以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る電波遮蔽体1の構造を表す図である。詳細には、図1(b)は実施形態に係る電波遮蔽体1の平面図である。図1(a)は図1(b)中の切り出し線Ia−Iaで切り出された部分の断面図である。
図2は電波遮蔽体1の平面図である。
図3はアンテナ13の平面形状を表す平面図である。
電波遮蔽体1は、基材10と、基材10の上に形成された電波遮蔽層12とを備えている。基材10は、通気性を有する面材10aと、面材10aの上に形成されたコーティング膜10bとを備えている。ここで、「面材」とは、板状、シート状、又はフィルム状等の形状の部材を総称するものである。
尚、電波遮蔽体1は、例えば、室内の既設対象物(例えば、窓、壁、天井、床、パーティション、机等)に電波遮蔽性を付与する態様のものであってもよい。電波遮蔽体1を、室内の既存対象物(例えば、窓、壁、天井、床、パーティション、机上等)への設置が容易な態様とするため、電波遮蔽層12を形成した側の面、及びその反対側の面のうち少なくとも一方に、粘着剤又は接着剤を塗布する(あるいは、吸着加工を施す)と共に、その接着剤又は粘着剤の表面に保護層を設けてロールし(トイレットペーパー状にロールし)、必要長に応じて切断できる態様としてもよい。
図4〜図7に本実施形態に係る電波遮蔽体1の製品パターン(使用状況)を例示する。
図4は壁30に電波遮蔽体1の基材10側を粘着させた場合の断面図である。
図4では、電波遮蔽体1は、電波遮蔽体1の基材10側に設けられた粘着剤31により壁30に粘着されている。
図5は、電波遮蔽体1の基材10側に粘着剤31及び保護膜32が形成され、トイレットペーパー状にロールされた電波遮蔽体1の模式図である。
図5に示した電波遮蔽体1の場合、必要長に応じて切断し、保護膜32をはがして、壁等に粘着させることにより使用することができる。
図6は壁30に電波遮蔽体1の電波遮蔽層12側を粘着させた場合の断面図である。
図6では、電波遮蔽体1は、電波遮蔽体1の電波遮蔽層12側に設けられた粘着剤31によって壁30に粘着されている。
図7は、電波遮蔽体1の電波遮蔽層12側に粘着剤31及び保護膜32が形成され、トイレットペーパー状にロールされた電波遮蔽体1の模式図である。
図7に示した電波遮蔽体1の場合、必要長に応じて切断し、保護膜32をはがして、壁等に粘着させることにより使用することができる。
尚、基材10は、単に基材としての役割(例えば、電波遮蔽体1の機械的耐久性を担保する役割)だけでなく、電波遮蔽効果に加えて、電波遮蔽効果を低減させない範囲で、別の効果をもたらすようにした電波遮蔽体であることがより好ましい。
本実施形態において、面材10aは通気性を有すると共に可撓性を有するものである。具体的に、面材10aは、例えば、織布(例えば、平織等)や不織布、編み物、レース、フェルト、紙などの布状体(例えば、カーテン、若しくは壁や床、天井、窓、机上、又はパーティション等に貼着又は粘着させるクロス等)等であってもよい。
コーティング膜10bは面材10aの通気性を低減させるものである。そして、コーティング膜10bは面材10aの少なくとも一部の上に形成されている。このため、基材10のコーティング膜10bが形成された部分は通気性が低減された態様となっている。
尚、コーティング膜10bは、面材10aの通気性を抑制可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、コーティング膜10bは、樹脂やゴム等の有機(高分子)材料又はガラス等の無機材料等からなるものであることが好ましく、それらの材料の中には、電波遮蔽特性を低下させない範囲で添加剤(老化防止剤、着色剤等)を配合してもよい。また、例えば面材10aの表面に模様が付されているような場合や面材10aが透明であるような場合等においては、コーティング膜10bは透明(光透過性)であることが好ましい。
また、コーティング膜10bは、電波遮蔽層12が形成されている領域全域にわたって形成されていてもよく、図1に示すように、面材10aの一方の表面全体を被覆するように形成されていてもよい。
電波遮蔽層12は模様を構成するように二次元的に配列された(例えば、マトリクス配列やデルタ配列等に従って配列された)複数のアンテナ13を含むものである。尚、本実施形態では電波遮蔽層12が実質的に複数のアンテナ13のみにより構成されている例について説明するが、電波遮蔽層12は、複数のアンテナ13以外のさらなるアンテナ等の他の構成要素を含むものであってもよい。
次に、本実施形態に係る電波遮蔽体1の製造方法について図8を参照しながら説明する。
図8は基材10上に複数のアンテナ13(電波遮蔽層12)を形成する工程を表す図である。
まず、例えば、布状体等からなる,可撓性及び通気性を有する面材10aを用意する。そして、その面材10aの一方の表面上にコーティング膜10bを形成して基材10を完成させる。ここで、コーティング膜10bは面材10aの通気性を低減するものであるため、得られた基材10は通気性が低減されたものである。基材10は、通気性が実質的にないものであってもよい。そして、図8に示すように、この基材10を基盤40の表面40a上に配置する。基盤40は、平坦且つ平滑な表面40aに開口する複数の貫通孔41が形成されている。また、貫通孔41は図示しない吸引手段(例えば(真空)ポンプ等)に接続されている。その吸引手段を駆動させることによって、貫通孔41を介して基盤40上に配置された基材10を基盤40上に吸着固定する。そうすることによって、可撓性を有する基材10の,アンテナ13(電波遮蔽層12)を形成しようとする表面10cが平坦となるように(つまり、しわやたるみが生じないように)基材10を固定することができる。最後に、この状態で複数のアンテナ13からなる電波遮蔽層12を形成して電波遮蔽体1を完成させることができる。尚、コーティング膜10bを形成する工程と電波遮蔽層12を形成する工程とは連続して行ってもよいし、一旦コーティング膜10bを形成した後、一旦巻回等して保存して、その後改めて電波遮蔽層12を形成するようにしてもよい。
複数のアンテナを高い形状寸法精度で形成するためには、複数のアンテナが形成される表面が平坦となるように(しわが入ったり、たるみや湾曲が生じないように)面材10a(基材10)を固定した状態で複数のアンテナを形成する必要がある。このところ、例えば、通気性を有する面材10a上に直接複数のアンテナ13を形成する場合、面材10aの通気性故に、表面10cが平坦となるように(しわやたるみが生じないように)固定することは困難である。具体的に、基盤40上にコーティング膜10bを有さない面材10aを配置して吸引したとしても、面材10aの通気性故、面材10aを表面40aに密着して強固に固定することは困難である。従って、複数のアンテナ13を高い形状寸法精度で形成することが困難である。その結果、高い電波遮蔽性を実現することは困難となる。この場合、電波遮蔽層12(アンテナ13)は、例えば、周波数選択性を有さないものとなってしまう虞がある。
それに対して本実施形態では、通気性を有する面材10aの上に面材10aの通気性を低減させるコーティング膜10bが形成されている。このため、通気性を有する面材10aを主体とする基材10は、吸着されて表面40aに密着した態様で強固に固定可能である。すなわち、複数のアンテナ13を形成しようとする表面10cを平坦に保った状態で基材10を強固に固定することができる。従って、高い形状寸法精度で複数のアンテナ13を形成することが可能となる。その結果、高い電波遮蔽性を実現することが可能となる。
基材10を強固に固定して安定的に電波遮蔽体1を生産する観点から、コーティング膜10bを少なくともアンテナ13を形成する領域全域にわたって形成することが好ましいが、基材10を吸着固定な構成であれば必ずしも面材10aの一方の表面の全体にわたって形成する必要はなく、面材10aの一方の面の一部にのみコーティング膜10bを形成する構成としてもよい。
尚、通気性を有する面材10aを吸着固定以外の方法で固定することも考えられる。例えば、粘着剤等を用いて基盤40に固定することも考えられる。しかしながら、そのような場合、面材10aの基盤40への着脱作業が繁雑になる。特に、高い平坦度で面材10aを固定しようとすると着脱作業がさらに煩雑になるとともに作業困難度が増大する。このため、高い電波遮蔽性を有する電波遮蔽体の作製が困難となってしまう。一方、基材10の吸着による固定は、上述の粘着剤等を用いた基盤40への固定と比較して非常に容易に表面10cを高い平坦度に保った状態で基材10を固定することができる。
尚、コーティング膜10bの形成方法は、特に限定されるものではない。コーティング膜10bは、例えば、ロールコーター法、スリットダイコーター法、ドクターナイフコーター法、グラビアコーター法などによって形成することができる。
また、電波遮蔽層12(アンテナ13)の形成方法も特に限定されるものではない。電波遮蔽層12(アンテナ13)は、蒸着法、スパッタ法、化学気相蒸着法(CVD法)、パターン圧着法、エッチング加工法、型の嵌め込みによる埋め込み法等により形成してもよい。また、導電性材料を含む液体材料(例えばインク状、本明細書において、「液状材料」は溶媒及び溶質からなる溶液、液体(溶媒のみ又は溶媒及び溶質)中に微粒子やコロイド状物質が分散混入された分散液を含む概念である。すなわち、液状材料とは少なくとも液体を含むすべての材料をいう。)、具体的には、導電性材料が溶解した溶液(インク)、コロイド状の導電性材料を含む溶液(インク)、導電性材料から実質的になる微粒子が分散混入された微粒子分散液(インク)等を用いて、各種印刷法(例えば、シルク印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法等)、ミスト塗装法、スピンコート法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法、インクジェット法、マイクログラビアコート法等により形成してもよい。尚、導電性材料としては、アルミニウム、銀、銅、金、白金、鉄、カーボン、黒鉛、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、これらの混合物又は合金等が挙げられる。これらの中でも、高い導電率を有し、比較的安価な銅、アルミニウム、銀が好ましい。
例えば、面材10aが複数の微細孔及び/又は凹凸を有するものである場合(例えば、布状体等により構成されている場合)、電波遮蔽層12を液体材料により直接面材10aの上に形成すると、液体材料が微細孔に浸入して滲み(含浸、詳細には面材表面方向への含浸)が生じたり、不意な液体材料の凹部への流れ込みが生じる虞がある。このような滲みや流れ込みが生じるとアンテナ13の形状寸法にばらつきや不正確さが生じることとなり、所望の高い電波遮蔽性、周波数選択性が得られなくなってしまう。このため、この場合は、電波遮蔽層12をコーティング膜10bの上に形成するようにすることが好ましい。そうすることによって、上述した液体材料の滲みや流れ込みを抑制することができる。従って、アンテナ13を高い形状寸法精度で形成することができる。その結果、所望する高い電波遮蔽性、周波数選択性の実現が可能となる。
より効果的に液体材料の滲みや流れ込みを抑制する観点から、コーティング膜10bは面材10aの表面を平坦化すると共に、基材10の厚みを均一化するものであることが好ましい。そうすることによって、複数のアンテナ13を形成しようとする表面10cの平坦度をさらに向上することができる。従って、より高い形状寸法精度のアンテナ13を形成することが可能となる。
さらに、コーティング膜10bは液体材料に対する膨潤度の低い材料(液体材料を含浸しにくい材料)により形成されていることが好ましい。例えば、コーティング膜10bは、樹脂(例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等)により形成されていることが好ましい。
次に、本実施形態における電波遮蔽層12の構成についてさらに詳細に説明する。
本実施形態では、電波遮蔽層12は、等間隔にマトリクス状に配列された,周波数選択性を有する複数のアンテナ13により構成されている。すなわち、アンテナ13は特定周波数の電波を選択的に反射するものである。このため、電波遮蔽体1は特定周波数の電波を選択的に遮蔽し、それ以外の電波を透過させることができるものである。
具体的に、図3に示すように、アンテナ13は、3本の第1エレメント部13aと、3本の第2エレメント部13bとを有する。3本の第1エレメント部13aは、相互に120°の角度をなしてアンテナ中心C1から外方に延びている。各第2エレメント部13bは第1エレメント部13aの外側端に結合されている。
各第1エレメント部13aの長さは相互に略同一であることが好ましい。また、各第2エレメント部13bの長さも相互に略同一であることが好ましい。そうすることによって、電波遮蔽層12の周波数選択性をより高くすることができる。
尚、第1エレメント部13aの長さ(L1)と第2エレメント部13bの長さ(L2)とは相互に異なっていてもよく、また同一であってもよい。第1エレメント部13aの長さ(L1)と第2エレメント部13bの長さ(L2)とは、0<L2<2(3)1/2/L1という関係式を満たすことが好ましい。(L2)が2(3)1/2/L1以上である場合は、隣接する第2エレメント部13b同士が接触してしまい、所望の電波遮蔽効果が得られなくなるからである。特定周波数の電波の高い遮蔽率を実現する観点から、第2エレメント部13bの長さ(L2)は第1エレメント部13aの長さ(L1)の0.5倍以上2倍以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.75倍以上2倍以下である。
第1エレメント部13aの幅と第2エレメント部13bの幅とは相互に異なっていてもよく、また、同一であってもよい。本実施形態においては、第1エレメント部13aの幅と第2エレメント部13bの幅とは略同一の幅(L3)とする。
尚、上述のように、アンテナ13は、各第1エレメント部13aの外側端に結合された3本の第2エレメント部13bを有する。このため、アンテナ13は「Y」字形の線状アンテナ(アンテナ中心から放射状に延びる3本の第1エレメント部のみにより構成され、第2エレメント部を有さない線状アンテナ)や、所謂エルサレムクロス型アンテナ(各々、アンテナ中心から相互に90°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる4本の線分状の第1エレメント部と、該各第1エレメント部の外側端に結合された線分状の第2エレメント部とを有するアンテナ)よりも高い周波数選択性を有する。従って、高い周波数選択性を有する電波遮蔽体1を実現することができる。
また、アンテナ13は第2エレメント部13bを有するので、第2エレメント部13b同士を対向させて(より好ましくは、第2エレメント部13b同士を緊密に対向させて(図12のX1を0より大きい範囲で小さくして))複数のアンテナ13を配置することが容易である。このように複数のアンテナ13を配置することによって、より特定周波数の電波に対する電波遮蔽率を向上することができる。
第2エレメント部13b同士を対向させると共に、単位面積あたりにより多くのアンテナ13を配置する観点から、第2エレメント部13bはその中心において第1エレメント部13aの外側端に結合され、且つ第2エレメント部13bと第1エレメント部13aとが直角をなすことが好ましい。また、第2エレメント部13bの長さと第1エレメント部13aの長さとが略同一であることが好ましい。
第1エレメント部13aの長さ及び第2エレメント部13bの長さと、アンテナ13に反射させようとする電波の周波数(特定周波数)とは相関する。このため、第1エレメント部13aの長さと第2エレメント部13bの長さとは、電波遮蔽体1により遮蔽させようとする電波の周波数(特定周波数)に応じて適宜決定することができる。例えば、第1エレメント部13aの長さと第2エレメント部13bの長さとが同一である場合は、第1エレメント部13a及び第2エレメント部13bの長さを長くすることによって特定周波数を低下させることができる。また、第1エレメント部13a及び第2エレメント部13bの長さを短くすることによって特定周波数を高くすることができる。
以下、第1エレメント部13aの長さ(L1)と第2エレメント部13bの長さ(L2)とが同一である場合(ここでは、(L1)と(L2)を総称してエレメント長Lとする。)の電波遮蔽体1の電波遮蔽特性について図9及び図10を参照しながら詳細に説明する。
図9は、電波遮蔽体1を透過した電波の周波数と透過減衰量との関係を表すグラフである。
尚、図9において、長さ(L1)及び(L2)はそれぞれ10.6mm、幅(L3)が0.7mmである。
図9に示すように、電波遮蔽体1に入射した電波のうち特定周波数(約2.7GHz)の電波のみが選択的に減衰する。換言すれば、電波遮蔽体1により、電波遮蔽体1に入射した電波のうち特定周波数の電波が選択的に遮蔽される。これは、電波遮蔽体1の電波遮蔽層12、詳細には電波遮蔽層12に含まれる複数のアンテナ13のそれぞれが、入射した電波のうち特定周波数の電波を選択的に反射するためである。アンテナ13によって反射される電波の周波数は、第1エレメント部13aの長さ(L1=L)と第2エレメント部13bとの長さ(L2=L)によって決定される。
図10はエレメント長Lとアンテナ13によって反射される電波の周波数との関係を表すグラフである。
図10に示すように、エレメント長Lが長くなるほど、アンテナ13によって反射される電波の周波数は低くなる。逆に、エレメント長Lが短くなるほど、アンテナ13によって反射される電波の周波数は高くなる。
一方、反射される電波の周波数は幅L3と大きく相関しない。すなわち、反射される電波の周波数は、主として、エレメント長Lによって決定される。従って、図10に示すようなエレメント長Lと選択周波数との関係に基づいて、アンテナ13により反射させたい電波の周波数(特定周波数)からエレメント長Lを算出決定することができる。例えば、周波数5GHzの電波を遮蔽させる電波遮蔽体1を作成する場合は、図10より、エレメント長Lを約6mmにすればよいことがわかる。
また、例えば、第1エレメント部13aの長さ(L1)を固定し、第2エレメント部13bの長さ(L2)を調整することにより特定周波数を調整することも可能である。具体的には、第2エレメント部13bの長さ(L2)を長くすることにより特定周波数を低くすることができる。また、第2エレメント部13bの長さ(L2)を短くすることにより特定周波数を高くすることが可能である。
尚、アンテナ13の厚さ(電波遮蔽層12の層厚)は10μm以上20μm以下であることが好ましい。アンテナ13の厚さが10μmより小さいとアンテナ13の導電性が低下する傾向にある。アンテナ13の厚さが20μmより大きいと、アンテナ13の形成性が低下する傾向にある。
以上、本実施形態に係る電波遮蔽体1について詳細に説明してきたが、電波遮蔽体1の形状寸法は何ら制限されるものではない。電波遮蔽体1は一辺の長さが数ミリメートル角の小さなものであっても、一辺が数メートル、又はそれ以上の大きなものであってもよい。
また、電波遮蔽体1は、平面視において、三角形、四辺形(長方形、正方形)、多角形、円形、楕円形等の任意の形状のものであってもよい。
また、本実施形態では、基材10の一方の面にのみ電波遮蔽層12が形成されている例について説明したが、面材10aの両面にコーティング膜10bを形成し、さらに各コーティング膜10b上に電波遮蔽層12を形成する構成としてもよい。その場合、両電波遮蔽層12は相互に異なる形状のアンテナ13からなるものであってもよく、また、相互に同一の形状のアンテナ13からなるものであってもよい。両電波遮蔽層12を相互に異なる形状のアンテナ13からなるものとすることによって、相互に周波数の異なる複数種類の電波の遮蔽が可能となる。また、両電波遮蔽層12を相互に同一の形状のアンテナ13からなるものとすることによって、特定周波数に対するより高い電波遮蔽性を実現することができる。
また、電波遮蔽体1の単位面積あたりに含まれるアンテナ13の個数も、隣接するアンテナ13が接触しない限りにおいて、何ら限定されるものではない。電波遮蔽体1の単位面積あたりに含まれるアンテナ13の個数は、電波遮蔽体1の用途等により適宜変更することができる。電波遮蔽体1の単位面積あたりに含まれるアンテナ13の数量を増やすことにより高い電波遮蔽性を実現することができる。
また、本発明において、電波遮蔽層12を構成するアンテナの形状、寸法等は特に限定されるものではなく、ここで説明するアンテナ13は単なる例示である。また、電波遮蔽層12は、複数のアンテナ13と共に、アンテナ13とは形状寸法が異なる1種類又は複数種類のアンテナをさらに含むものであってもよい。
以下、本実施形態の変形例として、電波遮蔽層12の構成が異なる種々の電波遮蔽体について説明する。
(変形例1)
図11は本変形例1における電波遮蔽層12aの平面図である。
図12は電波遮蔽層12aの一部分を拡大した平面図である。
本変形例1では、電波遮蔽層12は、複数のアンテナ13が所定間隔でマトリクス状に配列された複数のアンテナ集合体15を構成するように配列されている。具体的には、複数のアンテナ13は、各々、第2エレメント部13b同士が対向するように配設された一対からなる複数のアンテナユニット14を構成している。さらに、その複数のアンテナユニット14は、第2エレメント部13b同士が対向するように配設されて二次元に連続展開した六角形状の複数のアンテナ集合体15を構成している。すなわち、各アンテナ集合体15は、第2エレメント部13b同士を対向させて環状に配置された3つのアンテナユニット14からなる。言い換えれば、アンテナ集合体15は、第2エレメント部13b同士を対向させて環状に配置された6つのアンテナ13からなる。
本変形例1では、アンテナ集合体15を構成する18本の第2エレメント部13bのうち12本の第2エレメント部13bが相互に略平行に対向するように設けられている。このように、比較的多くの第2エレメント部13b同士が対向するようにアンテナ13を配置構成することによって、アンテナ13の特定周波数の電波に対する電波反射率(電波遮蔽率)をより向上することができる。従って、特定周波数の電波に対する高い電波遮蔽率を有する電波遮蔽体を実現することができる。
尚、対向する第2エレメント部13b間の距離(X1)を短くするほどアンテナの電波反射率(電波遮蔽体の電波遮蔽率)が高くなる。具体的には、対向する第2エレメント部13b間の距離(X1)(図12参照)が0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。より好ましい範囲は0.6mm以上1mm以下である。距離Xを0.5mmより短くすると、対向する第2エレメント部13b同士が不所望に接触する虞がある。一方、距離Xが3mmより長いと電波遮蔽率が低下する傾向にある。
また、種々の入射角で入射する電波に対して一定した電波遮蔽性を実現する観点から、アンテナ集合体15は六角形状(好ましくは略正六角形状)であることが好ましい。従って、第1エレメント部13aと第2エレメント部13bとが直角をなしていることが好ましい。また、第2エレメント部13bがその中心において第1エレメント部13aと結合していることが好ましい。
(変形例2)
図13は本変形例2における電波遮蔽層12bの平面図である。
本変形例2では、アンテナ集合体15がさらに第2エレメント部13b同士が対向するように(所謂ハニカム状に)配置されている。このため、変形例2においては、ほぼすべての第2エレメント部13b同士が対向している。このように、アンテナ13を配置することによって、変形例1よりもさらに、相互に対向するように設けられた第2エレメント部13bを多くすることができる。このため、さらに高い電波遮蔽率を有する電波遮蔽体を実現することができる。
(変形例3)
図14は本変形例3における電波遮蔽層12cの平面図である。
上記実施形態及び変形例1、2では、電波遮蔽層は1種類のアンテナのみにより構成されているのに対して、本変形例3では、図14に示すように、電波遮蔽層12cは複数種類のアンテナにより構成されている。具体的には、電波遮蔽層12cは、比較的大きな複数のアンテナ16と、比較的大きな複数のアンテナ17とにより構成されている。尚、アンテナ16及びアンテナ17のそれぞれは、所謂T−Y型アンテナである。
複数のアンテナ16及び複数のアンテナ17は、交番状に、且つ相互に干渉しないようにマトリクス状に配置されている。アンテナ16とアンテナ17とは相互に相似形であってもよく、また、非相似形であってもよい。さらに、電波遮蔽層12cはアンテナ16及びアンテナ17以外のアンテナをさらに含むものであってもよい。
比較的小さなアンテナ16と比較的大きなアンテナ17とは、相互に異なる周波数選択性を有する。すなわち、反射する電波の周波数が相互に異なるものである。このため、本変形例3によれば、相互に周波数が異なる2種の電波を選択的に遮蔽することができる電波遮蔽体を実現することができる。
例えば、無線LANでは、2.4GHz帯の周波数の電波と、5.2GHz帯の周波数の電波との2種の周波数の電波が使用されている。本変形例3に係る電波遮蔽体は、このように無線LANを使用する環境等といった2種の周波数の電波を使用するような環境に特に有用である。
また、3種類以上の周波数の電波が使用されるような環境においては、相互に大きさの異なる3種類以上のアンテナにより電波遮蔽層12cを構成してもよい。
(変形例4)
図15は本変形例4における電波遮蔽層12dの平面図である。
本変形例4では、複数のアンテナ16は、変形例2における複数のアンテナ13と同様に、各々、第2エレメント部16b同士が対向するように配設された一対からなる複数のアンテナユニット18を構成している。さらに、その複数のアンテナユニット18は、第2エレメント部16b同士が対向するように配設されて二次元に連続展開した六角形状の複数のアンテナ集合体19を構成している。すなわち、各アンテナ集合体19は、第2エレメント部16b同士を対向させて環状に配置された3つのアンテナユニット18からなる。言い換えれば、アンテナ集合体19は、第2エレメント部16b同士を対向させて環状に配置された6つのアンテナ13からなる。そして、アンテナ集合体19がさらに第2エレメント部13b同士が対向するように(所謂ハニカム状に)配置されている。
一方、複数のアンテナ17は、変形例1における複数のアンテナ13と同様に、各々、第2エレメント部17b同士が対向するように配設された一対からなる複数のアンテナユニット20を構成している。さらに、その複数のアンテナユニット20は、第2エレメント部17b同士が対向するように配設されて二次元に連続展開した六角形状の複数のアンテナ集合体21を構成している。そして、各アンテナ集合体21はアンテナ集合体19により包囲されるように配置されている。このような配列によれば、アンテナ16の第2エレメント部16b同士、アンテナ17の第2エレメント部17b同士をそれぞれ高い確率で対向させて、且つ両アンテナ16及び17をほぼ同様の密度で配置することができる。従って、アンテナ16が反射する電波及びアンテナ17が反射する電波の両方を、より高い周波数選択性で、且つより高い遮蔽率で遮蔽することができる。
本変形例4では、第2エレメント部16b、17bの長さを比較的短くすることことが好ましい。そうすることによって、アンテナ16とアンテナ17との接触を抑制することができる。従って、アンテナ集合体19に包囲されるアンテナ集合体21を構成するアンテナ17の寸法自由度をより大きくすることができる。言い換えれば、アンテナ17を比較的大きくすることができる。その結果、例えば比較的周波数の近い2種の電波を選択的に遮蔽可能な電波遮蔽体が実現可能となる。
(変形例5)
図16は本変形例5における電波遮蔽層12eの平面図である。
本変形例5は上記変形例4のさらなる変形例である。本変形例5では、アンテナ集合体19とアンテナ集合体21とは、相互に異なる対称軸(詳細には、アンテナ16、17の配列方向(面内方向)に延びる線対称軸)を有するように、相互に傾斜するように配置されている。
アンテナ集合体19によりアンテナ集合体21を包囲させるためには、アンテナ集合体21を構成するアンテナ17の寸法を、アンテナ集合体19を構成するアンテナ16の寸法より小さくする必要がある。変形例4に示すように、アンテナ集合体19とアンテナ集合体21とを傾斜させることなく配置させた場合、アンテナ16とアンテナ17とが相互に干渉しないようにアンテナ17をアンテナ16に対して非常に小さくしなければならず、アンテナ16とアンテナ17との設計自由度が低くなる。
それに対して、本変形例5に示すように、アンテナ集合体19とアンテナ集合体21とを傾斜(例えば図16では、θ=10°)させて配列した場合は、相互に対向する第2エレメント部16bと、相互に対向する第2エレメント部17bとの相対位置がずれる。このため、本変形例5では、変形例4に示す場合と比較して、アンテナ16に対するアンテナ17の相対大きさを比較的大きくすることができる。従って、アンテナ16とアンテナ17との形状寸法の設計自由度を広げることができる。この結果、周波数の近い(第1周波数との第2周波数との比(第1周波数<第2周波数)が0.45以上)2波に対する電波遮蔽が可能となる。
また、図16では、略六角形状のアンテナ集合体19、アンテナ集合体21を最密に配置しているが、所望の電波遮蔽率によっては、最密に配置せず、略六角形状のアンテナ集合体19、21の数をそれぞれ適宜調整してもよい。
(変形例6)
変形例6では、特定の周波数帯域の電波を選択的に遮蔽可能なように、それぞれ異なる特定の周波数の電波を選択的に反射させる複数種類のアンテナにより電波遮蔽層を構成した例について説明する。具体的には、3種類のアンテナ22a、22b、22cにより電波遮蔽層12fを構成した例について説明する。
尚、「周波数帯域」とは比帯域が10%を超える周波数の領域のことをいう。また、「特定の周波数帯域の電波を選択的に遮蔽する」電波遮蔽体とは、10dBの比帯域(好ましくは20dBの比帯域、さらに好ましくは30dBの比帯域)が10%を超える電波遮蔽体のことをいう。それに対して、「特定の周波数の電波を選択的に遮蔽する」電波遮蔽体とは、10dBの比帯域が10%以下である電波遮蔽体のことをいう。尚、10dBの比帯域は、10dB以上遮蔽される電波の周波数の最大値をFmaxとし、10dB以上遮蔽される電波の周波数の最小値をFminとした場合、2(Fmax−Fmin)/(Fmax+Fmin)で表される。
以下、図17を参照しながら本変形例6における電波遮蔽層12fの構成について詳細に説明する。
図17は本変形例6における電波遮蔽層12fの平面図である。
電波遮蔽層12fは、相互に異なる特定の周波数の電波を選択的に反射させる複数種類のアンテナ22、具体的には、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cの3種類のアンテナによって構成されている。第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cは、それぞれの電波反射スペクトルピークが相互に独立していないものである。言い換えれば、それぞれの電波反射スペクトルピークが連続しているものである。このため、本変形例に係る電波遮蔽層12fは所定の幅を持った周波数帯域(例えば、815MHz以上925MHz以下の周波数帯域)の電波を選択的に反射させることができる。例えば、電波遮蔽層12fは図18で示されるような電波遮蔽特性(電波の透過減衰特性)を有する。電波反射スペクトルピークのより高い連続性を実現する観点から、電波遮蔽層12fに含まれる各アンテナ22の寸法は、アンテナ22のうち基準となる種類のアンテナ22の寸法の±15%(好ましくは±10%、より好ましくは±5%)以内であることが好ましい。
図18は電波遮蔽層12fの電波遮蔽量(電波の透過減衰量)と周波数との相関を例示するグラフである。
図18に示すように、第1アンテナ22aのスペクトルピークP2と、第2アンテナ22bのスペクトルピークP3と、第3アンテナ22cのスペクトルピークP1とは相互に独立しておらず、連続している。すなわち、最も大きなピークであるP1のベースラインBLからの深さH1に対する、谷部のベースラインBLからの深さH2との比が50%以下(3dB以上)である。そして、電波遮蔽層12fによれば、ピークP1〜P3の間の周波数帯域の全域の電波が10dB以上という高い遮蔽率で遮蔽(反射)される。また、10dBの比帯域が10%よりも大きいことが好ましい。
尚、「電波反射スペクトルピークが相互に独立していない(連続している)」とは、電波遮蔽体の有する電波反射(遮蔽)スペクトルのうち最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率に対するスペクトルピーク間の谷部における最小の電波反射(遮蔽)率の比が50%より大きい(最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率と谷部における最小の電波反射(遮蔽)率との差が3dBより小さい)ことをいう。一方、「電波反射スペクトルピークが相互に独立している(連続していない)」とは、電波遮蔽体の有する電波遮蔽スペクトル(電波反射スペクトル)のうち最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率に対するスペクトルピーク間の谷部における最小の電波反射(遮蔽)率の比が50%以下(最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率と谷部における最小の電波反射(遮蔽)率との差が3dB以上)であることをいう。
本変形例6では、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cのそれぞれは、実施形態において説明した所謂T−Y型アンテナである。しかし、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cのそれぞれは、例えば「Y」字状のアンテナ、所謂エルサレムクロス型のアンテナ等であってもよい。また、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cは、相互に異なる形状のアンテナであってもよく、また、相互に相似形のアンテナであってもよい。
次に、本変形例6におけるアンテナ22の配置について、図17を参照しながら詳細に説明する。
図17に示すように、電波遮蔽層12fには、複数の第1アンテナ22a、複数の第2アンテナ22b、及び複数の第3アンテナ22cが、それぞれ第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cが一方向にこの順で交番状に配列されてなる複数のアンテナ列23を構成するように二次元配列されている。言い換えれば、電波遮蔽層12fは、それぞれ第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cが一方向にこの順で交番状に配列された複数のアンテナ列23が配置されてなるものである。
電波遮蔽層12fにおいて、各第1アンテナ22aはその第1アンテナ22aが属するアンテナ列23の隣のアンテナ列23に属する第2アンテナ22b及び第3アンテナ22cに隣接している。同様に、各第2アンテナ22bはその第2アンテナ22bが属するアンテナ列23の隣のアンテナ列23に属する第1アンテナ22a及び第3アンテナ22cに隣接している。各第3アンテナ22cはその第3アンテナ22cが属するアンテナ列23の隣のアンテナ列23に属する第2アンテナ22b及び第1アンテナ22aに隣接している。言い換えれば、第1アンテナ22aと、その第1アンテナ22aが属するアンテナ列23の両側に位置するアンテナ列23に属する、その第1アンテナ22aに隣接する第1アンテナ22aとのアンテナ中心が三角形(好ましくは正三角形)を構成するように配置されている。且つ、第1アンテナ22aと、その第2アンテナ22bが属するアンテナ列23の両側に位置するアンテナ列23に属する、その第2アンテナ22bに隣接する第2アンテナ22bとのアンテナ中心が三角形(好ましくは正三角形)を構成するように配置されている。且つ、第1アンテナ22aと、その第3アンテナ22cが属するアンテナ列23の両側に位置するアンテナ列23に属する、その第3アンテナ22cに隣接する第3アンテナ22cとのアンテナ中心が三角形(好ましくは正三角形)を構成するように配置されている。
このような配置にすることによって、例えば、第1アンテナ22aの第2エレメント部が隣のアンテナ列23に属する第2アンテナ22bと第3アンテナ22cとの間に入り込むように、複数のアンテナ列23を行方向に密に配列することが可能となる。言い換えれば、図17に示すように、第2アンテナ22bが配置された領域R内に隣接するアンテナ22の第2エレメント部が入り込むような態様で密にアンテナ22を配置することが可能となる。よって、単位面積あたりにより多くのアンテナ22a、22b、22cを密に配置することができる。
ここで、電波の遮蔽率は単位面積あたりのアンテナ22の数量と相関し、単位面積あたりのアンテナ22の数量が増加すると電波の遮蔽率も増加するため、本変形例6におけるアンテナ22の配置によれば高い電波遮蔽率を実現することが可能となる。また、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cの単位面積あたりに含まれる個数を略同一にすることができるため、周波数帯域における電波遮蔽ムラを抑制することができる。尚、より単位面積あたりのアンテナ22の数量を多くする観点から、第2エレメント部は第1エレメント部よりも短い方が好ましい(L2>L1)。
また、本変形例6におけるアンテナ22の配列では、複数のアンテナ22が第2エレメント部同士が平行に対向しないように配列されている。このため、アンテナ22の周波数選択性を比較的低く保つことができる。言い換えれば、アンテナ22の比帯域を比較的広く保つことができる。従って、特定の周波数帯域全域の電波に対する偏りの少ない良好な電波遮蔽率を実現することができる。
(変形例7)
図19は変形例7における電波遮蔽層12gの平面図である。
以上、T−Y型アンテナにより構成された電波遮蔽層12の例について説明してきたが、電波遮蔽層12はT−Y型アンテナ以外のアンテナにより構成されていてもよい。例えば、図19に示すように、電波遮蔽層12gは、マトリクス状に配列された複数の「Y」字状のアンテナ24により構成されていてもよい。尚、各アンテナ24は、各々、アンテナ中心から相互に120°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる3本の線分状の第1エレメント部24aにより構成されている。
(変形例8)
図20は変形例8における電波遮蔽層12hの平面図である。
本変形例8は、上記変形例7のさらなる変形例である。上記変形例7では、電波遮蔽層12gが1種類のアンテナ24のみにより構成されているのに対し、本変形例8では、電波遮蔽層12hは、相互に大きさの異なる2種類の「Y」字状アンテナ25、26により構成されている。この構成によれば、相互に周波数の異なる複数種類の電波の遮蔽が可能な電波遮蔽体を実現することができる。
図20に示すように、本変形例8では、比較的大きなアンテナ25が、第1エレメント部同士を対向させるように配列されている。具体的には、あるアンテナ25の3本の第1エレメント部のそれぞれに異なるアンテナ25の第1エレメント部が平行に且つ密に対向するように配列されている。そして、比較的大きなアンテナ25により区画形成された六角形状の領域のそれぞれに、比較的小さなアンテナ24がひとつずつ配置されている。このような配列にすることによって、アンテナ25の特定周波数の電波に対する電波遮蔽率を向上することができる。
(変形例9)
図21は、本変形例9における電波遮蔽層12iの平面図である。
本実施例10では、電波遮蔽層12iは、所謂エルサレムクロス型の複数のアンテナ27により構成されている。各アンテナ27は、各々、アンテナ中心から相互に90°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる4本の線分状の第1エレメント部27aと、各第1エレメント部の外側端に(典型的には垂直に)結合された線分状の第2エレメント部27bとを有するものである。このような形状のアンテナ27により電波遮蔽層を構成することによって、上記変形例7、8で説明した「Y」字状のアンテナにより電波遮蔽層を構成する場合よりも高い周波数選択性(但し、所謂T−Y型アンテナにより電波遮蔽層を構成した場合よりは低い周波数選択性)を実現することができる。
複数のアンテナ27は、隣接するアンテナ27の第2エレメント部27b同士が対向するように(好ましくは、平行に且つ密に対向するように)マトリクス状に配列されている。この配列によれば、アンテナ27の特定周波数の電波に対する電波遮蔽率をさらに向上することができる。
(変形例10)
図22は、本変形例10における電波遮蔽層12jの平面図である。
本変形例10は、上記変形例9のさらなる変形例である。上記変形例9では、電波遮蔽層12iが1種類のアンテナ27のみにより構成されているのに対し、本変形例10では、電波遮蔽層12jは、相互に大きさの異なる2種類のエルサレムクロス型アンテナ28、29により構成されている。この構成によれば、相互に周波数の異なる複数種類の電波の遮蔽が可能な電波遮蔽体を実現することができる。
図22に示すように、本変形例10では、複数のアンテナ28が、隣接して配置されたアンテナ28の第2エレメント部28b同士が対向するように(好ましくは、平行に且つ密に対向するように)マトリクス状に配列されている。そして、比較的大きなアンテナ28により区画形成された領域のそれぞれに、比較的小さなアンテナ29がひとつずつ配置されている。
このような配列にすることによって、アンテナ28の特定周波数の電波に対する電波遮蔽率を向上することができる。
(変形例11)
図23は、本変形例11における電波遮蔽層12kの平面図である。
本変形例11は、アンテナ28、29の配列のみを異にする上記変形例10のさらなる変形例である。
本変形例11では、図23において横方向に第2エレメント部28b同士が対向する(好ましくは、平行に且つ密に対向する)ように配列されたアンテナ28の列と、同方向に第2エレメント部29b同士が対向する(好ましくは、平行に且つ密に対向する)ように配列されたアンテナ29の列とが、図23において縦方向に交互に配列されている。このように配列することによって、アンテナ28、29それぞれの特定周波数の電波に対する電波遮蔽率を向上することができる。
(変形例12)
図24は本変形例12におけるアンテナ13の平面図である。詳細には、図24(a)は本変形例12におけるアンテナ13の全体を表す平面図である。図24(b)は図24(a)中(b)で示す部分(アンテナ中心C近傍部分)を拡大した平面図である。図24(c)は図24(a)中(c)で示す部分を拡大した平面図である。
上記実施形態及び変形例では、アンテナ13は開口部を有さない金属膜(金属箔)により形成されている例について説明したが、アンテナ13は、例えば、図24に示すように、開口部を有する金属膜や金属箔(例えば、メッシュ状の金属膜や金属箔等)により形成してもよい。
ここで、開口部を有する金属膜(金属箔)とは、平面視格子状(三角格子状、六角格子状、コリンズ格子状等)などの平面視メッシュ状に形成された金属膜(金属箔)、平面視円形状、平面視楕円形状、又は平面視多角形状の微細孔が形成された金属膜(金属箔)、若しくは平面視円形状、平面視楕円形状、又は平面視多角形状の多数の金属膜(金属箔)が相互に離間するように配列されてなるものなどをいう。
この構成によれば、アンテナ13をある程度光を透過するものとすることができ、アンテナ13を眼に止まりにくいものとすることができる。従って、この構成によれば、例えば、基材10を透明とすることによって視界の妨げになりにくい電波遮蔽体1を実現することができる。また、面材10aの表面に模様が付されているような場合に、アンテナ13による模様の輪郭のぼやけ、視認性の悪化を抑制することができる。
アンテナ13の透明性(視認されにくさ)と導電性(電波遮蔽性)とを両立する観点から、アンテナ13は、図24に示すように、3本の第1エレメント部13aの交わる部分を平面視三角格子状のメッシュ状金属膜(又は金属箔)で構成すると共に、その他の第1エレメント部13aの部分及び第2エレメント部13bを平面視正方格子状のメッシュ状金属膜(又は金属箔)で構成することが特に好ましい。
また、上記観点から、アンテナ13に対する金属膜(金属箔)が占める面積の割合は2.5%以上30%以下であることが好ましい。
また、図24(c)に示すように、アンテナ13を構成する金属膜(金属箔)を平面視メッシュ状とした場合、線幅(W)及びピッチ(P)は、導電性(電波遮蔽性)と開口率(透光性)との関係で適宜設定することができる。例えば、線幅(W)は5μm以上70μm以下とすることができる。好ましくは8μm以上30μm以下である。線幅(W)が5μmより小さいと導電性(電波遮蔽性)が低下する傾向にある。一方、線幅(W)が70μmを超えると開口率(透光性)が低下する傾向にある。
一方、ピッチ(P)は50μm以上400μm以下とすることができる。好ましくは100μm以上300μm以下である。ピッチ(P)が50μmより小さいと開口率(透光性)が低下する傾向にある。ピッチ(P)が400μmを超えると導電性(電波遮蔽性)が低下する傾向にある。