JP4816163B2 - 可変動弁機構の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、内燃機関に設けられる機構であって、機関バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構についてその駆動を制御する制御装置に関する。
内燃機関に設けられる機構であって、吸気バルブや排気バルブといった機関バルブのバルブ特性を機関運転状態に応じて変更する可変動弁機構が知られている(例えば特許文献1等)。
こうした可変動弁機構の駆動を制御する制御装置は、予め学習された絶対位置からの可変動弁機構の変位量を揮発性メモリに記憶するとともに、当該可変動弁機構の作動量に応じてその記憶された変位量を更新するようにしている。そして、上記絶対位置及び更新された変位量に基づいて可変動弁機構の動作位置を検出するようにしている。
なお、可変動弁機構の上記作動量については、例えば特許文献2に記載されるセンサ、すなわち検出対象の位置が一定量変化するごとにパルス信号を出力するセンサ(エンコーダ等)を可変動弁機構に設け、そのセンサから出力されるパルス信号を計数したりすることにより検出可能である。
特開2001−263015号公報 特開2004−76265号公報
ところで、上記態様にて可変動弁機構の動作位置を検出する場合にあって、バッテリ負荷の増大等に起因して上記揮発性メモリへの供給電圧が低下すると、同揮発性メモリに記憶された上記変位量が消失されてしまうことがある。このように変位量が消失されてしまうと、上記態様にて検出される可変動弁機構の動作位置と実際の動作位置とにずれが生じる。このように誤った動作位置が検出されている状態で可変動弁機構が駆動されると、場合によっては、可変動弁機構の可動端を規定するストッパ等の規制部材に当該可変動弁機構の可動部が激突し、同可変動弁機構が破損する等といった不具合が生じてしまう。従って、可変動弁機構の動作位置検出に際して、当該可変動弁機構の変位量を揮発性メモリに記憶させる場合には、同揮発性メモリから変位量が消失しているか否かを適切に検出する必要がある。
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、揮発性メモリに記憶される可変動弁機構の変位量が消失したか否かを適切に判定することのできる可変動弁機構の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、機関バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構の駆動を制御する制御装置であって、予め学習された絶対位置からの前記可変動弁機構の変位量を揮発性メモリに記憶するとともに、同揮発性メモリに記憶された前記変位量を前記可変動弁機構の作動量に応じて更新し、その更新された変位量及び前記絶対位置に基づいて前記可変動弁機構の動作位置を検出する検出手段を備える可変動弁機構の制御装置において、機関始動が開始された後に前記揮発性メモリに対する電源供給が安定したと判定されることにより一方の値に設定され、機関停止に伴って前記可変動弁機構の駆動が停止されることにより他方の値に設定されるフラグを記憶データの書き換え可能な不揮発性メモリに書き込む書き込み手段と、前記フラグが前記一方の値に設定された後に前記可変駆動機構の駆動を許可する許可手段と、前記揮発性メモリへの電源供給時において前記フラグが前記一方の値に設定されているときには、前記揮発性メモリから前記変位量が消失されていると判定する判定手段とを備えることをその要旨とする。
同構成において、上記書き込み手段にて不揮発性メモリに書き込まれる上記フラグは、機関始動が開始された後に揮発性メモリに対する電源供給が安定したと判定されることによって上記他方の値から一方の値に変更される。従って、機関始動に伴って揮発性メモリに電源が供給された直後では、その値が他方の値になっている。一方、同フラグが上記一方の値に変更された後、再度、揮発性メモリに電源供給が開始されるような状況、すなわち揮発性メモリに対する電源の瞬断等といった電圧低下が発生したときには、同フラグの値は、すでに上記一方の値に設定されている。従って、揮発性メモリへの電源供給時において上記フラグが上記他方の値になっている場合には、機関始動に伴う正常な電源供給であると判断することができ、上記一方の値となっている場合には、電圧低下発生後の電圧復帰による電源供給であると判断することができる。また、上記可変駆動機構の駆動は、同フラグが一方の値に設定された後に許可されるため、揮発性メモリへの電源供給時において上記フラグが上記一方の値となっている場合には、その電源供給時よりも前の時点で可変動弁機構の駆動がすでに行われていたと推定することができる。従って、揮発性メモリへの電源供給時において上記フラグが上記一方の値となっている場合には、可変動弁機構の作動量に応じて更新された変位量が揮発性メモリから消失されていると判断することができる。そこで、同構成では、揮発性メモリへの電源供給時において上記フラグが上記一方の値に設定されている場合には、揮発性メモリに対する電圧低下が発生しており、同揮発性メモリから上記変位量が消失されていると判定するようにしている。従って、揮発性メモリに記憶される可変動弁機構の変位量が消失したか否かを適切に判定することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可変動弁機構の制御装置において、前記書き込み手段は、前記可変動弁機構が設けられた内燃機関の発電機を駆動するクランクシャフトの回転速度に基づいて前記揮発性メモリに対する電源供給が安定したか否かを判定することをその要旨とする。
クランクシャフトの回転速度が増大すると、そのクランクシャフトで駆動される発電機(いわゆるオルタネータ)の発電量は増大するため、揮発性メモリに対して、内燃機関に搭載されたバッテリのみならず、発電機からも十分な電力を安定して供給することが可能になる。そこで、同構成によるように、上記書き込み手段は、クランクシャフトの回転速度に基づいて揮発性メモリに対する電源供給が安定したか否かを判定する、といった構成を採用することにより、そうした判定を適切に行うことができるようになる。なお、同構成においては、揮発性メモリに対する電源供給が安定する程度に発電機の発電量が増大するクランクシャフトの回転速度を閾値として設定し、実際のクランクシャフトの回転速度がその閾値を超えた場合に、揮発性メモリに対する電源供給が安定したと判定するようにするとよい。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の可変動弁機構の制御装置において、前記書き込み手段は、前記可変動弁機構が設けられた内燃機関のクランクシャフトで駆動される発電機の発電量に基づいて前記揮発性メモリに対する電源供給が安定したか否かを判定することをその要旨とする。
上述したように、クランクシャフトで駆動される発電機の発電量が増大すれば、揮発性メモリに対して、内燃機関に搭載されたバッテリのみならず、発電機からも十分な電力を安定して供給することが可能になる。そこで、同構成によるように、上記書き込み手段は、発電機の発電量に基づいて揮発性メモリに対する電源供給が安定したか否かを判定する、といった構成を採用しても、そうした判定を適切に行うことができるようになる。なお、同構成においては、揮発性メモリに対する電源供給を安定させることができる程度の発電機の発電量を閾値として設定し、実際の発電量がその閾値を超えた場合に、揮発性メモリに対する電源供給が安定したと判定するようにするとよい。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可変動弁機構の制御装置において、前記可変動弁機構は、その可動端が規制部材で規定される機構であって、前記判定手段により前記変位量が消失されていると判定されたときには、前記可変動弁機構の駆動を禁止することをその要旨とする。
上記揮発性メモリに記憶された変位量が消失されてしまうと、上記検出手段にて検出される可変動弁機構の動作位置と実際の動作位置とがずれてしまう。このように誤った動作位置が検出されている状態で可変動弁機構が駆動されると、上述したように、可変動弁機構の可動端を規定するストッパ等の規制部材に当該可変動弁機構の可動部が激突し、同可変動弁機構が破損する等といった不具合が生じてしまうおそれがある。この点、同構成によれば、揮発性メモリから上記変位量が消失されていると判定されたときに可変動弁機構の駆動は禁止される。そのため、誤った動作位置に基づいて可変動弁機構が駆動制御されるといったことがなくなり、これにより揮発性メモリに記憶された可変動弁機構の変位量が消失した場合に生じやすい、同可変動弁機構の破損を抑制することができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の可変動弁機構の制御装置において、前記変位量が消失されたときにその消失された変位量を復元する復元手段を備え、同復元手段によって同変位量が復元されたときには、前記可変動弁機構の駆動禁止を解除することをその要旨とする。
同構成によれば、上記変位量が消失された場合、復元手段によってその消失された変位量が復元されることにより、上記検出手段にて検出される可変動弁機構の動作位置と実際の動作位置とのずれが解消される。そして、そのずれが解消されたことをもって正しい動作位置に基づく可変動弁機構の駆動制御が再開される。従って、変位量の消失により禁止された可変動弁機構の駆動を適切に再開することができるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の可変動弁機構の制御装置において、前記検出手段にて検出された前記動作位置を機関制御用の制御装置に送信するとともに、前記復元手段は、前記変位量が消失されたときに、消失直前に前記機関制御用の制御装置に送信された動作位置を同機関制御用の制御装置から受信して、その受信した動作位置と前記絶対位置との差を算出し、その算出された差を消失された変位量として復元することをその要旨とする。
上記変位量が消失されたときに可変動弁機構の駆動が禁止されると、変位量消失後の可変動弁機構の動作位置は、その消失直前の動作位置に維持される。そのため、可変動弁機構の駆動が禁止されたときの動作位置は上記絶対位置と消失直前の変位量とに基づいて検出される動作位置と一致する。また、消失直前に機関制御用の制御装置に送信された動作位置の情報には、消失直前の変位量が含まれている。そこで、同構成によるように、消失直前に機関制御用の制御装置に送信された動作位置を同機関制御用の制御装置から受信し、その受信した動作位置と上記絶対位置との差を算出するようにすれば、消失直前の変位量を求めることができる。そして、そのように算出される差を消失された変位量として復元する同構成によれば、変位量が消失された場合に、可変動弁機構の正しい動作位置を再び把握することができるようになる。
なお、機関停止後にあっては可変動弁機構の駆動が停止されるため、その動作位置は変化することがない。従って、請求項7に記載の発明によるように、機関停止後に可変動弁機構の駆動が停止されたときの当該可変動弁機構の動作位置を、上記絶対位置として学習することにより、その学習された絶対位置と上記変位量に基づき、機関運転開始後の可変動弁機構の動作位置、すなわち機関運転中の可変動弁機構の動作位置を適切に検出することができるようになる。
また、可変動弁機構の上記作動量については、請求項8に記載の発明によるように、当該可変動弁機構を駆動するアクチュエータの駆動量に基づいて検出することが可能である。
請求項9に記載の発明は、請求項4〜8のいずれか一項に記載の可変動弁機構の制御装置において、前記可変動弁機構によって変更されるバルブ特性は、吸気バルブの開弁期間及び最大リフト量の少なくとも一方であり、前記可変動弁機構の動作位置に基づいて吸入空気量を推定し、その推定された吸入空気量に基づいて空燃比制御を実行する機関制御用の制御装置に対し、前記検出手段にて検出された前記動作位置を送信することをその要旨としている。
内燃機関の各種制御を実行する機関制御用の制御装置は、排気性状を良好なものとするために、燃焼室に導入される吸入空気量や排気中の酸素濃度等に基づいて燃料噴射量を設定する空燃比制御を実行している。ここで、エアフロメータ等のセンサにて吸入空気量を検出する場合には、そのセンサの設置位置から燃焼室までにある程度の距離があるため、センサで検出された吸入空気量の変化と燃焼室に導入される吸入空気量の変化との間にはある程度の応答遅れが生じてしまう。他方、同構成によるように、吸気バルブの開弁期間や最大リフト量といったバルブ特性を可変動弁機構によって変更する場合には、その変更される開弁期間や最大リフト量に応じて燃焼室に導入される吸入空気量は速やかに変化する。そのため、可変動弁機構の動作位置に基づいて吸入空気量を推定する、換言すればバルブ特性の現状値に基づいて吸入空気量を推定するようにすれば、上記センサによる吸入空気量の検出と比較して、燃焼室に導入される吸入空気量の変化をより速やかに把握することができるようになり、もって上記空燃比制御をより適切に行うことも可能となる。
そこで、同構成では、上記検出手段にて検出された可変動弁機構の動作位置を機関制御用の制御装置に送信するようにしており、同機関制御用の制御装置は、受信した動作位置に基づいて吸入空気量を推定し、その推定された吸入空気量に基づいて空燃比制御を実行する。
ここで、上述したように、上記変位量が消失されてしまうと可変動弁機構の動作位置が誤検出されてしまうため、この場合には、機関制御用の制御装置に誤った動作位置が送信されてしまい、その結果、推定される吸入空気量と実際の吸入空気量との間にはずれが生じてしまう。さらに動作位置が誤検出されている状態で可変動弁機構の駆動が継続して行われると、そうしたずれが増大し、実際の空燃比が排気性状を良好なものとする空燃比から大きくずれてしまうおそれがある。この点、請求項4に記載の構成によれば、可変動弁機構の動作位置が誤検出されるおそれのある状況では同可変動弁機構の駆動が禁止され、その動作位置は、駆動禁止直前の位置に維持される。従って、同動作位置に基づいて推定される吸入空気量と実際の吸入空気量との間に生じるずれの増大を抑制することができるようになり、もって上述したような空燃比のずれの増大についても抑制することができるようになる。また、請求項5または6に記載の構成を備えることにより、可変動弁機構の駆動再開後において正確な動作位置を検出することができるようになり、そうした駆動再開後における吸入空気量を正確に推定することができるようになる。そのため、駆動再開後における空燃比のずれを抑制することができるようになる。
請求項10に記載の発明は、請求項4〜8のいずれか一項に記載の可変動弁機構の制御装置において、前記可変動弁機構によって変更されるバルブ特性は、吸気バルブの開弁期間及び最大リフト量の少なくとも一方であり、前記可変動弁機構の動作位置は、機関運転状態に基づいて設定される目標動作位置となるように制御されることをその要旨とする。
上述したように、吸気バルブの開弁期間や最大リフト量といったバルブ特性を可変動弁機構にて変更することにより、燃焼室に導入される吸入空気の量を変化させることができる。従って、可変動弁機構の動作位置を機関運転状態に基づいて設定される目標動作位置に制御することにより、機関運転状態に応じた吸入空気量を確保することができる。
ここで、上記変位量の消失により可変動弁機構の動作位置が誤って検出されている状態では、その動作位置制御が適切に行えなくなる。そのため、機関運転状態に応じた適切な吸入空気量に対して、実際の吸入空気量は過度に多くなったり、少なくなったりするおそれがある。このように実際の吸入空気量が過度に多くなる場合には、実圧縮比の増大等によるノッキングの発生や空燃比のリーン化等による失火の発生が懸念される。また、実際の吸入空気量が過度に少なくなる場合には、空燃比のリッチ化等による失火の発生も懸念される。この点、請求項4に記載の構成を備える同構成によれば、可変動弁機構の動作位置が誤検出されるおそれのある状況では同可変動弁機構の駆動が禁止される。従って、誤った動作位置が検出されている場合に生じやすい、吸入空気量の過度な増大や減少が抑えられ、もって上記ノッキングや失火の発生についても抑制することができる。また、請求項5または6に記載の構成を備えることにより、可変動弁機構の駆動再開後において正確な動作位置を検出することができるようになり、そうした駆動再開後における動作位置制御を適切に行うことができるようになる。従って、駆動再開後においてもノッキングや失火の発生を抑制することができるようになる。
以下、この発明に係る可変動弁機構の制御装置を具体化した一実施形態について、図1〜図13を参照して説明する。
図1に、この実施形態における可変動弁機構の制御装置が適用されるエンジン10の概略構成を示す。
エンジン10は、そのシリンダブロック11に4つのシリンダ11a(図1にはその1つのみを図示)が形成された直列4気筒エンジンである。シリンダブロック11の上部には、シリンダヘッド12が組み付けられている。また、各シリンダ11aには、その内面を上下動するピストン13が設けられている。それらピストン13はコネクティングロッド29を介して、クランクシャフト25に連結されている。なお、機関始動時にあっては、同クランクシャフト25がスタータモータ80によって回転されることにより、機関始動が開始される。また、同クランクシャフト25には、発電機であるオルタネータ81がベルト等を介して駆動連結されている。
シリンダ11aの内部には、そのシリンダ11aの壁面、ピストン13の上面、及びシリンダヘッド12の下面により区画された燃焼室14が形成されている。また、シリンダブロック11には、シリンダ11aを囲むようにして冷却水が循環するウォータジャケット11bが形成されている。
シリンダヘッド12には、各燃焼室14に対応して点火プラグ23が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室14と連通する吸気ポート15及び排気ポート16が各燃焼室14にそれぞれ形成されている。それら各吸気ポート15には図示しない吸気通路が、各排気ポート16には図示しない排気通路がそれぞれ接続されており、吸気ポート15及び吸気通路により吸気系が、排気ポート16及び排気通路により排気系が構成されている。
更に、吸気ポート15及び排気ポート16にあって、燃焼室14に連通する各開口端には、吸気バルブ17及び排気バルブ18がそれぞれ設けられており、吸気ポート15は吸気バルブ17により、また排気ポート16は排気バルブ18により開閉される。
排気バルブ18のステムエンドは、ロッカアーム20に対して下方から当接している。シリンダヘッド12には排気カムシャフト22が回転自在に支持されており、同排気カムシャフト22に形成された排気カム22aは、上記ロッカアーム20に対して上方から当接している。
一方、吸気バルブ17のステムエンドは、ロッカアーム19に対して下方から当接している。シリンダヘッド12には吸気カムシャフト21が回転自在に支持されており、同吸気カムシャフトに形成された吸気カム21aは、吸気バルブ17のバルブ特性を変更する可変動弁機構としての最大リフト量変更機構100に当接している。さらに、この最大リフト量変更機構100は、上記ロッカアーム19に対して上方から当接している。なお、同最大リフト量変更機構100の構造については後述する。
上記吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22は、クランクシャフト25に駆動連結されている。これにより、吸気バルブ17及び排気バルブ18は、吸気カム21a及び排気カム22aによる作用を受けて、クランクシャフト25の回転に同期して開閉される。
上記各気筒の吸気ポート15には、当該吸気ポート15内に燃料を噴射するインジェクタ24がそれぞれ設けられている。これらインジェクタ24には、燃料タンクから燃料ポンプによって所定圧力の燃料が供給される。そして、燃焼室14に吸入される空気に対してインジェクタ24から燃料が噴射供給され、その空気と燃料の混合気が吸気バルブ17の開弁によって燃焼室14に導入される。そして、燃焼室14に導入された混合気が点火プラグ23によって点火されることにより、その混合気が燃焼してピストン13が押し下げられ、クランクシャフト25が回転する。燃焼後の既燃ガス、すなわち排気は、排気バルブ18が開弁することにより排気通路に排出される。そして、その排気通路に設けられた触媒コンバータで浄化された後、排気通路外部へ排出される。なお、その触媒コンバータは、混合気の空燃比が、排気性状を良好なものとする空燃比(例えば理論空燃比等)に制御されている場合に、排気を適切に浄化することができる。
次に、上記最大リフト量変更機構100の構造について、図2及び図3を併せ参照して説明する。
図2は、最大リフト量変更機構100の斜視断面図を示している。この図2に示されるように、最大リフト量変更機構100は、支持パイプ120、コントロールシャフト130、入力アーム140、第1出力アーム150、第2出力アーム160、及びスライダ170により構成されている。
支持パイプ120の内部には、当該支持パイプ120の軸方向に延びる棒状のコントロールシャフト130が往復動可能に緩挿されている。また、支持パイプ120の外周面には、円筒状のスライダ170が緩挿されている。このスライダ170は、コントロールシャフト130の軸方向の変位と連動して支持パイプ120の外周面上を移動することができるように、適宜の係合部材にてコントロールシャフト130に連結されている。
上記各アーム140、150、160は、第1出力アーム150及び第2出力アーム160が入力アーム140を挟むようにしてスライダ170に外嵌されている。
入力アーム140には、コントロールシャフト130の径方向に延びる一対のアーム141a、141bが形成されており、これらアーム141a、141bの間には、ピン147によって回転可能に支持されて吸気カム21aのカム面に当接するローラ142が設けられている。
第1及び第2出力アーム150、160には、コントロールシャフト130の径方向に延びるノーズ151、161がそれぞれ形成されている。これらノーズ151、161は各吸気バルブ17に対応するロッカアーム19に当接されており、ノーズ151、161の作用によってロッカアーム19が押し下げられることにより、吸気バルブ17は開弁される。
スライダ170の外周面にあって軸方向中央部には、第1ヘリカルスプライン171が形成されている。この第1ヘリカルスプライン171の歯すじは、右回りの螺旋状に形成されている。また、スライダ170の外周面にあって軸方向両端部には、第2ヘリカルスプライン172a及び第3ヘリカルスプライン172bがそれぞれ形成されている。これら第2ヘリカルスプライン172a及び第3ヘリカルスプライン172bの歯すじは、いずれも左回りの螺旋状に形成されている。そして、スライダ170に形成された第1ヘリカルスプライン171は、入力アーム140の内周面に形成されたヘリカルスプライン143に噛み合わされる。また、第2ヘリカルスプライン172aは、第1出力アーム150の内周面に形成されたヘリカルスプライン152に噛み合わされ、第3ヘリカルスプライン172bは、第2出力アーム160の内周面に形成されたヘリカルスプライン162に噛み合わされる。
図3に、エンジン10をシリンダヘッド12の上方側から見たときの最大リフト量変更機構100の取付態様を示す。
シリンダヘッド12の下方には、点線にて示すように、4つのシリンダ11aと、各シリンダ11aに対してそれぞれ2つずつの吸気バルブ17と排気バルブ18とが設けられている。
吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22は、シリンダヘッド12に設けられた複数の軸受部12aによって回転可能に支持されている。そして、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22の一端は、シリンダヘッド12の外部へ突出しており、その突出部にはタイミングプーリ26、27がそれぞれ装着されている。吸気カムシャフト21の一端に装着されたタイミングプーリ26及び排気カムシャフト22の一端に装着されたタイミングプーリ27は、タイミングベルト28を介してクランクシャフト25に連結されている。これにより、エンジン10の運転時に、クランクシャフト25の回転がタイミングベルト28を介して吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22に伝達される。この吸気カムシャフト21の回転により、吸気カム21aの作用を受けて最大リフト量変更機構100の入力アーム140が揺動するとともに、出力アーム150、160が揺動して吸気バルブ17が開弁される。
最大リフト量変更機構100の第1出力アーム150、入力アーム140及び第2出力アーム160は、一対の軸受部12aの間に狭持されている。また、支持パイプ120は各軸受部12aを貫通した状態で、当該軸受部12aに固定されている。
コントロールシャフト130の一端は支持パイプ120から露出しており、この露出したコントロールシャフト130の外周面には、その径方向に突出した凸部130aが設けられている。
また、シリンダヘッド12には、最大リフト量及び開弁期間の増大方向(矢印F方向)にコントロールシャフト130が移動したときに前記凸部130aが当接するストッパ12sと、最大リフト量及び開弁期間の減少方向(矢印R方向)にコントロールシャフト130が移動したときに前記凸部130aが当接するストッパ12tとが設けられている。これら各ストッパ12s、12tによってコントロールシャフト130の可動端が規定されることにより、最大リフト量変更機構100の可動端も規定される。
支持パイプ120から露出したコントロールシャフト130の末端には、同コントロールシャフト130を軸方向に移動させるための駆動部60が接続されている。
この駆動部60は、駆動源として機能するモータ60aと、そのモータ60aの回転運動を直線運動に変換する変換機構60bとを備えて構成されており、その変換された直線運動がコントロールシャフト130に伝達される。また、駆動部60には、モータ60aが所定角度回転する毎にパルス信号を出力する回転角センサ37が設けられており、この回転角センサ37から出力されるパルス信号をカウントした値及び予め学習された基準絶対位置Pstに基づき、コントロールシャフト130の位置、換言すれば最大リフト量変更機構100の動作位置Pが検出される。
このように構成される最大リフト量変更機構100では、コントロールシャフト130を軸方向に変位させて入力アーム140と各出力アーム150、160との相対位相を変更することにより吸気バルブ17の最大リフト量及び開弁期間が変更される。
より詳細には、モータ60aを駆動してコントロールシャフト130をその軸方向に移動させると、これに連動してスライダ170も軸方向に移動する。そして、スライダ170が軸方向に移動すると、同スライダ170に設けられた第1ヘリカルスプライン171、第2ヘリカルスプライン172a、及び第3ヘリカルスプライン172bの歯すじの向きに応じて入力アーム140と第1出力アーム150との相対位相、並びに入力アーム140と第2出力アーム160との相対位相が変更される。そして、このように入力アーム140と各出力アーム150、160との相対位相が変更されることにより、ノーズ151やノーズ161のロッカアーム19に対する作用量が変化し、吸気バルブ17の最大リフト量及び開弁期間が変更される。
例えば、図2に示す矢印Fの方向にコントロールシャフト130を変位させた場合、スライダ170の移動に伴って第1出力アーム150のノーズ151、及び第2出力アーム160のノーズ161は、入力アーム140に対して相対的に矢印Lの方向に変位する。また、入力アーム140は、各ノーズ151、152に対して相対的に矢印Sの方向に変位する。その結果、入力アーム140と第1出力アーム150との相対位相、並びに入力アーム140と第2出力アーム160との相対位相はともに大きくなり、ノーズ151やノーズ161のロッカアーム19に対する作用量が増大することにより、吸気バルブ17の最大リフト量及び開弁期間は大きくなる。そして、これら最大リフト量及び開弁期間が大きくなるほど、燃焼室14に導入される吸入空気量は増大する。
一方、矢印Rの方向にコントロールシャフト130を変位させると、スライダ170の移動に伴って第1出力アーム150のノーズ151、及び第2出力アーム160のノーズ161は、入力アーム140に対して相対的に矢印Sの方向に変位する。また、入力アーム140は、各ノーズ151、152に対して相対的に矢印Lの方向に変位する。その結果、入力アーム140と第1出力アーム150との相対位相、並びに入力アーム140と第2出力アーム160との相対位相はともに小さくなり、ノーズ151やノーズ161のロッカアーム19に対する作用量が減少することにより、吸気バルブ17の最大リフト量及び開弁期間は小さくなる。そして、これら最大リフト量及び開弁期間が小さくなるほど、燃焼室14に導入される吸入空気量は減少する。
このように、最大リフト量変更機構100の駆動制御を通じて吸気バルブ17のバルブ特性である最大リフト量及び開弁期間が変更されることにより、燃焼室14に導入される吸入空気量は調量される。
先の図1に示すように、上記エンジン10には、機関運転状態を検出する各種センサやスイッチが設けられている。例えば、水温センサ31は、ウォータジャケット11b内を循環する冷却水の温度を検出する。クランクシャフト25の近傍に設けられたクランク角センサ32は、クランクシャフト25の所定回転角毎にパルス信号を出力し、この信号に基づいてエンジン10の回転速度(機関回転速度NE)が算出される。アクセルペダルに設けられたアクセルセンサ33は、アクセルペダルの操作量(アクセル操作量ACCP)を検出する。排気通路内に設けられた空燃比センサ34は、排気中の酸素濃度に応じた信号を出力する。車速センサ35は、エンジン10が搭載された車両の車速を検出する。電圧センサ36は、エンジン10の各装置に供給されるバッテリ電圧を検出する。そして、イグニッションスイッチ65(以下、IGスイッチ65という)は、車両の運転者による機関始動要求を検出する。
エンジン10の各種機関制御を実行する機関制御用の制御装置(以下、ECUとする)30は、上記水温センサ31、クランク角センサ32、アクセルセンサ33、空燃比センサ34、車速センサ35、電圧センサ36、及びIGスイッチ65等による各種検出信号を取り込み、機関制御にかかる各種演算処理を実行する。そして、その演算処理の結果に応じた駆動信号を点火プラグ23やインジェクタ24等に出力して機関制御を実施する。例えば、排気性状を良好なものとするべく、燃焼室14に導入される吸入空気量や排気中の酸素濃度等に基づいて噴射燃料量を設定し、その設定された燃料噴射量を噴射できるようにインジェクタ24を駆動するといった空燃比制御を実行する。
ここで、吸気通路にエアフロメータ等のセンサを設け、このセンサにて吸入空気量を検出する場合には、同センサの設置位置から燃焼室までにある程度の距離があるため、センサで検出された吸入空気量の変化と燃焼室に導入される吸入空気量の変化との間にはある程度の応答遅れが生じてしまう。他方、本実施形態では、上述したように最大リフト量変更機構100で吸気バルブ17の最大リフト量及び開弁期間といったバルブ特性を変更するようにしており、そのバルブ特性の変更に応じて燃焼室14に導入される吸入空気量は速やかに変化する。従って、バルブ特性の現状値に基づいて吸入空気量を推定するようにすれば、上記センサによる吸入空気量の検出と比較して、燃焼室14に導入される吸入空気量の変化をより速やかに把握することができる。ここで、そうしたバルブ特性の現状値は、最大リフト量変更機構100の動作位置Pに応じて変化するため、その動作位置Pに基づいて吸入空気量を推定することも可能である。そこで、ECU30は、最大リフト量変更機構100の動作位置Pに基づいて吸入空気量を推定し、その推定された吸入空気量等に基づいて上記空燃比制御を実行する。このように、推定された吸入空気量等に基づいて空燃比制御が実行されることにより、燃焼室14に導入される吸入空気量の変化に即して燃料噴射量が設定されるようになる。従って、吸入空気量の変化過程であっても排気性状は良好な状態に維持されて、同空燃比制御は適切に実施される。
また、ECU30は、アクセル操作量ACCPや機関回転速度NE等に基づいて要求吸入空気量を算出し、その要求吸入空気量に対応した目標バルブ特性を設定する。そして、最大リフト量変更機構100の動作位置Pがその目標バルブ特性に対応した位置となるように同最大リフト量変更機構100の目標動作位置を算出する。
最大リフト量変更機構100の動作位置Pを上記目標動作位置に変更するべく、駆動部60のモータ60aは駆動制御される。このモータ60aの駆動制御、換言すれば最大リフト量変更機構100の駆動制御は、制御装置(以下、IDMとする)40によって行われる。
図4に、IDM40の電気的構成を示す。この図4に示すように、IDM40は、中央演算処理装置(以下、CPUとする)41、読み出し専用メモリ(以下、ROMとする)42、ランダムアクセスメモリ(以下、RAMとする)43、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM44を備えている。また、モータ60aに電力を供給する外部出力回路45、上記回転角センサ37のパルス信号が入力される外部入力回路46等も備えている。
CPU41は、最大リフト量変更機構100の駆動にかかる各種演算処理を実行する。ROM42には、各種制御プログラム等が予め記憶されている。RAM43は、記憶データの保持にバッテリバックアップを必要とする揮発性メモリであって、CPU41の演算結果等が一時的に記憶される。EEPROM44は、電気的に記憶データを書き換えることが可能であり、その記憶データの保持にバッテリバックアップを必要としないメモリである。そして、CPU41、ROM42、RAM43、EEPROM44、外部出力回路45、及び外部入力回路46等は内部バス47によって相互に接続されている。
そして、IDM40と上記ECU30とは、バス50によって相互に通信可能に接続されており、ECU30で算出された目標動作位置がIDM40に送信される。
IDM40は、最大リフト量変更機構100の動作位置Pを算出し、その算出された動作位置PとECU30から送信された目標動作位置との偏差に基づいてモータ60aを駆動制御する。
図5に、IDM40によって実行される動作位置Pの算出処理についてその処理手順を示す。なお、この動作位置算出処理は、所定の実行周期α毎に繰り返し実行される。また、本処理は、前記検出手段を構成する。
本処理が開始されると、まず、最大リフト量変更機構100の作動量Cが読み込まれる(S100)。この作動量Cは、前回の本処理実行周期から今回の本処理実行周期までの間における最大リフト量変更機構100の動作位置変化量であり、モータ60aの駆動量を検出する、すなわち同モータ60aの回転角を検出する上記回転角センサ37から出力されるパルス信号のカウント値が同作動量Cとして利用される。
次に、変位量Dが更新される(S110)。この変位量Dは、上記基準絶対位置Pstから最大リフト量変更機構100の動作位置がどれだけ変化しているかを示す値であり、ステップS110では、前回の実行周期で更新された変位量Dn−1に上記作動量Cを加算することにより、今回の実行周期における変位量Dが算出される。そして、この更新された変位量Dは、上記RAM43に書き込まれる。なお、上記基準絶対位置Pstは、エンジン10の運転停止に伴って最大リフト量変更機構100の駆動が停止された時点での当該最大リフト量変更機構100の動作位置Pであり、そうした最大リフト量変更機構100の駆動が停止された時点での動作位置Pが基準絶対位置Pstとして上記EEPROM44に書き込まれる。
次に、基準絶対位置Pst及び更新された変位量Dに基づいて、より詳細には更新された変位量Dを基準絶対位置Pstに加算することにより、現在の動作位置Pが算出される(S120)。
そして、今回の実行周期における動作位置Pが算出されると、その値はECU30に送信されて(S130)、本処理は一旦終了される。
このようにIDM40は、基準絶対位置Pstからの最大リフト量変更機構100の変位量DをRAM43に記憶するとともに、当該最大リフト量変更機構100の作動量Cに応じてその記憶された変位量Dを更新する。
また、エンジン10の運転停止後にあっては、最大リフト量変更機構100の駆動が停止されるため、その動作位置Pは変化することがない。そこで、IDM40は、エンジン停止後にあって最大リフト量変更機構100の駆動が停止されたときの動作位置Pを基準絶対位置Pstとして学習する。そして、その学習された基準絶対位置Pstと、作動量Cに基づいて更新された変位量Dとに基づいて最大リフト量変更機構100の動作位置Pを算出することにより、機関運転開始後の最大リフト量変更機構100の動作位置P、すなわち機関運転中の最大リフト量変更機構100の動作位置Pを検出する。
また、IDM40は、上記動作位置算出処理を実行するたびに、最新の動作位置PをECU30に送信する。そして、ECU30は、受信した最新の動作位置Pに基づいて燃焼室14に導入される最新の吸入空気量を推定し、上記空燃比制御を行う。
ところで、上記態様にて最大リフト量変更機構100の動作位置Pを検出する場合にあって、バッテリ負荷の増大や電源の瞬断等に起因してIDM40への供給電圧が低下すると、RAM43への供給電圧も低下し、このRAM43に記憶された変位量Dが消失されてしまうことがある。このように変位量Dが消失されると、最大リフト量変更機構100の作動量Cに応じて更新されてきた変位量Dが初期値(例えば「0」等)になってしまうため、上記動作位置算出処理にて算出される最大リフト量変更機構100の動作位置Pが実際の動作位置からずれてしまい、誤った動作位置Pが算出されてしまう。このように誤った動作位置Pが算出されている状態で同機構100が駆動されると、場合によっては、同最大リフト量変更機構100の可動端を規定するストッパ12s、12tに、当該最大リフト量変更機構100の可動部であるコントロールシャフト130の凸部130aが激突し、最大リフト量変更機構100は破損してしまうおそれがある。
また、RAM43に記憶された変位量Dが消失されることにより、最大リフト量変更機構100の動作位置Pが誤検出されると、その動作位置Pに基づいて推定される吸入空気量と実際の吸入空気量との間には、ずれが生じる。このように動作位置Pが誤検出されている状態で最大リフト量変更機構100の駆動が継続して行われると、そうしたずれが増大し、上記空燃比制御で設定される燃料噴射量は、実際の吸入空気量に対応した燃料噴射量から大きくずれて、実際の空燃比は、排気性状を良好なものとする空燃比から大きくずれてしまうおそれがある。
また、最大リフト量変更機構100の動作位置は、アクセル操作量ACCPや機関回転速度NE等といった機関運転状態に基づいて算出された要求吸入空気量が得られるように制御されるのであるが、上記変位量Dの消失により最大リフト量変更機構100の動作位置Pが誤って検出されている状態では、その動作位置制御が適切に行えなくなる。そのため、機関運転状態に応じた適切な量の要求吸入空気量に対して、実際の吸入空気量は過度に多くなったり、少なくなったりするおそれがある。このように実際の吸入空気量が過度に多くなる場合には、実圧縮比の増大等によるノッキングの発生や空燃比のリーン化等による失火の発生が懸念される。また、実際の吸入空気量が過度に少なくなる場合には、空燃比のリッチ化等による失火の発生も懸念される。
そこで、本実施形態では、RAM43に記憶される変位量Dが消失されたか否かを適切に判定するとともに、同変位量Dが消失された場合に生じやすい、上述したような最大リフト量変更機構100の破損、空燃比のずれ、及びノッキングや失火の発生を、以下のような各種処理を行うことによって抑制している。
まず、本実施形態では、機関始動時や機関停止時において各種のフラグを設定するようにしている。以下、図6〜図8を併せ参照して、それら各種フラグの設定態様について説明する。
図6に、機関始動時に実行される始動時フラグ設定処理についてその処理手順を示す。また、図7に、機関停止時に実行される停止時フラグ設定処理についてその処理手順を示す。そして、図8に、各種フラグの状態を示したタイミングチャートを示す。なお、上記始動時フラグ設定処理及び停止時フラグ設定処理は、IDM40によって所定期間毎に繰り返し実行される。また、それら始動時フラグ設定処理及び停止時フラグ設定処理は、前記書き込み手段を構成する。
図6に示す始動時フラグ設定処理が開始されると、まず、IGスイッチ65が「OFF」から「ON」になったか否か、すなわち機関始動要求があるか否かが判定される(S200)。このIGスイッチ65の状態を示す信号は、上記バス50を介してECU30から読み込まれる。そして、IGスイッチ65が「OFF」から「ON」になっていない場合には(S200:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、IGスイッチ65が「OFF」から「ON」になった場合には(S200:YES、図8の時刻t1)、機関始動を開始するべく、スタータモータ80の駆動が開始され、これにより機関回転速度NEは増大していく。
次に、機関回転速度NEが閾値Aを超えたか否かが判定される(S210)。この閾値Aには、RAM43に対する電源供給が安定する程度にオルタネータ81の発電量が増大する機関回転速度が予め設定されている。また、機関回転速度NEは、上記バス50を介してECU30から読み込まれる。そして、機関回転速度NEが閾値Aに満たない場合には(S210:NO)、同機関回転速度NEが閾値Aを超えるまで、このステップS210の判定処理が繰り返し行われる。
一方、機関回転速度NEが閾値Aを超えた場合には(S210:YES、図8の時刻t2)、RAM43に対して、エンジン10に搭載されたバッテリのみならず、オルタネータ81からも十分な電力が安定して供給されていると判断される。そして、モータ60aに対する通電開始の準備を要求するフラグであって、RAM43に記憶された通電開始準備要求フラグFaが「OFF」から「ON」に変更される(S220、図8の時刻t3)。
このように通電開始準備要求フラグFaが「ON」にされると、モータ制御中フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが開始される(S230、図8の時刻t4)。ここで、電圧低下が発生した場合でもモータ制御中フラグFgの値を保持しておくために、このモータ制御中フラグFgの値は、上記EEPROM44に書き込まれる。このEEPROM44に記憶されたデータの書き換え時間は、RAM43に記憶されたデータの書き換え時間よりも長いため、モータ制御中フラグFgの書き換えが開始されると、その書き換えが終了したか否かを判定するための処理として、ステップS240の処理が行われる。
そして、モータ制御中フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了していない場合には(S240:NO)、その書き換えが終了するまで、そのステップS240の判定処理が繰り返し行われる。
一方、モータ制御中フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き換えが終了すると(S240:YES、図8の時刻t5)、モータ60aの駆動準備が完了したことを示すフラグであって、RAM43に記憶された始動準備完了フラグFcが「OFF」から「ON」に変更される(S250、図8の時刻t6)。そして、この始動準備完了フラグFcが「ON」にされることにより、上記通電開始準備要求フラグFaは「ON」から「OFF」に変更されるとともに(S260、図8の時刻t7)、モータ60aへの通電を許可するフラグであって、RAM43に記憶された通電許可フラグFdが「OFF」から「ON」に変更される(S270、図8の時刻t8)。このように通電許可フラグFdが「ON」にされている場合には、モータ60aへの通電が許可され、もって最大リフト量変更機構100の駆動も許可される。そして本処理は一旦終了される。なお、通電許可フラグFdを「ON」に変更するための上記一連の処理は、前記許可手段を構成する。
他方、図7に示す停止時フラグ設定処理が開始されると、まず、機関停止が完了したか否かが判定される(S300)。
ここで、運転者によりIGスイッチ65がオフ状態にされる、即ち運転者によって機関停止要求がなされることにより、直ちに燃料噴射や燃料点火を停止して機関運転を停止させると、最大リフト量変更機構100(モータ60a)の動力源である電力の発電も停止されるため、機関停止直前のバルブ特性のまま最大リフト量変更機構100は停止される。このように機関停止要求がなされることで直ちに機関停止がなされた後のバルブ特性は、機関停止直前のバルブ特性、すなわち機関運転中に設定された特性になっており、必ずしも機関始動に適した特性になっているとは限らない。そのため、場合によっては、次回の機関始動時における始動性等が低下してしまうおそれがある。
そこで、上記ECU30は、機関停止要求がなされてから実際に機関停止が実行されるまでの時間を遅延させる遅延制御を行う。そして、この遅延制御の開始後にあってオルタネータ81による発電がなされているうちに最大リフト量変更機構100を駆動して、バルブ特性(最大リフト量及び開弁期間)を予め設定された機関始動時用の特性に変更し、そのバルブ特性の変更が完了した後に最大リフト量変更機構100(モータ60a)の駆動を停止するようにしている。従って、ステップS300での判定処理では、IGスイッチ65が「OFF」状態であって、上記遅延制御が終了し、機関回転速度NEが「0」になっている場合に肯定判定される。
そして、ステップS300の処理にて、機関停止が完了していない旨判定される場合には(S300:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、ステップS300の処理にて、機関停止が完了している旨判定される場合には(S300:YES、図8の時刻t9)、モータ60aの駆動を禁止するべく、換言すれば最大リフト量変更機構100の駆動を禁止するべく、上記通電許可フラグFdが「ON」から「OFF」に変更される(S310、図8の時刻t10)。このように通電許可フラグFdが「OFF」にされている場合には、モータ60aへの通電が禁止され、もって最大リフト量変更機構100の駆動も禁止される。
このように最大リフト量変更機構100の駆動が禁止され、その動作位置が変化しなくなると、RAM43に記憶された終了値書き込み指示フラグFbが「OFF」から「ON」に変更される(S320、図8の時刻t11)。そして、この終了値書き込み指示フラグFbが「ON」にされることにより、最大リフト量変更機構100の終了位置、すなわち上記基準絶対位置PstがEEPROM44に書き込まれる。
次に、上記ステップS250で「OFF」から「ON」に変更された始動準備完了フラグFcが、「ON」から「OFF」に変更されるとともに(S330、図8の時刻t12)、上記モータ制御中フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが開始される(S340、図8の時刻t13)。ここで、上述したように、モータ制御中フラグFgはEEPROM44に書き込まれるのであるが、同EEPROM44に書き込まれたデータを書き換える際には、上記RAM43に記憶されたデータを書き換える場合と比較して、より長い時間がかかる。従って、ステップS340においてモータ制御中フラグFgの書き換えが開始されると、その書き換えが終了したか否かを判定するための処理として、ステップS350の処理が行われる。
そして、モータ制御中フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了していない場合には(S350:NO)、その書き換えが終了するまで、そのステップS350の判定処理が繰り返し行われる。
一方、モータ制御中フラグFgについて「ON」から「OFF」への書き換えが終了すると(S350:YES、図8の時刻t14)、上記ステップS320において「OFF」から「ON」に変更された終了値書き込み指示フラグFbが「ON」から「OFF」に変更される(S360、図8の時刻t15)。そして本処理は一旦終了される。
IDM40は、RAM43への供給電圧の低下によって変位量Dが消失されていることを、換言すれば動作位置Pが誤検出される状態になっていることを、上記態様にて設定されるモータ制御中フラグFg等を利用して判定する。その判定原理を図9に示す。なお、この図9に示す時刻t1、時刻t5、及び時刻t8は、それぞれ図8に示した時刻t1、時刻t5、及び時刻t8に対応している。
上述したように、上記モータ制御中フラグFgは、機関始動が開始され(図8の時刻t1)、その後、RAM43に対する電源供給が安定したと判定された後(図8の時刻t2以降)において「OFF」から「ON」への書き換えが開始される(図8の時刻t4)。また、機関停止に伴って最大リフト量変更機構100の駆動が停止された後(図8の時刻t10以降)において「ON」から「OFF」への書き換えが開始される(図8の時刻t13)。
従って、機関始動に合わせてRAM43に電源が供給され始めた直後では(図9の時刻t1直後)、その値が「OFF」の値になっている。一方、モータ制御中フラグFgが「ON」に変更された(図9の時刻t5)後、再度、RAM43に電源供給が開始されるような状況、すなわちRAM43に対する電源の瞬断等といった電圧低下が発生し、その後電圧復帰したとき(図9の時刻tx)には、モータ制御中フラグFgの値は、すでに「ON」に設定されている。従って、RAM43への電源供給開始時において、モータ制御中フラグFgが「OFF」になっている場合には、機関始動に伴う正常な電源供給であると判断することができる。一方、RAM43への電源供給開始時において、モータ制御中フラグFgが「ON」になっている場合には、電圧低下発生後の電圧復帰による電源供給であると判断することができる。
また、最大リフト量変更機構100の駆動は、モータ制御中フラグFgが「ON」に設定された後に、通電許可フラグFdが「ON」に設定される(図9の時刻t8)ことで許可される。そのため、RAM43への電源供給時においてモータ制御中フラグFgが「ON」になっている場合には(図9の時刻tx)、その電源供給時よりも前の時点で最大リフト量変更機構100の駆動がすでに行われていたと推定することができる。従って、RAM43への電源供給時においてモータ制御中フラグFgが「ON」に設定されている場合には、最大リフト量変更機構100の作動量Cに応じて更新されていた変位量Dが、電圧低下によってRAM43から消失されていると判断することができる。
こうした判定原理に基づき、IDM40は、図10に示す変位量消失判定処理を所定期間毎に繰り返し実行する。なお、本処理は、前記判定手段を構成する。
本処理が開始されるとまず、RAM43への電源供給開始時か否かが判定される(S400)。ここでは、IDM40に電源供給が開始されて当該IDM40での各種演算処理が開始されるとともに、RAM43に供給される電圧がその最低動作電圧を超えた場合に肯定判定される。そして、RAM43への電源供給開始時ではない場合には(S400:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、RAM43への電源供給開始時である場合には(S400:YES)、上記モータ制御中フラグFgが「ON」に設定されているか否かが判定され(S410)、同モータ制御中フラグFgが「OFF」に設定されている場合には(S410:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、モータ制御中フラグFgが「ON」に設定されている場合には(S410:YES)、RAM43への電源供給開始時にあって、モータ制御中フラグFgが既に「ON」に設定されているため、変位量Dが消失されていると判定され(S420)、RAM43に記憶される変位量消失フラグFhが「ON」に設定された後、本処理は一旦終了される。
次に、IDM40は、上記変位量消失フラグFhを参照して、最大リフト量変更機構100の駆動を許可するか否かを判定する処理を実行する。この駆動可否判定処理の処理手順を図11に示す。なお、本処理は、IDM40によって所定期間毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されると、まず、変位量消失フラグFhが「ON」に設定されているか否かが判定される(S500)。そして、その変位量消失フラグFhが「ON」に設定されている場合には(S500:YES)、最大リフト量変更機構100の駆動を禁止するべく、通電許可フラグFdが「OFF」に設定されて(S510)、本処理は一旦終了される。
一方、変位量消失フラグFhが「OFF」に設定されている場合には(S500:NO)、最大リフト量変更機構100の駆動を許可するために、通電許可フラグFdが「ON」に設定される(S520)。なお、このステップS520では、始動準備完了フラグFcが「ON」に設定され、この始動準備完了フラグFcの「ON」設定に基づいて通電許可フラグFdは「ON」に設定される。そして、本処理は一旦終了される。
このような駆動可否判定処理が実行されることにより、変位量消失フラグFhが「OFF」に設定されている場合、すなわちRAM43から変位量Dが消失しており、動作位置Pの誤検出が発生するおそれのある状態では、通電許可フラグFdが「OFF」に設定されることにより、最大リフト量変更機構100の駆動が禁止される。従って、誤った動作位置Pに基づいて最大リフト量変更機構100が駆動制御されるといったことがなくなり、これによりRAM43に記憶された変位量Dが消失した場合に生じやすい、当該最大リフト量変更機構100の破損を抑制することができる。
また、IDM40は、変位量Dの消失により駆動禁止とされた最大リフト量変更機構100の駆動を再開するために、次のような原理に基づいて消失された変位量Dを復元する。
すなわち変位量消失フラグFhが「ON」に設定されている場合には、変位量Dが消失されており、最大リフト量変更機構100の駆動は禁止される。このように駆動が禁止されると、変位量Dが消失した後の最大リフト量変更機構100の動作位置は、その消失直前の動作位置に維持される。そのため、最大リフト量変更機構100の駆動が禁止されたときの実際の動作位置は、上記基準絶対位置Pstに消失直前の変位量Dを加算した動作位置Pに一致する。また、消失直前にECU30に送信された動作位置P(図5に示したステップS130の処理)には、消失直前の変位量Dが含まれている。従って、消失直前にECU30に送信された動作位置Peを同ECU30から受信し、その受信した動作位置Peと上記基準絶対位置Pstとの差を算出することにより、消失直前での変位量Dを求めることができる。そして、そのように算出される差を変位量DとしてRAM43に記憶することにより、消失された変位量Dを復元することが可能であり、変位量Dが消失された場合でも、最大リフト量変更機構100の正しい動作位置Pを再び把握することができる。
こうした原理に基づき、IDM40は、図12に示す変位量復元処理を所定期間毎に繰り返し実行する。なお、本処理は、前記復元手段を構成する。
本処理が開始されるとまず、上記変位量消失フラグFhが「ON」に設定されているか否かが判定される(S600)。そして、その変位量消失フラグFhが「OFF」に設定されている場合には、RAM43から変位量Dが消失されていないため、本処理は一旦終了される。
一方、変位量消失フラグFhが「ON」に設定されている場合には(S600:YES)、変位量Dの消失直前にECU30に送信された動作位置Peが、当該ECU30から読み込まれる(S610)。
次に、その読み込まれた動作位置Pe及びEEPROM44に記憶された上記基準絶対位置Pstに基づいて消失変位量DLが算出される(S620)。ここでは、動作位置Peから基準絶対位置Pstを減算することにより消失変位量DLが算出される。
次に、この算出された消失変位量DLが変位量DとしてRAM43に書き込まれることにより、消失された変位量Dが復元される(S630)。そして、この変位量Dの復元が完了したことで、上記変位量消失フラグFhは「OFF」に設定されて(S640)、本処理は一旦終了される。
図13に、変位量消失フラグの設定態様及び変位量Dの復元態様を示す。なお、この図13に示す時刻t1、時刻t5、及び時刻t8は、それぞれ図8に示した時刻t1、時刻t5、及び時刻t8に対応している。
同図13に示すように、時刻t8において通電許可フラグFdが「ON」に設定されると、最大リフト量変更機構100の駆動が許可される。そして、当該最大リフト量変更機構100の駆動が開始されて、その動作位置が変化し始めると、上記動作位置算出処理の実行周期α毎に、その実行周期α間に変化した作動量Cと前回の実行周期において算出された変位量Dn−1とに基づいて今回の実行周期における変位量Dが算出される。そして、その更新された最新の変位量DがRAM43に書き込まれる。
その後、時刻taにおいて、IDM40に対する電源の瞬断が発生すると、RAM43に対する電源供給が停止されて変位量Dは消失される。また、IDM40に対する電源の瞬断によって、RAM43に記憶された通電許可フラグFdも初期値である「OFF」に変化するとともに、モータ60aへの給電も停止される。これにより、最大リフト量変更機構100の実際の動作位置は、変位量Dが消失される直前の動作位置Peで停止する。
そして、時刻tbにおいて、IDM40及びRAM43に対する電源供給が開始されると、変位量消失判定処理の実行を通じて変位量消失フラグFhが「ON」に設定される。このように、同変位量消失フラグFhが「ON」に設定されると、最大リフト量変更機構100の駆動可否判定処理の実行を通じて、通電許可フラグFdは「OFF」の状態に維持される。従って、IDM40に対する電源供給及びモータ60aへの給電が開始されても当該最大リフト量変更機構100の駆動は禁止され、その動作位置は上記動作位置Pe(一点鎖線にて図示)に維持される。
このように変位量消失フラグFhが「OFF」に設定されている場合、すなわちRAM43から変位量Dが消失しており、動作位置Pの誤検出が発生するおそれのある状態では、通電許可フラグFdが「OFF」に設定されることにより、最大リフト量変更機構100の駆動が禁止される。従って、上述したように、誤った動作位置Pに基づいて最大リフト量変更機構100が駆動制御されるといったことがなくなり、最大リフト量変更機構100の破損が抑制される。
また、動作位置Pの誤検出が発生するおそれのある状態では、最大リフト量変更機構100の駆動が禁止されることにより、当該最大リフト量変更機構100の動作位置は、駆動禁止直前の位置に維持される。従って、ECU30にて動作位置Pに基づき推定される吸入空気量と実際の吸入空気量との間に生じるずれの増大が抑えられ、これにより上述したような空燃比のずれの増大も抑えられる。
また、最大リフト量変更機構100の駆動が禁止されることにより、誤った動作位置Pが検出されている場合に生じやすい、吸入空気量の過度な増大や減少が抑えられ、もって上記ノッキングや失火の発生も抑えられる。
その後、時刻tbにおいて、変位量消失フラグFhが「ON」に設定されることにより、変位量復元処理の実行が開始される。この変位量復元処理が実行されると、変位量Dの消失直前にECU30に送信された動作位置Peから基準絶対位置Pstが減算されて消失変位量DLが算出される。そして、時刻tcにおいて、その算出された消失変位量DLがRAM43に書き込まれ、消失された変位量Dが復元されると、変位量消失フラグFhが「OFF」に設定される。このように、変位量消失フラグFhが「OFF」に設定されると、最大リフト量変更機構100の駆動可否判定処理の実行を通じて、通電許可フラグFdは「ON」に設定され、当該最大リフト量変更機構100の駆動が再開される。
このような変位量復元処理が実行されることにより、変位量Dが消失された場合でも、その消失された変位量Dを復元することが可能となる。従って、変位量Dの消失によって発生する、最大リフト量変更機構100の動作位置Pと実際の動作位置とのずれが解消される。そして、変位量Dが復元されたことをもって最大リフト量変更機構100の駆動が再開される。すなわち、上記動作位置Pと実際の動作位置とのずれが解消されたことをもって正しい動作位置Pに基づく最大リフト量変更機構100の駆動制御が再開されて、変位量Dの消失により禁止された最大リフト量変更機構100の駆動は適切に再開される。
また、消失された変位量Dが復元されて、最大リフト量変更機構100の動作位置Pと実際の動作位置とのずれが解消されることにより、ECU30では、最大リフト量変更機構100の駆動再開後における吸入空気量が正確に推定される。そのため、同駆動再開後において、動作位置Pから推定される吸入空気量に基づいて空燃比制御が実行されても、空燃比のずれは適切に抑えられる。
また、最大リフト量変更機構100の駆動再開後において、動作位置Pが正確に検出されるため、そうした駆動再開後における最大リフト量変更機構100の動作位置制御が適切に行われるようになる。従って、同駆動再開後においても上述したようなノッキングや失火の発生が抑えられる。
以上説明したように、上記実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)機関始動が開始された後にRAM43に対する電源供給が安定したと判定された後に「ON」に設定され、機関停止に伴って最大リフト量変更機構100の駆動が停止されることにより「OFF」に設定されるモータ制御中フラグFgを、記憶データの書き換え可能なEEPROM44に書き込むようにしている。また、モータ制御中フラグFgが「ON」に設定された後に、最大リフト量変更機構100の駆動を許可する通電許可フラグFdを「ON」に設定するようにしている。そして、RAM43への電源供給時においてモータ制御中フラグFgが「ON」に設定されている場合には、RAM43から最大リフト量変更機構100の変位量Dが消失されていると判定するようにしている。従って、RAM43に記憶される最大リフト量変更機構100の変位量Dが消失したか否かを適切に判定することができるようになる。
(2)RAM43に対する電源供給が安定したか否かの判定を、オルタネータ81を駆動するクランクシャフト25の回転速度、すなわち機関回転速度NEに基づいて行うようにしている。従って、RAM43に対する電源供給が安定したか否かを適切に判定することができるようになる。
(3)RAM43から変位量Dが消失された場合には、最大リフト量変更機構100の駆動を禁止するようにしている。そのため、誤った動作位置Pに基づいて最大リフト量変更機構100が駆動制御されるといったことがなくなり、これによりRAM43に記憶された変位量Dが消失した場合に生じやすい、最大リフト量変更機構100の破損を抑制することができるようになる。
(4)変位量Dが消失された場合、変位量復元処理によってその消失された変位量Dを復元するようにしている。そのため、変位量Dが消失された時に生じるずれであって、IDM40にて検出される最大リフト量変更機構100の動作位置Pと実際の動作位置とのずれを解消することができる。そして、変位量Dが復元されたときには、最大リフト量変更機構100の駆動を許可するようにしている。そのため、上記ずれが解消されたことをもって正しい動作位置Pに基づく最大リフト量変更機構100の駆動制御が再開される。従って、変位量Dの消失により禁止された最大リフト量変更機構100の駆動を適切に再開することができるようになる。
(5)変位量Dが消失されたときには、IDM40は、消失直前にECU30に送信された動作位置Peを同ECU30から受信し、その受信した動作位置Peと上記基準絶対位置Pstとの差を算出し、その算出された差を消失された変位量Dとして復元するようにしている。そのため、変位量Dが消失された場合でも、最大リフト量変更機構100の正しい動作位置Pを再び把握することができるようになる。
(6)最大リフト量変更機構100の駆動制御を通じて吸気バルブ17の最大リフト量及び開弁期間を変更するようにしている。こうした吸気バルブ17の最大リフト量や開弁期間といったバルブ特性を変更する場合には、その変更される最大リフト量や開弁期間に応じて燃焼室14に導入される吸入空気の量は速やかに変化する。そこで、上記実施形態では、最大リフト量変更機構100の動作位置Pに基づく吸入空気量の推定をECU30にて行うようにしている。そのため、エアフロメータ等のセンサにて吸入空気量を検出する場合と比較して、燃焼室14に導入される吸入空気量の変化をより速やかに把握することができるようになり、もって上記空燃比制御をより適切に行うことが可能になる。
ここで、上述したように、変位量Dが消失されてしまうと最大リフト量変更機構100の動作位置Pが誤検出されてしまうため、この場合には、推定される吸入空気量と実際の吸入空気量との間にずれが生じてしまう。さらに動作位置Pが誤検出されている状態で最大リフト量変更機構100の駆動が継続して行われると、そうしたずれが増大し、実際の空燃比が排気性状を良好なものとする空燃比から大きくずれてしまうおそれがある。この点、上記実施形態では、変位量Dの消失によって最大リフト量変更機構100の動作位置Pが誤検出されるおそれのある状況では、同最大リフト量変更機構100の駆動が禁止され、その動作位置は、駆動禁止直前の位置に維持される。従って、動作位置Pに基づいて推定される吸入空気量と実際の吸入空気量との間に生じるずれの増大を抑制することができるようになり、もって上述したような空燃比のずれの増大についても抑制することができるようになる。
(7)また、消失された変位量Dを復元する上記変位量復元処理が実行されることにより、最大リフト量変更機構100の駆動再開後における吸入空気量を正確に推定することができるようになる。そのため、同駆動再開後における空燃比のずれを抑制することも可能となる。
(8)最大リフト量変更機構100の動作位置を機関運転状態に基づいて設定される目標動作位置に制御することで、機関運転状態に応じた吸入空気量を確保するようにしている。ここで、上記変位量Dの消失により最大リフト量変更機構100の動作位置Pが誤って検出されている状態では、その動作位置制御を適切に行うことが困難になる。そのため、機関運転状態に応じた適切な量の吸入空気量に対して、実際の吸入空気量は過度に多くなったり、少なくなったりするおそれがあり、実圧縮比の増大等によるノッキングの発生や空燃比のリーン化等による失火の発生、あるいは空燃比のリッチ化等による失火の発生も懸念される。この点、本実施形態によれば、最大リフト量変更機構100の動作位置Pが誤検出されるおそれのある状況では同機構100の駆動が禁止される。従って、誤った動作位置Pが検出されている場合に生じやすい、吸入空気量の過度な増大や減少が抑えられ、もって上記ノッキングや失火の発生も抑制することができる。
(9)また、消失された変位量Dを復元する上記変位量復元処理が実行されることにより、最大リフト量変更機構100の駆動再開後において正確な動作位置Pを検出することができるようになり、そうした駆動再開後における最大リフト量変更機構100の動作位置制御を適切に行うことができるようになる。従って、同駆動再開後においても上記ノッキングや失火の発生を抑制することができるようになる。
(10)エンジン10の停止後にあっては最大リフト量変更機構100の駆動が停止されるため、その動作位置は変化することがない。そこで、上記実施形態では、エンジン10の停止後に最大リフト量変更機構100の駆動が停止されたときの同最大リフト量変更機構100の動作位置Pを上記基準絶対位置Pstとして学習し、その学習された基準絶対位置Pstと上記変位量Dとに基づいて最大リフト量変更機構100の動作位置Pを算出するようにしている。従って、エンジン10の運転開始後の最大リフト量変更機構100の動作位置P、すなわちエンジン10の運転中における最大リフト量変更機構100の動作位置Pを適切に検出することができるようになる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上述したように、クランクシャフト25に駆動連結されたオルタネータ81の発電量が増大すれば、RAM43に対して、エンジン10に搭載されたバッテリのみならず、オルタネータ81からも十分な電力を安定して供給することが可能になる。そこで、上記実施形態では、RAM43に対する電源供給が安定したか否かを機関回転速度NEに基づいて判定するようにしたが、これに代えて、オルタネータ81の発電量に基づいてそうした判定を行うようにしてもよい。この場合には、RAM43に対する電源供給を安定させることができる程度のオルタネータ81の発電量を閾値Bとして設定し、実際の発電量GEがその閾値Bを超えた場合に、RAM43に対する電源供給が安定したと判定するようにするとよい。
・上記ステップS220の処理を省略してもよい。すなわち、ステップS210にて肯定判定されて、RAM43への電源供給が安定したと判定された場合には、直ちにモータ制御中フラグFgについて「OFF」から「ON」への書き込みを開始するようにしてもよい。
・上記実施形態では、最大リフト量変更機構100の可動端を規定する規制部材として、コントロールシャフト130の外周面に凸部130aを設けるとともに、シリンダヘッド12にストッパ12s、12tを設けるようにした。しかし、こうした構成は一例であり、その他の規制部材を設けるようにしてもよい。
・上記変位量復元処理を省略してもよい。この場合でも、上記(1)〜(3)、(6)、(8)及び(10)に記載の効果を得ることができる。
・最大リフト量変更機構100の動作位置Pに基づいて燃焼室14に導入される吸入空気量を推定する代わりに、上記エアフロメータ等のセンサにて同吸入空気量を検出するようにしてもよい。この場合には、上記(1)〜(5)、及び(8)〜(10)に記載の効果を得ることができる。
・上記実施形態では、モータ60aに設けられた回転角センサ37の検出信号に基づいて最大リフト量変更機構100の作動量Cを検出するようにした。この他、例えば、コントロールシャフト130の移動量を検出する等、最大リフト量変更機構100にセンサを設け、その作動量を直接検出するようにしてもよい。
・上記実施形態では、エンジン10の停止後に最大リフト量変更機構100の駆動が停止されたときの当該最大リフト量変更機構100の動作位置Pを基準絶対位置PstとしてEEPROM44に記憶させるようにした。この他、機関始動時に設定される最大リフト量変更機構100の動作位置を予め決定しておき、その機関始動時に設定される動作位置を基準絶対位置PstとしてIDM40に記憶させておくようにしてもよい。
・上記実施形態における最大リフト量変更機構100は、吸気バルブ17の最大リフト量及び開弁期間をともに変更する機構であった。この他、吸気バルブ17の最大リフト量のみ、または開弁期間のみを変更する機構であっても、本発明は同様に適用することができる。
・上記実施形態では、最大リフト量変更機構100にて吸気バルブ17のバルブ特性を変更するようにした。この他、最大リフト量変更機構100にて排気バルブ18のバルブ特性を変更する場合にも、本発明にかかる可変動弁機構の制御装置は適用可能であり、この場合には、上記(1)〜(5)、及び(10)に記載の効果と同等な効果を得ることができる。
・上記実施形態で説明した最大リフト量変更機構100は一例であり、他の構成で吸気バルブ17や排気バルブ18といった機関バルブのバルブ特性(例えば、開時期、閉時期、開弁期間、あるいは最大リフト量等)を可変とする可変動弁機構であっても、本発明は同様に適用することができる。
・上記実施形態では、機関停止に際して上記遅延制御を行うようにしたが、そうした遅延制御が行われないエンジンにも、本発明にかかる制御装置は同様に適用することができる。
本発明にかかる制御装置を具体化した一実施形態にあって、これが適用されるエンジンの構成を示す概略図。 最大リフト量変更機構の構造を示す部分断面斜視図。 同実施形態におけるエンジンをシリンダヘッドの上方側から見たときの最大リフト量変更機構100の取付態様を示す平面図。 同実施形態におけるIDMの電気的構成を示すブロック図。 同実施形態における動作位置算出処理の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態における始動時フラグ設定処理の処理手順を示すフローチャート 同実施形態における停止時フラグ設定処理の処理手順を示すフローチャート。 始動時フラグ設定処理及び停止時フラグ設定処理の実行を通じて設定される各種フラグの状態を示したタイミングチャート。 同実施形態において、変位量Dの消失判定にかかる原理を説明するためのタイミングチャート。 同実施形態における変位量消失判定処理の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態における最大リフト量変更機構の駆動可否判定処理についてその処理手順を示すフローチャート。 同実施形態における変位量復元処理の処理手順を示すフローチャート。 変位量消失フラグの設定態様及び変位量の復元態様を示すタイミングチャート。
符号の説明
10…エンジン、11…シリンダブロック、11a…シリンダ、11b…ウォータジャケット、12…シリンダヘッド、12a…軸受部、12s、12t…ストッパ(規制部材)、13…ピストン、14…燃焼室、15…吸気ポート、16…排気ポート、17…吸気バルブ、18…排気バルブ、19、20…ロッカアーム、21…吸気カムシャフト、21a…吸気カム、22…排気カムシャフト、22a…排気カム、23…点火プラグ、24…インジェクタ、25…クランクシャフト、26、27…タイミングプーリ、28…タイミングベルト、29…コネクティングロッド、30…機関制御用の制御装置(ECU)、31…水温センサ、32…クランク角センサ、33…アクセルセンサ、34…空燃比センサ、35…車速センサ、36…電圧センサ、37…回転角センサ、40…制御装置(IDM)、41…中央演算処理装置(CPU)、42…読み出し専用メモリ(ROM)、43…ランダムアクセスメモリ(RAM)、44…不揮発性メモリ(EEPROM)、45…外部出力回路、46…外部入力回路、47…内部バス、50…バス、60…駆動部、60a…モータ、60b…変換機構、65…イグニッションスイッチ(IGスイッチ)、80…スタータモータ、81…オルタネータ、100…最大リフト量変更機構、120…支持パイプ、130…コントロールシャフト、130a…凸部(規制部材)、140…入力アーム、141a、141b…アーム、142…ローラ、143…ヘリカルスプライン、147…ピン、150…第1出力アーム、151…ノーズ、152…ヘリカルスプライン、160…第2出力アーム、161…ノーズ、162…ヘリカルスプライン、170…スライダ、171…第1ヘリカルスプライン、172a…第2ヘリカルスプライン、172b…第3ヘリカルスプライン。

Claims (10)

  1. 機関バルブのバルブ特性を変更する可変動弁機構の駆動を制御する制御装置であって、予め学習された絶対位置からの前記可変動弁機構の変位量を揮発性メモリに記憶するとともに、同揮発性メモリに記憶された前記変位量を前記可変動弁機構の作動量に応じて更新し、その更新された変位量及び前記絶対位置に基づいて前記可変動弁機構の動作位置を検出する検出手段を備える可変動弁機構の制御装置において、
    機関始動が開始された後に前記揮発性メモリに対する電源供給が安定したと判定されることにより一方の値に設定され、機関停止に伴って前記可変動弁機構の駆動が停止されることにより他方の値に設定されるフラグを記憶データの書き換え可能な不揮発性メモリに書き込む書き込み手段と、
    前記フラグが前記一方の値に設定された後に前記可変動弁機構の駆動を許可する許可手段と、
    前記揮発性メモリへの電源供給時において前記フラグが前記一方の値に設定されているときには、前記揮発性メモリから前記変位量が消失されていると判定する判定手段とを備える
    ことを特徴とする可変動弁機構の制御装置。
  2. 前記書き込み手段は、前記可変動弁機構が設けられた内燃機関の発電機を駆動するクランクシャフトの回転速度に基づいて前記揮発性メモリに対する電源供給が安定したか否かを判定する
    請求項1に記載の可変動弁機構の制御装置。
  3. 前記書き込み手段は、前記可変動弁機構が設けられた内燃機関のクランクシャフトにて駆動される発電機の発電量に基づいて前記揮発性メモリに対する電源供給が安定したか否かを判定する
    請求項1に記載の可変動弁機構の制御装置。
  4. 前記可変動弁機構は、その可動端が規制部材で規定される機構であって、
    前記判定手段により前記変位量が消失されていると判定されたときには、前記可変動弁機構の駆動を禁止する
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の可変動弁機構の制御装置。
  5. 請求項4に記載の可変動弁機構の制御装置において、
    前記変位量が消失されていると判定されたときには、その消失された変位量を復元する復元手段を備え、同復元手段によって同変位量が復元されたときには、前記可変動弁機構の駆動禁止を解除する
    ことを特徴とする可変動弁機構の制御装置。
  6. 請求項5に記載の可変動弁機構の制御装置において、
    前記検出手段にて検出された前記動作位置を機関制御用の制御装置に送信するとともに、
    前記復元手段は、前記変位量が消失されていると判定されたときに、消失直前に前記機関制御用の制御装置に送信された動作位置を同機関制御用の制御装置から受信して、その受信した動作位置と前記絶対位置との差を算出し、その算出された差を消失された変位量として復元する
    ことを特徴とする可変動弁機構の制御装置。
  7. 機関停止後に前記可変動弁機構の駆動が停止されたときの当該可変動弁機構の動作位置を前記絶対位置として学習する
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の可変動弁機構の制御装置。
  8. 前記作動量は、前記可変動弁機構を駆動するアクチュエータの駆動量に基づいて検出される
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の可変動弁機構の制御装置。
  9. 請求項4〜8のいずれか一項に記載の可変動弁機構の制御装置において、
    前記可変動弁機構によって変更されるバルブ特性は、吸気バルブの開弁期間及び最大リフト量の少なくとも一方であり、
    前記可変動弁機構の動作位置に基づいて吸入空気量を推定し、その推定された吸入空気量に基づいて空燃比制御を実行する機関制御用の制御装置に対し、前記検出手段にて検出された前記動作位置を送信する
    ことを特徴とする可変動弁機構の制御装置。
  10. 請求項4〜8のいずれか一項に記載の可変動弁機構の制御装置において、
    前記可変動弁機構によって変更されるバルブ特性は、吸気バルブの開弁期間及び最大リフト量の少なくとも一方であり、
    前記可変動弁機構の動作位置は、機関運転状態に基づいて設定される目標動作位置となるように制御される
    ことを特徴とする可変動弁機構の制御装置。
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