路、酸化剤ガス流路および冷却媒体流路が形成されている領域である。
【0010】
図25は、図24の線X−Xで切断した従来の燃料電池73を示す縦断面図である。平面視において、発電に寄与しないシール部材の占有空間を極力小さくするために、従来は、燃料ガス流路74および酸化剤ガス流路75をそれぞれ密封するガスシール部材76,77と、冷却媒体流路を密封する冷却面シール部材78とを、単位セル79の積層方向に一列に並べて配置することにより、燃料電池73の外形寸法を最小限に抑制している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように構成される燃料電池73の場合に、各流路74,75を密封するガスシール部材76,77および冷却面シール部材78の全てを単位セル79の積層方向に一列に並べて配置すると、燃料電池73の厚さ寸法を、各単位セル79の厚さ寸法に単位セル79間の冷却面シール部材78の高さ寸法を加えて積層数倍した値より小さくすることができないという不都合がある。
【0012】
このことをさらに詳しく説明するために、再度、図25を参照する。この図25によれば、ガスシール部材76,77によって密封状態に隔離された燃料ガス供給口70と燃料ガス流路74とが連絡路80によって連絡されている。該連絡路80は、燃料ガス流路74の周囲を全周にわたって密封しているガスシール部材77の燃料ガス供給口70近傍をセパレータ81の厚さ方向に迂回するようにセパレータ81に設けられている。また、セパレータ82も酸化剤ガス供給口(図示略)において同様の連絡路(図示略)を有している。
【0013】
したがって、各セパレータ81,82は、連絡路80を形成するために比較的厚く形成されているが、各シール部材76〜78が配置されているシールラインの位置においては、図25の断面に見られるように、強度を確保するための最小限の肉厚寸法となっており、それ以上の薄肉化を図ることができない。
また、各シール部材76〜78は、密封性を確保するために必要最小限の高さ寸法とされているので、これらシール部材76〜78の高さ寸法もそれ以上低減することはできない。
【0014】
その結果、燃料電池73の厚さ寸法は、2枚のセパレータ81,82の最小肉厚寸法、連絡路80を構成するための厚さ寸法、2つのガスシール部材76,77の高さ寸法、固体高分子電解質膜83の厚さ寸法および冷却面シール部材78の高さ寸法を加えたものを積層数倍した寸法となるが、これらは全て必要不可欠な寸法であるため、それ以上の寸法低減を図ることは困難であった。
【0015】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、燃料電池を構成するセパレータおよび電極構造体の間の各シール部材により各種流路を確実に密封しながら、燃料電池の厚さ寸法を小さくして小型軽量化した燃料電池を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提案している。
請求項1に記載した発明は、電解質の両面にそれぞれ電極を配した電極構造体と、該電極構造体を厚さ方向に挟む一対のセパレータと、前記電極構造体の外周部に配置され、各セパレータと前記電極構造体との間に挟まれて両者間に形成される反応ガス(すなわち、燃料ガスおよび酸化剤ガス)用のガス流路をそれぞれ密封するガスシール部材とから構成された複数の単位セルを、これら単位セル間に形成される冷却媒体流路を密封する冷却面シール部材を挟んで積層してなる燃料電池であって、前記各セパレータに、前記ガスシール部材の外側にセパレータを厚さ方向に貫通して設けられる反応ガスおよび冷却媒体用の連通孔(例えば、実施の形態における燃料ガス供給口17、酸化剤ガス供給口18、冷却媒体供給口19、燃料ガス排出口20、酸化剤ガス排出口21、冷却媒体排出口22)と、前記ガスシール部材をセパレータの厚さ方向に迂回して反応ガス用の連通孔とガス流路とを連絡する連絡路とが設けられ、前記冷却媒体流路を前記反応ガス用の連通孔に対して密封する冷却面シール部材が、前記連絡路に対して連通孔側にずれた位置に配置されている燃料電池を提案している。
【0017】
この発明に係る燃料電池によれば、セパレータに設けられた連通孔とガス流路とが、ガスシール部材をセパレータの厚さ方向に迂回する連絡路によって連絡されているので、ガスシール部材の位置では、連絡路の高さ寸法とセパレータの必要最小限の厚さ寸法とが確保されている必要がある。一方、冷却媒体流路を密封する冷却面シール部材が連絡路にして連通孔側にずれた位置に配置されているので、冷却面シール部材の積層方向の位置をガスシール部材の近傍に設けられている連絡路とは無関係に決定することが可能となる。
【0018】
その結果、単位セルの積層方向に沿う連絡路の位置と冷却面シール部材の位置とを重なり合わせることが可能となり、その重なり合った寸法分だけ、各単位セル毎に厚さ寸法を低減することが可能となる。燃料電池では、数百に及ぶ単位セルを積層するので、燃料電池全体としては、各単位セル毎に低減された厚さの積層数倍の大幅な小型化を図ることができる。
【0019】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る燃料電池において、前記冷却面シール部材が、前記連絡路近傍を除き、前記ガスシール部材と積層方向に沿って並んだ位置に配置されている燃料電池を提案している。
【0020】
この発明に係る燃料電池によれば、ガスシール部材を厚さ方向に迂回して形成される連絡路近傍は、該連絡路の高さ分だけセパレータを厚くせざるを得ないため、冷却面シール部材を連通孔側にずらして、ガスシール部材と冷却面シール部材とが、同一のシールラインに配されることを回避し、連絡路近傍以外の部分では、ガスシール部材と冷却面シール部材とを単位セルの積層方向に一列に並んだ位置に配することにより、単位セルの面積を低減することが可能となる。また、連通孔近傍でシールラインをずらすことにより、請求項1記載の燃料電池と同様に、冷却面シール部材と連絡路とを積層方向に重なり合う位置に配置することが可能となり、冷却面シール部材とガスシール部材とを積層方向に近接させて燃料電池の厚さを低減することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池1ついて、添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る燃料電池1は、図12に示されるように、単位セル2を複数積層して構成されている。単位セル2は、図1に示されるように、電極構造体3を一対のセパレータ4,5で挟持することにより構成されている。電極構造体3と各セパレータ4,5との間には、ガスシール部材6,7がそれぞれ配置されている。これらガスシール部材6,7は、図12に示されるように、電極構造体3の両側に燃料ガス流路8と酸化剤ガス流路9とを密封状態に画定している。
【0022】
前記電極構造体は、例えば、図2および図12に示されるように、ペルフルオロスルホン酸ポリマーからなる固体高分子電解質膜10(以下、単に電解質膜という。)と、この電解質膜10の両面を挟むアノード電極11およびカソード電極12とを有している。
電解質膜10は、例えば、図2に示されるように、複数の貫通孔10aを有している。電解質膜10は、後述するセパレータ4,5と同等の大きさを有し、各貫通孔10aは、セパレータ4,5の各供給口17〜19および各排出口20〜22に対応する位置に配置されている。
【0023】
前記アノード電極11およびカソード電極12は、例えば、多孔質カーボンクロスまたは多孔質カーボンペーパーからなるガス拡散層を基材として電解質膜10と接する一表面に、Ptを主体とする合金からなる触媒層を配設させることにより構成されている。
【0024】
単位セル2を構成するセパレータ4,5には、2種類のセパレータ4,5がある。各セパレータ4,5は、図3および図4に示されるように、いずれもカーボン製平板の表面に、複数の溝13〜16(図15参照)を削り込むことにより、一定の高さを有する凹凸が一定のパターンで多数形成された波板部4a,5aと、該波板部4a,5aに流通させる燃料ガス(例えば、水素ガス)、酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)および冷却媒体(例えば、純水)をそれぞれ供給、排出させるように各セパレータ4,5を貫通する燃料ガス供給口(連通孔)17、酸化剤ガス供給口(連通孔)18、冷却媒体供給口(連通孔)19、燃料ガス排出口(連通孔)20、酸化剤ガス排出口(連通孔)21および冷却媒体排出口(連通孔)22と、これら供給口17〜19、排出口20〜22および前記波板部4a,5aをそれぞれ取り囲むように配置される平面部4b,5bとを具備している。
【0025】
前記冷却媒体供給口19および冷却媒体排出口22は、図3および図4に示されるように、セパレータ4,5の幅方向(図3の矢印P方向)のほぼ中央に配置されている。また、前記燃料ガス供給口17と酸化剤ガス供給口18は、前記冷却媒体供給口19を挟んでセパレータ4,5の幅方向の両側に配置されている。さらに、前記燃料ガス排出口20と酸化剤ガス排出口21は、前記冷却媒体排出口22を挟んでセパレータ4,5の幅方向の両側に配置されている。これら燃料ガス排出口20および酸化剤ガス排出口21は、それぞれ燃料ガス供給口17および酸化剤ガス供給口18に対して対角位置となるように配置されている。
【0026】
各セパレータ4,5の長さ方向(図3の矢印Q方向)に沿う、燃料ガス供給口17および排出口20、酸化剤ガス供給口18および排出口21の長さ寸法は、隣接する冷却媒体供給口19および排出口22よりも短く形成されている。これにより、燃料ガス供給口17および排出口20、酸化剤ガス供給口18および排出口21と波板部4a,5aとの間の間隔寸法は、冷却媒体供給口19および排出口22と波板部4a,5aとの間の間隔寸法よりも大きく形成されている。
【0027】
一方のセパレータ4の一面側には、図3に示されるように、燃料ガス供給口17と波板部4aとの間および該波板部4aと燃料ガス排出口20との間に、燃料ガス供給口17から供給されてきた燃料ガスを波板部4aに流通させ、波板部4aを通過した燃料ガスを燃料ガス排出口20から排出させるための連絡路23がそれぞれ形成されている。該連絡路23は、セパレータの一面側に形成された複数の溝23aと、該溝23a上に掛け渡される平板上のブリッジ板23bとを備えている。ブリッジ板23bが配置されるセパレータ4の表面には、該ブリッジ板23bをはめ込む凹部24が形成されており、それによってブリッジ板23bの表面は、セパレータ4の平面部4bと段差なく同一平面内に配されている。
【0028】
また、他方のセパレータ5の一面側にも、図4に示されるように、酸化剤ガス供給口18と波板部5aとの間、および、該波板部5aと酸化剤ガス排出口21との間に、一方のセパレータ4aと同様に、複数の溝25aとブリッジ板25bとからなる連絡25が設けられている。
なお、両セパレータ4,5の他面側には、図5に示されるように、冷却媒体供給口19と波板部4a,5aとを結ぶ連絡路26および該波板部4a,5aと冷却媒体排出口22とを結ぶ連絡路26が設けられている。
【0029】
前記ガスシール部材6,7は、図6に示されるように、波板部4a,5aの外周を取り囲む主環状部6a,7aの両側に、各供給口17〜19および排出口20〜22をそれぞれ取り囲む複数の副環状部6b,7bを有する形状に一体的に構成されている。
このようなガスシール部材6,7を、前記一方のセパレータ4の一面側に配置した状態、電極構造体3の一面側に配置した状態、および、前記他方のセパレータ5の一面側に配置した状態をそれぞれ、図7〜図9に示す。
【0030】
これらの図7〜図9によれば、ガスシール部材6,7の主環状部6a,7aは、各供給口17〜19および排出口20〜22と波板部4a,5aとの間の平面部4b,5bを通過するように配置される。これにより、主環状部6a,7aは、連絡路23,25に設けられたブリッジ板23b,25bの上を通過して、各供給口17〜19および排出口20〜22と波板部4a,5aとの間を連絡路23,25を構成する溝23a,25aのみによって連絡し、他の部分は液密状態に密封するようになっている。
【0031】
このように構成された単位セル2は、図12に示されるように、冷却面シール部材27を挟んで複数積層される。冷却面シール部材27は、図10に示されるように、主環状部27aと副環状部27bとを一体的に連結した構造を有している。
【0032】
このような冷却面シール部材27を、各セパレータ4,5の他面側に配置した状態を図11に示す。
これによれば、冷却面シール部材27の主環状部27aは、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給口17,18と波板部4a,5aとの間、排出口20,21と波板部4a,5aとの間を通過して、冷却媒体供給口19から連絡路26を介して波板部4a,5aに接続し、波板部4a,5aから連絡路26を介して冷却媒体排出口22に接続する冷却媒体流路28の周囲を密封している。また、冷却面シール部材27の副環状部27bは、燃料ガスおよび酸化剤ガスの各供給口17,18および各排出口20,21を、それぞれ独立して密封している。
【0033】
冷却面シール部材27の主環状部27aのうち、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給口17,18と波板部4a,5aとの間、排出口20,21と波板部4a,5aとの間を通過する部分は、破線で示された上記ガスシール部材の主環状部6a,7aの通過位置と比較すると、供給口17,18または排出口20,21に、より近い位置を通過するようにずれた位置に配置されている。
【0034】
このように構成された燃料電池1の各部の断面を図12〜図15に示す。これらの図は、単に断面のみを示し、図中の波線は、左右に示される図が、連続した部材であることを示している。
図12は、図7に示される線A−Aに沿って切断した縦断面図である。この図12によれば、各セパレータ4,5を厚さ方向に貫通する燃料ガス供給口17から連絡路23を通してアノード電極11とセパレータ4との間に形成されている燃料ガス流路8へ燃料ガスを流通させる経路が示されている。
【0035】
この図12を見ると、電極構造体3とその両側に配される一対のセパレータ4,5との間を密封するガスシール部材6,7が、単位セル2の積層方向に対向する位置で電解質膜10を厚さ方向に挟んで配置されている。燃料ガス流路のガスシール部材6は、セパレータ4に形成されている連絡路23に掛け渡されたブリッジ板23b上に配置されている。すなわち、連絡路23は、ガスシール部材6をセパレータ4の厚さ方向に迂回して、該ガスシール部材6の内外を連通させ、ガスシール部材6の外側の燃料ガス供給口17から供給される燃料ガスを、ガスシール部材6内側の燃料ガス流路8に流通させることを可能としている。
【0036】
この場合において、各単位セル2間を密封して冷却媒体流路28を画定している冷却面シール部材27は、前記ガスシール部材6,7が配置されている連絡路23に対して燃料ガス供給口17側にずれた位置に配置されている。その結果、冷却面シール部材27は、セパレータ4の一表面を厚さ方向に彫り込んで形成した連絡路23を構成する溝23aとはセパレータ4の厚さ方向に重なる位置に配置することが可能となる。
【0037】
上記においては、燃料ガス供給口17について説明したが、燃料ガス排出口20においても同様のことが言える。
さらに、図13は、図7に示される線B−Bに沿って切断した縦断面図である。この図13によれば、各セパレータ4,5を厚さ方向に貫通する酸化剤ガス供給口18から連絡路25を通してカソード電極12とセパレータ5との間に形成されている酸化剤ガス流路9へ酸化剤ガスを流通させる経路が示されている。
【0038】
この図13においても、電極構造体3とその両側に配される一対のセパレータ4,5との間を密封するガスシール部材6,7が、単位セル2の積層方向に対向する位置で電解質膜10を厚さ方向に挟んで配置されており、ガスシール部材7は、セパレータ5に形成されている連絡路25に掛け渡されたブリッジ板25b上に配置されている。すなわち、連絡路25は、ガスシール部材7をセパレータ5の厚さ方向に迂回して、該ガスシール部材7の内外を連通させ、ガスシール部材7の外側の酸化剤ガス供給口18から供給される酸化剤ガスを、ガスシール部材7の内側の酸化剤ガス流路9に流通させることを可能としている。
【0039】
この場合において、各単位セル2間を密封して冷却媒体流路28を画定している冷却面シール部材27は、前記ガスシール部材7が配置されている連絡路25よりも酸化剤ガス供給口18側にずれた位置に配置されている。その結果、冷却面シール部材27は、セパレータ5の一表面を厚さ方向に彫り込んで形成した連絡路25の溝25aと厚さ方向に重なる位置に配置することが可能となる。
酸化剤ガス排出口21側においても同様のことが言える。
【0040】
したがって、連絡路23,25の形成されている位置におけるセパレータ4,5の肉厚寸法を確保しつつ、冷却面シール部材27が十分な密封性を確保するために必要な、冷却面シール部材27の占有高さを節約して、燃料電池1の高さを大幅に低減することができる。
【0041】
なお、図14,15は、それぞれ、図7に示された線C−C、線D−Dに沿う縦断面図を示している。これによれば、冷却媒体供給口19から隣接する単位セル2間に画定された冷却媒体流路28に接続する冷却媒体の経路、並びに、波板部4a,5aによって画定された燃料ガス流路8、酸化剤ガス流路9および冷却媒体流路28がそれぞれ示されている。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池30について、図16および図17を参照して、以下に説明する。なお、本実施形態においては、第1の実施形態と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を簡略化することにする。
図16,図17は、それぞれ、第1の実施形態における図12,図14に対応する縦断面図である。
【0043】
本実施形態に係る燃料電池30は、第1の実施形態に係る燃料電池1が各単位セル2毎に冷却媒体流路28を形成していたのに対し、2つの単位セル31,32毎に1つの冷却媒体流路33を形成している点で相違している。すなわち、冷却媒体流路33が形成される部分においては、第1の実施形態に係る燃料電池1と同様に、図17に示されるように、2つのセパレータ34,35を対向させ、これらの間に冷却面シール部材27を挟むことにより、冷却媒体流路33を形成するようにしているが、冷却媒体流路33が形成されない部分においては、第1の実施形態におけるセパレータ4,5を一体にしたような単一のセパレータ37が使用されている。
【0044】
本実施形態に係る燃料電池30も、第1の実施形態に係る燃料電池1と同様に、電極構造体3とその両側に配される一対のセパレータ34,37(または、セパレータ35,37)との間を密封するガスシール部材6,7が、単位セル31,32の積層方向に対向する位置で電解質膜10を厚さ方向に挟んで配置されている。燃料ガス流路8のガスシール部材6が、セパレータ34,37に形成されている連絡路23に掛け渡されたブリッジ板23b上に配置され、それによって、連絡路23が、ガスシール部材6をセパレータ34,37の厚さ方向に迂回して、該ガスシール部材6の内外を連通させ、ガスシール部材6の外側の燃料ガス供給口17から供給される燃料ガスを、ガスシール部材6内側の燃料ガス流路8に流通させることを可能としている。酸化剤ガス流路9側でも同様である。
【0045】
そして、冷却媒体流路33を画定している冷却面シール部材27は、前記ガスシール部材6,7が配置されている連絡路23よりも燃料ガス供給口17側にずれた位置に配置されることにより、第1の実施形態と同様、セパレータ34,37の一表面を厚さ方向に彫り込んで形成した連絡路23を構成する溝23aを冷却面シール部材27とはセパレータ34,37の厚さ方向に重なる位置に配置することが可能となる。その結果、高さ寸法を大幅に低減した燃料電池30を構成することができる。
【0046】
また、冷却媒体流路33を2つの単位セル31,32毎に設けることにより、冷却面シール部材27の数量を減らしてコスト低減を図ることができるとともに、冷却媒体流路33を設けていない一体型のセパレータ37の厚さ寸法を低減することにより、燃料電池30の高さ寸法をさらに低減することが可能となる。
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池40について、図18,図19を参照して以下に説明する。図18,図19は、それぞれ、第1の実施形態における図12,図14に対応する縦断面図である。
本実施形態に係る燃料電池40は、ガスシール部材41の構造において第1の実施形態に係る燃料電池1と相違している。
【0048】
本実施形態におけるガスシール部材41は、第1の実施形態の電解質膜10を両側から挟む一対のガスシール部材6,7に代えて、電解質膜10の一面側に配されるセパレータ42と電解質膜10との間を密封する内側シール部41aと、電解質膜10の外側に配置され、対向する一対のセパレータ42,43間を密封する外側シール部41bとを備えた2重のガスシール部材41を採用している。
【0049】
本実施形態に係る燃料電池40においても、連絡路23は、ガスシール部材41をセパレータ42の厚さ方向に迂回して、該ガスシール部材41の内外を連通し、ガスシール部材41の外側の燃料ガス供給口17から供給される燃料ガスを、ガスシール部材41内側の燃料ガス流路8に流通させることを可能としている。そして、前記ガスシール部材41が配置されている連絡路23よりも燃料ガス供給口17側にずれた位置に冷却面シール部材27を配置することにより、上記実施形態と同様、連絡路23を構成する溝23aを冷却面シール部材27とはセパレータ42,43の厚さ方向に重なる位置に配置することができ、高さ寸法の低減された燃料電池40を構成することができる。
【0050】
さらに、この2重のガスシール部材41を用いることにより、第1および第2の実施形態におけるガスシール部材6,7と同様に、電解質膜10の両側に形成されるガス流路8,9を確実に密封することができるうえに、電解質膜10の片側にガスシール部材41を配して、ガスシール部材41の占有スペースを低減して燃料電池40の高さ寸法を低減することができる。
【0051】
なお、この第3の実施形態に係る燃料電池40において、第2の実施形態に示した2セル毎に冷却媒体流路33を設ける構造を採用することにしてもよい。その場合には、上記第の実施形態に係る燃料電池0における高さ寸法の低減効果に、冷却媒体流路33を間引いたことによる高さ寸法の低減効果が加わり、一層の小型化を図ることが可能となる。
【0052】
次に、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池50について、図20,図21を参照して、以下に説明する。図20,図21は、それぞれ、第3の実施形態における図18,図19に対応する縦断面図である。
本実施形態に係る燃料電池50は、図18に示すように、電解質膜10の両面に同等の大きさの電極11,12を配置した第3の実施形態に係る燃料電池40の電極構造体3に代えて、一方の電極51を他方の電極52よりも大きく形成して、その大きな電極51によって電解質膜10の一面全体を受けるように構成した段差状の電極構造体53を採用している点において、上記実施形態に係る燃料電池40と相違している。
【0053】
本実施形態に係る燃料電池50においても、ガスシール部材41を単位セル54の積層方向に迂回してガスシール部材41の内外を連絡する連絡路23が設けられ、該連絡路23から燃料ガス供給口17方向にずれた位置に冷却面シール部材27が設けられているので、冷却面シール部材27と連絡路23とをセパレータ42の厚さ方向に重なる位置に配置して燃料電池50の高さ寸法の低減を図ることができる。
なお、本実施形態に係る燃料電池50においても、第2の実施形態において説明した2セル毎に冷却媒体流路33を設けることにしてもよい。
【0054】
次に、この発明の第5の実施形態に係る燃料電池60について、図22,図23を参照して、以下に説明する。
本実施形態に係る燃料電池60は、金属製薄板をプレス加工により波板状に形成したセパレータ61,62を採用している点において、カーボン製セパレータを採用している第1〜第4の実施形態に係る燃料電池1,30,40,50と相違している。
【0055】
本実施形態に係る燃料電池60においても、電解質膜10を両側から挟むガスシール部材6,7の位置で、ガスシール部材6,7との間隔をあける方向にセパレータ62を湾曲させて連絡路23を形成し、該連絡路23に掛け渡したブリッジ板23bによってガスシール部材6を支持するように構成している。したがって、連絡路23はガスシール部材6をセパレータ61,62の積層方向に迂回してガスシール部材6の内外を連通している。
【0056】
また、冷却面シール部材27は、前記連絡路23から燃料ガス供給口17方向にずれた位置に配置されており、これによって、セパレータ61,62の積層方向に連絡路23と重なる位置に配置されるようになっている。その結果、対向するセパレータ61,62の間隔寸法を低減し、燃料電池60全体の高さ寸法を低減することができるという効果がある。
【0057】
なお、上記第5の実施形態においては、カーボン製セパレータの場合の第1の実施形態に対応するものについて図面を参照して説明したが、第2〜第4の実施形態に記載されたような場合、すなわち、2セル毎に冷却媒体流路33を設ける場合、内側シール部41aと外側シール部41bとを有する2重のガスシール部材41を用いる場合、大きさの異なる電極51,52によって電解質膜10を挟んだ段差のある電極構造体53を用いる場合のいずれについても金属製セパレータ61,62を用いて同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は以下の効果を奏する。
(1) 請求項1記載の発明にかかる燃料電池によれば、単位セルの厚さ方向に沿う冷却面シール部材の位置と連絡路の位置とを重ならせることができるので、その重なった分の厚さ寸法を単位セルごとに節約することができる。その結果、複数の単位セルを積層状態に配してなる燃料電池の厚さ寸法を大幅に削減することができるという効果がある。
(2) 請求項2記載の発明にかかる燃料電池によれば、連絡路の近傍においては、上述した冷却面シール部材を連絡路からずらし、それ以外の部分においてはガスシール部材と厚さ方向に一列に並べるように配置することにより、燃料電池の面積の増加を抑えつつ、厚さ寸法を大幅に低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る燃料電池を構成する単位セルを模式的に示す分解斜視図である。
【図2】 図1の単位セルを構成する電極構造体を示す平面図である。
【図3】 図1の単位セルを構成する、一方のセパレータを示す平面図である。
【図4】 図1の単位セルを構成する、他方のセパレータを示す平面図である。
【図5】 図3および図4のセパレータの裏面を示す平面図である。
【図6】 図1の単位セルを構成するガスシール部材を示す平面図である。
【図7】 図6のガスシール部材を図3のセパレータ上に配置した状態を示す平面図である。
【図8】 図6のガスシール部材を図2の電極構造体上に配置した状態を示す平面図である。
【図9】 図6のガスシール部材を図4のセパレータ上に配置した状態を示す平面図である。
【図10】 図1の燃料電池を構成する冷却面シール部材を示す平面図である。
【図11】 図10の冷却面シール部材を図5のセパレータ上に配置した状態を示す平面図である。
【図12】 図7の線A−Aで切断した図1の燃料電池を示す縦断面図である。
【図13】 図7の線B−Bで切断した図1の燃料電池を示す縦断面図である。
【図14】 図7の線C−Cで切断した図1の燃料電池を示す縦断面図である。
【図15】 図7の線D−Dで切断した図1の燃料電池を示す縦断面図である。
【図16】 本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を示す図12と同様の縦断面図である。
【図17】 図16の燃料電池を示す図14と同様の縦断面図である。
【図18】 本発明の第3の実施形態に係る燃料電池を示す図12と同様の縦断面図である。
【図19】 図18の燃料電池を示す図14と同様の縦断面図である。
【図20】 本発明の第4の実施形態に係る燃料電池を示す図12と同様の縦断面図である。
【図21】 図20の燃料電池を示す図14と同様の縦断面図である。
【図22】 本発明の第5の実施形態に係る燃料電池を示す図12と同様の縦断面図である。
【図23】 図22の燃料電池を示す図14と同様の縦断面図である。
【図24】 従来の燃料電池の単位セルを概略的に示す平面図である。
【図25】 図24の燃料電池を線X−Xで切断した連通孔近傍を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1;30;40;50;60 燃料電池
2;31,32 単位セル
3;53 電極構造体
4,5;34,35;42,43;61,62 セパレータ
6,7;41 ガスシール部材
8,9 ガス流路
10 固体高分子電解質膜(電解質)
11;52 アノード電極(電極)
12;51 カソード電極(電極)
17 燃料ガス供給口(連通孔)
18 酸化剤ガス供給口(連通孔)
19 冷却媒体供給口(連通孔)
20 燃料ガス排出口(連通孔)
21 酸化剤ガス排出口(連通孔)
22 冷却媒体排出口(連通孔)
23,25 連絡路
27 冷却面シール部材
28;33 冷却媒体流路

Claims (2)

  1. 電解質の両面にそれぞれ電極を配した電極構造体と、該電極構造体を厚さ方向に挟む一対のセパレータと、前記電極構造体の外周部に配置され、各セパレータと前記電極構造体との間に挟まれて両者間に形成される反応ガス用のガス流路をそれぞれ密封するガスシール部材とから構成された複数の単位セルを、これら単位セル間に形成される冷却媒体流路を密封する冷却面シール部材を挟んで積層してなる燃料電池であって、
    前記各セパレータに、前記ガスシール部材の外側にセパレータを厚さ方向に貫通して設けられる反応ガスおよび冷却媒体用の連通孔と、前記ガスシール部材をセパレータの厚さ方向に迂回して反応ガス用の連通孔とガス流路とを連絡する連絡路とが設けられ、
    前記冷却媒体流路を前記反応ガス用の連通孔に対して密封する冷却面シール部材が、前記連絡路に対して連通孔側にずれた位置に配置されている燃料電池。
  2. 前記冷却面シール部材が、前記連絡路近傍を除き、積層方向からみて、前記ガスシール部材と略同一位置に配置されている請求項1記載の燃料電池。
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