JP4831357B2 - アクチュエータの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に設けられた可動機構の可動部を駆動するアクチュエータの制御装置に関する。
従来、内燃機関に設けられた可動機構の可動部をモータなどのアクチュエータで駆動するといったことが行われている。
こうしたアクチュエータの駆動を制御する制御装置は、特許文献1に記載されるようなセンサを用いて可動部の位置情報を検出し、その検出された位置情報を制御部に設けられた揮発性メモリ(電力供給が行われることで記憶データを保持することの可能なメモリ)に記憶する。そしてその記憶された位置情報に基づいて可動部の絶対位置を算出し、その絶対位置に基づいてアクチュエータの駆動を制御する。
特開2004−76265号公報
ところで、機関停止操作(例えばイグニッションスイッチのオフ操作)によって制御部への給電が停止されると、上記位置情報は消失されてしまう。そこで、機関停止操作が行われてアクチュエータの駆動が停止されたときの絶対位置を終了値として記憶しておく。そして、その後、機関始動操作等により制御部への給電が開始されたときには、アクチュエータの駆動開始前における絶対位置の初期値として上記終了値を設定することにより、アクチュエータの駆動開始時において速やかに可動部の絶対位置を把握することができる。
他方、アクチュエータの駆動が開始された後の可動部の絶対位置は、上記タイミングで記憶された終了値とは異なっている。そのため、アクチュエータの駆動が開始された後に制御部に対する一時的な電圧低下が発生し、その電圧低下が復帰して給電が開始されたときに上述したような初期値設定が行われてしまうと、可動部の実際の絶対位置が上記終了値とは異なっているにもかかわらず、その終了値が絶対位置の初期値として誤設定されてしまう。
こうした不都合の発生を防止するために、次のような処理を行うことが考えられる。
まず、機関停止操作が行われたときには、アクチュエータの駆動が停止されたときの可動部の絶対位置を終了値として記憶するとともに、アクチュエータの駆動が停止された後にフラグを一方の値から他方の値に書き換え、同フラグが一方の値から他方の値に書き換えられたことを条件に制御部への給電を停止する停止時処理を実行する。
また、機関始動操作が行われたときには、上記フラグが上記他方の値に設定されていることを条件に、アクチュエータの駆動が開始されるときの可動部の絶対位置の初期値として上記終了値を設定し、アクチュエータの駆動が開始される前に上記フラグを上記他方の値から上記一方の値に書き換える始動時処理を実行する。
こうした処理を行うようにすれば、アクチュエータの駆動中において上記フラグは一方の値に設定され、機関停止操作によって制御部への給電が停止されてから次回機関始動操作が行われて制御部への給電が開始されるまでの間は少なくとも同フラグは他方の値に設定されることになる。そのため、同フラグが一方の値に設定されているときには、可動部の実際の絶対位置と上記終了値とが異なっており、他方の値に設定されているときには、可動部の実際の絶対位置と上記終了値とが一致している。従って、可動部の実際の絶対位置と上記終了値とが一致しているか否かが、同フラグの値に基づいて判断可能になる。
そして、機関始動操作が行われて制御部に給電が開始されたときには、同フラグが他方の値に設定されていることを条件に、可動部の絶対位置の初期値として上記終了値が設定されることにより、機関始動操作に伴う制御部への給電開始時には、可動部の実際の絶対位置と一致する上記終了値が絶対位置の初期値として正しく設定される。一方、アクチュエータの駆動が開始された後に制御部に対する一時的な電圧低下が発生し、その電圧低下が復帰して給電が開始されたときには、上記フラグが一方の値に設定されているため、上述したような初期値設定は行われない。従って、可動部の実際の絶対位置が上記終了値とは異なっているにもかかわらず、その終了値が絶対位置の初期値として誤設定されてしまうといった不都合の発生が防止される。
ここで、こうしたフラグの設定を行う場合には、新たに次のような不都合の発生が懸念される。
まず、機関停止操作が行われて上記フラグ値が一方の値から他方の値に書き換えられている最中に機関始動操作が行われて上記始動時処理が実行されると、同フラグが他方の値に変更される前に当該始動時処理が実行されることにより、上述したような初期値設定が行われない。この場合には、前回の停止時処理で記憶された終了値(以下、前回の終了値という)ではなく、それよりも前に実行された停止時処理で記憶された終了値(以下、前々回の終了値という)が初期値として設定されることになる。この場合にあって、前回の終了値と前々回の終了値とが異なっているときには、今回の機関始動操作によってアクチュエータの駆動が開始されるときの可動部の実際の絶対位置と前々回の終了値とは異なっていることになるが、そうした誤った終了値(前々回の終了値)が初期値として設定されてしまう。
また、機関始動操作が行われて上記フラグ値が他方の値から一方の値に書き換えられている最中に機関停止操作が行われて上記停止時処理が実行されると、同フラグが一方の値に変更される前に当該停止時処理が実行されることにより、同フラグを一方の値から他方の値に書き換えることができなくなる。そのため、同フラグが一方の値から他方の値に書き換えられたことを条件に制御部への給電を停止するといった処理を実行することができなくなってしまう。
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関停止操作に伴うフラグ値の書き換え中に機関始動操作が行われた場合の始動時処理や、機関始動操作に伴うフラグ値の書き換え中に機関停止操作が行われた場合の停止時処理を適切に実施することのできるアクチュエータの制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関に設けられた可動機構の可動部を駆動するアクチュエータと、前記可動部の位置情報を検出するセンサと、前記位置情報を記憶する揮発性メモリを有し、前記揮発性メモリに記憶された前記位置情報に基づいて前記可動部の絶対位置を算出して前記アクチュエータの駆動を制御する制御部とを備えるアクチュエータの制御装置において、機関停止操作が行われたときには、前記アクチュエータの駆動が停止されたときの前記絶対位置を終了値として記憶するとともに、前記アクチュエータの駆動が停止された後に前記終了値の読み込みが不可であることを示す第1の値と前記終了値の読み込みが可能であることを示す第2の値との間で書き換え可能なフラグ前記第1の値から前記第2の値に書き換える停止時処理を実行し、 機関始動操作が行われたときには、前記フラグが前記第2の値に設定されていることを条件に前記アクチュエータの駆動が開始されるときの前記絶対位置の初期値として前記終了値を設定するとともに、前記アクチュエータの駆動が開始される前に前記フラグを前記第2の値から前記第1の値に書き換える始動時処理を実行し、機関停止操作に伴う前記フラグの前記第2の値への書き換え中に機関始動操作が行われたときには、同第2の値への書き換えが完了したあとに前記始動時処理を行うことをその要旨とする。
同構成によれば、機関停止操作が行われて上記フラグ値が読み込み不可であることを示す第1の値から読み込み可能であることを示す第2の値に書き換えられている最中に機関始動操作が行われた場合、第2の値へのフラグの書き換えが完了した後に上記始動時処理が実行される。従って、その始動時処理の実行にあっては、アクチュエータの駆動が開始されるときの可動部の絶対位置の初期値として、前回の停止時処理で記憶された終了値、すなわち、前回、機関停止操作が行われてアクチュエータの駆動が停止されたときの可動部の絶対位置が設定される。そのため、前回の停止時処理で記憶された終了値と前々回の停止時処理で記憶された終了値とが異なっているときには、今回の機関始動操作によってアクチュエータの駆動が開始されるときの可動部の実際の絶対位置と前々回の停止時処理で記憶された終了値とは異なっていることになるが、そうした誤った終了値(前々回の停止時処理で記憶された終了値)が初期値として設定されてしまうことを回避することができるようになる。従って、同構成によれば、機関停止操作に伴うフラグ値の書き換え中に機関始動操作が行われた場合の始動時処理を適切に行うことができるようになる。
請求項2に記載の発明は、内燃機関に設けられた可動機構の可動部を駆動するアクチュエータと、前記可動部の位置情報を検出するセンサと、前記位置情報を記憶する揮発性メモリを有し、前記揮発性メモリに記憶された前記位置情報に基づいて前記可動部の絶対位置を算出して前記アクチュエータの駆動を制御する制御部とを備えるアクチュエータの制御装置において、機関停止操作が行われたときには、前記アクチュエータの駆動が停止されたときの前記絶対位置を終了値として記憶するとともに、前記アクチュエータの駆動が停止された後に前記終了値の読み込みが不可であることを示す第1の値と前記終了値の読み込みが可能であることを示す第2の値との間で書き換え可能なフラグ前記第1の値から前記第2の値に書き換え、前記フラグが前記第1の値から前記第2の値に書き換えられたことを条件に前記制御部への給電を停止する停止時処理を実行し、
機関始動操作が行われたときには、前記フラグが前記第2の値に設定されていることを条件に前記アクチュエータの駆動が開始されるときの前記絶対位置の初期値として前記終了値を設定するとともに、前記アクチュエータの駆動が開始される前に前記フラグを前記第2の値から前記第1の値に書き換える始動時処理を実行し、機関始動操作に伴う前記フラグの前記第1の値への書き換え中に機関停止操作が行われたときには、同第1の値への書き換えが完了したあとに前記停止時処理を行うことをその要旨とする。
同構成によれば、機関始動操作が行われて上記フラグ値が読み込み可能であることを示す第2の値から読み込み不可であることを示す第1の値に書き換えられている最中に機関停止操作が行われた場合、第1の値へのフラグの書き換えが完了した後に上記停止時処理が実行される。従って、同構成では、そのフラグが第1の値から第2の値に書き換えられたことを条件に制御部への給電を停止するようにしているが、同フラグが第1の値に変更された後で上記停止時処理が実行されることにより、当該停止時処理の実行時にあって、同フラグを第1の値から第2の値に書き換えることが可能になる。そのため、同フラグが第1の値から第2の値に書き換えられたことを条件に制御部への給電を停止するといった処理を実行することができるようになり、同構成によれば、機関始動操作に伴うフラグ値の書き換え中に機関停止操作が行われた場合の停止時処理を適切に行うことができるようになる。
なお、請求項3に記載の発明によるように、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリに上記フラグの値を記憶させることにより、制御部に対する電圧低下が発生した場合でもその影響を受けることなく同フラグの値を保持することができるようになる。
また、請求項4に記載の発明によるように、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリに上記終了値を記憶させることにより、機関停止操作が行われて制御部への電力供給が絶たれても、その終了値を保持することができ、次回の機関始動操作時における上記初期値の設定を適切に行うことができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチュエータの制御装置において、前記可動機構は、前記内燃機関の機関バルブについてそのバルブ特性を可変とする可変動弁機構であることをその要旨とする。
前回の停止時処理で記憶された前回の終了値と前々回の停止時処理で記憶された前々回の終了値とが異なっているときに、誤った終了値(前々回の終了値)が可動部の初期値として設定されてしまうと、センサからの出力信号に基づいて算出される可動部の絶対位置と実際の絶対位置とがずれてしまう。この場合には、その後のアクチュエータの駆動制御を適切に行うことができなくなる。従って、同構成においては、機関バルブのバルブ特性を機関運転状態に応じた適切な特性に制御することが不可能になり、機関運転に悪影響を与えてしまう。この点、同構成によれば、誤った終了値(前々回の終了値)が上記初期値として設定されてしまうことを回避することができるため、機関運転に対する悪影響を回避することも可能になる。
以下、本発明にかかるアクチュエータの制御装置を具体化した一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1及び図2に示されるように、車両に搭載される内燃機関は4つの気筒を有しており、そのシリンダヘッド2には、それら気筒に対応した機関バルブである一対の吸気バルブ10及び排気バルブ15が往復動可能にそれぞれ設けられている。シリンダヘッド2には、それら吸気バルブ10と排気バルブ15とに対応して吸気弁駆動機構40と排気弁駆動機構45とがそれぞれ設けられている。
排気弁駆動機構45には、各排気バルブ15に対応してラッシュアジャスタ17が設けられるとともに、このラッシュアジャスタ17と排気バルブ15との間にはロッカアーム18が架設されている。ロッカアーム18は、その一端がラッシュアジャスタ17に支持されるとともに他端が排気バルブ15の基端部に当接されている。また、シリンダヘッド2に回転可能に支持された排気カムシャフト7には複数の排気用カム8が形成されており、それら排気用カム8の外周面はロッカアーム18に設けられたローラ18aに当接されている。排気バルブ15にはリテーナ15aが設けられるとともに、このリテーナ15aとシリンダヘッド2との間にはバルブスプリング16が設けられている。このバルブスプリング16の付勢力によって排気バルブ15は閉弁方向に付勢されている。そしてこれにより、ロッカアーム18のローラ18aは排気用カム8の外周面に押圧されている。機関運転時に排気用カム8が回転すると、ロッカアーム18はラッシュアジャスタ17により支持される部分を支点として揺動する。その結果、排気バルブ15はロッカアーム18によって開閉駆動されるようになる。
一方、吸気弁駆動機構40には、排気側と同様にバルブスプリング11、リテーナ10a、ロッカアーム12、ローラ12a及びラッシュアジャスタ13が設けられている。また、シリンダヘッド2に回転可能に支持された吸気カムシャフト5には複数の吸気用カム6が形成されている。
一方、吸気弁駆動機構40には、排気弁駆動機構45とは異なり、吸気用カム6とロッカアーム12との間に吸気バルブ10のバルブ特性、より詳細には最大リフト及び作用角を変更する可変動弁機構20が設けられている。ちなみに、吸気バルブ10の作用角とは、吸気バルブとの開弁期間に一致する値である。
この可変動弁機構20は入力部23と一対の出力部24とを有しており、これら入力部23及び出力部24はシリンダヘッド2に固定された支持パイプ22に揺動可能に支持されている。ロッカアーム12は、吸気バルブ10の基端部及びラッシュアジャスタ13によって出力部24側に付勢されており、そのローラ12aが出力部24の外周面に当接されている。また、入力部23とシリンダヘッド2との間には、スプリング14が設けられており、このスプリング14の付勢力によって入力部23に設けられたローラ23bが吸気用カム6に付勢されている。
機関運転時に吸気用カム6が回転すると、同吸気用カム6はローラ23bに摺接しつつ入力部23を押圧し、これにより出力部24が支持パイプ22の周方向に揺動するようになる。そして出力部24が揺動すると、ロッカアーム12はラッシュアジャスタ13により支持される部分を支点として揺動する。その結果、吸気バルブ10はロッカアーム12によって開閉駆動されるようになる。
次に、図3を参照して可変動弁機構20の構造について詳述する。
同図3に示されるように、入力部23は各出力部24の間に設けられており、これら入力部23と出力部24との内部には略円筒状の連通空間が形成されている。また、入力部23の内周面にはヘリカルスプライン23aが形成されるとともに、出力部24の内周面にはこの入力部23のヘリカルスプライン23aと逆向きに傾斜するヘリカルスプライン24aが形成されている。
入力部23と出力部24との内部に形成された空間には、略円筒状のスライダギア26が設けられている。このスライダギア26の外周面の中央部分には、入力部23のヘリカルスプライン23aに噛合するヘリカルスプライン26aが形成されるとともに、その外周面の両端部には出力部24のヘリカルスプライン24aに噛合するヘリカルスプライン26bが形成されている。
また、この略円筒状のスライダギア26の内壁には、その円周方向に沿って延びる溝29が形成されており、この溝29にはブッシュ28が嵌合されている。尚、このブッシュ28は、溝29の伸びる方向に沿って同溝29の内周面を摺動することができるであるが、スライダギア26の軸方向における変位は規制されている。
スライダギア26の内部に形成された貫通空間には、支持パイプ22が挿入されている。また、上記支持パイプ22には、その軸方向に沿って駆動可能なコントロールシャフト21が挿入されている。支持パイプ22の管壁にはその軸方向に延びる長孔22aが形成されている。また、スライダギア26とコントロールシャフト21との間には、長孔22aを通じてスライダギア26とコントロールシャフト21とを連結する係止ピン27が設けられている。この係止ピン27の一端がコントロールシャフト21に形成された凹部(図示略)に挿入されるとともに、他端がブッシュ28に形成された貫通孔28aに挿入されている。
こうした可変動弁機構20にあって、コントロールシャフト21がその軸方向に沿って変位すると、これに連動してスライダギア26が軸方向に変位する。スライダギア26の外周面に形成されたヘリカルスプライン26a、26bは、入力部23及び出力部24の内周面に形成されたヘリカルスプライン23a、24aとそれぞれ噛合っているため、スライダギア26がその軸方向に駆動すると、入力部23と出力部24とは逆の方向に回転する。その結果、入力部23と出力部24との相対位相差が変更され、吸気バルブ10の最大リフト量及び作用角が同期して変更される。
次に、この可変動弁機構20を通じて吸気バルブ10の最大リフト量を制御する制御システムについて、図4を併せ参照して説明する。ここで、図4は、この制御システムを示すブロック図である。
この図4に示すように、可変動弁機構20のコントロールシャフト21は、アクチュエータである電動モータ62によって駆動される。また、電動モータ62は、モータ用制御装置60によってその駆動が制御される。
モータ用制御装置60は、コントロールシャフト21の位置情報を検出する位置センサ63、電動モータ62の駆動を制御する制御部61等で構成されている。また、制御部61は、各種演算を行うCPU61a、電力供給されることによりデータを記憶・保持することが可能な揮発性メモリであるRAM61b、電気的に記憶データを書き換え可能であり、電力供給が絶たれてもそのデータを記憶・保持することが可能な不揮発性メモリであるEEPROM61c等を備えている。
同図4に示すように、コントロールシャフト21の基端部は、変換機構64を介して電動モータ62の出力軸に連結されている。この変換機構64は、電動モータ62の出力軸の回転運動をコントロールシャフト21の軸方向への直線運動に変換するためのものである。即ち、電動モータ62の出力軸を正・逆回転させると、その回転が変換機構64によってコントロールシャフト21の往復動に変換される。
電動モータ62には、上記位置センサ63が設けられている。この位置センサ63は、電動モータ62のロータと一体回転する多極マグネットの磁気変化を利用してそのロータの回転位相変化に応じた信号を出力する。ここで、上記コントロールシャフト21は、電動モータ62のロータの回転により往復動されるため、ロータの回転位相変化を示す位置センサ63の出力信号は、可変動弁機構20の可動部であるコントロールシャフト21の位置情報、ここでは移動量Pを示すものになる。また、コントロールシャフト21が移動することで吸気バルブ10のバルブ特性(本実施形態では最大リフト量及び作用角)は変更されるため、コントロールシャフト21の移動量、換言すれば位置センサ63の出力信号に基づき、吸気バルブ10のバルブ特性の変更量が検出される。
上記RAM61bには、コントロールシャフト21の上記移動量Pが記憶されており、同RAM61bに記憶された移動量Pは、位置センサ63の出力信号に基づいて更新される。そして、このように更新されるコントロールシャフト21の移動量Pと基準位置PRとに基づき、次式(1)によってコントロールシャフト21の絶対位置Sが算出される。

S=P+(−PR) …(1)

上記基準位置PRは、可変動弁機構20の可動部であるコントロールシャフト21を可動端まで移動させたときの上記移動量Pであり、その値は上記EEPROM61cに記憶される。そして、上記式(1)に基づいて絶対位置Sが算出されることにより、当該絶対位置Sには、可動端を基準にしたコントロールシャフト21の現在位置が示される。そして、この絶対位置Sに基づいて吸気バルブ10のバルブ特性が検出され、その検出されたバルブ特性が、機関運転状態に基づいて設定される目標バルブ特性となるように電動モータ62の駆動が制御される。
また、制御部61は、その入出力ポート(図示略)がバス型の通信ネットワーク(以下、CANと称す)80のバスに接続されている。
このCAN80には、内燃機関を統括制御する機関用制御装置100の入出力ポートが接続されている。機関用制御装置100には、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ70や、クランクシャフトの回転位相を検出するクランク角センサ71等、機関の運転状態を検出するセンサが接続されている。また、車両の運転者により切り換え操作され、現在の操作位置に対応した信号を出力するイグニッションスイッチ72(以下、IGスイッチ72という)も接続されている。
機関用制御装置100は、これら運転状態に基づいて上記目標バルブ特性を設定するとともに、その目標バルブ特性に対応する電動モータ62の制御目標値を設定し、CAN80を通じてその制御目標値を上記モータ用制御装置60に送信する。モータ用制御装置60の制御部61は、その制御目標値を受信し、その制御目標値に基づいて電動モータ62の駆動をフィードバック制御する。
また、機関用制御装置100は、CAN80を通じてIGスイッチ72の操作状態を上記モータ用制御装置60に送信する。そして、IGスイッチ72が「オフ」から「オン」に操作される、すなわち機関始動操作が行われると、機関用制御装置100及びモータ用制御装置60に対する給電が開始される。一方、IGスイッチ72が「オン」から「オフ」に操作される、即ち機関停止操作が行われると、後述する停止時処理が行われた後にモータ用制御装置60及び機関用制御装置100に対する給電は停止される。
ところで、内燃機関を停止させるためにIGスイッチ72がオフ操作されると、制御部61への電力供給が絶たれることにより上記移動量PはRAM61bから消失しまう。こうした移動量Pの消失に対応するために、制御部61は、IGスイッチ72のオフ操作による機関停止操作が行われて電動モータ62の駆動が停止されたときの絶対位置Sを終了値EとしてEEPROM61cに記憶しておく。そして、その後、IGスイッチ72のオン操作による機関始動操作が行われて制御部61への給電が開始されたときには、電動モータ62の駆動開始前におけるコントロールシャフト21の絶対位置Sの初期値として、先に記憶した終了値Eを設定する。こうした処理を行うことにより、電動モータ62の駆動開始時において速やかにコントロールシャフト21の絶対位置Sが把握される。なお、EEPROM61cに終了値Eを記憶させることにより、機関停止操作が行われて制御部61への電力供給が絶たれても、その終了値Eを保持することができ、これにより次回の機関始動操作時における上記初期値の設定を適切に行うことができる。
他方、電動モータ62の駆動が開始された後のコントロールシャフト21の絶対位置Sは、上記タイミングで記憶された終了値Eとは異なっている。そのため、電動モータ62の駆動が開始された後に制御部61に対する一時的な電圧低下が発生し、その電圧低下が復帰して給電が開始されたときに上述したような初期値設定が行われてしまうと、コントロールシャフト21の実際の絶対位置が上記終了値Eとは異なっているにもかかわらず、その終了値Eが絶対位置Sの初期値として誤設定されてしまう。この場合には、絶対位置Sの初期値がコントロールシャフト21の実際の位置からずれてしまうため、その後の電動モータ62の駆動制御を適切に行うことができなくなる。従って、吸気バルブ10のバルブ特性を機関運転状態に応じた適切な特性に制御することが不可能になり、機関運転に悪影響を与えてしまう。
そこで、本実施形態では、モータ用制御装置60によって、以下のような始動時処理及び停止時処理が実行される。
図5に、機関始動時に実行される始動時処理についてその処理手順を示す。また、図6に、機関停止時に実行される停止時処理についてその処理手順を示す。そして、図7に、始動時処理及び停止時処理にて設定される各種フラグの状態を示したタイミングチャートを示す。なお、上記始動時処理及び停止時処理は所定期間毎に繰り返し実行される。
図5に示す始動時処理が開始されると、まず、IGスイッチ72が「OFF」から「ON」になったか否か、すなわち機関始動操作が行われたか否かが判定される(S100)。そして、IGスイッチ72が「OFF」から「ON」になっていない場合には(S100:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、IGスイッチ72が「OFF」から「ON」になった場合には(S100:YES、図7の時刻t1)、読み込み不可フラグFgが「OFF」にされているか否かが判定される(S110)。本実施形態では、制御部61への給電開始時において、この読み込み不可フラグFgが「OFF」にされている場合には、EEPROM61cに記憶された上記終了値EをRAM61bに読み込む処理が実行される。一方、制御部61への給電開始時において、読み込み不可フラグFgが「ON」にされている場合には、同終了値EをRAM61bに読み込む処理についてその実行が禁止される。
そして、読み込み不可フラグFgが「ON」にされている場合には(S110:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、読み込み不可フラグFgが「OFF」にされている場合には(S110:YES)、EEPROM61cに記憶された上記終了値EをRAM61bに読み込む処理が実行される(S120、図7の時刻t2)。
そして、終了値Eの読み込みが完了したか否かが判定され(S130)、読み込みが完了していない場合には(S130:NO)、その読み込みが完了するまで、このステップS130の判定処理が繰り返し行われる。
一方、終了値Eの読み込みが完了すると(S130:YES、図7の時刻t3)、内燃機関のクランクシャフトを回転させるスタータモータの駆動が開始されることにより機関始動が開始され(S140)、これにより機関回転速度NEは増大していく。なお、スタータモータの駆動は、内燃機関の完爆(スタータモータの駆動力がなくても自立運転が可能な状態)が検出された時点で終了される。
次に、機関回転速度NEが閾値Aを超えたか否かが判定される(S150)。この閾値Aには、内燃機関の運転状態が停止状態から稼働状態に移行したことを判定可能な値(例えば100〜400rpm/min程度など)が設定されている。
そして、機関回転速度NEが閾値Aに満たない場合には(S150:NO)、機関回転速度NEが閾値Aを超えるまで、このステップS150の判定処理が繰り返し行われる。
一方、機関回転速度NEが閾値Aを超えた場合には(S150:YES、図7の時刻t5)、読み込み不可フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが開始される(S160、図7の時刻t4)。ここで、制御部61に対する電圧低下が発生した場合でも読み込み不可フラグFgの値を保持しておくために、この読み込み不可フラグFgの値は、上記EEPROM61cに書き込まれる。
次に、この読み込み不可フラグFgの書き換え中にIGスイッチ72が「ON」から「OFF」にされたか否か、すなわち機関停止操作が行われたか否かが判定される(S170)。そして、IGスイッチ72が「ON」から「OFF」にされていない場合には(S180NO)、読み込み不可フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了したか否かが判定される(S180)。
そして、読み込み不可フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了していない場合には(S180:NO)、その書き換えが終了するまで、そのステップS180の判定処理が繰り返し行われる。
一方、読み込み不可フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了すると(S180:YES、図7の時刻t5)、電動モータ62への通電を許可する通電許可フラグFdが「OFF」から「ON」に変更される(S190、図7の時刻t6)。このように通電許可フラグFdが「ON」にされることにより、電動モータ62への通電が許可されて同電動モータ62の駆動制御が、換言すれば可変動弁機構20の駆動制御が開始される。そして本処理は一旦終了される。
他方、先のステップS170において、読み込み不可フラグFgの書き換え中にIGスイッチ72が「ON」から「OFF」にされた、すなわち機関停止操作が行われたと判定された場合には(S170:YES)、次に、読み込み不可フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了したか否かが判定される(S200)。
そして、読み込み不可フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了していない場合には(S200:NO)、その書き換えが終了するまで、そのステップS200の判定処理が繰り返し行われる。
一方、読み込み不可フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了すると(S200:YES)、上記機関停止操作に基づいて後述する停止時処理が実行され(S210)、本処理は一旦終了される。
次に、上記停止時処理について説明する。本処理が開始されると、まず、機関停止が完了したか否かが判定される(S300)。
ここで、運転者によりIGスイッチ72がオフ操作される、すなわち運転者によって機関停止操作がなされることにより、直ちに燃料噴射や燃料点火を停止して機関運転を停止させると、機関停止直前のバルブ特性のまま可変動弁機構20は停止される。このように機関停止要求がなされることで直ちに機関が停止されたときのバルブ特性は、機関停止直前のバルブ特性、すなわち機関運転中に設定された特性になっており、必ずしも機関始動に適した特性になっているとは限らない。そのため、場合によっては、次回の機関始動時における始動性等が低下してしまうおそれがある。
そこで、上記機関用制御装置100は、IGスイッチ72がオフ操作されてから実際に機関停止が実行されるまでの時間を遅延させる遅延制御を行う。そして、モータ用制御装置60は、その遅延制御の実行中に可変動弁機構20を駆動して吸気バルブのバルブ特性(最大リフト量及び作用角)を予め設定された機関始動時用の特性に変更する。そして、このバルブ特性の変更が完了した後に、機関用制御装置100は、燃料噴射や燃料点火を停止して実際に内燃機関を停止させる。従って、ステップS300での判定処理では、IGスイッチ72が「ON」から「OFF」に操作されることにより開始された上記遅延制御が終了しており、機関回転速度NEが「0」になっている場合に肯定判定される。
そして、ステップS300の処理にて、機関停止が完了していない旨判定される場合には(S300:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、ステップS300の処理にて、機関停止が完了している旨判定される場合には(S300:YES、図7の時刻t8)、電動モータ62の駆動を停止するべく、換言すれば可変動弁機構20の駆動を停止するべく、上記通電許可フラグFdが「ON」から「OFF」に変更される(S310、図7の時刻t8)。このように通電許可フラグFdが「OFF」にされている状態では、電動モータ62への通電が禁止され、もって可変動弁機構20の駆動は停止される。
このように可変動弁機構20の駆動が停止され、そのコントロールシャフト21の位置が変化しなくなると、EEPROM61cに対して上記終了値Eの書き込みが開始される(S320、図7の時刻t8)。
そして、終了値Eの書き込みが完了したか否かが判定され(S330)、書き込みが完了していない場合には(S330:NO)、その書き込みが完了するまで、このステップS330の判定処理が繰り返し行われる。
一方、終了値Eの書き込みが完了すると(S330:YES、図7の時刻t9)、上記読み込み不可フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが開始される(S340、図7の時刻t9)。
次に、この読み込み不可フラグFgの書き換え中にIGスイッチ72が「OFF」から「ON」にされたか否か、すなわち機関始動操作が行われたか否かが判定される(S350)。そして、IGスイッチ72が「OFF」から「ON」にされていない場合には(S350NO)、読み込み不可フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了したか否かが判定される(S360)。
そして、読み込み不可フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了していない場合には(S360:NO)、その書き換えが終了するまで、そのステップS360の判定処理が繰り返し行われる。
一方、読み込み不可フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了すると(S360:YES、図7の時刻t10)、同読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられたことを条件に、制御部61への給電を停止させる給電停止要求信号が機関用制御装置100に送信されて(S370)、本処理は一旦終了される。機関用制御装置100は、その給電停止要求信号を受信すると、モータ用制御装置60への給電を停止し(図7の時刻t11)、その後、機関用制御装置100自身への給電も停止される(図7の時刻t12)。
他方、先のステップS350において、読み込み不可フラグFgの書き換え中にIGスイッチ72が「OFF」から「ON」にされた、すなわち機関始動操作が行われたと判定された場合には(S350:YES)、次に、読み込み不可フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了したか否かが判定される(S380)。
そして、読み込み不可フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了していない場合には(S380:NO)、その書き換えが終了するまで、そのステップS380の判定処理が繰り返し行われる。
一方、読み込み不可フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了すると(S380:YES)、上記機関始動操作に基づく上記始動時処理が実行され(S390)、本処理は一旦終了される。
次に、上記始動時処理及び停止時処理の作用効果を説明する。
まず、機関停止操作が行われると上記停止時処理が実行されることにより、電動モータ62の駆動が停止されたときのコントロールシャフト21の絶対位置Sが終了値Eとして記憶される。また、電動モータ62の駆動が停止された後に読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられ、同フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられたことを条件に制御部61への給電が停止される。
また、機関始動操作が行われると上記始動時処理が実行されることにより、読み込み不可フラグFgが「OFF」に設定されていることを条件に、電動モータ62の駆動が開始されるときのコントロールシャフト21の絶対位置Sの初期値として上記終了値Eが設定される。また、電動モータ62の駆動が開始される前に読み込み不可フラグFgが「OFF」から「ON」に書き換えられる。
こうした始動時処理及び停止時処理が実行されることにより、少なくとも電動モータ62の駆動中においては(図7の時刻t6〜時刻t8)、読み込み不可フラグFgが「ON」に設定される。また、機関停止操作によって制御部61への給電が停止されてから(図7の時刻t11以降)、次回、機関始動操作が行われて制御部61への給電が開始されるまでの間は、少なくとも読み込み不可フラグFgは「OFF」に設定される。そのため、読み込み不可フラグFgが「ON」に設定されているときには、コントロールシャフト21の実際の絶対位置Sと上記終了値Eとが異なっており、「OFF」に設定されているときには、コントロールシャフト21の実際の絶対位置Sと上記終了値Eとが一致している。従って、コントロールシャフト21の実際の絶対位置Sと終了値Eとが一致しているか否かを、その読み込み不可フラグFgの値に基づいて判断することができる。
そして、機関始動操作が行われて制御部61に給電が開始されたときには、読み込み不可フラグFgが「OFF」に設定されていることを条件に、コントロールシャフト21の絶対位置Sの初期値として上記終了値Eが設定される(図7の時刻t2)。これにより、機関始動操作に伴う制御部61への給電開始時には、コントロールシャフト21の実際の絶対位置Sと一致する上記終了値Eが絶対位置Sの初期値として正しく設定される。
一方、電動モータ62の駆動が開始された後に制御部61に対する一時的な電圧低下が発生し、その電圧低下が復帰して給電が開始されたときには(図7の時刻ta)、読み込み不可フラグFgが「ON」に設定されている。そのため、上述したような初期値設定、すなわちコントロールシャフト21の絶対位置Sの初期値として上記終了値Eを設定する処理が行われない。従って、上述したような不都合、すなわちコントロールシャフト21の実際の絶対位置が上記終了値Eとは異なっているにもかかわらず、その終了値Eが絶対位置の初期値として誤設定されてしまうといった不都合の発生が防止される。
ここで、上記態様にて読み込み不可フラグFgの設定を行う場合には、次のような不都合の発生が懸念される。
すなわち、機関停止操作が行われて読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられている最中に機関始動操作が行われて上記始動時処理が実行されてしまうと、読み込み不可フラグFgが「OFF」に変更される前に当該始動時処理が実行されることにより、上述したような初期値設定が行われない。この場合には、前回の停止時処理で記憶された終了値(以下、前回終了値Epという)ではなく、それよりも前に実行された停止時処理で記憶された終了値(以下、前々回終了値Eppという)が初期値として設定されることになる。この場合にあって、前回終了値Epと前々回終了値Eppとが異なっているときには、今回の機関始動操作によって電動モータ62の駆動が開始されるときのコントロールシャフト21の実際の絶対位置Sと前々回終了値Eppとは異なっていることになるが、そうした誤った終了値(前々回終了値Epp)が初期値として設定されてしまう。
そこで、本実施形態では、機関停止操作が行われて、読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられている最中に、機関始動操作が行われたと判定された場合には(図6のステップS350における肯定判定)、その書き換えが完了したあとで(図6のステップS380における肯定判定)、始動時処理が実行される(S390)。
従って、ステップS390での始動時処理の実行にあっては、読み込み不可フラグFgが「OFF」に設定されており、上記初期値設定が行われる。そのため、電動モータ62の駆動が開始されるときのコントロールシャフト21の絶対位置Sの初期値として、前回終了値Ep、すなわち、前回、機関停止操作が行われて電動モータ62の駆動が停止されたときのコントロールシャフト21の絶対位置Sが設定される。これにより、誤った終了値(前々回終了値Epp)が初期値として設定されてしまうことを回避することができ、機関停止操作に伴う読み込み不可フラグFgの書き換え中に機関始動操作が行われた場合の始動時処理を適切に行うことができる。
また、機関始動操作が行われて読み込み不可フラグFgが「OFF」から「ON」に書き換えられている最中に機関停止操作が行われて上記停止時処理が実行されてしまうと、読み込み不可フラグFgが「ON」に変更される前に当該停止時処理が実行されることにより、読み込み不可フラグFgを「ON」から「OFF」に書き換える処理ができなくなる。そのため、読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられたことを条件に制御部61への給電を停止するといった処理を実行することができなくなる。
そこで、本実施形態では、機関始動操作が行われて、読み込み不可フラグFgが「OFF」から「ON」に書き換えられている最中に、機関停止操作が行われたと判定された場合には(図5のステップS170における肯定判定)、その書き換えが完了したあとで(図5のステップS200における肯定判定)、停止時処理が実行される(S210)。
従って、ステップS210での停止時処理の実行にあっては、読み込み不可フラグFgが「ON」に設定されており、当該停止時処理の実行を通じて読み込み不可フラグFgを「ON」から「OFF」に書き換える処理が可能となる。従って、読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられたことを条件に制御部61への給電を停止するといった処理を実行することができ、機関始動操作に伴う読み込み不可フラグFgの書き換え中に機関停止操作が行われた場合の停止時処理を適切に行うことができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
(1)機関停止操作が行われたときには、電動モータ62の駆動が停止されたときのコントロールシャフト21の絶対位置Sを終了値Eとして記憶するとともに、電動モータ62の駆動が停止された後に読み込み不可フラグFgを「ON」(一方の値)から「OFF」(他方の値)に書き換える停止時処理を実行するようにしている。また、機関始動操作が行われたときには、読み込み不可フラグFgの「OFF」設定を条件に電動モータ62の駆動が開始されるときの上記絶対位置Sの初期値として上記終了値Eを設定するとともに、電動モータ62の駆動が開始される前に読み込み不可フラグFgを「OFF」から「ON」に書き換える始動時処理を実行するようにしている。そして、機関停止操作に伴う読み込み不可フラグFgの「OFF」への書き換え中に機関始動操作が行われたときには、「OFF」への書き換えが完了したあとに始動時処理を行うようにしている。
そのため、前回の停止時処理で記憶された前回終了値Epと前々回の停止時処理で記憶された前々回終了値Eppとが異なっているときに、誤った終了値(前々回終了値Epp)が上記初期値として設定されてしまうことを回避することができるようになる。従って、機関停止操作に伴う読み込み不可フラグFgの書き換え中に機関始動操作が行われた場合の始動時処理を適切に行うことができるようになる。
(2)上記停止時処理として、さらに、読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられたことを条件に制御部61への給電を停止させるようにしている。そして、機関始動操作に伴う読み込み不可フラグFgの「ON」への書き換え中に機関停止操作が行われたときには、「ON」への書き換えが完了したあとに停止時処理を行うようにしている。
従って、読み込み不可フラグFgが「ON」に変更された後で上記停止時処理が実行されるようになり、当該停止時処理の実行時にあっては、読み込み不可フラグFgを「ON」から「OFF」に書き換えることが可能になる。そのため、読み込み不可フラグFgが「ON」から「OFF」に書き換えられたことを条件に制御部61への給電を停止するといった処理を実行することができるようになり、機関始動操作に伴う読み込み不可フラグFgの書き換え中に機関停止操作が行われた場合の停止時処理を適切に行うことができるようになる。
(3)記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM61cに読み込み不可フラグFgの値を記憶させるようにしている。そのため、制御部61に対する電圧低下が発生した場合でも、その影響を受けることなく同フラグの値を「ON」に保持することができる。従って、電動モータ62の駆動が開始された後に制御部61に対する一時的な電圧低下が発生し、その電圧低下が復帰して給電が開始されたときに、コントロールシャフト21の絶対位置Sの初期値として上記終了値Eが誤って設定されてしまうことを適切に防止することができる。
(4)記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM61cに上記終了値Eを記憶させるようにしている。そのため、機関停止操作が行われて制御部61への電力供給が絶たれても、その終了値EをEEPROM61c内に保持することができ、次回の機関始動操作時における絶対位置Sの初期値設定を適切に行うことができるようになる。
(5)前回の停止時処理で記憶された前回終了値Epと前々回の停止時処理で記憶された前々回終了値Eppとが異なっているときに、誤った終了値(前々回終了値Epp)が上記初期値として設定されてしまうと、位置センサ63からの出力信号に基づいて算出されるコントロールシャフト21の絶対位置Sと実際の絶対位置とがずれてしまう。この場合には、その後の電動モータ62の駆動制御を適切に行うことができなくなる。従って、吸気バルブ10のバルブ特性を機関運転状態に応じた適切な特性に制御することが不可能になり、機関運転に悪影響を与えてしまう。この点、本実施形態では、誤った終了値(前々回終了値Epp)が上記初期値として設定されてしまうことを回避することができるため、機関運転に対する悪影響を回避することも可能になる。
なお、上実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・読み込み不可フラグFgを「OFF」から「ON」に変更するタイミングとして、機関始動操作に伴う制御部61への電力供給開始時や、電動モータ62の駆動開始直前などのタイミングを採用するようにしてもよい。
・読み込み不可フラグFgの値や終了値Eの値を不揮発性メモリであるEEPROM61cに記憶するようにした。この他、制御部61の電力供給系に対し、独立した電力供給系から電力が供給される揮発性メモリ(RAM)に読み込み不可フラグFgの値や終了値Eの値を記憶させるようにしてもよい。
・上記位置センサ63は、磁気変化を利用して電動モータ62のロータの回転位相変化を検出する磁気センサであったが、この他のセンサ(例えば光学式のセンサ等)を用いるようにしてもよい。
・電動モータ62のロータの回転位相変化に基づいてコントロールシャフト21の移動量Pを検出するようにしたが、コントロールシャフト21の移動量Pを直接検出するようにしてもよい。
・可変動弁機構20の可動部であるコントロールシャフト21の位置情報を記憶するようにしたが、同可変動弁機構20にあってバルブ特性の変更に関与する他の可動部の位置情報、例えばスライダギア26の位置情報や、入力部23と出力部24との相対位相差を示す位置情報などを記憶するようにしてよい。
・上記可変動弁機構20は、電動モータ62で駆動される機構であったが、この他のアクチュエータで可変動弁機構20が駆動される場合であっても、本発明は同様に適用することができる。
・上記実施形態では、可変動弁機構20にて吸気バルブ10のバルブ特性を変更するようにしたが、排気バルブ15のバルブ特性を変更する場合、あるいは吸気バルブ10及び排気バルブ15のバルブ特性を変更する場合にも同様に適用することができる。
・上記実施形態で説明した可変動弁機構20に限らず、他の構成で吸気バルブ10や排気バルブ15といった機関バルブのバルブ特性(例えば、開時期、閉時期、開弁期間、あるいは最大リフト量等)を可変とする可変動弁機構であっても、本発明は同様に適用することができる。
・上記実施形態では、アクチュエータである電動モータ62で駆動される可変動弁機構20の可動部についてその位置情報を揮発性メモリであるRAM61bに記憶するようにしたアクチュエータの制御装置に、本発明を適用した場合について説明したが、本発明の適用対象となるアクチュエータの制御装置はそうしたものに限られるものではない。要は、内燃機関に設けられた可動機構の可動部を駆動するアクチュエータの制御装置であって、その可動機構の可動部の位置情報を検出するセンサと、その位置情報を記憶する揮発性メモリとを有し、その記憶された位置情報に基づいて可動部の絶対位置を算出してアクチュエータの駆動を制御する装置であれば、本発明は同様に適用することができる。
・上記実施形態では、機関停止に際して上記遅延制御を行うようにしたが、そうした遅延制御が行われない内燃機関にも、本発明にかかる制御装置は同様に適用することができる。
本発明にかかる制御装置を具体化した一実施形態にあって、これが適用される内燃機関の吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構の構成を説明する縦断面図。 同実施形態における吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構の配置構造を示す平面図。 同実施形態における可変動弁機構の破断斜視図。 同実施形態において、吸気バルブの最大リフト量を制御する制御システムを示すブロック図。 同実施形態における始動時処理の手順を示すフローチャート。 同実施形態における停止時処理の手順を示すフローチャート。 始動時処理及び停止時処理の実行を通じて設定される各種フラグの状態を示したタイミングチャート。
符号の説明
2…シリンダヘッド、5…吸気カムシャフト、6…吸気用カム、7…排気カムシャフト、8…排気用カム、10…吸気バルブ、10a…リテーナ、11…バルブスプリング、12…ロッカアーム、12a…ローラ、13…ラッシュアジャスタ、15…排気バルブ、15a…リテーナ、16…バルブスプリング、17…ラッシュアジャスタ、18…ロッカアーム、18a…ローラ、20…可変動弁機構、21…コントロールシャフト、22…支持パイプ、22a…長孔、23…入力部、23a…ヘリカルスプライン、23b…ローラ、24…出力部、24a…ヘリカルスプライン、26…スライダギア、26a…ヘリカルスプライン、26b…ヘリカルスプライン、27…係止ピン、28…ブッシュ、28a…貫通孔、29…溝、40…吸気弁駆動機構、45…排気弁駆動機構、60…モータ用制御装置、61…制御部、61a…CPU、61b…RAM、61c…EEPROM、62…電動モータ、63…位置センサ、64…変換機構、70…アクセルセンサ、71…クランク角センサ、72…イグニッションスイッチ(IGスイッチ)、80…通信ネットワーク(CAN)、100…機関用制御装置。

Claims (5)

  1. 内燃機関に設けられた可動機構の可動部を駆動するアクチュエータと、前記可動部の位置情報を検出するセンサと、前記位置情報を記憶する揮発性メモリを有し、前記揮発性メモリに記憶された前記位置情報に基づいて前記可動部の絶対位置を算出して前記アクチュエータの駆動を制御する制御部とを備えるアクチュエータの制御装置において、
    機関停止操作が行われたときには、前記アクチュエータの駆動が停止されたときの前記絶対位置を終了値として記憶するとともに、前記アクチュエータの駆動が停止された後に前記終了値の読み込みが不可であることを示す第1の値と前記終了値の読み込みが可能であることを示す第2の値との間で書き換え可能なフラグ前記第1の値から前記第2の値に書き換える停止時処理を実行し、
    機関始動操作が行われたときには、前記フラグが前記第2の値に設定されていることを条件に前記アクチュエータの駆動が開始されるときの前記絶対位置の初期値として前記終了値を設定するとともに、前記アクチュエータの駆動が開始される前に前記フラグを前記第2の値から前記第1の値に書き換える始動時処理を実行し、
    機関停止操作に伴う前記フラグの前記第2の値への書き換え中に機関始動操作が行われたときには、同第2の値への書き換えが完了したあとに前記始動時処理を行う
    ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
  2. 内燃機関に設けられた可動機構の可動部を駆動するアクチュエータと、前記可動部の位置情報を検出するセンサと、前記位置情報を記憶する揮発性メモリを有し、前記揮発性メモリに記憶された前記位置情報に基づいて前記可動部の絶対位置を算出して前記アクチュエータの駆動を制御する制御部とを備えるアクチュエータの制御装置において、
    機関停止操作が行われたときには、前記アクチュエータの駆動が停止されたときの前記絶対位置を終了値として記憶するとともに、前記アクチュエータの駆動が停止された後に前記終了値の読み込みが不可であることを示す第1の値と前記終了値の読み込みが可能であることを示す第2の値との間で書き換え可能なフラグ前記第1の値から前記第2の値に書き換え、前記フラグが前記第1の値から前記第2の値に書き換えられたことを条件に前記制御部への給電を停止する停止時処理を実行し、
    機関始動操作が行われたときには、前記フラグが前記第2の値に設定されていることを条件に前記アクチュエータの駆動が開始されるときの前記絶対位置の初期値として前記終了値を設定するとともに、前記アクチュエータの駆動が開始される前に前記フラグを前記第2の値から前記第1の値に書き換える始動時処理を実行し、
    機関始動操作に伴う前記フラグの前記第1の値への書き換え中に機関停止操作が行われたときには、同第1の値への書き換えが完了したあとに前記停止時処理を行う
    ことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
  3. 前記フラグの値は、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリに記憶される
    請求項1または2に記載のアクチュエータの制御装置。
  4. 前記終了値は、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリに記憶される
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクチュエータの制御装置。
  5. 前記可動機構は、前記内燃機関の機関バルブについてそのバルブ特性を可変とする可変動弁機構である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチュエータの制御装置。
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